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特許7472728ステータコア及びステータコアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ステータコア及びステータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20240416BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20240416BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K1/16 C
H02K15/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020150122
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044485
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-016126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 1/16
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部と、前記環状部から前記環状部の径方向に延伸する複数のティース部とを有する複数のコアシートが積層されて構成されたステータコアであって、
前記複数のコアシートは、前記複数のティース部のそれぞれの延伸方向の中央部よりも先端側から先端までの部分に溝を有する溝付きコアシートを含み、
前記溝付きコアシートは、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部が形成されることにより前記溝が形成された構成であ
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の一方側に位置する前記溝としての第一溝と、前記潰し部に対する前記厚み方向の他方側に位置する前記溝としての第二溝が形成されており、
前記第一溝の幅寸法は、前記第二溝の幅寸法と異なり、
前記複数のコアシートは、重なり合う複数の前記溝付きコアシートを含み、
重なり合う複数の前記溝付きコアシートでは、前記第一溝と前記第二溝とが向かい合っており、
前記第一溝の幅方向両側の縁部には、盛り上がり部がそれぞれ形成されており、
前記第二溝の幅寸法は、前記第一溝の幅寸法よりも大きく、
前記盛り上がり部は、前記第二溝の幅寸法の範囲内に位置する、
ステータコア。
【請求項2】
前記潰し部は、前記ティース部の先端に接しており、
前記溝は、前記ティース部の先端に開口している、
請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の両側に前記溝がそれぞれ形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のステータコア。
【請求項4】
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の片側のみに前記溝が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のステータコア。
【請求項5】
複数の前記溝付きコアシートは、互いに積層されており、
複数の前記溝付きコアシートの同じ位置に形成された前記潰し部は、前記ステータコアの軸方向に前記溝を介して互いに離間している、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のステータコア。
【請求項6】
前記潰し部には、前記潰し部を形成する際に前記潰し部の一部を潰し切らないことにより島状の余肉逃し部が形成されている、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のステータコア。
【請求項7】
前記潰し部は、前記ティース部の先端に近づくに従って厚みが増加する、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のステータコア。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のステータコアを製造するためのステータコアの製造方法であって、
前記複数のティース部のそれぞれの延伸方向の中央部よりも先端側から先端までの部分に前記溝を有する前記溝付きコアシートを含む前記複数のコアシートを形成するコアシート形成工程と、
前記複数のコアシートを積層する積層工程と、
を備え、
前記コアシート形成工程において前記溝付きコアシートを形成する際に、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された前記潰し部を形成することにより前記溝を形成する、
ステータコアの製造方法
【請求項9】
前記コアシート形成工程では、潰し加工により前記潰し部を形成してから、打ち抜き加工により前記コアシートを打ち抜いて形成する、
請求項8に記載のステータコアの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコア及びステータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシレスモータでは、ステータの無通電状態でロータを回転させたときにロータに作用するトルクが変動するというコギングトルクを低減することが求められる。このコギングトルクを低減させる技術としては、例えば、ロータと対向してステータコアに形成されたティース部の先端部に溝を形成し、この溝を疑似的なスロットとして機能させる技術が公知である(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
ここで、ティース部の先端部に溝を形成する技術としては、次の技術が公知である。すなわち、第一の公知技術は、ステータコアを構成するコアシートを打ち抜き加工で形成する際に、コアシートの一部を打ち抜いて溝を形成する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第二の公知技術は、複数のコアシートを積層した状態でかしめ加工により複数のコアシートに凹凸嵌合部を形成して複数のコアシートを接合する際に、かしめ加工による凹凸嵌合部によって溝を形成する技術である(例えば、特許文献3、4参照)。
【0005】
また、第三の公知技術は、コアシートに形成されたティース部の先端部にエッチング加工によって溝を形成する技術である(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5073805号公報
【文献】特許4713348号公報
【文献】特開2019-047630号公報
【文献】特許3777435号公報
【文献】特許5084770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コアシートの一部を打ち抜いて溝(スリット)を形成する第一の公知技術では、打ち抜き加工の加工限界により溝のサイズの自由度が制限される。また、溝の大きさが小さいため、高い加工精度が要求されたり、打ち抜き型の寿命が低下したり、打ち抜き型のメンテナンスが頻繁に必要になったりするなど、打ち抜き加工で溝を形成する場合の諸問題がある。
【0008】
また、かしめ加工による凹凸嵌合部によって溝を形成する第二の公知技術では、かしめ加工時に、凹凸嵌合部の凸部に引張方向の塑性変形が生じ、これにより、コアシートを形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷する。したがって、凹凸嵌合部の凸部と凹部とを嵌合させると、絶縁被膜が損傷した部位において凸部と凹部とが電気的に接合された状態となり、この電気的な接合部位に渦電流が発生し、渦電流損失に繋がる。
【0009】
また、コアシートに形成されたティース部の先端部にエッチング加工によって溝を形成する第三の公知技術では、コアシートを形成する打ち抜き加工とは別に複雑なエッチング加工が必要であるため、コストアップになる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、打ち抜き加工で溝を形成する場合の諸問題を解消できると共に、渦電流損失の発生及びコストアップを防止できるステータコア及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一態様に係るステータコアは、環状部と、前記環状部から前記環状部の径方向に延伸する複数のティース部とを有する複数のコアシートが積層されて構成されたステータコアであって、前記複数のコアシートは、前記複数のティース部のそれぞれの延伸方向の中央部よりも先端側から先端までの部分に溝を有する溝付きコアシートを含み、
前記溝付きコアシートは、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部が形成されることにより前記溝が形成された構成であ各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の一方側に位置する前記溝としての第一溝と、前記潰し部に対する前記厚み方向の他方側に位置する前記溝としての第二溝が形成されており、前記第一溝の幅寸法は、前記第二溝の幅寸法と異なり、前記複数のコアシートは、重なり合う複数の前記溝付きコアシートを含み、重なり合う複数の前記溝付きコアシートでは、前記第一溝と前記第二溝とが向かい合っており、前記第一溝の幅方向両側の縁部には、盛り上がり部がそれぞれ形成されており、前記第二溝の幅寸法は、前記第一溝の幅寸法よりも大きく、前記盛り上がり部は、前記第二溝の幅寸法の範囲内に位置する構成である。
【0012】
このステータコアによれば、複数のコアシートは、複数のティース部のそれぞれの先端側の部分に溝を有する溝付きコアシートを含む。この溝付きコアシートでは、溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部が形成されることにより溝が形成される。
【0013】
したがって、打ち抜き加工ではなく潰し加工により溝を形成するので、打ち抜き加工で溝を形成する場合の諸問題、すなわち、溝のサイズの自由度が制限されることや、高い加工精度が要求されること、打ち抜き型の寿命が低下すること、打ち抜き型のメンテナンスが頻繁に必要になることなどの問題を解消できる。
【0014】
また、潰し加工では、潰し部に引張方向の塑性変形が生じることが抑制されるので、溝付きコアシートを形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷することを抑制できる。また、潰し加工により溝付きコアシートの一部を潰して潰し部を形成するので、潰し部が溝付きコアシートの厚み方向に突出することを回避できる。これにより、積層されたコアシート間に電気的な接合部位が生じることを防止できるので、渦電流損失の発生を防止できる。
【0015】
さらに、潰し部を形成するための潰し加工は、一般にエッチング加工に比して簡易であるので、コストアップを防止できる。
【0016】
本発明の第二態様に係るステータコアの製造方法は、第1態様に係るステータコアを製造するためのステータコアの製造方法であって、前記複数のティース部のそれぞれの延伸方向の中央部よりも先端側から先端までの部分前記溝を有する前記溝付きコアシートを含む前記複数のコアシートを形成するコアシート形成工程と、前記複数のコアシートを積層する積層工程と、を備え、前記コアシート形成工程において前記溝付きコアシートを形成する際に、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された前記潰し部を形成することにより前記溝を形成する。
【0017】
このステータコアの製造方法によれば、コアシート形成工程では、複数のティース部のそれぞれの先端側の部分に溝を有する溝付きコアシートを含む複数のコアシートを形成する。このコアシート形成工程において、溝付きコアシートを形成する際には、溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部を形成することにより溝を形成する。
【0018】
したがって、打ち抜き加工ではなく潰し加工により溝を形成するので、打ち抜き加工で溝を形成する場合の諸問題、すなわち、溝のサイズの自由度が制限されることや、高い加工精度が要求されること、打ち抜き型の寿命が低下すること、打ち抜き型のメンテナンスが頻繁に必要になることなどの問題を解消できる。
【0019】
また、潰し加工では、潰し部に引張方向の塑性変形が生じることが抑制されるので、溝付きコアシートを形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷することを抑制できる。また、潰し加工により溝付きコアシートの一部を潰して潰し部を形成するので、潰し部が溝付きコアシートの厚み方向に突出することを回避できる。これにより、積層されたコアシート間に電気的な接合部位が生じることを防止できるので、渦電流損失の発生を防止できる。
【0020】
さらに、潰し部を形成するための潰し加工は、一般にエッチング加工に比して簡易であるので、コストアップを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るステータコアを備える回転電機の平面図である。
図2図1の回転電機の要部を拡大した平面図である。
図3図1のステータコアの要部を拡大した斜視図である。
図4図3の要部をさらに拡大した斜視図である。
図5図2図4に示されるコアシートの要部を拡大した平面図である。
図6図5の潰し部及びその周辺部の断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るステータコアの製造方法を説明する図である。
図8】潰し加工の範囲と打ち抜き加工の切断部との位置関係の一例を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態の第一変形例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態の第二変形例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態の第三変形例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態の第四変形例を示す図である。
図13】本発明の一実施形態の第五変形例を示す図である。
図14】本発明の一実施形態の第六変形例を示す図である。
図15】本発明の一実施形態の第七変形例を示す図である。
図16】本発明の一実施形態の第八変形例を示す図である。
図17】実施例と比較例について溝の幅を変えて溝の長さとコギングトルクとの関係を計算した結果を比較する図である。
図18】実施例と比較例について磁束分布を解析した結果を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
はじめに、本発明の一実施形態に係るステータコア10の構成について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るステータコア10を備える回転電機Mの平面図である。図1に示される回転電機Mは、インナーロータタイプのブラシレスモータであり、ロータ1と、ステータ2とを備える。
【0024】
ロータ1は、ロータ本体3と、複数の磁石4とを有する。ロータ本体3は、多角柱状に形成されており、複数の磁石4は、ロータ本体3の外周面に固着されている。ロータ本体3の軸心部には、貫通孔5が形成されている。この貫通孔5には、図示しないシャフトが挿入され、このシャフトを中心にロータ1は回転する。
【0025】
ステータ2は、ステータコア10を有する。ステータコア10は、環状部11と、複数のティース部12とを有する。環状部11は、ステータコア10の周方向に沿って環状を成しており、複数のティース部12は、環状部11から環状部11の径方向内側に延伸している。複数のティース部12の内側には、ロータ1が回転可能に収容されており、複数のティース部12の先端部は、ロータ1に設けられた複数の磁石4と対向している。
【0026】
環状部11には、隣り合うティース部12の間に位置する複数の分割部13が形成されており、ステータコア10は、複数の分割部13によって複数の分割コア14に分割されている。つまり、ステータコア10は、ステータコア10の周方向に分割された複数の分割コア14によって構成されている。なお、ステータ2は、図示しないインシュレータ及び巻線を備える。インシュレータは、ステータコア10に装着されており、巻線は、インシュレータを介して複数のティース部12に巻回されている。
【0027】
図2は、図1の回転電機Mの要部を拡大した平面図であり、図3は、図1のステータコア10の要部を拡大した斜視図であり、図4は、図3の要部をさらに拡大した斜視図である。図2図4に示されるように、ステータコア10は、このステータコア10の軸方向に複数のコアシート20が積層された構成とされている。複数のコアシート20は、一例として、同一の形状であり、この複数のコアシート20は、互いに整合するように積層される。
【0028】
各コアシート20は、環状部21と、環状部21から環状部21の径方向内側に延伸する複数のティース部22とを有する。複数のコアシート20の環状部21が積層されることにより、ステータコア10の環状部11が形成されており、複数のコアシート20のティース部22が積層されることにより、ステータコア10のティース部12が形成されている。
【0029】
環状部21には、隣り合うティース部22の間に位置する複数の分割部23が形成されており、コアシート20は、複数の分割部23によって複数のシート材24に分割されている。つまり、複数のコアシート20のそれぞれは、ステータコア10の周方向に分割された複数のシート材24によって構成されている。複数のコアシート20のシート材24が積層されることにより、ステータコア10の分割コア14が形成されている。
【0030】
複数のコアシート20の全ては、複数のティース部22のそれぞれの先端側の部分に溝25を有する溝付きコアシートとされている。この溝25は、コギングトルクを低減させるために、疑似的なスロットとして機能するものである。複数のティース部22のそれぞれの先端側の部分には、コアシート20の厚みT方向に潰された潰し部26が形成されており、この潰し部26が形成されることで凹んだ部分が溝25として形成されている。このように、コアシート20は、複数のティース部22のそれぞれの先端側の部分に、コアシート20の厚みT方向に潰された潰し部26が形成されることにより溝25が形成された構成とされている。
【0031】
図5は、図2図4に示されるコアシート20の要部を拡大した平面図である。図5に示されるように、各ティース部22には、複数の潰し部26が形成されている。一例として、複数の潰し部26の数は2である。各ティース部22に形成された複数の潰し部26は、このティース部22の横幅方向に並んでいる。各ティース部22の横幅方向は、平面視でティース部22が延びる方向と直交する方向に相当する。ティース部22の中心線Lcは、ティース部22の横幅方向の中心に位置し、コアシート20の径方向に延びる線である。各ティース部22に形成された複数の潰し部26は、ティース部22の中心線Lcを中心にして対称に形成されている。
【0032】
潰し部26は、ティース部22の先端22Aに接しており、溝25は、ティース部22の先端22Aに開口している。溝25は、コアシート20の径方向に延びており、溝25の幅は、溝25の長さ方向に亘って一定である。隣り合うティース部22の間の隙間は、スロット27である。平面視でスロット27の幅方向の中心に位置し、コアシート20の径方向に延びる線をスロット27の中心線Lc1とし、平面視で溝25の幅方向の中心に位置し、コアシート20の径方向に延びる線を溝25の中心線Lc2とした場合に、一例として、スロット27の中心線Lc1と溝25の中心線Lc2とのなす角度は、一方の溝25の中心線Lc2と他方の溝25の中心線Lc2とのなす角度と同じとされている。
【0033】
図6は、図5の潰し部26及びその周辺部の断面図である。図6に示されるように、潰し部26は、コアシート20の厚みT方向に潰された構成であるため、潰し部26の厚さ寸法t1は、コアシート20の厚さ寸法t2よりも小さい。
【0034】
潰し部26は、一例として、コアシート20の厚みT方向の両側から潰された構成とされており、各ティース部22には、潰し部26に対する厚みT方向の両側に溝25がそれぞれ形成されている。
【0035】
以降、潰し部26に対する厚みT方向の一方側に位置する溝25と、潰し部26に対する厚みT方向の他方側に位置する溝25とを区別する場合には、潰し部26に対する厚みT方向の一方側に位置する溝25を第一溝25Aと称し、潰し部26に対する厚みT方向の他方側に位置する溝25を第二溝25Bと称する。一例として、第一溝25Aの幅寸法w1は、第二溝25Bの幅寸法w2と同じである。
【0036】
図3図4に示されるように、互いに同一の形状である複数のコアシート20が整合するように積層された状態において、複数のコアシート20の同じ位置に形成された潰し部26は、ステータコア10の周方向における同じ位置に位置しており、ステータコア10の軸方向に並んでいる。
【0037】
この複数のコアシート20の同じ位置に形成された潰し部26は、ステータコア10の軸方向に溝25を介して互いに離間している。すなわち、複数のコアシート20の同じ位置に形成された潰し部26と潰し部26との間には、溝25が介在している。重なり合うコアシート20では、図6に示される第一溝25Aと第二溝25Bとが向かい合っている。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係るステータコア10の製造方法について説明する。
【0039】
図7は、本発明の一実施形態に係るステータコア10の製造方法を説明する図である。本発明の一実施形態に係るステータコア10の製造方法は、コアシート形成工程と、積層工程とを備える。
【0040】
コアシート形成工程では、シート素材40から複数のコアシート20を形成する。このコアシート形成工程では、先ず、複数のティース部22のそれぞれの先端側の部分に対応する位置に、潰し加工により厚みT方向(シート素材40の厚み方向)に潰された潰し部26を形成し、これにより、溝25を形成する。そして、打ち抜き加工によりコアシート20の外形を打ち抜いてシート素材40からコアシート20を形成する。
【0041】
図8は、潰し加工の範囲28と打ち抜き加工の切断部29との位置関係の一例を示す平面図である。図8に示されるように、コアシート形成工程において、潰し加工により潰し部26を形成してから、打ち抜き加工によりコアシート20を打ち抜いて形成する際には、潰し加工の範囲28に打ち抜き加工の切断部29が交差するように、潰し加工の範囲28と打ち抜き加工の切断部29の位置を設定する。切断部29は、ティース部22の先端22Aに位置する。
【0042】
なお、このコアシート形成工程では、廃材になる側へ潰し加工時の余肉を移動させることで、溝25の周囲の盛り上がりを抑制してもよい。このようにすると、複数のコアシート20を積層した際にコアシート20間に余分な隙間が生じることが抑制される。
【0043】
また、このコアシート形成工程では、打ち抜き加工の際に、コアシート20として打ち抜かれる部分と同様に潰し部26をダイにより保持してもよいし、また、潰し部26を位置決めに利用してもよい。さらに、打ち抜き加工は、コアシート20を打ち抜く上下抜きでもよいし、コアシート20を半抜きにしておいてから平押ししてもよい。また、打ち抜き加工後に、切断部29をシェービング加工してもよい。
【0044】
次いで、積層工程では、図7に示されるように、複数のコアシート20を積層する。このとき、互いに同一の形状である複数のコアシート20が整合するように、複数のコアシート20を積層する。積層工程では、複数のシート材24(図2参照)を組み合わせてコアシート20を形成してから、複数のコアシート20を積層してステータコア10を形成してもよく、また、複数のシート材24を積層して分割コア14(図1図2参照)を形成してから、複数の分割コア14を組み合わせてステータコア10を形成してもよい。以上の要領で、ステータコア10が製造される。
【0045】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
(1)コアシート形成工程において、コアシート20を形成する際には、コアシート20の厚みT方向に潰された潰し部26を形成することにより溝25を形成する。したがって、打ち抜き加工ではなく潰し加工により溝25を形成するので、打ち抜き加工で溝25を形成する場合の諸問題、すなわち、溝25のサイズの自由度が制限されることや、高い加工精度が要求されること、打ち抜き型の寿命が低下すること、打ち抜き型のメンテナンスが頻繁に必要になることなどの問題を解消できる。
【0047】
(2)潰し加工では、潰し部26に引張方向の塑性変形が生じることが抑制されるので、コアシート20を形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷することを抑制できる。また、潰し加工によりコアシート20の一部を潰して潰し部26を形成するので、潰し部26がコアシート20の厚みT方向に突出することを回避できる。これにより、積層されたコアシート20間に電気的な接合部位が生じることを防止できるので、渦電流損失の発生を防止できる。
【0048】
(3)潰し部26を形成するための潰し加工は、一般にエッチング加工に比して簡易であるので、コストアップを防止できる。
【0049】
(4)潰し部26が形成されることで凹んだ部分が溝25として形成され、この溝25が形成された部分では、局所的にコアシート20の厚みが減少することにより磁気抵抗が増加する。したがって、この溝25が形成された部分では、磁束が流れにくくなるので、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成することなく、疑似的なスロットを設けたことと同様の効果を得ることができる。
【0050】
(5)打ち抜き加工ではなく潰し加工により溝25を形成することにより、溝25の寸法の自由度だけでなく、溝25の形状の自由度も高めることができる。これにより、磁気特性に合わせた形状に溝25を形成することができる。
【0051】
(6)コアシート形成工程では、潰し加工により潰し部26を形成してから、打ち抜き加工によりコアシート20を打ち抜いて形成する。したがって、例えば、打ち抜き加工と同時に潰し部26を形成する場合に比して、潰し部26が形成される際の余肉の移動が打ち抜き加工の切断面に影響することを抑制できるので、コアシート20の内径寸法及び真円度の精度を確保できる。
【0052】
(7)複数のコアシート20の同じ位置に形成された潰し部26は、ステータコア10の軸方向に並んでおり、この同じ位置に形成された潰し部26は、ステータコア10の軸方向に溝25を介して互いに離間している。したがって、万が一、潰し加工によってコアシート20を形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷した場合でも、絶縁被膜が損傷した部位において潰し部26同士が電気的に接合された状態となることを防止できるので、電気的な接合部位に渦電流が発生して渦電流損失に繋がることを防止できる。これにより、コギングトルク、トルクリップル及び出力トルク等に不利な影響が生じることを防止できる。
【0053】
(8)コアシート20の各ティース部22には、潰し部26に対する厚みT方向の両側に溝25がそれぞれ形成されている。したがって、コアシート20に表裏の区別が無くなるので、複数のコアシート20を積層する際に、コアシート20を表裏反転させるための工程を設けなくて済む。これにより、コストアップを防止できる。
【0054】
(9)仮に、打ち抜き加工により、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状(つまり、コアシート20の厚みT方向に貫通する形状)に形成する場合には、溝25の寸法がばらつくことにより、コギングトルクの低減効果にばらつきが生じる虞がある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、潰し加工によって溝25を安定した寸法で形成できるので、コギングトルクの低減効果にばらつきが生じることを抑制でき、高いロバスト性を得ることができる。
【0056】
(10)仮に、打ち抜き加工により、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成した場合には、溝25の周辺部に磁束が集中して磁気飽和が発生する虞がある。
【0057】
これに対し、本実施形態では、溝25に対応して潰し部26が形成され、この潰し部26に磁束が通るので、溝25の周辺部に磁束が集中して磁気飽和が発生することを抑制できる。つまり、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成した場合と潰し部26を形成することにより溝25を形成する場合とで溝25を同じ大きさとして比較した場合に、潰し部26を形成することにより溝25を形成する場合には、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成した場合に比して、磁気飽和が発生することを抑制できる。
【0058】
(11)仮に、打ち抜き加工により、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成した場合には、ティース部22の剛性が低下する。したがって、複数のシート材24を組み合わせてコアシート20を形成する際、又は、複数のシート材24を積層した分割コア14を組み合わせてステータコア10を形成する際に、ティース部22が変形し、ステータコア10の真円度の精度が低下する虞がある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、溝25に対応して潰し部26が形成されているので、ティース部22の剛性を確保できる。これにより、複数のシート材24を組み合わせてコアシート20を形成する際、又は、複数のシート材24を積層した分割コア14を組み合わせてステータコア10を形成する際に、ティース部22が変形することを抑制できるので、ステータコア10の真円度の精度を確保できる。
【0060】
(12)仮に、潰し部26が、ティース部22の先端22Aから離間しており、ティース部22の先端22Aと潰し部26との間に非潰し部による狭小部(磁気抵抗が低下していない部分)が形成されていると、この狭小部へ磁束が流入して磁気飽和が発生し、コギングトルクやトルクリップル等が悪化する虞がある。
【0061】
これに対し、本実施形態では、潰し部26が、ティース部22の先端22Aに接しており、溝25が、ティース部22の先端22Aに開口している。したがって、ティース部22の先端側の部分に磁束が集中して磁気飽和が発生することを抑制できるので、コギングトルクやトルクリップル等を低減できる。
【0062】
(13)仮に、打ち抜き加工によって溝25が形成された複数のコアシート20を積層した場合、ステータコア10の軸方向に溝25が連なる部分は磁石4とのエアギャップを単純に広げた状態と同義になり、発生トルクが低下する。ここで、発生トルクが低下することを抑制するために、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20とを交互に積層したり、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20をそれぞれ複数枚ずつ積層したりするなどの対策が考えられるが、これらの対策をした場合には、二種類のコアシート20が必要であるため、コストアップになる。
【0063】
これに対し、本実施形態では、潰し加工によって潰し部26を形成することにより溝25を形成することで、溝25と対応する位置に潰し部26が残存するので、磁束が潰し部26を通る。したがって、発生トルクが低下することを抑制できるので、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20とを交互に積層したり、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20をそれぞれ複数枚ずつ積層したりするなどの対策をしなくて済む。これにより、コストアップを防止できる。
【0064】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0065】
(第一変形例)
上記実施形態では、第一溝25Aの幅寸法w1が第二溝25Bの幅寸法w2と同じとされているが、図9に示されるように、第一溝25Aの幅寸法は、第二溝25Bの幅寸法と異なっていてもよい。図9に示される第一変形例では、一例として、第一溝25Aの幅寸法が、第二溝25Bの幅寸法よりも小さいが、第一溝25Aの幅寸法は、第二溝25Bの幅寸法よりも大きくてもよい。
【0066】
また、図9に示されるように、潰し部26には、余肉逃し部31が形成されてもよい。この余肉逃し部31は、潰し部26を形成する際に潰し部26の一部を潰し切らないことにより島状に形成されるものである。余肉逃し部31の外形部は、平面視でU字状やO字状など、どのような形状でもよい。
【0067】
また、余肉逃し部31は、好ましくは、第一溝25A及び第二溝25Bのうち幅寸法の大きい溝25の側に形成されるが、第一溝25A及び第二溝25Bのうち幅寸法の小さい溝25の側に形成されてもよい。さらに、潰し部26における第一溝25Aの側及び第二溝25Bの側の両方に余肉逃し部31が形成されてもよい。
【0068】
このように潰し部26に余肉逃し部31が形成されていると、溝25の周囲に盛り上がりが生じることを抑制できるので、複数のコアシート20を積層した際にコアシート20間に余分な隙間が生じることを抑制できる。また、潰し部26を形成する際に余肉逃し部31を形成することで潰し部26の一部を潰し切らないことにより、潰し加工時のパンチを押す荷重も低減でき、加工設備への負荷を軽減できる。
【0069】
なお、この余肉逃し部31は、溝25の幅方向中央部に位置していてもよい。このように余肉逃し部31が溝25の幅方向中央部に位置していると、溝25の周囲に盛り上がりが生じることをより一層効果的に抑制できる。
【0070】
(第二変形例)
図10に示されるように、第一溝25Aの幅方向両側の縁部には、盛り上がり部32がそれぞれ形成されていてもよい。この盛り上がり部32は、微小であるため、図10では図示されていない。また、このように、第一溝25Aの幅方向両側の縁部に盛り上がり部32がそれぞれ形成される場合、第二溝25Bの幅寸法w2は、第一溝25Aの幅寸法w1よりも大きく設定され、盛り上がり部32が、第二溝25Bの幅寸法w2の範囲内に位置するようにしてもよい。
【0071】
このように盛り上がり部32が第二溝25Bの幅寸法の範囲内に位置するようにすると、複数のコアシート20を積層した際にコアシート20間に余分な隙間が生じることを抑制できる。
【0072】
(第三変形例)
図11に示されるように、潰し部26は、ティース部22の先端22Aに近づくに従って厚みが増加するように形成されてもよい。このような潰し部26の形状は、例えば、廃材になる側へ潰し加工時の余肉を移動させることで形成される。このようにすると、複数のコアシート20を積層した際にコアシート20間に余分な隙間が生じることを抑制できる。
【0073】
(第四変形例)
図12に示されるように、コアシート20の各ティース部22には、潰し部26に対する厚みT方向の片側のみに溝25が形成されていてもよい。また、この場合に、複数のコアシート20の同じ位置に形成された潰し部26は、ステータコア10の軸方向に並ぶことにより、ステータコア10の軸方向に溝25を介して互いに離間していてもよい。このように構成されていても、万が一、潰し加工によってコアシート20を形成する電磁鋼板の表面の絶縁被膜が損傷した場合でも、絶縁被膜が損傷した部位において潰し部26同士が電気的に接合された状態となることを防止できる。
【0074】
(その他の変形例)
図13に示されるように、溝25は、ティース部22の先端22Aから遠ざかるに従って幅が減少するように平面視で概略台形状に形成されていてもよい。
【0075】
また、図14に示されるように、溝25は、ティース部22の先端22Aから遠ざかるに従って幅が減少するように平面視で概略三角形状に形成されていてもよい。
【0076】
また、図15に示されるように、各ティース部22の先端側の部分には、溝25が一つのみ形成されてもよく、また、図16に示されるように、各ティース部22の先端側の部分には、このティース部22の横幅方向に並んで3つ以上の潰し部26が形成されていてもよい。また、図16に示されるように、複数の潰し部26は、概略放射状に形成されていてもよい。さらに、各ティース部22に形成された複数の潰し部26は、ティース部22の中心線を中心にして対称に形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、回転電機Mは、インナーロータタイプのブラシレスモータとされ、コアシート20に形成された複数のティース部22は、環状部21から環状部21の径方向内側に延伸しているが、回転電機Mは、アウターロータタイプのブラシレスモータとされ、コアシート20に形成された複数のティース部22は、環状部21から環状部21の径方向外側に延伸していてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、複数のコアシート20の全てが溝25を有する溝付きコアシートとされているが、ステータコア10は、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20とが交互に積層された構成とされていてもよく、また、溝25が形成されたコアシート20と溝25が形成されていないコアシート20とがそれぞれ複数枚ずつ積層された構成とされていてもよい。
【0079】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施されてもよい。
【0080】
次に、本発明の一実施形態の実施例について説明する。
【0081】
図17は、実施例と比較例について溝25の幅を変えて溝25の長さとコギングトルクとの関係を計算した結果を比較する図である。図17(A)に示されるグラフは、潰し加工により溝25(潰し部26により形成された溝)を形成した実施例の計算結果を示しており、図17(B)に示されるグラフは打ち抜き加工により溝25(コアシート20の軸方向に貫通するスリット状の溝)を形成した比較例の計算結果を示している。
【0082】
比較例のように、打ち抜き加工により、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成する場合には、溝25の寸法がばらつくので、図17(B)に示されるように、コギングトルクの低減効果にばらつきが生じるという結果が得られた。
【0083】
これに対し、実施例のように、潰し加工により溝25を形成した場合には、潰し加工によって溝25を安定した寸法で形成できるので、図17(A)に示されるように、コギングトルクの低減効果にばらつきが生じることを抑制でき、高いロバスト性を得ることができるという結果が得られた。
【0084】
図18は、実施例と比較例について磁束分布を解析した結果を比較する図である。図18(A)に示されるコンター図は、潰し加工により溝25(潰し部26により形成された溝)を形成した実施例の解析結果を示しており、図18(B)に示されるコンター図は打ち抜き加工により溝25(コアシート20の軸方向に貫通するスリット状の溝)を形成した比較例の解析結果を示している。
【0085】
図18(B)に示される比較例のように、打ち抜き加工により、コアシート20の一部を打ち抜いて溝25をスリット状に形成する場合には、溝25の周辺部に磁束が集中して磁気飽和が発生するという結果が得られた
【0086】
これに対し、図18(A)に示される実施例のように、潰し加工により溝25を形成した場合には、潰し部26に磁束が通るので、溝25の周辺部に磁束が集中して磁気飽和が発生することを抑制できるという結果が得られた。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0088】
なお、上述の本発明の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0089】
(付記1)
環状部と、前記環状部から前記環状部の径方向に延伸する複数のティース部とを有する複数のコアシートが積層されて構成されたステータコアであって、
前記複数のコアシートは、前記複数のティース部のそれぞれの先端側の部分に溝を有する溝付きコアシートを含み、
前記溝付きコアシートは、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部が形成されることにより前記溝が形成された構成である、
ステータコア。
(付記2)
前記潰し部は、前記ティース部の先端に接しており、
前記溝は、前記ティース部の先端に開口している、
付記1に記載のステータコア。
(付記3)
前記溝は、前記ステータコアの径方向に延びている、
付記1又は付記2に記載のステータコア。
(付記4)
前記潰し部の厚さ寸法は、前記溝付きコアシートの厚さ寸法よりも小さい、
付記1~付記3のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記5)
各前記ティース部には、該ティース部の横幅方向に並ぶ複数の前記潰し部が形成されている、
付記1~付記4のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記6)
各前記ティース部には、該ティース部の横幅方向の中心に位置する中心線を中心にして複数の前記潰し部が対称に形成されている、
付記1~付記5のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記7)
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の両側に前記溝がそれぞれ形成されている、
付記1~付記6のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記8)
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の片側のみに前記溝が形成されている、
付記1~付記6のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記9)
前記複数のコアシートは、複数の前記溝付きコアシートを含み、
複数の前記溝付きコアシートの同じ位置に形成された前記潰し部は、前記ステータコアの軸方向に並んでいる、
付記1~付記8のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記10)
複数の前記溝付きコアシートは、互いに積層されており、
複数の前記溝付きコアシートの同じ位置に形成された前記潰し部は、前記ステータコアの軸方向に前記溝を介して互いに離間している、
付記9に記載のステータコア。
(付記11)
前記潰し部には、余肉逃し部が形成されている、
付記1~付記10のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記12)
前記余肉逃し部は、前記溝の幅方向の中央部に位置する、
付記11に記載のステータコア。
(付記13)
各前記ティース部には、前記潰し部に対する前記厚み方向の一方側に位置する前記溝としての第一溝と、前記潰し部に対する前記厚み方向の他方側に位置する前記溝としての第二溝が形成されており、
前記第一溝の幅寸法は、前記第二溝の幅寸法と異なる、
付記1~付記12のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記14)
前記複数のコアシートは、重なり合う複数の前記溝付きコアシートを含み、
重なり合う複数の前記溝付きコアシートでは、前記第一溝と前記第二溝とが向かい合っている、
付記13に記載のステータコア。
(付記15)
前記第一溝の幅方向両側の縁部には、盛り上がり部がそれぞれ形成されており、
前記第二溝の幅寸法は、前記第一溝の幅寸法よりも大きく、
前記盛り上がり部は、前記第二溝の幅寸法の範囲内に位置する、
付記14に記載のステータコア。
(付記16)
前記潰し部は、前記ティース部の先端に近づくに従って厚みが増加する、
付記1~付記15のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記17)
前記溝の幅は、前記溝の長さ方向に亘って一定である、
付記1~付記16のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記18)
前記溝は、前記ティース部の先端から遠ざかるに従って幅が減少する、
付記1~付記16のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記19)
前記複数のコアシートの全てが前記溝付きコアシートである、
付記1~付記18のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記20)
前記複数のコアシートのそれぞれは、隣り合う前記ティース部の間に位置する複数の分割部によって複数のシート材に分割されている、
付記1~付記19のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記21)
前記複数のティース部は、前記環状部から前記環状部の径方向内側に延伸する、
付記1~付記20のいずれか一項に記載のステータコア。
(付記22)
環状部と、前記環状部から前記環状部の径方向に延伸する複数のティース部とを有する複数のコアシートが積層されて構成されたステータコアの製造方法であって、
前記複数のティース部のそれぞれの先端側の部分に溝を有する溝付きコアシートを含む前記複数のコアシートを形成するコアシート形成工程と、
前記複数のコアシートを積層する積層工程と、
を備え、
前記コアシート形成工程において前記溝付きコアシートを形成する際に、前記溝付きコアシートの厚み方向に潰された潰し部を形成することにより前記溝を形成する、
ステータコアの製造方法。
(付記23)
前記コアシート形成工程では、潰し加工により前記潰し部を形成してから、打ち抜き加工により前記コアシートを打ち抜いて形成する、
付記22に記載のステータコアの製造方法。
【符号の説明】
【0090】
1…ロータ、2…ステータ、3…ロータ本体、4…磁石、5…貫通孔、10…ステータコア、11…環状部、12…ティース部、13…分割部、14…分割コア、20…コアシート、21…環状部、22…ティース部、22A…ティース部の先端、23…分割部、24…シート材、25…溝、25A…第一溝、25B…第二溝、26…潰し部、27…スロット、28…潰し加工の範囲、29…切断部、31…余肉逃し部、32…盛り上がり部、40…シート素材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18