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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】カトラリー
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A47G21/00 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020113216
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011832
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑞江
(72)【発明者】
【氏名】田村 由貴
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0128983(US,A1)
【文献】国際公開第2019/202526(WO,A2)
【文献】登録実用新案第3154383(JP,U)
【文献】特開2017-018347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドで成型されるカトラリーであって、
表面に点状の突起が複数設けられ、
それぞれの前記突起は、成型用の型に設けられた排水孔の位置に対応して配置され、前記排水孔の形状に応じて形成されている
ことを特徴とするカトラリー。
【請求項2】
複数の前記突起は、互いに一定の間隔をあけて設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載されたカトラリー。
【請求項3】
複数の前記突起は、1つの直線上に等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載されたカトラリー。
【請求項4】
前記突起の外径は1~3mmである
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載されたカトラリー。
【請求項5】
前記突起の高さは0.2~1.2mmである
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載されたカトラリー。
【請求項6】
前記突起は、ボデー部に配設されている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載されたカトラリー。
【請求項7】
前記突起は、前記ボデー部の表裏何れかの面の幅方向中央部に3~9個配設されていることを特徴とする請求項6に記載されたカトラリー。
【請求項8】
前記突起は、正面視で円形,楕円形,長円形,多角形の何れかに形成されている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載されたカトラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプーンやフォークやナイフといったカトラリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプーンやフォークやナイフといったカトラリーには、使い捨てでき、より気軽に利用できるものとして、金属以外の材料で形成されたものが種々開発されている。例えば特許文献1には、紙製のカトラリーが開示されている。しかし、紙製のものは剛性に乏しいため利用範囲が限られる。また、樹脂製のものは環境的な観点から回避したい。そこで、近年パルプモールド製のカトラリーが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-40285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パルプモールドは、パルプを原料とし、様々な形状に成形することができるうえ、形成されたパルプモールドは、使用後に再度リサイクルすることや焼却処理することも容易である。しかも、パルプモールドは、一定の強度,剛性を有し軽量なので、使い捨てするなど簡便に利用できるカトラリーへの適用も有効である。
【0005】
しかしながら、パルプモールド製のカトラリーは、使いやすさの上では改善の余地がある。つまり、ボデー部の握りやすさや、持ちやすさや、食品を掬ったり刺したり切ったりする際に力が入れやすく操作がしやすいなど、様々な使いやすさに関して向上させる余地がある。
【0006】
本件は、このような課題に着目して創案されたもので、パルプモールド製法を用いて成型されるカトラリーにおいて、使いやすさを向上させることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件のカトラリーは、パルプモールドで成型されるカトラリー(例えば、スプーン,フォーク,ナイフ等)であって、表面に点状の突起が複数設けられていることを特徴としている。
【0008】
複数の前記突起は、互いに一定の間隔をあけて設けられていることが好ましい。
複数の前記突起は、1つの直線上に等間隔に配置されていることが好ましい。
前記突起の外径は1~3mmであることが好ましい。
前記突起の高さは0.2~1.2mmであることが好ましい。
前記突起は、ボデー部(持ち手部分)に配設されていることが好ましい。
前記突起は、前記ボデー部の表裏何れかの面の幅方向中央部に3~9個配設されていることが好ましい。
前記突起は、正面視で円形,楕円形,長円形,多角形の何れかに形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本件のカトラリーによれば、表面に設けられている点状の突起により、カトラリーの使いやすさが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るカトラリー(スプーン)を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るカトラリー(スプーン)を示す正面図である。
図3】各実施形態に係るカトラリー(スプーン)の突起の正面図であり、(a)は各実施形態のものを示し、(b)~(e)は変形例を示す。
図4】第1実施形態に係るカトラリー(スプーン)の断面図(図2のA-A矢視断面図)である。
図5】第2実施形態に係るカトラリー(スプーン)を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係るカトラリー(スプーン)の断面図(図5のB-B矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
カトラリーに関する実施の形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
カトラリーには、スプーン,フォーク,ナイフ,バターナイフをはじめ、お玉杓子(いわゆる「おたま」)やトングといったさまざまな食事用具が含まれる。本実施形態では、スプーンを例に挙げてカトラリーを説明する。
【0013】
[A.パルプモールド及びカトラリーの概要]
各実施形態のカトラリーは、パルプを主原料とするパルプモールド(「パルプモウルド」とも表記される)で立体成型されている。
このように立体成型されたパルプモールド製カトラリーは、天然素材を使用しているのでエコフレンドリーな製品と言える。更に言えば、このカトラリーは、軽量にもかかわらず一定の強度があり、使い勝手がよく、かつ積み重ねることで収納しやすいものである。
上記のカトラリーを製造する方法としては、パルプモールド製法で立体成型する公知のさまざまな手法を採用することができる。たとえば、特開平09-286468号公報や特開平07-42100号公報に記載の製法を援用することができる。
【0014】
一例を挙げれば、下記の工程a~dを経てカトラリーが製造される。
・工程a:パルプを水に溶解させたり水中で解繊させたりして原料を仕込む
・工程b:工程aで仕込まれた材料(原液)から異物を除去したり濃縮したりして成型(「成形」とも表記される)用の原料(原質)を調整する
・工程c:工程bで調整された原料を所定の形状に設けられた型でプレス成型する
・工程d:工程cで成型されたものを乾燥する
なお、工程cのプレス成型の工程では、成型用のに設けられた排水孔から原料内の水分の排水が行われる。
【0015】
本カトラリーの製法には、滑らかな表面に仕上げるためや使用者に対する触感を確保するための表面性を確保する観点から、いわゆる「高湿熱プレス成型」を採用することが好ましい。たとえば、上記の工程dにおいて120[℃]以上で加圧乾燥されることで、表面性の確保されたカトラリーを製造することができる。このように成型されたカトラリーは、表面平滑性が優れているため見た目も良好であり、使用時の違和感もない。
【0016】
そのほか、カトラリーの密度は、強度を確保する観点から所定の下限値以上であることが好ましく、重量を抑制する観点から所定の上限値以下であることが好ましい。具体的に言えば、所定の下限値は、0.45[g/cm3]であることが好ましく、0.55[g/cm3]であることがより好ましく、0.65[g/cm3]であることが更に好ましい。所定の上限値は、0.95[g/cm3]であることが好ましく、0.85[g/cm3]であることがより好ましく、0.75[g/cm3]であることが更に好ましい。
【0017】
なお、カトラリーには、撥水性や耐水性をもたせるために、撥水剤や耐水剤が用いられていてもよい。たとえば、撥水剤や耐水剤がカトラリーの表面にコーティング(表面塗工)あるいはラミネーションされていてもよいし、撥水剤や耐水剤がカトラリーに内添(含有)されていてもよい。撥水剤や耐水剤の一例としては、サイズ剤が挙げられる。
【0018】
また、以下に説明する各実施形態のカトラリーは、長手方向の領域によって、以下に示す三つの部位に大別される。
・ボデー部:カトラリーの基端側で持ち手をなす部位
・ヘッド部:カトラリーの先端側で飲食対象と接触する部位
・ネック部:ボデー部とヘッド部との間に設けられた部位
カトラリーがナイフであれば、飲食対象を切断する部位がヘッド部に設けられる。カトラリーがスプーンであれば、飲食対象を掬う部位がヘッド部に設けられる。カトラリーがフォークであれば、先端側に向けて分岐した部位がヘッド部に設けられる。カトラリーがバターナイフであれば、飲食対象のバター等を掬う部位がヘッド部に設けられる。
【0019】
[B.第1実施形態]
第1実施形態では、図1図4を参照し、カトラリーとしてのスプーン1を説明する。
図1図2に示すように、スプーン1は、持ち手部分(又は柄の部分)となるボデー部1Aと、食品を掬い取る部分であるヘッド部1Bと、ボデー部1Aとヘッド部1Bとの間のネック部1Cとに大別される。そして、スプーン1の表面(表側の面)11には、点状(ドット状)の突起10が複数設けられている。
【0020】
本実施形態では、スプーン1のボデー部1Aの表面11に突起10が設けられている。この表面11は、ヘッド部1Bの凹んだ面12と同じ方向を向き、使用時には使用者の親指が添えられる面である。突起10は、ボデー部1Aの表面11の幅方向中央部に配置され、ボデー部1Aの長手方向に等間隔で並んで複数設けられている。
本実施形態では、6個の突起10が、ボデー部1Aの幅方向中心線上に間隔で並設されている。ただし、突起10の数はこれに限定されないが、3~9個程度が好ましい。
【0021】
点状の突起10とは、独立峰型の突起であり、線状(筋状や帯状)に延びた連峰型のものではない。本実施形態では、図3(a)に示すように、正面視で円形の突起10を例示する。ただし、突起10の正面視形状は円形に限定されず、例えば図3(b)~(e)に示すように、楕円形,長円形,多角形(例えば、三角形や四角形)などの形状も含むものとする。
【0022】
また、突起10の外面は、滑らかな曲面であることが好ましく、本実施形態では、球面の一部または球面の一部を高さ方向に押し潰して高さHを低下させた外面形状になっている。ただし、突起10の外面はこれに限定されない。
各突起10は、形状や大きさが同一又は略同一でなくてもよいが、本実施形態では、各突起10は同一又は略同一の形状,大きさとなっている。
【0023】
さらに、突起10の正面視の外径(表面11から立ち上がる根元部分の外径)Rは1~3mmであることが好ましく、突起10の正面視の面積Sは、0.5~15mm2であることが好ましく、0.9~12mm2であることがより好ましい。また、突起10の高さHは0.2~1.2mmであることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、上記のカトラリーの製造工程における工程cにおいて、排水孔から原料内の水分の排水を行う際に、排水作用に伴ってパルプモールドに形成される突起を利用して突起10を形成している。つまり、排水孔の形状を所望の突起10の形状が得られるように設定することで、上記の形状,大きさの突起10を得るようにしている。突起10の所望の配置に合わせて、排水孔を配置している。
【0025】
本実施形態に係るスプーン1は、上記のように構成されているので、スプーン1を持ったときや、食品を掬うときに、指に突起10が接触して、指の滑りが防止され、また、握り易さが向上する。また、装飾性も付加され、外観が向上する効果も得られる。
特に、突起10の形状,大きさ,数を上記のように設定していることも、指の滑りの防止や、握り易さの向上に寄与する。
【0026】
また、本実施形態では、製造工程における工程cにおいて、排水孔から原料内の水分の排水を行う際の排水作用を利用して突起10を形成しているので、成型用の型をシンプルに形成することができ、突起10が小さくても形成しやすい。また、排水作用で必然的に突起が生じてしまう場合、突起10が使用時の邪魔になったり見栄えの悪化を招いたりするおそれがあるが、使いやすさや外観の向上に着目しながら、排水孔の配置や形状や大きさを設定することで、排水作用で必然的に形成される突起10を有効に利用することができる。
【0027】
[C.第2実施形態]
第2実施形態では、図5図6を参照し、カトラリーとしてのスプーン2を説明する。
図5に示すように、スプーン2は、持ち手部分(又は柄の部分)となるボデー部2Aと、食品を掬い取る部分であるヘッド部2Bと、ボデー部2Aとヘッド部2Bとの間のネック部Cとに大別される。そして、スプーン2の裏面(裏側の面)23には、点状(ドット状)の突起20が複数設けられている。
【0028】
本実施形態では、スプーン2のボデー部2Aの裏面23に突起20が設けられている。この裏面23は、ヘッド部3Bの凹んだ面と逆方向を向き、使用時には使用者の人差し指や中指等が添えられる面である。突起20は、ボデー部2Aの裏面23の幅方向中央部に配置され、ボデー部2Aの長手方向に等間隔で並んで複数設けられている。
本実施形態では、6個の突起20が、ボデー部2Aの幅方向中心線上に間隔で並設されている。上記のように、突起20の数はこれに限定されないが、3~9個程度が好ましい。
【0029】
突起20は、第1実施形態のものと同様に、正面視で円形であり、外面は、球面の一部または球面の一部を高さ方向に押し潰して高さHを低下させた滑らかな曲面で形成される。各突起20の形状,大きさは、互いに同一又は略同一となっており、第1実施形態と同様に、正面視の外径Rは1~3mm内に、正面視の面積Sは0.5~15mm2内に(より好ましくは0.9~12mm2内に)、高さは0.2~1.2mm内に設定されている。
【0030】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、上記のカトラリーの製造工程における工程cにおいて、排水孔から原料内の水分の排水を行う際に、排水作用に伴ってパルプモールドに形成される突起を利用して突起10を形成している。
【0031】
本実施形態に係るスプーン2は、上記のように構成されているので、スプーン2を持ったときや、食品を掬うときに、指に突起20が接触して、指の滑りが防止され、また、握り易さが向上する。また、装飾性も付加され、外観が向上する効果も得られる。
特に、ボデー部2Aの裏面23の幅方向中央部に突起20が形成されると、図6に示すように、面23の幅方向両縁部P1,P2と中央部に突起20の頂点付近P3との3点で指が接触するようになるため、指の滑りが安定的に防止され、また、握り易さもより確実に向上する。
【0032】
[D.その他]
以上、実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を適宜変更したり組み合わせたりして実施してもよい。
例えば、上記実施形態では、カトラリーとして、スプーンを例示したが、フォークやナイフなど、その他のカトラリーに適用することもできる。
【0033】
また、上記実施形態では、突起をボデー部に設けており、ボデー部の握りやすさや、持ちやすさや、食品を掬ったり刺したり切ったりする際に力が入れやすく操作がしやすいなど、様々な使いやすさの向上に寄与するが、ヘッド部やネック部に設けても使いやすさの向上に寄与する。
【0034】
例えば、スプーンのヘッド部に突起を設けると、食品によっては掬いやすくなり、ナイフのヘッド部に突起を設けると、切った食品がヘッド部から離れやすくなる。また、ナイフのネック部に指を添えて使う場合があり、ネック部の突起を設けると、指の滑りが防止され、また、握り易さが向上する。
【0035】
さらに、上記の実施形態では、複数の突起をボデー部の幅方向中央に等間隔に配置しているが、配置する位置は等間隔に限定されるものではなく適宜設定することができる。例えば、複数の突起を複数列並べて配置したり、千鳥状に配置したり、部分によって密度を変えて配置したりしてもよい。
【0036】
また上記実施形態では、製造工程における工程cにおいて、排水孔から原料内の水分の排水を行う際の排水作用を利用して突起を形成しているが、突起の一部を、排水作用を利用して形成し、残りを成型用の型に突起を形成する形状部分を設けて形成してもよい。或いは、全ての突起を成型用の型に突起を形成する形状部分を設けて形成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,2 カトラリーとしてのスプーン
1A,2A ボデー部
1B,2B ヘッド部
1C,2C ネック部
10,20 突起
11 ボデー部1Aの表側の面(表面)
12 ヘッド部1Bの凹んだ面
23 ボデー部2Aの裏側の面
R 突起10,20の正面視の外径
H 突起10,20の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6