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特許7472786フィルムおよびそれを用いた回収フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】フィルムおよびそれを用いた回収フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240416BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240416BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240416BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240416BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240416BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/18 Z
B32B27/36
B32B7/023
C08J7/04 Z
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020514762
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009074
(87)【国際公開番号】W WO2020189273
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019048261
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019178649
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052495(JP,A)
【文献】特開平11-300895(JP,A)
【文献】特開2004-017610(JP,A)
【文献】特開2008-241882(JP,A)
【文献】特開2008-250056(JP,A)
【文献】特表2012-511162(JP,A)
【文献】特開2004-169005(JP,A)
【文献】特開2012-124467(JP,A)
【文献】特開2013-110352(JP,A)
【文献】特開2015-224316(JP,A)
【文献】特開2008-149477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
C08J 7/00- 7/18
B29C 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークのピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有するか、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上である、厚みが500μm以下のフィルムであって、前記フィルムは融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層(基材層)と、赤外線吸収剤を含有する層を有し、基材層の上に赤外線吸収剤を含有する層を設けさらにその上に離型層を設けた構成であり、前記赤外線吸収剤の昇華温度が280℃以上400℃以下である、離型用途に用いられるフィルム。
【請求項2】
波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークのピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有するか、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上である、厚みが500μm以下のフィルムであって、前記フィルムは融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層(基材層)と、赤外線吸収剤を含有する層を有し、基材層の上に赤外線吸収剤を含有する層を設けさらにその上に離型層を設けた構成であり、当該離型層を有するフィルムの離型層に被離型物を設け、その後当該被離型物を有する離型層を有するフィルムから被離型物を離型し、その後被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層を除去する用途に用いられるフィルム。
【請求項3】
少なくとも片側の面が、水との接触角が90°以上である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記赤外線吸収剤が、フタロシアニン骨格を有する、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記基材層がポリエステルを主成分とする層である、請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層の除去が、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの照射によりなされる、請求項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記赤外線吸収剤を含有する層に離型剤を有する、請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のフィルムの使用方法であって、
当該フィルムに被離型物を設ける工程と、
当該被離型物を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層を除去する工程を有する、フィルムの使用方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のフィルムを用いた回収フィルムの製造方法であって、
請求項1~7のいずれかに記載のフィルムに被離型物を設ける工程と、
当該被離型物を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層を除去する工程を有する、回収フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに設けられた離型層を除去することに優れるフィルム、およびそれを用いた回収フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムは様々な工業分野に利用されている。近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが急激に増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も爆発的に増加している。MLCCの一般的な製造方法は、まず、基材であるフィルムに離型層を設けた離型フィルム上に、セラミックグリーンシートと電極を積層して乾燥して固め、セラミックグリーンシートと電極からなる積層体(被離型物)を形成した後、該積層体を離型フィルムから剥離する。次に、離型フィルムから剥離したセラミックグリーンシートと電極からなる積層体を、複数層を積層して焼成するというものである。この工程において、離型フィルムは、セラミックグリーンシートと電極からなる層を剥離した後、不要物として廃棄されることとなる。
【0003】
すなわち、近年のMLCC数量の爆発的増加で不要物として廃棄される離型フィルムが増えることによる環境影響への負荷が課題となりつつある。MLCCの製造工程で用いられる離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的にはフィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層がついた離型フィルムをそのまま再溶融した場合、離型層の成分が溶融物中に異物として存在するため、再利用ができない。
特許文献1では、ワックスをフィルム中に練り込み、離型用フィルムとして用いる技術が開示されている。また、特許文献2では、離型用フィルムを金属ブラシを用いて洗浄し、再利用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/15260号
【文献】特開2012-171276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、離型剤としてワックスを用いる場合は、被離型物であるセラミックグリーンシートを形成するためのセラミックスラリーの塗布性や、スラリーを乾燥して得られるグリーンシートの剥離性が十分でない。また、ワックスは、フィルムを構成する成分とは異なる物質であるため、再溶融時に異物となる課題がある。また、離型用フィルムを金属ブラシを用いて洗浄する場合は、均一に洗浄出来なかったり、離型層の除去性が十分でないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
[I]波長800nm以上1200nm以下のピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有するか、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上である、厚みが500μm以下のフィルム。
[II]少なくとも片側の面が、水との接触角が90°以上である、[I]に記載のフィルム。
[III]融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層(基材層)と、赤外線吸収剤を含有する層を有する、[I]または[II]に記載のフィルム。
[IV]前記赤外線吸収剤が昇華性を有する、[III]に記載のフィルム。
[V]前記赤外線吸収剤の昇華温度が280℃以上400℃以下である、[IV]に記載のフィルム。
[VI]前記赤外線吸収剤が、フタロシアニン骨格を有する、[III]から[V]のいずれかに記載のフィルム。
[VII]前記基材層がポリエステルを主成分とする層である、[III]~[VI]のいずれかに記載のフィルム。
[VIII]離型用途に用いられる、[I]から[VII]のいずれかに記載のフィルム。
[IX]前記フィルムに離型層を設け、その後当該離型層を有するフィルムの離型層に被離型物を設け、その後当該被離型物を有する離型層を有するフィルムから被離型物を離型し、その後被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層を除去する用途に用いる、[I]から[VIII]のいずれかに記載のフィルム。
[X]前記被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層の除去が、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの照射によりなされる、[IX]に記載のフィルム。
[XI][I]から[X]のいずれかに記載のフィルムの使用方法であって、
当該フィルムに離型層を設ける工程と、
当該離型層を有するフィルムの離型層に被離型物を設ける工程と、当該被離型物を有する離型層を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層を除去する工程を有する、フィルムの使用方法。
[XII][I]~[X]のいずれかに記載のフィルムを用いた回収フィルムの製造方法であって、
[I]~[X]のいずれかに記載のフィルムに離型層を設ける工程と、
当該離型層を有するフィルムの離型層に被離型物を設ける工程と、
当該被離型物を有する離型層を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型した離型層を有するフィルムから被離型物の残渣および離型層を除去する工程を有する、回収フィルムの製造方法。
[XIII]前記赤外線吸収剤を含有する層に離型剤を有する、[III]~[VIII]のいずれかに記載のフィルム。
[XIV]フィルムに被離型物を設け、その後当該被離型物を有するフィルムから被離型物を離型し、その後被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層を除去する用途に用いる、[XIII]に記載のフィルム。
[XV]前記被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層の除去が、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの照射によりなされる、[XIV]に記載のフィルム。
[XVI][XIII]~[XV]に記載のフィルムの使用方法であって、
当該フィルムに被離型物を設ける工程と、
当該被離型物を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層を除去する工程を有する、フィルムの使用方法。
[XVII][XIII]~[XV]のいずれかに記載のフィルムを用いた回収フィルムの製造方法であって、
[XIII]~[XV]のいずれかに記載のフィルムに被離型物を設ける工程と、
当該被離型物を有するフィルムから被離型物を離型する工程と、
当該被離型物を離型したフィルムから被離型物の残渣および赤外線吸収剤を含有する層を除去する工程を有する、回収フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セラミックスラリーなどの塗布性が良好で、かつ使用後において離型層を基材から除去することに優れたフィルム、およびかかるフィルムを用いた回収フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明のフィルムは樹脂を主成分とすることが好ましい。本発明に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、成形性が良好という観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0010】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリノルボルネン、ポリシクロペンテンといったポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などに代表されるポリアミド、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレートなどに代表されるポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン、3フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。
【0011】
中でも、ポリオレフィン、アクリル、ポリエステル、セルロースエステル、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォンがより好ましく、強度や成型性、耐熱性の観点から、ポリエステルがより好ましい。
【0012】
本発明でいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0013】
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。中でも、機械特性、透明性の観点から、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられる。
【0014】
本発明のフィルムは、波長800nm以上1200nm以下のピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有するか、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上である必要がある。なお、本発明のフィルムは、少なくとも波長800nm以上1200nm以下のピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有するか、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上であればよい。したがって、波長800nm以上1200nm以下のピークトップの吸光率が10%以上の吸光ピークを有し、かつ、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が15%以上であるフィルムは、当然、本発明に含まれる。より好ましくは、吸光ピークのピークトップの吸光率は15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率は20%以上であることが好ましい。当該波長に吸収ピークを持つことで、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザー光を照射することにより、離型層を容易に除去することができる。
【0015】
本発明のフィルムは、厚みが500μm以下である必要がある。500μmを超える場合、離型層を除去する際のハンドリング性に劣ることがある。好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは37μm以下、最も好ましくは24μm以下である。フィルムの厚みが薄くなると強度が不足し、離型層の除去やフィルムの搬送ができなくなることがあるため、10μm以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のフィルムは、少なくとも片側の面が、水との接触角が90°以上であることが好ましい。少なくとも片側の面の水との接触角を90°以上とすることで、本発明のフィルムを離型用フィルムとして用いる場合、剥離性が良好となる。例えば、本発明のフィルムの当該面上にセラミックグリーンシートを作製する場合、グリーンシートの剥離性が良好となる。水接触角の上限は特には設けられないが、110°以下であることが好ましい。110°を超える場合、フィルム上にセラミックスラリーを塗布した場合に、スラリーをはじいてしまい、グリーンシートが得られないことがある。
【0017】
本発明のフィルムは、融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層(基材層)と、赤外線吸収剤を含有する層を有することが好ましい。ここでいう赤外線とは、波長800nm以上2000nm以下の光のことである。また、ここでいう融点が250℃以上である樹脂を主成分とするとは、該基材層中の融点が250℃以上である樹脂の含有量が50重量%以上のことをあらわし、より好ましくは90重量%以上である。融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層を有すると、耐熱性が向上するため、工程用フィルムなどとして用いた場合のハンドリング性が良好となる。また後述の方法で赤外線吸収剤を含有する層を破壊・除去を行った際に基材層へのダメージを少なくすることができる。本発明のフィルムの基材層を構成する熱可塑性樹脂の融点は、より好ましくは250℃以上340℃以下であり、さらに好ましくは252℃以上300℃以下である。本発明のフィルムにおいては、融点が250℃以上である熱可塑性樹脂を主成分とする層と、赤外線吸収剤を含有する層を有することで、融点が250℃以上である樹脂を主成分とする層にてハンドリング性を向上させ、赤外線吸収剤を含有する層にて波長800nmから1200nmの吸光率を容易に好ましい範囲とすることができる。赤外線吸収剤を含有する層を設ける方法としては、基材層と、赤外線吸収剤を含有する層を共押出によって設ける方法や、基材層上に赤外線吸収剤を含有する層をグラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング、スピンコートなどのコーティングによって設ける方法が挙げられる。赤外線吸収剤をより高濃度で含有させることができるという観点からは、赤外線吸収剤を含有する層を設ける方法は、コーティングによる方法を選択することが好ましい。本発明のフィルムにおいて、基材層と、赤外線吸収剤を含有する層の好ましい層厚み比率は、赤外線吸収剤を含有する層の厚みに対する基材層の厚み(基材層の厚み/赤外線吸収剤を含有する層の厚み)が10以上である。より好ましくは15以上である。厚み比率の上限は、1000以下であることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記基材層は、ポリエステルを主成分とすると、ハンドリング性を特に良好にすることができ、また、後述する方法によって離型層の除去を容易にすることができるため好ましい。
【0019】
また、本発明において、前記基材層は、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が10%以下であることが好ましい。基材層の吸光率をかかる範囲とすることで、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーを本発明のフィルムに照射した際に、赤外線吸収剤を含有する層に集中してエネルギーを与えることができるため、除去性が良好になるだけでなく、基材層を構成する樹脂の劣化を抑制することができる。より好ましくは8%以下である。
【0020】
本発明のフィルムにおける赤外線吸収剤としては、Al、Cu、Au、Ag、Tiなどの金属やカーボンブラックなどの無機物、または有機物を主成分とする色素が挙げられる。かかる赤外線吸収剤を含有する層に波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーを照射すると、赤外線吸収剤が赤外線を吸収して熱エネルギーを持つため、赤外線吸収剤を含有する層やそれに隣接する層がある場合、それらの層が破壊・除去されやすくなる。
【0021】
また、本発明のフィルムにおける前記赤外線吸収剤は、昇華性を有することが好ましい。昇華性を有する場合、赤外線吸収剤に昇華熱以上のエネルギーを与えた際、赤外線吸収剤の体積が急激に大きくなる。それによって、赤外線吸収剤を含有する層、およびそれに隣接する層がある場合、それらの層が破壊・除去されやすくなるため好ましい。前記赤外線吸収剤の昇華温度は、280℃以上400℃以下であることが好ましい。280℃に満たない場合、本発明のフィルムを離型用フィルムとして使用する工程(被離型物をフィルム上に設ける工程など)にて、赤外線吸収剤が昇華することがあり、離型用フィルムとして使用することができない場合がある。400℃を超える場合には、赤外線吸収剤が昇華に必要とするエネルギーが大きくなる場合があるため、離型層の除去性能に劣る場合がある。また、前記赤外線吸収剤は、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。フタロシアニン骨格を有することで、有機溶媒、例えばトルエンやエタノールなどへの溶解性が高く、該溶媒を用いて基材層上に高濃度でコーティングすることができるため好ましい。
【0022】
本発明のフィルムにおいて、赤外線吸収剤を含有する層には、赤外線吸収剤が波長800nmから1200nmの光を吸収することで発生する熱エネルギーによって気化しやすい物質を含有せしめても良い。気化しやすい物質として、例えばニトロセルロースが好適に用いられる。特に、赤外線吸収剤が昇華性を持つ場合、昇華するエネルギーにて気化しやすい該物質も気化し、赤外線吸収剤を含有する層に隣接する層を効率よく除去することができる。
【0023】
本発明のフィルムにおいては、赤外線吸収剤を含有する層は、離型剤を含有することも好ましい実施形態のひとつである。赤外線吸収剤を含有する層に離型剤を含有せしめることで、離型性の良好な離型層を別途設ける必要がなくなるため、工程安定性に優れたフィルムとすることができる。本発明に用いる離型剤としては、例えば、アルキッド樹脂系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、長鎖アルキル基含有樹脂系離型剤、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂系離型剤などが挙げられる。これらの内、セラミックグリーンシートを作製するために用いるセラミックスラリーの塗布性、およびそれを乾燥・固化して得られるセラミックグリーンシートの剥離性の観点から、シリコーン離型剤が特に好適に用いられる。
【0024】
一方、本発明のフィルムに、別途、離型剤を含有する層を設けることも好ましい態様として挙げられる。かかる構成とすることで、被離型物の離型性を良好にすることが容易となる。
【0025】
次に、本発明のフィルムの詳しい形態および使用方法の一態様として、ポリエステルを主成分とする層と赤外線吸収剤を有する層を有するフィルムについて記載するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明のフィルムにおいて、ポリエステルを主成分とする層は、ポリエステルを溶融製膜する手法を好適に用いることができる。すなわち、ポリエステルを主成分とする層は、ポリエステルを溶融させた状態から冷却固化しシートを得る工程、延伸工程でポリエステルのガラス転位点以上の温度で逐次二軸延伸もしくは同時二軸延伸する工程、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する工程を経ることで得られるポリエステルフィルムを用いることができる
次に、赤外線吸収剤を含有する層を設ける方法について述べる。赤外線吸収剤を含有する層を設ける方法としては、赤外線吸収剤をトルエンやメチルエチルケトン(MEK)などの溶媒に溶かし、ホモジナイザーなどで充分に攪拌させた溶液をコーティングによって基材層上に塗布して設けられることが好ましい方法として挙げられる。赤外線吸収剤を含有する層に前述の離型剤を含む場合は、赤外線吸収剤と同じ溶媒を用いてシリコーン樹脂などの離型剤を赤外線吸収剤と同じ溶媒に溶かして用いることが好ましい。特に、離型剤として、加熱による付加反応硬化型のポリシロキサン構造をもつシリコーン離型剤は、トルエン、MEKなどへの溶解性が高く、赤外線吸収剤を含有する層へ含有させやすいため、好ましい。
【0027】
上述のようにして得られた赤外線吸収剤とシリコーン樹脂を含む溶液を、コーティングによってポリエステルフィルム上に塗布し、オーブンなどで乾燥することによって溶媒を蒸発させることで、本発明のフィルムを得ることができる。コーティング方法としては、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング等の一般的なコーティング方式を利用することが出来る。
【0028】
本発明のフィルムにおいては、赤外線吸収剤を含有する層と、離型層を別々に設けることも好ましい実施形態である。この場合、基材層の上に赤外線吸収剤を含有する層を設け、さらにその上に離型層を設ける構成であると、本発明のフィルムの水との接触角を好ましい範囲とすることができるため、好ましい。赤外線吸収剤を含有する層と、離型層を別々に設ける場合、赤外線吸収剤を含有する層を設ける方法は、インラインコートによってあらかじめ赤外線吸収剤を含有する層を設けたフィルムを作製し、その後離型層として離型剤を含有する層を設ける方法や、赤外線吸収剤を含有する層と、離型層として離型剤を含有する層とを、ダイなどを用いて同時に2層インラインコートして設ける方法が挙げられる。
【0029】
赤外線吸収剤を含有する層をインラインコートによって設ける場合、赤外線吸収剤はポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂に分散させることが好ましい。特に、赤外線吸収剤がフタロシアニン骨格を有する場合は、分散性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。赤外線吸収剤を含有する層において赤外線吸収剤が均一に分散していると、後述する波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの照射によって赤外線吸収剤を含有する層の破壊・除去が容易となる。また、上述の赤外線吸収剤を分散させる樹脂は、環境保護、省資源化、製造時における有機溶剤の排気問題の観点から、水へ分散させたエマルジョン型であることが好ましい。また、基材であるフィルムへの密着性の観点から、架橋剤として、オキサゾリン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、イソシアネート樹脂を添加するのも好ましい実施形態である。
【0030】
赤外線吸収剤を含有する層と、離型層として離型剤を含有する層とを、ダイなどを用いて同時に2層インラインコートして設ける場合、環境保護、省資源化、製造時における有機溶剤の排気問題や、赤外線を吸収する層との塗布性の観点から、離型剤として、シリコーンを水中にエマルジョンとして分散させたものを用いることが好ましい。
【0031】
各層をインラインコーティングによって設ける場合は、塗膜の乾燥の観点から、基材層であるフィルムを同時二軸延伸によって得る場合は延伸前のフィルムに、逐次二軸延伸によって得る場合は、縦延伸工程後に塗布することが好ましい。
【0032】
以上のように得られた本発明のフィルムの好ましい使用方法を、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の工程用のフィルムとして用いる場合を例にとり、以下に説明する。
【0033】
本発明のフィルムの上に設ける被離型物は、MLCCの工程用フィルムとして用いる場合は、誘電体ペーストからなるセラミックスラリーから形成されるものである。誘電体ペーストとは、誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、例えば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの粉体を、有機ビヒクルと混練し、ペースト状にしたものである。有機ビヒクルとは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダ樹脂としては、塗布性の観点から、ポリビニルブチラール樹脂が好適に用いられる。有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されず、例えばテルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。誘電体ペーストからなるセラミックスラリーは、ダイコート方式、ドクターブレード方式などの塗布によって本発明のフィルムの上に設け、50℃から100℃の温度で乾燥されてシート状に形成された後、剥離される。剥離方法は、特には限定されないが、剥離したい所定の大きさに切れ込みを入れ、吸引することによって行われることが一般的である。
【0034】
本発明のフィルムは、本発明のフィルムに離型層を設け、その後フィルムに被離型物を設け、その後被離型物が離型された後、フィルムから被離型物の残渣、および赤外線吸収剤を含有する層を除去する用途に好適に用いることができる。本発明のフィルムから被離型物の残渣、および赤外線吸収剤を含有する層を除去する方法としては、波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの照射によりなされることが好ましい。本発明のフィルムに、該発振波長を有するレーザーを照射することで、レーザーの光子エネルギーを、本発明のフィルムの赤外線吸収剤を含有する層が効率的に吸収し、該層が分解・発泡する。それによって、赤外線を吸収する層およびそれに隣接する層、またさらにそれに隣接する層(離型層や、被離型物の残渣)を破壊・除去することができる。赤外線を吸収する層およびそれに隣接する層、またさらにそれに隣接する層(離型層や、被離型物の残渣)を破壊・除去することにより、基材となるフィルムのみ(以下、回収フィルムということがある)を得ることが可能となる。その結果、回収フィルムを再溶融したのちチップ化し、再生原料としてフィルムの製膜に用いることで、再びフィルム上に離型剤を含有する層などを設けるなど用途のフィルムとして再利用することで、廃棄物の低減、石油資源消費の低減が可能となる。
【0035】
本発明のフィルムの赤外線吸収剤を含有する層に離型剤を含有する場合は、フィルムに被離型物を設け、その後被離型物が離型された後、フィルムから被離型物の残渣、および赤外線吸収剤を含有する層を除去する用途に好適に用いることができる。
【0036】
レーザーの照射は、例えば波長800nm以上1200nm以下に発振波長を有するレーザーの光は、波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークを有する層、特に赤外線吸収剤を含有する層に特異的に吸収されるので、本発明のフィルムの基材側から照射しても、被離型物残渣がある側から照射しても構わない。
【0037】
レーザーは、パルス波でも、連続波でも構わないが、フィルムに連続的にまんべんなく照射する観点から、連続波であることが好ましい。また、レーザー光の発振強度は、赤外線吸収剤を含有する層の反応性の効率の観点から、5W以上50W以下であることが好ましい。照射時間は特には限定されないが、0.1秒以上照射することが好ましい。
【0038】
本発明のフィルムは、上記のように、本発明のフィルムから被離型物の残渣および離型層を除去したのち、基材であるフィルムのみ(回収フィルム)を得ることが可能となる。その結果、回収フィルムを再溶融したのちチップ化し、再生原料としてフィルムの製膜に用いたり、再びフィルム上に離型剤を含有する層などを設けるなどフィルムとして再利用することで、廃棄物の低減、石油資源消費の低減が可能となる。
【0039】
[特性の評価方法]
A.フィルムの吸光率(%)
日立製作所製 分光光度計(U-4100Spectrophotomater)を用い、吸光率を測定する。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、800nm~1200nmの範囲を120nm/min.の検出速度で測定する。
【0040】
フィルムの透過率を、100から減算し、フィルムの吸光率とする。800nm~1200nmまでの範囲において、半値幅が100nm以下のピークがある場合はピークトップの吸光率、ピークが無い場合は800nm~1200nmの吸光率の平均値を求め、フィルムの吸光率とする。
【0041】
B.フィルムの離型層側の水の接触角(°)
サンプルを室温23℃湿度65%の雰囲気中において、24時間放置後、その雰囲気下で接触角計CA-D型(協和界面科学(株)社製)を用い、同様の条件に保管しておいた蒸留水を用いて測定する。
【0042】
C.フィルムの各層の厚み(μm)
フィルムが積層フィルムである場合、下記の方法にて、各層の厚みを求めた。フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚みを測定する。
【0043】
D.誘電体ペースト(被離型物)の塗布性
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100重量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10重量部、フタル酸ジブチル5重量部とトルエン-エタノール(重量比30:30)60重量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状の誘電体ペーストを調整する。得られた誘電体ペーストを、本発明のフィルムの上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、離型フィルム付きのグリーンシートを得る。巻き取られたグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無や、シート表面および端部の塗布状態を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmである。離型フィルムの上に成型されたグリーンシートについて、背面から1000ルクスのバックライトユニットで照らしながら、塗布抜けによるピンホールを観察し、以下のように評価する。Aが製造性が良好である。
A:ピンホールが5個以下。
B:ピンホールが6個以上。
E.誘電体ペースト(被離型物)の剥離性
D.で得られた離型フィルム付きグリーンシートの表面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製No.31B、幅19mm)を張り付けて、共和界面化学(株)製VPA-H200を用いて180°剥離の強度を測定し、以下のように評価する。
【0044】
A:剥離強度が30mN/50mm以下。
【0045】
B:剥離強度が30mN/50mmを超える。
【0046】
F.離型層の除去性
E.項に記載の方法で被離型物を剥離した後のフィルムに、レーザー光を照射する。照射しながら、フィルム表面に生じる粉塵等を吸引する。
【0047】
(F-1)光電子分光法によるSi元素量測定(atomic%)
以下の装置・条件にて、レーザー光照射後の離型層側のフィルム表面のSi元素の元素濃度(atomic%)を求める。レーザー光照射後の離型層側のフィルム表面のSi元素の元素濃度(atomic%)は、離型剤として用いたSi化合物の残存量を表しており、かかる量が少ない場合、離型層が除去されていることを表している。
装置:K-Alpha+(Thermo Scientific社製)
励起X線:Monochoromatic Al Kα1、2線(1486.6eV)
X線径:400μm
光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
A:Si元素濃度が10atomic%未満
B:Si元素濃度が10atomic%以上15atomic%未満
C:Si元素濃度が15atomic%以上20atomic%未満
D:Si元素濃度が20atomic%以上。
(実施例12においては、レーザー光照射後の離型層側のフィルム表面のF元素濃度(atomic%)にて同様の評価を行った。)
(F-2)
レーザー光照射後の離型層側のフィルム表面について、B.項と同様にして、水の接触角を求めた。レーザー光照射後の離型層側の水の接触角が低いほど、離型層が除去されていることを表している。
【0048】
A:接触角が80°未満
B:接触角が80°以上90°未満
C:接触角が90°以上100°未満
D:接触角が100°以上。
G.フィルムの基材の融点Tm(℃)
試料を、JIS K 7122(1999)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱する(1stRUN)。1stRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該1stRunの示差走査熱量測定チャートの、吸熱ピークのピーク温度を求め、Tm(℃)とする。
【実施例
【0049】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0050】
[PET-1の製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62、末端カルボキシル基量は20eq./tであった。
【0051】
[PET-Aの製造]PET-1 99.7重量部に、山田化学工業(株)製の赤外線吸収剤FDN-010(フタロシアニンバナジウム錯体、昇華温度340℃)を0.3重量部添加し、ベント孔付き押出機にて圧力1kPa以下に保ったまま混練し、赤外線吸収剤を含有するPET-Aを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.61、末端カルボキシル基量は30eq./tであった。
【0052】
[PET-Bの製造]PET-1 99重量部に、山田化学工業(株)製の赤外線吸収剤FDN-010(フタロシアニンバナジウム錯体、昇華温度340℃)を1重量部添加し、ベント孔付き押出機にて圧力1kPa以下に保ったまま混練し、赤外線吸収剤を含有するPET-Bを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.59、末端カルボキシル基量は38eq./tであった。
【0053】
[PET-Cの製造]PET-1 95重量部に、山田化学工業(株)製の赤外線吸収剤FDN-010(フタロシアニンバナジウム錯体、昇華温度340℃)を5重量部添加し、ベント孔付き押出機にて圧力1kPa以下に保ったまま混練し、赤外線吸収剤を含有するPET-Cを得た。ガラス転移温度は78℃、融点は251℃、固有粘度は0.50、末端カルボキシル基量は51eq./tであった。
【0054】
[塗剤Aの作製]付加反応型シリコーン樹脂離型剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A、ポリシロキサン構造を有する)100重量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2重量部を、トルエンを溶媒として固形分5重量%となるように調整し、塗剤Aを得た。
【0055】
[塗剤Bの作製]アルケニル基含有シリコーン離型剤(ポリシロキサン構造を有する)水分散体100重量部/Si-H基含有シリコーン水分散体12重量部に、アルキル系樹脂として後述のノニオン性アクリル樹脂の水分散体(乳化剤:ノニオン性乳化剤)を混合し、水で希釈した後固形分濃度5重量%となるよう調整し、塗剤Bを得た。
【0056】
[塗剤Cの作製]日本化工塗料株式会社製ノンシリコーン離型剤FS9200を用い、トルエンで希釈して固形分濃度10重量%となるように調整し、塗剤Cを得た。
【0057】
[塗剤aの作製]アクリル樹脂を50重量部とメチロール型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック(登録商標)”MW12LF)を50重量部、固形分濃度8重量%になるように水で混合攪拌し、塗剤aを得た。
【0058】
[塗剤Dの作製]カーボンブラックとニトロセルロースを含有するカラーチップとして太平化学製品(株)製878B60重量部、エポキシ樹脂として三菱ケミカル(株)製エピコート828 20部、硬化剤としてメラミン樹脂(三井化学(株)製“ユーバン(登録商標)”2061)19重量部と触媒(共栄化学(株)製ライトエステルPM)1重量部を、固形分濃度が10重量%となるように溶媒(メチルイソブチルケトン90部、ジメチルホルムアミド10重量部)に溶解し、塗剤Dを得た。
【0059】
[塗剤Eの作製]ニトロセルロースを含有する塗剤として和信ペイント(株)性の“クリヤーラッカー(登録商標)” 60重量部、エポキシ樹脂として三菱ケミカル(株)製エピコート828 20重量部、硬化剤としてメラミン樹脂(三井化学(株)製“ユーバン(登録商標)”2061)19部と触媒(共栄化学(株)製ライトエステルPM)1重量部を混合し、塗剤Dを得た。
【0060】
(実施例1)
塗剤aを用い、塗剤の全固形分濃度に対し1重量%の濃度となるように、赤外線吸収剤として山田化学工業(株)製のFDN-010(フタロシアニンバナジウム、昇華温度340℃)を添加して攪拌し、塗剤a-1を得た。また、PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムに、延伸・乾燥後の厚みが0.1μmとなるように、塗剤a-1をマイヤーバーにより塗布した後、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmの基材層と厚さ0.1μmの赤外線吸収剤を有する層を有するフィルムを得た。得られたフィルムの赤外線吸収剤を有する層の面に、さらに塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層したフィルムを得た。かかるフィルムの各特性を表に示す。誘電体ペースト塗布性、剥離性に問題のないフィルムであった。
【0061】
また、かかるフィルムの離型層の除去性についてF項に従って評価した。すなわち、D.項に従い作製したグリーンシートを、E.項の方法に従い10cm×10cmの大きさに剥離し、該部分に、波長1064nm、強度20Wの連続波レーザー光を照射し、フィルム表面に生じる粉塵等を吸引した後、離型層の残存を、Si元素含有量や水の接触角を測定することで評価した。レーザー装置はキーエンス(株)製レーザーマーカMDX1500を用いた。離型剤の成分であるSi元素量が少なく、水との接触角も90°未満であることから、離型層の除去性に優れたフィルムであった。
【0062】
(実施例2-4、16)
赤外線を吸収する層の、赤外線吸収剤濃度と塗布厚み、基材のフィルム厚みを表に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。各特性を表に示す。
【0063】
実施例2では、赤外線吸収剤濃度が高く、実施例3ではさらに赤外線吸収剤を含有する層の塗布厚みが厚いため、離型層の除去性に優れるフィルムであった。実施例4では、レーザー光の強度を10Wとしたが、充分な除去性が得られた。
【0064】
実施例16では基材フィルムの厚みを薄くしたため、誘電体ペーストの剥離力が低下し、ハンドリング性が優れるフィルムであった。
【0065】
(実施例5)
実施例1の赤外線吸収剤に変えて、大東化成工業(株)製のカーボンブラック(昇華性なし)の水分散体(WD-CB2)を用い、表に記載の濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。各特性を表に示す。実施例5のフィルムは、波長800nm以上1200nm以下の帯域に明確なピーク(極大値)を示すものでは無かったが、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が高く、離型層の除去性に優れるフィルムであった。
【0066】
(実施例6)
実施例1の赤外線吸収剤に変えて、山田化学工業(株)製の赤外線吸収剤FDN-003(フタロシアニン銅錯体、昇華温度380℃)を用い、表に記載の濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。各特性を表に示す。また、離型層除去のため、レーザー装置は浜松ホトニクス製のパルスレーザーダイオード(L11348-307-05)を用い、連続波にて行った。離型層の除去性について表に示す。離型層の除去性に問題のないフィルムであった。
【0067】
(実施例7)
実施例1の赤外線吸収剤に変えて、山田化学工業(株)製の赤外線吸収剤FDN-003(フタロシアニン銅錯体、昇華温度380℃)および山田化学工業(株)製のFDN-010(フタロシアニンバナジウム、昇華温度340℃)をそれぞれ1重量%ずつの濃度になるように添加した以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。各特性を表に示す。また、離型層除去のため、レーザー装置はMDX1500とL11348-307-05を用い、連続波にて行った。離型層の除去性について表に示す。離型層の除去性に問題のないフィルムであった。
【0068】
(実施例8)
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムに、塗剤a-1がフィルムに隣接し、さらに塗剤Bが塗剤a-1で形成される層に隣接するように、塗剤a-1と塗剤Bをダイコート法により、延伸・乾燥後の厚みがそれぞれ0.1μmとなるように調整し、同時に塗布し、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmの基材層と厚さ0.1μmの赤外線吸収剤を有する層と厚さ0.1μmの離型層を有するフィルムを得た。離型層の除去は、実施例1と同様にして行った。各特性、および離型層の除去性を表に示す。離型層の除去性に問題のないフィルムであった。
【0069】
(実施例9)
塗剤Aの固形分濃度に対し3重量%の濃度となるように、赤外線吸収剤として山田化学工業(株)製のFDN-010(フタロシアニンバナジウム、昇華温度340℃)を添加して攪拌し、塗剤A-1を得た。
また、PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤A-1を用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、赤外線吸収剤と離型剤を有する層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0070】
また、離型層除去性に関しては、実施例1と同様の方法で実施した。赤外線吸収剤と離型剤が同じ層に含有されるため、反応が進行しやすく、離型性に優れるフィルムであることが分かった。
【0071】
(実施例10)
実施例10では、赤外線吸収剤の含有量を表の通りに変えた以外は、実施例9と同様にフィルムを得たのち、離型性の除去性を確認した。各特性を表に示す。赤外線吸収剤の添加量が多く、離型層の除去性に優れたフィルムであった。
【0072】
(実施例11)
実施例10のフィルムを用い、離型層の除去のためのレーザー光強度を表のように変えた以外は、実施例10と同様に評価した。結果を表に示す。赤外線吸収剤の添加量が多く、レーザー光強度を低くしても離型層の除去性に優れることが分かった。
【0073】
(実施例12)
塗剤C-1として、塗剤Cの固形分濃度に対し1重量%の濃度となるように、山田化学工業株式会(株)製FDN-010を添加した塗剤を作製した。
また、PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤C-1を用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、赤外線吸収剤と離型剤を有する層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。水の接触がやや大きく、誘電体ペーストの塗布性において、ハジキ個数がやや増える傾向であることが分かった。また、離型層の除去性の評価は、(F-1)項におけるXPSでの元素濃度測定をフッ素に変えた以外は、実施例9と同様にして実施し、離型層の除去性に問題ないことが分かった。
【0074】
(実施例13)
PET-Bを、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、赤外線吸収剤を有する厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。また、離型層の除去性の評価は、実施例9と同様にして実施した。基材層であるポリエステルフィルムにも赤外線吸収剤を含有するため、レーザー光がポリエスエルフィルム全体に吸収されてエネルギーが分散することにより、離型層の除去性にやや劣るフィルムであることが分かった。
【0075】
(実施例14)
ポリプロピレン樹脂として(株)プライムポリマー製TF850Hを押出機に投入し、240℃にて溶融し、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、125℃の温度で長手方向(MD方向)に4.3倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の160℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に5.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで140℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤a-1を用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにバーコーターで塗布し、100℃で60秒乾燥硬化することで、基材層であるポリプロピレンフィルムに厚さ0.1μmの赤外線吸収剤を有する層を積層したフィルムを得た。得られたフィルムの赤外線吸収剤を有する層の面に塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層したフィルムを得た。各特性を表に示す。融点が低いためハンドリング性に劣り、誘電体の剥離性にやや劣るが、実用に問題のないフィルムであった。
【0076】
また、離型層の除去性についてF項に従って評価した。すなわち、D.項に従い作製したグリーンシートを、10cm×10cmの大きさに剥離し、該部分に、波長1064nm、強度20Wの連続波レーザー光を照射した後、離型層の残存を、Si元素含有量や水の接触角を測定することで評価した。レーザー装置はキーエンス(株)製レーザーマーカMDX1500を用いた。離型剤の成分であるSi元素量が少なく、水との接触角も90°未満であることから、離型層の除去性に優れたフィルムであった。
【0077】
(実施例15)
東レ(株)製ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム“トレリナ”(登録商標)(30μm)の片面に、塗剤a-1を用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにバーコーターで塗布し、200℃で40秒乾燥硬化することで、基材層であるPPSフィルムに厚さ0.1μmの赤外線吸収剤を有する層を積層したフィルムを得た。得られたフィルムの赤外線吸収剤を有する層の面に塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、さらに離型層を積層したフィルムを得た。各特性を表に示す。誘電体ペースト塗布性、剥離性に問題のないフィルムであった。
【0078】
また、離型層の除去性についてF項に従って評価した。すなわち、D.項に従い作製したグリーンシートを、10cm×10cmの大きさに剥離し、該部分に、波長1064nm、強度20Wの連続波レーザー光を照射した後、離型層の残存を、Si元素含有量や水の接触角を測定することで評価した。レーザー装置はキーエンス(株)製レーザーマーカMDX1500を用いた。離型剤の成分であるSi元素量が少なく、水との接触角も90°未満であることから、離型層の除去性に優れたフィルムであった。
【0079】
(実施例17)
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤Dを用い、乾燥後の塗布厚みが0.3μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、基材層と赤外線を吸収する層を有するフィルムを得た。さらに、赤外線を吸収する層を有するフィルムの、赤外線を吸収する層に接するように、実施例1と同様に塗剤Aを用いてグラビアコート法により離型層を塗布し、離型層を有するフィルムを得た。各特性を表に示す。離型層除去性に関しては、実施例1と同様の方法で実施した。実施例17のフィルムは、波長800nm以上1200nm以下の帯域に明確なピーク(極大値)を示すものでは無かったが、波長800nm以上1200nm以下の平均吸光率が高く、赤外線吸収剤と離型剤が同じ層に含有されるため、反応が進行しやすく、離型層の除去性に優れるフィルムであることが分かった。
【0080】
(実施例18、19)
実施例18、19では、塗剤Eに、赤外線吸収剤として赤外線吸収剤として山田化学工業(株)製のFDN-010(フタロシアニンバナジウム、昇華温度340℃)を表に記載してある通りの濃度になるように添加したものを、実施例17の塗剤Dの代わりに用いて、他は実施例17と同様に、赤外線吸収剤含有量と離型剤を含有する層(離型層)を有するフィルムを得た。各特性を表に示す。
【0081】
また、離型層除去性に関しては、実施例1と同様の方法で実施した。赤外線吸収剤と離型剤が同じ層に含有されるため、反応が進行しやすく、離型層の除去性に優れるフィルムであることが分かった。
【0082】
(実施例20)
実施例20では、実施例17で作製したフィルム離型性を除去する際に、連続波ではなく、パルス波のレーザーを用いた。具体的には、レーザー装置としてキーエンス(株)製レーザーマーカMDX1500を用い、波長1064nm、出力20W、周波数200kHzにてレーザー光を発振させて照射した。各特性を表に示す。離型層の除去性に優れるフィルムであった。
【0083】
(比較例1)
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムに、延伸・乾燥後の厚みが0.1μmとなるように、塗剤aをマイヤーバーにより塗布した後、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、さらに塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが得られず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであった。
【0084】
また、離型層の除去性の評価は、実施例1と同様にして実施したが、赤外線吸収剤を含有する層がなく、波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが存在せず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであるため、離型層の除去性に優れるものではなかった。
【0085】
(比較例2)
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが得られず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであった。
【0086】
また、離型層の除去性の評価は、実施例1と同様にして実施したが、赤外線吸収剤を含有する層がなく、波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが存在せず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであるため、離型層の除去性に優れるものではなかった。
【0087】
(比較例3)
PET-Aを、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの片面に、塗剤Aを用い、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化することで、離型層を積層し、フィルムを得た。各特性を表に示す。赤外線吸収剤の含有量が少なく、波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが得られず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであった。
【0088】
また、離型層の除去性の評価は、実施例1と同様にして実施したが、波長800nm以上1200nm以下に吸収ピークが存在せず、また波長800nm以上1200nmの平均吸光率も低いフィルムであるため、離型層の除去性に優れるものではなかった。
【0089】
(比較例4)
PET-Cを、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出したが、赤外線吸収剤を含有する量が多く、原料の溶融粘度が低いためシートを得ることができなかった。
【0090】
(比較例5)
比較例2で作製した離型層を設けた離型フィルムをロール状に巻き取ったものを、フィルム送り出し装置と巻き取り装置、およびその中間に設けられた洗浄用ブラシを用いて、速度15m/minで繰り出しながら離型層を剥離した。中間に設けられた洗浄用ブラシは、線径0.1mm、毛足長さ15mm、のステンレス線を、外径180mmに仕上げたものを用いた。ブラシがフィルムに接触する際のバックアップロールには、ハードクロムメッキのフリーロールを用いた。
【0091】
除去後のフィルム特性を示す。フィルム表面が荒れているため水との接触角はやや小さくなるものの、Siの元素濃度が大きく、離型層の除去性が不十分であることが分かった。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のフィルムは、離型性に優れ、特に誘電体ペーストの塗布性・剥離性に優れるため、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の製造工程用フィルムとして好適に使用出来る。また、本発明のフィルムをMLCC製造工程などで使用した後に離型層を容易に除去出来るため、離型層を除去した回収フィルムを容易に製造することができる。