(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車載用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240416BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240416BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240416BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
H02H3/087
H02H3/16 A
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2021019692
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 章生
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-048881(JP,A)
【文献】特開2016-131328(JP,A)
【文献】特開平09-275632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02H 3/087
H02H 3/16
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部から電力が供給される経路である電力路と、前記電力路から分岐する経路である複数の分岐路と、を有する車載システムに適用される車載用制御装置であって、
複数のリレーと、
複数の前記リレーを制御する制御部と、
各々の前記分岐路を流れる各電流の値を検知する電流検知部と、
を備え、
各々の前記リレーは、各々の前記分岐路の通電を許可する許可状態と遮断する遮断状態とに切り替わり、
前記制御部は、予め定められた異常状態が検知された場合に、前記電流検知部の検知結果に基づき複数の前記分岐路のうちの電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替え
、
更に、前記制御部は、前記電流値を時間微分した値が最も大きい前記分岐路を前記特定分岐路として、前記特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替え、
更に、前記制御部は、
前記異常状態が発生した場合に異常信号を出力する判定回路と、
各々の前記分岐路の前記電流検知部が検知した各電流値をそれぞれ時間微分する微分回路と、
各々の前記微分回路の算出結果に基づき、各電流値をそれぞれ時間微分して得られる各微分値の中で最大微分値を生じさせた前記分岐路を示す選択信号を出力する選択回路と、
前記異常信号が入力された場合に、前記選択信号が示す前記分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える遮断回路と、を有する
車載用制御装置。
【請求項2】
前記電力路又は前記分岐路の電圧を検知する電圧検知部を備え、
前記制御部は、前記電圧検知部が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した場合に、前記特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える請求項1に記載の車載用制御装置。
【請求項3】
前記電圧検知部は、前記電力路の電圧を検知する請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電源部からの電力供給状況に基づいて、前記異常状態を判定するための閾値を決定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車載用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車載用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車用電源供給装置が開示されている。この自動車用電源供給装置は、主電源からの電力を主電源分配装置によって複数の電装品に分配する。主電源分配装置と各電装品との間には、部位別電源分配装置が設けられている。部位別電源分配装置の各々は、ヒューズを備えた主電源分配線を介して主電源分配装置に接続されている。このため、例えば地絡等の異常状態が発生して主電源分配線に大電流が流れると、ヒューズによって主電源分配線が溶断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主電源分配装置から分岐して各々の電装品に接続される分岐路において異常状態が生じた場合、異常状態が生じていない分岐路に影響が及ばないように、即座に分離することが望ましい。しかし、ヒューズによって溶断させる場合、溶断までに時間を要することが懸念される。
【0005】
そこで、本開示では、異常状態が発生した可能性が高い分岐路を即座に分離することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用制御装置は、
電源部と、前記電源部から電力が供給される経路である電力路と、前記電力路から分岐する経路である複数の分岐路と、を有する車載システムに適用される車載用制御装置であって、
複数のリレーと、
複数の前記リレーを制御する制御部と、
各々の前記分岐路を流れる各電流の値を検知する電流検知部と、
を備え、
各々の前記リレーは、各々の前記分岐路の通電を許可する許可状態と遮断する遮断状態とに切り替わり、
前記制御部は、予め定められた異常状態が検知された場合に、前記電流検知部の検知結果に基づき複数の前記分岐路のうちの電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、異常状態が発生した可能性が高い分岐路を即座に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車載用制御装置が適用される車載システムの構成を概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、異常状態が発生したときの車載システムを概念的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕電源部と、前記電源部から電力が供給される経路である電力路と、前記電力路から分岐する経路である複数の分岐路と、を有する車載システムに適用される車載用制御装置であって、複数のリレーと、複数の前記リレーを制御する制御部と、各々の前記分岐路を流れる各電流の値を検知する電流検知部と、を備え、各々の前記リレーは、各々の前記分岐路の通電を許可する許可状態と遮断する遮断状態とに切り替わり、前記制御部は、予め定められた異常状態が検知された場合に、前記電流検知部の検知結果に基づき複数の前記分岐路のうちの電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える車載用制御装置。
【0011】
この車載用制御装置は、異常状態が検知された場合に、電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路の通電を遮断することができる。したがって、電流が急上昇した可能性が高い特定分岐路を他の分岐路から即座に分離することができる。
【0012】
〔2〕前記電力路又は前記分岐路の電圧を検知する電圧検知部を備え、前記制御部は、前記電圧検知部が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した場合に、前記特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える〔1〕に記載の車載用制御装置。
【0013】
この構成によれば、いずれかの分岐路において地絡が生じた場合に、地絡が生じた可能性が高い分岐路を他の分岐路から即座に分離することができる。
【0014】
〔3〕前記電圧検知部は、前記電力路の電圧を検知する〔2〕に記載の車載用制御装置。
【0015】
この構成によれば、いずれかの分岐路が断線した場合であっても、断線していない分岐路の電圧を検知することができる。
【0016】
〔4〕前記制御部は、前記電流値を時間微分した値が最も大きい前記分岐路を前記特定分岐路として、前記特定分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車載用制御装置。
【0017】
この構成によれば、電流値を時間微分した値を比較することで電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路を特定することができ、特定分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替えることができる。
【0018】
〔5〕前記制御部は、前記異常状態が発生した場合に異常信号を出力する判定回路と、各々の前記分岐路の前記電流検知部が検知した各電流値をそれぞれ時間微分する微分回路と、各々の前記微分回路の算出結果に基づき、各電流値をそれぞれ時間微分して得られる各微分値の中で最大微分値を生じさせた前記分岐路を示す選択信号を出力する選択回路と、前記異常信号が入力された場合に、前記選択信号が示す前記分岐路に設けられた前記リレーを前記遮断状態に切り替える遮断回路と、を有する〔4〕に記載の車載用制御装置。
【0019】
この構成によれば、特定分岐路を特定してリレーを遮断状態に切り替えるまでの処理が簡素化されるため、異常状態が発生した場合に特定分岐路に設けられたリレーをより迅速に遮断状態に切り替えることができる。
【0020】
〔6〕前記制御部は、前記電源部からの電力供給状況に基づいて、前記異常状態を判定するための閾値を決定する〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の車載用制御装置。
【0021】
この構成によれば、電源部からの電力供給状況によって異常状態を判定するための閾値が決定されるため、異常状態の誤判定を抑制することができる。
【0022】
<第1実施形態>
図1で示す車載システム100は、車両に搭載されるシステムである。車載システム100は、電源部90と、複数の負荷91A,91B,91C,91Dと、電力路80と、複数の分岐路81A,81B,81C,81Dと、車載用制御装置1と、を備える。
【0023】
電源部90は、例えば鉛バッテリ等のバッテリ、DCDCコンバータ、オルタネータなどである。電源部90は、電力路80に電気的に接続されている。電源部90に基づく電力は、電力路80に供給される。
【0024】
電力路80及び分岐路81A,81B,81C,81Dは、電線によって構成され、インダクタンス成分を有する。電力路80は、電源部90から電力が供給される経路である。電力路80には、電源部90が電気的に接続されている。分岐路81A,81B,81C,81Dは、電力路80から分岐する経路である。各々の分岐路81A,81B,81C,81Dは、各々の負荷91A,91B,91C,91Dに電気的に接続されている。
【0025】
負荷91A,91B,91C,91Dは、例えば低圧負荷であり、具体的には電動パワーステアリングシステム、電動パーキングブレーキ、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置、ミリ波レーダやステレオカメラなどのセンシングシステム、速度制御システムや車間制御システムなどの自動運転用のシステムなどである。各々の負荷91A,91B,91C,91Dには、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dが電気的に接続されている。
【0026】
車載用制御装置1は、車載システム100に適用される装置である。車載用制御装置1は、複数のリレー10A,10B,10C,10Dと、複数の電流検知部11A,11B,11C,11Dと、制御部13と、を備える。
【0027】
各々のリレー10A,10B,10C,10Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dに設けられる。各々のリレー10A,10B,10C,10Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dの通電を許可する許可状態と遮断する遮断状態とに切り替わる。リレー10A,10B,10C,10Dは、MOSFET等の半導体リレーであってもよいし、機械式リレーであってもよい。リレー10A,10B,10C,10Dは、オン状態のときに許可状態となり、オフ状態のときに遮断状態となる。遮断状態は、少なくとも電源部90側から負荷91A,91B,91C,91D側の通電を遮断する状態であればよい。本実施形態では、遮断状態は、双方向の通電を遮断する状態、つまり、電源部90側から負荷91A,91B,91C,91D側の通電を遮断し、且つ負荷91A,91B,91C,91D側から電源部90側の通電を遮断する状態である。
【0028】
電流検知部11A,11B,11C,11Dは、例えば公知の電流検知回路であり、分岐路81A,81B,81C,81Dに設けられる。電流検知部11A,11B,11C,11Dは、リレー10A,10B,10C,10Dよりも負荷91A,91B,91C,91D側に設けられる。各々の電流検知部11A,11B,11C,11Dは、例えば分岐路81A,81B,81C,81Dに設けられるシャント抵抗と、シャント抵抗の両端電圧を増幅して出力する差動増幅器とによって構成されている。各々の電流検知部11A,11B,11C,11Dは、対応する分岐路81A,81B,81C,81Dを流れる各電流の値を検知し、検知した電流の値を示す電流値信号を出力する。電流値信号は、制御部13に入力される。
【0029】
電圧検知部12は、例えば公知の電圧検知回路であり、電力路80の電圧を検知する機能を有する。電圧検知部12は、本実施形態では、電力路80に電気的に接続された位置の電圧を検知することで電力路80の電圧を検知するが、電力路80そのものの電圧を検知してもよい。電圧検知部12は、電力路80の電圧値を示す電圧値信号(例えば電力路80の電圧値、又は電力路80の電圧値を分圧回路によって分圧した値等を示す信号)を出力する。電圧値信号は、制御部13に入力される。
【0030】
制御部13は、マイクロコンピュータを備えて構成され、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部13には、電流値信号及び電圧値信号が入力される。制御部13は、リレー10A,10B,10C,10Dの動作を制御し得る。
【0031】
制御部13は、予め定められた異常状態が検知された場合に、電流検知部11A,11B,11C,11Dの検知結果に基づき複数の分岐路81A,81B,81C,81Dのうちの電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える。「異常状態」は、例えば「電力路80又は分岐路81A,81B,81C,81Dの電圧値又は電流値が所定レベルに到達した状態」である。より具体的には、「異常状態」は、「電圧検知部12が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した状態」である。つまり、制御部13は、電圧検知部12が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した場合に、特定分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える。より具体的には、制御部13は、電流値を時間微分した値が最も大きい分岐路を特定分岐路として、特定分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える。
【0032】
閾値電圧は、0Vよりも大きい値である。閾値電圧は、例えば電源部90がバッテリである場合、バッテリの満充電時の出力電圧よりも小さい値であり、電源部90がDCDCコンバータである場合、DCDCコンバータの目標電圧よりも小さい値である。
【0033】
制御部13は、電源部90からの電力供給状況に基づいて、異常状態を判定するための閾値(本実施形態では、閾値電圧)を決定し得る。「電源部90からの電力供給状況」は、例えば車両が走行中であるか否か、電源部90からの電力供給量、電源部90から負荷91A,91B,91C,91D側に流れる電流の値、電源部90からの電力が供給される負荷の数、電源部90からの電力が供給される負荷の種類、始動スイッチがオン状態であるかオフ状態であるかなどである。制御部13は、例えば車両が走行中である場合、相対的に大きい閾値電圧を決定し、車両が走行中でない場合、相対的に小さい閾値電圧を決定する。走行中であるか否かは、例えば車速に基づいて判定される。走行中であるか否かの判定は、制御部13が行ってもよいし、外部のECUが行ってもよい。また、別の例として、制御部13は、電源部90からの電力供給量が相対的に大きい場合に大きい閾値電圧を決定し、相対的に小さい場合に小さい閾値電圧を決定するようにしてもよい。具体的な決定方法としては、例えば電力供給量と閾値電圧を変数とした関数を予め記憶しておき、この関数と電力供給量とに基づいて閾値電圧を決定するようにしてもよい。あるいは、電力供給量と閾値電圧とを対応付けたテーブルを予め記憶しておき、このテーブルと電力供給量とに基づいて閾値電圧を決定するようにしてもよい。なお、電力供給量の算出は、制御部13によって行ってもよいし、外部のECUによって行ってもよい。
【0034】
制御部13は、判定回路21と、複数の微分回路22A,22B,22C,22Dと、選択回路23と、遮断回路24と、閾値決定回路25と、を有する。判定回路21は、異常状態が発生した場合に異常信号を出力する回路である。判定回路21には、電圧値信号が入力される。判定回路21は、電圧値信号に基づいて異常状態が発生したか否かを判定する。具体的には、判定回路21は、電圧検知部12が検知する電圧が閾値電圧よりも大きい場合に異常状態が発生していないと判定し、電圧検知部12が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した場合に異常状態が発生したと判定する。
【0035】
微分回路22A,22B,22C,22Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dの電流検知部11A,11B,11C,11Dが検知した各電流値をそれぞれ時間微分する回路である。各々の微分回路22A,22B,22C,22Dには、各々の電流検知部11A,11B,11C,11Dから出力された電流値信号が入力される。各々の微分回路22A,22B,22C,22Dは、入力された電流値信号に基づき、電流検知部11A,11B,11C,11Dが検知した各電流値をそれぞれ時間微分する。各々の微分回路22A,22B,22C,22Dは、算出結果を出力する。
【0036】
選択回路23は、各々の微分回路22A,22B,22C,22Dの算出結果に基づき、各電流値をそれぞれ時間微分して得られる各微分値の中で最大微分値を生じさせた分岐路を示す選択信号を出力する回路である。選択回路23には、各々の微分回路22A,22B,22C,22Dの算出結果が入力される。選択回路23は、複数の入力端子23A,23B,23C,23Dを有する。各々の入力端子23A,23B,23C,23Dには、各々の微分回路22A,22B,22C,22Dの算出結果が入力される。選択回路23は、入力された算出結果に基づき、最大微分値を生じさせた分岐路を特定し、特定した分岐路を示す選択信号を出力する。選択回路23は、分岐路81Aを示す選択信号を継続的に出力し続ける。選択回路23は、最大微分値を生じさせた分岐路が変化した場合には、変化後の分岐路を示す選択信号に切り替える。
【0037】
遮断回路24は、異常信号が入力された場合に、選択信号が示す分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える回路である。遮断回路24には、異常信号及び選択信号が入力される。異常信号は、異常状態が発生した場合に、判定回路21から遮断回路24に入力される。選択信号は、選択回路23から遮断回路24に継続的に入力される。遮断回路24は、異常信号が入力されたときに入力されている選択信号に基づき、選択信号が示す分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える。
【0038】
閾値決定回路25は、電源部90からの電力供給状況に基づいて、異常状態を判定するための閾値(本実施形態では、閾値電圧)を決定する回路である。閾値決定回路25は、決定した閾値電圧を出力する。上述した判定回路21は、閾値決定回路25によって決定された閾値電圧に基づいて、異常状態の有無を判定する。
【0039】
以下の説明は、制御部13の動作に関する。
図1に示す例では、リレー10A,10B,10C,10Dが全て許可状態となっている。電源部90からの電力は、各負荷91A,91B,91C,91Dに供給されている。電圧検知部12が検知する電圧は、閾値電圧よりも大きい値となっている。このため、判定回路21は、異常状態を検知せず、異常信号を出力しない。したがって、遮断回路24は、リレー10A,10B,10C,10Dのいずれも遮断状態に切り替えない。
【0040】
その後、
図2に示すように、分岐路81Aにおいて地絡等の異常が生じると、電力路80及び分岐路81A,81B,81C,81Dの電圧が低下する。その結果、判定回路21が異常状態を検知すると、判定回路21から遮断回路24に異常信号が入力される。
【0041】
他方、電力路80及び分岐路81A,81B,81C,81Dを流れる電流の値は上昇する。電力路80及び分岐路81A,81B,81C,81Dは、インダクタンス成分を有するため、異常が生じた位置に近いほど電流値の上昇速度が大きくなりやすく、異常が生じた位置から遠いほど電流値の上昇速度が小さくなりやすい。したがって、電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路で異常が生じた可能性が高いと考えられる。言い換えると、各電流値を時間微分して得られる微分値の中で最大微分値を生じさせた分岐路で異常が生じた可能性が高いと考えられる。
【0042】
各々の微分回路22A,22B,22C,22Dは、入力された電流値信号に基づき、電流検知部11A,11B,11C,11Dが検知した各電流値をそれぞれ時間微分し、算出結果を出力する。異常は分岐路81Aで生じているため、分岐路81Aの電流値を時間微分した値、つまり、微分回路22Aの算出結果(微分値)が最大となる。このため、選択回路23は、各々の微分回路22A,22B,22C,22Dから入力された算出結果に基づき、最大微分値を生じさせた分岐路として分岐路81Aを特定する。そして、選択回路23は、分岐路81Aを示す選択信号を出力する。遮断回路24は、異常信号及び分岐路81Aを示す選択信号が入力された場合、分岐路81Aに設けられたリレー10Aを遮断状態に切り替える。これにより、異常が生じた分岐路81Aを、電力路80及び他の分岐路81B,81C,81Dから即座に分離することができる。
【0043】
以下の説明は、第1実施形態の効果に関する。
第1実施形態の車載用制御装置1は、車載システム100に適用される装置である。車載システムは、電源部90と、電源部90から電力が供給される経路である電力路80と、電力路80から分岐する経路である複数の分岐路81A,81B,81C,81Dと、を有する。車載用制御装置1は、複数のリレー10A,10B,10C,10Dと、制御部13と、複数の電流検知部11A,11B,11C,11Dと、を有する。制御部13は、複数のリレー10A,10B,10C,10Dを制御する。複数の電流検知部11A,11B,11C,11Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dを流れる各電流の値を検知する。各々のリレー10A,10B,10C,10Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dの通電を許可する許可状態と遮断する遮断状態とに切り替わる。制御部13は、予め定められた異常状態が検知された場合に、電流検知部11A,11B,11C,11Dの検知結果に基づき複数の分岐路81A,81B,81C,81Dのうちの電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路に設けられたリレー10A,10B,10C,10Dを遮断状態に切り替える。
この構成によれば、異常状態が検知された場合に、電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路の通電を遮断することができる。したがって、電流が急上昇した可能性が高い特定分岐路(
図2に示す例では分岐路81A)を他の分岐路から即座に分離することができる。
【0044】
更に、車載用制御装置1は、電力路80又は分岐路81A,81B,81C,81Dの電圧を検知する電圧検知部12を有する。制御部13は、電圧検知部12が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した場合に、特定分岐路に設けられたリレー10A,10B,10C,10Dを遮断状態に切り替える。
この構成によれば、いずれかの分岐路において地絡が生じた場合に、地絡が生じた可能性が高い分岐路を他の分岐路から即座に分離することができる。
【0045】
更に、電圧検知部12は、電力路80の電圧を検知する。
この構成によれば、いずれかの分岐路が断線した場合であっても、断線していない分岐路の電圧を検知することができる。
【0046】
更に、制御部13は、電流値を時間微分した値が最も大きい分岐路を特定分岐路として、特定分岐路に設けられたリレー10A,10B,10C,10Dを遮断状態に切り替える。
この構成によれば、電流値を時間微分した値を比較することで電流値の上昇速度が最も大きい特定分岐路を特定することができ、特定分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替えることができる。
【0047】
更に、制御部13は、判定回路21と、複数の微分回路22A,22B,22C,22Dと、選択回路23と、遮断回路24と、を有する。判定回路21は、異常状態が発生した場合に異常信号を出力する。微分回路22A,22B,22C,22Dは、各々の分岐路81A,81B,81C,81Dの電流検知部11A,11B,11C,11Dが検知した各電流値をそれぞれ時間微分する。選択回路23は、各々の微分回路22A,22B,22C,22Dの算出結果に基づき、各電流値をそれぞれ時間微分して得られる各微分値の中で最大微分値を生じさせた分岐路81A,81B,81C,81Dを示す選択信号を出力する。遮断回路24は、異常信号が入力された場合に、選択信号が示す分岐路に設けられたリレーを遮断状態に切り替える。
この構成によれば、特定分岐路を特定してリレーを遮断状態に切り替えるまでの処理が簡素化されるため、異常状態が発生した場合に特定分岐路に設けられたリレーをより迅速に遮断状態に切り替えることができる。
【0048】
更に、制御部13は、電源部90からの電力供給状況に基づいて、異常状態を判定するための閾値を決定する。
この構成によれば、電源部90からの電力供給状況によって異常状態を判定するための閾値が決定されるため、異常状態の誤判定を抑制することができる。
【0049】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0050】
上記第1実施形態では、電圧検知部が電力路の電圧を検知する構成としたが、電圧検知部が分岐路の電圧を検知する構成であってもよい。
【0051】
上記第1実施形態では、「異常状態(電力路又は分岐路の電圧値又は電流値が所定レベルに到達した状態)」が「電圧検知部が検知する電圧が閾値電圧以下に低下した状態」である構成としたが、「異常状態」が別の状態である構成であってもよい。例えば、「異常状態」が「複数の電流検知部のうちいずれかの電流検知部が検知する電流の値が閾値電流以上に上昇した状態」である構成であってもよい。あるいは、「異常状態」が「複数の分岐路のうちいずれかの分岐路の電流値の上昇速度(微分値)が閾値速度以上に上昇した状態」である構成であってもよい。
【0052】
上記第1実施形態では、「電流値の上昇速度」が「電流値を時間微分した値」によって特定される構成であったが、別の方法で特定される構成であってもよい。例えば、「単位時間における電流値の差分(変化量)」によって「電流値の上昇速度」が特定される構成であってもよい。
【0053】
上記第1実施形態では、制御部が閾値を決定する構成であるが、予め定められた固定値を閾値とした構成であってもよい。この場合、車載用制御装置は、閾値決定回路を有していなくてもよい。
【0054】
必要に応じて、電力路を流れる電流の値を検知する電流検知部を設けるようにしてもよい。
【0055】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 :車載用制御装置
10A :リレー
10B :リレー
10C :リレー
10D :リレー
11A :電流検知部
11B :電流検知部
11C :電流検知部
11D :電流検知部
12 :電圧検知部
13 :制御部
21 :判定回路
22A :微分回路
22B :微分回路
22C :微分回路
22D :微分回路
23 :選択回路
23A :入力端子
23B :入力端子
23C :入力端子
23D :入力端子
24 :遮断回路
25 :閾値決定回路
80 :電力路
81A :分岐路
81B :分岐路
81C :分岐路
81D :分岐路
90 :電源部
91A :負荷
91B :負荷
91C :負荷
91D :負荷
100 :車載システム