(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】超音波診断装置、および、超音波信号処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020118463
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 章裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 義浩
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310110(US,A1)
【文献】特開2015-198710(JP,A)
【文献】特開2007-222390(JP,A)
【文献】特表2020-503970(JP,A)
【文献】特開2017-080493(JP,A)
【文献】特開2018-102771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からなり、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第2の送信イベントにより取得される走査線数がnc本、関心領域の素子列方向の幅をWc、走査線の素子列方向の密度をdcとし、1未満の所定の比率をRとした場合、M、N
は以下の条件を満たすよう設定される
N=Wc×dc/nc、M≦N×R
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記j
max
は、第2画像の関心領域における走査線数であり、1回の第2の送信イベントにより取得される走査線数がn
c
本である場合、N=j
max
/n
c
である
ことを特徴とする請求項
1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からな
り、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第1検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IB
[sec]、第2検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IC
[sec]とした場合、第1の送信イベント及び第2の送信イベントの交互実行に要する時間はM×T
IB
+N×T
IC
であり、
超音波の繰り返し送信周波数をFR
c
[Hz]とし、所定の比率をRとした場合、前記M、Nは、以下の式を満たすよう設定される
FR
c
=1/(M×T
IB
+N×T
IC
)、M≧N×R
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からな
り、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
前記第2の送信イベントの所要時間の上限値を所定の基準値ΔTとし、第2の送信イベント内で連続する第2検出波送信の送信間隔時間をT
IC
とすると、
前記Nは、N=[ΔT/T
IC
]であり(ここで[]は、被演算子となる数値を、当該数値を越えない最大の整数に丸める旨の演算子)、
前記第1検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IB
、前記第2検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IC
、所定の比率をRとしたときM、Nは、以下の式を満たすよう設定する
M≦N×(T
IC
/T
IB
)×R
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信 イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1 画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生 成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回 の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2 の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フ レーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からな
り、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関 心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
前記関心領域の素子列方向の幅をW
c
、走査線の素子列方向の密度をd
c
、1回の第 2の送信イベントにより音響線を取得する走査線の数をn
c
としたとき、1フレーム当 たりの第2の検出波の送信回数Tx
c
はTx
c
=W
c
×d
c
/n
c
であり、但し、Tx
c
が整数でない場合は整数に切り上げ、
1フレーム当たりの第2の送信イベントの実施回数B
c
は、B
c
=Tx
c
/Nであり 、但し、B
c
が整数でない場合は整数に切り上げ、
前記第1検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IB
、前記第2検出波を連続 して送信する際の送信間隔時間をT
IC
とした場合、前記第2画像のフレームレートFR
C
は、FR
C
=1/{(M×T
IB
+N×T
IC
)×B
c
}であり、
所定の比率Rとした場合、MはM×T
IB
≧N×T
IC
×Rを満たすように設定する
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からな
り、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第1検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IB
、第2検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IC
、1フレーム当たりの第1検出波の送信回数をT
xB
、1フレーム分の第1検出波を送信するのに要する所要時間をFT
B
とした場合、
第1画像の1フレーム分に相当する1回以上の第1の送信イベントの実行時間及びその間の1回以上の第2の送信イベントの実行時間の総和は、
T
IB
×T
xB
+T
IC
×N×FT
B
/Mであり、
第1画像のフレームレートをFR
B
、第2画像のフレームレートをFR
C
、所定の比率をRとした場合、以下の式を満たすようM、Nを設定する
FR
B
≦FR
C
×R
FR
B
=1/(T
IB
×T
xB
+T
IC
×N×FT
B
/M)
FR
C
=1/(M×T
IB
+N×T
IC
)
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
前記FT
B
は、FT
B
=T
IB
×T
xB
を満たし、
関心領域の素子列方向の幅をW
B
、走査線の素子列方向の密度をd
B
、1回の第2検出波の送信により音響線を取得する走査線の数をn
B
としたとき、1フレーム当たりの第1検出波の送信回数T
xB
は、T
xB
=W
B
×d
B
/n
B
である
ことを特徴とする請求項
6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、
反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部と
を備え、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からな
り、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第1検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IB
、第2検出波を連続して送信する際の送信間隔時間をT
IC
とした場合、第1の送信イベント及び第2の送信イベントの交互実行に要する時間は、M×T
IB
+N×T
IC
であり、
第2画像のフレームレートをFR
C
、第1画像のフレームレートをFR
B
、所定の比率をRとした場合、以下の式を満たすようM,Nを設定する
FR
C
=1/(M×T
IB
+N×T
IC
)
FR
B
≧FR
C
×R
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信において、被検体内における第1検出波の伝搬方向は互いに異なる
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記Nは、j
max
と等しく前記第2画像の1フレームは、1回の第2の送信イベントに対応する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記送信部は、前記第2
の送信イベントにおいて、前記第2画像の1フレームに係る最後の第2検出波の送信を行ったとき、前記第2送信イベントを終了し前記第1送信イベントを開始する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記第1検出波の送信と前記第2検出波の送信の少なくとも一方において、一続きの送信の最初にダミー送信を行う
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記送信部は、前記第2検出波の送信において、送信ごとに送信に用いる振動子列の位置が振動子の並ぶ方向に所定距離だけ移動するように送信に用いる振動子列を選択し、
前記受信部は、前記振動子列の位置に同期して、受信信号を生成する対象となる領域を振動子の並ぶ方向に所定距離だけ移動させる
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記送信部は、前記第2検出波の送信において、送信ごとに伝搬方向の異なる平面波を送出し、
前記受信部は、前記第2検出波の送信に同期して、関心領域の全域について受信信号を生成する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記画像合成部は、前記第1画像の新たなフレームが生成されるたびに、合成画像を更新する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記第1画像処理部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、第1画像の部分フレームを出力し、
前記画像合成部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、合成画像を更新する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項17】
前記画像合成部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、第1画像のフレーム補間を行って、合成画像を更新する
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記画像合成部は、複数の前記第1画像をブレンディングすることによりフレーム補間を行う
ことを特徴とする請求項
1から8の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記画像合成部は、複数の前記第1画像に基づく動き補償によりフレーム補間を行う
ことを特徴とする請求項1
8に記載の超音波診断装置。
【請求項20】
前記第1画像は、Bモード画像である
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項21】
前記第2画像は、カラーフローに基づくカラードプラ画像、または、パワードプラ画像である
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項22】
第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行い、
反射超音波を受信して受信信号に変換し、
前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行い、
前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行い、
前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力し、
前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、
1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記
第1の送信イベント及び第2の送信イベント
の双方に先行して行い、
前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成
し、
前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からなり、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第2の送信イベントにより取得される走査線数がnc本、関心領域の素子列方向の幅をWc、走査線の素子列方向の密度をdcとし、1未満の所定の比率をRとした場合、M、Nは以下の条件を満たすよう設定される
N=Wc×dc/nc、M≦N×R
ことを特徴とする超音波信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カラーフローマッピング法を用いる超音波診断装置における超音波の送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波探触子を体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の鼓動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ、安全性が高いため、繰り返して検査を行うことができる。
【0003】
超音波診断装置は、超音波探触子を介して被検体内部に向けて超音波を送受信することで得られる反射超音波に基づき、被検体内部情報を超音波画像として画像化するものである。この超音波画像には、B(Brightness)モード時に得るBモード画像と、C(Color Flow)モード時に得るCモード画像(カラードプラ画像)とがある。Bモード画像は、反射超音波の振幅強度を輝度で表示することで被検体の内部組織を画像化したものである。一方、Cモード画像は、Bモード画像中に指定した関心領域(ROI;Region of Interest)内における、血流情報をカラー表示した画像である。具体的には、ROI内の血流情報を、例えば、超音波探触子に近づく血流を赤色で、超音波探触子から遠ざかる血流を青色で示した画像であり、一般に、Bモード画像上に重畳表示される。
【0004】
Cモード画像をBモード画像上に重畳表示するためには、Bモード画像のスキャンとCモード画像のスキャンの双方が必要であるため、フレームレートが低下する課題がある。したがって、例えば、特許文献1に開示されているように、Bモード画像のフレームレートよりCモード画像のフレームレートを高くする技術が提案されている。また、例えば、特許文献2、特許文献3に開示されているように、Cモード画像のスキャンにおけるフレーム間の区切りにおいてBモード画像のスキャンの一部を行う技術が提案されている。これらの技術により、Cモード画像のフレームレートを向上し、血流描出の追従速度を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-111759号公報
【文献】特開2017-080493号公報
【文献】特開2018-102771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3の技術によれば、Bモード画像のフレームレートがCモード画像のフレームレートより低いため、Cモード画像の描画に対してBモード画像の最初のフレームの描画が間欠的に行われるという課題がある。また、Bモード画像とCモード画像とに限られず、異なる2つの画像モードに係るスキャンを交互に行う場合において、同様に、フレームレートの低い画像モードの最初のフレーム描画が、フレームレートの高い描画モードの描画に比べて遅れるという課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、フレームレートの異なる2つの画像モードにおいて、描画の開始を速やかに行う構成とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る超音波診断装置は、第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部とを備え、前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記第1の送信イベント及び第2の送信イベントの双方に先行して行い、前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成し、前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からなり、
第1画像処理部は、前記第1の送信イベントによるi
max
回の第1検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第1画像を生成し、
第2画像処理部は前記第2の送信イベントによるj
max
回の第2検出波の送信に対応する受信信号に基づいて第2画像を生成し、
前記i
max
は第1画像における関心領域の走査線数、前記j
max
は第2画像における関心領域の走査線数、Mはi
max
以下であり、Nはj
max
以下であり、
第2の送信イベントにより取得される走査線数がnc本、関心領域の素子列方向の幅をWc、走査線の素子列方向の密度をdcとし、1未満の所定の比率をRとした場合、M、Nは以下の条件を満たすよう設定される
N=Wc×dc/nc、M≦N×Rことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る超音波診断装置によれば、第2画像のフレームレートを向上させるとともに、第1画像のフレームレートが低い場合にも、第1画像を速やかに描画することが可能である。したがって、第1画像と第2画像のフレームレートの比に関わらず、第1画像に第2画像を重畳させた出力画像を速やかに出力させることができ、応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る超音波診断システム1000の機能ブロック図である。
【
図2】(a)はBモード送信およびCモード送信における超音波送受信の対象領域の概略を示した模式図である。(b)は画像合成の概略を示した模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る送信順序と走査線の位置との関係を示すタイムチャートである
【
図4】実施の形態1に係る受信ビームフォーマ部104の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】実施の形態1に係るCモード画像処理部105、Bモード画像処理部106、画像生成部107の構成を示す機能ブロック図である
【
図6】実施の形態1に係る超音波診断装置100の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1と実施の形態2のそれぞれにおいて、Bモード画像のフレームレートとCモード画像のフレームレートが1:4である場合の画像合成の対象フレームを示す模式図である。
【
図8】実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2において、C-ROI全体の走査線数が、1回のCモード送信イベントによって走査される走査線数の整数倍でない場合のタイムチャートである。
【
図10】実施の形態3に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態3において、C-ROI全体の走査線数が、1回のCモード送信イベントによって走査される走査線数の整数倍でない場合のタイムチャートである。
【
図12】実施の形態4に係るBモード送信およびCモード送信における超音波送受信の対象領域の概略を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪実施の形態1≫
<全体構成>
以下、実施の形態に係る超音波診断装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る超音波診断システム1000の機能ブロック図である。
図1に示すように、超音波診断システム1000は、被検体に向けて超音波を送信しその反射波を受信する複数の振動子101aを有するプローブ101、プローブ101に超音波の送受信を行わせプローブ101からの出力信号に基づき超音波画像を生成する超音波診断装置100、超音波画像を画面上に表示する表示部108を有する。プローブ101、表示部108は、それぞれ、超音波診断装置100に各々接続可能に構成されている。
図1は超音波診断装置100に、プローブ101、表示部108が接続された状態を示している。なお、プローブ101と、表示部108とは、超音波診断装置100の内部にあってもよい。
【0013】
<超音波診断装置100の構成>
超音波診断装置100は、プローブ101の複数ある振動子101aのうち、送信又は受信の際に用いる振動子を各々に選択し、選択された振動子に対する入出力を確保するマルチプレクサ部102、超音波の送信を行うためにプローブ101の各振動子101aに対する高電圧印加のタイミングを制御する送信ビームフォーマ部103と、プローブ101で受信した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号を増幅し、A/D変換し、受信ビームフォーミングして音響線信号を生成する受信ビームフォーマ部104を有する。また、受信ビームフォーマ部104からの出力信号を周波数解析しカラーフロー情報を生成するCモード画像処理部105、受信ビームフォーマ部104からの出力信号に基づいてBモード画像(断層画像)に対応するフレームB信号を生成するBモード画像処理部106、フレームB信号をBモード画像に変換しカラーフロー情報を重畳してカラードプラ画像を生成、表示部108に表示させる画像生成部107、受信ビームフォーマ部104が出力する音響線信号、Cモード画像処理部105が出力するフレームCFM信号、及びBモード画像処理部106が出力するフレームB信号を保存するデータ格納部109と、各構成要素を制御する制御部110を備える。
【0014】
このうち、マルチプレクサ部102、送信ビームフォーマ部103、受信ビームフォーマ部104、Cモード画像処理部105、Bモード画像処理部106、画像生成部107は、超音波信号処理装置150を構成する。
【0015】
超音波診断装置100を構成する各要素、例えば、マルチプレクサ部102、送信ビームフォーマ部103、受信ビームフォーマ部104、Cモード画像処理部105、Bモード画像処理部106、画像生成部107、制御部110は、それぞれ、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路により実現される。
【0016】
データ格納部109は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、MO、光学メディア、半導体メモリ等を用いることができる。また、データ格納部109は、超音波診断装置100に外部から接続された記憶装置であってもよい。
【0017】
なお、本実施の形態に係る超音波診断装置100は、
図1で示した構成の超音波診断装置に限定されない。例えば、マルチプレクサ部102がなく、送信ビームフォーマ部103と受信ビームフォーマ部104とが直接、プローブ101の各振動子101aに接続されていてもよい。また、プローブ101に送信ビームフォーマ部103や受信ビームフォーマ部104、またその一部などが内蔵される構成であってもよい。これは、本実施の形態に係る超音波診断装置100に限られず、後に説明する他の実施の形態や変形例に係る超音波診断装置でも同様である。
【0018】
<各構成要素の説明>
1.送信ビームフォーマ部103
送信ビームフォーマ部103は、マルチプレクサ部102を介してプローブ101と接続され、プローブ101から超音波の送信を行うためにプローブ101に存する複数の振動子101aの全てもしくは一部に当たる送信振動子列からなる送信開口Txに含まれる複数の振動子の各々に対する高電圧印加のタイミングを制御する。送信ビームフォーマ部103は送信部1031から構成される。
【0019】
送信部1031は、制御部110からの送信制御信号に基づき、プローブ101に存する複数の振動子101a中、送信開口Txに含まれる各振動子に超音波ビームを送信させるためのパルス状の送信信号を供給する送信処理を行う。具体的には、送信部1031は、例えば、クロック発生回路、パルス発生回路、遅延回路を備えている。クロック発生回路は、超音波ビームの送信タイミングを決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路は、各振動子を駆動するパルス信号を発生させるための回路である。遅延回路は、超音波ビームの送信タイミングを振動子毎に遅延時間を設定し、遅延時間だけ超音波ビームの送信を遅延させて超音波ビームのフォーカスを行うための回路である。
【0020】
送信部1031は、Bモード画像の生成のための超音波送信(以下、「Bモード送信」と呼ぶ)と、Cモード画像の生成のための超音波送信(以下、「Cモード送信」と呼ぶ)とを時分割で行う。
図2(a)は、Bモード送信およびCモード送信における超音波送受信の対象領域の概略を示した図である。
図2(a)に示すB-ROIは、Bモード画像の生成対象である関心領域(ROI;Region of Interest)であり、C-ROIは、Cモード画像の生成対象である関心領域である。なお、ここではC-ROIはB-ROIに含まれるものとしたが、B-ROIとC-ROIの位置関係はこれに限られない。超音波診断装置100は、B-ROIについて、走査線B1~B16を設定し、各走査線上で超音波の送受信を行う。同様に、C-ROIについても、走査線C1~C12を設定し、各走査線上で超音波の送受信を行う。なお、B-ROI内の走査線、C-ROI内の走査線はそれぞれ例示であって、数、向き、間隔は任意に設定してよい。
【0021】
送信部1031は、Bモード送信において、走査線上またはその近傍において所定の深さ(フォーカス深さ)に設ける送信フォーカス点F(Focal Point)でフォーカスが合う(集束する)状態の検出波を送信する。より具体的には、送信フォーカス点Fに近い振動子ほど送信タイミングを遅らせるように各振動子の送信タイミングを制御する。フォーカス点Fの位置は、走査線の位置とフォーカス深さとによって相対的に定まる。同様に、送信部1031は、Cモード送信において、走査線上またはその近傍において所定の深さ(フォーカス深さ)に設ける送信フォーカス点F(Focal Point)でフォーカスが合う(集束する)状態の検出波を送信する。なお、Bモード送信におけるフォーカス深さとCモード送信におけるフォーカス深さは同一であってもよいし、それぞれ、B-ROIの中心位置の深さ、C-ROIの中心位置の深さ、としてもよい。なお、送信フォーカス点Fと走査線との相対位置関係は上述の例に限られず、任意に設定してよい。
【0022】
以下、Bモード送信とCモード送信の順序について詳細に説明する。送信部は、M回(Mは自然数)の連続するBモード送信と、N回(Nは自然数)の連続するCモード送信とを交互に行う。以下、M回の連続するBモード送信をBモード送信イベントと呼び、N回(Nは自然数)の連続するCモード送信をCモード送信イベントと呼び、両者を区別しないときは送信イベントと呼ぶ。
図3は、送信順序と走査線の位置との関係を示すタイムチャートである。
図3の横軸は走査線の位置を示し、縦軸は時間を示す。送信部1031は、走査線B1、B2、B3、B4の順に、Bモード送信を4回行う。すなわち、本例では、M=4である。次に、走査線C1、C2、C3、C4の順に、Cモード送信を4回行う。すなわち、本例では、N=4である。なお、M、Nの具体値は上述の例に限られないし、MとNは異なってもよい。次に、走査線B5、B6、B7、B8の順に、Bモード送信を4回行う。次に、走査線C5、C6、C7、C8の順に、Cモード送信を4回行う。次に、走査線B9、B10、B11、B12の順に、Bモード送信を4回行う。次に、走査線C9、C10、C11、C12の順に、Cモード送信を4回行う。これにより、Cモード送信については一巡した状態、すなわち、1フレーム分の送信を完了した状態となる。次に、走査線B13、B14、B15、B16の順に、Bモード送信を4回行う。これにより、Bモード送信については一巡した状態、すなわち、1フレーム分の送信を完了した状態となる。次に、Cモード送信について最初から、すなわち、走査線C1、C2、C3、C4の順に、Cモード送信を4回行う。この例によれば、Bモード送信については、送信32回分の時間がパルス繰り返し時間となり、Cモード送信については、送信24回分の時間がパルス繰り返し時間となる。
【0023】
2.受信ビームフォーマ部104の構成
受信ビームフォーマ部104は、プローブ101で受波した超音波の反射波に基づき、複数の振動子101aで得られた電気信号から音響線信号を生成する。なお、「音響線信号」とは、ある観測点に対する、整相加算処理がされた後の信号である。整相加算処理については後述する。
図4は、受信ビームフォーマ部104の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、受信ビームフォーマ部104は、受信部1040、整相加算部1041を備える。
【0024】
以下、受信ビームフォーマ部104を構成する各部の構成について説明する。
【0025】
(1)受信部1040
受信部1040は、マルチプレクサ部102を介してプローブ101と接続され、Bモード送信またはCモード送信に同期してプローブ101での超音波反射波の受波から得た電気信号を増幅した後AD変換した受信信号(RF信号)を生成する回路である。Bモード送信またはCモード送信に同期して受信信号を生成しデータ格納部109に出力し、データ格納部109に受信信号を保存する。
【0026】
ここで、受信信号(RF信号)とは、各振動子にて受波された反射超音波から変換された電気信号を増幅してA/D変換したデジタル信号であり、各振動子にて受波された超音波の送信方向(被検体の深さ方向)に連なった信号の列を形成している。
【0027】
Bモード送信またはCモード送信では、上述のとおり、送信部1031は、プローブ101から被検体内に設定された走査線上またはその近傍に超音波が集束するように超音波ビームを送信させる。これに対し、受信部1040は、Bモード送信またはCモード送信に同期してプローブ101に存する複数の振動子101aの一部又は全部にあたる振動子の各々が得た反射超音波に基づいて、各振動子に対する受波信号の列を生成する。ここで、反射超音波を受波する振動子を「受波振動子」と称呼する。
【0028】
受信部1040は、Bモード送信またはCモード送信に同期して各受波振動子に対する受信信号の列を生成し、生成された受信信号はデータ格納部109に保存される。
【0029】
(2)整相加算部1041
整相加算部1041は、Bモード送信またはCモード送信に同期して、被検体内において音響線信号の生成を行う。具体的には、走査線Bx(x=1~16)または走査線Cy(y=1~12)上に複数の観測点を設ける。そして、観測点のそれぞれについて、観測点から各受波振動子に到達した受信信号を同定して加算する(整相加算)。これにより、観測点ごとに、受信信号である音響線信号が生成される。
【0030】
整相加算部1041は、Bモード送信またはCモード送信に同期して走査線に対応する音響線信号を生成し、生成された音響線信号はデータ格納部109に保存される。なお、音響線信号は、Bモード送信に対応して得られた受信信号に基づくBモード音響線信号と、Cモード送信に対応して得られた受信信号に基づくCモード音響線信号とを含む。
【0031】
3.Cモード画像処理部105の構成
Cモード画像処理部105は、複数のCモード送信に対応して得た複数のCモード音響線信号に基づき、周波数解析を行って、CFM信号を生成する。なお、「CFM信号」とは、ある観測点に対する、速度情報を示す信号である。速度情報については後述する。
図5は、Cモード画像処理部105、Bモード画像処理部106、画像生成部107の構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、Cモード画像処理部105は、直交検波部1051、フィルタ部1052、速度算出部1053を備える。
【0032】
以下、Cモード画像処理部105を構成する各部の構成について説明する。
【0033】
(1)直交検波部1051
直交検波部1051は、Cモード音響線信号のそれぞれに対して直交検波を行い、各観測点における受信信号の位相を示す複素音響線信号を生成する回路である。具体的には以下の処理が行われる。まず、基準周波数を有する第1参照信号と、第1参照信号に対して位相が90°異なる第2参照信号を生成する。基準周波数は、例えば、検出波と同一の周波数である。次に、音響線信号と第1参照信号を積算し、LPFにより基準周波数の約2倍の周波数を有する高周波成分を取り除き、第1成分とする。同様に、音響線信号と第2参照信号を積算し、LPFにより基準周波数の約2倍の周波数を有する高周波成分を取り除いて第2成分とする。最後に、第1成分を実部(I成分;In Phase)、第2成分を虚部(Q成分;Quadrature Phase)として、複素音響線信号を生成する。
【0034】
(2)フィルタ部1052
フィルタ部1052は、複素音響線信号からクラッタを取り除くフィルタ回路である。クラッタとは、組織の動きのうち、画像化の対象としない成分のことであり、具体的には、血管壁、筋肉、臓器などの組織の動きを示す情報である。クラッタは血流を示す信号よりパワーが大きいが、組織の動きは血流に比べて遅いため、血流を示す信号より周波数が低い。そのため、クラッタのみを選択的に取り除くことが可能である。フィルタ部1052は、既知のいわゆる「ウォールフィルタ」、「MTI(Moving Target Indicator)フィルタ」を適用することができる。
【0035】
フィルタ部1052は、フィルタ後の複素音響線信号を複素音響線パケットとして、データ格納部109に格納する。
【0036】
(3)速度算出部1053
速度算出部1053は、フィルタ処理された後の複素音響線信号から、各観測点に対応する被検体内の動き、具体的には血流を推定する回路である。速度算出部1053は、各観測点について、複数のCモード送信に対応する各複素音響線信号から位相を推定し、位相の変化速度を算出する。具体的には、複数のCモード送信に対応する複素音響線信号を観測点ごとに複素音響線パケットとして読み出し、複素音響線信号の位相の変化速度を推定する。位相の変化速度の推定方法としては、それぞれの複素音響線信号の位相を特定して時間当たりの位相変化量を算出してもよいし、複数の複素音響線信号間で相関処理を行って時間当たりの位相変化量を算出してもよい。速度算出部は、算出した観測点ごとの速度を、速度情報としてデータ格納部109に格納する。
【0037】
4.Bモード画像処理部106の構成
Bモード画像処理部106は、Bモード送信に対応して得られた音響線信号の値に対して包絡線検波を行い、対数圧縮を行うことで、B信号を生成する。そして、複数のBモード送信に対応して得られた音響線信号から生成されたB信号を合成し、1フレームの合成されたB信号であるフレームB信号を生成する。Bモード画像処理部106は、フレームB信号を画像生成部107とデータ格納部109に出力する。
【0038】
5.画像生成部107の構成
画像生成部107は、Bモード画像処理部106が生成したフレームB信号をBモード画像に変換し、Cモード画像処理部105が生成した速度情報を色調変換して重畳することでカラードプラ画像を生成するための回路である。
図5に示すように、画像生成部107は、Cモード画像生成部1071、Bモード画像生成部1072、画像合成部1073を備える。
【0039】
(1)Cモード画像生成部1071
Cモード画像生成部1071は、速度情報からカラードプラ画像を生成するためのカラーマッピングを行う回路である。具体的には、まず、速度情報の座標系を直交座標系に変換する。次に、各観測点の速度を色情報に変換してカラーフロー情報を生成する。このとき、例えば、(1)プローブに向かう向きは赤色、プローブから遠ざかる向きは青色、(2)速度の絶対値が大きいほど彩度が高く、絶対値が小さいほど彩度が低い、のように変換を行う。より具体的には、プローブに向かう速度成分については速度の絶対値を赤色の輝度値に変換し、プローブから遠ざかる速度成分については速度の絶対値を青色の輝度値に変換する。
【0040】
なお、Cモード画像生成部1071は、Cモード画像処理部105から速度の分散を示す信号をさらに受信し、分散の値を緑の輝度値に変換してもよい。このようにすることで、乱流の発生位置を示すことができる。
【0041】
Cモード画像生成部1071は、生成したカラードプラ画像を画像合成部1073に出力する。
【0042】
(2)Bモード画像生成部1072
Bモード画像生成部1072は、フレームB信号からBモード画像を生成する回路である。具体的には、まず、フレームB信号の座標系を直交座標系に変換する。次に、各観測点のB信号の値を輝度値に変換してBモード画像を生成する。Bモード画像生成部1072は、生成したBモード画像を画像合成部1073に出力する。
【0043】
(3)画像合成部1073
画像合成部1073は、Bモード画像生成部1072が生成したBモード画像に、Cモード画像生成部1071が生成したCモード画像を重畳してカラードプラ画像を生成し、表示部108に出力する回路である。これにより、Bモード画像上に血流の向きと速さ(速度の絶対値)を追加したカラードプラ画像が表示部108に表示される。
【0044】
画像合成部1073は、Bモード画像またはCモード画像のいずれかにおいて新たなフレームが生成されたときに、カラードプラ画像のフレームを生成するとしてもよい。
図2(b)は、フレーム合成の一例について説明する模式図である。画像合成部1073は、Bモード画像フレームBF
1およびCモード画像フレームCF
1が生成されたとき、Bモード画像フレームBF
1上にCモード画像フレームCF
1を重畳してカラードプラ画像フレームF
1を合成する。次に、Cモード画像フレームCF
2が生成されたとき、Bモード画像はフレームBF
1がまだ最新であるため、Bモード画像フレームBF
1上にCモード画像フレームCF
2を重畳してカラードプラ画像フレームF2を合成する。次に、Bモード画像フレームBF
2が生成されたとき、Cモード画像はフレームCF
2が最新であるため、Bモード画像フレームBF
2上にCモード画像フレームCF
2を重畳してカラードプラ画像フレームF
3を合成する。次に、Cモード画像フレームCF
3が生成されたとき、Bモード画像はフレームBF
2が最新であるため、Bモード画像フレームBF
2上にCモード画像フレームCF
3を重畳してカラードプラ画像フレームF
4を合成する。次に、Bモード画像フレームBF
3およびCモード画像フレームCF
4が生成されたとき、Bモード画像フレームBF
3上にCモード画像フレームCF
4を重畳してカラードプラ画像フレームF
5を合成する。次に、Cモード画像フレームCF
5が生成されたとき、Bモード画像はフレームBF
3がまだ最新であるため、Bモード画像フレームBF
3上にCモード画像フレームCF
5を重畳してカラードプラ画像フレームF
6を合成する。次に、Bモード画像フレームBF
4が生成されたとき、Cモード画像はフレームCF
5が最新であるため、Bモード画像フレームBF
4上にCモード画像フレームCF
5を重畳してカラードプラ画像フレームF
7を合成する。次に、Cモード画像フレームCF
6が生成されたとき、Bモード画像はフレームBF
4が最新であるため、Bモード画像フレームBF
4上にCモード画像フレームCF
6を重畳してカラードプラ画像フレームF
8を合成する。以下同様に、画像合成部1073は、Bモード画像またはCモード画像のいずれかにおいて新たなフレームが生成されたときに、その時点における最新のBモード画像フレーム上に最新のCモード画像フレームを重畳することでカラードプラ画像フレームを生成する。
【0045】
なお、Cモード画像のフレームレートがBモード画像のフレームレートより十分高い場合には、画像合成部1073は、Cモード画像の新たなフレームが生成されたときに、カラードプラ画像のフレームを生成するとしてもよい。
【0046】
<動作>
以上の構成からなる超音波診断装置100の動作について説明する。
【0047】
図6は、超音波診断装置100の動作を示すフローチャートである。
【0048】
まず、ステップS100において、B-ROI内の全ての走査線に対して超音波の送信と音響線信号の生成を行う。これにより、Bモード画像の最初のフレームが生成される。このとき、超音波診断装置100は、表示部108に生成したBモード画像を表示してもよい。
【0049】
次に、Bモードの走査線カウンタiを1に、Cモードの走査線カウンタjを0に、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS201)。
【0050】
そして、i番目の走査線に対し、Bモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS202)。ここでは、走査線B1についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0051】
次に、iの値が、Bモードの走査線の数imax未満である否かを判定する(ステップS203)。ここでは、i=1でありimax=16であるから、iがimax未満である(Yes)と判定し、ステップS207に進む。なお、ステップS204~S206については後述する。
【0052】
次に、cの値が、Bモード送信の連続回数M未満であるか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、c=1でありM=4であるから、cがM未満である(Yes)と判定し、ステップS208に進む。ステップS208では、iとcをインクリメントし、ステップS202に戻る。これにより、i=2、c=2について、S202の処理が行われる。すなわち、走査線B2についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。
【0053】
次のステップS203、S207については、いずれもYesであるから、ステップS208により、iとcをインクリメントし、ステップS202に戻る。これにより、i=2、c=2について、S202の処理が行われる。すなわち、走査線B3についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。
【0054】
次のステップS203、S207については、いずれもYesであるから、ステップS208により、iとcをインクリメントし、ステップS202に戻る。これにより、i=3、c=3について、S202の処理が行われる。すなわち、走査線B4についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。
【0055】
次のステップS203ではYesであるから、ステップS207に進む。一方、ステップS207については、c=4でありM=4であるから、cはM未満ではない(No)と判定し、ステップS301に進む。これによって、Bモード送信4回からなるBモード送信イベントが行われた後、Cモード送信イベントに処理が進む。
【0056】
次に、Cモードの走査線カウンタjをインクリメントし、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS301)。
【0057】
そして、j番目の走査線に対し、Cモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS302)。ここでは、走査線C1についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0058】
次に、jの値が、Cモードの走査線の数jmax未満である否かを判定する(ステップS303)。ここでは、j=1でありjmax=12であるから、jがjmax未満である(Yes)と判定し、ステップS307に進む。なお、ステップS304~S306については後述する。
【0059】
次に、cの値が、Cモード送信の連続回数N未満であるか否かを判定する(ステップS307)。ここでは、c=1でありN=4であるから、cがN未満である(Yes)と判定し、ステップS308に進む。ステップS308では、jとcをインクリメントし、ステップS302に戻る。これにより、走査線C2についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。そして、上述したBモードの処理と同様、走査線C3、C4についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。走査線C4についてのステップS202の直後のステップS307については、c=4でありN=4であるから、cはM未満ではない(No)と判定し、ステップS309に進む。これによって、Cモード送信4回からなるCモード送信イベントが行われた後、Bモード送信イベントに処理が進む。
【0060】
ステップS309では、Bモードの走査線カウンタiをインクリメントし、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS309)。これにより、Bモード送信について、前回のBモード送信イベントの続きである、走査線B5についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。そして、同様に、走査線B6、B7、B8についてBモード送信と音響線信号の生成がなされた後、Cモード送信について、前回のCモード送信イベントの続きである、走査線C5についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0061】
以下、同様に、走査線C6、C7、C8について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる。そして、走査線B9、B10、B11、B12について、Bモード送信と音響線信号の生成がなされた後、走査線C9、C10、C11について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0062】
音響線C11について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされた後、音響線C12について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS304)。その直後のステップS303において、j=12、jmax=12であるから、jがjmax未満でない(No)と判定し、ステップS304に進む。
【0063】
ステップS304では、Cモード画像を生成し、出力画像を生成する。具体的には、取得した最新のCモード送信に係る1フレーム分の音響線と、1フレーム以上前の1または複数のフレームの音響線との比較により速度情報を算出し、Cモード画像を生成する。そして、最新のCモード画像をBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0064】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS305)、指示がない場合はCモード走査線カウンタjを0にリセットして(ステップS306)、ステップS307に進む。ステップS307では、c=4、N=4でcはN未満ではない(No)と判定し、ステップS309に進む。これによって、Bモード送信イベントに処理が進む。
【0065】
次に行われるBモード送信イベントでは、走査線B13、B14、B15について、Bモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0066】
音響線B15について、Bモード送信と音響線信号の生成がなされた後、音響線B16について、Bモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS204)。その直後のステップS203において、i=16、imax=16であるから、iがimax未満でない(No)と判定し、ステップS204に進む。
【0067】
ステップS204では、Bモード画像を生成し、出力画像を生成する。具体的には、取得した最新のBモード送信に係る1フレーム分の音響線から、Bモード画像を生成する。そして、Cモード画像を最新のBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0068】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS205)、指示がない場合はBモード走査線カウンタiを0にリセットして(ステップS206)、ステップS207に進む。ステップS207では、c=4、M=4でcはM未満ではない(No)と判定し、ステップS209に進む。これによって、Cモード送信イベントに処理が進む。
【0069】
<小括>
以上、説明したように本実施の形態に係る超音波診断装置100によれば、Bモード画像の生成に係るBモード送信および受信処理と、Cモード画像の生成に係るCモード送信および受信処理とが時分割で行われる。これにより、Bモード画像のフレームレートとCモード画像のフレームレートをそれぞれ一定に保持し、かつ、任意のバランスで行うことができる。したがって、Bモード画像のフレームレートを犠牲にしつつCモード画像のフレームレートを向上させることが可能な一方、Bモード画像の最低限のフレームレートを確保することも可能である。
【0070】
また、超音波診断装置100では、時分割によりBモード送信とCモード送信とを交互に行う前に、先行して1フレーム分のBモード送信及び受信処理を行う。これにより、Cモード画像のフレームレートに対してBモード画像のフレームレートが低い場合においても、Cモード画像を先行して取得した音響線信号に基づくBモード画像上に重畳して表示することができる。したがって、Bモード画像のフレームレートが低い場合においても、Bモード画像が表示されない状況を回避することができる。
【0071】
≪変形例1≫
実施の形態1に係る超音波診断装置100では、
図2の概略図、
図3のタイムチャートに示したように、B-ROIの走査線数16、C-ROIの走査線数12に対し、Bモード送信の連続回数MとCモード送信の連続回数Nをそれぞれ4、4とした。しかしながら、Bモード送信の連続回数MとCモード送信の連続回数Nは任意の値であってよい。また、1回のBモード送信または1回のCモード送信に対し、複数の走査線について音響線を取得するとしてもよい。
【0072】
変形例1では、Cモード送信の連続回数Nを、Cモード画像の1フレーム分の送信回数とする。すなわち、1回のCモード送信イベントにより、全てのCモード走査線について音響線を取得するようにNを決定する。1回のCモード送信によりnc本の走査線について音響線を取得するとした場合、N=jmax/ncとして表すことができる。また、C-ROIの素子列方向の幅をWc、走査線の素子列方向の密度をdcとしたとき、Nは以下のように表すことができる。
N=Wc×dc/nc 但し、Nが整数でない場合は整数に切り上げ
次に、Bモード送信の連続回数Mを、上記Nに対し、第1の所定の比率以下となるように設定する。第1の所定の比率をR1としたとき、Mは以下の条件を満たす。
M≦N×R1
ここで、Cモード画像のフレームレートが基準レベル以上となるようにし、血流描出における追従性能を向上させるためには、第1の所定の比率R1は1未満であることが好ましい。
【0073】
≪変形例2≫
変形例2では、超音波の繰り返し送信周波数(PRF;Pulse Repeat Frequency)が所定の基準を満たすようにMとNを決定する。
【0074】
超音波の繰り返し送信周波数PRFをFc[Hz]、流速スケールをs[cm/s]、超音波の周波数をf[MHz]、被検体内の超音波の速度をv[m/s]としたとき、以下の関係を満たす。
Fc=4×104×s×f/v
実施の形態1のシーケンスでは、全ての走査線に対して1回ずつ音響線を作成して1フレームとするため、1つの走査線に対する超音波の繰り返し周波数PRFは、Cモード画像のフレームレートと一致する。連続するBモード送信の送信間隔時間をTIB、連続するCモード送信の送信間隔時間をTICとすると、Cモード画像のフレームレートFRCは以
下のように表される。
FRC=1/(M×TIB+N×TIC)
ここで、Fc=FRcであるから、流速スケールsが所望の条件を満たすように、Mを設
定することができる。
【0075】
また、MがNに対し、第2の所定の比率以上となるように設定する。第2の所定の比率をR2としたとき、Mは以下の条件を満たす。
M≧N×R2
ここで、Mが上記関係を満たす場合は、Mが低すぎない、すなわち、Bモード画像のフレームレートが過少でないということができる。
【0076】
≪実施の形態2≫
実施の形態1では、Bモード画像、Cモード画像について、それぞれ1フレーム分の超音波送信並びに受信処理が完了するたびにカラードプラ画像を更新するとした。しかしながら、Cモード画像のフレームレートとBモード画像のフレームレートの差が大きい場合、Bモード画像とCモード画像の取得時刻の時差が生じやすくなり、Bモード画像のフレームレートの低さが目立つこととなる。
【0077】
実施の形態2では、Bモード画像の表示に係る処理を変更することにより、Bモード画像の見かけ上のフレームレートを向上する。
【0078】
<構成>
実施の形態2では、機能ブロックの構成は実施の形態1と同様であるが、Bモード画像処理部106、Bモード画像生成部1072について、処理の単位とタイミングが異なる。
【0079】
実施の形態1では、Bモード画像処理部106は1フレームの合成された音響線信号であるフレームB信号を生成するとしたが、実施の形態2においては、Bモード送信イベントに対応して得られた音響線信号の単位でサブフレームB信号を生成する。また、Bモード画像生成部1072は、生成したBモード画像を保持し、Bモード画像処理部106からサブフレームB信号を受け取ると、部分Bモード画像を生成して保持しているBモード画像に重畳することで、サブフレームB信号に対応する部分のみBモード画像を更新する。これにより、Bモード画像全体としてのフレームレートは向上しないものの、Bモード送信からBモード画像更新までのタイムラグを削減した構成とする。
【0080】
<動作>
図8は、実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下、B-ROIの走査線数i
max=16、Bモード送信における1送信における走査線数n
i=2、連続送信回数M=2、C-ROIの走査線数j
max=12、Cモード送信における1送信における走査線数n
j=2、連続送信回数N=6とする。すなわち、Cモード送信については、連続N回の送信により1フレーム分のデータを取得するのに対し、Bモード送信については、連続M回の送信により1/4フレーム分のデータを取得するものとする。
【0081】
まず、ステップS100において、B-ROI内の全ての走査線に対して超音波の送信と音響線信号の生成を行う。これにより、Bモード画像の最初のフレームが生成される。
【0082】
次に、Bモードの走査線カウンタiを1に、Cモードの走査線カウンタjを1-njに、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS211)。
【0083】
そして、i~(i+ni-1)番目の走査線に対し、Bモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS212)。ここでは、走査線B1、B2についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0084】
次に、i+niの値が、Bモードの走査線の数imax以下である否かを判定する(ステップS213)。ここでは、i=1、ni=2でありimax=16であるから、i+niの値がimax以下である(Yes)と判定し、ステップS207に進む。なお、ステップS213でNoであるときは、iからimaxを減算して次ループに進む(ステップS216)。
【0085】
次に、cの値が、Bモード送信の連続回数M未満であるか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、c=1でありM=2であるから、cがM未満である(Yes)と判定し、ステップS218に進む。ステップS218では、iをniだけ、cを1だけインクリメントし、ステップS202に戻る。これにより、i=3、c=2について、S202の処理が行われる。
【0086】
そして、i~(i+ni-1)番目の走査線に対し、Bモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS212)。ここでは、走査線B3、B4についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0087】
次に、i+niの値が、Bモードの走査線の数imax以下である否かを判定する(ステップS213)。ここでは、i=3、ni=2でありimax=16であるから、i+niの値がimax以下である(Yes)と判定し、ステップS207に進む。
【0088】
次に、cの値が、Bモード送信の連続回数M未満であるか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、c=2でありM=2であるから、cがM未満でない(No)と判定し、ステップS221に進む。
【0089】
ステップS221では、部分Bモード画像を生成し、出力画像を生成する。具体的には、Bモード送信イベントに対応して得たサブフレームB信号、すなわち、走査線B1、B2、B3、B4に対応するサブフレームB信号から、部分Bモード画像を生成する。ここでは、走査線B1~B4に対応する領域は透明度0%(不透明)、それ以外の走査線B5~B16に対応する領域は透明度100%(完全透明)のBモード画像を生成し、直前に生成したBモード画像に重畳する。これにより、走査線B1~B4に対応する領域のみが更新されたBモード画像が生成される。Cモード画像を最新のBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0090】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS205)、指示がない場合はステップS301に進む。これによって、Cモード送信に処理が進む。
【0091】
次に、Cモードの走査線カウンタjをインクリメントし、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS301)。
【0092】
そして、j~(j+nj-1)番目の走査線に対し、Cモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS312)。ここでは、走査線C1、C2についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0093】
次に、j+njの値が、Cモードの走査線の数jmax以下である否かを判定する(ステップS313)。ここでは、j=1、nj=2でありjmax=12であるから、j+njの値がjmax以下である(Yes)と判定し、ステップS307に進む。
【0094】
次に、cの値が、Cモード送信の連続回数N未満であるか否かを判定する(ステップS307)。ここでは、c=1でありN=6であるから、cがN未満である(Yes)と判定し、ステップS318に進む。ステップS318では、jをnjだけ、cを1だけインクリメントし、ステップS302に戻る。そして、2回目のCモード送信では走査線C3、C4についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。同様に、3回目のCモード送信では走査線C5、C6について、4回目のCモード送信では走査線C7、C8について、5回目のCモード送信では走査線C9、C10について、6回目のCモード送信では走査線C11、C12について、それぞれ、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS312)。6回目のCモード送信では、ステップS313において、j=11、nj=2でありjmax=12であるから、j+njの値がjmax以下でない(No)と判定し、ステップS304に進む。
【0095】
ステップS304では、Cモード画像を生成し、出力画像を生成する。具体的には、1フレーム分のCモード送信に対応して得たフレームCFM信号から、Cモード画像を生成する。そして、最新のCモード画像をBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0096】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS305)、指示がない場合はCモード走査線カウンタjからjmaxを減算して(ステップS316)、ステップS307に進む。ステップS307では、c=6、N=6でcはN未満ではない(No)と判定し、ステップS319に進む。これによって、Bモード送信イベントに処理が進む。
【0097】
<小括>
以上、説明したように本実施の形態に係る超音波診断装置100によれば、Bモード画像についてM回の連続したBモード送信が完了するたびに部分的に更新される。具体的には、実施の形態1では、
図7(a)の模式図のように、Bモード画像のフレームレートとCモード画像のフレームレートが1:4である場合にCモード画像が4フレーム更新されるまでBモード画像が更新されないところ、本実施の形態では、
図7(b)の模式図のように、Cモード画像と同時に部分的にでもBモード画像が更新される。したがって、Bモード画像のフレームレートが低い場合であっても、Bモード画像が部分的に更新されるため、Bモード送信とBモード画像の表示のタイムラグを小さくすることができ、ユーザビリティを向上させることができる。
【0098】
≪変形例3≫
変形例3では、Cモード送信の連続回数Nを、Cモード送信イベントの所要時間が所定の基準以下となるように決定する。実施の形態2では、Cモード送信イベントとCモード送信イベントとの間にBモード送信イベントとそれによるBモード画像の部分的更新が行われる。つまり、Bモード送信イベントとそれによるBモード画像の部分的更新と、次のBモード送信イベントとそれによるBモード画像の部分的更新との間に、Cモード送信イベントが行われる。したがって、Cモード送信イベントの所要時間が長すぎると、Bモード画像の部分的更新と、次のBモード画像の部分的更新とのタイムラグが大きくなるため継ぎ目が顕在化しやすくなりBモード画像の画質が低下する。そこで、Cモード送信イベントの所要時間の上限値を所定の基準値ΔTとし、Cモード送信イベント内で連続するCモード送信の送信間隔時間をTICとすると、Nを以下のように定める。
N=[ΔT/TIC] 但し、[x]はxを超えない最大の整数
次に、Bモード送信の連続回数Mを、Bモード送信イベントの所要時間が、Cモード送信イベントの所要時間に対し、第3の所定の比率以下となるように設定する。Bモード送信イベントの所要時間、Cモード送信イベントの所要時間のそれぞれをTTB、TTCとすると、Bモード送信の送信間隔時間をTIBとCモード送信の送信間隔時間をTICとを用いて以下のように示される。
TTB=M×TIB
TTC=N×TIC
ここで、第3の所定の比率をR3としたとき、以下の式が成立する。
TTB≦TTC×R3
したがって、上式に前2式を代入すると、以下の関係が成立する。
M≦N×(TIC/TIB)×R3
≪変形例4≫
変形例4では、超音波の繰り返し送信周波数(PRF;Pulse Repeat Frequency)が所定の基準を満たすようにMとNを決定する。
【0099】
Nは変形例3と同様に決定される。
【0100】
実施の形態2のシーケンスでは、全ての走査線に対して1回ずつ音響線を作成して1フレームとするため、1つの走査線に対する超音波の繰り返し周波数PRFは、Cモード画像のフレームレートFRCと一致する。C-ROIの素子列方向の幅をWc、走査線の素子列方向の密度をdc、1回のCモード送信により音響線を取得する走査線の数をncとしたとき、1フレーム当たりのCモード送信回数Txcは、以下のように示される。
Txc=Wc×dc/nc 但し、Fcが整数でない場合は整数に切り上げ
したがって、1フレーム当たりのCモード送信イベントの実施回数Bcは、以下のように示される。
Bc=Txc/N 但し、Bcが整数でない場合は整数に切り上げ
したがって、Cモード画像のフレームレートFRCは、以下のように示される。
FRC=1/{(TTB+TTC)×Bc}
=1/{(M×TIB+N×TIC)×Bc}
したがって、FRC=PRFを上式に代入し、Mについて解くと、設定目標となるBモード送信の連続回数Mが得られる。
【0101】
また、Bモード送信イベントの所要時間が、Cモード送信イベントの所要時間に対し、第4の所定の比率以上となるように設定する。すなわち、第4の所定の比率をR4としたとき、以下の式が成立するか否かを判定する。
TTB≧TTC×R4
ここで、Mが上記関係を満たす場合は、Mが低すぎない、すなわち、Bモード画像のフレームレートが過少でないということができる。
【0102】
≪実施の形態3≫
実施の形態1および2では、Cモード画像について、全てのCモード送信について同一本数の走査線に対して音響線の生成を行い、1回のCモード送信イベントにおいて必ずN回のCモード送信を連続して行うとした。しかしながら、C-ROI全体の走査線数が、1回のCモード送信イベントによって走査される走査線数の整数倍でない場合、超音波の繰り返し送信周波数(PRF)が一定でない課題が発生する。
【0103】
図9は、C-ROI全体の走査線数が、1回のCモード送信イベントによって走査される走査線数の整数倍でない場合のタイムチャートである。この例では、1回のCモード送信イベントによって走査される走査線数が4本であるのに対し、C-ROI全体の走査線数が10本である。したがって、
図9に示すように、3度目のCモード送信イベントでは、Cモード画像の第1フレームと第2フレームにまたがって送信がなされる。また、第1フレームと第2フレームとでは、Cモード送信イベントと次のCモード送信イベントの区切りとなる走査線の位置が異なる。したがって、このような場合、1つの走査線に対してあるCモード送信と次のCモード送信との間に挿入されるBモード送信の回数が走査線の空間的位置や何番目のフレームかに依存して変化するため、空間的にも時間的にも、超音波の繰り返し送信周波数(PRF)が一定ではない。例えば、走査線C1では、間に2回のBモード送信イベントが挿入されるのに対し、走査線C3では、間に3回のBモード送信イベントが挿入される。Cモード画像の生成において速度検出の処理や精度がPRFに依存しているため、PRFが一定でないと、演算処理が複雑になる上、Cモード画像内で走査線位置に依存して精度が異なるため、Cモード画像の品質低下の要因にもなる。
【0104】
実施の形態3では、Cモード画像においてPRFを一定とし、Cモード画像の品質を一定上に保つ動作とする。
【0105】
<動作>
実施の形態3では、機能ブロックの構成は実施の形態1または2と同様であるが、Cモード送信について、フレーム間処理が異なる。
【0106】
図10は、実施の形態3に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下、B-ROIの走査線数i
max=16、Bモード送信における1送信における走査線数n
i=2、連続送信回数M=2、C-ROIの走査線数j
max=10、Cモード送信における1送信における走査線数n
j=1、連続送信回数N=4とする。すなわち、Cモード画像1フレーム分のデータが、2.5回のCモード送信イベントにより取得可能なものとする。
【0107】
まず、ステップS100において、B-ROI内の全ての走査線に対して超音波の送信と音響線信号の生成を行う。これにより、Bモード画像の最初のフレームが生成される。
【0108】
次に、Bモードの走査線カウンタiを1に、Cモードの走査線カウンタjを1-njに、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS211)。
【0109】
そして、i~(i+ni-1)番目の走査線に対し、Bモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS212)。ここでは、走査線B1、B2についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0110】
次に、i+niの値が、Bモードの走査線の数imax以下である否かを判定する(ステップS213)。ここでは、i=1、ni=2でありimax=16であるから、i+niの値がimax以下である(Yes)と判定し、ステップS207に進む。なお、ステップS213でNoであるときは、iからimaxを減算して次ループに進む(ステップS216)。
【0111】
次に、cの値が、Bモード送信の連続回数M未満であるか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、c=1でありM=2であるから、cがM未満である(Yes)と判定し、ステップS218に進む。ステップS218では、iをniだけ、cを1だけインクリメントし、ステップS202に戻る。これにより、i=3、c=2について、S202の処理が行われる。
【0112】
そして、i~(i+ni-1)番目の走査線に対し、Bモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS212)。ここでは、走査線B3、B4についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0113】
次に、i+niの値が、Bモードの走査線の数imax以下である否かを判定する(ステップS213)。ここでは、i=3、ni=2でありimax=16であるから、i+niの値がimax以下である(Yes)と判定し、ステップS207に進む。
【0114】
次に、cの値が、Bモード送信の連続回数M未満であるか否かを判定する(ステップS207)。ここでは、c=2でありM=2であるから、cがM未満でない(No)と判定し、ステップS221に進む。
【0115】
ステップS221では、部分Bモード画像を生成し、出力画像を生成する。ここでは、走査線B1~B4に対応する領域は透明度0%(不透明)、それ以外の走査線B5~B16に対応する領域は透明度100%(完全透明)のBモード画像を生成し、直前に生成したBモード画像に重畳する。これにより、走査線B1~B4に対応する領域のみが更新されたBモード画像が生成される。Cモード画像を最新のBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0116】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS205)、指示がない場合はステップS301に進む。これによって、Cモード送信に処理が進む。
【0117】
次に、Cモードの走査線カウンタjをインクリメントし、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS301)。
【0118】
そして、j~(j+nj-1)番目の走査線に対し、Cモード送信とそれに続く音響線信号の生成を行う(ステップS312)。ここでは、走査線C1についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0119】
次に、j+njの値が、Cモードの走査線の数jmax以下である否かを判定する(ステップS313)。ここでは、j=1、nj=1でありjmax=10であるから、j+njの値がjmax以下である(Yes)と判定し、ステップS307に進む。
【0120】
次に、cの値が、Cモード送信の連続回数N未満であるか否かを判定する(ステップS307)。ここでは、c=1でありN=4であるから、cがN未満である(Yes)と判定し、ステップS318に進む。ステップS318では、jをnjだけ、cを1だけインクリメントし、ステップS302に戻る。そして、2回目のCモード送信では走査線C2についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。同様に、3回目のCモード送信では走査線C3について、それぞれ、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS312)。4回目のCモード送信では、ステップS313において、j=4、nj=1でありjmax=10であるから、j+njの値がjmax以下である(Yes)と判定し、ステップS307に進む。
【0121】
次に、cの値が、Cモード送信の連続回数N未満であるか否かを判定する(ステップS307)。ここでは、c=4でありN=4であるから、cがN未満でない(No)と判定し、ステップS319に進む。これによって、Cモード送信が4回行われた後、Bモード送信に処理が進む。
【0122】
ステップS319では、Bモードの走査線カウンタiをniだけインクリメントし、連続送信回数カウンタcを1に初期化する(ステップS309)。これにより、Bモード送信について、前回の一連のBモード送信の続きである、走査線B5、B6についてBモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS202)。そして、同様に、走査線B7、B8についてBモード送信と音響線信号の生成がなされた後、Cモード送信について、前回の一連のCモード送信の続きである、走査線C5についてCモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0123】
以下、同様に、走査線C6、C7、C8について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる。そして、走査線B9、B10、B11、B12について、Bモード送信と音響線信号の生成がなされた後、走査線C9について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる。
【0124】
音響線C10について、Cモード送信と音響線信号の生成がなされる(ステップS312)。その直後のステップS313において、j=10、nj=1、jmax=10であるから、j+njの値がjmax以下でない(No)と判定し、ステップS304に進む。
【0125】
ステップS304では、Cモード画像を生成し、出力画像を生成する。具体的には、取得した最新のCモード送信に係る1フレーム分の音響線と、1フレーム以上前の1または複数のフレームの音響線との比較により速度情報を算出し、Cモード画像を生成する。そして、最新のCモード画像をBモード画像に重畳することで、表示画像を生成して更新する。
【0126】
次に、ユーザから終了指示があるか否かを判定し(ステップS305)、指示がない場合はCモード走査線カウンタjからjmaxをデクリメントして(ステップS316)、ステップS319に進む。すなわち、Cモード送信について、1フレーム分の送信が完了した場合には、連続N回のCモード送信が完了していなくても、Bモード送信に処理が進む。
【0127】
<小括>
以上、説明したように本実施の形態に係る超音波診断装置100によれば、Cモード送信について、1フレーム分の送信が完了した場合には、Cモード送信イベントが完了していなくても、残りのCモード送信を行わずにBモード送信を開始する。したがって、
図11のタイムチャートに示すように、同一の走査線に対するCモード送信の繰り返しレートが一定となり、すなわち、繰り返し送信周波数(PRF)が一定となる。したがって、Cモード画像の品質を空間的にも時系列的にも均一化させることができる。
【0128】
≪実施の形態4≫
実施の形態1から3では、Bモード送信、Cモード送信のそれぞれについて、集束波の送信と走査線上の音響線生成を行うとした。しかしながら、例えば、Bモード送信、Cモード送信の一方または両方において、平面波など非集束波を用いた送信を行ってもよいし、送信方向の異なる送信による音響線の合成を行ってもよい。
【0129】
具体的には、例えば、Bモード送信について、空間コンパウンドなど、送信方向の異なる複数の送信を行い、音響線信号を生成するとしてもよい。
図12(a)は、送信方向の異なる平面波送信によるBモード画像の生成例を示しており、第1の方向D
B1への平面波送信により領域Ba内の観測点について音響線信号を生成、第2の方向D
B2への平面波送信により領域Bb内の観測点について音響線信号を生成、第3の方向D
B3への平面波送信により領域Bc内の観測点について音響線信号を生成、これらの合成によりB-ROIについてBモード画像を生成する場合を示している。このとき、1回のBモード送信は、一方向への平面波の送信とそれに伴う音響線信号の生成に対応し、1フレーム分のBモード送信は、全方向へのBモード送信を指す。すなわち、1回のBモード送信は、第1の方向D
B1、第2の方向D
B2、第3の方向D
B3のいずれか1つへの平面波送信とそれに対応する音響線信号の生成に対応し、1フレーム分のBモード送信は、第1の方向D
B1、第2の方向D
B2、第3の方向D
B3のそれぞれに対して1回ずつの平面波送信とそれに対応する音響線信号の生成に対応する。また、例えば、Bモード送信について、5方向への平面波の送信を行い、連続2回のBモード送信を行う、とした場合、第1の方向へのBモード送信、第2の方向へのBモード送信、連続N回のCモード送信、第3の方向へのBモード送信、第4の方向へのBモード送信、連続N回のCモード送信、第5の方向へのBモード送信、第1の方向へのBモード送信、連続N回のCモード送信…の順に行われる。なお、部分Bモード画像を生成するにあたっては、例えば、5方向に平面波の送信を行う場合には、最新5回分のBモード送信に係る音響線信号を合成したものを用いることができる。なお、最初の1フレーム分のBモード送信においては、全方向へのBモード送信と、それに伴う音響線信号の生成を行う。
【0130】
また、
図12(b)のように、Bモード送信に加えて、Cモード送信についても、3方向への平面波の送信を行い、合成により音響線信号を生成するとしてもよい。
図12(b)は、第1の方向第1の方向D
C1への平面波送信により領域Ca内の観測点について音響線信号を生成、第2の方向D
C2への平面波送信により領域Cb内の観測点について音響線信号を生成、第3の方向D
C3への平面波送信により領域Cc内の観測点について音響線信号を生成、これらの合成によりC-ROIについてCモード画像を生成する場合を示している。このとき、速度の算出方法としては、連続する2回の第1の方向D
C1への平面波送信により得た音響線信号の比較によって第1の方向における速度を算出、連続する2回の第2の方向D
C2への平面波送信により得た音響線信号の比較によって第2の方向における速度を算出、連続する2回の第3の方向D
C3への平面波送信により得た音響線信号の比較によって第3の方向における速度を算出、のそれぞれを行い、観測点ごとに、第1の方向における速度と第2の方向における速度と第3の方向における速度とのベクトル合成によって観測点における速度を算出することができる。
【0131】
≪変形例5≫
変形例5では、Cモード送信を平面波で行い、Bモード送信は実施の形態1と同様集束波で行う。この場合でもBモード画像は空間コンパウンドによって生成される構成としてもよい。すなわち、それぞれ異なる3方向への送受信に対応するフレームB信号を生成し、これらを合成してBモード画像を生成することができる。
【0132】
このとき、Cモード送信の連続回数Nを、Cモード画像の1フレーム分の送信回数とする。Cモード送信を平面波で行う場合、N回のCモード送信によって全方位に対して平面波の送信を行う。Cモード送信における平面波の送出方向をDc方向としたとき、連続送信数Nと1フレーム当たりのCモード送信回数Txcは、以下のように示される。
N=Txc=Dc
次に、Bモードの送信の連続回数Mを、Bモード画像のフレームレートFRBが、Cモード画像のフレームレートFRCに対して第5の所定の比率R5以下となるように設定する。Cモード画像の1フレーム分の送受信に係る時間FTCは、連続するCモード送信の送信間隔時間TICを用いて以下のように示される。
FTC=TIC×Txc
=TIC×N
ここで、Cモード画像のフレームレートFRCは、M回のBモード送信の所要時間TTBと、N回のCモード送信の所要時間TTCとの和の逆数である。したがって、TTB、TTC、連続するBモード送信の送信間隔時間TIB、連続するCモード送信の送信間隔時間TICを用いて、以下のように表すことができる。
FRC=1/(TTB+TTC)
=1/(M×TIB+N×TIC)
ここで、B-ROIの素子列方向の幅をWB、走査線の素子列方向の密度をdB、1回のBモード送信により音響線を取得する走査線の数をnBとしたとき、1フレーム当たりのBモード送信回数TxBは、以下のように示される。
TxB=WB×dB/nB 但し、TxBが整数でない場合は整数に切り上げ
したがって、1フレーム分のBモード送信の所要時間FTBは、以下のように示される。
FTB=TIB×TxB
ここで、Bモード画像の1フレーム分の送信の間に行われるCモード送信のフレーム数をnC、当該Cモード送信の送信数をBFC、所要時間をBTCとすると、以下の関係が成り立つ。
BTC=TIC×BFC
=TIC×N×nC
ここで、M回のBモード送信ごとに、1フレーム分のCモード送信がなされていることから、
nC=FTB/M
が成り立つ。
【0133】
したがって、以下の式が成り立つ。
BTC=TIC×N×FTB/M
Bモード画像のフレームレートFRBは、1フレーム分のBモード送信の所要時間FTBと、nCフレーム分のCモード送信の所要時間BTCとの和の逆数である。したがって、以下のように表すことができる。
FRB=1/(FTB+BTC)
=1/(TIB×TxB+TIC×N×FTB/M)
ここで、Bモード画像のフレームレートFRBが、Cモード画像のフレームレートFRCに対して、第5の所定の比率R5以下となるように、Mを設定する。
FRB≦FRC×R5
以上の関係式をすべて満たすようにMを設定する。
【0134】
≪変形例6≫
変形例6では、超音波の繰り返し送信周波数(PRF;Pulse Repeat Frequency)が所定の基準を満たすようにMとNを決定する。
【0135】
変形例5では、Cモードの連続する2フレームにおいて、同一方向に平面波を送信する時間間隔の逆数がPRFとなる。したがって、Cモード画像のフレームレートFRCがPRFと一致する。
【0136】
したがって、所望のPRFに対して、
PRF=FRC=1/(M×TIB+N×TIC)
を満たすようにMを設定することで、Mを設定することができる。
【0137】
また、Bモード画像のフレームレートFRBが、Cモード画像のフレームレートFRCに対して、第6の所定の比率R6以上となるように、Mを設定する。
FRB≧FRC×R6
ここで、Mが上記関係を満たす場合は、Mが低すぎない、すなわち、Bモード画像のフレームレートが過少でないということができる。
【0138】
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)実施の形態1ではフレーム単位、実施の形態2ではM回のBモード送信の単位で、Bモード画像の更新を行うとした。しかしながら、例えば、動き補償や動き予測等を用いてBモード画像のフレームレートを向上するとしてもよい。例えば、Bモード画像の生成と表示との間にBモードのフレーム繰り返し時間程度の遅延(タイムラグ)が存在する場合、生成済みのBモード画像と表示中のBモード画像とを用いて動き補償を行って中間のBモード画像を生成し、Cモード画像の更新に合わせて中間のBモード画像を出力することで、Bモード画像のフレームレートを向上することができる。または、例えば、Bモード画像処理部は、最新のBモード画像を含む過去数フレームから動き予測を行い、Bモード画像の予測フレームを生成して、Cモード画像の更新に合わせて予測Bモード画像を出力するとしてもよい。このような構成により、Bモード送信に対して高いフレームレートでBモード画像を更新することができる。
【0139】
(2)各実施の形態及び各変形例では、Cモード画像処理部105は各観測点の速度をマッピングしたカラードプラ画像を生成するとしたが、各観測点の血流情報の信号強度に基づいて各観測点のパワー値をマッピングしたパワードプラ画像を生成するとしてもよい。
【0140】
(3)各実施の形態及び各変形例では、Bモード送信とCモード送信のそれぞれは、フォーカス点の異なる集束波の送信とそれに対応する走査線上の観測点に対する音響線生成、または、送信方向の異なる平面波の送信とそれに対応する対象領域内の観測点に対する音響線生成であるとした。しかしながら、Bモード送信とCモード送信のそれぞれは、これに限られず、複数回の超音波の送信で1フレーム分のBモード画像またはCモード画像を生成するものであれば、任意のものであってよい。例えば、THI(Tissue Harmonics Imaging)を行う場合の第1の送信と、第1の送信に対して位相が反転した第2の送信とのそれぞれを1回の送信としてもよい。また、例えば、合成開口法を行う場合の1つの送信開口に対応する送信を1つの送信とし、全ての送信開口に対応する複数の送信を1フレーム分の送信としてもよい。
【0141】
また、Bモード送信とCモード送信のそれぞれは、検出波の送信のみを行って音響線信号の生成を行わないダミー送信を含んでもよい。このとき、ダミー送信についても1回の送信として取り扱う。なお、Bモード送信イベントおよび/またはCモード送信イベントの最初の送信をダミー送信とすることにより、直前の超音波送信に対するROIの外からの反射超音波等の影響を受けることによる音響線信号の品質低下を抑止することができる。
【0142】
(4)各実施の形態及び変形例では、Bモード画像とCモード画像との組み合わせであるとしたが、同一の超音波プローブを用いて時分割で2種類以上の画像を生成し、画像の種類ごとに複数フレームからなる動画とし、重畳出力する態様であれば、Bモード画像とCモード画像との組み合わせに限られず、任意の画像の組み合わせであってよい。
【0143】
(5)なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0144】
例えば、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。例えば、本発明の超音波診断装置の診断方法のコンピュータプログラムを有しており、このプログラムに従って動作する(又は接続された各部位に動作を指示する)コンピュータシステムであってもよい。
【0145】
また、上記超音波診断装置の全部、もしくは一部、またビームフォーミング部の全部又は一部を、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等の記録媒体、ハードディスクユニットなどから構成されるコンピュータシステムで構成した場合も本発明に含まれる。上記RAM又はハードディスクユニットには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置はその機能を達成する。
【0146】
また、上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1つのシステムLSI(Large Scale Integration(大規模集積回路))から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。なお、LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。上記RAMには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。上記マイクロプロセッサが、上記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。例えば、本発明のビームフォーミング方法がLSIのプログラムとして格納されており、このLSIがコンピュータ内に挿入され、所定のプログラム(ビームフォーミング方法)を実施する場合も本発明に含まれる。
【0147】
なお、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサー(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0148】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【0149】
また、各実施の形態に係る、超音波診断装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。上記超音波診断装置の超音波送受信方法や、画像処理方法を実施させるプログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。プログラムや信号を記録媒体に記録して移送することにより、プログラムを独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい、また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0150】
また、上記実施形態に係る超音波診断装置の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)やプロセッサなどのプログラマブルデバイスとソフトウェアにより実現される構成であってもよい。後者の構成は、いわゆるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Unit)である。これらの構成要素は一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。また、複数の構成要素を組合せて一個の回路部品とすることができるし、複数の回路部品の集合体にすることもできる。
【0151】
上記実施形態に係る超音波診断装置では、記憶装置であるデータ格納部を超音波診断装置内に含む構成としたが、記憶装置はこれに限定されず、半導体メモリ、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、磁気記憶装置、等が、超音波診断装置に外部から接続される構成であってもよい。
【0152】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0153】
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0154】
また、超音波診断装置には、プローブ及び表示部が外部から接続される構成としたが、これらは、超音波診断装置内に一体的に具備されている構成としてもよい。
【0155】
また、上記実施の形態においては、プローブは、複数の圧電素子が一次元方向に配列されたプローブ構成を示した。しかしながら、プローブの構成は、これに限定されるものではなく、例えば、複数の圧電変換素子を二次元方向に配列した二次元配列振動子や、一次元方向に配列された複数の振動子を機械的に揺動させて三次元の断層画像を取得する揺動型プローブを用いてもよく、測定に応じて適宜使い分けることができる。例えば、2次元に配列されたプローブを用いた場合、圧電変換素子に電圧を与えるタイミングや電圧の値を個々に変化させることによって、送信する超音波ビームの照射位置や方向を制御することができる。
【0156】
また、プローブは、送受信部の一部の機能をプローブに含んでいてもよい。例えば、送受信部から出力された送信電気信号を生成するための制御信号に基づき、プローブ内で送信電気信号を生成し、この送信電気信号を超音波に変換する。併せて、受信した反射超音波を受信電気信号に変換し、プローブ内で受信電気信号に基づき受信信号を生成する構成を採ることができる。
【0157】
また、各実施の形態に係る超音波診断装置、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。更に上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【0158】
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【0159】
≪まとめ≫
(1)本開示の一態様に係る超音波診断装置は、第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行う送信部と、反射超音波を受信して受信信号に変換する受信部と、前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行う第1画像処理部と、前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行う第2画像処理部と、前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力する画像合成部とを備え、前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、前記送信部は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記第2の送信イベントに先行して行い、前記第1画像処理部は、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成することを特徴とする。
【0160】
また、実施の形態に係る超音波信号処理方法は、第1検出波の送信を含む第1の送信イベントと、第2検出波の送信を含む第2の送信イベントとを交互に行い、反射超音波を受信して受信信号に変換し、前記第1の送信イベントの複数回に対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成する動作を繰り返し行い、前記第2の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第2画像を生成する動作を繰り返し行い、前記第1画像上に前記第2画像を重畳して合成画像を生成し出力し、前記第2画像のフレームレートは、前記第1画像のフレームレートより大きく、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信である第3の送信イベントを前記第2の送信イベントに先行して行い、前記第3の送信イベントに対応する受信信号に基づいて1フレーム分の第1画像を生成することを特徴とする。
【0161】
本開示の一態様に係る超音波診断装置、または、超音波信号処理方法によれば、第2画像のフレームレートを向上させるとともに、第1画像のフレームレートが低い場合にも、第1画像を速やかに描画することが可能である。したがって、第1画像と第2画像のフレームレートの比に関わらず、第1画像に第2画像を重畳させた出力画像を速やかに出力させることができ、応答性を向上させることができる。
【0162】
(2)また、上記(1)の超音波診断装置は、1フレーム分の第1画像に対応する受信信号を取得するための複数回の前記第1検出波の送信において、被検体内における第1検出波の伝搬方向は互いに異なる、としてもよい。
【0163】
本構成によれば、第1画像を空間コンパウンドにより形成する場合においても本開示の一態様とすることができ、また、1フレーム分の複数回の第1送信イベント完了まで第1画像の品質が低下することを抑止することができる。
【0164】
(3)また、上記(1)または(2)の超音波診断装置は、前記第1の送信イベントはM回(Mは自然数)の第1検出波の送信からなり、前記第2の送信イベントはN回(Nは自然数)の第2検出波の送信からなる、としてもよい。
【0165】
本構成によれば、容易に第1画像と第2画像のフレームレートおよびフレーム繰り返し時間を均一化できる。
【0166】
(4)また、上記(3)の超音波診断装置は、前記第2画像の1フレームは、1回の第2の送信イベントに対応する、としてもよい。
【0167】
本構成によれば、第2画像のフレームレートを向上し、フレーム繰り返し時間を小さくすることができる。
【0168】
(5)また、上記(3)の超音波診断装置は、1回の前記第2の送信イベントの所要時間が、所定の時間以下となるようにNを決定する、としてもよい。
【0169】
本構成によれば、第1画像のフレームレートが低下し過ぎない範囲で第2画像のフレームレートを向上することができる。
【0170】
(6)また、上記(3)~(5)の超音波診断装置は、M/Nの値が第1の所定の比以下となるようにMを決定する、としてもよい。
【0171】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に向上させることなく、第2画像のフレームレートを十分に向上することができる。
【0172】
(7)また、上記(3)~(6)の超音波診断装置は、M/Nの値が第2の所定の比以上となるようにMを決定する、としてもよい。
【0173】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に低下することを抑止することができる。
【0174】
(8)また、上記(3)~(5)の超音波診断装置は、1回の前記第1の送信イベントの所要時間が、1回の前記第2の送信イベントの所要時間に対して第3の所定の比以下となるようにMを決定する、としてもよい。
【0175】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に向上させることなく、第2画像のフレームレートを十分に向上することができる。
【0176】
(9)また、上記(3)~(5)、(8)の超音波診断装置は、1回の前記第1の送信イベントの所要時間が、1回の前記第2の送信イベントの所要時間に対して第4の所定の比以上となるようにMを決定する、としてもよい。
【0177】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に低下することを抑止することができる。
【0178】
(10)また、上記(3)~(5)の超音波診断装置は、前記第1画像のフレームレートが前記第2画像のフレームレートに対して第5の所定の比以下となるようにMを決定する、としてもよい。
【0179】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に向上させることなく、第2画像のフレームレートを十分に向上することができる。
【0180】
(11)また、上記(3)~(5)、(10)の超音波診断装置は、前記第1画像のフレームレートが前記第2画像のフレームレートに対して第6の所定の比以上となるようにMを決定する、としてもよい。
【0181】
本構成によれば、第1画像のフレームレートを過度に低下することを抑止することができる。
【0182】
(12)また、上記(3)~(11)の超音波診断装置は、前記送信部は、前記第2送信イベントにおいて、前記第2画像の1フレームに係る最後の第2検出波の送信を行ったとき、前記第2送信イベントを終了し前記第1送信イベントを開始する、としてもよい。
【0183】
本構成によれば、第2画像において空間的ないし時間的にフレームレートやフレーム繰り返し時間が不均質となる事態を抑止することができる。
【0184】
(13)また、上記(3)~(12)の超音波診断装置は、前記第1検出波の送信と前記第2検出波の送信の少なくとも一方において、一続きの送信の最初にダミー送信を行う、としてもよい。
【0185】
本構成によれば、第1の送信イベントまたは第2の送信イベントの最初の検出波の送信において、受信信号の品質劣化を抑止することができる。
【0186】
(14)また、上記(1)~(13)の超音波診断装置は、前記送信部は、前記第2検出波の送信において、送信ごとに送信に用いる振動子列の位置が振動子の並ぶ方向に所定距離だけ移動するように送信に用いる振動子列を選択し、前記受信部は、前記振動子列の位置に同期して、受信信号を生成する対象となる領域を振動子の並ぶ方向に所定距離だけ移動させる、としてもよい。
【0187】
本構成によれば、第2画像の1フレーム分の送信とそれに係る受信処理を均質かつ単純に行うことができる。
【0188】
(15)また、上記(1)~(13)の超音波診断装置は、前記送信部は、前記第2検出波の送信において、送信ごとに伝搬方向の異なる平面波を送出し、前記受信部は、前記第2検出波の送信に同期して、関心領域の全域について受信信号を生成する、としてもよい。
【0189】
本構成によれば、送信ごとに伝搬方向の異なる平面波により1フレーム分の送信とそれに係る受信がなされるので、第2画像のフレームレートを高くすることができる。
【0190】
(16)また、上記(1)~(15)の超音波診断装置は、前記画像合成部は、前記第1画像の新たなフレームが生成されるたびに、合成画像を更新する、としてもよい。
【0191】
本構成によれば、第1画像を単純な方法で表示更新することができる。
【0192】
(17)また、上記(1)~(15)の超音波診断装置は、前記第1画像処理部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、第1画像の部分フレームを出力し、前記画像合成部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、合成画像を更新する、としてもよい。
【0193】
本構成によれば、疑似的に第1画像のフレームレートを向上させることができ、また、第1画像と第2画像の取得時刻差を局所的に小さくすることができる。
【0194】
(18)また、上記(1)~(15)の超音波診断装置は、前記画像合成部は、前記第2画像の新たなフレームが生成されるたびに、第1画像のフレーム補間を行って、合成画像を更新する、としてもよい。
【0195】
本構成によれば、合成画像のフレームレートを向上させることができ、また、第1画像と第2画像の取得時刻差を局所的に小さくすることができる。
【0196】
(19)また、上記(18)の超音波診断装置は、前記画像合成部は、複数の前記第1画像をブレンディングすることによりフレーム補間を行う、としてもよい。
【0197】
本構成によれば、第1画像のフレームレートに対して表示画像のフレームレートを向上させることができる。
【0198】
(20)また、上記(18)の超音波診断装置は、複数の前記第1画像に基づく動き補償によりフレーム補間を行う、としてもよい。
【0199】
本構成によれば、第1画像のフレームレートに対して表示画像のフレームレートを向上させることができる。
【0200】
(21)また、上記(1)~(20)の超音波診断装置は、前記第1画像は、Bモード画像である、としてもよい。
【0201】
本構成によれば、Bモード画像と、高フレームレートでありBモードに重畳すべき第2画像との組み合わせにより、本開示の態様を適用できる。
【0202】
(22)また、上記(1)~(21)の超音波診断装置は、前記第2画像は、カラーフローに基づくカラードプラ画像、または、パワードプラ画像である、としてもよい。
【0203】
本構成によれば、血流成分を高精度かつ応答精度を高めた状態で表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本開示にかかる超音波診断装置および超音波信号処理方法は、超音波診断装置の性能向上、特にフレームレートの低下を抑止しつつ、応答性を向上させる点で有用である。
【符号の説明】
【0205】
100 超音波診断装置
101 プローブ
101a 振動子
102 マルチプレクサ部
103 送信ビームフォーマ部
104 受信ビームフォーマ部
105 Cモード画像処理部
106 Bモード画像処理部
107 画像生成部
108 表示部
109 データ格納部
110 制御部
150 超音波信号処理装置