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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】缶蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/32 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B65D17/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020512293
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2019014849
(87)【国際公開番号】W WO2019194237
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018071631
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】興 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】小南 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼太郎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500780(JP,A)
【文献】特開2012-236624(JP,A)
【文献】特開平09-010874(JP,A)
【文献】特開2010-070225(JP,A)
【文献】特開2015-071436(JP,A)
【文献】特開2015-085962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体に、スコア破断用のタブが固定され、前記タブの指掛かり部の後端近傍に指先が入るエンボス部を備えた缶蓋において、
前記エンボス部の前記指掛かり部の後端側の斜面は、前記缶蓋中心に向かって前記指掛かり部の裏面の幅方向中央部と対向する位置まで延びる指先誘導用の誘導凹部を備え、
前記缶蓋中心と前記指掛かり部の中央を通る中心線を想定すると、前記誘導凹部の前記中心線に対して直交方向の幅が、前記缶蓋中心方向に向かって徐々に狭くなっており、
前記誘導凹部の底部は、前記エンボス部の底面から前記缶蓋中心方向に向かって、前記底面から前記タブにかからない所定高さまでは、前記エンボス部の前記缶蓋中心と反対側の斜面よりも傾斜角度が小さい一定角度となっており、前記タブの裏面と対向する範囲では、さらに傾斜角度が徐々に浅くなる傾斜面となっていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記エンボス部は、底面と、底面を取り囲む内周壁とを有し、前記内周壁は、缶蓋中心と反対側の第1斜面と、缶蓋中心側の第2斜面と第1斜面の両端を接続する側部斜面とを有し、前記一対の側部斜面は前記缶蓋中心側に向かって徐々に近づく方向に傾斜しており、前記誘導凹部の一部を構成する請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記缶蓋本体には、前記タブの指掛かり部の後端近傍でエンボス部を挟んで両側に凸部が設けられている請求項1又は2に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記缶蓋本体には、前記タブの指掛かり部の後端近傍でエンボス部を挟んで両側に凸部が設けられ、
前記凸部のエンボス部側の斜面がエンボス部の側部斜面に連続する傾斜面となっている請求項2に記載の缶蓋。
【請求項5】
前記凸部の高さは、0.5mm以上1.2mm以下の範囲とする請求項3又は4に記載の缶蓋。
【請求項6】
前記凸部の頂点間の距離は、13mm±2mmの範囲とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項7】
前記缶蓋本体は円形のセンターパネルを有し、該センターパネルは外周縁側の第1パネル面と、第1パネル面よりも内側で、第1パネル面の内周縁から段差部を介して一段低くなっている第2パネル面と、を有し、
前記凸部は第1パネル面に設けられている請求項3乃至6のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項8】
前記エンボス部は第2パネル面の領域であって前記第1パネル面との段差部に近接して設けられる構成で、前記エンボス部は、底面と、底面を取り囲む内周壁とを有し、前記内周壁は、缶蓋中心と反対側の第1斜面と、缶蓋中心側の第2斜面と第1斜面の両端を接続する側部斜面とを有し、前記第1斜面と側部斜面は、上端が第1パネル面まで続く傾斜面となっており、第2斜面は、上端が第2パネル面に続く傾斜面となっている請求項7に記載の缶蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブの開口性向上を図った易開封性の缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の易開封性の缶蓋としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。すなわち、缶蓋本体に、スコア破断用のタブが固定されている。タブは、缶蓋中心に設けられたリベット部にて固定され、一端が開口予定部に重ねられ、他端が缶蓋の周縁付近まで延びている。開口予定部を開口する際には、タブの他端に位置する指掛かり部の後端に指を掛け、リベット部を支点として上方に引き起こすことにより、タブ先端部で缶蓋本体の開口予定部を下方に押圧し、リベット部とタブ先端部の間に位置するスコアの始端部に上下方向のせん断力を加えて初期破断し、開口予定部の周囲に沿ってスコアを順次破断して開口部を形成するようになっている。
特許文献1では、缶蓋本体には、タブの指掛かり部の後端近傍に、エンボス部が設けられ、エンボス部の底面と指掛かり部との間の間隔を大きくすることにより、指がタブの指掛かり部の後端に掛りやすくし、開口操作性が高められていた。特に、この特許文献1では、指掛かり部にチップアップ部を設け、さらにエンボス部の底面と指掛かり部との間隔を大きくしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5741198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の缶蓋は、エンボス部及びチップアップ部によって、指掛かり性が良くなっているものの、指掛かり部の後端に掛けられた指のタブ短辺方向の可動域が大きいために、タブを引き起こす際に指が指掛かり部中央からずれ、タブに作用する力の方向が、蓋中心方向に対して、斜めに加わる場合があり、タブ先端部に作用する力が削がれ、開口不良となるおそれがある。
また、エンボス部やチップアップ部を設けると、指掛かり性がよくなるものの、缶蓋のパネル面との隙間が大きくなるために、缶蓋を巻締固定した缶体を積み重ねた際に、上位の缶体が傾いて缶底がタブの指掛かり部に引っ掛かり、開口してしまう不意開口が生じるおそれが高まる。
本発明の目的は、エンボス部の形状を工夫することにより、タブへの指掛かり性を確保しつつ、引き起こし方向を可及的に蓋中心方向に作用させ得る易開封性の缶蓋を提供することにある。
また、引き起こし方向を可及的に蓋中心方向に作用させることができ、かつ、不意開口の発生についても防止し得る易開封性の缶蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、缶蓋本体に、スコア破断用のタブが固定され、
前記タブの指掛かり部の後端近傍に指先が入るエンボス部を備えた缶蓋において、
前記エンボス部の前記指掛かり部の後端側の斜面は、前記缶蓋中心に向かって前記指掛かり部の裏面の幅方向中央部と対向する位置まで延びる指先誘導用の誘導凹部を備え、
前記缶蓋中心と前記指掛かり部の中央を通る中心線を想定すると、前記誘導凹部の前記中心線に対して直交方向の幅が、前記缶蓋中心方向に向かって徐々に狭くなっており、
前記誘導凹部の底部は、前記エンボス部の底面から前記缶蓋中心方向に向かって、前記底面から前記タブにかからない所定高さまでは、前記エンボス部の前記缶蓋中心と反対側の斜面よりも傾斜角度が小さい一定角度となっており、前記タブの裏面と対向する範囲では、さらに傾斜角度が徐々に浅くなる傾斜面となっていることを特徴とする。
本発明によれば、タブの指掛かり部の後端に指が掛かった後に、指先が誘導凹部によって指掛かり部の裏面の幅方向中央部側に誘導されるので、引き起こし方向を蓋体中心に向かって正確に引き起こすことができる。
また、前記誘導凹部の幅を、前記缶蓋中心方向に向かって徐々に狭くなっているので、指
先が自然と指掛かり部裏面の幅方向中央部に誘導される。
また、タブが徐々に持ち上がるにつれて、指先が指掛かり部裏面と対向する誘導凹部に沿って幅方向中央部に案内されながら、タブが引き起こされる。
【0006】
また、本発明は、次のように構成することができる。
1.前記エンボス部は、底面と、底面を取り囲む内周壁とを有し、前記内周壁は、缶蓋中心と反対側の第1斜面と、缶蓋中心側の第2斜面と第1斜面の両端を接続する側部斜面とを有し、前記一対の側部斜面は前記缶蓋中心側に向かって互いに徐々に近づく方向に傾斜しており、前記誘導凹部の一部を構成する。
このようにすれば、側部斜面は誘導凹部の一部として機能し、指先を指掛かり部裏面の幅方向中央部に誘導されやすくなる。
2.前記缶蓋本体には、前記タブの指掛かり部の後端近傍でエンボス部を挟んで両側に凸部が設けられている。
このようにすれば、指掛かり部の後端に対して、幅方向中央部以外からの指掛かりを防止でき、指または治具などによる斜め開口防止を図ることができる。加えて、缶同士の積み重ね等による不意開口防止を図ることができる。
3.特に、前記凸部のエンボス部側の斜面を、エンボス部の側部斜面に連続する傾斜面とする。
このようにすれば、指先が缶蓋中心方向からずれると、高さのある凸部の斜面に指が当たり、さらに誘導凹部に誘導されやすくなる。
4.前記凸部の高さは、0.5mm以上1.2mm以下の範囲とする。
すなわち、凸部を0.5mm程度以上の高さに設定すれば、タブの浮き上がりが生じる陽圧缶に使用した場合でも、不意開口が生じにくくなる。より好ましい範囲としては、0.7mm以上である。一方、凸部の高さは高いほど、不意開口の抑止効果は高くなるが、凸部の板厚の低下量が大きくなり、強度不足や、塗膜の切れ等、成形性に問題が生じる。1.2mm以下であれば、実用上問題の無いレベルに収まる。
5.前記凸部の頂点間の距離は、13mm±2mmの範囲とする。
このようにすれば、指掛け段階から、指が自然と誘導凹部に導かれ、指掛かり部の裏面中央に誘導される。
6.前記缶蓋本体は円形のセンターパネルを有し、該センターパネルは外周縁側の第1パネル面と、第1パネル面よりも内側で、第1パネル面の内周縁から段差部を介して一段低くなっている第2パネル面とを有し、前記凸部は第1パネル面に設けられている。
第1パネル面に設ければ、凸部の板厚の低下量を抑えることができ、第2パネル面より
も成形性の観点で有利となる。
7.前記エンボス部は第2パネル面の領域であって前記第1パネル面との段差部に近接して設けられる構成で、
また、前記エンボス部は、底面と、底面を取り囲む内周壁とを有し、前記内周壁は、缶蓋中心と反対側の第1斜面と、缶蓋中心側の第2斜面と第1斜面の両端を接続する一対の側部斜面とを有し、前記第1斜面と側部斜面は、上端が第1パネル面まで続く傾斜面となっており、第2斜面は、上端が第2パネル面に続く傾斜面となっている。
このようにすれば、エンボス部に入れた指先は、第2斜面側よりも高い第1斜面と側部斜面によって囲まれることになり、高さの低い第2斜面の誘導凹部に誘導されやすい
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タブの指掛かり部の後端に指が掛かった後に、指先が誘導凹部によって指掛かり部の裏面の幅方向中央部側に誘導されるので、引き起こし方向を蓋体中心に向かって正確に引き起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の実施の形態に係る缶蓋を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)の第2中心線Nに沿う要部拡大断面図、(C)は(B)のC-C線部分断面図である。
図2図2(A)は、図1(A)のエンボス部近傍に等高線を付した拡大平面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)のC-C線断面図、(D)は(A)のD-D線断面図である。
図3図3(A)乃至(C)はタブの引き起こし動作の説明図である。
図4図4(A)乃至(C)は、図3をタブの指掛かり部の後端から見た引き起こし動作の説明図、(D)は側部斜面の作用説明図である。
図5図5は評価試験用の缶体を示すもので、(A)は第1種の缶体、図(B)は第2種の缶体を、それぞれ2段に重ねた状態を示す図である。
図6図6は、図5(A)の第1の缶体の積載部分の要部拡大断面図である。
図7図7は、図5(B)の第2の缶体の積載部分の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る易開封性の缶蓋を示している。
すなわち、この易開封性の缶蓋は、飲み口となる開口予定部8を取り囲むスコア6が形成された缶蓋本体1と、缶蓋本体1に固定されるスコア破断用のタブ10と、を備えている。
缶蓋本体1は、円形のセンターパネル2、センターパネル2の周縁から下方に突出するチャックウォールラジアス3、チャックウォールラジアス3の外側壁から立ち上がるチャックウォール4、及びチャックウォール4に連続して形成されたシーミングパネル5を有している。センターパネル2は、パネル周縁側の第1パネル面21と、第1パネル面21よりも内側で、第1パネル面21よりも一段低いリセス部を構成する第2パネル面22とを有し、第2パネル面22は段差部22bによって第1パネル面21と区画されており、開口予定部8とタブ10は、第2パネル面22に配置されている。
【0010】
タブ10はステイオンタイプであり、円形のセンターパネル2のパネル中心O(缶蓋中心)に突設されたリベット部7に固定されている。開口予定部8は、センターパネル2のパネル中心Oを通る第1中心線Mで半分に区切った場合に、一方の半円領域に形成されるもので、スコア6は、リベット部7の近傍に始端部6aがあり、開口予定部8の周縁を取り囲むように終端部6bまで延びている。タブ10による開口は、始端部6aが初期破断され、終端部6bに向けて開口される。
タブ10は、略トラック形状に成形された板状部材で、長軸方向の一端が円弧状のタブ先端部11、他端部が直線上の指掛かり部13となっている。タブ10は、パネル中心Oを通り第1中心線Mに対して直交する第2中心線Nに沿って配置され、タブ先端部11がパネル中心Oを越え、さらにスコア6の始端部6aを越えて開口予定部8側に重なっており、タブ10の指掛かり部13がパネル中心Oに対して開口予定部8とは反対側のセンターパネル2の周縁近くに配置されている。
タブ10の指掛かり部13は、第2中心線Nに対して直交方向に直線状に延びており、両端部がコーナー部13c,13cを介してタブ10の側辺部16、16に至る構成となっている。また、タブ10には、指掛かり部13に隣接して楕円状の孔14が開口形成されており、この例では、指掛かり部13は、後端13aと孔14との間の狭い板状部分である。
タブ10の外周縁には、図1(B)に示すように、タブ10を構成する板材を下面側に折り返したカール部17が全周に亘って形成されており、指掛かり部13の後端13aのカール部17は、第2中心線Nと直交方向の中央部が所定範囲だけ扁平に潰された扁平部20となっている(図1(C)参照)。
センターパネル2の、指掛かり部13の後端13a近傍には、局部的に凹状に窪ませたエンボス部9が設けられ、さらに、エンボス部9の両側近傍に、凸部としてのディンプル30、30が、第2中心線Nに対して左右対称に配置されている。エンボス部9は第2パネル面22の領域であって第1パネル面21との段差部22bに近接して設けられている。以下、エンボス部9とディンプル30について詳細に説明する。
【0011】
(エンボス部9の構成)
図2(A)は、エンボス部9の近傍を拡大して示すもので、起伏状態を明確にするために、等高線を付している。等高線は、たとえば、円環状のチャックウォールラジアス3の接地面を水平面として、所定の高さ間隔で描いている。具体的には、第1パネル面21からエンボス部9の底面91までの距離を1.1mm±0.4mmとしており、1.1mmで、等高線間隔数を17としている。
エンボス部9は、第2パネル面22に所定深さで設けられるもので、平坦な底面91と、底面91を取り囲む内周壁92とを備えている。底面91の形状は、第2中心線Nに対して線対称の台形状で、パネル中心Oと反対側(パネル周縁側)の第1辺91aと、パネル中心O側の第2辺91bと、第1辺91aの両端と第2辺91bの両端を接続する一対の側辺91c、91cとを有し、第1辺91aと側辺91c,91cが円弧状に膨らみ、パネル中心O側の第2辺91bは、第2中心線Nに対して直交する直線状となっている。また、第1辺91aと側辺91cの角はアール形状となっている。
エンボス部9の内周壁92は、上方に向かって拡がる方向に傾斜しており、パネル中心Oと反対側に位置する第1斜面92aと、缶蓋中心側の第2斜面92bと、第1斜面92aの両端と第2斜面92bの両端部を接続する側部斜面92c,92cとを有している。
内周壁92の外周縁の概略形状は、第1斜面92aの外周縁を扇の弧とし、第2斜面92bの先端部を扇の中心とする扇形状を呈している。一対の側部斜面92c,92cはパネル中心O側に向かって、第2中心線Nに対して線対称に、互いに徐々に近づく方向に傾斜している。
第1斜面92aと側部斜面92c,92cは、上縁が第1パネル面21まで続く傾斜面となっており、第2斜面92bは、上縁が第2パネル面22に続く傾斜面となっている。側部斜面92c,92cから第2斜面92bに移行する位置にて、段差部22bが側部斜面92cから分岐してディンプル30を迂回するようになっている。この段差部22bの迂回部22b1は、ディンプル30のタブ10と面する側の斜面領域30bと連続し、ディンプル30の斜面の一部を構成する。
【0012】
一方、側部斜面92cの下三分の二程度の部分は、第2斜面92bに連なっている。
第2斜面92bと段差部22bとの分岐位置は、底面91の直線状の第2辺91bを通る仮想分岐線L付近であり、内周壁92の内、仮想分岐線Lよりもパネル中心O側の領域を、第2斜面92bとする。この第2斜面92bの等高線は、第2パネル面22から見て底面91に向けて凹状の曲線となっており、第2中心線Nに沿った部分を谷底とする谷形状に窪んでいることを示している。
この第2斜面92bは、パネル中心Oに向けて、少なくとも指掛かり部13の裏面と対向する位置まで延びており、この実施形態では、第2斜面92b全体が、本発明の指先誘導用の誘導凹部を構成し、さらに、側部斜面92cについても誘導凹部の一部を構成する。
【0013】
次に、第2斜面92bの起伏状態を等高線に即して説明する。
説明のために、底面91の第2辺91bの両端を通り第2中心線Nと平行な仮想線K,Kを引き、第2斜面92bを、仮想線K,Kで挟まれる領域を中央領域92b1、仮想線K,Kに対して中央領域92b1と反対側に位置し側部斜面92c,92cと接続される領域を移行領域92b2,92b2とする。
第2斜面92bの外縁は、第2パネル面22側から見た2番目の等高線b1であり、2番目の等高線b1より外側に位置する1番目の等高線b0は、第2パネル面22のわずかな傾斜を示すものである。
等高線b1を含めて底面に向けて描かれた等高線をbnとすると、各等高線bnは、中央領域92b1において、第2中心線Nに対して線対称で、パネル中心Oに向かって凸円弧状に湾曲する湾曲部bn1と、移行領域92b2において、湾曲部bn1の両端から側部斜面92c,92cに向けて延びる斜線部bn2,bn2と、を有している。斜線部bn2,bn2は、第2中心線Nに対して線対称に、パネル中心Oに向かって間隔が狭くなる方向に傾斜して延びている。この斜線部bn2,bn2は僅かに外側(第2中心線Nに対して反対方向)に凸に湾曲しており、側部斜面92c,92cの等高線c2,c2と滑らかに連続している。一方、斜線部bn2,bn2と湾曲部bn1との接続部も滑らかに連続しているが、等高線b1においては、外側(第2中心線Nに対して反対方向)に凹円弧の接続部b13を介して滑らかに接続されている。
また、中央領域92b1における各等高線bnの湾曲部bn1の間隔は、底面91から所定高さまでは、ほぼ一定で、第2パネル面22に近づくにつれて間隔が大きくなっている。底面側の湾曲部bn1間の間隔は、第1斜面92a側の等高線の間隔の2倍程度と広くなっている。したがって、第2斜面92bの第2中心線Nに沿う傾斜角度は、底面91から所定高さまでは第1斜面92aの傾斜角度よりも小さい緩やかな一定角度の斜面となっており、さらに第2パネル面までは、傾斜角度が徐々に緩やかになり、第2パネル面22に滑らかにつながる構成となっている。
この指掛かり部13の後端13a側に位置する第2斜面92bの第2中心線Nに沿う傾斜角度は、底面91に対して5°~22°の角度に設定することが好ましい。この傾斜角度は、図1(B)の断面図で示される第2斜面92bの、底面91からタブ10に掛からない位置までの直線部分の角度である。
図2(B)乃至(D)は、第2斜面92bを、第2中心線Nと直交方向に切断した断面図である。
図2(D)は、底面91の第2辺91bの位置で切断した切断面で、中央領域92b1が直線状で、移行領域92b2,92b2が直線的な傾斜辺となっている。この断面における第2斜面92bの第2パネル面22上の開口幅、移行領域92b2,92b2の傾斜辺の上端間の幅(第2中心線Nと直交方向の幅)Wdが、第2斜面92bの最大幅である。
図2(C)は、ディンプル30の頂部30aの位置で切断した切断面であり、中央領域92b1が下方に僅かに湾曲する円弧形状で、第2パネル面22からの深さは浅くなり、移行領域92b2,92b2が直線的な傾斜辺となっている。この断面における第2斜面92bの第2パネル面側の開口幅、移行領域92b2,92b2の傾斜辺の上端間の幅(第2中心線Nと直交方向の幅)WcはWdよりも狭くなっている。
図2(B)は、中央領域92b1の先端近くで切断した切断面である。この位置では、移行領域がなく、第2パネル面22上の開口幅(第2中心線Nと直交方向の幅)WbはWcよりも、さらに狭くなっている。
【0014】
(ディンプル30について)
ディンプル30、30は、第1パネル面21に上方に突出するように設けられている。第1パネル面21に設ければ、ディンプル30を成形する際の板厚の低下量を抑えることができ、第2パネル面22に設けるよりも成形性の観点で有利となる。また、過度な延伸によって、表面に被覆されている塗膜が損傷を受けることもない。
このディンプル30,30はタブ10のコーナー部13c,13cに近接して配置され、基本的には、缶同士の積み重ねの際の不意開口を防止のために設けられるものであるが、この実施形態では、指先の誘導機能を備えている。
すなわち、ディンプル30,30の頂部30a,30a間の、第2中心線Nと直交方向の間隔Aを、13mm±2mmの範囲としている。頂部30a,30aの間隔Aは、頂部30a,30aを最高点間の距離とする(図2(C)参照)。ディンプル30,30の形状は頂部が平らな台形状としてもよく、その場合には、頂面の周縁間の第2中心線Nと直交方向の最小距離とする。
このディンプル30,30の頂部30a,30a間の間隔Aは、AIST(国立研究開発法人産業技術総合研究所)監修、「日本人の手の寸法データ」の中の、第2指爪中央指幅N12、男女平均(M+F):13.3mmを基準に設定したものである。このデータは、爪のはえぎわから指先端までの中間位置における指の幅なので、本実施形態では、指先が中間位置よりも細いことを考慮して若干小さめに設定している。
このディンプル30,30の等高線について詳細に見ると、付け根部の平面形状が、3辺が外側に膨らんだ角丸の三角形状で、中腹が頂点に向かって徐々に円形状に移行し、ディンプル30の頂部30aは、段差部22bの迂回部22b1側に偏移し、タブ10のコーナー部13cに近接した配置となっている。このタブ10のコーナー部13cに面する斜面領域30bは、段差部22bの迂回部22b1に位置し、迂回部22b1がディンプル30の斜面領域30bと連続してディンプル30の斜面の一部を構成し、第2パネル面22側に拡がる迂回部22b1は、タブ10のコーナー部13cの裏面側に重なるように迫り出している。一方、ディンプル30のエンボス部9の側部斜面92cに面する斜面領域30cは、エンボス部9の側部斜面92cと連続する傾斜面となっている。
【0015】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態の缶蓋の作用について説明する。
開口操作は、まず、指先をエンボス部9に入れ、タブ10の指掛かり部13の後端13aに指先を掛ける(図3(A)、図4(A)参照)。
ここで、図4(D)を参照して、指先がエンボス部9の底面から第2斜面92bに誘導されるまでの側部斜面92c,92cの作用について説明する。図中、側部斜面92c,92c及び側部斜面92c,92cに連続するディンプル30,30の斜面領域30c,30cについては、斜め格子状にハッチングを施し、側部斜面92c,92cから連続する第2斜面92bの移行領域92b2,92b2については、斜めのハッチングを施している。また、縦横の格子状にハッチングした部分は、図3(A)の指先部分が底面91に当接している当接部Sの領域を模式的に示している。
引き起こし初期段階では、当接部Sは、底面91から第2斜面92bに向かって移動するが、当接部Sが、たとえば、図中S1に示すように、第2中心線Nから一方の側部斜面92c側にずれていたとしても、側部斜面92cがパネル中心に向かって第2中心線Nに近づく方向に傾斜しているので、側部斜面92cによって、図中、矢印に示すように、第2中心線Nに近づく方向にズレが矯正されながら第2斜面92bに向かって移動し、第2中心線Nに沿った方向、すなわちパネル中心Oに向かう方向に方向付けされ、さらに、第2斜面92bに到達した後も、側部斜面92cに連続する第2斜面92bの移行領域92b2,92b2によって連続的に誘導される。
特に、この実施例では、側部斜面92cに面するディンプル30の斜面領域30cが、エンボス部9の側部斜面92cと連続する傾斜面となっており、指先の当接部Sだけでなく、指先の側面がディンプル30,30の斜面領域30c,30cによって、第2中心線Nに対して離れる方向への移動が規制されるので、より効果的に、指先の移動方向を第2中心線Nに沿った方向に誘導することができる。
次いで、図3(B)に示すように、タブ10を上方に引き起こす。引き起こし初期段階で、図3(B),(C)に示すように、指先部分は、エンボス部9の底面91から、谷形状の第2斜面92bの中央領域92b1の傾斜面を、第2中心線Nに沿って指掛かり部13の裏面の幅方向中央部に誘導される(図4(B),(C)参照)。すなわち、第2斜面92bは中央領域92b1が左右の移行領域92b2,92b2よりも深い位置にあり、タブ10からの指先に作用する引き起こし反力によって、指先は自動的に中央領域92b1の深い位置に誘導される。
また、第2斜面92bを第2中心線Nに対して直交方向に切断した場合の、第2パネル面22における第2斜面92bの開口幅が、エンボス部9の底面91側で広く、パネル中心Oに向かって徐々に狭くなっているので、指が自然と指掛かり部13の裏面の幅方向中央部に誘導される。
さらに、第2斜面92bの谷底となる中央領域92b1は、第2中心線Nに沿って、パネル中心Oに向かって、緩やかな傾斜面となっているので、指先が徐々に持ち上がるにつれて、タブ10が引き起こされる。
特に、この実施形態では、ディンプル30,30の間隔Aを13mm程度としているので、第2斜面92bによって指先が誘導される間、左右のディンプル30,30の間を通るので、指先が左右にぶれることなく、指掛け段階から指先が第2斜面92bの中央領域92b1に誘導される。
このように、指掛かり部13の後端に指を掛けて、タブ10を引き起こす初期段階で、第2斜面92bによって、第2中心線Nに沿って指先の軌道が指掛かり部13の裏面の幅方向中央部に誘導されるので、後の引き起こし操作において、力の方向がパネル中心O方向から斜めに大きく外れることはなく、引き起こしの力を、タブ先端部11を通じてリベット部7近傍のスコア始端部6aに集中して作用させることができ、スコア6を破断させることができる。
【0016】
次に、本実施形態のディンプル30の不意開口防止及び成形性について説明する。
本発明の缶蓋は、陰圧缶と陽圧缶の両方に使用可能であり、陽圧缶に限定されるものではないが、不意開口防止について、条件が厳しい陽圧缶について、缶蓋のディンプル30の高さを変えて、積み重ねた際の上位の缶底の脚部と、下位の缶蓋のタブとの引っ掛かりを検討したところ、0.5mmより小さいと引掛りやすく、0.5mm以上になると引掛りが生じにくく、不意開口を防止することができることがわかった。
ディンプル30の高さhは、図1(B),(C)に示すように、第1パネル21より一段低い第2パネル22からの高さである。
このディンプル30の高さは高いほど、上位の缶底の脚部と引掛りが生じにくくなるが、突出高さが1.2mmを超えると、ディンプル30の肉厚が薄くなって、亀裂が生じるおそれがある。鋭意検討した結果、不意開口防止の観点および成形性の観点から、0.5mm以上1.2mm以下とすることが好適であることがわかった。より好適には0.5mm以上1.2mm以下、さらに0.8mm以上で1.2mm以下とすることが好適である。
【0017】
上記ディンプルの高さを検討するために、不意開口および成形性についての評価試験を行なった。以下に評価試験について説明する。
評価試験は、上記実施形態の缶蓋について、ディンプル30の高さを変えた4種類の缶蓋サンプルを用意し、缶底の脚部形状が異なる2種類の缶本体に密封状態で陽圧となる内容物を充填し、缶蓋を巻締て固定して陽圧缶を製作し、不意開口性及び成形性について評価した。
まず、評価試験に使用した第1種の缶体200と第2種の缶体300について、図5を参照して説明する。図5(A)は第1種の缶体200、図5(B)は第2種の缶体300であり、それぞれ2段に重ねた状態を示している。図において、缶蓋については、符号100を付している。
第1種の缶体200は、図5(A)に示すように2ピース缶で、缶蓋100は、胴部204の開口端に巻締固定され、巻締部205が形成されている。缶底201は、缶の内方に向かって凹状に窪んだドーム部202と、ドーム部202の外周縁から下方に突出する環状の第1形状の脚部203を有し、陽圧缶を上下に積み重ねた際に、上位の缶の缶底201の第1形状の脚部203が、下位の缶の缶蓋100のタブ10の指掛かり部13に近接する位置に載置される。第1形状の脚部203の内周面203aは、その径が缶の内方に向かって小径となる方向に傾斜する傾斜面となっている。また、この第1形状の脚部203の外周面203bは、上方に向かって徐々に拡径する方向に傾斜している。
【0018】
第2種の缶体200も、図5(B)に示すように2ピース缶で、缶蓋100は、胴部304の開口端に巻締固定され、巻締部305が形成されている。缶底301も、図5(B)に示すように、缶の内方に向かって凹状に窪んだドーム部302と、ドーム部302の外周縁から下方に突出する環状の第2形状の脚部303を有し、缶を上下に積み重ねた際に、上位の缶の缶底301の第2形状の脚部303が、下位の缶の缶蓋100のタブの指掛かり部に近接する位置に載置される。この第2形状の脚部303は、ボトムリフォーム形状と呼ばれている。この第2の缶体300は、第2形状の脚部303の内周面303aが、径方向方に向かって大径(拡がる方向)となる方向に傾斜する傾斜面となっており、第1種の缶体200よりも、積み重ねた際に、上位の缶底301の第2形状の脚部303が、下部の缶体の缶蓋100のタブにより引掛りやすい形状となっている。
【0019】
次に、図6を参照して、第1種の缶体200の第1形状の脚部203とタブ10との引っ掛かり状態について説明する。
図6は、図5(A)の第1の缶体200の積載部分の要部拡大断面図であり、正常に積載されている状態の第1形状の脚部203を二点鎖線で、傾いた状態の第1形状の脚部203を実線で示している。断面はタブ10のコーナー部13cの位置で切断した図である。
正常に積載されている状態では、二点鎖線で示すように、第1形状の脚部203の断面円弧状の下端部203cが下位の缶の缶蓋100の第1パネル面に接触し、また、第1形状の脚部203の外周面203bが下位の缶の巻締部205の上端に接触した状態で載置されている。
この状態で、上位の缶が傾くと、実線で示すように、第1形状の脚部203の外周面203bと巻締部205に乗り上げ、断面円弧状の下端部203cがディンプル30に乗り上げ、指掛かり部13のコーナー部13cに接触する。この状態からさらに傾斜させると、脚部203がタブ10を上方に持ち上げる方向に移動し、引掛りが強いと、てこ作用によって不意開口が生じることになる。
【0020】
次に、図7を参照して、第1種の缶体200の第1形状の脚部203とタブ10との引っ掛かり状態について説明する。
図7は、図5(B)の第2の缶体300の積載部分の要部拡大図であり、正常に積載されている状態の第1形状の脚部303を二点鎖線で、傾いた状態の第2形状の脚部303を実線で示している。断面はタブ10のコーナー部13cの位置で切断した図である。
正常に積載されている状態では、二点鎖線で示すように、第2形状の脚部303の断面円弧状の下端部303cが下位の缶の缶蓋100の第1パネル面に接触し、また、第2形状の脚部303の外周面303bが下位の缶蓋の巻締部305の上端に接触した状態で載置されている。
この状態で、上位の缶が傾くと、実線で示すように、第2形状の脚部303の外周面303bと巻締部305に乗り上げ、断面円弧状の下端部303cがディンプル30に乗り上げ、指掛かり部13のコーナー部13cに接触する。この状態からさらに傾斜させると、第2形状の脚部303がタブ10を上方に持ち上げる方向に移動し、引掛りが強いと、てこ作用によって不意開口が生じることになる。第2形状の脚部303の内周面303aが、缶の内方(上方)に向かって拡径する方向に傾いている分だけ、指掛かり部13のコーナー部13cに引っ掛かりやすい。
【0021】
上記した4種類の缶蓋のディンプル30の高さは、0.7mm、0.8mm、1.0mm、1.2mmの4種類とした。
缶蓋100の径は、57.15mm、板厚は0.235mmであり、内圧は第1の缶体200、第2の缶体300共に、常温で、200kPaに設定した。
缶蓋100は内圧によって外向きに膨らみ、タブ10が第2パネル面22から浮き上がり、この浮き上がった第2パネル面22からの隙間が、2.3mm程度である。
【0022】
<缶底の脚部とタブとの引っかかりを確認する試験>
試験は、内容物を充填した評価対象の缶体(陽圧)を、図5に示したように、上下2段に積み重ね、第1の缶体200、第2の缶体300について、缶底の脚部がタブに引っ掛かる方向に手で倒した際に、引っ掛かりの有無を相対的に評価し、評価結果を、◎、〇、△の3段階で評価した。評価段階は、次の通りである。
◎:缶底の脚部とタブとの引っかかりは無く、不意開口発生は無い。
○:缶底の脚部とタブとの引っかかりをごく僅かに感じるが、不意開口発生は無い
△:缶底の脚部とタブとの引っかかりを僅かに感じるが、不意開口発生は無い
<ディンプル30の部分的な板厚低下を確認する方法>
ディンプル30の断面形状により、部分的な板厚低下の有無を確認し、ディンプル30の成形性を相対的に評価した。
◎:ディンプル30の部分的な板厚低下がごく僅かにあるが、実用適性あり
△:ディンプル30の部分的な板厚低下が僅かにあるが、実用適性あり
【0023】
評価結果
不意開口について
表1に示す通り、第1種の缶体の缶底のサンプルでは、すべて“◎”で、引っ掛かりは全くなく、不意開口の発生も無かった。
第2種の缶体の缶底のサンプルでは、0.7mmで“△”、0.8mmで“〇”、1.0mm、1.2mmでは“◎”で、引掛りも不意開口も無かった。
0.7mmで僅かに当たる程度であり、0.5mm程度であれば、不意開口を防止できるものと思量される。
【0024】
成形性について
表1に示すように、成形性については、0.7mm、0.8mm、1.0mmでいずれかも“◎”で、板厚低下はごくわずかであり、実用上問題はなく、実用適性ありの評価であった。また、1.2mmでは、板厚低下が僅かであり、実用適性ありの評価であった。
なお、上記実施形態では、エンボス部の指掛かり部の後端側の斜面は、前記缶蓋中心に向かって少なくとも前記指掛かり部の裏面の幅方向中央部と対向する位置まで延びる指先誘導用の誘導凹部を備えた構成となっているが、誘導凹部が無く、ディンプルだけを設けてよい。
一対のディンプルによって、指のタブ短辺方向の可動域が制限されるので、指先が指掛かり部の幅方向中央部に誘導され、タブの引き起こし方向を蓋中心方向に向けやすくなる。
【0025】
【表1】
【0026】
なお、上記実施形態では、指掛かり部13を直線状に形成しているが、指掛かり部13の幅方向中央部を段差形状またはアーチ形状のチップアップ部を設けてよい。また、上記実施形態ではタブ10に孔14が設けられているが、孔14が無くても良い。
また、センターパネル2を、第1パネル面21と、第1パネル面よりも低い第2パネル面22を有する構成としたが、第2パネル面22が無くても良い。
また、センターパネルのパネル中心にリベット部7が設けられているが、リベット部7はパネル中心位置にある必要はなく、リベット部7が第2中心線上で、パネル中心からずれていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 缶蓋本体
2 センターパネル
21 第1パネル面、22 第2パネル面、
22b 段差部、22b1 迂回部
3 チャックウォールラジアス、4 チャックウォール、5 シーミングパネル
6 スコア、6a スコア始端部、6b スコア終端部
7 リベット部、8 開口予定部
9 エンボス部、
91 底面、91a 第1辺、91b 第2辺、91c 側辺
92 内周壁、92a 第1斜面、92b 第2斜面、
92b1 中央領域、92b2 移行領域、
92c 側部斜面
10 タブ、
11 タブ先端部
13 指掛かり部
13a 後端、13b 裏面、13c コーナー部、14 孔
16 側辺部、17 カール部、
20 扁平部(指掛かり部の裏面の幅方向中央部)
30 ディンプル、30a 頂部、30b,30c 斜面領域、
A ディンプルの間隔
M 第1中心線、N 第2中心線
O パネル中心(蓋体中心)
Wb,Wc,Wd 第2斜面の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7