(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】アルデヒド系ガス又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240416BHJP
C23F 11/14 20060101ALI20240416BHJP
C23F 11/18 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61L9/01 K
C23F11/14 101
C23F11/18 102
(21)【出願番号】P 2020559888
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045319
(87)【国際公開番号】W WO2020121754
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018233874
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】鷹觜 篤
(72)【発明者】
【氏名】上杉 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜直
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019184(JP,A)
【文献】特開2017-000567(JP,A)
【文献】国際公開第2006/046611(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199756(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118714(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0125462(US,A1)
【文献】特表2002-513745(JP,A)
【文献】国際公開第2013/057791(WO,A1)
【文献】特開2008-259804(JP,A)
【文献】米国特許第04479917(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61Q 1/00-90/00
C23F 11/00-11/18
C23F 14/00-17/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有
し、
ヒドラジド化合物を含有しない消臭剤組成物において、
前記キレート剤の含有量は、前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に1~50質量部であり、
前記アミノグアニジン塩の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して20~90質量%であり、
前記キレート剤の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して2~10質量%であることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項2】
前記アミノグアニジン塩が、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項3】
前記キレート剤が、無機リン酸、カルボン酸及びこれらの塩から選ばれた少なくとも1種
を含む請求項1又は2に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項4】
前記アミノグアニジン塩及び前記キレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されている請求項1から3のいずれか一項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項5】
前記無機担体が、ケイ素化合物からなる請求項4に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項6】
前記キレート剤が、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、コハク酸、クエン酸及びエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムから選ばれた少なくとも1種
を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属(合金を含む。以下、同じ。)製の容器に貯蔵した際に腐食が抑制されるアルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭に好適な消臭剤組成物に関する。また、本発明は、消臭製品の製造原料である、消臭剤組成物と、接着剤樹脂等とを含む加工液を、金属製の容器、撹拌羽根等を備える装置を用いて製造する場合、及び、加工液を使用して消臭製品を製造する場合に、容器、部材等の腐食が抑制されるアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境、職場環境等に応じて、空気中には、悪臭、有害ガス等の様々なガス状汚染物質が存在しており、これらガス状汚染物質を除去し、快適な環境を得ることに関心が持たれるようになってきた。例えば、アルデヒド系ガスやケトン系ガスは、タバコの煙、体臭(汗臭、口臭等)、ペット臭、カビ臭、塗料臭、印刷臭等の各種の臭気に含まれており、人体への影響が指摘されていることから、近年、室内、車内等において、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスを含む空気を浄化するための消臭濾材、消臭フィルター等の消臭製品が提案されている。そして、これらの消臭製品の製造原料として、種々のアルデヒド系ガス消臭剤及びケトン系ガス消臭剤が知られている(特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1には、ケイ酸塩化合物及び4価金属リン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものに、コハク酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド及びシュウ酸ジヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものを担持したアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、モノアミノグアニジン塩、ジアミノグアニジン塩及びトリアミノグアニジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有するアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ジヒドラジド化合物と含水無機質粉体と水とを含有する消臭組成物を調製する工程、及び、消臭剤全体の中で水分が4.5質量%以上残存するように消臭組成物を45℃以上90℃以下の温度で加熱する工程により得られたアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
また、特許文献3には、バインダーを用いてアルデヒド系ガス消臭剤を後加工して得られた消臭加工製品(消臭製品)が開示されており、この場合、通常、アルデヒド系ガス消臭剤、バインダー及び液状媒体を含有する加工液が用いられる。
【0006】
特許文献4には、第一級アミン化合物を含有することを特徴とするケトン系ガス吸着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2004/58311号公報
【文献】国際公開2006/46611号公報
【文献】国際公開2013/118714号公報
【文献】国際公開2016/199756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、アミノグアニジン塩を主とする消臭剤は、アルデヒド系ガスやケトン系ガスの消臭剤として広く用いられる一方で、このような消臭剤の貯蔵容器が金属を含む場合や、消臭製品の製造に用いられる、消臭剤、接着剤樹脂等を含有する加工液を調製するための製造設備(容器、撹拌羽根等)が金属を含む場合には、アミノグアニジン塩が原因と思われる腐食が確認されることがあった。このような腐食により、アミノグアニジン塩を主とする消臭剤又は加工液が不純物を含むことになったり、製造設備に不具合をもたらしたりするため、消臭製品を安定生産するために、消臭剤の改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤(金属イオンのキレート化剤)とを併用することにより、上記課題が解決されることを見い出した。
本発明におけるアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物(以下、単に「消臭剤組成物」ということがある)は、以下に示される。
1.アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤(以下、単に「キレート剤」という)とを含有することを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガス消臭剤組成物。
2.上記アミノグアニジン塩が、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩から選ばれた少なくとも1種である上記項1に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガス消臭剤組成物。
3.上記キレート剤が、無機リン酸、カルボン酸及びこれらの塩から選ばれた少なくとも1種である上記項1又は2に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガス消臭剤組成物。
4.上記アミノグアニジン塩及び上記キレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されている上記項1から3のいずれか一項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガス消臭剤組成物。
5.上記無機担体が、ケイ素化合物からなる上記項4に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガス消臭剤組成物。
6.上記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に、上記キレート剤の含有量が1~50質量部である上記項1から5のいずれか一項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
7.上記アミノグアニジン塩の含有割合が、組成物の全体に対して5~70質量%である上記項1から6のいずれか一項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の消臭剤組成物は、アルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスの消臭に好適な消臭製品の製造に好適である。また、(1)消臭剤組成物、(2)消臭剤組成物を含む消臭製品の製造に用いられる、消臭剤組成物と、接着剤樹脂と、分散媒とを含む加工液、又は、(3)消臭剤組成物と、分散媒とを含むスラリーの、収容又は製造に用いられる、容器、撹拌装置の撹拌羽根又は撹拌軸等が金属製である場合に、腐食を抑制することができる。従って、腐食に起因する不純物の混入が抑制された消臭製品を効率よく製造することができる。特に、キレート剤の含有量が、アミノグアニジン塩の含有量を100質量部としたときに、1~50質量部である場合には、上記効果が顕著となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスのアミノグアニジン塩に対する化学吸着作用を利用したアルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物であり、アミノグアニジン塩と、キレート剤とを含有する組成物であって、他の成分(後述)を更に含有してもよい固体組成物である。尚、アルデヒド系ガスとは、アルデヒド基を含む化合物に由来するガスを意味し、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブロパナール、ブタナール、ノネナール等に由来するガスである。また、ケトン系ガスとは、カルボニル基を含む化合物に由来するガスを意味し、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン等に由来するガスである。本発明の消臭剤組成物は、特にアルデヒド系ガスに対して好適であるが、ケトン系ガスに対しても消臭効果を有する消臭剤組成物である。
【0012】
上記アミノグアニジン塩としては、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジン又はトリアミノグアニジンの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
上記モノアミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩、アミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
上記ジアミノグアニジン塩としては、ジアミノグアニジン塩酸塩、ジアミノグアニジン硫酸塩、ジアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
また、上記トリアミノグアニジン塩としては、トリアミノグアニジン塩酸塩、トリアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
上記アミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩が好ましい。
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含まれるアミノグアニジン塩は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0013】
上記キレート剤としては、金属イオンに配位してキレート化合物を形成するもの(多座配位子)であれば、特に限定されない。本発明の実施形態においては、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、タングステン、マンガン、モリブデン、亜鉛等の重金属イオンに配位してキレート化合物を形成するものが好ましく、無機リン酸、カルボン酸又はこれらの塩を用いることができる。これらの化合物は、組み合わせて用いてもよい。上記キレート剤が無機リン酸を含む場合には、消臭剤組成物の変色がなく、より好ましい。
【0014】
上記無機リン酸としては、リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等が挙げられる。また、無機リン酸の塩は、これらの無機リン酸と、1価又は2価の金属との塩であり、好ましくは、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩である。上記無機リン酸塩としては、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
上記カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸;ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸等のアミノカルボン酸;ジヒドロキシエチルグリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、トリエタノールアミンL-グルタミン酸二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミノ四酢酸等のヒドロキシアミノカルボン酸;クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸としては、ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸が好ましい。
また、カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等とすることができる。
ヒドロキシカルボン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ナトリウムグリコヘプトネート等が挙げられる。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸・3ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム、ジエチレントリアミノ五酢酸・5ナトリウム等が挙げられる。ヒドロキシアミノカルボン酸塩としては、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸・2ナトリウム、トリエタノールアミンL-グルタミン酸二酢酸・4ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミノ四酢酸・4ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含まれるキレート剤の含有量は、特に限定されない。上記キレート剤の含有割合は、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果を維持しつつ、本発明の効果が十分に得られることから、上記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは1~50質量部、より好ましくは5~45質量部、更に好ましくは10~40質量部である。
【0017】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物において、アミノグアニジン塩及びキレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されていることが好ましく、少なくともアミノグアニジン塩が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(1)」という)を含む組成物であることが特に好ましい。
【0018】
上記無機担体は、水と反応せず、且つ、水に溶解しないものであれば、特に限定されない。上記無機担体としては、ケイ素化合物、4価金属リン酸塩化合物等が挙げられる。これらのうち、ケイ素化合物が好ましい。
【0019】
上記ケイ素化合物としては、ケイ酸塩化合物、ゼオライト、シリカ、シリカゲル等が挙げられる。
上記ケイ酸塩化合物としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
上記ケイ酸アルミニウムは、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物であり、上記ケイ酸マグネシウムは、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。
Al2O3・mSiO2・nH2O (1)
(式中、mは6以上の数であり、nは1以上の数である。)
MgO・qSiO2・nH2O (2)
(式中、qは1以上の数であり、nは0.1以上の数である。)
【0020】
上記ケイ酸アルミニウムを表す一般式(1)において、mは、好ましくは6~50、より好ましくは8~15である。また、nは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。
上記ケイ酸マグネシウムを表す一般式(2)において、qは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。また、nは、好ましくは0.1~20、より好ましくは1~8である。
【0021】
上記ゼオライトとしては、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM-5等の構造を有するものを用いることができる。これらは、天然物及び合成物のいずれでもよい。
【0022】
上記4価金属リン酸塩化合物としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ等が挙げられる。これらの化合物は、結晶性及び非晶性のいずれでもよい。
【0023】
上記無機担体の性状及びサイズは、特に限定されない。アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、BET比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上であり、平均粒径は、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.02~20μmである。
【0024】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物の好ましい態様である、アミノグアニジン塩が無機担体に担持されてなる複合体(1)を含む組成物において、この複合体(1)を構成するアミノグアニジン塩及び無機担体の含有割合は、特に限定されない。この複合体(1)の安定性及びアルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、アミノグアニジン塩の含有割合は、無機担体の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは5~500質量部、より好ましくは11~200質量部、更に好ましくは20~100質量部である。
【0025】
上記複合体(1)は、従来、公知の方法により得られたものとすることができる。例えば、アミノグアニジン塩の粉末と、無機担体の粉末とを混合する方法、アミノグアニジン塩の溶液と、無機担体の粉末とを混合した後、媒体を除去する方法等とすることができる。尚、ここに挙げた方法に限るものではない。
【0026】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、キレート剤が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(2)」という)を含む組成物であってもよい。この複合体(2)は、上記複合体(1)と同様にして製造することができる。
【0027】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、アミノグアニジン塩及びキレート剤の両方が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(3)」という)を含む組成物であってもよい。この複合体(3)において、担持されたアミノグアニジン塩及びキレート剤は接触状態であってもよいし、非接触状態であってもよい。
【0028】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスを化学吸着する他の消臭剤(ヒドラジド化合物、アミノ基を有するアゾール化合物等);硫黄系ガス、塩基性ガス、有機酸性ガス等を化学吸着する固体の消臭剤等が挙げられる。また、上記複合体(1)、複合体(2)及び複合体(3)は、従来、公知の解砕・粉砕により、粒子サイズが調整されたものであってもよい。解砕・粉砕の具体的な方法としては、ジェットミル粉砕、ACM粉砕、ピンミル粉砕等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0029】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含有されるアミノグアニジン塩の含有割合は、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、組成物の全体に対して、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、更に好ましくは20~55質量%である。
【0030】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物を容器に貯蔵する場合、容器の材質は、通常、樹脂又は金属である。容器が金属製である場合には、消臭剤組成物が貯蔵されても内壁面を腐食させることはなく、その後、好適に取り扱うことができる。
【0031】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、これを基材に添着させて消臭製品とするために、好適な製造原料である。このような消臭製品は、通常、本発明の消臭剤組成物と、分散媒とを含有するスラリー(接着剤樹脂を含まない分散液)、又は、本発明の消臭剤組成物と、接着剤樹脂と、分散媒とを含有する加工液を、基材に塗工した後、乾燥させることにより製造することができる。
【0032】
上記のスラリー又は加工液の調製に用いる分散媒は、水、有機溶剤又はこれらの混合液のいずれでもよい。
上記のスラリー又は加工液は、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、芳香剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防腐剤等の添加剤を含有することができる。
【0033】
上記加工液に含まれる接着剤樹脂は、特に限定されず、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂(塩素化ポリオレフィン等)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体等を用いることができる。
【0034】
上記加工液に含まれる接着剤樹脂の含有割合は、本発明の消臭剤組成物を100質量部とした場合に、通常、10~300質量部である。
【0035】
上記のスラリー又は加工液は、好ましくは分散媒として水を主とする水系混合液であり、この水系混合液のpHは特に限定されないが、安定性の観点から、好ましくはpH1~7である。上記水系混合液からなるスラリー又は加工液を製造する際には、通常、原料を収容し撹拌する容器、撹拌羽根等を備える装置が用いられる。これらの設備が金属製である場合には、スラリー又は加工液のpHが上記範囲にあっても、その製造後において腐食が抑制される。従って、同じ設備を用いて、連続的に製造を行う場合には、スラリー又は加工液の組成が安定に維持されるため、大量生産を効率よく行うことができる。また、加工液を使用して消臭製品を製造する場合にも、消臭製品の製造装置における腐食が抑制される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0037】
1.消臭剤組成物の原料
消臭剤組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
1-1.アミノグアニジン塩
(1)アミノグアニジン塩酸塩
(2)アミノグアニジン硫酸塩
これらは、いずれも試薬の粉末である。
【0038】
1-2.キレート剤
(1)ヘキサメタリン酸ナトリウム
(2)リン酸二水素ナトリウム
(3)コハク酸
(4)クエン酸
(5)エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム
これらは、いずれも試薬の粉末である。
【0039】
1-3.無機担体
(1)シリカ粒子
平均粒子径は5μmであり、BET比表面積は、700m2/gである。
(2)ケイ酸アルミニウム粒子
Al2O3・9SiO2・H2Oで表される粒子であり、平均粒子径は10μmであり、BET比表面積は600m2/gである。
(3)ゼオライト粒子
ZSM-5型ゼオライト粒子であり、平均粒子径は6μmであり、BET比表面積は350m2/gである。
【0040】
2.消臭剤組成物の製造及び評価
表1に示す構成の消臭剤組成物(D1)~(D19)を製造した。尚、組成物の種類により、予め、調製した水溶液を用いて製造した場合がある。
【0041】
実施例1
アミノグアニジン塩酸塩の粉末100部と、ヘキサメタリン酸ナトリウムの粉末11.1部とを混合し、消臭剤組成物(D1)を製造した。
【0042】
実施例2
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液13.2部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液1.3部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D2)を製造した。
【0043】
実施例3
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液64.1部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液6.4部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D3)を製造した。
【0044】
実施例4
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液182部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液22.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D4)を製造した。
【0045】
実施例5
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液875部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液125部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D5)を製造した。
【0046】
実施例6
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液28.7部と、40%リン酸二水素ナトリウム水溶液8.6部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D6)を製造した。
【0047】
実施例7
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液112部と、8%コハク酸水溶液56.0部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D7)を製造した。
【0048】
実施例8
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液266部と、40%クエン酸水溶液16.0部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D8)を製造した。
【0049】
実施例9
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液13.4部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液5.4部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D9)を製造した。
【0050】
実施例10
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液28.4部と、40%リン酸二水素ナトリウム水溶液5.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D10)を製造した。
【0051】
実施例11
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液64.1部と、8%コハク酸水溶液32.1部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D11)を製造した。
【0052】
実施例12
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液112部と、40%クエン酸水溶液11.2部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D12)を製造した。
【0053】
実施例13
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液175部と、10%EDTA・2ナトリウム水溶液52.6部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D13)を製造した。
【0054】
実施例14
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液28.1部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液2.8部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D14)を製造した。
【0055】
実施例15
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液66.7部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液16.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D15)を製造した。
【0056】
実施例16
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液125部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液41.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D16)を製造した。
【0057】
比較例1
アミノグアニジン塩酸塩の粉末のみを消臭剤組成物(D17)とした。
【0058】
比較例2
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液62.5部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D18)を製造した。
【0059】
比較例3
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液42.9部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D19)を製造した。
【0060】
得られた各組成物に対して、以下の評価を行い、その結果を表1に併記した。
(A)消臭容量
(A-1)アセトアルデヒドガスの消臭容量
消臭剤組成物0.01gを、内容積5リットルのジーエルサイエンス社製「スマートバッグPA」(商品名)に収容した。次いで、この樹脂製袋に750ppmのアセトアルデヒドガスを3リットル注入し、密封して、室温で静置した。24時間経過後、樹脂製袋の中に残存するアセトアルデヒドの濃度を、ガステック社製ガス検知管を用いて測定した。そして、下記式(1)により消臭容量(mL/g)を得た。
消臭容量(mL/g)=〔(C0-C)×V/W〕/1000 (1)
(式中、C0は、注入したアセトアルデヒドガス初期濃度[ppm]であり、Cは、24時間経過後の樹脂製袋の中に残存するアセトアルデヒドガス濃度[ppm]であり、Vは、アセトアルデヒドガス注入量[L]であり、Wは、消臭剤組成物量[g]である。)
(A-2)ジアセチルガスの消臭容量
750ppmのアセトアルデヒドガスの代わりに300ppmのジアセチルガスを用いた以外は上記(A-1)と同様にしてジアセチルガスの消臭容量を求めた。
(A-3)アセトンガスの消臭容量
750ppmのアセトアルデヒドガスの代わりに300ppmのアセトンガスを用いた以外は上記(A-1)と同様にしてジアセチルガスの消臭容量を求めた。
【0061】
(B)金属腐食性
消臭剤組成物とイオン交換水とを用いて、消臭剤組成物を10%含むスラリーを調製した。次いで、SUS304からなる箔又はアルミニウム箔(いずれも、サイズは100mm×100mm×0.01mm)により作製された角型容器(底面積:900mm2)に、スラリー2mLを入れ、130℃で1時間加熱乾燥した。その後、角型容器内の乾燥残渣を除去した。角型容器へのスラリーの収容から乾燥残渣を除去するまでの操作を、合計8回繰り返した後、容器の内表面を目視観察し、容器の腐食性を、下記基準で判定した。
◎:繰り返し操作8回後も錆びが見られなかった。
〇:繰り返し操作3回目以降に錆びが見られ、8回後も程度の軽い錆びであった。
×:繰り返し操作1回目で錆びが見られ、8回後は著しい錆びが見られた。
【0062】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の消臭剤組成物は、消臭濾材、消臭紙、消臭フィルム等の製造に好適であり、また、製品自身からアルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスを発生する材料、例えば、合板、集成材、フローリング材、パーティクルボード、断熱材等の建材、フロア-カーペット、消音パット、クッション材、カーシート、ヘッドレスト、アームレスト、トアトリム、成形天井、サンバイザー、リアパッケージトレイ、インストルメントパネル、ダッシュインシュレーサー等を扱う現場において、これらの製品に含有させることができる。