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特許7472737チェーン検査装置、チェーン検査方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】チェーン検査装置、チェーン検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01B11/26 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158945
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052513
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 友則
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132668(JP,A)
【文献】特開2006-002891(JP,A)
【文献】実開昭55-104143(JP,U)
【文献】国際公開第2019/035519(WO,A1)
【文献】特表2020-531771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンでプレートが連結されたチェーンの撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記撮像画像に基づいて前記プレートの長手方向に対する前記直線縁部の傾き角度を検出することにより、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出部と、
前記撮像画像において前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域と前記凸領域との間の輝度差または輝度比が所定の閾値以上になるように、前記リベットピンを照らす照明を制御する照明制御部と、
を有するチェーン検査装置。
【請求項2】
前記照明制御部は、前記輝度の低下領域が所定の形状になるよう前記照明を制御する、
請求項1記載のチェーン検査装置。
【請求項3】
前記リベットピンは、4面リベットピン又は2面リベットピンである、
請求項1又は2記載のチェーン検査装置。
【請求項4】
チェーン検査装置が実行するチェーン検査方法であって、
直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンでプレートが連結されたチェーンの撮像画像を取得する画像取得処理と、
前記画像取得処理で取得された前記撮像画像に基づいて前記プレートの長手方向に対する前記直線縁部の傾き角度を検出することにより、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出処理と、
前記撮像画像において前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域と前記凸領域との間の輝度差または輝度比が所定の閾値以上になるように、前記リベットピンを照らす照明を制御する照明制御処理と、
を含むチェーン検査方法。
【請求項5】
コンピュータを、
直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンでプレートが連結されたチェーンの撮像画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段により取得された前記撮像画像に基づいて前記プレートの長手方向に対する前記直線縁部の傾き角度を検出することにより、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出手段、
前記撮像画像において前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域と前記凸領域との間の輝度差または輝度比が所定の閾値以上になるように、前記リベットピンを照らす照明を制御する照明制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チェーン検査装置、チェーン検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などでチェーンを点検する際、稼働中の設備を停止し、手動によりチェーンの伸び量などを測定したり、目視により傷やサビの有無、ローラの偏摩耗、ピンの回転などを確認していた。
【0003】
これに対して、設備の長時間の操業停止やチェーンの取り外しの負担を回避するため、カメラによってチェーンを撮影し、撮像画像を画像解析することによってチェーンを点検する手法が提案されている(特許文献1)。特許文献1に提案される手法では、画像解析を利用してチェーンの隣接するピン間の距離を推定することによってチェーンの伸びを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-132668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術によると、チェーンに過大な負荷がかかることによって生じるピンの回転を検出することはできず、チェーンやピンの破損や劣化を早期に検出するため、ピンの回転を検出することが必要とされる。
【0006】
また、工場内などにおいて撮像された画像に対して画像解析を実行する際には、適切な照明下で撮像が行われることが望ましい。
【0007】
上記問題点に鑑み、本開示の課題は、画像解析を利用してチェーンのピンの回転状態を検出するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンでプレートが連結されたチェーンの撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記撮像画像に基づいて前記プレートの長手方向に対する前記直線縁部の傾き角度を検出することにより、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出部と、前記撮像画像において前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域と前記凸領域との間の輝度差または輝度比が所定の閾値以上になるように、前記リベットピンを照らす照明を制御する照明制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、画像解析を利用してチェーンのピンの回転状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施例によるチェーン検査装置を示す概略図である。
図2】本開示の一実施例によるチェーン撮像画像を示す図である。
図3】本開示の一実施例によるチェーン検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本開示の一実施例によるチェーン検査装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】本開示の一実施例による回転角度を示す図である。
図6】本開示の一実施例による弓形部分を示す図である。
図7】本開示の一実施例によるピンテンプレートを示す図である。
図8】本開示の一実施例による二値化処理を示す図である。
図9】本開示の一実施例によるマスク処理を示す図である。
図10】本開示の一実施例による境界抽出処理を示す図である。
図11】本開示の一実施例による境界抽出処理を示す図である。
図12】本開示の一実施例によるチェーン検査処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施例では、画像解析を利用してチェーンのピンの回転状態を検出するチェーン検査装置が開示される。
[本開示の概要]
後述される実施例を概略すると、図1に示されるように、チェーン検査装置100は、照明器具50の照射を制御し、照明器具50からの照明下でチェーン20のピンを撮像する。チェーン検査装置100は、ピンの画像に対して画像解析を実行し、当該ピンの回転角度などの回転に関する状態を推定する。
【0012】
チェーン20の画像を撮像する際、チェーン20が配置されている場所の照明状態によっては、図2(a)に示されるように、撮像画像から4面リベットピンの頭部の正方形の凸領域とその隣接領域との間の境界やピンの輪郭を認識できないこともある。典型的には、4面リベットピンの頭部は円状になっており、その表面の一部に正方形の凸領域が形成されている。4面リベットピンの頭部に光が当たった場合、当該凸領域以外の頭部上に影、すなわち、輝度が低下した領域、ができる。本開示によると、チェーン検査装置100は、照明器具50からの照射によって凸領域の隣接領域が所定の形状(例えば、弓形など)の影を生じさせるように、照明器具50の照射を制御し、図2(b)に示されるような凸領域と隣接領域との位置関係が明確な画像を取得できるようにする。
【0013】
このようにして、4面リベットピンの頭部の凸領域が明確な画像を利用した画像解析によって、高精度にピンの回転角度を推定することが可能になる。
[ハードウェア構成]
ここで、チェーン検査装置100は、図2に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、チェーン検査装置100は、バスBを介し相互接続されるCPU(Central Processing Unit)、メモリ装置102、補助記憶装置103、撮像装置104、通信装置105及び操作手段106を有する。
【0014】
チェーン検査装置100における後述される各種機能及び処理を実現するプログラム又は命令を含む各種コンピュータプログラムは、補助記憶装置103にインストールされ、メモリ装置102は、チェーン検査装置100の起動指示があった場合に、補助記憶装置103からプログラムやデータを読み出して格納する。補助記憶装置103及びメモリ装置102は、プログラム又は命令を格納する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体として実現される。プロセッサとして機能するCPU101は、メモリ装置102に格納されたプログラムやプログラムを実行するのに必要なパラメータなどの各種データに従って、撮像装置104から取得した画像又は映像に基づきチェーン検査装置100の各種機能及び処理を実行する。撮像装置104は、デジタルビデオカメラなどであってもよく、撮像対象の画像又は映像を取得する。通信装置105は、照明器具50などの外部装置との間で各種信号を送受信する。操作手段106は、チェーン検査装置100上の操作パネルや操作ボタンなどであってもよく、チェーン検査装置100の電源オン/オフのためのスイッチ、電源オン/オフ状態を示すランプ、設定ボタン、表示パネルなどから構成されてもよい。
【0015】
しかしながら、チェーン検査装置100は、上述したハードウェア構成に限定されるものでなく、例えば、チェーン検査装置100による機能及び処理の1つ以上を実現する1つ以上の回路などの他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0016】
また、以下の実施例では、照明器具50は、チェーン検査装置100から独立した機器として説明されるが、本開示はこれに限定されず、照明器具50はチェーン検査装置100に搭載されてもよい。
【0017】
また、図示された実施例では、照明器具50は1台であるが、本開示はこれに限定されず、異なる位置に配置された複数の照明器具50が利用されてもよい。この場合、様々な位置から様々な角度によってチェーン20に照明を照射することが可能になる。
[チェーン検査装置]
次に、図4~11を参照して、本開示の一実施例によるチェーン検査装置100を説明する。図4は、本開示の一実施例によるチェーン検査装置100の機能構成を示すブロック図である。図4に示されるように、チェーン検査装置100は、照明制御部110、撮像部120及びピン状態検出部130を有する。
【0018】
照明制御部110は、チェーン20に照射する照明を制御する。具体的には、照明制御部110は、照明器具50から照射される照明状態を制御する。例えば、検査対象のチェーン20に付属されるピンが図5に示されるような4面リベットピンである場合、照明制御部110は、図5(b)に示されるような4面リベットピンの頭部の正方形の凸領域を包囲する4つの弓形部分が、図5(a)に示されるように、その境界線が明確に画像化できるように、照明器具50の照射を制御する。
【0019】
ここで、ピンの回転角度は、図5(b)に示されるように、チェーンの長手方向と、ピンの凸領域の外縁に対応する直線縁部とのなす角として定義されてもよい。図示されるように、チェーンの長手方向とピンの凸領域の直線縁部とのなす角が90度などのチェーン製造時の設計角度である場合、ピンの回転角度は正常であると判断され、なす角が設計角度から所定の閾値以上乖離する場合、ピンの回転角度は異常であると判断されてもよい。
【0020】
具体的には、照明制御部110は、撮像部120によって撮像される4面リベットピンの画像における弓形部分の輝度が、当該弓形部分を包囲する領域の輝度と閾値以上の乖離が生じるように、照明器具50の照射を制御する。
【0021】
例えば、照明制御部110は、撮像画像において輝度の低下領域が現れるように4面リベットピンを照らす照明を制御してもよい。例えば、照明が明るすぎて弓形部分の輝度と弓形部分の隣接領域の輝度との間に閾値以上の相違が生じない場合、照明制御部110は、照明器具50に光量を減少させるよう指示してもよい。他方、照明が暗すぎて弓形部分の輝度と弓形部分の隣接領域の輝度との間に閾値以上の相違が生じない場合、照明制御部110は、照明器具50に光量を増加させるよう指示してもよい。あるいは、4つの弓形部分の一部の輝度と隣接領域の輝度との間に閾値以上の相違が生じない場合、照明制御部110は、当該弓形部分に照射方向を有する照明器具50の光量を増減させてもよい。
【0022】
なお、本開示によるピンは、上述した図6(a)に示されるような頭部を有する4面リベットピンに限定されず、図6(b)に示されるような2面リベットピンであってもよい。2面リベットピンでは、図示されるように、2つの弓形部分が形成される。図6(a)に示されるチェーン20は、プレート21、4面リベットピン22、円形の頭部23、頭部23における正方形の凸領域24、凸領域24の外縁である直線縁部25、及びプレート21と凸領域24との間に形成される弓形部分26を有する。同様に、図6(b)に示されるチェーン20'は、プレート21'、2面リベットピン22'、円形の頭部23' 、頭部23' における凸領域24'、凸領域24'の外縁である直線縁部25' 、及びプレート21'と凸領域24'との間に形成される弓形部分26'を有する。なお、本開示による影部分は弓形に限定されず、ピンの種別に応じて他の形状が利用されてもよい。
【0023】
なお、赤外線(IR)照明を利用している場合、弓形部分と隣接領域との輝度が有意に相違しないかもしれない。この場合であっても、弓形部分と隣接領域との間の輪郭が明確である場合、弓形部分を擬似的な影として扱ってもよい。また、チェーン20の撮影環境や油汚れの程度などに応じて、可視光照明と赤外線照明とを使い分けてもよい。一般に、可視光照明は油によって反射してしまうことがある。なお、照明器具50は、撮像用に備えられたものである必要はなく、工場内の照明であってもよい。
【0024】
撮像部120は、直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンを含む撮像画像を取得する。すなわち、撮像部120は、照明制御部110によって制御された照明器具50からの照明下において、チェーン20のリベットピンを撮像し、リベットピンの画像又は映像を生成する。撮像部120は、デジタルカメラやビデオカメラなどの撮像装置によって実現される。例えば、撮像部120は、稼働中のチェーン20を定点撮影によって撮像し、撮像結果を映像として出力する。特定のピンを検査する場合、当該ピンは撮像された画像フレームにおいてチェーン20の移動方向に移動していくことになる。従って、当該ピンを追跡するため、撮像部120は、チェーン20の速度に応じて撮像条件を制御してもよい。例えば、撮像部120は、ピン状態検出部130によって検出されたチェーン20の速度に応じて映像のフレームレートやシャッタースピードなどのカメラパラメータを変更してもよい。具体的には、チェーン20の速度が速い場合、撮像部120は、フレームレートやシャッタースピードを増加させてもよい。これにより、チェーン20やリベットピンがぼやけないように撮像することが可能になる。
【0025】
ピン状態検出部130は、画像取得部120により取得された撮像画像の中で直線縁部に隣接する輝度の低下領域を解析して、リベットピンの回転に関する状態を検出する。例えば、ピン状態検出部130は、撮像画像におけるリベットピンの凸領域の直線縁部に隣接する、輝度が低下した弓形部分に基づき、検査対象のリベットピンの形状を模したピンテンプレートとリベットピンの画像とのテンプレートマッチングを実行し、リベットピンの回転に関する状態を決定してもよい。具体的には、ピン状態検出部130は、4面リベットピンに対応する図7(a)に示されるようなピンテンプレートを保持してもよい。撮像部120から図7(b)に示されるようなピンの画像を取得した場合、ピン状態検出部130は、撮像されたピンの形状に一致又は近似するピンテンプレートを探索し、撮像されたピンが4面リベットピンであると判断することができる。撮像されたピンが4面リベットピンであると判断すると、ピン状態検出部130は、ピンテンプレートに示される凸領域の形状に基づき4面リベットピンの画像から回転角度を推定すると共に、推定した回転角度が設計角度から所定の閾値以上乖離しているか判断することが可能になる。このようにして、ピン状態検出部130は、ピンの種別に対応するピンテンプレートなどの種別情報に基づき回転角度を推定してもよい。
【0026】
なお、ピン状態検出部130は、テンプレートマッチング以外の他の手法によって回転角度などの回転に関する状態を推定してもよい。例えば、ピン状態検出部130は、エッジ検出を実行し、外接矩形や輪郭線を検出してもよいし、機械学習モデルやディープラーニングモデル、パターンマッチングなどによってピンの凸領域とチェーン20のプレートとの間の位置関係を推定し、回転角度などの回転に関する状態を決定してもよい。例えば、ピンの画像からピンの回転角度が設計角度から閾値以上乖離しているか否かを判定するニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワークなど)が利用されてもよい。このようなニューラルネットワークは、ピンの画像と、当該ピンの回転角度が設計角度から閾値以上乖離しているか否かを示す値との訓練データを利用して訓練されてもよい。例えば、様々な種別のピン、汚れのあるピン、様々な回転角度のピンなどを訓練データに含めることによって、汎用的で柔軟なピンの回転角度の推定が可能になる。また、訓練済みのニューラルネットワークに対して転移学習などを行って、識別に利用してもよい。訓練用のピンの画像は、実際に撮影した画像、人工的に生成した画像の何れであってもよい。
【0027】
回転に関する状態を検出すると、ピン状態検出部130は、検出した回転に関する状態をチェーン検査装置100のオペレータなどに当該ピンの画像と共に通知又は記録してもよい。また、ピンに識別子などが付与されている場合、異常を示すピンの識別子が通知されてもよい。これにより、オペレータは、チェーン20の何れのピンが異常であるか迅速に特定することが可能になる。
【0028】
一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像から特徴量を抽出し、当該特徴量に基づき回転角度を推定してもよい。例えば、ピン状態検出部130は、チェーン20が撮像された映像をORB、SIFT、AKAZE、HOG、LBP、SURFなどの何れか公知の特徴量に変換し、当該特徴量に基づきピンの回転角度などの回転に関する状態を検知してもよい。本実施例によると、チェーン表面の色(輝度)の違いや撮像されたチェーンのサイズの違いによる影響を受けず、ピンの回転角度を検出することが可能になる。また、撮像された映像をORB、SIFT、AKAZE、HOG、LBP、SURFなどの画像の輝度とは異なる特徴量で表現し、その特徴量のマッチングや識別器での判定などによって、ピンの回転角度を推定してもよい。特に、ピンの形状の特徴を良好に表現可能な特徴量が選択されてもよい。また、単純なエッジ検出やchamferマッチングなどが利用されてもよい。
【0029】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像に対してフィルタ処理又は二値化処理を実行し、チェーンとピンとの間に形成される影を強調してもよい。例えば、ピン状態検出部130は、ピンの画像に平滑化などの空間フィルタリング処理を実行し、画像の輝度変化の幅を狭め、ピン表面の影を強調してもよい。さらに、ピン状態検出部130は、図8に示されるように、空間的二値化処理(例えば、画素値の二値化、膨張処理、収縮処理など)を実行し、ピン表面の影を更に強調し、高精度にピンの回転角度を検出してもよい。
【0030】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像にマスク画像を適用し、チェーンとピンとの間に形成される影を抽出してもよい。例えば、図9(a)~(c)に示されるようなマスク画像が利用されてもよい。ピン状態検出部130は、ピンの画像にマスク画像を適用し、ピンの回転状態を検出するのに不要な画像領域や悪影響を及ぼしうる画像領域を除去してもよい。本実施例によると、ピンの画像に対してマスク画像を重畳させることによって、ピンの弓形部分の影を効果的に抽出することが可能になる。
【0031】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像に対して輪郭抽出を実行し、チェーン20とピンとの間の境界線を検出してもよい。具体的には、ピン状態検出部130は、ハフ変換、回帰分析、チェインコードなどの公知の検出手法を適用し、図10に示されるように、ピンの頭頂部の各エッジの直線抽出を実行してもよい。ピン状態検出部130は、抽出した直線とチェーン20の長手方向とのなす角を検出することによって、ピンの回転角度を検出することが可能である。ここで、ピン状態検出部130は、図11に示されるように、検出した直線縁部のうち信頼度の低いものを破棄し、閾値以上の信頼度の直線縁部からピンの回転角度を検出してもよい。例えば、信頼度は、検出した直線縁部とピンテンプレートとの乖離の程度に応じて決定されてもよい。例えば、図示された例では、左側の直線縁部は信頼度が低いと判断され、破棄されてもよい。
【0032】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの映像の複数の画像フレームに基づきピンの回転角度などの回転に関する状態を推定してもよい。チェーン20が映像として撮像される場合、チェーン20の稼働に伴ってピンは移動する。このとき、同一のピンが複数の画像フレームにわたって撮像される。このため、複数回の検出結果から回転角度の平均を算出してもよい。また、カルマンフィルタなどの時系列フィルタを適用してもよい。また、2フレーム間の差分やオプティカルフローを算出し、回転角度を検出してもよい。これにより、より多くの情報から回転角度を推定することが可能になる。
【0033】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像からチェーン20のサイズを推定し、撮像部120は、推定されたチェーン20のサイズに基づき光学系を制御してもよい。例えば、撮像されたチェーンサイズが小さい場合、撮像部120は、光学ズームやデジタルズームを実行し、チェーン20が画像解析に適したサイズで撮影されるまで画像を拡大してもよい。他方、撮像されたチェーンサイズが大きい場合、撮像部120は、光学ズームやデジタルズームを実行し、チェーン20が画像解析に適したサイズで撮影されるまで画像を縮小してもよい。例えば、工場にチェーン検査装置100を設置する場合、工場内のスペースは限られているので、画像解析に適した画像サイズで撮影可能な場所にチェーン検査装置100を設置できるとは限らない。このため、上述した自動ズーム機能が備えられることが好ましい。
【0034】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの画像からチェーン20のサイズを推定し、画像解析に用いるテンプレート画像をリサイズしてもよい。一般に、ピンテンプレートにおけるピンの画像部分と、撮像されたピンの画像部分とはサイズが異なりうる。テンプレートマッチングの精度を向上させるため、ピン状態検出部130は、撮像されたチェーンサイズに整合するようピンテンプレートをリサイズしてもよい。
【0035】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの映像に対して画像認識をオンライン又はオフラインに実行してもよい。例えば、ピンの映像をリアルタイムに処理できるだけの処理能力を有する場合、ピン状態検出部130は、ピンの回転角度をオンラインに実行してもよい。他方、ピンの映像をリアルタイムに処理するのに十分な処理能力を有さない場合、あるいは、リアルタイム処理が必ずしも必要でない場合、ピン状態検出部130は、撮像された映像を一時的にバッファに格納し、適当な時点でバッファに格納された映像からピンの回転角度を検出してもよい。
【0036】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、ピンの映像の画像フレームに対して間引き処理し、抽出した画像フレームからピンの回転角度を推定してもよい。映像の全画像フレームに対して回転角度を検出することは、非効率であり、また、必要でないこともある。このため、一部の画像フレームに対してのみ回転角度を検出してもよい。
【0037】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、チェーン20の設計データに基づきピンの位置を推定し、推定した位置の周辺の画像部分に基づきピンの回転角度を推定してもよい。例えば、ピンの種別が判別されている場合、ピン状態検出部130は、当該ピンの設計データを利用して、ピンのおよその位置を推定し、推定した位置周辺でピンの回転角度が設計角度から乖離しているかを推定してもよい。これにより、検出処理の効率化及び検出精度の向上を図ることができる。
【0038】
また、一実施例では、ピン状態検出部130は、映像における変動箇所を相対的に高い解像度の画像によって画像解析してもよい。例えば、撮像した画像には背景等の検査に関係のない画像部分も含まれている。チェーン20及びピンを検査する際には、移動しているピンとその周辺のチェーン20の画像部分が対象であり、当該画像部分については高解像度画像として扱われ、その他の画像部分については低解像度画像として扱われてもよい。
[チェーン検査処理]
次に、図12を参照して、本開示の一実施例によるチェーン検査処理を説明する。当該チェーン検査処理は、上述したチェーン検査装置100によって実現され、例えば、チェーン検査装置100のプロセッサがプログラム又は命令を実行することによって実現されてもよい。図12は、本開示の一実施例によるチェーン検査処理を示すフローチャートである。
【0039】
図12に示されるように、ステップS101において、チェーン検査装置100は、照明の照射状態を制御する。具体的には、チェーン検査装置100は、輝度の低下領域が所定の形状として現れるようにリベットピンを照らす照明器具50の照明を制御する。例えば、リベットピンの頭部の凸領域と直線縁部を介し隣接する弓形部分が、凸領域及びチェーン20のプレートと所定の閾値以上乖離した輝度になるように、照明器具50の照明を制御してもよい。
【0040】
ステップS102において、チェーン検査装置100は、照射されたチェーン20を撮像する。例えば、チェーン検査装置100は、チェーン20を画像又は映像として撮像してもよい。
【0041】
ステップS103において、チェーン検査装置100は、撮像画像からピンの回転角度などの回転に関する状態を推定する。例えば、チェーン検査装置100は、ピンの画像からピンの凸領域の直線縁部とチェーンのプレートの長手方向とのなす角を検出し、検出した角度を回転角度として決定してもよい。あるいは、チェーン検査装置100は、ピンの画像から回転角度が所定の閾値以上乖離しているか否かを推定する訓練済み機械学習モデルを利用して、当該機械学習モデルにピンの画像を入力し、判定結果を取得してもよい。
【0042】
ステップS104において、チェーン検査装置100は、ピンの異常状態を検出したか判断する。ピンの回転角度が所定の閾値以上乖離している場合、当該ピンは異常状態にあると判定し(S104:YES)、チェーン検査装置100は、異常状態をオペレータなどに通知する。このとき、異常なピンの画像を一緒に送信してもよい。他方、ピンに異常がない場合(S104:NO)、チェーン検査装置100は、当該チェーン検査処理を終了する。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0044】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記]
本開示の一態様では、
直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンを含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記撮像画像の中で前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域を解析して、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出部と、
を有するチェーン検査装置が提供される。
【0045】
一実施例では、前記ピン状態検出部は、前記輝度の低下領域の境界線を解析して、前記リベットピンの回転に関する状態を検出してもよい。
【0046】
一実施例では、前記輝度の低下領域が現れるように前記リベットピンを照らす照明を制御する照明制御部、を有してもよい。
【0047】
一実施例では、前記照明制御部は、前記輝度の低下領域が所定の形状になるよう前記照明を制御してもよい。
【0048】
一実施例では、前記リベットピンは、4面リベットピン又は2面リベットピンであってもよい。
【0049】
一実施例では、前記ピン状態検出部は、訓練済み機械学習モデルを利用して、前記リベットピンの回転に関する状態を推定してもよい。
【0050】
一実施例では、前記ピン状態検出部は、前記ピンの種別に対応する種別情報に基づき前記リベットピンの回転に関する状態を推定してもよい。
【0051】
本開示の他の態様では、
コンピュータを、
直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンを含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記撮像画像の中で前記直線縁部に隣接する輝度の低下領域を解析して、前記リベットピンの回転に関する状態を検出するピン状態検出部と、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0052】
20 チェーン
50 照明器具
100 チェーン検査装置
110 照明制御部
120 撮像部
130 ピン状態検出部
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