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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240416BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240416BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/50
G08G1/16 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020213918
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099867
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小林 和彦
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-013452(JP,A)
【文献】特開2019-050462(JP,A)
【文献】特開2008-160561(JP,A)
【文献】特開2019-074728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/50
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(50)のウインドシールド(51)の内側から前記車両の周囲を撮像する撮像部(20)を有し、前記撮像部の下方に、前記撮像部の画像における前記ウインドシールドへの車両内部の映り込みを防止するためのフード(11)が設けられているカメラシステムに適用され、
前記撮像部の画角内に前記フードが入るように前記フードが配置され、
前記画像に映り込んだ前記フードの明るさの度合を示す輝度パラメータを取得する取得部(31)と、
前記輝度パラメータに基づいて、前記フード及び前記ウインドシールドでの外光の反射により生じる画像の白浮きの度合を白浮き量として算出する白浮き量算出部(32)と、
前記白浮き量に基づいて前記画像のコントラスト補正を実施する補正部(33)と、
を備える画像処理装置(30)。
【請求項2】
前記取得部は、前記画像における前記フードの画素値を輝度に変換し、その輝度を前記輝度パラメータとして取得し、
前記白浮き量算出部は、前記輝度に基づいて前記白浮き量を算出し、
前記取得部において、前記撮像部の撮像条件に基づいて、前記画素値を輝度に変換する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記車両の運転を支援する運転支援機能の種別に応じて前記撮像条件を設定する設定部を備える請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記白浮き量に応じた補正値として、画像の上下方向で大きさの勾配を有する補正値を算出し、その補正値により前記画像のコントラスト補正を実施する請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像部の撮像の向きが太陽光の順光となる向きであることを判定する順光判定部と、
前記撮像部の撮像の向きが太陽光の順光となる向きである場合に、前記フードにおける前記輝度パラメータの基準値を算出する基準値算出部と、を備え、
前記白浮き量算出部は、前記取得部により取得した都度の前記輝度パラメータと、前記基準値算出部により算出した前記基準値とに基づいて、前記白浮き量を算出する請求項1~4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記フードに照射される外光の状況を判定する外光状況判定部を備え、
前記取得部は、前記輝度パラメータを、所定期間における時間平均値として算出するものであり、前記外光状況判定部による判定結果から前記フードに照射される外光に変化が生じたと判定されたことに基づいて、前記輝度パラメータの時間平均値をリセットする請求項1~5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記撮像部により撮像された画像を、運転支援制御に用いるとともに、ユーザの視認に用いるようにした画像処理装置であって、
前記補正部は、運転支援制御用の画像のコントラスト補正を行う場合と、ユーザ視認用の画像のコントラスト補正を行う場合とで、前記白浮き量に基づき算出される補正値を異なる値とする請求項1~6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に用いられるカメラシステムとして、車両のウインドシールドの内側にカメラを搭載したものが知られている。また、車両のウインドシールドの内面にはダッシュボードが映るため、そのダッシュボードのカメラ画像への映り込みを防止すべくカメラにフードを設けることが考えられる。フード付きカメラに関する先行技術として、例えば特許文献1では、画像からフードの映り込みを判定し、フードの映り込み領域がある場合に、映像からフードの映り込みが発生していない領域のみを切り出すようにしている。これにより、映像を外部に送信する際に、送信するデータ量を低減させることができる。また、映像の見栄えを改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-134210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のとおり車両のウインドシールドの内側にフード付きカメラを設けた構成では、フードにおいて外光の照り返しが生じ、さらにその照り返しがウインドシールドの内側面で反射する。そのため、カメラ画像全体が白くぼやける現象、すなわち白浮きが生じ、それに起因して画像のコントラストが低下する懸念がある。そこで、車載のフード付きカメラにおける白浮きに起因するコントラスト低下を改善する技術が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像のコントラストを適正に回復させることのできる画像処置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車両のウインドシールドの内側から前記車両の周囲を撮像する撮像部を有し、前記撮像部の下方に、前記撮像部の画像における前記ウインドシールドへの車両内部の映り込みを防止するためのフードが設けられているカメラシステムに適用され、
前記撮像部の画角内に前記フードが入るように前記フードが配置され、
前記画像に映り込んだ前記フードの明るさの度合を示す輝度パラメータを取得する取得部と、
前記輝度パラメータに基づいて、前記フード及び前記ウインドシールドでの外光の反射により生じる画像の白浮きの度合を白浮き量として算出する白浮き量算出部と、
前記白浮き量に基づいて前記画像のコントラスト補正を実施する補正部と、
を備える。
【0007】
本発明では、撮像部の画角内に入るようにフードを配置した構成とし、画像に映り込んだフードの明るさの度合を示す輝度パラメータを取得するようにした。また、フードの輝度パラメータに基づいて、フード及びウインドシールドでの外光の反射により生じる画像の白浮きの度合を白浮き量として算出し、その白浮き量に基づいて画像のコントラスト補正を実施するようにした。白浮き量は、フードでの外光の照り返しの強さに依存する。また、画像におけるフードの輝度パラメータは、フードでの照り返しの強さに応じたものとなる。この場合、フードの輝度パラメータにより算出した白浮き量によりコントラスト補正を行うことにより、画像のコントラストを適正に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両におけるカメラシステムの構成を示す図。
図2】カメラの構成を示す図。
図3】カメラシステムを側方から見た図。
図4】カメラシステムを側方から見た図。
図5】撮像部により撮像された画像を示す図。
図6】フード画素値と輝度との関係を示す図。
図7】画像のコントラスト補正の処理手順を示したフローチャート。
図8】別例における画像の上下位置と補正値との関係を示した図。
図9】別例における画像のコントラスト補正の処理手順を示したフローチャート。
図10】別例における車両の走行の様子を示した図。
図11】別例におけるフード画素値の時間平均値の算出の処理手順を示したフローチャート。
図12】別例における画像のコントラスト補正の処理手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照にしつつ説明する。本実施形態のカメラシステムは、車両に搭載されたものであり、車載カメラにより車両前方を撮像するものとなっている。先ずは図1によりカメラシステムの概要を説明する。
【0010】
図1は、車両50におけるカメラシステムの構成を示す図である。車両50のウインドシールド51の内側にはカメラ10が設けられている。カメラ10は、車両50の周囲を撮像する撮像部20を有する。カメラ10は、前方カメラとして設けられ、ウインドシールド51越しに車両50の前方の所定範囲が撮像範囲となるように設置されている。また、ウインドシールド51に車室内のダッシュボード52等が映ると、それが撮像部20の画像に映り込むことが懸念される。そのため、撮像部20の前方下側には、ダッシュボード52等の映り込みを防止するためのフード11が設けられている。なお、フード11は、カメラ10の筐体に一体に設けられていてもよいし、筐体とは別体で設けられていてもよい。
【0011】
図2は、カメラ10の構成を示す図である。カメラ10は、撮像部20と制御部30とを有する。撮像部20は、光学系21と撮像素子22とを有する。
【0012】
光学系21は、図示しないレンズ、絞り部、シャッタ等を有する。レンズは、入射した可視光線を撮像素子22に結像させる。絞り部は、絞り値に応じてレンズを通過した可視光線の光量を調節する。絞り部を通過した可視光線は、撮像素子22に入射する。また、シャッタは、予め定められたシャッタ速度で撮像時に開閉する。これにより、シャッタ速度に応じた露光時間にわたって露光が行われる。
【0013】
撮像素子22は、例えば、CMOSセンサ又は複数のCCDセンサ等を有する。撮像素子22は、入射した可視光線の強さを示す電気信号を出力する。該電気信号は、所定のゲインで増幅され、制御部30に出力される。
【0014】
制御部30は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータである。制御部30は、撮像素子22から出力される電気信号に基づいて、画像データを生成する。また、制御部30は、撮像部20における撮像条件を設定する。撮像条件とは、例えば、シャッタ速度、絞り値、撮像素子22から出力される電気信号を増幅するゲイン等である。撮像部20は、制御部30により設定された撮像条件に従って撮像を行う。制御部30が画像処理装置に相当する。
【0015】
また、車両50は、車両の運転支援制御を実施する運転支援装置40を備えている。運転支援装置40は、制御部30から画像データを入力し、その画像データに基づいて、各種の運転支援制御を実施する。具体的には、運転支援装置40は、車両前方の画像に基づいて、白線等の区画線を認識するとともに、他車両や歩行者、自転車、構造物等の物体を認識する。そして、その認識結果に基づいて、自車両の車線逸脱を抑制するレーンキープ制御や、物体との衝突を回避するプリクラッシュセーフティ制御、先行する他車両に対して追従走行を行う他車両追従制御等の運転支援制御を適宜実施する。
【0016】
ところで、車両50のウインドシールド51の内側において撮像部20の下方にフード11が設けられた構成では、フード11にて外光の照り返しが生じ、さらにその照り返しがウインドシールド51の内側面で反射する。そのため、撮像部20の画像全体が白くぼやける現象、すなわち白浮きが生じる。つまり、図3に示すように、車両50の前方側に太陽等の光源60が位置する場合、光源60からの光がウインドシールド51を通過してフード11の表面で反射する。そして、ウインドシールド51の内側面での反射光が撮像部20に取り込まれることにより、画像の白浮きが発生する。画像の白浮きが生じると、それに起因して画像のコントラストが低下することが懸念される。
【0017】
そこで本実施形態では、制御部30において、画像の白浮き量に基づくコントラスト補正を実施する構成としている。そのための前提構成として、図4に示すように、撮像部20の前方には、その画角α内にフード11の一部が入るようにしてフード11が配置されている。この場合、撮像部20により撮像される画像にはフード11が映り込むこととなる。
【0018】
図5は、撮像部20により撮像された画像を示す図である。この画像には、車両50の前方に存在する道路上の区画線や他車両が映り込んでいるとともに、画像下部にフード11が映り込んでいる。
【0019】
ここで、前述したとおりフード11及びウインドシールド51での外光の反射により画像に白浮きが生じていると、図5で示したフード11を含む画像全体が白くぼやけた状態となる。この場合、画像の白浮きの度合は、フード11での外光の照り返しの強さに依存する。また、フード11での照り返しの強さは、画像におけるフード11の画素値(フード画素値)により把握することが可能となる。
【0020】
制御部30は、画像上のフード画素値に基づいて白浮き量を算出し、その白浮き量に基づいて画像のコントラスト補正を実施する。詳しくは、取得部31は、画像に映り込んだフード11の明るさの度合を示す輝度パラメータを取得する。この場合、画像でのフード画素値を算出するとともに、そのフード画素値を輝度に変換する。本実施形態では、画像におけるフード部分の輝度が輝度パラメータに相当する。
【0021】
より具体的には、図5に示すように、画像におけるフード11の映り込み部分に所定領域M1を設定し、所定領域M1でフード画素値を算出する。このとき、所定領域M1における複数点での画素値の平均値としてフード画素値を算出するとよい。また、所定期間における時間平均値としてフード画素値を算出する構成であってもよい。
【0022】
また、取得部31は、図6の関係を用いて、フード画素値を輝度に変換する。この場合、撮像部20のシャッタ速度やゲインなどの撮像条件が変更されると、フード画素値と輝度との関係が変化することを考慮し、撮像条件に基づいてフード画素値を輝度に変換することが望ましい。つまり、図6では、フード画素値と輝度との関係として複数の関係が示されており、例えばシャッタ速度が速くなるほど、同じフード画素値であっても輝度が大きい値に変換される。撮像条件は、車両50の運転支援機能に対応づけられた撮像条件に設定される。例えば、レーンキープ制御及びプリクラッシュセーフティ制御が通常時に行われていることを前提にすると、他車両追従制御が実施される場合に、他車両追従制御が実施されない場合に比べてシャッタ速度を速くするとよい。また、道路標識が認識される場合には、車両が道路標識とすれ違う直前まで画像のブレを抑えるためシャッタ速度を速くし、電光掲示板が認識される場合には、パルス発光している電光掲示板の発光周期よりもシャッタ速度を遅くするとよい。
【0023】
白浮き量算出部32は、取得部31で算出された輝度に基づいて、画像の白浮き量を算出する。例えば、輝度に所定の係数を乗算することにより白浮き量を算出するとよい。ウインドシールド51の傾斜の角度によりウインドシールド内側面での反射の具合が変わることから、所定の係数は、ウインドシールド51の傾斜の角度に応じて定められているとよい。
【0024】
補正部33は、白浮き量に基づいて画像のコントラスト補正を実施する。このとき、白浮き量をコントラスト補正の補正値として用い、画像全体の各画素において補正値を一律に減算することにより、画像のコントラストの補正を行う。
【0025】
図7は、画像のコントラスト補正の処理手順を示したフローチャートである。この処理は制御部30により所定周期で繰り返し実行される。
【0026】
ステップS11では、撮像部20により撮像された画像からフード画素値を取得する。ステップS12では、シャッタ速度やゲインなどの撮像部20の撮像条件を取得し、続くステップS13では、ステップS12において取得した撮像条件に基づいて、フード画素値を輝度に変換する。
【0027】
ステップS14では、ステップS13で算出した輝度に所定の係数を乗算することにより白浮き量を算出する。ステップS15では、白浮き量を補正量として用いてコントラスト補正を行う。
【0028】
ステップS16では、シャッタ速度やゲインなどに起因する画像のノイズを軽減するためのノイズリダクションや、画像の明暗の境界線を強調し、鮮明度を高めるためのエッジ強調などの各種画像処理を行う。その後、ステップS17では、コントラスト補正後の画像データを運転支援装置40に対して出力する。
【0029】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0030】
撮像部20の画角α内に入るようにフード11を配置した構成とし、画像に映り込んだフード11の明るさの度合を示す輝度パラメータを取得するようにした。また、フード11の輝度パラメータに基づいて、フード11及びウインドシールド51での外光の反射により生じる画像の白浮きの度合を白浮き量として算出し、その白浮き量に基づいて画像のコントラスト補正を実施するようにした。白浮き量は、フード11での外光の照り返しの強さに依存する。また、画像におけるフード11の輝度パラメータは、フード11での照り返しの強さに応じたものとなる。この場合、フード11の輝度パラメータにより算出した白浮き量によりコントラスト補正を行うことにより、画像のコントラストを適正に回復させることができる。
【0031】
画像に白浮きが生じる場合には、フード11の画素値と輝度との関係はシャッタ速度やゲイン等の撮像条件に応じて変わる。この点、撮像条件を考慮して画素値を輝度に変換するようにしたため、適正に白浮き量の算出を行うことができる。
【0032】
運転支援機能に応じて撮像条件を変更することで、運転支援機能ごとに適した撮像条件で撮像を行うことができる。
【0033】
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
【0034】
・上記実施形態では、制御部30は、画像全体の各画素において、補正値を一律に減算することによりコントラスト補正を行うようにしたが、これを変更してもよい。制御部30は、白浮き量に応じた補正値として、画像の上下方向で大きさの勾配を有する補正値を算出し、その補正値により画像のコントラスト補正を実施する。具体的には、画像においては、上側ほど白浮きの度合が小さく、下側ほど白浮きの度合が大きくなると考えられる。そのため、図8に示すように、画像位置が下方であるほど大きい補正値を算出し、上方であるほど小さい補正値を算出する。そして、画像の全画素から上下位置で異なる補正値を減算することによりコントラスト補正を実施する。
【0035】
ウインドシールド51が鉛直方向に対して傾斜していることを考慮すると、撮像部20の正面において、上方ではウインドシールド51が撮像部20に近くなり、下方ではウインドシールド51が撮像部20から遠ざかることになる。この場合、画像の上側と下側とで入射する光の強さが相違することが考えられる。すなわち、一般的に、物体の法線との角度が大きくなる光線ほど反射が大きくなり、角度が小さくなる光線ほど反射が小さくなる。そのため、画像の上側ほどウインドシールド51の法線と光線との角度が小さく、画像の下側ほどウインドシールド51の法線と光線との角度が大きくなり、画像の上側と下側とで入射する光の強さが相違する。これにより、画像上の上下方向で白浮き量の差が発生することが考えられる。この点、画像の上下方向で大きさの勾配を有する補正値を算出し、その補正値により画像のコントラスト補正を実施する構成とした。そのため、画像上の上下方向の白浮き量の差に応じた補正値を算出でき、適正なコントラスト補正を実施することができる。
【0036】
・フード11での照り返しにより生じる画像の白浮きは、例えば太陽光が逆光となる状況でのフード11及びウインドシールド51での太陽光の反射によるものであり、太陽光が順光となる状況ではフード11及びウインドシールド51での太陽光の反射による白浮きは生じない。この点を加味して、撮像部20の撮像の向きが太陽光の順光となる向きである場合に、フード11における輝度パラメータの基準値を算出するとともに、車両走行中における都度の輝度パラメータと、輝度パラメータの基準値とに基づいて白浮き量を算出する構成としてもよい。
【0037】
順光とは、撮像部20の撮像の向きの反対側に太陽が位置する状態、言い換えれば、撮像部20の背後から太陽光が照射されている状態を示す。また、逆光とは、撮像部20の撮像の向きに太陽が位置する状態、言い換えれば、撮像部20の前方側から太陽光が照射されている状態を示す。
【0038】
具体的な処理を図9のフローチャートで示した。本処理は上述した図7の処理に置き換えて実施される。なお、図9では、図7と同じ処理については同じステップ番号を付すとともに、その説明を省略する。図9では、ステップS21,S22の処理を追加している。
【0039】
図9では、ステップS11~S13でフード画素値の取得や輝度変換を行った後、ステップS21では、順光状態であるか否かを判定する。具体的には、現時点の太陽の位置や、車両50の進行方向、天候などの情報に基づいて、順光状態であるか否かを判定する。例えば、時刻が正午付近の時間帯であり太陽が南方に位置すると認識された場合において、ナビゲーション装置の情報から車両50が北に向かって進行していると認識されれば、順光状態であると判定される。
【0040】
順光状態にあると判定された場合にはステップS22に進み、現時点の輝度を、輝度パラメータの基準値として算出する。その後、ステップS14に進む。順光状態でないと判定された場合はステップS22を読み飛ばしてステップS14に進む。
【0041】
ステップS14では、ステップS13で算出した輝度(すなわち、車両走行中における都度の輝度)と、ステップS22で算出した基準値とに基づいて白浮き量を算出する。このとき、基準値が、予め定めた適合値と異なっていれば、その差に応じて、ステップS13で算出した輝度に基づき算出した白浮き量を補正する。例えば、経年変化等によりフード表面が白みを帯びている場合には、白浮き量が大きすぎる値となり、過剰なコントラスト補正が行われる可能性があるため、白浮き量を減量補正する。その後、ステップS15では、白浮き量に基づいて画像のコントラスト補正を行う。
【0042】
図10は、車両50の走行の様子を示した図である。図10では、上下方向が南北方向を示しており、上側が北、下側が南である。ここでは、車両50は、区間Aでは南向きに走行し、区間Bでは東向きに走行し、区間Cでは北向きに走行することとしている。この場合、例えば、晴天時であり、かつ正午付近の時間帯では、区間A~Cのうち区間Cの走行時に順光状態であると判定される。そして、この区間Cでの走行時に算出される輝度が輝度パラメータの基準値として設定される。なお、順光状態となる都度、輝度パラメータの基準値が算出され、基準値が更新される。
【0043】
本例の構成によれば、適正なコントラスト補正を実施することができる。例えば、フード表面が経年変化等により白くなっていても、過剰なコントラスト補正が行われることを抑制することができる。
【0044】
・フード11に照射される外光の状況を判定し、フード11に照射される外光に変化が生じたと判定されたことに基づいて、輝度パラメータの時間平均値をリセットしてもよい。その具体的な処理手順を図11のフローチャートに示した。本処理は、上述した図7のステップS11でサブルーチンとして実施される。
【0045】
ステップS31では、現時点でのフード画素値を取得し、続くステップS32では、フード11に照射される外光に変化が生じたか否かを判定する。例えば、ナビゲーション装置からの情報により車両の走行中にトンネルの出入りが生じたことに基づいて、外光に変化が生じたか否かを判定するとよい。また、時刻から太陽の位置を認識した上で、ナビゲーション装置からの情報から車両の進行方向に変化があったことに基づいて、外光に変化が生じたか否かを判定してもよい。
【0046】
外光に変化が生じていないと判定された場合は、ステップS33に進み、所定期間における時間平均値としてフード画素値を算出する。また、外光に変化が生じたと判定された場合は、ステップS34に進み、フード画素値の時間平均値をリセットする。
【0047】
フード画素値の時間平均値に基づいて白浮き量を算出することにより、フード画素値がノイズ等により一時的に変化しても、白浮き量の算出が不安定になることを抑制することができる。また、車両50がトンネルに出入りしたり、太陽光に対する車両50の向きが変わったりする場合にフード画素値の時間平均値をリセットするようにしたため、フード画素値の時間平均値を適正に算出でき、ひいては、画像コントラストの誤補正を抑制することができる。
【0048】
・撮像部20により撮像された画像は、運転支援制御に用いられることに加え、ユーザの視認に用いられてもよい。ユーザ視認用の画像は、例えば車両50の運転記録としてメモリに記憶することが考えられる。かかる構成では、制御部30が、運転支援制御用の画像のコントラスト補正を行う場合と、ユーザ視認用の画像のコントラスト補正を行う場合とで、白浮き量に基づき算出される補正値を異なる値にするとよい。
【0049】
その具体的な処理手順を図12のフローチャートに示した。本処理は上述した図7の処理に置き換えて実施される。なお、図12では、図7と同じ処理については同じステップ番号を付すとともに、その説明を省略する。図12では、ステップS15を削除し、ステップS41~S44の処理を追加している。
【0050】
図12では、ステップS11~S14でフード画素値の取得や輝度変換、白浮き量の算出を行った後、ステップS41に進む。ステップS41では、白浮き量に基づいて、運転支援制御用の画像のコントラスト補正を行うための第1補正量を算出するとともに、ユーザ視認用の画像のコントラスト補正を行うための第2補正量を算出する。このとき、第1補正量と第2補正量は互いに異なる値である。例えば、運転支援制御用の画像は、白線認識や物体認識等に用いられることから、それら白線や物体等のエッジが強調されるようにすべく、コントラスト補正が強めに行われるとよい。一方で、ユーザ認識用の画像は、ユーザが目視により認識するものとの相違がないことが望ましい。この点を考慮し、第1補正量を相対的に大きい値とし、第2補正量を相対的に小さい値とする。
【0051】
その後、ステップS42では、画像全体の各画素において第1補正量を減算することにより、運転支援制御用の画像を生成する。ステップS44では、画像全体の各画素において第2補正量を減算することにより、ユーザ視認用の画像を生成する。
【0052】
上記構成によれば、画像の用途に合わせて適正に画像のコントラスト補正を行うことができる。運転支援制御のための補正後の画像によれば、白線認識や物体認識等を好適に実施でき、ひいては適正な運転支援制御を実施できる。また、ユーザ視認のための補正後の画像によれば、ユーザ目線で違和感のない画像をユーザに提供できる。
【0053】
なお、ユーザ視認用の画像については、ユーザの設定によりコントラスト設定が可能になっているとよい。この場合、第1補正値及び第2補正値の相対的な大小は任意でよく、第2補正量が第1補正量よりも大きい値になることが生じ得るものとする。
【0054】
・上記実施形態では、輝度パラメータとして、フード画素値の変換により算出した輝度を用いたが、これを変更し、輝度パラメータとしてフード画素値を用いる構成としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、カメラ10において、撮像部20と制御部30とを一体に設ける構成としたが、これを変更し、撮像部20とは別に、画像処理装置としての制御部30を設ける構成としてもよい。
【0056】
・車両50において、撮像部20による撮像が車両前方以外で行われる構成であってもよい。例えば、車両50の後方カメラとしてカメラ10が設けられていてもよい。
【0057】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
11…フード、20…撮像部、30…制御部、31…取得部、32…白浮き量算出部、33…補正部、50…車両、51…ウインドシールド。
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