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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】キャビネットおよびトイレ装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/00 20060101AFI20240416BHJP
   A47B 81/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A47K17/00
A47B81/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167571
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059770
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田之頭 優太
(72)【発明者】
【氏名】轟木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】占部 正和
(72)【発明者】
【氏名】執行 佳史
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120703(JP,A)
【文献】特開2004-197458(JP,A)
【文献】特開2020-089679(JP,A)
【文献】特開2018-175111(JP,A)
【文献】特開2017-000572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0102747(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111197336(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/00
A47B 81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室に配置されるキャビネットであって、
内部に物品を収容可能なキャビネット本体と、
前記トイレ室に存在する人体を電波により検知する電波センサと
を備え、
前記キャビネット本体は、裏面に凹部が設けられた前面パネルを備え、
前記電波センサの少なくとも一部が前記凹部内に位置する、キャビネット。
【請求項2】
前記前面パネルは、木製である、請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記電波センサの全体が前記凹部内に位置する、請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記キャビネット本体には、洗浄水を貯留するタンクが収容されており、
前記電波センサは、前記前面パネルと前記タンクとの間に配置される、請求項2または3に記載のキャビネット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のキャビネットと、
前記キャビネットの内部に配置されたフレームと、
前記フレームに支持される便器本体と
を備える、トイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、キャビネットおよびトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ室に設けられた人体検知センサによる検知結果に基づいて、トイレ内器具に設けられた照明機器を自動点灯・自動消灯させることにより、トイレ室内に光による演出効果をもたらす技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、大便器の後方に設置されて大便器を支持するキャビネットの前面パネルに人体検知センサを設け、かかる人体検知センサによる検知結果に基づいて、キャビネットの天面に設けられた照明機器を自動点灯・自動消灯させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-000572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮に、人体検知センサをキャビネット内に設けようとした場合、キャビネット内に配置される他の物品、たとえば大便器に供給するための洗浄水を貯留するタンク等との干渉を避けるために、トイレ室の壁面からのキャビネットの出幅を大きくすることが考えられる。しかしながら、キャビネットの出幅は、トイレ室の空間を広く確保する観点から極力小さくすることが望ましい。
【0006】
また、人体検知センサをキャビネット内に設けると、人体検知センサから放射される電波がキャビネットのパネルによって減衰されてしまい、人体検知センサの検知精度が低下するおそれもある。
【0007】
なお、かかる課題は、便器の背面側に設置されて便器を支持するキャビネットに限らず、電波センサを備えたトイレ室用キャビネット全体に共通する課題である。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、キャビネットの出幅が増えることを抑制するとともに、電波センサによる人体検知の精度低下を抑制することができるキャビネットおよびトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係るキャビネットは、トイレ室に配置されるキャビネットであって、内部に物品を収容可能なキャビネット本体と、前記トイレ室に存在する人体を電波により検知する電波センサとを備え、前記キャビネット本体は、裏面に凹部が設けられた前面パネルを備え、前記電波センサの少なくとも一部が前記凹部内に位置する。
【0010】
電波センサの少なくとも一部を凹部内に収めることで、キャビネット本体の出幅を抑えつつ、キャビネット本体に収容された物品と電波センサとの干渉を抑制することができる。また、前面パネルにおいて凹部が設けられる場所は、前面パネルにおいて厚みが比較的薄い場所に相当する。かかる場所に電波センサを位置させることで、前面パネルによる電波の減衰を抑制すること、言い換えれば、電波センサの検知精度の低下を抑制することができる。このように、実施形態に係るキャビネットによれば、キャビネット本体の出幅が増えることを抑制するとともに、電波センサによる人体検知の精度低下を抑制することができる。
【0011】
また、上記キャビネットにおいて、前記前面パネルは、木製である。木材である前面パネルは、トイレ室内の湿気を吸収し易い。湿気を吸収した前面パネルは、電波センサから放射された電波を反射し易くなる。実施形態に係るキャビネットのように、電波センサの少なくとも一部を凹部内に位置させた場合、湿気を吸収した前面パネルは、電波センサから放射される電波を凹部内の上下面および左右面にて反射させて前方すなわちトイレ室に向かうように指向させることができる。これにより、前面パネルによる電波の減衰をさらに抑制することができる。言い換えれば、電波センサの検知精度の低下をさらに抑制することができる。
【0012】
また、上記キャビネットでは、前記電波センサの全体が前記凹部内に位置する。かかる構成によれば、電波センサの全体を凹部内に位置させることで、電波センサの一部のみが凹部内に位置する場合と比較して、凹部内の上下面および左右面による電波の反射量を増やすことができる。これにより、前面パネルによる電波の減衰をさらに抑制することができる。
【0013】
また、上記キャビネットにおいて、前記キャビネット本体には、洗浄水を貯留するタンクが収容されており、前記電波センサは、前記前面パネルと前記タンクとの間に配置される。
【0014】
かかる構成によれば、電波センサの後方に放射された電波をタンクに貯留された洗浄水で反射させて前方に向かわせることができる。これにより、前面パネルによる電波の減衰をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
実施形態の一態様によれば、キャビネットの出幅が増えることを抑制するとともに、電波センサによる人体検知の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るトイレ装置の側面図である。
図3図3は、実施形態に係るキャビネットの側断面図である。
図4図4は、電波センサから放射される電波を模式的に示した図である。
図5図5は、電波センサから放射された電波が凹部の上下面で反射する様子を模式的に示した図である。
図6図6は、図3に示すキャビネットの側断面図のうち電波センサの周辺を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するキャビネットおよびトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
<トイレ装置の全体構成>
まず、図1を参照して実施形態に係るトイレ装置の構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。また、図2は、実施形態に係るトイレ装置の側面図である。なお、図1では、図2に示す衛生洗浄装置が省略されている。
【0019】
図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系が図示されている。かかる直交座標系は、他の図においても図示される場合がある。また、本明細書では、かかる直交座標系におけるX軸正方向をトイレ装置の前方と規定し、Z軸正方向をトレイ装置の上方と規定している。言い換えれば、本明細書では、便蓋を背にして便座に着座した使用者からみた上方、下方、前方、後方、右側方、及び左側方を、それぞれ「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、及び「左側方」と規定している。
【0020】
図1および図2に示すように、実施形態に係るトイレ装置1は、便器本体2と、衛生洗浄装置3と、キャビネット4とを備える。便器本体2、衛生洗浄装置3およびキャビネット4は、トイレ室に設置される。
【0021】
(便器本体2について)
便器本体2は、壁掛式の洋式大便器である。便器本体2は、キャビネット4の内部に収容された後述するフレーム20(図2参照)に支持される。これにより、便器本体2は、トイレ室の床面F(図2参照)から浮いた状態となっている。
【0022】
便器本体2は、たとえば、汚物を受けるボウル部、ボウル部の後方(上流側)に形成される導水路とボウル部の下部と連通するトラップ管路等を備える。ボウル部の上縁には、リムが形成され、リムの後方側には、導水路から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口が形成される。リム吐水口から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄する。
【0023】
便器本体2は、たとえば陶器製である。なお、便器本体2は、樹脂製であってもよいし、陶器および樹脂の組み合わせにより形成されてもよい。
【0024】
(衛生洗浄装置3について)
衛生洗浄装置3は、便器本体2の上面に設置されるケーシングと、ケーシングに対して回動可能に支持された便座および便蓋を備える。ケーシングの内部には、たとえば、便座に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。たとえば、ケーシングの内部には、洗浄ノズルや、洗浄ノズルの動作を制御する制御回路などが設けられる。洗浄ノズルは、使用者が便座に座っているときに、ケーシングの内部から前方へ進出した状態で、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する。また、ケーシングには、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機器が適宜設けられていてもよい。
【0025】
(キャビネット4について)
キャビネット4は、キャビネット本体10と、フレーム20と、タンク30と、電波センサ40と、照明部50と、制御部60とを備える。なお、ここでは図示を省略するが、キャビネット4は、上記以外にも、タンク30に対して洗浄水を供給する給水装置、タンク30の底面に設けられた排水弁を駆動させる排水弁装置等を備えていてもよい。
【0026】
キャビネット本体10は、便器本体2の後方に配置される。具体的には、キャビネット本体10は、便器本体2の後方に位置するトイレ室の壁面Wに寄せて配置される。
【0027】
キャビネット本体10は、たとえば直方体状の箱体であり、物品(後述するフレーム20、タンク30等)を収容可能な空間を内部に有する。図1では、キャビネット本体10の左右幅が便器本体2の左右幅と同程度である場合の例を示しているが、キャビネット本体10の左右幅は、たとえば、トイレ室の壁面Wの左右幅と同程度であってもよい。
【0028】
キャビネット本体10は、前面パネル11と、左右一対の側面パネル12,12と、上面パネル13とを備える。前面パネル11は、キャビネット本体10の前面を構成する板状の部材である。前面パネル11は、トイレ室の床面Fに対して略垂直かつトイレ室の壁面Wに対して略平行に設けられる。側面パネル12は、キャビネット本体10の側面を構成する板状の部材である。側面パネル12は、トイレ室の床面Fおよび壁面Wに対して略垂直に設けられる。上面パネル13は、キャビネット本体10の上面を構成する板状の部材である。上面パネル13は、トイレ室の床面Fに対して略平行かつトイレ室の壁面Wに対して略垂直に設けられる。
【0029】
これら前面パネル11、側面パネル12,12および上面パネル13とトイレ室の壁面Wとによって、キャビネット本体10の内部空間が形成される。前面パネル11および側面パネル12,12は、後述するフレーム20に固定される。
【0030】
前面パネル11、側面パネル12,12および上面パネル13は、木製である。木製である前面パネル11、側面パネル12,12および上面パネル13は、トイレ室の湿気を吸収しやすい。この点については、後述する。なお、これに限らず、たとえば前面パネル11のみが木製であり、その他の側面パネル12,12および上面パネル13は、たとえば樹脂などの木材以外の材質で形成されてもよい。
【0031】
フレーム20は、キャビネット本体10の内部に収容される。フレーム20は、トイレ室の壁面Wに接するように配置された状態で、トイレ室の床面Fおよび壁面Wに固定される。フレーム20は、便器本体2をトイレ室の床面Fから離隔させた状態で支持する。また、フレーム20には、上述したキャビネット本体10の前面パネル11および側面パネル12,12が固定される。すなわち、フレーム20は、キャビネット本体10をトイレ室の床面Fおよび壁面Wに固定するためのフレームでもある。
【0032】
タンク30は、キャビネット本体10の内部に収容される。タンク30は、外部の給水源(図示せず)に接続され、給水源から供給される洗浄水を貯留する。タンク30の下部には、給水管(図示せず)が接続されており、タンク30に貯留された洗浄水は、給水管を介して便器本体2に供給される。タンク30の内部には、給水源からの水をタンク30に供給する給水装置、および、給水管に連通するタンク30の排水口を開閉する排水弁装置などが設けられている。これら給水装置および排水弁装置による洗浄動作(給排水動作)は、トイレ室に設置された操作部(図示せず)に対するボタン操作によって開始される。なお、タンク30は、便器本体2よりも上方に配置される。
【0033】
電波センサ40は、キャビネット本体10の内部に収容される。電波センサ40の設置場所の詳細については、後述する。
【0034】
電波センサ40は、トイレ室内における人体の検知を行う。電波センサ40は、たとえば、マイクロ波センサである。電波センサ40は、たとえば、人体のトイレ室への入室及びトイレ室からの退室、並びに人体の便座への着座を検知する。
【0035】
なお、電波センサ40から放射される電波は、必ずしもマイクロ波であることを要さず、少なくともキャビネット本体10を透過可能な電波であればよい。すなわち、電波センサ40から放射される電波は、キャビネット本体10の材質である木材を透過可能であればよい。
【0036】
照明部50は、トイレ室を照明する。実施形態において、照明部50は、たとえばフレーム20によってトイレ室の床面Fよりも高い位置に固定される。照明部50は、キャビネット本体10の前面パネル11よりも前方にせり出しており、このせり出した部分は、便器本体2の袴部内に位置している。すなわち、照明部50は、使用者から視認されない場所に配置される。
【0037】
かかる照明部50は、たとえば便器本体2直下の床面Fに向けて斜め下方に光を照射する。これにより、床面Fを照らして、トイレ室内に光による演出効果をもたらすことができる。
【0038】
なお、照明部50の位置は、上記の例に限定されない。たとえば、照明部50は、キャビネット本体10の上部に設けられてもよい。この場合、照明部50は、キャビネット本体10の上面パネル13またはトイレ室の壁面Wを照明することができる。
【0039】
照明部50の光源は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)である。なお、照明部50の光源は、LEDに限定されず、可視光を発光可能なものであればよい。
【0040】
制御部60は、たとえば照明部50とともにフレーム20の下部に固定される。なお、制御部60の位置は上記の例に限定されない。たとえば、制御部60は、キャビネット本体10の外部に配置されてもよい。
【0041】
制御部60は、電波センサ40の検知結果に基づいて照明部50を制御する。具体的には、電波センサ40は、検知結果を制御部60に送信する。制御部60は、電波センサ40から送信された検知結果に基づき、照明部50の動作を制御する。なお、制御部60は、電波センサ40の動作を制御するための制御信号を電波センサ40に送信してもよい。たとえば、制御部60は、電波センサ40を強制的にオフにする信号を電波センサ40に送信してもよい。このように、制御部60は、電波センサ40から検知結果を受信するだけでなく、電波センサ40と双方向に通信してもよい。
【0042】
たとえば、電波センサ40が人体のトイレ室への入室を検知すると、制御部60は、照明部50を点灯させる。たとえば、電波センサ40がトイレ室における人体の動きを検知すると、制御部60は、照明部50を点灯させる。たとえば、電波センサ40が人体のトイレ室からの退室を検知すると、制御部60は、照明部50を消灯させる。
【0043】
このように、照明部50と制御部60とを設けることで、キャビネット4において、電波センサ40の検知結果に基づいて、制御部60により照明部50を制御することができる。したがって、専用のトイレ装置を用いることなく、トイレ室内に光による演出効果をもたらすことができる。
【0044】
なお、制御部60は、電波センサ40の検知結果に基づいて、トイレ室内に設けられる他の機器の動作を制御してもよい。たとえば、制御部60は、電波センサ40の検知結果に基づいて、トイレ室の天井に設けられた照明を制御してもよい。また、制御部60は、電波センサ40の検知結果に基づいて、衛生洗浄装置3に設けられた機器、たとえば、脱臭ユニットや室内暖房ユニットなどを制御してもよい。
【0045】
次に、実施形態に係る電波センサ40の設置場所について図3を参照して説明する。図3は、実施形態に係るキャビネット4の側断面図である。
【0046】
図3に示すように、キャビネット本体10の前面パネル11は、裏面112に凹部111を有する。凹部111は、前面パネル11の裏面112を前面パネル11のおもて面113に向かって窪ませた部位である。
【0047】
実施形態に係る電波センサ40は、かかる凹部111に収容される。実施形態においては、電波センサ40の全体が凹部111内に位置しているが、電波センサ40は、少なくとも一部が凹部111内に位置していればよい。
【0048】
このように、電波センサ40の少なくとも一部を凹部111内に収めることで、キャビネット本体10の出幅D(奥行き)を抑えつつ、キャビネット本体10に収容された物品(たとえば、図3ではタンク30)と電波センサ40との干渉を抑制することができる。
【0049】
また、凹部111の前方側における前面パネル11の厚み、すなわち、凹部111の奥面111aと前面パネル11のおもて面113との間の厚みは、前面パネル11の裏面112とおもて面113との間の厚みと比較して薄い。ここで、上述したように、前面パネル11は、木製である。木材である前面パネル11は、トイレ室内の湿気を吸収し易い。特に、住宅内でも高温多湿になり易いトイレ室では、木材の吸湿は顕著である。湿気を吸収した前面パネル11は、電波センサ40から放射された電波を反射し易くなる。すなわち、前面パネル11が湿気を吸収することで、トイレ室に向かって照射される電波の量が減ってしまうため、電波センサ40の検知精度が低下するおそれがある。
【0050】
これに対し、実施形態に係るキャビネット4は、前面パネル11において厚みが比較的薄い箇所に電波センサ40を位置させることで、仮に前面パネル11が湿気を吸収したとしても、前面パネル11による電波の減衰を抑制することができる。すなわち、電波センサ40の検知精度の低下を抑制することができる。
【0051】
ここで、前面パネル11全体の厚みを薄くすることで、キャビネット本体10内の物品と電波センサ40との干渉を抑制することも考えられる。しかしながら、前面パネル11全体の厚みを薄くしてしまうと、前面パネル11の強度が低くなり、前面パネル11が反って曲がったり、破損しやすくなってしまったりするおそれがある。これに対し、実施形態に係るキャビネット4によれば、前面パネル11に凹部111を設けて、前面パネル11の一部の厚みを薄くしている。これにより、前面パネル11の強度を維持しつつ、前面パネル11による電波の減衰を抑制することができる。
【0052】
このように、実施形態に係るキャビネット4によれば、キャビネット本体の出幅が増えることを抑制するとともに、電波センサ40による人体検知の精度低下を抑制することができる。
【0053】
図4は、電波センサ40から放射される電波を模式的に示した図である。また、図5は、電波センサ40から放射された電波が凹部111の上下面で反射する様子を模式的に示した図である。
【0054】
図4に示すように、電波センサ40は、電波Rを放射状に照射する。言い換えれば、電波センサ40は、電波センサ40を中心とする全方位に電波Rを照射する。すなわち、電波Rは、凹部111の奥面111aだけでなく、凹部111の上下面111b,111bおよび左右面111c,111cにも照射される。さらに、電波Rは、電波センサ40の後方にも照射される(電波センサ40の後方に向かう電波Rの有効利用については、後述する)。
【0055】
なお、電波センサ40は、電波センサ40を中心とする全方位に電波Rを照射するが、電波センサ40から照射される電波Rの強度は、必ずしも全方位について一様でなくてもよい。たとえば、実施形態において、電波センサ40から照射される電波Rの強度は、人体を検知する方向である、前方側が最も強度が高くなるようになっている。
【0056】
実施形態に係るキャビネット4のように、電波センサ40の少なくとも一部を凹部111内に位置させた場合、湿気を吸収した前面パネル11は、電波センサ40から放射される電波を凹部111内の上下面111b,111bおよび左右面111c,111cにて反射させて(図5に示す反射波Rr参照)、前方すなわちトイレ室に向かうように指向させることができる。これにより、前面パネル11による電波Rの減衰をさらに抑制することができる。言い換えれば、電波センサ40の検知精度の低下をさらに抑制することができる。
【0057】
また、実施形態に係る電波センサ40は、その全体が凹部111内に位置している。このように、電波センサ40の全体を凹部111内に位置させることで、電波センサ40の一部のみが凹部111内に位置する場合と比較して、凹部111内の上下面111b,111bおよび左右面111c,111cによる電波Rの反射量を増やすことができる。これにより、前面パネル11による電波Rの減衰をさらに抑制することができる。
【0058】
なお、凹部111は、上下面111b,111bおよび左右面111c,111cの少なくとも一面にたとえば金属を有していてもよい。このように、上下面111b,111bおよび左右面111c,111cの少なくとも一部に金属を設けることで、電波Rの反射量をさらに増やすことができる。なお、ここでは、凹部111は、金属に限らず、木材よりも電波Rの反射量が多い部材を上下面111b,111bおよび左右面111c,111cの少なくとも一面に有していればよい。
【0059】
図6は、図3に示すキャビネット4の側断面図のうち電波センサ40の周辺を拡大して示した図である。
【0060】
上述したように、電波Rは、電波センサ40の前方、上方および側方だけでなく、後方にも放射される。ここで、図6に示すように、電波センサ40は、前面パネル11とタンク30との間に配置される。すなわち、電波センサ40の後方には、タンク30が配置されている。電波センサ40の後方に放射された電波Rは、タンク30を透過し、タンク30に貯留された洗浄水によって反射されて(図6に示す反射波Rr参照)、キャビネット本体10の前方、すなわち、トイレ室に向かう。
【0061】
このように、電波センサ40の後方にタンク30が配置されることで、電波センサ40の後方に放射された電波Rをタンク30に貯留された洗浄水で反射させて前方に向かわせることができる。これにより、前面パネル11による電波Rの減衰をさらに抑制することができる。
【0062】
(変形例)
上述した実施形態では、便器本体2の後方に設置されて便器本体2を支持するキャビネット4を例に挙げたが、本願の開示するキャビネットは、電波センサを備えたトイレ室用キャビネットであればよい。たとえば、本願の開示するキャビネットは、便器本体の側方に配置されて、内部に物品を収容する収容部の他、手洗い器や紙巻き器などを備えたキャビネットであってもよい。
【0063】
上述してきたように、実施形態に係るキャビネット(一例として、キャビネット4)は、トイレ室に配置されるキャビネットであって、内部に物品を収容可能なキャビネット本体(一例として、キャビネット本体10)と、トイレ室に存在する人体を電波により検知する電波センサ(一例として、電波センサ40)とを備える。また、キャビネット本体は、裏面(一例として、裏面112)に凹部(一例として、凹部111)が設けられた前面パネル(一例として、前面パネル11)を備える。そして、実施形態に係るキャビネットは、電波センサの少なくとも一部が凹部内に位置する。
【0064】
したがって、実施形態に係るキャビネットによれば、キャビネットの出幅が増えることを抑制するとともに、電波センサによる人体検知の精度低下を抑制することができる。
【0065】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :トイレ装置
2 :便器本体
3 :衛生洗浄装置
4 :キャビネット
10 :キャビネット本体
11 :前面パネル
12 :側面パネル
13 :上面パネル
20 :フレーム
30 :タンク
40 :電波センサ
50 :照明部
60 :制御部
111 :凹部
111a :奥面
111b :上下面
111c :左右面
112 :裏面
113 :おもて面
D :出幅
F :床面
R :電波
Rr :反射波
W :壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6