(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両の動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/08 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B60K17/08 H
B60K17/08 M
(21)【出願番号】P 2020147739
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 伸介
(72)【発明者】
【氏名】山内 義弘
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-113146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0176617(US,A1)
【文献】特公昭40-018928(JP,B1)
【文献】特開2020-093665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から入力される動力を変速して出力する変速機と、前記変速機に連結されて前記変速機から出力される前記駆動源からの動力を駆動輪に伝達するドライブシャフトとを備えた車両の動力伝達装置であって、
前記変速機は、変速機ケース内に軸線が車体前後方向に延びるように配置されて前記駆動源からの動力を変速する変速機構部を有し、
前記ドライブシャフトは、車体前後方向における前記変速機構部の中央側において車幅方向に延び、前記変速機ケースを貫通して設けられ
、
前記変速機構部は、同一軸線上に配置された入力軸及び出力軸と、前記入力軸及び前記出力軸と平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸又は前記出力軸に設けられた第1ギヤと前記カウンタ軸に設けられて前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤとでそれぞれなる複数のギヤ列とを有する変速ギヤ部と、前記変速ギヤ部を操作する変速ギヤ操作部とを備え、
前記ドライブシャフトは、前記変速ギヤ部と前記変速ギヤ操作部との間を通じて車幅方向に延びている、
ことを特徴とする車両の動力伝達装置。
【請求項2】
前記ドライブシャフトは、車体上下方向における前記変速機構部の中央側において車幅方向に延びている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の動力伝達装置。
【請求項3】
前記ドライブシャフトは、前記複数のギヤ列のうち前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列に対応する車体前後方向位置において車幅方向に延びている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の動力伝達装置。
【請求項4】
前記変速機に連結されると共に前記ドライブシャフトに連結されて前記変速機から出力される前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するデファレンシャル装置を備えている、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の車両の動力伝達装置。
【請求項5】
前記デファレンシャル装置が収納されるデフハウジングを備え、
前記デフハウジングは、前記変速機ケースと一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項
4に記載の車両の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、エンジンなどの駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路上に変速機やデファレンシャル装置が設けられ、駆動源からの動力が変速機及びデファレンシャル装置を介してデファレンシャル装置から車幅方向に延びるドライブシャフトに伝達され、ドライブシャフトから駆動輪に伝達されるようになっている。
【0003】
フロントエンジン・リヤドライブ車用の縦置き式の変速機を備えた車両では、車体前部にエンジン及び変速機を配置すると共に、エンジンからの動力を変速機からプロペラシャフトを通じて車体後部に配置した後輪用デファレンシャル装置に伝達してドライブシャフトを介して後輪に伝達することが行われている。
【0004】
また、フロントエンジン・リヤドライブベースの四輪駆動車用の縦置き式の変速機を備えた車両では、変速機から出力されたエンジンからの動力を前輪にも分配するトランスファ装置を設けて、エンジンからの動力をトランスファ装置から前輪用プロペラシャフトを通じて車体前部に配置した前輪用デファレンシャル装置に伝達してドライブシャフトを介して前輪にも伝達することが行われている。
【0005】
例えば特許文献1には、フロントエンジン・リヤドライブベースの四輪駆動車用の縦置き式の変速機を備えた車両において、車体前部に配置された無段変速機などの変速機より車体前側且つ始動クラッチより車体後側に車幅方向に延びるドライブシャフトが配置されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スポーツタイプのフロントエンジン・リヤドライブ車などの車両では、車体前部にエンジンなどの駆動源を配置すると共に車体後部の重量を増加させるためなど、車体後部にドライブシャフト近傍に縦置き式の変速機を配置することがある。かかる場合、駆動源からプロペラシャフトを介して変速機に動力を伝達し、変速機から車体後部に配置されたデファレンシャル装置及びドライブシャフトを介して車体後部に配置された駆動輪に動力を伝達することが行われる。
【0008】
前記車両において、車体後部に配置される変速機がドライブシャフトより車体前側に配置される場合、車室空間が狭くなって乗員の居住性を低下させるおそれがある。これに対し、ドライブシャフトより車体後側に変速機を配置することが考えられるが、車体後側のオーバーハングが大きくなって操縦安定性の低下を引き起こし得る。
【0009】
そこで、本発明は、縦置き式の変速機を備えた車両において変速機が車体後部にドライブシャフト近傍に配置される場合に、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる車両の動力伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、駆動源から入力される動力を変速して出力する変速機と、前記変速機に連結されて前記変速機から出力される前記駆動源からの動力を駆動輪に伝達するドライブシャフトとを備えた車両の動力伝達装置であって、前記変速機は、変速機ケース内に軸線が車体前後方向に延びるように配置されて前記駆動源からの動力を変速する変速機構部を有し、前記ドライブシャフトは、車体前後方向における前記変速機構部の中央側において車幅方向に延び、前記変速機ケースを貫通して設けられ、前記変速機構部は、同一軸線上に配置された入力軸及び出力軸と、前記入力軸及び前記出力軸と平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸又は前記出力軸に設けられた第1ギヤと前記カウンタ軸に設けられて前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤとでそれぞれなる複数のギヤ列とを有する変速ギヤ部と、前記変速ギヤ部を操作する変速ギヤ操作部とを備え、前記ドライブシャフトは、前記変速ギヤ部と前記変速ギヤ操作部との間を通じて車幅方向に延びている、車両の動力伝達装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、縦置き式の変速機を備えた車両において変速機が車体後部にドライブシャフト近傍に配置される場合に、ドライブシャフトが変速機構部の車体前後方向中央側で変速機ケースを貫通して車幅方向に延びるので、ドライブシャフトより車体前側に変速機が配置される場合に比して変速機によって車室空間が狭くなって乗員の居住性が低下することを抑制することができる。また、ドライブシャフトより車体後側に変速機が配置される場合に比して車体後側のオーバーハングが大きくなって操縦安定性が低下することを抑制することができる。
【0012】
したがって、縦置き式の変速機を備えた車両において変速機が車体後部にドライブシャフト近傍に配置される場合に、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる。
ドライブシャフトは、変速ギヤ部と変速ギヤ操作部との間を通じて車幅方向に延びるので、ドライブシャフトが変速ギヤ部の間と変速ギヤ操作部の間とを通じて車幅方向に延びる場合に比して、ドライブシャフトを組立性良く車体上下方向に分散配置された変速ギヤ部と変速ギヤ操作部との間に配置することができ、ドライブシャフトと変速機とを組立性良く配置することができる。
【0013】
前記ドライブシャフトは、車体上下方向における変速機構部の中央側において車幅方向に延びることが好ましい。
【0014】
本構成により、ドライブシャフトが変速機構部の車体上下方向中央側で車幅方向に延びるので、ドライブシャフトの上方に変速機が配置される場合に比して車両の重心位置を低くして操縦安定性を向上させることができる。また、ドライブシャフトの下方に変速機が配置される場合に比して、地面との隙間を大きくして地上高を確保することができる。
【0015】
前記ドライブシャフトは、複数のギヤ列のうち第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列に対応する車体前後方向位置において車幅方向に延びることが好ましい。
【0016】
本構成により、ドライブシャフトは複数のギヤ列のうち第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列に対応する車体前後方向位置で車幅方向に延びるので、ドライブシャフトを変速機構部の軸線に近接して配置して変速機及びドライブシャフトを車体上下方向にコンパクトに配置することができる。
【0019】
前記車両の動力伝達装置は、変速機に連結されると共にドライブシャフトに連結されて変速機から出力される駆動源からの動力をドライブシャフトに伝達するデファレンシャル装置を備えている。
【0020】
本構成により、縦置き式の変速機に連結されると共にドライブシャフトに連結されたデファレンシャル装置が備えられた車両において、ドライブシャフトが変速機構部の車体前後方向中央側で変速機ケースを貫通して車幅方向に延びることで、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる。
【0021】
前記デファレンシャル装置が収納されるデフハウジングを備え、デフハウジングは、変速機ケースと一体的に形成されることが好ましい。
【0022】
本構成により、デフハウジングは、変速機ケースと一体的に形成されるので、デフハウジングが変速機ケースと一体的に形成されることなく車幅方向に配置される場合に比して、デフハウジングと変速機ケースとをコンパクトに形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、縦置き式の変速機を備えた車両において変速機が車体後部にドライブシャフト近傍に配置される場合に、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置を備えた車両の模式図である。
【
図4】変速機及びデファレンシャル装置の斜視図である。
【
図5】変速機、デファレンシャル装置及びドライブシャフトの上面図である。
【
図7】
図5のY7方向から見た変速機の変速機構部の側面図である。
【
図8】
図5のY8-Y8線に沿った変速機、デファレンシャル装置及びドライブシャフトの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達装置を備えた車両の模式図である。
図1に示すように、車両1は、運転席の着座位置が低く重心位置が低いスポーツタイプなどのフロントエンジン・リヤドライブ車の車両であり、車体前部に駆動源としてのエンジン2が配置される共に車体後部に縦置き式の変速機3が車幅方向に延びるドライブシャフト4近傍に配置されている。
【0027】
本実施形態に係る動力伝達装置5は、エンジン2から駆動輪としての後輪6に至る動力伝達経路上において、車体後部に、エンジン2から入力される動力を変速して出力する変速機3と、変速機3に連結されて変速機3から出力されるエンジン2からの動力を後輪6に伝達するドライブシャフト4とを備えると共に、変速機3に連結されると共にドライブシャフト4に連結されて変速機3から出力されるエンジン2からの動力をドライブシャフト4に伝達するデファレンシャル装置7を備えている。
【0028】
エンジン2からの動力は、車体前後方向に延びるプロペラシャフト8を介して変速機3に伝達され、変速機3からデファレンシャル装置7及びドライブシャフト4を介して左右の後輪6に伝達されるようになっている。
【0029】
車両1では、車室9の底面を構成するフロアパネル10の車幅方向中央側に車体上側に膨出するトンネル部10aが車体前後方向に延びるように形成され、プロペラシャフト8は、トンネル部10aの内側の空間に配置されている。プロペラシャフト8に連結される変速機3の車体前側もトンネル部10a内に配置されている。
【0030】
図2は、前記動力伝達装置の斜視図である。
図2に示すように、変速機3は、ドライブシャフト4近傍に配置されている。変速機3は、後述するように、変速機ケース11内に軸線が車体前後方向に延びるように配置されてエンジン2からの動力を変速する変速機構部20を有している。変速機ケース11は、略筒状に形成されて車体前後方向に延び、車体前側が前側ハウジング12によって覆われ、車体後側が後側ハウジング13によって覆われている。
【0031】
デファレンシャル装置7は、変速機3の車幅方向一方側である車体左側に配置されている。デファレンシャル装置7には、車幅方向両側にそれぞれ延びるドライブシャフト4が連結されている。デファレンシャル装置7が収納されるデフハウジング14は、変速機ケース11の車体左側に配置されて変速機ケース11と一体的に形成されている。
【0032】
デフハウジング14は、デフハウジング14の車幅方向他方側である車体右側を構成してデファレンシャル装置7の車体右側を収納する第1ハウジング15と、デフハウジング14の車体左側を構成してデファレンシャル装置7の車体左側を収納する第2ハウジング16とを備えている。
【0033】
デフハウジング14は、第1ハウジング15が変速機ケース11に一体成形され、第1ハウジング15に第2ハウジング16が締結ボルトを用いて固定されることにより、変速機ケース11に一体的に形成されている。第2ハウジング16には、デファレンシャル装置7から車体左側に延びるドライブシャフト4aが挿通されるシャフト挿通部16aが設けられている。
【0034】
変速機ケース11は、底面部11aと車幅方向両側の側面部11bと上面部11cとを備えている。
図8に示すように、車体左側の側面部11bは、第1ハウジング15と一体成形され、デファレンシャル装置7から車体右側に延びるドライブシャフト4bが挿通されるシャフト挿通部11dが設けられている。車体右側の側面部11bにも、ドライブシャフト4bが挿通されるシャフト挿通部11eが設けられている。ドライブシャフト4bは、シャフト挿通部11d,11eを通じて変速機ケース11を貫通して車幅方向に延びている。
【0035】
図3は、前記動力伝達装置の骨子図である。
図3に示すように、変速機3は、前進6速、後退1速を達成可能に構成されている。変速機3は、エンジン2からの動力を変速する変速機構部20を有している。
【0036】
変速機構部20は、変速機ケース11内に、エンジン2からの出力がクラッチ(不図示)を介して入力される入力軸30と、入力軸30と同一軸線上に配置されてエンジン2からの動力を出力する出力軸40と、入力軸30及び出力軸40と平行に配置されたカウンタ軸50とを備えている。入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50はそれぞれ、軸線が車体前後方向に延びるように配置されている。
【0037】
入力軸30は、軸受17を介して変速機ケース11に回転可能に支持されている。出力軸40は、軸受18を介して変速機ケース11に回転可能に支持されている。入力軸30の後端部は、出力軸40の前端部に回転可能に嵌合されている。カウンタ軸50は、軸受19を介して変速機ケース11に回転可能に支持されている。
【0038】
入力軸30には、車体前側に4速段用駆動ギヤ31が固設されている。出力軸40には、車体前側から順に6速段用被動ギヤ32、5速段用被動ギヤ33、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、1速段用被動ギヤ36、後退速段用被動ギヤ37が遊嵌合されている。
【0039】
カウンタ軸50には、車体前側から順に4速段用被動ギヤ41、6速段用駆動ギヤ42、5速段用駆動ギヤ43、2速段用駆動ギヤ44、3速段用駆動ギヤ45、1速段用駆動ギヤ46、後退速段用駆動ギヤ47が固設されている。
【0040】
4速段用駆動ギヤ31と4速段用駆動ギヤ31に常時噛み合う4速段用被動ギヤ41とで、4速段用ギヤ列G4が構成されている。シフトレバーが4速に操作されたとき、入力軸30と出力軸40とが直接連結されて4速が達成される。4速段用ギヤ列G4は、入力軸30の回転を一定の減速比で減速してカウンタ軸50に伝達する減速用ギヤ列として機能する。
【0041】
また、1速段用被動ギヤ36、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、5速段用被動ギヤ33及び6速段用被動ギヤ32と、1速段用被動ギヤ36、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、5速段用被動ギヤ33及び6速段用被動ギヤ32にそれぞれ常時噛み合う1速段用駆動ギヤ46、2速段用駆動ギヤ44、3速段用駆動ギヤ45、5速段用駆動ギヤ43及び6速段用駆動ギヤ42とで、1速段用ギヤ列G1、2速段用ギヤ列G2、3速段用ギヤ列G3、5速段用ギヤ列G5、6速段用ギヤ列G6がそれぞれ構成されている。
【0042】
入力軸30に設けられた4速段用駆動ギヤ31、出力軸40に設けられた1速段用被動ギヤ36、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、5速段用被動ギヤ33及び6速段用被動ギヤ32は、変速段が大きくなるにつれてギヤの外径であるギヤ径が小さく形成されている。
【0043】
カウンタ軸50に設けられた1速段用駆動ギヤ46、2速段用駆動ギヤ44、3速段用駆動ギヤ45、4速段用被動ギヤ41、5速段用駆動ギヤ43、6速段用駆動ギヤ42は、変速段が大きくなるにつれてギヤ径が大きく形成されている。
【0044】
変速機3では、1速段用ギヤ列G1から6速段用ギヤ列G6のうち、中速段用ギヤ列である3速段用ギヤ列G3及び4速段用ギヤ列G4は、低速段用ギヤ列である1速段用ギヤ列G1及び2速段用ギヤ列G2と高速段用ギヤ列である5速段用ギヤ列G5及び6速段用ギヤ列G6とに比べて、各ギヤ列を構成する2つのギヤのギヤ径のうちの最大ギヤ径が小さく形成されている。3速段用ギヤ列G3は、1速段用ギヤ列G1から6速段用ギヤ列G6のうち、各ギヤ列を構成する2つのギヤのギヤ径のうちの最大ギヤ径が最も小さく形成されている。
【0045】
後退速段用被動ギヤ37と後退速段用駆動ギヤ47とは、互いに噛み合うことなく、変速機ケース11内に入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50に平行に配設されたリバース軸に遊嵌合された後退速段用アイドルギヤに常時噛み合い、後退速段用被動ギヤ37と後退速段用駆動ギヤ47と前記後退速段用アイドルギヤとで、後退速段用ギヤ列GRが構成されている。
【0046】
変速機構部20は、入力軸30又は出力軸40に設けられた第1ギヤとカウンタ軸50に設けられて第1ギヤに噛み合う第2ギヤとでそれぞれなる複数のギヤ列とを有する変速ギヤ部21を備えている。1速段用被動ギヤ36、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、4速段用駆動ギヤ31、5速段用被動ギヤ33、6速段用被動ギヤ32は、第1ギヤ31~36を構成し、1速段用駆動ギヤ46、2速段用駆動ギヤ44、3速段用駆動ギヤ45、4速段用被動ギヤ41、5速段用駆動ギヤ43、6速段用駆動ギヤ42は、第2ギヤ41~46を構成し、1速段用ギヤ列G1から6速段用ギヤ列G6は、第1ギヤと第2ギヤとでそれぞれなる複数のギヤ列G1~G6を構成する。
【0047】
さらに、6速段用被動ギヤ32の車体前側に第1噛合いクラッチ51が設けられ、5速段用被動ギヤ33と2速段用被動ギヤ34との間に第2噛合いクラッチ52が設けられ、3速段用被動ギヤ35と1速段用被動ギヤ36との間に第3噛合いクラッチ53が設けられ、後退速段用被動ギヤ37の車体前側に第4噛合いクラッチ54が設けられている。噛合いクラッチ51,52,53,54は、略同様に形成されている。
【0048】
第1噛合いクラッチ51は、出力軸40に対して相対回転不能に連結されると共に出力軸40の軸線方向に相対移動可能に設けられた円盤状のクラッチリング51aを有している。クラッチリング51aには、車体前側の面に出力軸40の軸線方向に突出する複数のクラッチ歯51bが設けられている。複数のクラッチ歯51bは、出力軸40の径方向に放射状に延びると共に出力軸40の周方向に等間隔に配置されている。
【0049】
4速段用駆動ギヤ31には、クラッチリング51aの複数のクラッチ歯51bに対応して出力軸40の軸線方向に突出する複数のクラッチ歯31aが設けられている。複数のクラッチ歯31aは、出力軸40の径方向に放射状に延びると共に出力軸40の周方向に等間隔に配置されている。
【0050】
クラッチ歯51bとクラッチ歯31aとは、クラッチリング51aが4速段用駆動ギヤ31に向けて移動されると係合するように形成されている。クラッチ歯51bとクラッチ歯31aとが係合され、クラッチリング51aが4速段用駆動ギヤ31と係合されると、入力軸30と出力軸40とが直接連結されて、入力軸30の回転が出力軸40に伝達される。
【0051】
クラッチリング51aには、車体後側の面に出力軸40の軸線方向に突出する複数のクラッチ歯51cが設けられ、複数のクラッチ歯51cは、出力軸40の径方向に放射状に延びて出力軸40の周方向に等間隔に配置されている。
【0052】
6速段用被動ギヤ32には、クラッチリング51aの複数のクラッチ歯51cに対応して出力軸40の軸線方向に突出する複数のクラッチ歯32aが設けられ、複数のクラッチ歯32aは、出力軸40の径方向に放射状に延びて出力軸40の周方向に等間隔に配置されている。
【0053】
クラッチ歯51cとクラッチ歯32aとは、クラッチリング51aが6速段用被動ギヤ32に向けて移動されると係合するように形成されている。クラッチ歯51cとクラッチ歯32aとが係合され、クラッチリング51aが6速段用被動ギヤ32と係合されると、6速段用ギヤ列G6が動力伝達状態とされる。6速段用被動ギヤ32と出力軸40とが連結されて、入力軸30の回転が減速段用ギヤ列G4によりカウンタ軸50に伝達され、6速段用ギヤ列G6により出力軸40に伝達される。
【0054】
第2噛合いクラッチ52は、クラッチリング52aに車体前側の面に複数のクラッチ歯52bが設けられ、車体後側の面に複数のクラッチ歯52cが設けられている。
【0055】
5速段用被動ギヤ33には、クラッチリング52aの複数のクラッチ歯52bに対応して複数のクラッチ歯33aが設けられ、2速段用被動ギヤ34には、クラッチリング52aの複数のクラッチ歯52cに対応して複数のクラッチ歯34aが設けられている。
【0056】
クラッチ歯52bとクラッチ歯33aとは、クラッチリング52aが5速段用被動ギヤ33に向けて移動されると係合するように形成されている。クラッチ歯52cとクラッチ歯34aとは、クラッチリング52aが2速段用被動ギヤ34に向けて移動されると係合するように形成されている。
【0057】
クラッチリング52aが5速段用被動ギヤ33と係合されると、5速段用ギヤ列G5が動力伝達状態とされ、入力軸30の回転が減速段用ギヤG4及び6速段用ギヤ列G6に介して出力軸40に伝達される。クラッチリング52aが2速段用被動ギヤ34と係合されると、2速段用ギヤ列G2が動力伝達状態とされ、入力軸30の回転が減速段用ギヤG4及び2速段用ギヤ列G2に介して出力軸40に伝達される。
【0058】
第3噛合いクラッチ53は、クラッチリング53aに車体前側の面に複数のクラッチ歯53bが設けられ、車体後側の面に複数のクラッチ歯53cが設けられている。
【0059】
3速段用被動ギヤ35には、クラッチリング53aの複数のクラッチ歯53bに対応して複数のクラッチ歯35aが設けられ、1速段用被動ギヤ36には、クラッチリング53aの複数のクラッチ歯53cに対応して複数のクラッチ歯36aが設けられている。
【0060】
クラッチ歯53bとクラッチ歯35aとは、クラッチリング53aが3速段用被動ギヤ35に向けて移動されると係合するように形成されている。クラッチ歯53cとクラッチ歯36aとは、クラッチリング53aが1速段用被動ギヤ36に向けて移動されると係合するように形成されている。
【0061】
クラッチリング53aが3速段用被動ギヤ35と係合されると、3速段用ギヤ列G3が動力伝達状態とされ、入力軸30の回転が減速段用ギヤG4及び3速段用ギヤ列G3に介して出力軸40に伝達される。クラッチリング53aが1速段用被動ギヤ36と係合されると、1速段用ギヤ列G1が動力伝達状態とされ、入力軸30の回転が減速段用ギヤG4及び1速段用ギヤ列G1に介して出力軸40に伝達される。
【0062】
第4噛合いクラッチ54は、クラッチリング54aに車体前側の面に複数のクラッチ歯54bが設けられている。後退速段用被動ギヤ37には、クラッチリング54aの複数のクラッチ歯54bに対応して複数のクラッチ歯37aが設けられている。クラッチ歯54bとクラッチ歯37aとは、クラッチリング54aが後退速段用被動ギヤ37に向けて移動されると係合するように形成されている。
【0063】
クラッチリング54aが後退速段用被動ギヤ37と係合されると、後退速段用ギヤ列GRが動力伝達状態とされ、入力軸30の回転が減速段用ギヤG4及び後退速段用ギヤ列GRに介して出力軸40に伝達される。
【0064】
変速機構部20はまた、変速ギヤ部21を操作する変速ギヤ操作部22を備えている。変速ギヤ操作部22は、車体前後方向に直線状に延びる複数のシフトロッド61,62,63,64を備え、複数のシフトロッド61,62,63,64は、複数のシフトフォーク61a,62a,63a,64aをそれぞれ支持して互いに平行に配置されている。
【0065】
変速機3は、車体左側から順に、第1シフトロッド61,第2シフトロッド62,第3シフトロッド63,第4シフトロッド64を備えている。第1シフトロッド61,第2シフトロッド62,第3シフトロッド63,第4シフトロッド64には、クラッチリング51a,53a,54a,52aにそれぞれ係合する第1シフトフォーク61a、第2シフトフォーク62a、第3シフトフォーク63a、第4シフトフォーク64aがそれぞれ支持されている。
【0066】
各クラッチリング51a,53a,54a,52aの外周部が各シフトフォーク61a,63a,64a,62aの先端部に設けられた凹部内に受け入れられ、各シフトフォーク61a,63a,64a,62aの移動によって各クラッチリング51a,53a,54a,52aが出力軸40の軸線方向に移動される。
【0067】
変速ギヤ操作部22はまた、各シフトロッド61,62,63,64に対応するシフト溝65a,65b,65c,65dを有するシフトドラム65と、シフトドラム65を回転駆動させて複数のシフトロッド61,62,63,64を移動操作するアクチュエータとしてのモータ66を備えている。
【0068】
シフトドラム65は、円筒状に形成されて外周面に第1シフトロッド61,第2シフトロッド62,第3シフトロッド63,第4シフトロッド64にそれぞれ対応して第1シフト溝65a、第2シフト溝65b、第3シフト溝65c及び第4シフト溝65dが形成されている。
【0069】
第1シフト溝65a、第2シフト溝65b、第3シフト溝65c及び第4シフト溝65dにはそれぞれ、第1シフトロッド61,第2シフトロッド62,第3シフトロッド63,第4シフトロッド64にそれぞれ固定されて支持された第1シフトアーム61b、第2シフトアーム62b、第3シフトアーム63b、第4シフトアーム64bの先端部に設けられた突起部61c,62c,63c,64cが係合されている。
【0070】
モータ66は、シフトレバーの操作に基づいてシフトドラム65を回転駆動させて複数のシフトロッド61,62,63,64を移動操作するようになっている。モータ66によってシフトドラム65が回転駆動されると、シフト溝65a,65b,65c,65dに応じてシフトアーム61b,62b,63b,64bを介してシフトロッド61,62,63,64が軸線方向に選択的に移動操作される。
【0071】
そして、シフトロッド61,62,63,64に支持されたシフトフォーク61a,62a,63a,64aが移動され、噛合いクラッチ51,53,54,52が選択的に操作される。これにより、シフトレバーの操作によって、シフトアップ、シフトダウン、リバースのチェンジが行われ、前進6速、後退1速が達成される。
【0072】
変速機3では、出力軸40に、後退速段用被動ギヤ37の車体後側に出力ギヤ38が固設され、出力ギヤ38は、車体前後方向に延びるドライブピニオン23の車体後側に固設された入力ギヤ24に噛み合っている。ドライブピニオン23は、変速機ケース11に回転可能に支持されている。変速機3から出力されたエンジン2からの動力は、ドライブピニオン23を介してデファレンシャル装置7に伝達される。
【0073】
デファレンシャル装置7は、デフハウジング14に回転可能に支持されたデフケース26と、デフケース26に固定されたリングギヤ27とを有している。リングギヤ27は、ドライブピニオン23に噛み合い、ドライブピニオン23の車体左側に配置されている。
【0074】
デファレンシャル装置7はまた、デファレンシャル機構28を有している。デファレンシャル機構28は、デフケース26に固定されて車幅方向と直交する方向に延びるピニオンシャフト29aと、ピニオンシャフト29aに回転自在に嵌合される互いに対向する一対のピニオンギヤ29bと、一対のピニオンギヤ29bに噛み合う左右一対のサイドギヤ29cとを有している。
【0075】
一対のサイドギヤ29cにはそれぞれ、車幅方向に延びるドライブシャフト4がスプライン嵌合されている。ドライブシャフト4は、サイドギヤ29cと共にデフハウジング14及びデフケース26に対して相対回転できるようになっている。ドライブシャフト4aには左側の後輪6が連結され、ドライブシャフト4bには右側の後輪6が連結されている。
【0076】
デファレンシャル装置7は、変速機3に連結されると共にドライブシャフト4に連結されて変速機3から出力されるエンジン2からの動力をドライブシャフト4に伝達し、ドライブシャフト4は、変速機3にドライブピニオン23及びデファレンシャル装置7を介して連結されて変速機3から出力されるエンジン2からの動力を後輪6に伝達する。
【0077】
本実施形態では、ドライブシャフト4は、車体前後方向における変速機3の変速機構部20の中央側において車幅方向に延びている。ドライブシャフト4は、車体前後方向において変速ギヤ部21の複数のギヤ列G1~G6が配置される部分と車体前後方向にオーバーラップする位置に配置されている。ドライブシャフト4はまた、車体上下方向における変速機3の変速機構部20の中央側において車体上下方向にオーバーラップする位置において車幅方向に延びている。
【0078】
次に、本発明の実施形態に係る動力伝達装置について、
図4から
図8を参照してさらに説明する。
【0079】
図4は、変速機及びデファレンシャル装置の斜視図、
図5は、変速機、デファレンシャル装置及びドライブシャフトの上面図、
図6は、変速機の変速ギヤ部の上面図、
図7は、
図5のY7方向から見た変速機の変速ギヤ操作部の側面図、
図8は、
図5のY7方向から見た変速機の変速機構部の側面図である。
図4から
図8では、変速機ケース及びデフハウジングを取り除いて示し、
図7では、ドライブシャフトも示している。
【0080】
図4から
図8に示すように、変速機3は、ドライブシャフト4近傍に配置され、変速機ケース11内に軸線が車体前後方向に延びるように配置された変速機構部20を有している。変速機構部20は、入力軸30及び出力軸40と、カウンタ軸50と、入力軸30又は出力軸40に設けられた第1ギヤ31~36とカウンタ軸50に設けられた第2ギヤ41~46とでそれぞれなる複数のギヤ列G1~G6とを有する変速ギヤ部21と、変速ギヤ部21を操作する変速ギヤ操作部22とを備えている。
【0081】
デファレンシャル装置7は、変速機3の車体左側に配置され、車体前後方向に延びるドライブピニオン23を介して変速機3から出力されたエンジン2からの動力が伝達され、伝達されたエンジン2からの動力を車幅方向に延びるドライブシャフト4に伝達する。左右のドライブシャフト4はそれぞれ、伝達されたエンジン2からの動力を左右の後輪6に伝達する。
【0082】
変速ギヤ部21では、
図6に示すように、入力軸30と出力軸40とが車体前後方向に直線状に延びている。カウンタ軸50は、入力軸30及び出力軸40と平行に車体前後方向に直線状に延びている。入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50は、水平方向若しくは実質的に水平方向に延びている。
【0083】
図8に示すように、入力軸30及び出力軸40とカウンタ軸50とは、車幅方向に離間して配置されて車体上下方向にオーバーラップする位置に配置されている。リバース軸25は、入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50と平行に車体前後方向に直線状に延び、入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50より下方で水平方向若しくは実質的に水平方向に延びている。
【0084】
図6に示すように、変速ギヤ部21は、入力軸30又は出力軸40に設けられた第1ギヤ31~36として車体前側から順に4速段用駆動ギヤ31、6速段用被動ギヤ32、5速段用被動ギヤ33、2速段用被動ギヤ34、3速段用被動ギヤ35、1速段用被動ギヤ36を有し、カウンタ軸50に設けられた第2ギヤ41~46として車体前側から順に4速段用被動ギヤ41、6速段用駆動ギヤ42、5速段用駆動ギヤ43、2速段用駆動ギヤ44、3速段用駆動ギヤ45、1速段用駆動ギヤ46を有している。
【0085】
第1ギヤ31~36と第2ギヤ41~46とでそれぞれなる複数のギヤ列G1~G6として、車体前側から順に4速段用ギヤ列G4、6速段用ギヤ列G6、5速段用ギヤ列G5、2速段用ギヤ列G2、3速段用ギヤ列G3、1速段用ギヤ列G1を有している。
【0086】
3速段用ギヤ列G3は、1速段用ギヤ列G1から6速段用ギヤ列G6のうち、各ギヤ列を構成する2つのギヤである第1ギヤ及び第2ギヤのギヤ径(ギヤの直径)のうちの最大ギヤ径が最も小さく形成され、第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が最も小さく形成されている。
【0087】
ドライブシャフト4は、
図7に示すように、変速ギヤ部21の上側に配置され、車体前後方向における変速機構部20の中央側において車幅方向に延びている。ドライブシャフト4は、車体前後方向において変速ギヤ部21の複数のギヤ列G1~G6が配置される部分と車体前後方向にオーバーラップする位置に配置され、好ましくは複数のギヤ列G1~G6が配置される部分の車体前後方向中央側に配置される。ドライブシャフト4a,4bは、車体前後方向と直交する車幅方向に直線状に延び、車体右側のドライブシャフト4bが、変速機構部20の車体前後方向中央側で車幅方向に延びている。
【0088】
ドライブシャフト4は、変速ギヤ部21の複数のギヤ列G1~G6のうち第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が最も小さい所定ギヤ列G3に対応する車体前後方向位置において車幅方向に延び、前記所定ギヤ列G3に車体前後方向にオーバーラップする位置に配置されている。本実施形態では、ドライブシャフト4は、3速段用ギヤ列G3に対応する車体前後方向位置において、すなわち車体前後方向にオーバーラップする位置において車幅方向に延びている。
【0089】
本実施形態では、3速段用ギヤ列G3に対応してドライブシャフト4が設けられているが、4速段用ギヤ列G4が変速機構部20の車体前後方向中央側に配置される場合には4速段用ギヤ列G4に対応する車体前後方向位置に設けるようにしてもよい。ドライブシャフト4は、第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列として中速段用ギヤ列G3,G4に対応する車体前後方向位置に設けられる。
【0090】
変速機3では、低速段用ギヤ列として1速段用ギヤ列G1及び2速段用ギヤ列が設定され、高速段用ギヤ列として5速段用ギヤ列G5及び6速段用ギヤ列G6が設定され、中速段用ギヤ列として3速段用ギヤ列G3及び4速段用ギヤ列G4が設定されている。
【0091】
前進変速段用ギヤ列として1速段用ギヤ列から5速段用ギヤ列が設定される場合、低速段用ギヤ列として1速段用ギヤ列が設定され、高速段用ギヤ列として5速段用ギヤ列が設定され、中速段用ギヤ列として2速段用ギヤ列から4速段用ギヤ列が設定され、ドライブシャフト4は、第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列として中速段用ギヤ列である2速段用ギヤ列から4速段用ギヤ列に対応する車体前後方向位置に設けられる。
【0092】
前進変速段用ギヤ列として少なくとも3つ以上の複数のギヤ列を有する場合、ドライブシャフト4は、第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列として中速段用ギヤ列に対応する車体前後方向位置に設けられ、好ましくは第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が最も小さい所定ギヤ列に対応する車体前後方向位置に設けられる。
【0093】
変速ギヤ操作部22は、
図4に示すように、変速ギヤ部21の上側に配置されている。変速ギヤ操作部22は、複数のシフトフォーク61a,62a,63a,64aをそれぞれ支持して互いに平行に配置された複数のシフトロッド61,62,63,64と、複数のシフトロッド61,62,63,64にそれぞれ対応するシフト溝65a,65b,65c,65dを有するシフトドラム65と、シフトドラム65を回転駆動させて複数のシフトロッド61,62,63,64を移動操作するアクチュエータとしてのモータ66とを備えている。
【0094】
変速ギヤ操作部22の複数のシフトロッド61,62,63,64は、具体的には4つのシフトロッド61,62,63,64は、ドライブシャフト4の上方に車体前後方向に延びるように配置されている。各シフトロッド61,62,63,64は、車体前後方向に直線状に延び、入力軸30、出力軸40及びカウンタ軸50より上方に水平方向若しくは実質的に水平方向に延びるように配置されている。
【0095】
図8に示すように、車体左側から順に、4つのシフトロッド61,62,63,64、具体的には第1シフトロッド61、第2シフトロッド62、第3シフトロッド63、第4シフトロッド64が車幅方向に離間して車体上下方向にオーバーラップする位置に配置されている。
【0096】
各シフトロッド61,62,63,64に支持された各シフトフォーク61a,62a,63a,64aはそれぞれ、シフトロッド61,62,63,64から下方に延び、車体前後方向に直交する方向に延びている。複数のシフトフォーク61a,62a,63a,64aは、車体前後方向に離間して設けられ、車体前側から順に第1シフトフォーク61a、第4シフトフォーク64a、第2シフトフォーク62a、第3シフトフォーク63aが車体前後方向に離間して設けられている。
【0097】
各シフトロッド61,62,63,64に支持された各シフトアーム61b,62b,63b,64bはそれぞれ、シフトロッド61,62,63,64から上方に延びている。複数のシフトアーム61b,62b,63b,64bは、車体前後方向に離間して設けられ、各シフトアーム61b,62b,63b,64bはそれぞれ、先端部の突起部61c,62c,63c,64cがシフトドラム65のシフト溝65a,65b,65c,65dに係合されている。
【0098】
シフトドラム65及びモータ66は、
図7に示すように、変速機構部20の車体後側において複数のシフトロッド61,62,63,64の上方に配置されている。シフトドラム65及びモータ66はそれぞれ、軸線が車体前後方向に延びるように配置されている。モータ66は、シフトドラム65の上方に配置されている。
【0099】
ドライブシャフト4は、
図8に示すように、車体上下方向における変速機構部20の中央側において車体上下方向にオーバーラップする位置において車幅方向に延びている。ドライブシャフト4は、変速ギヤ部21と変速ギヤ部21の上側に配置される変速ギヤ操作部22との間、具体的には変速ギヤ部21と変速ギヤ操作部22の複数のシフトロッド61,62,63,64との間を通じて車幅方向に延びている。ドライブシャフト4は、車体上下方向に分散配置された変速ギヤ部21と変速ギヤ操作部22との間に組立性良く配置することができる。
【0100】
ドライブシャフト4は、
図7に示すように、複数のシフトフォーク61a,62a,63a,64aの間を通じて車幅方向に延びている。変速機3では、ドライブシャフト4は、車体前後方向に離間して配置される第4シフトフォーク64aと第2シフトフォーク62aとの間を通じて車幅方向に延びている。
【0101】
車両1では、変速機3は、車体後部においてドライブシャフト4近傍に配置され、ドライブシャフト4は、変速機3の変速機構部20の車体前後方向中央側且つ車体上下方向中央側において車幅方向に延び、変速機ケース11を貫通して車幅方向に延びている。車体右側のドライブシャフト4bは、変速機ケース11の車体右側の側面部11bをドライブシャフト4bの一部が貫通し、変速機ケース11の車体左側の側面部11bを前記ドライブシャフト4bの一部より車体左側に位置するドライブシャフト4bの部分が貫通している。
【0102】
ドライブシャフト4はまた、変速機構部20の変速ギヤ部21と変速ギヤ操作部22との間を通じて車幅方向に延び、変速ギヤ部21を構成する複数のギヤ列G1~G6のうち第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列G3に対応する車体前後方向位置において車幅方向に延びている。
【0103】
本実施形態において、入力軸30及び出力軸40とカウンタ軸50とは、車体上下方向にオフセットして配置することも可能であるが、好ましくは車体上下方向にオーバーラップする位置に配置される。デファレンシャル装置7は、変速機3の車体左側に配置されているが、変速機3の車体右側に配置することも可能である。
【0104】
また、複数のシフトロッド61,62,63,64を移動操作するアクチュエータとしてモータ66が用いられ、電動式アクチュエータが用いられているが、油圧式アクチュエータなどのアクチュエータを用いて複数のシフトロッド61,62,63,64を移動操作するようにしてもよい。本実施形態では、変速機3は、手動変速機をベースとしてシフトロッド61,62,63,64をアクチュエータによって移動操作する変速機3が用いられているが、手動変速機においても同様に適用可能である。
【0105】
このように、本実施形態に係る車両の動力伝達装置5は、駆動源2から入力される動力を変速して出力する変速機3と、変速機3に連結されて変速機3から出力される駆動源2からの動力を駆動輪6に伝達するドライブシャフト4とを備える。変速機3は、変速機ケース11内に軸線が車体前後方向に延びるように配置されて駆動源2からの動力を変速する変速機構部20を有する。ドライブシャフト4は、車体前後方向における変速機構部20の中央側で車幅方向に延び、変速機ケース11を貫通して設けられる。
【0106】
これにより、縦置き式の変速機3を備えた車両1において変速機3が車体後部にドライブシャフト4近傍に配置される場合に、ドライブシャフト4が変速機構部20の車体前後方向中央側で変速機ケース11を貫通して車幅方向に延びるので、ドライブシャフトより車体前側に変速機が配置される場合に比して変速機によって車室空間が狭くなって乗員の居住性が低下することを抑制することができる。また、ドライブシャフトより車体後側に変速機が配置される場合に比して車体後側のオーバーハングが大きくなって操縦安定性が低下することを抑制することができる。
【0107】
したがって、縦置き式の変速機3を備えた車両1において変速機3が車体後部にドライブシャフト4近傍に配置される場合に、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる。
【0108】
また、ドライブシャフト4は、車体上下方向における変速機構部20の中央側において車幅方向に延びる。これにより、ドライブシャフト4の上方に変速機が配置される場合に比して車両1の重心位置を低くして操縦安定性を向上させることができる。また、ドライブシャフトの下方に変速機が配置される場合に比して、地面との隙間を大きくして地上高を確保することができる。
【0109】
また、変速機構部20は、同一軸線上に配置された入力軸30及び出力軸40と、入力軸30及び出力軸40と平行に配置されたカウンタ軸50と、入力軸30又は出力軸40に設けられた第1ギヤ31~36とカウンタ軸50に設けられて第1ギヤ31~36に噛み合う第2ギヤ41~46とでそれぞれなる複数のギヤ列G1~G6とを有する変速ギヤ部21を備え、ドライブシャフト4は、複数のギヤ列G1~G6のうち第1ギヤ及び第2ギヤの上下方向寸法が小さい所定ギヤ列G3に対応する車体前後方向位置において車幅方向に延びる。
【0110】
これにより、ドライブシャフト4を変速機構部20の軸線に近接して配置して変速機3及びドライブシャフト4を車体上下方向にコンパクトに配置することができる。
【0111】
また、変速機構部20は、同一軸線上に配置された入力軸30及び出力軸40と、入力軸30及び出力軸40と平行に配置されたカウンタ軸50と、入力軸30又は出力軸40に設けられた第1ギヤ31~36とカウンタ軸50に設けられて第1ギヤ31~36に噛み合う第2ギヤ41~46とでそれぞれなる複数のギヤ列G1~G6とを有する変速ギヤ部21と、変速ギヤ部21を操作する変速ギヤ操作部22とを備え、ドライブシャフト4は、変速ギヤ部21と変速ギヤ操作部22との間を通じて車幅方向に延びる。
【0112】
これにより、ドライブシャフトが変速ギヤ部の間と変速ギヤ操作部の間とを通じて車幅方向に延びる場合に比して、ドライブシャフト4を組立性良く車体上下方向に分散配置された変速ギヤ部21と変速ギヤ操作部22との間に配置することができ、ドライブシャフト4と変速機3とを組立性良く配置することができる。
【0113】
また、車両の動力伝達装置5は、変速機3に連結されると共にドライブシャフト4に連結されて変速機3から出力される駆動源2からの動力をドライブシャフト4に伝達するデファレンシャル装置7を備えている。
【0114】
これにより、縦置き式の変速機3に連結されると共にドライブシャフト4に連結されたデファレンシャル装置7が備えられた車両1において、ドライブシャフト4が変速機構部20の車体前後方向中央側で変速機ケース11を貫通して車幅方向に延びることで、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることができる。
【0115】
また、デファレンシャル装置7が収納されるデフハウジング14を備え、デフハウジング14は、変速機ケース11と一体的に形成される。これにより、デフハウジングが変速機ケース11と一体的に形成されることなく車幅方向に配置される場合に比して、デフハウジング14と変速機ケース11とをコンパクトに形成することができる。
【0116】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明によれば、縦置き式の変速機が車体後部にドライブシャフト近傍に配置される場合に、乗員の居住性と操縦安定性との両立を図ることが可能であるから、縦置き式の変速機を備えた車両において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0118】
1 車両
2 エンジン
3 変速機
4 ドライブシャフト
5 動力伝達装置
6 後輪
7 デファレンシャル装置
11 変速機ケース
14 デフハウジング
20 変速機構部
21 変速ギヤ部
22 変速ギヤ操作部
30 入力軸
31~36 第1ギヤ
40 出力軸
41~46 第2ギヤ
50 カウンタ軸
G1~G6 ギヤ列