(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用操作レバー構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20240416BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
(21)【出願番号】P 2020199616
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 天
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178498(JP,A)
【文献】特開昭58-4635(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0112343(KR,A)
【文献】米国特許第6709041(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/50
B60K 37/00
E05B 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの所定箇所を開口または切り欠いて形成された収納部と、
前記収納部内に設置されてそれぞれ異なる構造物を操作する複数の操作レバーとを備える車両用操作レバー構造において、
前記複数の操作レバーそれぞれは、
前記収納部から露出する意匠面と、
前記意匠面とは反対側の裏面と、
当該操作レバーの一端側に設けられて前記インストルメントパネルに回動可能に直接または間接に接続される回動軸部とを有し、
前記複数の操作レバーのうち一の操作レバーの裏面には、他の操作レバーの裏面の形状とは異なる形状の凹凸部が形成されていることを特徴とする車両用操作レバー構造。
【請求項2】
前記一の操作レバーの裏面における、該一の操作レバーの他端側の縁に沿って、前記収納部の奥側に膨出する膨出部が形成されていて、
前記凹凸部は、前記膨出部に形成されている、または前記膨出部から前記裏面の所定範囲にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用操作レバー構造。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記一の操作レバーの裏面における該一の操作レバーの他端側から一端側に向かって延びる凹形状または凸形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用操作レバー構造。
【請求項4】
前記一の操作レバーの裏面の側縁のうち、前記回動軸部の軸方向から見て前記凹凸部と重なる位置に、前記収納部の奥側に突出する立壁部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用操作レバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操作レバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、燃料口やフロントフード等のロックを解除するレバーなど、当該車両の構造物を操作する複数の操作レバーが設けられている。例えば、特許文献1に記載の車両用フードロック取付構造では、
図1に記載されているように、インストルメントパネル11の運転席側の下部にフードロック部15が設けられている。フードロック部15は、段落0010に記載されているように、フードロックレバーやフューエルリッドオープナーレバーなどの複数のレバー類16を含んでいて、これらレバー類16を回動させることで各構造物を操作することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、上記レバー類16は、運転席のステアリングホイールよりも下方の足元側に設けられているため、視認性が良くない。また、レバー類16の周辺は、スペースが狭いことに加えて他の構造物も存在する。そのため、レバー類16は手で触った感覚だけでは目的のレバーか否かが認識し難かったり、目視せずに操作しようとしたときに誤った方向に力を加えてしまったりするおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、手探りでも簡単に操作可能な車両用操作レバー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用操作レバー構造の代表的な構成は、車両のインストルメントパネルと、インストルメントパネルの所定箇所を開口または切り欠いて形成された収納部と、収納部内に設置されてそれぞれ異なる構造物を操作する複数の操作レバーとを備える車両用操作レバー構造において、複数の操作レバーそれぞれは、収納部から露出する意匠面と、意匠面とは反対側の裏面と、当該操作レバーの一端側に設けられてインストルメントパネルに回動可能に直接または間接に接続される回動軸部とを有し、複数の操作レバーのうち一の操作レバーの裏面には、他の操作レバーの裏面の形状とは異なる形状の凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、手探りでも簡単に操作可能な車両用操作レバー構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用操作レバー構造を示す図である。
【
図2】
図1(b)の操作レバーを各方向から示した図である。
【
図3】
図1(b)の操作レバーを斜め下方から示した図である。
【
図5】
図4の操作レバーの各変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用操作レバー構造は、車両のインストルメントパネルと、インストルメントパネルの所定箇所を開口または切り欠いて形成された収納部と、収納部内に設置されてそれぞれ異なる構造物を操作する複数の操作レバーとを備える車両用操作レバー構造において、複数の操作レバーそれぞれは、収納部から露出する意匠面と、意匠面とは反対側の裏面と、当該操作レバーの一端側に設けられてインストルメントパネルに回動可能に直接または間接に接続される回動軸部とを有し、複数の操作レバーのうち一の操作レバーの裏面には、他の操作レバーの裏面の形状とは異なる形状の凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、操作レバーの裏面に特徴的な凹凸部が形成されていることで、操作レバーを目視せずに操作しようとしたときに、指先の触覚だけで目的の操作レバーか否かを判断することができる。特に、上記操作レバーは回動軸で回動させて操作する構成であり、指先の触覚を頼りにして回動軸に対し引き上げるだけで操作できる。そのため、上記構成であれば、手探りでも認識しやすく簡単に操作可能な操作レバーを実現することが可能となる。
【0011】
上記の一の操作レバーの裏面における、一の操作レバーの他端側の縁に沿って、収納部の奥側に膨出する膨出部が形成されていて、凹凸部は、膨出部に形成されている、または膨出部から裏面の所定範囲にわたって形成されていてもよい。
【0012】
上記複数の操作レバーのうち少なくとも一の操作レバーは、裏面の他端側の縁に沿って形成されて収納部の奥側に膨出する膨出部を有し、凹凸部は、膨出部に形成される、または膨出部から裏面の所定範囲にわたって形成されてもよい。
【0013】
上記膨出部によって操作レバーに指先を引っかけやすくなり、凹凸部もより認識しやすくなる。
【0014】
上記凹凸部は、一の操作レバーの裏面における一の操作レバーの他端側から一端側に向かって延びる凹形状または凸形状を有していてもよい。
【0015】
上記凹凸部によれば、凹形状または凸形状が他端側から一端側すなわち回動軸部側に向かって延びていることで、操作レバーの回動方向を指先の触覚で直感的に認識可能になる。そのため、操作レバーを目視しなくても正しい方向に力を加えることができ、より簡単に操作可能な操作レバーが実現できる。また、上記凹凸部は、指先に対する横滑り防止にも役立つ。
【0016】
上記一の操作レバーの裏面の側縁のうち、回動軸部の軸方向から見て凹凸部と重なる位置に、収納部の奥側に突出する立壁部が形成されていてもよい。
【0017】
上記立壁部もまた、乗員の指先に触れることで操作レバーの操作方向を認識しやすくさせ、誤操作の防止および指先の横滑り防止に役立てることができる。
【実施例】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両用操作レバー構造100を示す図である。
図1(a)は、当該車両用操作レバー構造100を実施したインストルメントパネル102の斜視図である。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0020】
インストルメントパネル102は、車室内の前側に設けられる部材であり、ステアリングホイールや計器類の他、各種のスイッチやレバーなどの操作部が設けられる。当該車両用操作レバー構造100では、インストルメントパネル102の右側下部に収納部104が形成され、この収納部104に複数の操作レバー(操作レバー106、108)が設けられている。
【0021】
図1(b)は、
図1(a)の収納部104の拡大図である。収納部104は、インストルメントパネル102の右側下部を開口させて形成されている。収納部104内には、それぞれ異なる構造物を操作するための2つの操作レバー106、108が設けられている。このうち、右側の操作レバー106はフューエルリッドのロックを解除するためのものであり、左側の操作レバー108はフードラッチを解除するためのものである。
【0022】
収納部104は、インストルメントパネル102を開口させることの他、所定範囲を切り欠くことによっても形成可能である。また、収納部104には、操作レバー106、108の間に仕切り板を設けることも可能である。
【0023】
図2は、
図1(b)の操作レバー106を各方向から示した図である。
図2(a)は、
図1(b)の操作レバー106を車幅方向左側から示した図である。操作レバー106は樹脂製であって、同じく樹脂製のハウジング110に接続され、ハウジング110と共にインストルメントパネル102(
図1(a)参照)に接続される。
【0024】
操作レバー106の一端側106aには、ハウジング110に回動可能に接続される回動軸部112が設けられている。本実施例では、回動軸部112は操作レバー106の上端側に設けられている。操作レバー106は、他端側106bに指をかけて回動軸部112に対し引き上げるように回動させることで、ケーブル114を通じてフューエルリッドのロックを解除することが可能になっている。
【0025】
操作レバー106の裏面118は、収納部104から露出する意匠面116とは反対側であって、車両前側に位置するため、乗員からは視認できない。この裏面118には、ケーブル固定部120が設けられている。ケーブル固定部120は、ケーブル114の内部のワイヤ122が固定される。ケーブル114は、床下等を通って車両後部のフューエルリッドに接続されていて、操作レバー106を引き上げたときの力を、ワイヤ122を介してフューエルリッドにまで届けている。
【0026】
本実施例では、操作レバー106は引き上げるよう回動させて操作する構成となっているが、これに限らず、例えば操作レバーは横に回動させる構成としても実現可能である。
【0027】
図2(b)は、
図1(b)の操作レバー106を斜め下方から示した図である。操作レバー106の裏面118のうち、回動軸部112が設けられた当該操作レバー106の一端側106aとは反対の他端側106bには、乗員が指をかけやすいように、膨出部124が設けられている。膨出部124は、裏面118における当該操作レバー106の他端側106bの縁に沿って形成されていて、収納部104(
図1(b))の奥側に膨出した形状になっている。
【0028】
図3は、
図1(b)の操作レバー106、108を斜め下方から示した図である。本実施例の当該車両用操作レバー構造100では、2つの操作レバー106、108のうち、一方の操作レバー106にのみ凹凸部126を設けている。凹凸部126は、操作レバー106の触覚を目立たせるための部位である。すなわち、凹凸部126を設けることによって、操作レバー106の裏面118(
図4参照)は、操作レバー108の裏面とは異なる形状になる。これによって、フューエルリッド用の操作レバー106とフードロック用の操作レバー108のうち、目視せずとも手触りのみでフューエルリッド用の操作レバー106であることを認識することが可能になっている。
【0029】
図4は、
図3の操作レバー106を単独で示した図である。凹凸部126は、膨出部124に複数の凸形状のリブ128を設けることで形成されている。前述したように、膨出部124は操作レバー106の裏面118における他端側106bに形成されていて、乗員が操作レバー106を引き上げたとき、膨出部124は最後まで乗員の指先に触れる。この膨出部124に凹凸部126を形成することで、乗員に対して凹凸部126をより認識しやすくすることができる。
【0030】
上記構成によれば、操作レバー106の裏面118に操作レバー108とは異なる特徴的な形状の凹凸部126が形成されていることで、操作レバー106を目視せずに操作しようとしたときに、指先の触覚だけで目的の操作レバー106か否かを判断することができる。よって、手探りでも目的の操作レバー106を探し当てて好適に操作することが可能である。
【0031】
また、上記操作レバー106は回動軸部112で回動させて操作する構成であり、指先の触覚を頼りにして回動軸部112に対して引き上げるだけで操作できる。よって、本実施例によれば、指先の触覚だけでも認識可能かつ簡単に操作可能な操作レバー106を実現することが可能となる。
【0032】
操作レバー106には、指に触れる部位として、立壁部130も設けられている。立壁部130は、裏面118の側縁132のうち、回動軸部112の軸方向から見て凹凸部126に重なる位置に形成されている。立壁部130は、収納部104(
図1(b)参照)の奥側に三角形状に突出する壁状の構造になっていて、膨出部124と共に乗員の指先に触れやすくなっている。立壁部130もまた、乗員の指先に触れることで、操作レバー106の回動方向を認識しやすくさせ、誤操作の防止および指先の横滑り防止に役立てることができる。
【0033】
立壁部130は、裏面118の両側の側縁に設けることも可能である。その場合、立壁部130は、膨出部124にかけた指が当該操作レバー106以外の部位に触れるのを防止することができる。また、立壁部130は、膨出部124からケーブル固定部120の側方を通って回動軸部112側に延びるよう形成されている。そのため、立壁部130は、操作レバー106のうち力のかかりやすい膨出部124からケーブル固定部120にわたる範囲の剛性の向上にも役立っている。なお、立壁部130は、操作レバー106だけでなく、他方の操作レバー108にも設けることが可能である。
【0034】
(変形例)
図5は、
図4の操作レバー106の各変形例を示した図である。
図5では、上記実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0035】
図5(a)は、
図4の操作レバー106の第1変形例(操作レバー150)を示した図である。操作レバー150では、凹凸部152を形成している凸形状のリブ154が、裏面118のうち、膨出部124から回動軸部112の存在する当該操作レバー106の一端側106aに向かう所定範囲にわたって延びた構成になっている。
【0036】
凹凸部152によれば、凸形状のリブ154が当該操作レバー106の他端側106bから回動軸部112側に向かって延びていることで、操作レバー150の回動方向を指先の触覚で直感的に認識可能になる。すなわち、操作レバー150を操作する際に力をかけるべき方向が、触っただけで把握できる。
【0037】
特に、乗員に対して操作レバー150が斜め下方にある場合、本来は操作レバー150を直上に引き上げるべきところ、乗員が操作レバー150を自分側に斜め上方に引き寄せてしまい、操作レバー150に対して想定外の方向へ力を加えてしまうおそれがある。上記の回動方向に延びる凹凸部152であれば、操作レバー150に力を加えるべき方向を触覚によって乗員に認識させることができ、これによって誤操作を防ぎ、より簡単に操作可能な操作レバー150を実現することができる。また、上記凹凸部152は、指先に対する横滑り防止にも役立つ。
【0038】
図5(b)は、
図4の操作レバー106の第2変形例(操作レバー160)を示した図である。操作レバー160では、凹凸部162として、膨出部124に複数の凹形状の溝164を設けている。この構成によっても、操作レバー160に乗員の指が触れたときに、目的の操作レバー160であるか否かを触感だけで認識させることができる。なお、当該凹形状の溝164もまた、
図5(a)のリブ154のように、裏面118のうち膨出部124から回動軸部112の存在する当該操作レバー106の一端側106aに向かう所定範囲にわたって延びた構成として設けることも可能である。
【0039】
その他、凹凸部のさらなる変形例として、例えばシボ加工や格子状のリブ、さらには点字など、操作レバーの裏面に高低差のある形状を設けることよって凹凸部を実現することも可能である。
【0040】
また、収納部104(
図1(b)参照)に複数の操作レバーを設ける場合、一の操作レバーの裏面にのみ凹凸部を設けてもよいが、操作レバーごとに凹凸部の種類やパターンを変えるなど、異なる形状の凹凸部を設けることによっても、各操作レバーを触感によって判別可能にすることが可能である。
【0041】
上記説明した操作レバー106等に関する技術的思想は、車両のうちインストルメントパネル102(
図1(a))以外の場所においても実施することが可能である。いずれの場所に上記操作レバーを設けたとしても、目視に頼る事なく触感のみによって判別できる操作レバーを実現することが可能である。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、車両用操作レバー構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100…車両用操作レバー構造、102…インストルメントパネル、104…収納部、106…操作レバー、106a…一端側、106b…他端側、108…操作レバー、110…ハウジング、112…回動軸部、114…ケーブル、116…意匠面、118…裏面、120…ケーブル固定部、122…ワイヤ、124…膨出部、126…凹凸部、128…リブ、130…立壁部、132…側縁、150…操作レバー、152…凹凸部、154…リブ、160…操作レバー、162…凹凸部、164…溝