(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】メンテナンス装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240416BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240416BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/165 303
B41J2/165 203
B41J2/17 203
B41J2/165 307
B41J2/01 451
B41J2/01 111
(21)【出願番号】P 2020132089
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】切石 皓大
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006155(JP,A)
【文献】特開2013-248888(JP,A)
【文献】特開2011-161437(JP,A)
【文献】特開2019-142044(JP,A)
【文献】特開2010-083133(JP,A)
【文献】特開2012-006156(JP,A)
【文献】特開2009-226610(JP,A)
【文献】特開2003-072092(JP,A)
【文献】特開2019-005962(JP,A)
【文献】特開2010-240955(JP,A)
【文献】特開2014-088012(JP,A)
【文献】特開2016-150555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0369033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルの開口部が設けられたノズル面を有する記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置であって、
前記ノズル面に付着したインクを掻き取る掻き取り部材と、
前記ノズルから排出された排出インク、及び前記掻き取り部材により掻き取られた掻き取りインクを受けるインク受容部と、
を備え、
前記インク受容部は、水平面に対して傾斜した第1面及び第2面を有し、当該第1面及び第2面のうち少なくとも前記第1面により前記排出インクを受け、かつ前記第2面により前記掻き取りインクを受け、
前記第2面におけるインクの流動容易性が、前記第1面におけるインクの流動容易性より高い、メンテナンス装置。
【請求項2】
前記第2面の水平面からの傾斜角度が、前記第1面の水平面からの傾斜角度より大きい、請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記第2面における前記掻き取りインクの流動経路の長さの最大値が、前記第1面における前記排出インクの流動経路の長さの最大値より小さい、請求項1又は2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面により前記排出インクを受ける、請求項1~3のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面を有するインク桶を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記掻き取り部材は、前記インク桶に取り付けられている、請求項5に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記インク受容部は、前記第1面を有するインク桶と、前記第2面を有するインク副受容部とを備え、
前記インク副受容部は、前記第2面を流動した前記掻き取りインクが集約されて流出する流出口を有するとともに、前記流出口から流出した前記掻き取りインクが前記インク桶の前記第1面に滴下する位置に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面を流動したインクが流入する排出口を有し、
当該メンテナンス装置は、前記排出口に流入したインクを貯留するインク貯留部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項9】
前記インク桶は、前記第1面及び前記第2面を流動したインクが流入する排出口を有し、
当該メンテナンス装置は、前記排出口に流入したインクを貯留するインク貯留部を備え、
前記排出口は、前記掻き取り部材が前記ノズル面に付着したインクを掻き取るときの前記掻き取り部材と前記ノズル面との相対移動方向について、前記インク桶の中心よりも前記掻き取り部材側に設けられている、請求項5又は6に記載のメンテナンス装置。
【請求項10】
前記インク貯留部に貯留されているインク量を検出するインク量検出部を備える、請求項8又は9に記載のメンテナンス装置。
【請求項11】
前記第2面の表面粗さが、前記第1面の表面粗さよりも小さい、請求項1~10のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項12】
インクに対する前記第2面の撥液性が、インクに対する前記第1面の撥液性よりも大きい、請求項1~11のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項13】
前記第1面及び前記第2面のうち少なくとも前記第2面を加熱する加熱動作を行う第1の加熱部を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項14】
前記加熱動作における加熱温度は、インクが熱硬化する温度、及びインクの臭気レベルが所定の許容範囲となる上限温度のいずれよりも低い、請求項13に記載のメンテナンス装置。
【請求項15】
前記インクは、ゲル状態とゾル状態との間で相変化する特性を有し、
前記加熱動作における加熱温度は、前記インクのゾル化温度以上である、請求項13又は14に記載のメンテナンス装置。
【請求項16】
前記掻き取り部材は、前記ノズル面と接触しない状態で、当該ノズル面に付着したインクを自身に伝わせて掻き取る、請求項1~15のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項17】
前記掻き取り部材は、前記ノズルから排出されて前記ノズル面に付着したインクを掻き取る、請求項1~16のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項18】
前記掻き取り部材により掻き取られた前記掻き取りインクを伝わせて、前記第2面の所定の滴下位置に滴下させる受け皿を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項19】
前記掻き取り部材を加熱する第2の加熱部を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項20】
前記掻き取り部材により掻き取られずに前記ノズル面に残留したインクを吸収するインク吸収体を備える、請求項1~19のいずれか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項21】
インクを吐出するノズルの開口部が設けられたノズル面を有する記録ヘッドと、
請求項1~20のいずれか一項に記載のメンテナンス装置と、
を備えるインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドに設けられたノズルから記録媒体にインクを吐出させて所望の位置に着弾させることで画像などを形成するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、記録ヘッドのメンテナンスを行った後で画像の記録動作を開始させることで、ノズルからのインク吐出不良による画質の低下を抑える技術がある。記録ヘッドのメンテナンスは、例えば、記録ヘッド内のインクをノズルから排出させて、インクに混入した気泡や異物を除去するパージメンテナンス、及びパージメンテナンスにより記録ヘッドのノズル面(ノズルの開口部が設けられた面)に付着したインクを掻き取る掻き取りメンテナンスを含む。
【0003】
このようなパージメンテナンス及び掻き取りメンテナンスを行うメンテナンス装置として、特許文献1には、パージメンテナンスにおいてノズルから排出された排出インクを受けるインク受容部と、掻き取りメンテナンスにおいてノズル面に付着したインクを掻き取る掻き取り部材とを備えたものが開示されている。特許文献1では、掻き取り部材により掻き取られた掻き取りインクをインク吸収体により吸収させているが、この掻き取りインクをインク受容部で受けることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常、掻き取りインクの量は、パージメンテナンスにおける排出インクの量と比較して少ない。このような少量の掻き取りインクをインク受容部で受けると、インク受容部の内壁面でインクが流動せずに当該内壁面に付着して滞留してしまうという課題がある。インク受容部にインクが滞留すると、このインクがインクジェット記録装置の機内に飛散して機内の汚染に繋がったり、インクの臭気の原因となったりする。
【0006】
この発明の目的は、インク受容部においてインクを滞留しにくくすることができるメンテナンス装置及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のメンテナンス装置の発明は、
インクを吐出するノズルの開口部が設けられたノズル面を有する記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置であって、
前記ノズル面に付着したインクを掻き取る掻き取り部材と、
前記ノズルから排出された排出インク、及び前記掻き取り部材により掻き取られた掻き取りインクを受けるインク受容部と、
を備え、
前記インク受容部は、水平面に対して傾斜した第1面及び第2面を有し、当該第1面及び第2面のうち少なくとも前記第1面により前記排出インクを受け、かつ前記第2面により前記掻き取りインクを受け、
前記第2面におけるインクの流動容易性が、前記第1面におけるインクの流動容易性より高い。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のメンテナンス装置において、
前記第2面の水平面からの傾斜角度が、前記第1面の水平面からの傾斜角度より大きい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のメンテナンス装置において、
前記第2面における前記掻き取りインクの流動経路の長さの最大値が、前記第1面における前記排出インクの流動経路の長さの最大値より小さい。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面により前記排出インクを受ける。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面を有するインク桶を備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材は、前記インク桶に取り付けられている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記インク受容部は、前記第1面を有するインク桶と、前記第2面を有するインク副受容部とを備え、
前記インク副受容部は、前記第2面を流動した前記掻き取りインクが集約されて流出する流出口を有するとともに、前記流出口から流出した前記掻き取りインクが前記インク桶の前記第1面に滴下する位置に設けられている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記インク受容部は、前記第1面及び前記第2面を流動したインクが流入する排出口を有し、
当該メンテナンス装置は、前記排出口に流入したインクを貯留するインク貯留部を備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項5又は6に記載のメンテナンス装置において、
前記インク桶は、前記第1面及び前記第2面を流動したインクが流入する排出口を有し、
当該メンテナンス装置は、前記排出口に流入したインクを貯留するインク貯留部を備え、
前記排出口は、前記掻き取り部材が前記ノズル面に付着したインクを掻き取るときの前記掻き取り部材と前記ノズル面との相対移動方向について、前記インク桶の中心よりも前記掻き取り部材側に設けられている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載のメンテナンス装置において、
前記インク貯留部に貯留されているインク量を検出するインク量検出部を備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記第2面の表面粗さが、前記第1面の表面粗さよりも小さい。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1~11のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
インクに対する前記第2面の撥液性が、インクに対する前記第1面の撥液性よりも大きい。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項1~12のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記第1面及び前記第2面のうち少なくとも前記第2面を加熱する加熱動作を行う第1の加熱部を備える。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のメンテナンス装置において、
前記加熱動作における加熱温度は、インクが熱硬化する温度、及びインクの臭気レベルが所定の許容範囲となる上限温度のいずれよりも低い。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載のメンテナンス装置において、
前記インクは、ゲル状態とゾル状態との間で相変化する特性を有し、
前記加熱動作における加熱温度は、前記インクのゾル化温度以上である。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項1~15のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材は、前記ノズル面と接触しない状態で、当該ノズル面に付着したインクを自身に伝わせて掻き取る。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項1~16のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材は、前記ノズルから排出されて前記ノズル面に付着したインクを掻き取る。
【0024】
請求項18に記載の発明は、請求項1~17のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材により掻き取られた前記掻き取りインクを伝わせて、前記第2面の所定の滴下位置に滴下させる受け皿を備える。
【0025】
請求項19に記載の発明は、請求項1~18のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材を加熱する第2の加熱部を備える。
【0026】
請求項20に記載の発明は、請求項1~19のいずれか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記掻き取り部材により掻き取られずに前記ノズル面に残留したインクを吸収するインク吸収体を備える。
【0027】
また、上記目的を達成するため、請求項21に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インクを吐出するノズルの開口部が設けられたノズル面を有する記録ヘッドと、
請求項1~20のいずれか一項に記載のメンテナンス装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、インク受容部においてインクを滞留しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図3】キャリッジをX方向に移動させている様子を示す図である。
【
図4】キャリッジのX方向の移動可能範囲を示す図である。
【
図5】パージメンテナンスを行っているときのクリーニング部の断面を示す図である。
【
図6】掻き取り部材によるインクの掻き取り動作が行われているときのクリーニング部の断面を示す図である。
【
図10】比較例に係るクリーニング部を示す図である。
【
図11】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】変形例1に係るクリーニング部の構成を示す断面図である。
【
図14】変形例1に係るクリーニング部の構成の他の例を示す断面図である。
【
図15】変形例2に係るクリーニング部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のメンテナンス装置及びインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、クリーニング部40(
図4参照)と、制御部50(
図11参照)などを備える。このうちクリーニング部40及び制御部50によりメンテナンス装置2(
図11参照)が構成される。インクジェット記録装置1は、制御部50による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Mを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Mに画像を記録し、画像が記録された記録媒体Mを排紙部30に搬送する。記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0032】
給紙部10は、記録媒体Mを格納する給紙トレー11と、給紙トレー11から画像形成部20に記録媒体Mを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Mを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Mを給紙トレー11から画像形成部20へ搬送する。
【0033】
画像形成部20は、搬送ドラム21と、受け渡しユニット22と、記録媒体加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部26などを有する。
【0034】
搬送ドラム21は、円柱面状の外周面である搬送面21a上に記録媒体Mを保持した状態で
図1の図面に垂直なX方向に延びた回転軸の周りで回転することで記録媒体Mを搬送面21aに沿った搬送方向に搬送する。搬送ドラム21は、搬送面21a上で記録媒体Mを保持するための爪部211(
図3参照)及び吸気部212(
図3参照)を備える。記録媒体Mは、爪部211により端部が押さえられ、かつ吸気部212により搬送面21aに吸い寄せられることで搬送面21aに保持される。
搬送ドラム21は、搬送ドラム21を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターに接続されており、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0035】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Mを搬送ドラム21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Mの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送ドラム21に引き渡す。
【0036】
記録媒体加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Mが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Mを加熱する。記録媒体加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部50から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電してヒーターを発熱させる。
【0037】
ヘッドユニット24は、複数の記録ヘッド241(
図2参照)と、当該複数の記録ヘッド241を搭載するキャリッジ24aとを有する。ヘッドユニット24は、記録媒体Mが保持された搬送ドラム21の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム21の搬送面21aに対向するインク吐出面(後述する記録ヘッド241のノズルNの開口部が設けられたノズル面241a(
図2参照))から記録媒体Mに対してインクを吐出することにより画像を記録する。ヘッドユニット24は、ノズル面241aと搬送面とが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Mの搬送方向上流側からY、M、C、Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0038】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。
図2は、ヘッドユニット24の全体を搬送ドラム21の搬送面21aに相対する側から見た平面図である。
ヘッドユニット24は、X方向(すなわち、搬送方向に直交する幅方向)に配列されたノズルNからなるノズル列を各々有する16個の記録ヘッド241を備える。これらの16個の記録ヘッド241は、2つずつ組み合わされて8個のヘッドモジュール241Mを構成している。各ヘッドモジュール241Mが有する複数のノズル列は、X方向についてのノズルの位置が重ならないようにX方向の位置が調整されている。なお、各記録ヘッド241におけるノズルNの配列方向はX方向に限られず、直角以外の角度で搬送方向と交差する方向であってもよい。また、ヘッドユニット24が備える記録ヘッド241の数は、16個に限られず、画像の記録幅等に応じて適宜変更可能である。
【0039】
各ヘッドモジュール241Mは、キャリッジ24aの底部にある支持板に設けられた開口にそれぞれ篏合し、かつ支持板の底面(搬送ドラム21と対向する側の面)から記録ヘッド241のノズル面241aが露出した状態で支持板に支持されている。また、8個のヘッドモジュール241Mが、ノズルNからインクを吐出可能な範囲がX方向に連続的に繋がるような位置関係で、X方向についての配置範囲が互いに一部重複するように千鳥格子状に配置されてラインヘッドが構成されている。
【0040】
ヘッドユニット24に含まれるノズルNのX方向についての配置範囲は、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔(搬送方向間隔)で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で画像を記録する。
【0041】
各ノズルNからインクを吐出させるためのインク吐出機構は、特には限られないが、圧電体を用いたピエゾ式のものを用いることができる。ピエゾ式のインク吐出機構としては、シアモード及びベントモードが知られている。シアモードのインク吐出機構は、ノズルNに連通する圧力室の壁面の圧電体にシアモード型の変位を生じさせて圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる。また、ベントモードのインク吐出機構は、圧力室の壁面を構成する振動板に固着された圧電体を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる。
【0042】
ヘッドユニット24による画像の記録に用いられるインクは、温度によってゲル状とゾル状との間で相変化する性質を有する。ここで、ゲル状は固体の一態様であり、ゾル状は液体の一態様である。このようなインクの組成としては、例えば、重合性化合物と光重合開始剤を主とした組成物に数%のゲル化剤を添加したものが挙げられる。
ゲル状のインクを加熱して温度を上昇させていくと、インク固有のゾル化温度(例えば、70℃前後)を超えた段階で著しく粘度が低下し始め、ゾル状に相変化する。一方、ゾル状のインクの温度を低下させていくと、インクに固有のゲル化温度(例えば、50℃前後)を下回った段階で著しく粘度が上昇し始め、ゲル状に相変化する。
【0043】
ヘッドユニット24は、記録ヘッド241に供給される前のインク、及び記録ヘッド241内に供給されたインクを加熱する図示略のインク加熱部を有する。記録ヘッド241は、インク加熱部により加熱されてゾル状となったインクをノズルNから吐出する。ノズルNから吐出されて記録媒体M上に着弾したインクは、冷却されて速やかにゲル状に相変化する。
【0044】
また、本実施形態で用いられるインクは、紫外線を照射することにより硬化する性質を有する。すなわち、本実施形態のインクジェット記録装置1では、搬送面21aに載置された記録媒体Mに対してゾル状のインクが吐出され、記録媒体M上で冷却されてゲル状となった後、インクに紫外線を照射して硬化させることで、インクを記録媒体M上に定着させることができる。
【0045】
各ヘッドユニット24のキャリッジ24aは、X方向に個別に移動可能に設けられている。
図3は、キャリッジ24aをX方向に移動させている様子を示す図である。
また、
図4は、キャリッジ24aのX方向の移動可能範囲を示す図である。
キャリッジ24aは、キャリッジ移動部62(
図11参照)により駆動されることで、
図3及び
図4に示すように、記録位置及びパージメンテナンス位置の間でX方向に移動することができる。
【0046】
このうち記録位置は、記録ヘッド241のノズル面241aが搬送ドラム21の搬送面21aに対向する位置であり、搬送面21a上の記録媒体Mに対してインクを吐出して画像を記録するときのキャリッジ24aの位置である。記録位置にあるキャリッジ24aを搬送面21aから離れる方向に上昇させた後に、+X方向に移動させることで、キャリッジ24aをパージメンテナンス位置に移動させることができる。
【0047】
パージメンテナンス位置は、記録ヘッド241のノズルNからインクを排出させるパージメンテナンスを行うときのキャリッジ24aの位置である。パージメンテナンスでは、画像の記録時と同様に、ノズルNに連通する圧力室内のインクの圧力を変動させることで各ノズルNからインクを連続して吐出させる。これにより、記録ヘッド241内のインクに混入していた気泡や異物をインクとともに外部に排出することができる。なお、パージメンテナンスの方法はこれに限られず、例えば記録ヘッド241に対するインクの供給圧力を高めることで強制的にノズルNからインクを排出させる方法(加圧パージ)を用いてもよい。
【0048】
パージメンテナンス位置に移動したキャリッジ24aの鉛直方向下方には、クリーニング部40が配置されている。クリーニング部40は、インク受容部41と、掻き取り部材42と、インク貯留部43と、インク吸収体44などを備える。
【0049】
図5は、パージメンテナンスを行っているときのクリーニング部40の断面を示す図である。
インク受容部41は、水平面に対して傾斜した第1面S1及び第2面S2を有するインク桶411を備え、パージメンテナンスにおいてノズルNから排出された排出インクIn1を第1面S1及び第2面S2で受ける。
図5の断面において、第1面S1はインク桶411の底面のうち+X方向側の面であり、第2面S2はインク桶411の底面のうち-X方向側の面である。なお、このうち第1面S1のみにより排出インクIn1を受ける構成となっていてもよい。インク桶411の材質は、例えばアルミニウムとすることができるが、これに限られない。
本実施形態では、4つのキャリッジ24aに対して共通の1つのインク桶411が設けられているが、これに限られず、1つのキャリッジ24aに対して1つのインク桶411が別個に設けられていてもよい。
【0050】
インク桶411の底部には、第1面S1及び第2面S2を流動したインクが流入する排出口411aが設けられている。第1面S1及び第2面S2に滴下(着弾)したインクは、重力により第1面S1及び第2面S2を下方に流動して排出口411aに流入する。
【0051】
第2面S2の水平面からの傾斜角度θ2は、第1面S1の水平面からの傾斜角度θ1より大きくなっている。これにより、第2面S2におけるインクの流動容易性が、第1面S1におけるインクの流動容易性より高くなっている。
ここで、「インクの流動容易性が高い」とは、同一のインクを同一の量だけ滴下して所定時間が経過した後に、インクの滴下位置から所定の距離範囲内に滞留しているインクの量が相対的に少ないことをいう。ここで、「所定時間」は、特には限られないが、例えば1秒~数秒程度とすることができる。
【0052】
したがって、インクの流動容易性が第1面S1より高い第2面S2では、滴下したインクが第1面S1よりも滞留しにくくなっている。一般に、斜面に滴下するインク量が少ないほど、当該斜面においてインクが流動しにくく、斜面上に滞留しやすくなるが、相対的に第2面S2の流動容易性が高くなっていることで、第1面S1に滴下したときには滞留してしまうような少量のインクが第2面S2に滴下した場合にも、インクが滞留せずに下方に流動するようになっている。
ただし、第1面S1は、パージメンテナンスによりノズルNから排出される量のインクについては、ほとんど滞留せずに下方に流動する程度の流動容易性を有している。パージメンテナンスにおける排出インクIn1の大部分は第1面S1に滴下し、当該第1面S1を下方に流動して排出口411aに流入する。また、排出インクIn1のうち第2面S2に滴下したインクも、当該第2面S2を下方に流動して排出口411aに流入する。
【0053】
なお、本実施形態では第1面S1の全面において傾斜角度がθ1で一定であり、第2面S2の全面において傾斜角度がθ2で一定であるが、これに限られない。第1面S1内で傾斜角度が一定でない場合、及び/又は第2面S2内で傾斜角度が一定でない構成においては、第1面S1の傾斜角度の最大値をθ1、第2面S2の傾斜角度の最小値をθ2とした場合に、傾斜角度θ2が傾斜角度θ1より大きくなるように第1面S1及び第2面S2が設けられる。
【0054】
インク桶411には、第1面S1とは反対側の面に、第1面S1を加熱する加熱動作を行う第1面加熱部4511が設けられており、第2面S2とは反対側の面に、第2面S2を加熱する加熱動作を行う第2面加熱部4512が設けられている。第1面加熱部4511は、第1面S1に沿うように引き回された電熱線を有し、制御部50による制御下で電熱線に通電することで、第1面S1のうち少なくとも排出インクIn1が接する部分を加熱する。第1面加熱部4511は、第1面S1の全体を加熱可能とされていてもよい。第2面加熱部4512は、第2面S2に沿うように引き回された電熱線を有し、制御部50による制御下で電熱線に通電することで、第2面S2のうち少なくとも掻き取りインクIn2が接する部分を加熱する。第2面加熱部4512は、第2面S2の全体を加熱可能とされていてもよい。第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512の加熱動作は、制御部50により別個独立に制御される。インク桶411が樹脂等の熱が伝わりにくい材質である場合には、インク桶411と第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512との間に、アルミニウム等の熱伝導率の高い材質の板状部材を挟むことが好ましい。第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512は、「第1の加熱部」に相当する。
【0055】
第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512の加熱動作における加熱温度は、所定の温度範囲内となるように制御部50により制御される。
具体的には、加熱動作により加熱される第1面S1及び第2面S2の温度は、インクのゾル化温度以上とされる。
また、上記加熱動作における加熱温度は、インクが熱硬化する温度、及びインクの臭気レベルが所定の許容範囲となる上限温度のいずれよりも低い範囲内で定められる。ここで、インクの臭気レベルは、一般にインクの温度が高いほど高くなる。このため、インクの温度を所定の上限温度より低い範囲内に留めることで、インクの臭気レベルを所定範囲に抑えることができる。
【0056】
インク桶411の-X方向側の側壁の上端部には、掻き取り部材42が取り付けられている。掻き取り部材42は、各キャリッジ24aに対して1つずつ、計4つ設けられている。ただし、これに限られず、4つのキャリッジ24aに対して共通の1つの掻き取り部材42が設けられていてもよい。
掻き取り部材42は、記録ヘッド241のノズル面241aのY方向についての幅と同等以上の長さを有するブレード状の部材である。掻き取り部材42の材質は、特には限られないが、各種の樹脂又は金属を用いることができる。
掻き取り部材42は、パージメンテナンスにおいてノズルNから排出されてノズル面241aに付着したインクを掻き取って除去する。
【0057】
図6は、掻き取り部材42によるインクの掻き取り動作が行われているときのクリーニング部の断面を示す図である。
掻き取り部材42の+Z方向についての先端は、キャリッジ24aがパージメンテナンス位置から-X方向に移動する際に、ノズル面241aには接触せず、かつノズル面241aに付着したインクには接触する位置に配置されている。
図6に示すように、キャリッジ24aとともにノズル面241aが-X方向に移動するときに、掻き取り部材42の先端がノズル面241aに近接し、ノズル面241aに付着したインクが掻き取り部材42の先端から掻き取り部材42の側面に伝うことで、ノズル面241aからインクが掻き取られて除去される。すなわち、掻き取り部材42は、ノズル面241aに対して非接触の状態でノズル面241aのインクを掻き取る。
【0058】
掻き取り部材42の下端には、掻き取りインクIn2の滴下位置を調整するための受け皿421が取り付けられている。受け皿421は、掻き取り部材42により掻き取られた掻き取りインクIn2を伝わせて、第2面S2の所定の滴下位置に滴下させる。この滴下した掻き取りインクIn2は、インク桶411の第2面S2が受けるようになっている。
【0059】
掻き取りインクIn2の量は、通常、パージメンテナンスにおける排出インクIn1の量よりもかなり少ない。これに対し、上述のとおり第2面S2の傾斜角度θ2が第1面S1の傾斜角度θ1より大きくなっていることで、第2面S2のインクの流動容易性が第1面S1よりも高くなっている。このため、第2面S2に少量の掻き取りインクIn2が滴下したときも、当該掻き取りインクIn2をほとんど滞留させることなく下方に流動させることが可能となっている。第2面S2を下方に流動した掻き取りインクIn2は、排出口411aに流入する。
【0060】
また、掻き取り部材42には、当該掻き取り部材42を加熱する掻き取り部材加熱部452が設けられている。掻き取り部材加熱部452は、掻き取り部材42の内部に埋め込まれた電熱線を有し、制御部50による制御下で電熱線に通電することで掻き取り部材42を加熱する。掻き取り部材加熱部452は、掻き取り部材42の背面側、すなわち掻き取りインクIn2が伝う面とは反対側に取り付けられたものであってもよい。掻き取り部材加熱部452による掻き取り部材42の加熱温度は、インクのゾル化温度以上とされる。また、当該加熱温度は、インクが熱硬化する温度、及びインクの臭気レベルが所定の許容範囲となる上限温度のいずれよりも低い範囲内で定められる。掻き取り部材加熱部452による加熱効率を高めるために、掻き取り部材42及び受け皿421は、熱伝導率の高い材質、例えばアルミニウムとすることが好ましい。掻き取り部材加熱部452は、「第2の加熱部」に相当する。
【0061】
図7は、インク桶411の斜視図である。
また、
図8は、インク桶411を+Z方向から見た平面図である。
図5~
図8に示すように、インク桶411の排出口411aは、掻き取り部材42がノズル面241aに付着したインクを掻き取るときの掻き取り部材42とノズル面241aとの相対移動方向(すなわちX方向)について、インク桶411の中心よりも掻き取り部材42側(-X方向側)に設けられている。これにより、第2面S2の傾斜角度θ2を第1面S1の傾斜角度θ1より大きくすることができる。また、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路の長さの最大値L2(
図6)を、第1面S1における排出インクIn1の流動経路の長さの最大値L1(
図5)より小さくすることができる。このように、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路を短くすることによっても、第2面S2において掻き取りインクIn2が残留する問題を生じにくくする効果が得られる。
【0062】
図7に示すインク桶411は、X方向に平行な一対の矩形の側壁と、Y方向に平行な一対の矩形の側壁とを有し、各側壁の下端と排出口411aとを繋ぐ略三角形状の4つの底面を有する。この4つの底面のうち、-X方向側の側壁に接続された1つが第2面S2を構成し、残りの3つの底面が第1面S1を構成する。このような形状によれば、第2面S2の傾斜角度θ2が第1面S1の傾斜角度θ1より大きくなる。また、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路の長さの最大値L2が、第1面S1における排出インクIn1の流動経路の長さの最大値L1より小さくなる。
【0063】
図8に示す領域Rは、第2面S2のうち掻き取りインクIn2が滴下する位置を含み、-X側の側面との接続位置まで繋がる領域である。この領域Rでは、第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512による加熱動作に係る電力密度が、他の領域よりも大きくなっている。具体的には、領域Rにおける電熱線の配置密度が、他の領域における電熱線の配置密度より高くなっている。これにより、掻き取りインクIn2の滴下位置、及び熱が逃げやすい側壁との接続部を効率よく加熱することができる。例えば、領域Rにおける加熱温度を、他の領域よりも高くすることができる。なお、側壁から逃げる熱量が大きく、電力密度の調整では領域Rを十分に加熱できない場合には、第2面加熱部4512から領域Rへの熱の伝導経路の材質を、より熱伝導率の高いものに変更してもよい。あるいは、側壁を加熱する加熱部をさらに設けてもよい。
【0064】
図9は、インク桶411の他の例を示す斜視図である。
図9に示すように、インク桶411の底面は、第1面S1を構成する1枚の板と、第2面S2を構成する1枚の板とを接合した構成であってもよい。この場合にも、排出口411aは、X方向についてインク桶411の中心よりも掻き取り部材42側(-X方向側)に設けられている。これにより、第2面S2の傾斜角度θ2を第1面S1の傾斜角度θ1より大きくすることができる。また、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路の長さの最大値L2を、第1面S1における排出インクIn1の流動経路の長さの最大値L1より小さくすることができる。
【0065】
インク桶411を
図4~
図9に示すような形状とすることで、インク桶411の高さH(
図5)を小さく抑えつつ、第2面S2のインクの流動容易性を高めることができる。すなわち、例えば第1面S1及び第2面S2の傾斜角度をいずれもθ2として排出口411aをインク桶411の中心に設けた比較例(
図10)と比較して、インク桶411の高さHを十分に小さくすることができる。
【0066】
図5及び
図6に示すように、インク桶411の排出口411aは、インク貯留部43に接続されている。インク貯留部43は、インク桶411が受けて排出口411aに流入したインクを貯留する。インク貯留部43の底部には、インク貯留部43に貯留されているインク量を検出するインク量検出部431が設けられている。本実施形態のインク量検出部431は、貯留されているインクの重量を検出するロードセルである。ただし、これに限られず、インク量検出部431は、インクの液面の高さを検出するものなどであってもよい。
【0067】
図4、
図6に示すインク吸収体44は、キャリッジ24aがパージメンテナンス位置から記録位置に戻るときに、ノズル面241aに当接する位置に配置されている。インク吸収体44は、ノズル面241aに当接することで、掻き取り部材42により掻き取られずにノズル面241aに残留したインクを吸収してノズル面241aから除去する。インク吸収体44の材質は、特には限られないが、例えば布やスポンジ等を用いることができる。
【0068】
図1に戻り、定着部25は、搬送ドラム21のX方向の幅に亘って配置された紫外線照射部を有し、搬送ドラム21に載置された記録媒体Mに対して紫外線照射部から紫外線を照射して記録媒体M上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25の紫外線照射部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部26の受け渡しドラム261の配置位置までの間において搬送面と対向して配置される。
【0069】
デリバリー部26は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ262と、記録媒体Mを搬送ドラム21からベルトループ262に受け渡す円筒状の受け渡しドラム261とを有し、受け渡しドラム261により搬送ドラム21からベルトループ262上に受け渡された記録媒体Mをベルトループ262により搬送して排紙部30に送出する。
【0070】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Mが載置される板状の排紙トレー31を有する。
【0071】
図11は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、記録媒体加熱部23と、記録ヘッド241及びヘッド駆動部242を有するヘッドユニット24と、定着部25と、インク量検出部431、第1面加熱部4511、第2面加熱部4512、掻き取り部材加熱部452及び温度検出部46を有するクリーニング部40と、制御部50と、搬送駆動部61と、キャリッジ移動部62と、操作表示部63と、通信部64と、バス65などを備える。このうちクリーニング部40及び制御部50によりメンテナンス装置2が構成される。以下では、既に説明した構成については記載を省略する。
【0072】
制御部50は、インクジェット記録装置1及びメンテナンス装置2の全体動作を統括制御するプロセッサーである。制御部50は、CPU51(Central Processing Unit)と、RAM52(Random Access Memory)と、ROM53(Read Only Memory)と、記憶部54などを備える。
【0073】
CPU51は、ROM53に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM52に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。
【0074】
RAM52は、CPU51に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM52は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0075】
ROM53は、CPU51により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM53に代えてフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0076】
記憶部54には、通信部64を介して外部装置から入力されたプリントジョブ及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データなどが記憶される。記憶部54としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0077】
ヘッド駆動部242は、記録ヘッド241に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、記録ヘッド241のノズルNから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0078】
クリーニング部40のインク量検出部431は、インク貯留部43に貯留されているインク量に対応する検出データを取得して制御部50に出力する。
【0079】
第1面加熱部4511、第2面加熱部4512、掻き取り部材加熱部452は、制御部50から供給される制御信号に基づいて電熱線に通電して、それぞれ第1面S1、第2面S2及び掻き取り部材42を加熱する。また、制御部50は、温度検出部46による検出温度に基づいて、第1面加熱部4511、第2面加熱部4512及び掻き取り部材加熱部452による加熱動作を切り替えることで、第1面S1、第2面S2及び掻き取り部材42を上述の温度範囲内に維持させる。加熱動作の切り替えは、単純なオンオフ動作であってもステップ状に複数段階の切り替えであってもよく、また、高周波数でのオンオフ動作によりPWM制御(Pulse Width Modulation)がなされてもよい。制御部50による第1面加熱部4511、第2面加熱部4512及び掻き取り部材加熱部452の加熱動作の切り替えは、相互に独立して行われる。
【0080】
温度検出部46は、第1面S1、第2面S2及び掻き取り部材42の温度、又は当該温度に対応する温度を検出して制御部50に出力する。
【0081】
搬送駆動部61は、制御部50から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム21の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム21を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部61は、制御部50から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22、及びデリバリー部26を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Mの搬送ドラム21への供給及び搬送ドラム21からの排出を行わせる。
【0082】
キャリッジ移動部62は、制御部50から供給される制御信号に基づいて、ヘッドユニット24のキャリッジ24aを昇降及びX方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力し、上述の記録位置及びパージメンテナンス位置の間でキャリッジ24aを移動させる。
【0083】
操作表示部63は、制御部50からの制御信号に応じてインクジェット記録装置1のステータスや操作メニューなどの表示を行い、またユーザーの操作を受け付けて制御部50に出力する。操作表示部63は、例えば、操作受付手段としてのタッチセンサーが表示手段としての表示画面と重ねて設けられた液晶表示部を備える。操作表示部63の表示画面には、インク貯留部43内のインクが所定量を超えた場合にインクの廃棄をユーザーに促す画面などが表示される。
【0084】
通信部64は、外部機器との間での通信動作を制御する通信インターフェースである。通信インターフェースとしては、例えば、LANボードやLANカードなど、各種通信プロトコルに対応したものが一又は複数含まれる。通信部64は、制御部50の制御に基づいて外部機器から記録対象の画像データなどを取得し、また、外部機器に対してステータス情報などを送信する。
【0085】
バス65は、上記の各構成間を電気的に接続して信号のやり取りを行う経路である。
【0086】
続いて、上記実施形態の変形例について説明する。各変形例では、上記実施形態との相違点について述べ、上記実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0087】
(変形例1)
図12は、変形例1に係るクリーニング部40の構成を示す断面図である。
本変形例のクリーニング部40は、インク桶411とは別個に、掻き取りインクIn2を受ける第2面S2を有するインク副受容部412を備える。インク副受容部412の上端には、掻き取り部材42が取り付けられている。インク副受容部412の第2面S2も、上記実施形態と同様、水平面に対する傾斜角度がθ2となっている。また、インク副受容部412の第2面S2とは反対側の面には、第2面S2を加熱する加熱動作を行う第2面加熱部4512が設けられている。
【0088】
図13は、インク副受容部412の斜視図である。
インク副受容部412は、掻き取りインクIn2を受ける第2面S2と、第2面S2の周囲を囲む側壁412bとを有する。第2面S2は、下方ほどY方向の幅が狭くなる形状を有している。側壁412bは、第2面S2の下端部分にインクが滴下する流出口412aを有している。換言すれば、側壁412bは、第2面S2の周囲のうち流出口412aを除いた部分を囲むように設けられている。
掻き取り部材42により掻き取られてインク副受容部412に滴下した掻き取りインクIn2は、第2面S2を下方に流動するとともに、側壁412bによりガイドされて流出口412aに向かって集約され、流出口412aからインク桶411に滴下する。
【0089】
図12に示すように、インク副受容部412は、インク桶411の-X方向側の側壁の上端に位置している。本変形例のインク桶411は、底面の全体が、水平面からの傾斜角度がθ1である第1面S1となっている。
ここで、インク副受容部412からインク桶411の第1面S1に滴下する掻き取りインクIn2は、上述のとおり、流出口412aで集約された状態となっている。これにより、掻き取りインクIn2は、第1面S1上における単位面積当たりのインク量が、パージメンテナンスの排出インクIn1のインク量と同等以上となる状態となり、第1面S1において滞留せずに下方に流動する。
【0090】
図14は、変形例1に係るクリーニング部40の構成の他の例を示す断面図である。
図14のクリーニング部40では、インク副受容部412から滴下した掻き取りインクIn2が、インク桶411を介さずに直接インク貯留部43に入るようになっている。これにより、インク副受容部412から滴下したインクがインク桶411の第1面S1で滞留する不具合を確実に防ぐことができる。
【0091】
図12及び
図14のように、インク桶411とは別個にインク副受容部412を設けることで、インク桶411及びインク副受容部412の材質、温度、第1面S1及び第2面S2の傾斜角度を独立に調整することができるため、第1面S1及び第2面S2におけるインクの流動容易性を個別に調整することが可能となる。
また、インク桶411をインク副受容部412に対して独立に移動させる移動手段を設けることで、例えば小型のインク桶411をキャリッジ24aのノズル面241aに沿って移動させながら、インク桶411と対向しているノズルNにより順次パージメンテナンスを行うこともできる。
【0092】
(変形例2)
図15は、変形例2に係るクリーニング部40の構成を示す断面図である。
上記実施形態では、第2面S2の傾斜角度を第1面S1の傾斜角度より大きくしたが、第2面S2におけるインクの流動容易性を、第1面S1におけるインクの流動容易性より大きくすることができれば、
図15のように、第1面S1及び第2面S2の傾斜角度を同一(ここでは、θ1)としてもよい。第2面S2におけるインクの流動容易性を相対的に大きくする方法としては、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)第2面S2の表面粗さを第1面S1の表面粗さより小さくする方法
(2)インクに対する第2面S2の撥液性を、第1面S1の撥液性よりも大きくする方法
(3)第2面S2を第1面S1より高温に加熱する方法
【0093】
(1)第2面S2の表面粗さを第1面S1の表面粗さより小さくする方法
この方法を用いる場合には、例えば第2面S2を、第1面S1よりも表面粗さの小さい材質で構成すればよい。また、第2面S2を研磨して表面粗さを低下させてもよい。また、第2面S2の表面に、第1面S1よりも表面粗さの小さい保護膜等を事後的に形成してもよい。表面粗さの指標としては、例えば算術平均粗さRaを用いることができる。
【0094】
(2)インクに対する第2面S2の撥液性を、第1面S1の撥液性よりも大きくする方法
この方法を用いる場合には、例えば第2面S2を、第1面S1よりもインクに対する撥液性の大きい材質で構成すればよい。また、第2面S2の表面に、第1面S1よりも撥液性の大きい保護膜(例えばフッ素を含有する樹脂膜等)を事後的に形成してもよい。
【0095】
(3)第2面S2を第1面S1より高温に加熱する方法
この方法を用いる場合には、第1面加熱部4511の加熱動作による加熱温度よりも、第2面加熱部4512の加熱動作による加熱温度が高くなるように、制御部50から第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512に対して制御信号を供給する。あるいは、第1面S1を加熱しなくても排出インクIn1が第1面S1を流動可能である場合には、第2面加熱部4512による第2面S2の加熱動作のみを行ってもよい。また、第2面加熱部4512により、第2面S2のうち掻き取りインクIn2が接触する部分を含む一部のみを加熱してもよい。
【0096】
なお、上述の(1)~(3)の方法のうち2以上を組み合わせて適用してもよい。
また、第2面S2の傾斜角度を第1面S1の傾斜角度より大きくする上記の実施形態において、(1)~(3)の方法のうち1つ又は2つ以上をさらに適用してもよい。
【0097】
以上のように、本実施形態に係るメンテナンス装置2は、ノズル面241aに付着したインクを掻き取る掻き取り部材42と、ノズルNから排出された排出インクIn1、及び掻き取り部材42により掻き取られた掻き取りインクIn2を受けるインク受容部41と、を備える。また、インク受容部41は、水平面に対して傾斜した第1面S1及び第2面S2を有し、当該第1面S1及び第2面S2のうち少なくとも第1面S1により排出インクIn1を受け、かつ第2面S2により掻き取りインクIn2を受ける。また、第2面S2におけるインクの流動容易性が、第1面S1におけるインクの流動容易性より高くなっている。
このような構成によれば、第2面S2に少量の掻き取りインクIn2が滴下した場合に、第2面S2のインクの流動容易性が高くなっていることにより、当該掻き取りインクIn2をほとんど滞留させることなく下方に流動させることができる。よって、滞留したインクがインクジェット記録装置1の機内に飛散して機内が汚染されたり、インクの臭気が顕著となったりする不具合の発生を抑えることができる。
【0098】
また、第2面S2の水平面からの傾斜角度θ2が、第1面S1の水平面からの傾斜角度θ1より大きい。これにより、簡易に第2面S2におけるインクの流動容易性を第1面S1におけるインクの流動容易性より高くすることができる。
【0099】
また、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路の長さの最大値L2が、第1面S1における排出インクIn1の流動経路の長さの最大値L1より小さい。これにより、第2面S2において掻き取りインクIn2が残留する問題をより生じにくくすることができる。
【0100】
また、インク受容部41は、第1面S1及び第2面S2により排出インクIn1を受ける。このように、パージメンテナンスにおいて第1面S1及び第2面S2の双方を用いて排出インクIn1を受ける構成とすることにより、第1面S1のみで排出インクIn1を受ける構成と比較して、クリーニング部40を小型化することができる。
【0101】
また、インク受容部41は、第1面S1及び第2面S2を有するインク桶411を備える。これにより、排出インクIn1及び掻き取りインクIn2を共通のインク桶411で受けて収集することができる。
【0102】
また、掻き取り部材42は、インク桶411に取り付けられている。これにより、掻き取り部材42から第2面S2の所定の滴下位置へ、安定して掻き取りインクIn2を滴下させることができる。
【0103】
また、変形例1に係るインク受容部41は、第1面S1を有するインク桶411と、第2面S2を有するインク副受容部412とを備え、インク副受容部412は、第2面S2を流動した掻き取りインクIn2が集約されて流出する流出口412aを有するとともに、流出口412aから流出した掻き取りインクIn2がインク桶411の第1面S1に滴下する位置に設けられている。
これにより、インク桶411及びインク副受容部412の材質、温度、第1面S1及び第2面S2の傾斜角度を独立に調整することができるため、第1面S1及び第2面S2におけるインクの流動容易性を個別に調整することが可能となる。また、インク桶411は、傾斜角度が大きい第2面S2を有しないため、インク桶411を小型化することができ、インク桶411を独立に移動させやすくすることができる。
また、掻き取りインクIn2を集約して流出口412aから滴下させることで、第1面S1上に滴下した掻き取りインクIn2の単位面積当たりのインク量を、パージメンテナンスの排出インクIn1のインク量と同等以上とすることができる。このため、インク副受容部412からインク桶411の第1面S1に滴下した掻き取りインクIn2を円滑に下方に流動させることができる。
【0104】
また、インク受容部41は、第1面S1及び第2面S2を流動したインクが流入する排出口411aを有し、メンテナンス装置2は、排出口411aに流入したインクを貯留するインク貯留部43を備える。これにより、排出インクIn1及び掻き取りインクIn2を、インク貯留部43の容量に応じた期間、一時的に貯めておくことができる。
【0105】
また、排出口411aは、掻き取り部材42がノズル面241aに付着したインクを掻き取るときの掻き取り部材42とノズル面241aとの相対移動方向(X方向)について、インク桶411の中心よりも掻き取り部材42側に設けられている。これにより、インク桶411の高さHを小さく抑えつつ、第2面S2の傾斜角度θ2を第2面S2の傾斜角度θ1より大きくすることができる。また、第2面S2における掻き取りインクIn2の流動経路の長さの最大値L2を、第1面S1における排出インクIn1の流動経路の長さの最大値L1より小さくすることができる。
【0106】
また、メンテナンス装置2は、インク貯留部43に貯留されているインク量を検出するインク量検出部431を備える。これにより、インク貯留部43がインクで満杯となる前にユーザーに報知することができる。
【0107】
また、第2面S2の表面粗さを、第1面S1の表面粗さよりも小さくすることで、第2面S2のインクの流動容易性をより高めることができる。
【0108】
また、インクに対する第2面S2の撥液性を、インクに対する第1面S1の撥液性よりも大きくすることで、第2面S2のインクの流動容易性をより高めることができる。
【0109】
また、メンテナンス装置2は、第1面S1及び第2面S2のうち少なくとも第2面S2を加熱する加熱動作を行う第1の加熱部としての第1面加熱部4511及び第2面加熱部4512を備える。これにより、第2面S2に滴下したインクの粘度を下げて流動しやすくすることができる。
【0110】
また、加熱動作における加熱温度を、インクが熱硬化する温度、及びインクの臭気レベルが所定の許容範囲となる上限温度のいずれよりも低くすることで、インクが熱硬化して第1面S1及び第2面S2に滞留したり、インクの臭気が許容範囲を超えたりする問題を生じにくくすることができる。
【0111】
また、インクは、ゲル状態とゾル状態との間で相変化する特性を有し、加熱動作における加熱温度は、インクのゾル化温度以上である。これにより、第1面S1及び第2面S2に滴下したインクをゾル状態に保って流動性を維持し、第1面S1及び第2面S2にインクが滞留する問題を生じにくくすることができる。
【0112】
また、掻き取り部材42は、ノズル面241aと接触しない状態で、当該ノズル面241aに付着したインクを自身に伝わせて掻き取る。これにより、ノズル面241aを傷付けることなくノズル面241aからインクを掻き取ることができる。
【0113】
また、掻き取り部材42は、ノズルNから排出されてノズル面241aに付着したインクを掻き取る。これにより、パージメンテナンス後のノズル面241aを効果的にクリーニングすることができる。
【0114】
また、メンテナンス装置2は、掻き取り部材42により掻き取られた掻き取りインクIn2を伝わせて、第2面S2の所定の滴下位置に滴下させる受け皿421を備える。受け皿421が設けられていることにより、掻き取り部材42により掻き取られたインクを、インク桶411の側壁に付着させずに直接第2面S2に滴下させることができる。側壁にインクが付着すると、インクが冷却されて固化して付着してしまうところ、受け皿421によりこの問題が生じないようにすることができる。
【0115】
また、メンテナンス装置2は、掻き取り部材42を加熱する第2の加熱部としての掻き取り部材加熱部452を備える。これにより、掻き取り部材42を伝うインクの粘度を下げて流動しやすくすることができる。
【0116】
また、メンテナンス装置2は、掻き取り部材42により掻き取られずにノズル面241aに残留したインクを吸収するインク吸収体44を備える。これにより、ノズル面241aをより効果的にクリーニングすることができる。
【0117】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、インクを吐出するノズルNの開口部が設けられたノズル面241aを有する記録ヘッド241と、上記のメンテナンス装置2と、を備える。これにより、メンテナンス装置2のインク受容部41においてインクを滞留しにくくすることができる。よって、滞留したインクがインクジェット記録装置1の機内に飛散して機内が汚染されたり、インクの臭気が顕著となったりする不具合の発生を抑えることができる。
【0118】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、掻き取り部材42として、ノズル面241aと接触しない状態でインクを伝わせて掻き取るものを例示したが、これに限られない。掻き取り部材42は、ノズル面241aに接触した状態でノズル面241aのインクを掻き取るものであってもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクをゾル状に加熱して吐出するインクジェット記録装置1を例に説明したが、これに限定する趣旨ではなく、常温でゾル状又は液体であるインクを含む種々の公知のインクを用いてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、搬送ドラム21により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、複数のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトにより記録媒体Mを搬送してもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、記録ヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0123】
1 インクジェット記録装置
2 メンテナンス装置
10 給紙部
20 画像形成部
21 搬送ドラム
21a 搬送面
24 ヘッドユニット
24a キャリッジ
241 記録ヘッド
241M ヘッドモジュール
241a ノズル面
242 ヘッド駆動部
25 定着部
30 排紙部
40 クリーニング部
41 インク受容部
411 インク桶
411a 排出口
412 インク副受容部
412a 流出口
412b 側壁
42 掻き取り部材
421 受け皿
43 インク貯留部
431 インク量検出部
44 インク吸収体
4511 第1面加熱部
4512 第2面加熱部
452 掻き取り部材加熱部
46 温度検出部
50 制御部
51 CPU
52 RAM
53 ROM
54 記憶部
61 搬送駆動部
62 キャリッジ移動部
63 操作表示部
64 通信部
65 バス
In1 排出インク
In2 掻き取りインク
M 記録媒体
N ノズル
S1 第1面
S2 第2面