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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】家畜腸内細菌叢改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/142 20160101AFI20240416BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20240416BHJP
   A23K 20/111 20160101ALI20240416BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240416BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20240416BHJP
   A23K 50/60 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
A23K20/142
A61P1/12 171
A61K31/198
A61P43/00 121
A61K31/7024
A61K36/87
A61K36/82
A23K20/111
A23K10/30
A23K50/30
A23K50/60
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020135089
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030822
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルボン デマーシー トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】立石 木綿子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和
(72)【発明者】
【氏名】坂内 慎
(72)【発明者】
【氏名】太田 康博
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-256180(JP,A)
【文献】特開平05-000051(JP,A)
【文献】特許第5881801(JP,B2)
【文献】松本光晴,腸内細菌由来ポリアミンを機能性成分とした健康寿命伸長食品の開発,生物工学,第97巻第10号,日本,2019年,第599-602頁,https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9710/9710_tokushu_2.pdf
【文献】個々の腸内細菌の生き残り戦略が組み合わさることで、機能性物質ポリアミンが産生されていることを発見~ポリアミンで予防・軽減が期待される疾患(心血管疾患など)への応用が期待される~,京都大学 最新の研究成果を知る,日本,京都大学,2018年07月06日,第1-5頁,https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2018-07-06-0
【文献】栗原新,ヒト腸内細菌最優勢種の腸管内腔におけるポリアミン生産機構の遺伝学的解析,科学研究費助成事業 研究成果報告書,日本,2020年07月10日,第1-13頁,https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-17H05026/17H05026seika.pdf
【文献】吉田隆志 外2名,天然ナノ分子タンニン -その構造と機能-,有機合成化学協会誌,第62巻第5号,日本,2004年,第500-507頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/62/5/62_5_500/_pdf
【文献】柿と牛乳を混ぜた際の凝固作用における品種間差について,みんなのひろば,日本,日本植物整理学会,2015年12月25日,第1-2頁,https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3411
【文献】奥田拓男,タンニンの効用,日本釀造協會雜誌,第78巻第10号,日本,1983年10月15日,第728-732頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/78/10/78_10_728/_article/-char/ja/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/142
A61P 1/12
A61K 31/198
A61P 43/00
A61K 31/7024
A61K 36/87
A61K 36/82
A23K 20/111
A23K 10/30
A23K 50/30
A23K 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニン及びタンニンを有効成分として含有する、家畜腸内乳酸菌の増殖用家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項2】
さらに、バリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、グルタミン、及びスレオニンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含む、請求項1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項3】
タンニンがブドウまたは茶の抽出物由来である、請求項1または2に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項4】
剤の全量を基準にして、アルギニンを、遊離体換算量で25.0~55.0質量%含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項5】
剤の全量を基準にして、タンニンを1.0~10.0質量%含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項6】
アルギニンが家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.25~1.1g含まれるように飼料原料に添加されるための、請求項1~5のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項7】
タンニンが家畜飼料1kgあたり0.01~0.2g含まれるように飼料原料に添加されるための、請求項1~6のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項8】
アルギニンとタンニンの含有比率が、質量基準で2.5:1~55.0:1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項9】
前記家畜が単胃の家畜である、請求項1~8のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項10】
前記家畜が離乳期の豚である、請求項1~9のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤と、飼料原料とを含む、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を飼料原料に添加する工程を含む、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物の調製方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜腸内の乳酸菌を増殖させる方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を飼料原料に添加し、得られる家畜飼料組成物を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜の健康増進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用の腸内細菌叢改善剤に関する。詳細には、家畜腸内細菌叢改善剤、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物、その調製方法、家畜腸内細菌叢を改善する方法、家畜腸内の乳酸菌を増殖させる方法、及び家畜の健康増進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼育上の問題として、家畜の出生前または出生後幼若期に生じる種々のストレスにより、家畜の生育が低下することが挙げられる。家畜の体重は売上げに直結し商業上重要であるため、かかる問題は畜産農家にとって深刻である。
【0003】
例えば、豚は、免疫系や消化管系が未成熟な状態で出生し、各種感染病や下痢等に罹患しやすい。また、子豚は離乳期における母乳から固形飼料への切り替え時のストレス等により、消化管等の内臓が虚弱化し、飼料摂取量の低下または栄養成分の消化と吸収を著しく低下、腸内細菌叢の撹乱や免疫力の低下によって、細菌や原虫などの病原体に感染しやすくなる。その結果、疾病の発生や成長(増体)の低下などの生産性低下、および生産物の品質への影響が問題となっている。
【0004】
上記問題に対しては、例えば腸内細菌叢のうち有用菌である乳酸菌(Lactobacillus属)やビフィズス菌(Bifidobacterium属)を増やすことで、免疫機能や消化生理機能を向上させることにより、生産性の低下を防ぐことが考えられる。例えば、特許文献1ではビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)の細胞壁の酵素消化物を有効成分とする家畜の下痢の予防、治療剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭56-108717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は家畜の腸内に元来棲息している有用細菌を培養し、その有効成分のみをとりだして、また宿主にもどすことで、家畜腸内の有用細菌を増やし、腸内細菌叢を改善するものである。ここで用いられているビフィドバクテリウムは、偏性嫌気性細菌であって原料となる細菌細胞の培養には嫌気操作が必要となり操作が繁雑であり、しかも生育にはビタミン等高価な原料を必要とし、菌体収量も低くコスト高となる欠点を有する。
従って、本発明は、より簡易に家畜の腸内細菌叢を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルギニンとタンニンとを組み合わせて家畜に給与することにより、驚くべきことに家畜の腸内細菌叢を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.アルギニン及びタンニンを有効成分として含有する、家畜腸内細菌叢改善剤。
2.さらに、バリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、グルタミン、及びスレオニンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含む、上記1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
3.タンニンがブドウまたは茶の抽出物由来である、上記1または2に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
4.剤の全量を基準にして、アルギニンを、遊離体換算量で25.0~55.0質量%含有する、上記1~3のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
5.剤の全量を基準にして、タンニンを1.0~10.0質量%含有する、上記1~4のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
6.アルギニンが家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.25~1.1g含まれるように飼料原料に添加されるための、上記1~5のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
7.タンニンが家畜飼料1kgあたり0.01~0.2g含まれるように飼料原料に添加されるための、上記1~6のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
8.アルギニンとタンニンの含有比率が、質量基準で2.5:1~55.0:1である、上記1~7のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
9.前記家畜が単胃の家畜である、上記1~8のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
10.前記家畜が離乳期の豚である、上記1~9のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
11.前記家畜腸内細菌叢改善が、家畜腸内乳酸菌の増殖である、上記1~10のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤。
12.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤と、飼料原料とを含む、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物。
13.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を飼料原料に添加する工程を含む、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物の調製方法。
14.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法。
15.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜腸内の乳酸菌を増殖させる方法。
16.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を飼料原料に添加し、得られる家畜飼料組成物を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法。
17.上記1~11のいずれか1に記載の家畜腸内細菌叢改善剤を家畜に給与する、家畜の健康増進方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態の家畜腸内細菌叢改善剤はアルギニン及びタンニンを有効成分として含有するため、当該剤を家畜に給与することにより、家畜の腸内細菌叢を改善させることができる。これにより、家畜の健康を増進でき、ひいては家畜の増体重量の低下を抑制できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、試験例1-1におけるアルギニンとタンニンの結合性試験の結果を示すグラフである。
図2図2は、試験例1-2におけるアルギニンとタンニンの結合性試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、試験開始14日目(d14)における飼料区ごとの豚の体重(A)、試験開始14日目までの飼料区ごとの豚の増体重量(B)、試験開始14日目までの飼料区ごとの飼料効率(C)、試験開始14日目までの1日あたりの飼料摂取量(D)を示すグラフである。
図4図4は、試験開始35日目(d35)における飼料区ごとの豚の体重(A)、試験開始14日目までの飼料区ごとの豚の増体重量(B)、試験開始35日目までの1日あたりの飼料摂取量(C)、試験開始35日目までの飼料区ごとの飼料効率(D)を示すグラフである。
図5図5は、試験開始14日目(d14)における飼料区ごとのLactobacillusの菌数(A)、試験開始14日目における飼料区ごとのBifidobacteriumの菌数(B)、試験開始35日目(d35)における飼料区ごとのLactobacillusの菌数(C)、試験開始35日目における飼料区ごとのBifidobacteriumの菌数(D)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において、「改善」とは、悪化した状態または症状を緩和すること、改善すること、若しくは回復を促進することを意味する。具体的には、家畜腸内細菌叢の「改善」とは、家畜腸内に存在する腸内細菌叢の菌数、および菌種の比率が悪化した状態または症状を緩和すること、改善すること、若しくは回復を促進することを意味する。
【0012】
本実施形態の家畜腸内細菌叢改善剤(以下、改善剤または単に剤ともいう)は、アルギニン及びタンニンを有効成分として含有する。本発明者らは、アルギニンとタンニンとを組み合わせて家畜に摂取させることにより、家畜の腸内細菌叢を改善することを見出した。具体的には、後述する実施例に示すように、アルギニンとタンニンとを組み合わせて家畜に摂取させることで、家畜腸内の乳酸菌を増殖させることができた。そして、かかる効果は、アルギニン単独あるいはタンニン単独で家畜に摂取させる場合と比較して高いものであった。このように、アルギニンとタンニンの組み合わせにより家畜の腸内細菌叢を改善できる理由については明らかではないが、家畜がアルギニンおよびタンニンの両方を摂取すると、後述する実施例に示すように、家畜体内でアルギニンとタンニンとが複合体を形成することにより、腸管まで分解されることなく到達し、アルギニンおよびタンニンの両者ともに腸内に吸収されやすくなることに起因していると推測される。
【0013】
本実施形態の改善剤が含有するアルギニンは、遊離アルギニンまたはペプチドを形成する非遊離アルギニンのいずれの形態として含まれていてよい。
また、遊離アルギニンまたはペプチドは、塩であってもなくてもよい。遊離アルギニンまたはペプチドの塩としては、例えば、無機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩および有機塩基との塩が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば、ハロゲン化水素酸(例、塩酸)、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸等との塩が挙げられる。有機塩基との塩としては、例えば、ヌクレオチド(例、プリン誘導体、ピリミジン誘導体)、アルカロイドが挙げられる。遊離アミノ酸およびペプチドはまた、水和物または溶媒和物であっても、なくてもよい。
【0014】
アルギニンの含有量は、剤の全量を基準にして、遊離体換算量で25.0質量%以上であることが好ましい。アルギニンの含有量が25.0質量%以上であることで本発明の効果を得るために必要な量を供給できる。より好ましくは30.0質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上である。
アルギニンの含有量は、剤の全量を基準にして、遊離体換算量で55.0質量%以下であることが好ましい。アルギニンの含有量が55.0質量%以下であることで、過剰添加による悪影響を防ぐことが可能となる。より好ましくは50.0質量%以下であり、さらに好ましくは45.0質量%以下である。
また、アルギニンの含有量は、剤の全量を基準にして、遊離体換算量で25.0~55.0質量%であることが好ましく、30.0~50.0質量%であることがより好ましく、35.0~45.0質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
また、本実施形態の改善剤は、アルギニンが、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.25g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。アルギニンが、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.25g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.30g以上であり、さらに好ましくは0.35g以上である。
本実施形態の改善剤は、アルギニンが、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で1.1g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。アルギニンが、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で1.1g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰添加による悪影響を防ぐことが可能であるためである。より好ましくは1.0g以下であり、さらに好ましくは0.9g以下である。
また、本実施形態の改善剤は、アルギニンが、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.25~1.1g含まれるように飼料原料に添加される用途で用いられることが好ましく、0.30~1.0g含まれることがより好ましく、0.35~0.9g含まれることがさらに好ましい。
【0016】
ここで、飼料原料とは、本発明の一実施形態における改善剤を添加する前の飼料を意味し、すなわち改善剤が添加される対象の飼料を意味する。
また、家畜飼料とは、本発明の一実施形態における改善剤を添加した後の飼料を意味し、すなわち飼料原料と改善剤とを合わせた飼料全体を意味する。
また、改善剤におけるアルギニンの含有量(遊離体換算)は、例えばアミノ酸分析計(日立ハイテクサイエンス社製、高速アミノ酸分析計、LA8080 Amino SAAYAや島津製作所社製、LC/MS高速アミノ酸分析システムUF-Amino station)によって測定することができる。
【0017】
本実施形態の改善剤が含有するタンニンとは、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、ポリフェノール化合物の総称である。タンニンにはピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。タンニンの由来植物としては、ブドウ、茶、柿、カカオ、ゆず、イモ、リンゴ、ブルーベリー、バナナ、栗皮、タマリンド、ミモザ、五倍子等が挙げられる、特に限定されるものではない。本実施形態においては、タンニンを含有する植物からの抽出物を使用することができる。
なかでも好ましくはブドウまたは茶の抽出物由来のタンニンであり、より好ましくはブドウの抽出物由来のタンニンである。
【0018】
本実施形態の改善剤において、タンニンは、原料から抽出後、乾燥して粉末として用いられてもよく、粉末のタンニンを水に溶解したものをタンニン水溶液として用いてもよく、あるいは原料からの抽出液をそのままタンニン水溶液として用いてもよい。
【0019】
タンニンの原材料(例えば、ブドウ、茶や熱水抽出物)には、タンニン以外に各種の糖、有機酸、アミノ酸等が含まれているため、必要に応じて精製して、これらの不純物を除去したものを用いることが好ましい。
【0020】
タンニンの含有量は、剤の全量を基準にして、1.0質量%以上であることが好ましい。タンニンの含有量が1.0質量%以上であることで本発明の効果を得るために必要な量を供給できる。より好ましくは1.2質量%以上であり、さらに好ましくは1.3質量%以上である。
タンニンの含有量は、剤の全量を基準にして、10.0質量%以下であることが好ましい。タンニンの含有量が10.0質量%以下であることで過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.5質量%以下である。
また、タンニンの含有量は、剤の全量を基準にして、1.0~10.0質量%であることが好ましく、1.2~5.0質量%であることがより好ましく、1.3~3.5質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
また、本実施形態の改善剤は、タンニンが、家畜飼料1kgあたり0.01g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。タンニンが、家畜飼料1kgあたり0.01g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.012g以上であり、さらに好ましくは0.014g以上である。
本実施形態の改善剤は、タンニンが、家畜飼料1kgあたり0.2g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。タンニンが、家畜飼料1kgあたり0.2g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.10g以下であり、さらに好ましくは0.07g以下である。
また、本実施形態の改善剤は、タンニンが、家畜飼料1kgあたり0.01g~0.2g含まれるように飼料原料に添加されることが好ましく、0.012~0.10g含まれることがより好ましく、0.014~0.07g含まれることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態の改善剤におけるタンニンの含有量は、例えばフォーリン・デニス法(Folin Denis)よって測定することができる。フォーリン・デニス法はフォーリン試薬(フェノール試薬)を用いる吸光光度法で、ワインや蒸留酒のタンニン分析法としてAOAC Internationalの公定法(AOAC Method 952.03,955.25)に採用されている(栗林剛、工業技術総合センター 食品技術部門加工食品部,http://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/pdf/gijutujoho275.pdf)。
【0023】
本実施形態の改善剤は、アルギニン(遊離体換算量)とタンニンの含有比率が、質量基準で2.5:1~55.0:1であることが好ましい。アルギニンとタンニンの含有比率が、質量基準で「2.5:1」以上であることによりアルギニンの不足を防ぐことができ、「55.0:1」以下であることによりアルギニンの過剰を防ぐためである。より好ましくは3:1~30:1であり、さらに好ましくは4:1~25:1である。
【0024】
本実施形態の改善剤は、アルギニンの他にも、さらにバリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、グルタミン、及びスレオニンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含むことが好ましい。これらのアミノ酸を含有することにより、更なる効果を期待できる。
本実施形態の改善剤は、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びシスチンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含むことがより好ましい。
【0025】
上記アミノ酸も、アルギニンと同様に、遊離アミノ酸またはペプチドを形成する非遊離アミノ酸のいずれの形態として含まれていてよい。また、遊離アミノ酸またはペプチドは、塩であってもなくてもよい。また、水和物または溶媒和物であってもなくてもよい。
【0026】
本実施形態の改善剤は、バリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、グルタミン、及びスレオニンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含む場合、かかるアミノ酸は家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.5g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。当該アミノ酸が、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.5g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.7g以上であり、さらに好ましくは1g以上である。
本実施形態の改善剤は、当該アミノ酸が、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で3g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。当該アミノ酸が、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で2.5g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止するためである。より好ましくは2g以下である。
また、本実施形態の改善剤は、当該アミノ酸が、家畜飼料1kgあたり遊離体換算量で0.5~3g含まれるように飼料原料に添加されることが好ましく、0.7~2.5g含まれることがより好ましく、1~2g含まれることがさらに好ましい。
【0027】
また、本実施形態の改善剤は、バリンが、家畜飼料1kgあたり0.038g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。バリンが、家畜飼料1kgあたり0.038g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.056g以上であり、さらに好ましくは0.075g以上である。
本実施形態の改善剤は、バリンが、家畜飼料1kgあたり0.45g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。バリンが、家畜飼料1kgあたり0.45g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.38g以下であり、さらに好ましくは0.3g以下である。
【0028】
また、本実施形態の改善剤は、ロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.075g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。ロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.075g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.11g以上であり、さらに好ましくは0.15g以上である。
本実施形態の改善剤は、ロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.90g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。ロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.90g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.75g以下であり、さらに好ましくは0.6g以下である。
【0029】
また、本実施形態の改善剤は、イソロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.038g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。イソロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.038g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.056g以上であり、さらに好ましくは0.075g以上である。
本実施形態の改善剤は、イソロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.45g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。イソロイシンが、家畜飼料1kgあたり0.45g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.38g以下であり、さらに好ましくは0.3g以下である。
【0030】
また、本実施形態の改善剤は、シスチンが、家畜飼料1kgあたり0.05g以上含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。シスチンが、家畜飼料1kgあたり0.05g以上含まれるように飼料原料に添加されることで、本発明の効果を得るために必要な量を供給できるためである。より好ましくは0.075g以上であり、さらに好ましくは0.1g以上である。
本実施形態の改善剤は、シスチンが、家畜飼料1kgあたり0.75g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。シスチンが、家畜飼料1kgあたり0.75g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.63g以下であり、さらに好ましくは0.5g以下である。
【0031】
本実施形態の改善剤は、グルタミンが、家畜飼料1kgあたり0.15g以下含まれるように飼料原料に添加されることが好ましい。グルタミンが、家畜飼料1kgあたり0.15g以下含まれるように飼料原料に添加されることで、過剰による嗜好性低下を防止する。より好ましくは0.13g以下であり、さらに好ましくは0.1g以下である。
【0032】
本実施形態の改善剤は、15日間以上継続して給与することが好ましく、21日間以上継続して給与することがより好ましく、35日間以上継続して給与することがさらに好ましい。また、上限は特に制限されないが、例えば、60日間以下継続して給与する。また、離乳後0~21日の期間で投与されることが好ましく、0~35日の期間で投与されることがより好ましい。
【0033】
本実施形態の改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、賦形剤、増量剤、栄養補強剤、その他の任意の成分を配合することもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられ、増量剤としては、例えば、デキストリンやデンプン等が挙げられ、栄養補強剤としては、例えば、ビタミン類やミネラル類が挙げられ、その他の任意の成分としては、例えば、酵素剤等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の改善剤を適用できる家畜としては、特に制限されないが、反芻動物の第1胃での分解の可能性を避けるため単胃の家畜であることが好ましい。単胃の家畜としては、例えば、豚、家禽、ウマ等が挙げられる。より好ましくは、豚、家禽である。
また、哺乳動物にあっては、離乳期に適用することが好ましい。ここで離乳期とは家畜の発育状態によるが、家畜の消化生理が成熟した状態になった時期のことを示し、豚においては、21~28日齢を経過したもののことをいう。
また、家禽にあっては、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、及びガチョウ等が挙げられ、ニワトリであることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の改善剤を家畜に給与することにより、家畜腸内細菌叢を改善することができる。また、家畜腸内の乳酸菌を増殖させることができる。そして、家畜腸内細菌叢が改善することにより、腸の消化・栄養吸収機能を最適化することができ、その結果、家畜の健康を増進することができる。
【0036】
本実施形態の改善剤は、後述するように飼料原料に添加して、家畜飼料組成物を得てから家畜に給与してもよいし、当該改善剤を直接家畜に給与してもよい。
【0037】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を飼料原料に添加し調製された家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物(以下、単に飼料組成物ともいう)を提供する。
飼料原料としては、特に制限されないが、例えば、とうもろこし、大麦、小麦、ライ麦、ソルガム、大豆、黄粉などの穀類、大豆油かす、大豆蛋白、油脂、スキムミルク、魚粉、肉骨粉、血粉、血漿蛋白、ホエー、米ぬか、ふすま、砂糖などの糖類やその他の甘味料、ミネラル、ビタミン、食塩などの原料を単独あるいは組み合わせたものを用いることができる。
【0038】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を飼料原料に添加する工程を含む、家畜腸内細菌叢改善用飼料組成物の調製方法を提供する。上記改善剤を飼料原料に添加する方法は特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、マッシュへの添加、ペレット化が挙げられる。また、飼料原料は上述したものを用いることができる。
【0039】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法を提供する。かかる方法においては、飼料原料に改善剤を添加することなく、剤自体を直接家畜に給与してよい。家畜に給与する改善剤の量や、給与する日数等は、上述したとおりである。上記改善剤を家畜に給与することにより、家畜腸内細菌叢を改善することができる。
【0040】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を家畜に給与する、家畜腸内の乳酸菌を増殖させる方法を提供する。かかる方法においては、飼料原料に改善剤を添加することなく、剤自体を直接家畜に給与してよい。家畜に給与する改善剤の量や、給与する日数等は、上述したとおりである。上記改善剤を家畜に給与することにより、家畜腸内の乳酸菌を増殖させることができる。
【0041】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を飼料原料に添加し、得られる家畜飼料組成物を家畜に給与する、家畜腸内細菌叢を改善する方法を提供する。飼料原料は上述したものを用いることができる。また、家畜に給与する飼料組成物の量や、給与する日数等も、上述したとおりである。上記家畜飼料組成物を家畜に給与することにより、家畜腸内細菌叢を改善することができる。
【0042】
本発明の別の実施形態として、上記改善剤を家畜に給与する、家畜の健康増進方法を提供する。家畜に給与する改善剤の量や、給与する日数等は、上述したとおりである。上記改善剤を家畜に給与することにより、家畜腸内細菌叢が改善し、さらに腸の消化・栄養吸収機能を最適化することができ、その結果、家畜の健康を増進することができる。
【0043】
本発明における腸内細菌叢としては、例えば乳酸菌、ビフィズス菌が挙げられる。乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレストコッカス(Streptococcus)属、ルコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、および、ラクトコッカス(Lactococcus)属のいずれかに分類される細菌が挙げられる。
【実施例
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。実施例における各項目の計測は下記の方法で実施した。
【0045】
[初期体重、最終体重、増体重量]
各個体の体重は、試験開始時と終了時に畜産用はかりを用いて測定し、各群で相加平均を算出した。
【0046】
[1日あたりの飼料摂取量(DFI)]
一定日数の給餌量と残餌量の差から摂取量を計測した。日数および豚数で割り、群ごとに1日あたりの平均飼料摂取量を算出した。
【0047】
[1日あたりの増体重量(ADG)]
一定日数における体重増加を日数で割り、1日あたりの増体重量を算出した。
【0048】
[飼料効率(FCR)]
1日あたりの飼料摂取量を1日あたりの増体重量で割り、飼料効率を算出した。
【0049】
[生存率]
全頭数に対する一定日数経過後の豚の生存数を算出し、生存率とした。
【0050】
[乳酸菌数]
一定日数経過後の各ペンから豚の糞便を収集し、乳酸菌(Lactobacillus)の菌数をカウントした。
【0051】
試験例1:アルギニンとタンニンの結合試験
(試験例1-1)
本試験例では、以下の手順でアルギニンとタンニンの結合性を確認した。
1. 1mg/mLのブドウ抽出物(タンニン含量68.5%)と100mMのAA(Leu,Arg,BCAA,Thr,Glnのいずれか一種)を混合し、以下の1)~3)の条件でそれぞれ反応させた。
1)pH5で2時間反応
2)pH6で2時間反応
3)pH7で2時間反応
2. 上記1)~3)の条件で反応させた各溶液200μlを96ウェルプレート(UV-STARプレート、Greiner bio one社製)に3回に分けて分注した。
3. 280nmにおける吸光度を分光光度計(Spectra Max,Molecular Devicess社製))を用いて測定した。各溶液(AA+ブドウ抽出物)の吸光度を、ブドウ抽出物のみを含む溶液(コントロール)の吸光度に対する相対値で表した。結果を図1に示す。
図1の結果からも分かるとおり、アミノ酸の中でも、特にアルギニンをブドウ抽出物と混合させた場合に、最も吸光度が高くなっており、これはアルギニンとブドウ抽出物(タンニン)との結合性が高いことを示している。
【0052】
(試験例1-2)
本試験例では、以下の手順でアルギニンとタンニン(ブドウ抽出物、TANAL01、KingBrown(登録商標))の結合性を確認した。
1. 1mg/mLのタンニン(ブドウ抽出物、TANAL01(Ajinomoto NaturalSpecialities社製)、KingBrown(Kingtree社製)のいずれか一種)と100mMのAA(Arg)を混合し、以下の1)~3)の条件でそれぞれ反応させた。
1)pH5で2時間反応
2)pH6で2時間反応
3)pH7で2時間反応
2.上記1)~3)の条件で反応させた各溶液の上清1mlに、それぞれ0.75mlの酢酸緩衝液(pH=5.6)と、0.4mlのニヒドリン(3.5mg/l)とを混合し、37℃で25分間インキュベートした。
3.570nmにおける吸光度を分光光度計(Spectra Max、Molecular Devicess社製)を用いて測定した。各溶液(Arg+タンニン)の吸光度を、タンニンのみを含む溶液(コントロール)の吸光度に対する相対値で表した。結果を図2に示す。
図2の結果からも分かるとおり、アルギニンは、ブドウ抽出物、TANAL01、及びKingBrownのいずれと混合した場合でも吸光度が高く、これはアルギニンとタンニンとの結合性が高いことを示している。
【0053】
試験例2:離乳期の豚に対する給与試験
試験動物として、平均日齢が25日、平均体重が6.92kgである、計240頭の交雑種(Landrace x Large White x Duroc)の離乳子豚を用いた。これらの離乳子豚をT1~T4の4つの飼料給与態様に分類した。各試験区は10ペンで構成され、1ペンあたり6頭(3頭の雄+3頭の雌)/ペン)とし、ランダムに割り当てた。各ペンのサイズは1.5m×2.0mとした。
T1~T4の試験区の飼料給与態様について、表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
・T1試験区:最初の2週間(d0~d14)は基礎食(Pre-starter feeds;表3に組成を示す)を豚に給与し、後半の3週間(d14~d35)はCommon starter feeds(表3に組成を示す)を豚に給与した。
・T2試験区:最初の2週間(d0~d14)は基礎食(Pre-starter feeds)に0.1重量%のAAミックス(表2に組成を示す)を添加した家畜飼料を調製し、豚に給与した。後半の3週間(d14~d35)はCommon starter feedsを豚に給与した。
・T3試験区:最初の2週間(d0~d14)は基礎食(Pre-starter feeds)に、85重量ppmのブドウ種子抽出物、及び15重量ppmのブドウ皮抽出物を添加した家畜飼料を調製し、豚に給与した。後半の3週間(d14~d35)はCommon starter feedsを豚に給与した。
・T4試験区:最初の2週間(d0~d14)は基礎食(Pre-starter feeds)に、0.1重量%のAAミックス、85重量ppmのブドウ種子抽出物、及び15重量ppmのブドウ皮抽出物を含有する剤を添加した家畜飼料を調製し、豚に給与した。後半の3週間(d14~d35)はCommon starter feeds豚に給与した。
なお、上記剤中にアルギニンは遊離体換算量で37.9重量%、タンニンは9.1重量%含まれていた。また、家畜飼料1kg中には、アルギニンが遊離体換算量で0.42g、タンニンが遊離体換算量で0.1g含まれていた。また、家畜飼料の給与は、自由給餌とした。
【0056】
AAミックスの組成は表2に示す。
基礎食(Pre-starter feeds)およびCommon starter feedsの組成は表3に示す。なお、表3中の「-」は原料を含有しないことを示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
初期体重、最終体重、増体重量、1日あたりの飼料摂取量、1日あたりの増体重量、飼料効率、及び生存率について、0~14日目(d0~d14)までの結果を表4及び図3、14~35日目(d14~d35)までの結果を表5、0~35日目(d0~d35)までの結果を表6及び図4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
また、乳酸菌(Lactobacillus)及びビフィズス菌(Bifidobacterium)数について、14日目(d14)および35日目(d35)の結果を表7及び図5に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
本発明のアルギニン及びタンニンの両方を含有する剤を添加したT4試験区では、アルギニン及びタンニンのいずれも含まない飼料を給与したT1試験区、アルギニンまたはタンニンを単独で含有する剤を添加した飼料を給与したT2およびT3試験区と比較して、増体重量が高くなり、また腸内の乳酸菌(Lactobacillus)の菌数が増大することがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5