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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】バックフレーム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240416BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020203395
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090841
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永谷 優樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓弥
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-067722(JP,A)
【文献】特表2010-507518(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047562(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/083617(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0113481(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011114742(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
A47C 7/40
B23K 26/21
F16B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの骨格を構成するバックフレームにおいて、
シート幅方向一端側に配置されて略上下方向に延びる第1サイドフレームと、
シート幅方向他端側に配置されて略上下方向に延びる第2サイドフレームと、
シート幅方向に延びて前記第1サイドフレームの上端側と前記第2サイドフレームの上端側とを連結するアッパフレームとを備え、
前記第1サイドフレームは、
シート幅方向と略直交する側壁板、
前記側壁板のシート前後方向一端からシート幅方向他端側に向けて延出した第1サイドフランジ部、及び
前記側壁板のシート前後方向他端からシート幅方向他端側に向けて延出した第2サイドフランジ部を有し、
記アッパフレームは、
前記第1サイドフランジ部に対してシート前後方向に重なった板部であって、当該第1サイドフランジ部にレーザ溶接された第1アッパフランジ部、及び
前記第2サイドフランジ部に対してシート前後方向に重なった板部であって、当該第2サイドフランジ部にレーザ溶接された第2アッパフランジ部を有し、
前記第1サイドフランジ部のうち前記第2サイドフランジ部と対向する部位、及び前記第1アッパフランジ部のうち前記第2アッパフランジ部と対向する部位それぞれには、貫通穴が設けられ、
2つの前記貫通穴は、互いに少なくとも一部が重なっており、
さらに、前記第1サイドフランジ部と前記第1アッパフランジ部との溶接痕は、2つの前記貫通穴の略全周を囲む図形、又は当該全周の一部を囲むような図形を描いているバックフレーム。
【請求項2】
前記アッパフレームは、前記第1アッパフランジ部及び前記第2アッパフランジ部に加えて、上下方向と略直交する天板部を有しており、
さらに、前記第1アッパフランジ部は、前記天板部のシート前後方向一端から略上下方向に延出し、前記第2アッパフランジ部は、前記天板部のシート前後方向他端から略上下方向に延出している請求項1に記載のバックフレーム。
【請求項3】
前記アッパフレームは、前記第1アッパフランジ部、前記第2アッパフランジ部及び前記天板部に加えて、
前記第1アッパフランジ部の延出方向先端から前記第2サイドフランジ部側に延出するとともに、前記天板部と略平行な第3アッパフランジ部、及び
前記第3アッパフランジ部の延出方向先端から略上下方向に延出して前記第2サイドフランジ部にレーザ溶接された第4アッパフランジ部を有し、
前記第4アッパフランジ部は、前記第3アッパフランジ部に対して前記天板部と反対側に位置している請求項2に記載のバックフレーム。
【請求項4】
前記溶接痕は、2つの前記貫通穴の略全周を囲むような図形を描いている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバックフレーム。
【請求項5】
前記溶接痕は、2つの前記貫通穴のうちいずれか一方の貫通穴の外縁形状と相似な図形を描いている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバックフレーム。
【請求項6】
前記第2サイドフランジ部と前記第2アッパフランジ部との溶接痕は、前記第1サイドフランジ部と前記第1アッパフランジ部との溶接痕が描く図形と相似な図形を描いている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバックフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートバックの骨格を構成するバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のシートフレームは、サイド支持部材とクロス支持部材とをレーザ溶接するために、クロス支持部材の後面に開口が設けられている。当該開口は、後面から表面側に向けて貫通した開口である。そして、レーザ溶接時には、当該開口を通してレーザビームが表面側に向けて照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-520356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、強度部材であるクロス支持部材に貫通した開口が設けられているので、開口が設けられた部位及び当該開口の周囲の機械的強度が低下してしまう。このため、当該部位及び周囲において、必要な強度を確保することが難しい。本開示は、当該点を考慮したバックフレームの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シートバックの骨格を構成するバックフレームは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、シート幅方向一端側に配置されて略上下方向に延びる第1サイドフレーム(3)と、シート幅方向他端側に配置されて略上下方向に延びる第2サイドフレーム(5)と、シート幅方向に延びて第1サイドフレーム(3)の上端側と第2サイドフレーム(5)の上端側とを連結するアッパフレーム(7)とを備え、第1サイドフレーム(3)は、シート幅方向と略直交する側壁板(3A)、側壁板(3A)のシート前後方向一端からシート幅方向他端側に向けて延出した第1サイドフランジ部(3B)、及び側壁板(3A)のシート前後方向他端からシート幅方向他端側に向けて延出した第2サイドフランジ部(3C)を有し、アッパフレーム(7)は、第1サイドフランジ部(3B)に対してシート前後方向に重なった板部であって、当該第1サイドフランジ部(3B)にレーザ溶接された第1アッパフランジ部(7B)、及び第2サイドフランジ部(3C)に対してシート前後方向に重なった板部であって、当該第2サイドフランジ部(3C)にレーザ溶接された第2アッパフランジ部(7C)を有し、第1サイドフランジ部(3B)のうち第2サイドフランジ部(3C)と対向する部位、及び第1アッパフランジ部(7B)のうち第2アッパフランジ部(7C)と対向する部位それぞれには、貫通穴(3E、7G)が設けられ、2つの貫通穴(3E、7G)は、互いに少なくとも一部が重なっており、さらに、第1サイドフランジ部(3B)と第1アッパフランジ部(7B)との溶接痕(WL1)は、2つの貫通穴(3E、7G)の少なくとも一部を囲むような図形を描いていることである。
【0007】
これにより、当該バックフレームでは、第1サイドフランジ部(3B)側から2つの貫通穴(3E、7G)を通して第2サイドフランジ部(3C)又は第2アッパフランジ部(7C)にレーザビームを照射できる。
【0008】
したがって、当該バックフレームでは、第1サイドフランジ部(3B)と第1アッパフランジ部(7B)とをレーザ溶接する場合と同一側からレーザビームを照射して、第2サイドフランジ部(3C)と第2アッパフランジ部(7C)とをレーザ溶接することが可能となるので、溶接工数を削減することが可能となり得る。
【0009】
そして、第1サイドフランジ部(3B)と第1アッパフランジ部(7B)との溶接痕(WL1)は、2つの貫通穴(3E、7G)の少なくとも一部を囲むような図形を描いているので、第1サイドフランジ部(3B)と第1アッパフランジ部(7B)とが強固に接合された構成になり得る。
【0010】
したがって、2つの貫通穴(3E、7G)が設けられた部位及び当該2つの貫通穴(3E、7G)の周囲の機械的強度が大きく低下してしまうことが抑制され得る。延いては、当該バックフレームでは、レーザ溶接の工数の削減を可能としながら、必要な強度を確保することが可能となり得る。
【0011】
なお、当該バックフレームでは、例えば、以下の構成であってよい。
【0012】
すなわち、アッパフレーム(7)は、第1アッパフランジ部(7B)及び第2アッパフランジ部(7C)に加えて、上下方向と略直交する天板部(7A)を有しており、さらに、第1アッパフランジ部(7B)は、天板部(7A)のシート前後方向一端から略上下方向に延出し、第2アッパフランジ部(7C)は、天板部(7A)のシート前後方向他端から略上下方向に延出していることが望ましい。
【0013】
さらに、アッパフレーム(7)は、第1アッパフランジ部(7B)、第2アッパフランジ部(7C)及び天板部(7A)に加えて、第1アッパフランジ部(7B)の延出方向先端から第2サイドフランジ部(3C)側に延出するとともに、天板部(7A)と略平行な第3アッパフランジ部(7D)、及び第3アッパフランジ部(7D)の延出方向先端から略上下方向に延出して第2サイドフランジ部(3C)にレーザ溶接された第4アッパフランジ部(7E)を有し、第4アッパフランジ部(7E)は、第3アッパフランジ部(7D)に対して天板部(7A)と反対側に位置していることが望ましい。
【0014】
これにより、当該バックフレームでは、第1サイドフレーム(3)とアッパフレーム(7)との接合箇所が閉断面構造となるので、当該接合箇所の機械的強度が向上し得る。
【0015】
なお、前記溶接痕(WL1)は、2つの貫通穴(3E、7G)の全周を囲むような図形を描いていることが望ましい。また、当該溶接痕(WL1)が2つの貫通穴(3E、7G)のうちいずれか一方の貫通穴の外縁形状と相似な図形を描いていることが望ましい。
【0016】
そして、第2サイドフランジ部(3C)と第2アッパフランジ部(7C)との溶接痕(WL2)は、第1サイドフランジ部(3B)と第1アッパフランジ部(7B)との溶接痕(WL1)が描く図形と相似な図形を描いていることが望ましい。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
図2】第1実施形態に係るバックフレームの上端側を示す図である。
図3】第1サイドフレームのうちアッパフレームとの連結箇所を示す図である。
図4】アッパフレームを示す図である。
図5】アッパフレームとのうち第1サイドフレームとの連結箇所を示す図である。
図6】第1サイドフレームとアッパフレームとの連結箇所を示す図である。
図7】溶接工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0020】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るバックフレームが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0021】
したがって、当該バックフレームは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0022】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたバックフレームは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0023】
(第1実施形態)
<1.乗物用シート及びバックフレームの概要>
<乗物用シート>
乗物用シートは、シートクッション及びシートバック等を少なくとも備える。シートクッションは着席者の臀部を支持するための部位である。シートバックは着席者の背部を支持するための部位である。
【0024】
<バックフレーム>
バックフレームは、当該シートバックの骨格を構成する部材である。本実施形態に係るバックフレーム1は、図1に示されるように、第1サイドフレーム3、第2サイドフレーム5及びアッパフレーム7等を少なくとも備える。
【0025】
第1サイドフレーム3は、シート幅方向一端側(本実施形態では、右端側)に配置されて略上下方向に延びる強度部材である。第2サイドフレーム5は、シート幅方向他端側(本実施形態では、左端側)に配置されて略上下方向に延びる強度部材である。
【0026】
アッパフレーム7は、図2に示されるように、シート幅方向(以下、「幅方向」と略す。)に延びて第1サイドフレーム3の上端側と第2サイドフレーム5の上端側とを連結する強度部材である。
【0027】
なお、本実施形態に係るバックフレーム1は、図1に示されるように、ロアフレーム9も備える。ロアフレーム9は、幅方向に延びて第1サイドフレーム3の下端側と第2サイドフレーム5の下端側とを連結する強度部材である。
【0028】
本実施形態に係る各フレーム3、5、7、9は、SPCC等の金属板が所定形状にプレス成形されたパネル材に構成されている。そして、本実施形態に係るバックフレーム1は、略左右対称な構造である。
【0029】
<2.バックフレームの詳細>
<2.1 第1サイドフレーム等の構造>
第1サイドフレーム3の上端側、つまり第1サイドフレーム3のうちアッパフレーム7との連結箇所は、図3に示されるように、側壁板3A、第1サイドフランジ部3B及び第2サイドフランジ部3C等を有して構成されている。
【0030】
側壁板3Aは、幅方向と略直交する帯板状の部位であって、第1サイドフレーム3の長手方向に沿って延びる部位である。第1サイドフランジ部3Bは、側壁板3Aのシート前後方向(以下、「前後方向」と略す。)一端から幅方向他端側(本実施形態では、左側)に向けて延出した略板状の部位である。
【0031】
第2サイドフランジ部3Cは、側壁板3Aの前後方向他端から幅方向他端側(本実施形態では、左側)に向けて延出した略板状の部位である。なお、本実施形態における前後方向一端は前端に相当する。本実施形態における前後方向他端は後端に相当する。
【0032】
本実施形態に係る側壁板3A、第1サイドフランジ部3B及び第2サイドフランジ部3Cは、一枚の板材にプレス加工が施されて成形された一体部分である。そして、側壁板3Aの上端には、第1サイドフランジ部3B及び第2サイドフランジ部3Cの上端に連なる上端フランジ部3Dがプレス加工にて一体成形されている。
【0033】
なお、第2サイドフレーム5の上端側、つまり第2サイドフレーム5のうちアッパフレーム7との連結箇所は、第1サイドフレーム3と対称な構成である。このため、本明細書では、詳細な説明が省略されている。
【0034】
<2.2 アッパフレーム>
アッパフレーム7の幅方向一端側、つまりアッパフレーム7のうち第1サイドフレーム3との連結箇所は、図4に示されるように、天板部7A、第1アッパフランジ部7B、第2アッパフランジ部7C、第3アッパフランジ部7D及び第4アッパフランジ部7E等を有して構成されている。
【0035】
天板部7Aは、上下方向と略直交する帯板状の部位である。第1アッパフランジ部7Bは、図5に示されるように、天板部7Aの前後方向一端から略上下方向に延出した略板状の部位である。第2アッパフランジ部7Cは、天板部7Aの前後方向他端から略上下方向に延出した略板状の部位である。
【0036】
なお、本実施形態における前後方向一端は前端に相当する。本実施形態における前後方向他端は後端に相当する。さらに、第1アッパフランジ部7B及び第2アッパフランジ部7Cは、天板部7Aから下向きに延出している。
【0037】
第3アッパフランジ部7Dは、第1アッパフランジ部7Bの延出方向先端(本実施形態では、下端)から第2サイドフランジ部3C側に延出するとともに、天板部7Aと略平行な板状の部位である。
【0038】
第4アッパフランジ部7Eは、第3アッパフランジ部7Dの延出方向先端から略上下方向に延出した板状の部位である。当該第4アッパフランジ部7Eは、第3アッパフランジ部7Dに対して天板部7Aと反対側に位置している。
【0039】
つまり、本実施形態に係る第4アッパフランジ部7Eは、第3アッパフランジ部7Dの延出方向先端から下向きに延出した板状の部位である。このため、アッパフレーム7の幅方向一端側の断面形状は、略S字を描くように湾曲している(図6参照)。
【0040】
なお、第4アッパフランジ部7Eの延出方向先端には、前後方向(本実施形態では、前向き)に延出した第5アッパフランジ部7Fが設けられている。そして、天板部7A、第1アッパフランジ部7B~第5アッパフランジ部7Fは、一枚の板材にプレス加工が施されて成形された一体部分である。
【0041】
アッパフレーム7の幅方向他端側、つまりアッパフレーム7のうち第2サイドフレーム5との連結箇所は、幅方向一端側と対称な構成である。このため、本明細書では、詳細な説明が省略されている。
【0042】
<2.3 第1サイドフレームとアッパフレームとの連結構造>
第1アッパフランジ部7Bは、図6に示されるように、第1サイドフランジ部3Bに対して前後方向に重なった状態で第1サイドフランジ部3Bにレーザ溶接されている。
【0043】
第2アッパフランジ部7Cは、第2サイドフランジ部3Cに対して前後方向に重なった状態で第2サイドフランジ部3Cにレーザ溶接されている。第4アッパフランジ部7Eは、第2アッパフランジ部7C同一側から第2サイドフランジ部3Cに重なった状態で第2サイドフランジ部3Cにレーザ溶接されている。
【0044】
なお、本実施形態では、アッパフレーム7が第1サイドフランジ部3B及び第2サイドフランジ部3Cに挟まれた状態で、当該アッパフレーム7と第1サイドフレーム3とがレーザ溶接にて連結されている。
【0045】
このため、本実施形態では、第1アッパフランジ部7Bは、第1サイドフランジ部3Bに対して後方側に位置し、第2アッパフランジ部7C及び第4アッパフランジ部7Eは、第2サイドフランジ部3Cに対して前方側に位置する。
【0046】
第1サイドフランジ部3Bのうち第2サイドフランジ部3Cと対向する部位であって、第1アッパフランジ部7Bと重なる部位には、図3に示されるように、貫通穴3E(以下、第1貫通穴3Eという。)が設けられている。
【0047】
第1アッパフランジ部7Bのうち第2アッパフランジ部7Cと対向する部位する部位であって、第1サイドフランジ部3Bと重なる部位には、図5に示されるように、貫通穴7G(以下、第2貫通穴7Gという。)が設けられている。
【0048】
第1貫通穴3Eと第2貫通穴7Gとは、図6に示されるように、互いに少なくとも一部が重なっている。なお、本実施形態に係る第1貫通穴3Eと第2貫通穴7Gとは互いに合同な形状である。
【0049】
このため、第1サイドフランジ部3Bと第1アッパフランジ部7Bとが溶接された状態では、第1貫通穴3Eの外縁と第2貫通穴7Gの外縁とが一致するように、第1貫通穴3Eと第2貫通穴7Gとが重なっている。
【0050】
そして、第1サイドフランジ部3Bと第1アッパフランジ部7Bとの溶接痕WL1(以下、第1溶接痕WL1という。)は、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの少なくとも一部を囲むような図形を描いている。
【0051】
具体的には、第1溶接痕WL1は、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの略全周を囲むような図形であって、2つの貫通穴3E、7Gのうちいずれか一方の貫通穴の外縁形状と相似な図形を描いている。
【0052】
因みに、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの外縁形状は、第1サイドフランジ部3Bの上端側外縁形状と略相似な形状である。具体的には、本実施形態に係る第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの外縁形状は、略台形状である。
【0053】
第2サイドフランジ部3Cと第2アッパフランジ部7Cとの溶接痕WL2(以下、第2溶接痕WL2という。)は、第1溶接痕WL1が描く図形と相似な図形を描いている。
【0054】
具体的には、第2溶接痕WL2の描く形状は、第1溶接痕WL1が描く図形又は2つの貫通穴3E、7Gのうちいずれか一方の貫通穴の外縁形状図形と相似な図形であって、それら図形より小さい図形である。
【0055】
なお、本実施形態では、第2サイドフレーム5とアッパフレーム7との連結構造は、第1サイドフレーム3とアッパフレーム7との連結構造と同じである。このため、本明細書では、第2サイドフレーム5とアッパフレーム7との連結構造の説明は省略されている。
【0056】
<3.本実施形態に係るバックフレームの特徴>
本実施形態に係るバックフレーム1の溶接工程においては、図7に示されるように、第1サイドフランジ部3B側から第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gを通して第2サイドフランジ部3C又は第2アッパフランジ部7CにレーザビームLBを照射できる。
【0057】
したがって、当該バックフレーム1では、第1サイドフランジ部3Bと第1アッパフランジ部7Bとをレーザ溶接する場合と同一側からレーザビームLBを照射して、第2サイドフランジ部3Cと第2アッパフランジ部7Cとをレーザ溶接することが可能となるので、溶接工数を削減することが可能となり得る。
【0058】
そして、第1サイドフランジ部3Bと第1アッパフランジ部7Bとの第1溶接痕第WL1は、2つの貫通穴3E、7Gの少なくとも一部を囲むような図形を描いているので、第1サイドフランジ部3Bと第1アッパフランジ部7Bとが強固に接合された構成になり得る。
【0059】
したがって、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gが設けられた部位及び当該2つの貫通穴3E、7Gの周囲の機械的強度が大きく低下してしまうことが抑制され得る。延いては、当該バックフレーム1では、レーザ溶接の工数の削減を可能としながら、必要な強度を確保することが可能となり得る。
【0060】
当該バックフレーム1に係るアッパフレーム7では、上下方向と略直交する天板部7Aを有し、かつ、第1アッパフランジ部7Bは、天板部7Aの前後方向一端から略上下方向に延出し、第2アッパフランジ部7Cは、天板部7Aの前後方向他端から略上下方向に延出している。これにより、アッパフレーム7の断面係数が大きくなるので、アッパフレーム7の剛性が大きくなる。
【0061】
当該バックフレーム1に係るアッパフレーム7では、第3アッパフランジ部7D及び第4アッパフランジ部7Eを有し、かつ、第4アッパフランジ部7Eは、第3アッパフランジ部7Dに対して天板部7Aと反対側に位置した状態で第2サイドフランジ部3Cにレーザ溶接されている。
【0062】
これにより、第1サイドフレーム3とアッパフレーム7との連結箇所は、閉断面形状となる。したがって、当該連結箇所の剛性が大きくなる。なお、閉断面形状とは、当該連結箇所を構成する部材により描かれる図形が閉じた曲線を描くような断面形状をいう。
【0063】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る第1溶接痕WL1は、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの全周を囲むような図形であって、2つの貫通穴3E、7Gのうちいずれか一方の貫通穴の外縁形状と相似な図形を描いていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0064】
すなわち、当該開示は、例えば、第1溶接痕WL1が第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの一部のみを囲む形状、又は第1溶接痕WL1が第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gと非相似な形状であってよい。
【0065】
上述の実施形態では、第1貫通穴3Eと第2貫通穴7Gとが合同な形状であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1貫通穴3Eと第2貫通穴7Gとが非合同な形状であってもよい。
【0066】
上述の実施形態に係る第2溶接痕WL2は、第1溶接痕WL1と相似な図形を描いていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2溶接痕WL2が描く図形と第1溶接痕WL1が描く図形とが異なる図形であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gは、前後方向前端側に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、前後方向一端側を後端側とし、前後方向他端側を前端側として、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gが前後方向後端側に設けられた構成であってよい。
【0068】
上述の実施形態に係るバックフレーム1は、左右対称な構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2サイドフレーム5とアッパフレーム7との連結構造が第1サイドフレーム3とアッパフレーム7との連結構造と異なる構造であってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの外縁形状は、第1サイドフランジ部3Bの上端側外縁形状と略相似な形状であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1貫通穴3E及び第2貫通穴7Gの外縁形状が円形であってもよい。
【0070】
上述の実施形態では、第1サイドフレーム3とアッパフレーム7との連結箇所は、閉断面形状となる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1サイドフレーム3とアッパフレーム7との連結箇所は、開断面形状となる構成であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0072】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1… バックフレーム 3… 第1サイドフレーム 3A… 側壁板
3B… 第1サイドフランジ部 3C… 第2サイドフランジ部
3E… 貫通穴 5… 第2サイドフレーム 7… アッパフレーム
7A… 天板部 7B… 第1アッパフランジ部 7C… 第2アッパフランジ部
7G… 貫通穴 WL1… 第1溶接痕 WL2… 第2溶接痕
LB… レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7