(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2020187512
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】千葉 元気
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164069(JP,A)
【文献】特開2011-252833(JP,A)
【文献】特開2008-172441(JP,A)
【文献】特開2018-096935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、前記周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した前記車両の位置を推定する位置推定装置であって、
前記カメラによる撮像画像から、前記周囲環境におけるランドマーク(L)を検出する検出部(110)と、
前記環境点群から、前記ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出する抽出部(120)と、
前記ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、前記範囲内点群の中から特定する特定部(130)と、
前記ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される前記車両の位置を決定する位置決定部(140)と、
を備え
、
前記特定部は、前記ランドマークに推定される反射強度範囲と、前記範囲内点群の反射強度とに基づいて、前記ランドマーク点群を特定する位置推定装置。
【請求項2】
前記抽出部は、推定される前記車両から前記ランドマークまでの距離が大きいほど、前記カメラの撮像方向における前記推定範囲の大きさを大きくする請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記撮像画像に基づき認識した前記ランドマークにおける特定面の面積が大きいほど、前記カメラの撮像方向における前記推定範囲の大きさを小さくする請求項1又は請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記カメラの撮像方向における前記推定範囲の大きさを、前記撮像方向の直交方向における大きさよりも大きく設定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記ランドマークの位置情報を含むベクトル地図に基づいて、前記推定範囲の位置を確定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記撮像画像に基づき推定した前記ランドマークの高さ情報に基づいて、前記ランドマーク点群を特定する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項7】
光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、前記周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した前記車両の位置を推定するために、プロセッサ(102)により実行される位置推定方法であって、
前記カメラによる撮像画像から、前記周囲環境におけるランドマーク(L)を検出する検出プロセス(S10,S20)と、
前記環境点群から、前記ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出する抽出プロセス(S30,S40)と、
前記ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、前記範囲内点群の中から特定する特定プロセス(S50)と、
前記ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される前記車両の位置を決定する位置決定プロセス(S60)と、
を含
み、
前記特定プロセスでは、前記ランドマークに推定される反射強度範囲と、前記範囲内点群の反射強度とに基づいて、前記ランドマーク点群を特定する位置推定方法。
【請求項8】
光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、前記周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した前記車両の位置を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む位置推定プログラムであって、
前記命令は、
前記カメラによる撮像画像から、前記周囲環境におけるランドマーク(L)を検出させる検出プロセス(S10,S20)と、
前記環境点群から、前記ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出させる抽出プロセス(S30,S40)と、
前記ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、前記範囲内点群の中から特定させる特定プロセス(S50)と、
前記ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される前記車両の位置を決定させる位置決定プロセス(S60)と、
を含
み、
前記特定プロセスでは、前記ランドマークに推定される反射強度範囲と、前記範囲内点群の反射強度とに基づいて、前記ランドマーク点群を特定させる位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両の位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に地図情報を提供するシステムが開示されている。このシステムでは、車両のセンサによる検出情報に基づく高精度地図がサーバにて生成される。車両は、サーバから高精度地図を取得し、走行中に検出したLiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)のスキャンデータと、高精度地図とに基づき、現在位置を推定する。スキャンデータと高精度地図とに基づく現在位置の推定方法としては、スキャンデータの点群と、高精度地図に含まれる点群とをマッチングさせるスキャンマッチングが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0188060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したスキャンマッチングによる位置推定は、大量の点同士をマッチングさせるため、処理負荷が大きくなり易い。
【0005】
開示される目的は、処理負荷を低減した位置推定が可能な位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された位置推定装置のひとつは、光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した車両の位置を推定する位置推定装置であって、
カメラによる撮像画像から、周囲環境におけるランドマーク(L)を検出する検出部(110)と、
環境点群から、ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出する抽出部(120)と、
ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、範囲内点群の中から特定する特定部(130)と、
ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される車両の位置を決定する位置決定部(140)と、
を備え、
特定部は、ランドマークに推定される反射強度範囲と、範囲内点群の反射強度とに基づいて、ランドマーク点群を特定する。
【0008】
開示された位置推定方法のひとつは、光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した車両の位置を推定するために、プロセッサ(102)により実行される位置推定方法であって、
カメラによる撮像画像から、周囲環境におけるランドマーク(L)を検出する検出プロセス(S10,S20)と、
環境点群から、ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出する抽出プロセス(S30,S40)と、
ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、範囲内点群の中から特定する特定プロセス(S50)と、
ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される車両の位置を決定する位置決定プロセス(S60)と、
を含み、
特定プロセスでは、ランドマークに推定される反射強度範囲と、範囲内点群の反射強度とに基づいて、ランドマーク点群を特定する。
【0009】
開示された位置推定プログラムのひとつは、光照射に対する反射光を検出することで車両(A)の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出する光センサ(11)と、周囲環境を撮像するカメラ(12)とを搭載した車両の位置を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む位置推定プログラムであって、
命令は、
カメラによる撮像画像から、周囲環境におけるランドマーク(L)を検出させる検出プロセス(S10,S20)と、
環境点群から、ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲(Re)内の点群を、範囲内点群として抽出させる抽出プロセス(S30,S40)と、
ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、範囲内点群の中から特定させる特定プロセス(S50)と、
ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される車両の位置を決定させる位置決定プロセス(S60)と、
を含み、
特定プロセスでは、ランドマークに推定される反射強度範囲と、範囲内点群の反射強度とに基づいて、ランドマーク点群を特定させる。
【0010】
これらの開示によれば、カメラによる撮像画像から検出されたランドマークが存在すると推定される推定範囲内の範囲内点群が、光センサによる環境点群から抽出される。そして、当該範囲内点群からランドマーク点群が特定され、当該ランドマーク点群と点群地図とのマッチングにより、推定される車両の位置が決定される。故に、光センサにより検出された環境点群が、撮像画像に基づき範囲内点群までに限定され、さらに範囲内点群からランドマーク点群までに限定されたうえで、点群地図とのマッチングに使用される。したがって、ランドマーク点群が確保されることでマッチングによる位置の推定が確実に可能になりながらも、マッチングに使用される環境点群の数自体は抑制され得る。以上により、処理負荷を低減した位置の推定が可能な位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】位置推定装置を含むシステムを示す図である。
【
図2】位置推定装置が有する機能の一例を示すブロック図である。
【
図3】規定される推定範囲の一例を示す模式図である。
【
図4】位置推定装置が実行する位置推定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の位置推定装置100について、
図1~
図4を参照しながら説明する。位置推定装置100は、車両Aに搭載された電子制御装置である。位置推定装置100は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して、他の車載構成と接続されている。他の車載構成には、周辺監視センサ10、自動運転ECU40及び車両制御ECU50が含まれている。
【0013】
周辺監視センサ10は、車両Aの周辺環境を監視する自律センサであり、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)11、及び車両Aの前方を含んだ所定範囲を撮像する外界カメラ12を含む。また、周辺監視センサ10は、ミリ波レーダ及びソナー等を含んでいてもよい。
【0014】
LiDAR11は、光照射に対する反射光を検出することで車両Aの周囲環境の点群である環境点群を検出する光センサの一例である。LiDAR11は、発光素子、撮像素子及び撮像回路を有している。発光素子は、例えばレーザダイオード等の、指向性レーザ光を発する半導体素子である。発光素子は、車両Aの外界へ向かうレーザ光を、断続的なパルスビーム状に照射する。撮像素子は、例えばSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等の、光に対して高感度な半導体素子である。撮像素子の外界側には、LiDAR11専用の入射面が、配置されている。外界のうち、撮像素子の画角により決まるセンシング領域から、入射面へ入射する光により、当該撮像素子が露光される。
【0015】
撮像回路は、撮像素子における複数画素の露光及び走査を制御すると共に、当該撮像素子からの信号を処理してデータ化する、集積回路である。撮像回路は、発光素子からの光照射により撮像素子を露光する。反射光モードでは、少なくとも周囲環境におけるセンシング領域内の物点が、レーザ光の反射点となる。その結果、反射点での反射されたレーザ光(以下、反射光という)が、入射面を通して撮像素子に入射する。このとき撮像回路は、撮像素子の複数画素を走査することで、反射光をセンシングする。撮像回路は、各画素において照射タイミングから反射光を感知するまでのビーム飛行時間の半値を、撮像素子から反射点までの距離値へと変換する。撮像回路は、変換した距離値を各画素に関連付けしてデータ化する。これにより、撮像回路は、環境点群の各点に三次元の距離情報が関連付けられた環境点群データを取得する。
【0016】
外界カメラ12は、周囲環境におけるLiDAR11のセンシング領域と少なくとも一部が重複するセンシング領域を撮像する。外界カメラ12は、撮像素子及び撮像回路を有している。撮像素子は、例えばCMOS等の半導体素子である。撮像素子の外界側には、外界カメラ12専用の入射面が、配置されている。外界のうち、撮像素子の画角により決まるセンシング領域から、入射面へ入射する光により、当該撮像素子が露光される。
【0017】
撮像回路は、撮像素子における複数画素の露光及び走査を制御すると共に、同素子からの信号を処理してデータ化する、集積回路である。撮像回路は、撮像素子の制御により、撮像素子を露光する。このとき、センシング領域内の物点が外光の反射点となる。その結果、反射点で反射された外光が、入射面を通して撮像素子に入射する。このとき撮像回路は、撮像素子の複数画素を走査することで、反射された外光をセンシングする。ここで特に撮像回路は、センシングした外光の強度に応じて複数画素毎に取得される輝度値を、各画素値として二次元データ化することで、外光強度に応じた撮像画像を取得する。
【0018】
なお、撮像回路は、例えば、LiDAR11から取得した点群画像やカメラから取得した撮像画像等に基づき、画像解析処理によって、進行経路上の障害物や、先行車、並走車、対向車等の他車両の有無及びその位置を認識する。
【0019】
自動運転ECU40は、自律運転制御及び高度運転支援制御の少なくとも一方を、自動運転モードとして定常的もしくは一時的に実行する電子制御装置である。自動運転ECU40は、位置推定装置100から車両Aの推定自己位置を取得し、当該位置に基づいて、自動運転モードにおける車両Aの加減速又は操舵に関する制御指示を生成する。
【0020】
車両制御ECU50は、車両Aの加減速制御及び操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU50としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU50は、車両Aに搭載された舵角センサ、車速センサ等の各センサから出力される検出信号を取得し、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。車両制御ECU50は、車両Aの制御指示を自動運転ECU40から取得することで、当該制御指示に従う自律走行又は高度運転支援を実現するように、各走行制御デバイスを制御する。
【0021】
位置推定装置100は、少なくとも1つの専用コンピュータを含んで構成される。位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、例えば、自己位置を含んだ車両Aの状態量を推定する、ロケータECUである。位置推定装置100は、こうした専用コンピュータを含んで構成されることで、メモリ101及びプロセッサ102を少なくとも1つずつ有している。
【0022】
メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する。メモリ101は、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。メモリ101は、プロセッサ102によって実行されるプログラムとして、少なくとも後述の位置推定プログラムを格納している。
【0023】
また、メモリ101は、所定のデータ記憶領域に、ランドマーク地図データベース(以下、「DB」)125及び点群地
図DB145を記憶している。各地
図DB125,145は、それぞれ異なる種類の地図データを格納しているデータベースである。
【0024】
ランドマーク地
図DB125は、道路上及び道路周辺の地物であるランドマークLに関する情報を格納している。ランドマークLには、例えば、路面標示(走行区画線及び停止線等)、道路標識及び構造物等が含まれる。構造物には、例えば、街路灯及び信号機等が含まれる。また、構造物には、歩道橋、高架及び特定施設の建造物等が含まれていてもよい。
【0025】
ランドマーク地
図DB125は、ランドマークLの位置及び形状をベクトル情報として保持するベクトル地図のデータベースである。ランドマーク地
図DB125は、各ランドマークLの属性情報を含んでいてもよい。ランドマーク地
図DB125の地図データは、例えば、外界カメラ12を搭載した測量車両にて収集された、当該外界カメラ12による撮像画像に基づいて生成される。なお、ランドマーク地
図125の地図データは、測量車両又は一般車両の外界カメラ12からの撮像画像に基づき、適宜更新されてよい。
【0026】
点群地
図DB145は、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる三次元点群の地図データを格納している。点群地
図DB145の当該地図データには、点群の各点についての三次元座標情報が少なくとも含まれている。点群地
図DB145の当該地図データには、各点の属性情報が含まれていてもよい。点群地
図DB145の地図データは、例えば、LiDAR11を搭載した測量車両にて収集された、当該LiDAR11による点群データに基づいて生成される。なお、点群地
図DB145の地図データは、測量車両又は一般車両のLiDAR11からの点群データに基づき、適宜更新されてよい。
【0027】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。プロセッサ102は、メモリ101に格納された位置推定プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより位置推定装置100は車両Aの位置を推定するための機能部を、複数構築する。機能部は、機能ブロックと言い換えることもできる。このように位置推定装置100では、メモリ101に格納された位置推定プログラムが複数の命令をプロセッサ102に実行させることで、複数の機能部が構築される。位置推定装置100により構築される複数の機能部には、
図2に示すように、ランドマーク検出部110、抽出部120、特定部130及び位置決定部140が含まれる。
【0028】
ランドマーク検出部110は、外界カメラ12から送信された撮像画像を取得する。ランドマーク検出部110は、画像認識処理により撮像画像からランドマークLを検出する。ランドマークLは、例えば、路面標示、道路標識及び構造物の少なくとも1つである。ランドマーク検出部110は、ランドマークLの相対位置、形状及び大きさを画像認識により検出し、それらの情報を検出情報として抽出部120に提供する。なお、ランドマーク検出部110は、撮像画像からランドマークLを検出できなかった場合には、次の制御サイクルにて別の撮像画像からランドマークLの検出を実施する。
【0029】
抽出部120は、ランドマーク検出部110によるランドマークLの検出情報に基づいて、実際のランドマークLが存在すると推定される位置範囲を、推定範囲Reとして設定する。抽出部120は、LiDAR11にて検出された環境点群から、推定範囲Re内の点群を、範囲内点群として抽出する。
【0030】
詳記すると、抽出部120は、推定範囲Reを、検出情報に基づくランドマークLの位置(カメラ検出位置)を中心とした範囲に設定する(
図3参照)。なお、
図3において格子のハッチングを付した円が、代表位置としてのカメラ検出位置を示しており、破線のハッチングを付した円が、実際のランドマークLの位置を示している。カメラ検出位置は、例えば、ランドマークLの重心位置等の代表位置とされる。又は、カメラ検出位置は、検出されたランドマークLの輪郭位置とされてもよい。
【0031】
なお、抽出部120は、ランドマーク地
図DBに格納されたランドマーク地図情報に基づいて、当該推定範囲Reの位置を確定する。具体的には、抽出部120は、ランドマーク地図情報に含まれている位置情報とカメラ検出位置とを比較し、ランドマークLとは異なる物体がランドマークLとして誤認識されているか否かを判定する。ここで誤認識されていると判定した場合、ランドマーク検出部110にて検出処理がやり直される。誤認識されていないと判定した場合、当該推定範囲Reの位置を、カメラ検出位置に基づく位置として確定する。
【0032】
抽出部120は、確定した位置における推定範囲Reの大きさを、車両Aからカメラ検出位置までの距離(カメラ検出距離)及びランドマークLの面積に基づいて決定する。具体的には、抽出部120は、カメラ検出距離が大きいほど、外界カメラ12の撮像方向における推定範囲Reの大きさを大きく設定する。なお、
図3に示す例では、撮像方向は、車両Aの進行方向と実質一致しているとする。例えば、抽出部120は、外界カメラ12の撮像方向における位置精度とカメラ検出距離との関係に関連する係数に基づいて、カメラ検出距離に応じた撮像方向の大きさを調整すればよい。カメラ検出距離と推定範囲Reの撮像方向の大きさとの対応関係は、線形であってもよいし、非線形であってもよい。
【0033】
また、抽出部120は、撮像画像から認識される、ランドマークLにおける特定面の面積が大きいほど、推定範囲Reの撮像方向の大きさを小さくする。ここで特定面とは、画像認識によって撮像画像から認識されたランドマークLの面である。例えば、ランドマークLが看板標識である場合、当該標識における外界カメラ12側に面する面が、特定面とされる。また、ランドマークLが路面表示である場合、当該路面表示の路面上の面が、特定面とされる。面積の大きさと推定範囲Reの撮像方向における大きさとの対応関係は、線形であってもよいし、非線形であってもよい。
【0034】
なお、抽出部120は、推定範囲Reの撮像方向における大きさを、撮像方向に直交する方向(直交方向)の大きさよりも大きく設定する。例えば、カメラ検出位置が代表位置である場合、抽出部120は、撮像方向を長径、その直交方向を短径とする、カメラ位置を中心とした楕円形状に推定範囲Reを規定する。
【0035】
抽出部120は、LiDAR11から環境点群データを取得し、以上により設定された推定範囲Re内の環境点群を、範囲内点群として抽出する。これにより、推定範囲Re外の環境点群は棄却される。
図3に示す例では、ドットのハッチングを付した円が、範囲内点群を示している。
図3における範囲内点群は、あくまで簡易的に例示したものであり、実際にはより多くの範囲内点群が抽出されてもよい。なお、取得される環境点群データには、LiDAR11又は抽出部120等により、セマンティックセグメンテーション等の処理に基づく種別情報が付与されている。又は、抽出部120にて範囲内点群のみに種別情報が付与されていてもよい。抽出部120は、抽出した範囲内点群のデータを特定部130に提供する。
【0036】
特定部130は、抽出された範囲内点群の中から、ランドマークLに対応する点群を、ランドマーク点群として特定する。一例として、特定部130は、範囲内点群の位置情報、及び範囲内点群の反射強度情報に基づいて、ランドマーク点群を特定する。範囲内点群の位置情報に基づく特定について詳記すると、特定部130は、範囲内点群においてランドマーク点群の候補となる各候補点群の重心位置と、撮像画像から検出されたランドマークLの重心位置との一致度を算出する。特定部130は、一致度の最も高い候補点群を、ランドマーク点群として仮決定する。なお、ここで候補点群とは、範囲内点群において種別情報に基づきグループ化された点群の各グループを意味する。
【0037】
範囲内点群の反射強度情報に基づく特定について詳記すると、特定部130は、ランドマークLの検出情報に基づき推定される反射強度と、実際の各候補点群の反射強度とを比較する。具体的には、特定部130は、撮像画像から検出されたランドマークLの種別から、ランドマーク点群に推定される反射強度の範囲を規定する。以下において、当該範囲を反射強度範囲と表記する場合がある。ランドマークLの種別と反射強度範囲との対応関係は、例えば、メモリ101等に予め格納されている。なお、特定部130は、ランドマークLの種別に加え、ランドマークLまでの距離に応じた反射強度範囲を規定してもよい。
【0038】
特定部130は、規定した反射強度範囲と、範囲内点群における候補点群の反射強度とを比較し、ランドマーク点群を確定する。例えば、特定部130は、候補点群における各点の反射強度の平均値を算出し、当該平均値が反射強度範囲内となる場合に、当該候補点群をランドマーク点群として確定すればよい。
【0039】
なお、特定部130は、反射強度に基づいてランドマーク点群となる候補点群を仮決定し、位置情報に基づいて当該候補点群をランドマーク点群として確定するか否かを判断してもよい。また、特定部130は、範囲内点群から移動物体の点群を除去した後に、ランドマーク点群の特定を実行してもよい。
【0040】
位置決定部140は、特定されたランドマーク点群を点群地
図DBに格納された点群地図データとマッチングさせる。位置決定部140は、ICPアルゴリズム又はNDTアルゴリズム等、規定のアルゴリズムに従って、マッチングを実施する。これにより、位置決定部140は、点群地図データから、ランドマーク点群と対応する対応点群を特定する。位置決定部140は、ランドマーク点群に対する車両Aの相対位置と、対応点群の座標位置情報とに基づき、点群地図データ上での車両Aの絶対位置を、推定される車両Aの位置(推定自己位置)として決定する。位置決定部140は、決定した推定自己位置を、自動運転ECU40に提供する。
【0041】
次に、機能ブロックの共同により、位置推定装置100が実行する位置推定方法のフローを、
図4に従って以下に説明する。なお、後述するフローにおいて「S」とは、プログラムに含まれた複数命令によって実行される、フローの複数ステップを意味する。
【0042】
まずS10では、ランドマーク検出部110が、外界カメラ12による撮像画像を取得する。次に、S20では、ランドマーク検出部110が、撮像画像に画像認識処理を行い、当該撮像画像にランドマークLが存在するか否かを判定する。存在しないと判定されると、本フローが、S10へと戻り、別の撮像画像を対象として再度判定が行われる。
【0043】
一方で、S20にて撮像画像にランドマークLが存在すると判定すると、本フローがS30へと移行する。S30では、抽出部120が、撮像画像からのランドマークLの検出情報に基づいて、ランドマークLが存在すると推定される推定範囲Reを設定する。具体的には、S30では、抽出部120が、ランドマーク地図情報に基づいて推定範囲Reの位置を確定し、カメラ検出距離及びランドマークLの特定面の面積に基づいて、推定範囲Reの撮像方向の大きさを規定する。このとき、推定範囲Reの撮像方向に直交する方向の大きさは、撮像方向における大きさよりも小さく規定される。続くS40では、抽出部120が、設定した推定範囲Reに基づき、環境点群から範囲内点群を抽出する。
【0044】
さらに、S50では、特定部130が、ランドマークLの高さ情報を含む位置情報、及び範囲内点群の反射強度に基づいて、範囲内点群からランドマーク点群の特定を実行する。範囲内点群からランドマーク点群の特定ができなかった場合には、本フローがS10へと戻る。一方で、S50にて、範囲内点群からランドマーク点群が特定された場合には、本フローがS60へと移行する。そして、S60では、位置決定部140が、点群地
図DB145に格納された点群地図データと、ランドマーク点群とをマッチングさせ、車両Aの推定自己位置を決定する。
【0045】
なお、上述のS10,S20が「検出プロセス」、S30,S40が「抽出プロセス」、S50が「特定プロセス」、S60が「位置決定プロセス」の一例である。
【0046】
以上の第1実施形態によれば、外界カメラ12による撮像画像から検出されたランドマークLが存在すると推定される推定範囲Re内の範囲内点群が、LiDAR11による環境点群から抽出される。そして、当該範囲内点群からランドマーク点群が特定され、当該ランドマーク点群と点群地図とのマッチングにより、推定される車両Aの位置が決定される。故に、LiDAR11により検出された環境点群が、撮像画像に基づき範囲内点群までに限定され、さらに範囲内点群からランドマーク点群までに限定されたうえで、点群地図とのマッチングに使用される。したがって、ランドマーク点群が確保されることでマッチングによる位置の推定が確実に可能になりながらも、マッチングに使用される環境点群の数自体は抑制され得る。以上により、処理負荷を低減した位置の推定が可能となりうる。
【0047】
また、第1実施形態によれば、推定される車両AからランドマークLまでの距離が大きいほど、外界カメラ12の撮像方向における推定範囲Reの大きさが大きく規定される。故に、撮像画像に基づく撮像方向位置の検出精度がより低くなる遠方のランドマークLについて、撮像方向における大きさのより大きい推定範囲Reが規定され得る。したがって、推定範囲Re内に実際のランドマークLが含まれる可能性が高くなり、ランドマーク点群がより確実に抽出され得る。
【0048】
加えて、第1実施形態によれば、撮像画像に基づき認識されたランドマークLにおける特定面の面積が大きいほど、撮像方向における推定範囲Reの大きさが小さく設定される。故に、撮像画像に基づく撮像方向位置の検出精度がより高くなり得る、特定面の大きなランドマークLについて、撮像方向における大きさのより小さい推定範囲Reが規定され得る。したがって、推定範囲Re内に含まれる点群が少なくなり、処理負荷がより低減され得る。
【0049】
さらに、第1実施形態によれば、推定範囲Reの撮像方向における大きさが、撮像方向の直交方向における大きさよりも大きく設定される。故に、撮像画像に基づく位置の検出精度がより低くなる撮像方向における大きさのより大きい推定範囲Reが規定され得る。したがって、推定範囲Re内に実際のランドマークLが含まれる可能性が高くなり、ランドマーク点群がより確実に抽出され得る。
【0050】
また、第1実施形態によれば、ランドマークLの位置情報を含むベクトル地図に基づいて、推定範囲Reが確定される。故に、撮像画像に基づくランドマークLの誤検出が発生した場合に、ランドマークLの位置情報に基づいてこれが補正され得る。
【0051】
加えて、第1実施形態によれば、撮像画像に基づき推定されたランドマークLの高さ情報に基づいて、ランドマーク点群が特定される。したがって、ランドマーク点群がより正確に特定され得る。
【0052】
また、第1実施形態によれば、ランドマークLに推定される反射強度範囲と、範囲内点群の反射強度とに基づいて、ランドマーク点群が特定される。故に、反射強度が推定される反射強度範囲から外れた点群に関して、ランドマーク点群から除外され得る。したがって、ランドマーク点群の誤検出が回避され得る。
【0053】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品及び/又は要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品及び/又は要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品及び/又は要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0054】
上述の実施形態の変形例として、位置推定装置100は、カメラ検出位置の精度に基づいて、位置推定に用いるランドマークLを選定してもよい。例えば、抽出部120が、推定範囲Reの大きさが許容範囲を超えたランドマークLについて、範囲内点群の抽出を中断してもよい。この場合の許容範囲は、検出されたランドマークLの数等に基づいて、適宜変更されてもよい。
【0055】
上述の実施形態において、位置推定装置100にて推定された自己位置は、自動運転ECU40における自動運転モードの実行にて利用されるとしたが、他のアプリケーションの実行に利用されてもよい。例えば、自己位置は、車載表示器における経路案内表示の実行に利用されてもよい。
【0056】
上述の実施形態において、位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、ロケータECUであるとした。これに代えて、位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、自動運転ECU40であってもよい。又は、位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、車両Aの走行アクチュエータを個別制御する、アクチュエータECUであってもよい。位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、車両Aの走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。位置推定装置100を構成する専用コンピュータは、車両Aの情報提示系の情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0057】
位置推定装置100は、デジタル回路及びアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサ102として含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリ101を、備えていてもよい。
【0058】
位置推定装置100は、1つのコンピュータ、又はデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態における位置推定装置100の提供する機能の一部は、他のECUによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 LiDAR(光センサ)、 12 外界カメラ(カメラ)、 100 位置推定装置、 102 プロセッサ、 110 ランドマーク検出部(検出部)、 120 抽出部、 130 特定部、 140 位置決定部、 A 車両、 L ランドマーク、 Re 推定範囲。