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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A41D13/018
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021039274
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139057
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514462(JP,A)
【文献】中国実用新案第211969700(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062694(US,A1)
【文献】特表2021-521999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者の転倒時に、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、
作動時に前記エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器と、
保護対象者の転倒を検知可能な転倒検知センサを有し、該転倒検知センサからの保護対象者の転倒時の信号を入力して、前記ガス発生器を作動させるように制御する制御装置と、
前記エアバッグ、前記ガス発生器、及び、前記制御装置を保持し、かつ、保護対象者に装着可能な装着具と、
を備えて構成される着用エアバッグ装置であって、
前記装着具が、
保護対象者の保護対象部位を覆うように配置される装着本体部と、
該装着本体部の両端側に配設されて、相互の結合時に、前記装着本体部の保護対象部位を覆う装着状態を維持する取着具と、
を備えて構成され、
前記装着具を保護対象者に装着させた後における前記転倒検知センサからの信号を入力させて前記ガス発生器を作動可能に制御する前記制御装置の制御開始条件として、
前記取着具の結合を含めた人為的な操作を少なくとも1つ、を具備した複数の条件が、設定されるとともに、
複数の前記条件の成立が、それぞれ、前記制御装置に電気的に接続される電気部品のオン信号により、構成されており、
前記制御開始条件の成立のオン信号が、
前記取着具に設けられた取着具スイッチにおける前記取着具の結合に伴うオン信号と、
前記装着具に設けられた収納部位へのスマートフォンの収納時における、前記装着具に配置されたスマートフォン検知センサからの前記スマートフォンの収納を検知したオン信号と、
を具備して構成されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記スマートフォンが、保護対象者の転倒時、所定の発信先に、転倒場所情報を送信可能に、設定されていることを特徴とする請求項に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記制御開始条件の成立のオン信号が、さらに前記装着具に配置された2つの操作ボタンの同時操作時のオン信号を具備して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記制御開始条件の成立のオン信号が、さらに前記取着具の結合完了時の結合部位に結合解除を不能とするように挿入されるとともに、前記取着具スイッチのオン信号の出力用の電気回路を閉成する挿入ピンによるオン信号を具備して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記制御開始条件の成立のオン信号が、さらに前記装着具に配置された生体センサに基づく保護対象者を検知したオン信号を具備して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に装着させて、保護対象者の転倒時に、エアバッグを膨張させ、膨張させたエアバッグにより、保護対象者の保護対象部位を保護する着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、着用したことの確認後、着用した保護対象者(例えば、高齢者)が転倒すると、加速度センサ等の転倒検知センサからの信号により、制御装置が転倒を検知して、ガス発生器を作動させるように制御し、そして、ガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグに流入させ、膨張したエアバッグにより、保護対象者の保護対象部位としての腰部を保護するものがあった(例えば、特許文献1参照)。この着用エアバッグ装置では、着用の確認を、着用時の体温が室温より高いことを検出し、その検出を制御開始条件としており、そして、制御開始条件が成立すれば、制御装置が、制御を開始可能とし、そして、着用した保護対象者が転倒すれば、転倒検知センサからの信号により、制御装置は、ガス発生器を作動させていた。また、着用エアバッグ装置の制御装置の制御開始条件としては、始動スイッチのオン操作と、装着具を保護対象者に装着させた際の保護対象者との接触による押圧スイッチのオン信号の出力により、制御装置が制御を開始するものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/207474号公報
【文献】特表2014-514462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の着用エアバッグ装置では、室温と体温とが同等の場合、制御装置の制御が開始されるか否か不安定である。また、特許文献2に記載の着用エアバッグ装置では、装着途中に、押圧スイッチが保護対象者に接触して押圧されてしまうと、適切に装着されていない状態で、その後の転倒検知センサからの転倒した時と同様な信号が入力されれば、制御装置は、誤作動させるように、ガス発生器を作動させる虞れがあり、特許文献1,2のいずれも、適切に着用された後に、的確に、ガス発生器が作動されることが望ましく、誤作動を抑制する点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するもので、誤作動を抑制して、保護対象者に装着された後に、安定して作動可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、保護対象者の転倒時に、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、
作動時に前記エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器と、
保護対象者の転倒を検知可能な転倒検知センサを有し、該転倒検知センサからの保護対象者の転倒時の信号を入力して、前記ガス発生器を作動させるように制御する制御装置と、
前記エアバッグ、前記ガス発生器、及び、前記制御装置を保持し、かつ、保護対象者に装着可能な装着具と、
を備えて構成される着用エアバッグ装置であって、
前記装着具が、
保護対象者の保護対象部位を覆うように配置される装着本体部と、
該装着本体部の両端側に配設されて、相互の結合時に、前記装着本体部の保護対象部位を覆う装着状態を維持する取着具と、
を備えて構成され、
前記装着具を保護対象者に装着させた後における前記転倒検知センサからの信号を入力させて前記ガス発生器を作動可能に制御する前記制御装置の制御開始条件として、
前記取着具の結合を含めた人為的な操作を少なくとも1つ、を具備した複数の条件が、設定されるとともに、
複数の前記条件の成立が、それぞれ、前記制御装置に電気的に接続される電気部品のオン信号により、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、装着具における取着具の結合によるオン信号と、他の電気部品のオン信号と、の複数の制御開始条件により、制御装置が、転倒検知センサからの信号を入力させてガス発生器を作動可能な制御を開始する。そして、制御開始条件の一つが、装着具における取着具の結合によるオン信号であって、このオン信号の出力時には、人為的な操作に伴なって、装着具が、確実に、保護対象者に装着された状態となる。さらに、人為的な操作若しくは装着時の付随的な動作に伴なう他の電気部品のオン信号があれば、単に、装着具を保護対象者に装着しただけでなく、一層、安定して、着用エアバッグ装置が保護対象者に装着されたことを判定できて、制御装置は、制御を開始し、ついで、転倒時の転倒検知センサからの信号を入力すれば、ガス発生器を作動させるように制御し、エアバッグを膨張させて、膨張したエアバッグにより、好適に、保護対象者の保護対象部位を保護できる。そして、装着具における取着具が、結合されていなければ、オン信号を出力しないことから、制御装置は、制御を開始せず、さらに、人為的な操作若しくは装着時の付随的な動作に伴なう他の電気部品のオン信号もなければ、制御装置は、制御を開始しないことから、すなわち、取着具の結合完了を含めた多重のチェックを経た後でないと、制御装置は制御を開始しないことから、ガス発生器の誤作動が的確に抑制される。
【0008】
したがって、本発明に係る着用エアバッグ装置では、誤作動を抑制して、保護対象者に装着された後に、安定して作動することができる。
【0009】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記制御開始条件の成立のオン信号が、
前記取着具に設けられた取着具スイッチにおける前記取着具の結合に伴なうオン信号と、
前記装着具に配置された2つの操作ボタンの同時操作時のオン信号と、
を具備して構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、少なくとも、取着具を結合させて、取着具に設けられた取着具スイッチをオンさせ、さらに、装着具に設けられた二つの操作ボタンを同時に操作しなければ、制御装置は、制御を開始しないことから、単に、装着具を装着し、そして、1つの操作ボタンを押圧するだけでなく、制御を開始させる意思を持って、二つの操作ボタンを同時に操作する人為的な操作が必要となることから、一層、確実に、誤作動を抑制することがでできる。
【0011】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記制御開始条件の成立のオン信号が、
前記取着具に設けられた取着具スイッチにおける前記取着具の結合に伴なうオン信号と、
前記取着具の結合完了時の結合部位に、結合解除を不能とするように、挿入されるとともに、前記取着具スイッチのオン信号の出力用の電気回路を閉成する挿入ピンによるオン信号と、
を具備して構成されていてもよい。
【0012】
このような構成では、少なくとも、取着具を結合させて、取着具スイッチをオンさせ、さらに、取着具の結合部位に、挿入ピンを挿入させなければ、制御装置は、制御を開始しないことから、単に、装着具を装着するだけでなく、制御を開始させる意思を持って、挿入ピンを取着具の結合部位に挿入させる人為的な操作を必要としていることから、一層、確実に、誤作動を抑制することができる。また、挿入ピンを引き抜かなければ、取着具の結合状態を解除できないことから、不用意に、装着具を保護対象者から取り外すことが防止される。
【0013】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記制御開始条件の成立のオン信号が、
前記取着具に設けられた取着具スイッチにおける前記取着具の結合に伴なうオン信号と、
前記装着具に設けられた収納部位へのスマートフォンの収納時における、前記装着具に配置されたスマートフォン検知センサからの前記スマートフォンの収納を検知したオン信号と、
を具備して構成されていてもよい。
【0014】
このような構成では、少なくとも、取着具を結合させて、取着具スイッチをオンさせ、さらに、装着具の収納部位にスマートフォンを収納しなければ、制御装置は、制御を開始しないことから、単に、装着具を装着するだけでなく、制御を開始させる意思を持って、スマートフォンを収納部位に収納する人為的な操作を必要とすることから、より確実に、誤作動を抑制することがでできる。
【0015】
この場合、前記スマートフォンが、保護対象者の転倒時、所定の発信先(例えば、家族等)に、転倒場所を送信可能に、設定されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、転倒したことを発信先が受信できて、転倒後の保護対象者の手当て等に便利となる。
【0017】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記制御開始条件の成立のオン信号が、
前記取着具に設けられた取着具スイッチにおける前記取着具の結合に伴なうオン信号と、
前記装着具に配置された生体センサに基づく保護対象者を検知したオン信号と、
を具備して構成されていてもよい。
【0018】
このような構成では、装着具における取着具が、結合されていなければ、オン信号を出力しないことから、制御装置は、制御を開始せず、さらにその際、少なくとも、保護対象者である人体に装着していなければ、装着時の付随的な動作に伴なってオン信号を出力する電気部品としての生体センサが、オン信号を出力しない。すなわち、制御装置は、少なくとも、装着具を確実に保護対象者に装着し、そして、取着具の結合を完了させなければ、制御を開始しないことから、例えば、人に装着させずに、取着具を結合せただけでは、制御装置は、制御を開始しないことから、ガス発生器の誤作動が抑制される。
【0019】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記制御装置の駆動用電源が、前記着用エアバッグ装置を収納可能な収納具に設けられた充電器から充電可能な充電池、から構成されていてもよい。
【0020】
このような構成では、着用エアバッグ装置を所定の収納具に収納して、充電器を利用すれば、制御装置の駆動用電源の充電池が充電されることから、使い勝手がよい。
【0021】
この場合、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記取着具の相互の結合部位に、それぞれ、前記充電池に電気的に導通して、前記充電器に接合可能な接続口部が、配設されていれば、収納具への収納時、取着具の結合部位を構成する各接続口部を、相互に結合させずに、充電器側の対応する充電口に接合させれば、制御装置の制御開始条件の一つである取着具の結合を成立させずに、制御装置の駆動用電源の充電池が充電されることから、一層、使い勝手が良好となる。
【0022】
勿論、充電池の充電は、充電器の所定の充電口へ接合させること無く、非接触式の充電器から充電させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略正面図と概略背面図である。
図3】第1実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開させた状態でのエアバッグの膨張時の概略背面図である。
図4】第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略断面図であり、図3のIV-IV部位に対応する。
図5】第1実施形態の着用エアバッグ装置の取着具の結合状態を説明する正面図である。
図6】第1実施形態の着用エアバッグ装置の取着具の結合状態を説明する断面図である。
図7】第1実施形態の着用エアバッグ装置の構成部品のブロック図である。
図8】第1実施形態の制御装置が行う制御開始処理のフローチャートである。
図9】第1実施形態の制御装置が行う通常作動処理のフローチャートである。
図10】第2実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図11】第2実施形態の着用エアバッグ装置の取着具の結合状態と挿入ピンの挿入状態を説明する正面図である。
図12】第2実施形態の着用エアバッグ装置の取着具の結合状態と挿入ピンの挿入状態を説明する断面図である。
図13】第2実施形態の着用エアバッグ装置の構成部品のブロック図である。
図14】第3実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図15】第3実施形態に使用する取着具を説明する図である。
図16】第3実施形態の着用エアバッグ装置の構成部品のブロック図である。
図17】第3実施形態の制御装置が行う制御開始処理のフローチャートである。
図18】第3実施形態の制御装置が行う通常作動処理のフローチャートである。
図19】第4実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図20】第4実施形態の着用エアバッグ装置の構成部品のブロック図である。
図21】第4実施形態の制御装置が行う制御開始処理のフローチャートである。
図22】着用エアバッグ装置に使用する駆動用電源を構成する充電池の充電器を説明する平面図である。
図23】取着具の一方の結合部位(係合凸部)側と対応する充電口との接合状態を説明する図である。
図24】取着具の他方の結合部位(係合凹部)側と対応する充電口との接合状態を説明する図である。
図25】着用エアバッグ装置に使用する駆動用電源を構成する充電池の他の充電器を説明する平面図である。
図26図25のXXVI-XXVI部位の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、図1~4,7に示すように、保護対象者(例えば、高齢者)1の転倒時に、腰部2の側面2aにおける大腿骨転子部3(L,R)を保護対象部位7として保護するように、エアバッグ50の保護膨張部52(L,R)を膨張させるものである。
【0025】
第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、エアバッグ50と、作動時にエアバッグ50に膨張用ガスGを供給するガス発生器40と、保護対象者1の転倒を検知可能な転倒検知センサ62を有し、転倒検知センサ62からの保護対象者1の転倒時の信号を入力して、ガス発生器40を作動させるように制御する制御装置60と、エアバッグ50、ガス発生器40、及び、制御装置60を保持し、かつ、保護対象者1に装着可能な装着具11と、を備えて構成されている。
【0026】
ガス発生器40は、図4に示すように、内部に圧縮された二酸化炭素等からなる膨張用ガスGを貯留した略円柱状の本体部40aと、本体部40aの先端の小径の略円柱状のガス吐出部40bと、を備えて構成され、ガス吐出部40bには、膨張用ガスGを吐出するガス吐出口40cが配設されている。ガス発生器40は、保護対象者1の転倒を検知した制御装置60の制御本体部61(図7参照)からの作動信号を入力して、作動され、本体部40a内に貯留した膨張用ガスGをガス吐出部40bのガス吐出口40cから吐出する構成としている。ガス発生器40は、エアバッグ50の後述する流入口部56に挿入されて、クランプ43,43を利用して、流入口部56と連結されている。
【0027】
エアバッグ50は、可撓性を有したポリエステル等の織布から袋状に形成されており、膨張完了形状として、左右の略長方形板状の本体膨張部51(L,R)と、左右の本体膨張部51(L,R)の上端側を相互に連通させる帯状の連通部55と、を備えた形状としている(図3参照)。左右の本体膨張部51(L,R)は、保護対象者1の腰部2の左右の側面2a(L,R)を覆うように配設され、上縁側を、連通部55と連なる縁側膨張部53(L,R)とし、下部側を、保護対象者1の保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆って保護可能な保護膨張部52(L,R)としている。エアバッグ50は、連通部55に膨張用ガスGを流入させる筒状の流入口部56を配設させており、流入口部56は、ガス発生器40のガス吐出部40b側から本体部40aを挿入させて、取付具としてのクランプ43で挟持されて、ガス発生器40と連結される。なお、クランプ43,43は、後述する取付座15に取り付けられる取付板42から延びている。
【0028】
連通部55の部位は、装着具11を利用して、エアバッグ50が保護対象者1に装着される際、保護対象者1の腰部2の後面2b側に配設され、左右の本体膨張部51(L,R)は、腰部2の後面2bから左右の側面2a(L,R)側を覆うように、配設されることとなる。
【0029】
装着具11は、装着本体部として腰ベルト12と、取着具としてのバックル17と、を備えて構成されている。腰ベルト12は、可撓性を有したポリエステル等の織布からなり、腰部2を包むベルト形状として構成されている。腰ベルト12は、折り畳んだエアバッグ50を保持して収納する収納部13と、収納部13の左右両側から突出する帯状の端部12a(L,R)と、を備えて構成されている。
【0030】
収納部13は、保護対象者1側の内側壁13aと保護対象者1から離れた側の外側壁13bとを備えた袋状として(図4参照)、下縁側に、膨張時のエアバッグ50の保護膨張部52(L,R)を突出させる挿通孔14を配設させている。また、収納部13の左右方向の中央付近は、ガス発生器40や制御装置60の取付座15としており、取付座15には、取付ボルト47を挿通させる取付孔15aが配設されている。そして、取付座15には、ガス発生器40と制御装置60とを保持する取付板42が、取付ボルト47、ナット(袋ナット)48、及び、当板45、を利用して取り付けられている。
【0031】
なお、エアバッグ50は、上縁50a側の複数個所を収納部13の内側壁13aに対して、縫合等により結合されている。
【0032】
そして、腰ベルト12の両側の帯状端部12a(L,R)には、端部12a(L,R)相互を結合可能な取着具としてのバックル17を配設させている。
【0033】
バックル17は、図5,6に示すように、合成樹脂製として、解除可能に相互に結合されるファスナとしての係合凸部18と係合凹部23とから構成され、帯状端部12aLに係合凸部18が取り付けられ、帯状端部12aRに係合凹部23が取り付けられている。
【0034】
係合凸部18は、帯状端部12aLに連結される元部19から中央軸部20を突設させるとともに、中央軸部20の上下に、係止爪部21を突設させている。係止爪部21は、元部19側の撓み片部21aと、先端側の頭部21bとを備えて構成されている。係合凹部23は、帯状端部12aRに連結される元部24から、内部に挿通孔25aを設けた略四角筒形状の筒状部25を突設させるとともに、上下の壁部に、係止孔25bを開口させている。各元部19,24には、帯状端部12a(L,R)の端末12bを連結させる連結環部19a,24aが配設されている。そして、係合凹部23の筒状部25の挿通孔25a内に、係合凸部18の中央軸部20と係止爪部21とを挿入させれば、係止爪部21の撓み片部21aが撓んで、頭部21bを嵌挿させ、頭部21bが、挿通孔25a内から係止孔25bを経て突出して、係止縁25cに係止されることにより、係合凸部18と係合凹部23とが、係合して、相互に結合されることとなって、帯状端部12a(L,R)相互が連結されることとなる。
【0035】
なお、バックル17における係合凸部18の中央軸部20と係合凹部23の元部24との結合時に相互に当接する部位には、取着具スイッチ70を構成する凸部側接点70aと凹部側接点70bとが配設されており、これらの接点70a,70bは、制御装置60側に延びるリード線72,73を接続させている。そのため、取着具としてのバックル17の係合凸部18と係合凹部23との結合時には、接点70a,70b相互が閉成(接触して導通)されることから制御装置60側には、取着具スイッチ70のオン信号が出力されることとなる。
【0036】
また、収納部13の左右両側の上端側には、制御装置60側に押圧信号を出力可能な操作ボタン76,76が、配設されている。各操作ボタン76を押圧操作すれば、内部の押圧スイッチ76aが閉成されて、オン信号を制御装置60側に出力するように配設されている。
【0037】
制御装置60は、第1実施形態の場合、図7に示すように、転倒検知センサ62の信号を入力させて、ガス発生器40の作動を制御する制御本体部61を備えて構成され、ケース66に覆われて(図4参照)、取付座15に取り付けられる取付板42に対し、取り付けられている。また、制御装置60には、制御本体部61を動作させるための駆動用電源としての充電池64が配設されている。
【0038】
なお、この充電池64の充電は、図22~24に示すように、着用エアバッグ装置10を収納しておく収納具90の充電器92の充電口92b,92cに対して、バックル17の係合凸部18と係合凹部23とを、接続口部22,26として、接合させれば、リード線72,73を利用して、充電可能に構成されている。充電口92bは、係合凸部18からなる接続口部22を接合させるものであり、係合凹部23と同様な構造としており、凸部側接点70aと接触する充電器92の本体92aに対して図示しないリード線を介して接続される端子92baを配設させている。また、充電口92cは、係合凹部23からなる接続口部26を接合させるものであり、係合凸部18と同様な構造としており、凹部側接点70bと接触する充電器92の本体92aに対して図示しないリード線を介して接続される端子92caを配設させている。そして、充電口92b,92cに対して、バックル17の係合凸部18からなる接続口部22と係合凹部23からなる接続口部26とを接合させれば、対応する接点70a,70bと端子92ba,92caが導通されて、充電池64が充電されることとなる。
【0039】
また、制御本体部61には、既述したように、取着具スイッチ70と二つの操作ボタン76,76の押圧スイッチ76aも、オン信号を入力可能に、接続されている(図7参照)。
【0040】
制御装置60に設けられた保護対象者1の転倒を検知する転倒検知センサ62は、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサ(ジャイロ)と、を備えて構成されている。制御本体部61は、転倒検知センサ62からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、ガス発生器40を作動させるように構成されている。具体的には、制御本体部61は、図示しない転倒判定部を備え、加速度センサや角速度センサを具備してなる転倒検知センサ62からの信号により、転倒判定部が、それらの信号値と記憶されていた種々の閾値から、保護対象者1が転倒を開始している、と判定して、その転倒判定部の判定結果に基づいて、ガス発生器40を作動させることとなる。
【0041】
制御装置60の制御本体部61は、図8,9に示すような制御開始処理と通常作動処理とを行う。
【0042】
制御開始処理は、図8に示すように、制御本体部61が、着用エアバッグ装置10の装着具11の適切な装着を確認して、ガス発生器40を誤作動させないようにする処理である。この処理は、まず、保護対象者1に対して、装着具11を利用して、着用エアバッグ装置10を装着し、そして、操作ボタン76,76の同時操作を確認する処理となる。すなわち、制御開始処理では、装着具11を保護対象者1に装着する際、取着具としてのバックル17の係合凸部18と係合凹部23とを結合させる。すると、制御本体部61は、バックル17に設けられた取着具スイッチ70がオンされか否かを判定し(ステップS101)、取着具スイッチ70がオンされた信号を入力すれば、ステップS102に移行する。ステップS102では、操作ボタン76,76が同時に押圧操作されたか否かを判定し、同時に押圧された信号を入力すれば(ステップS102でYES)、通常作動処理に移行する。
【0043】
通常作動処理の処理時には、保護対象者1は、既に、着用エアバッグ装置10を装着して、種々の歩行を含めた動作を行っている。そして、図9に示すように、制御本体部61は、転倒検知センサ62の信号を入力させて、図示しない転倒判定部により、保護対象者1の転倒の有無を判定する(ステップS201)。保護対象者1が転倒した場合には、制御本体部61は、図示しない転倒判定部が転倒検知センサ62からの信号から転倒を検知し(ステップS201でYES)、ガス発生器40を作動させる(ステップS202)。すると、エアバッグ50が膨張して、保護膨張部52(L,R)を保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆うように、膨張して配置させることから、転倒先から大腿骨転子部3(L,R)が保護される(図2参照)。そして、ガス発生器40が作動された後には、制御本体部61は、処理を終える。
【0044】
一方、保護対象者1が、通常動作を続行しても、転倒しなければ、制御本体部61は、ガス発生器40を作動させず(ステップS201でNO)、その後、エアバッグ装置10を取り外す際には、バックル17の結合を解除すれば、取着具スイッチ70がOFFされて(ステップS203でYES)、制御本体部61は、処理を終えることとなる。
【0045】
以上のように、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、保護対象者1に装着具11を装着して使用しようとする際、装着具11における取着具としてのバックル17の係合凸部18と係合凹部23との結合によるオン信号と、他の電気部品としての操作ボタン76の操作時のオン信号と、の二つの制御開始条件により、制御装置60の制御本体部61が、転倒検知センサ62からの信号を入力させてガス発生器40を作動可能な制御を開始する。そして、制御開始条件の一つが、装着具11における取着具としてのバックル17の結合によるオン信号であって、このオン信号の出力時には、人為的な操作に伴なって、装着具11が、確実に、保護対象者1に装着された状態となる。そして、人為的な操作の他の電気部品として操作ボタン76のオン信号があれば、単に、装着具11を保護対象者1に装着しただけでなく、一層、安定して、着用エアバッグ装置10が保護対象者1に装着されたことを判定できて、制御装置60の制御本体部61は、制御を開始し、ついで、転倒時の転倒検知センサ62からの信号を入力すれば、ガス発生器40を作動させるように制御して、エアバッグ50を膨張させ、膨張したエアバッグ50により、好適に、保護対象者1の保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を保護できる。そして、装着具11における取着具としてのバックル17の係合凸部18と係合凹部23とが、相互に結合されていなければ、非結合状態として、オン信号を出力しないことから、制御装置60は、制御を開始せず、さらに、人為的な操作の操作ボタン76のオン信号もなければ、制御装置60は、制御を開始しないことから、すなわち、取着具17の結合完了を含めた複数(実施形態では2重)のチェックを経た後でないと、制御装置60は制御を開始しないことから、ガス発生器40の誤作動が的確に抑制される。
【0046】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、誤作動を抑制して、保護対象者1に装着された後に、安定して作動することができる。
【0047】
特に、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、2つの制御開始条件成立のオン信号が、取着具(バックル)17に設けられた取着具スイッチ70におけるバックル17の結合に伴なうオン信号と、装着具11に配置された2つの操作ボタン76,76の同時操作時のオン信号と、から構成されている。
【0048】
そのため、第1実施形態では、バックル17を結合させて、バックル17に設けられた取着具スイッチ70をオンさせ、さらに、装着具11に設けられた二つの操作ボタン76,76を同時に操作しなければ、制御装置60は、制御を開始しないことから、単に、装着具11を装着し、そして、1つの操作ボタン76を押圧するだけでなく、制御を開始させる意思を持って、二つの操作ボタン76,76を同時に操作する人為的な操作を必要とすることから、一層、確実に、誤作動を抑制することがでできる。
【0049】
なお、操作ボタン76,76を同時に操作する際、厳密に、同時に操作する場合だけでなく、一方の操作ボタン76を操作し、そして、1秒程度の時間差で、他方の操作ボタン76を操作しても、同時の操作として処理されるように、設定されている。
【0050】
また、2つの制御開始条件としては、図10~13に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aのように構成してもよい。この着用エアバッグ装置10Aでは、2つの制御開始条件成立のオン信号が、取着具としてのバックル17Aに設けられた取着具スイッチ70におけるバックル17Aの結合に伴なうオン信号と、バックル17Aの結合完了時の結合部位に、結合解除を不能とするように、挿入されるとともに、取着具スイッチ70のオン信号の出力用の電気回路を閉成する挿入ピン29によるオン信号と、から構成されている。
【0051】
第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aに使用するバックル17Aは、図11,12に示すように、第1実施形態のバックル17と同様に、中央軸部20や係止爪部21を備えた係合凸部18Aと、係止孔25bを設けた筒状部25を備えた係合凹部23Aと、から構成されている。そして、第1実施形態との相違点は、係合凹部23Aでは、筒状部25の正面部位に挿入ピン29の軸部29aを嵌挿可能な貫通孔28が形成され、係合凸部18Aでは、係合凹部23Aとの結合完了時に、貫通孔28と一致して、挿入ピン29の軸部29aを嵌挿可能な貫通孔27が形成され、さらに、この貫通孔27の部位では、取着具スイッチ70の凸部側接点70aから延びるリード線72が分断された分断部74を配設させ、貫通孔27を間にして、両端部74a,74bが配設されている。両端部74a,74bは、電気的な導体からなる挿入ピン29の軸部29aが貫通孔27に挿入されれば、電気的に導通する状態となり、軸部29aが分断部74に挿入されなければ、端部74a,74bが分断された状態の非導通状態となる。
【0052】
なお、挿入ピン29は、円板状の鍔部29bと、鍔部29bから突設されて、貫通孔27,28に嵌挿可能な軸部29aと、から構成され、紐等の可撓性を有した連結具30によって、係合凸部18Aの元部19に、保持されている。
【0053】
この第2実施形態では、装着具11Aのバックル17Aが貫通孔27,28を備えて挿入ピン29の挿入により、リード線72の分断部74が導通状態となる構成が、第1実施形態と異なり、さらに、第1実施形態に設けられていた操作ボタン76,76が配設されていない点が、異なる他、他の収納部13を有した腰ベルト12の構成や、ガス発生器40、エアバッグ50、制御装置60等は、第1実施形態と同様な構成としている。なお、第2実施形態では、挿入ピン29の挿入により、リード線72の分断部74が導通状態となることから、挿入ピン29は、制御装置60の制御本体部61側と取着具スイッチ70とを接続する電気回路としてのリード線72を、開閉するスイッチとして機能することとなる(図13参照)。
【0054】
また、挿入ピン29が、バックル17Aの結合部位、すなわち、係合凸部18Aと係合凹部23Aとの結合部位である中央軸部20と筒状部25とを跨ぐように、貫通孔27,28を利用して、軸部29aを嵌合させている。そのため、挿入ピン29の軸部29aが貫通孔27,28に挿入されていれば、軸部29aが閂のように作用して、係合凸部18Aと係合凹部23Aとの結合を解除できない構成としている。
【0055】
この第2実施形態では、使用時、保護対象者1に、装着具11を装着させてバックル17Aを結合させ、そして、挿入ピン29をバックル17Aの貫通孔27,28に挿入する。すると、バックル17Aの結合により、取着具スイッチ70が、接点70a,70b相互を接触させ、そして、挿入ピン29がリード線72の分断部74の端部74a,74b相互の分断状態を解消させて、リード線72を閉成状態にして、制御装置60の制御本体部61に対し、挿入ピン29の挿入オン信号と、取着具スイッチ70のオン信号と、を出力した状態となり、制御装置60は、転倒検知センサ62の信号により、ガス発生器40を作動させるか否かの制御を開始することとなる。
【0056】
そして、保護対象者1が転倒すれば、転倒検知センサ62によって、転倒が検知されて、制御装置60の制御本体部61がガス発生器40を作動させて、エアバッグ50を膨張させて、保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)が保護膨張部52(L,R)により、保護されることとなる(図10の二点鎖線参照)。また、保護対象者1が転倒せずに、着用エアバッグ装置10Aを保護対象者1から取り外す際には、挿入ピン29の軸部29aをバックル17Aの貫通孔27,28から引き抜き、そして、係止爪部21,21を撓ませつつ、バックル17の係合凹部23Aから係合凸部18Aを引き抜けば、バックル17の結合を解除できることから、装着具11Aを保護対象者1から取り外すことができて、例えば、着用エアバッグ装置10Aを、既述の収納具90(図22参照)に収納しておくことができる。
【0057】
この第2実施形態では、2つの制御開始条件が、取着具としてのバックル17Aに設けられた取着具スイッチ70におけるバックル17Aの結合に伴なうオン信号と、バックル17Aの結合完了時の結合部位に、結合解除を不能とするように、挿入されるとともに、取着具スイッチ70のオン信号の出力用の電気回路(リード線)72を閉成する挿入ピン29によるオン信号と、から構成されている。
【0058】
そのため、第2実施形態では、バックル17Aを結合させて、バックル17Aに設けられた取着具スイッチ70を、接点70a,70bを接触させたオン状態とし、さらに、バックル17の結合部位に、挿入ピン29を挿入しなければ、制御装置60は、制御を開始しないことから、単に、装着具11Aを装着するだけでなく、さらに、制御を開始させる意思を持って、挿入ピン29をバックル17Aの結合部位に挿入させる人為的な操作を必要としていることから、確実に、誤作動を抑制することができる。また、第2実施形態では、挿入ピン29を引き抜かなければ、バックル17Aの結合状態を解除できないことから、不用意に、装着具11Aを保護対象者1から取り外すことが防止される。
【0059】
つぎに、図14~18に示す第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bについて説明すると、この着用エアバッグ装置10Bでは、制御装置60の2つの制御開始条件が、取着具としてのスライドファスナ36に設けられた取着具スイッチ80におけるスライドファスナ36の結合に伴なうオン信号と、装着具11Bに設けられた収納部位(収納部)34へのスマートフォン84の収納時における、装着具11Bに配置されたスマートフォン検知センサ85からのスマートフォン84の収納を検知したオン信号と、から構成されている。
【0060】
第3実施形態では、装着具11Bが、装着本体部としてのベスト32と、取着具としてのスライドファスナ36と、から構成されている。
【0061】
ベスト32は、保護対象者1の正面1aの左側に配設される左前部32aと、正面1aの右側に配設される右前部32bと、背面1b側に配設される背面部32cと、を備えて構成されている。背面部32cは、左右の縁で、左前部32aと右前部32bとに連なっており、左前部32aと右前部32bとは、相互の対向する内縁32ac,32bcに、スライドファスナ36の噛み合い部36a,36bが配設されている。噛み合い部36a,36bは、スライダ37の操作で、結合と結合解除とが行われる。
【0062】
取着具スイッチ80は、左前部32aと右前部32bとの噛み合い部36a,36bの上端に配置された接点ブロック81,82を備えて構成され、各接点ブロック81,82に、相互の接触時に制御装置60側にオン信号を出力する接点81a,82aが、それぞれ、配設されている(図15~17参照)。接点ブロック81,82には、接点81a,82a相互が、不用意に、接触しないように、相互に反発する極性を有した磁石81b,82bが配設されている。そして、接点ブロック81,82は、スライダ37が噛み合い部36a,36bを上端まで結合操作する際に、すなわち、取着具としてのスライドファスナ36を結合させる際、スライダ37の上端側に配置されたテーパ状のガイド片37aにより、ガイドされて、接点81a,82a相互を接触させるように、接合されることとなる(図15参照)。
【0063】
スマートフォン84を収納する収納部34は、装着具11Bの右前部32bに設けられたポケットからなり、スマートフォン検知センサ85は、収納部34に配置されている。スマートフォン検知センサ85は、収納されるスマートフォン84から発信される電磁波等の電波の発信から、スマートフォン84の収納を検知するものであり、転倒検知センサ62と同様に、制御装置60の制御本体部61に、検知時の信号を入力させるように構成されている(図16参照)。なお、制御本体部61は、予め、設定されたスマートフォン84の収納時に、制御開始条件のオン信号として、判定するように設定されている。
【0064】
また、スマートフォン84は、GPS機能を備えて、位置情報を取得可能としており、さらに、制御装置60からの転倒信号(ガス発生器40を作動させる信号の出力時に発信される信号)を受信可能として、その転倒信号を受信した際には、予め、登録された家族等の発信先に、位置情報に基づく転倒場所や日時等の情報を、発信するアプリケーションがインストールされている。
【0065】
第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bは、装着具11Bのベスト32や取着具(スライドファスナ)36、取着具スイッチ80、スマートフォン84の収納部34、スマートフォン検知センサ85、を備えている点、及び、制御装置60が、ガス発生器40の作動に伴なう転倒信号をスマートフォン84に発信するための発信器63を備えている点が、第1実施形態と異なっているものの、他の制御装置60の制御本体部61、転倒検知センサ62、充電池64等は、第1実施形態と略同様としている。なお、エアバッグ50も、第1実施形態と同様であるが、上縁50a側の複数のタブ50bを、ベスト32の内周面側に、取り付けて、ベスト32の下部32Ab,32bb,32cb側に、折り畳まれて収納されている。膨張時のエアバッグ50は、第1実施形態と同様に、保護膨張部52(L,R)が、大腿骨転子部3(L,R)を覆うように構成されている。制御装置60やガス発生器40と取り付けた取付板42は、ベスト32の背面部32cの下部32cbの内周面側に、取り付けられている。
【0066】
そして、第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bでは、装着具11Bのベスト32を保護対象者1に装着させて、取着具としてのスライドファスナ36を結合させれば、取着具スイッチ80がオンされる(図17のステップS301のYES参照)。そしてその後、制御装置60の制御本体部61は、スマートフォン84が収納されているか否かを判定し(ステップS302)、収納されていれば(ステップS302でYES)、制御開始処理を終了して、図18に示す通常作動処理に移行する。
【0067】
通常作動処理の処理時には、保護対象者1が、既に、着用エアバッグ装置10Bを装着して、種々の歩行を含めた動作を行っており、図18に示すように、制御本体部61は、転倒検知センサ62の信号を入力させて、図示しない転倒判定部により、保護対象者1の転倒の有無を判定する(ステップS401)。そして、保護対象者1が転倒した場合には、制御本体部61は、図示しない転倒判定部が転倒検知センサ62からの信号から転倒を検知し(ステップS401でYES)、ガス発生器40を作動させる(ステップS402)。すると、エアバッグ50が膨張して、保護膨張部52(L,R)を保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆うように、膨張して配置させることから、転倒先から大腿骨転子部3(L,R)が保護される(図14の二点鎖線参照)。また、ガス発生器40が作動される際には、制御本体部61は、ガス発生器40の作動信号とともに、発信器63を作動させて、スマートフォン84に保護対象者1の転倒信号を発信し(ステップS404)、処理を終える。
【0068】
なお、転倒信号を受信したスマートフォン84は、転倒した場所、及び、日時等の転倒場所情報を、所定の発信先に、発信することとなる。
【0069】
一方、保護対象者1が、通常動作を続行しても、転倒しなければ、制御本体部61は、ガス発生器40を作動させず(ステップS401でNO)、その後、エアバッグ装置10を取り外す際には、スライドファスナ36の結合を解除すれば、取着具スイッチ80がOFFされて(ステップS403でYES)、制御本体部61は、処理を終えることとなる。
【0070】
以上のように、第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bでは、制御装置60の制御開始条件の成立のオン信号が、取着具としてのスライドファスナ36に設けられた取着具スイッチ80におけるスライドファスナ36の結合に伴なうオン信号と、装着具11Bに設けられた収納部位(収納部)34へのスマートフォン84の収納時における、装着具11Bに配置されたスマートフォン検知センサ85からのスマートフォン84の収納を検知したオン信号と、から構成されている。
【0071】
そのため、第3実施形態では、取着具36に設けられた取着具スイッチ80をオンさせ、さらに、装着具11Bの収納部位34にスマートフォン84を収納しなければ、制御装置60は、制御を開始しないことから、単に、装着具11Bを装着するだけでなく、制御を開始させる意思を持って、スマートフォン84を収納部位34に収納する人為的な操作を必要としていることから、確実に、誤作動を抑制することがでできる。
【0072】
さらに、第3実施形態では、スマートフォン84が、保護対象者1の転倒時、所定の発信先(例えば、家族等)に、転倒場所を送信可能に、設定されていることから、転倒したことを発信先が受信できて、転倒後の保護対象者1の手当て等に便利となる。
【0073】
なお、スマートフォン84自体が、保護対象者1の転倒を検出可能に、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサ(ジャイロ)と、を備えて構成されている場合には、それらのセンサを利用して、保護対象者1の転倒をスマートフォン84が検出し、そして、そのスマートフォン84が、予め、登録された家族等の発信先に、位置情報に基づく転倒場所や日時等の情報を、発信するようにしてもよい。この場合には、制御装置60に設ける発信器63を、不用にすることが可能となる。
【0074】
つぎに、図19~21に示す第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cについて説明すると、この着用エアバッグ装置10Cでは、制御装置60の制御開始条件の成立のオン信号が、取着具36に設けられた取着具スイッチ80における取着具36の結合に伴なうオン信号と、装着具11Cに配置された生体センサ88に基づく保護対象者1を検知したオン信号と、から構成されている。
【0075】
第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cでは、装着具11Cが、第3実施形態と同様に、装着本体部としてのベスト32と、取着具としてのスライドファスナ36と、を備え、さらに、第3実施形態と同様な、タブ50bを有したエアバッグ50、ガス発生器40、制御装置60、を備えて構成されている。取着具スイッチ80も、第3実施形態と同様である。但し、第4実施形態では、発信器63やスマートフォン検知センサ85を備えずに、装着具11Cが人体としての保護対象者1に装着されたことを検知できるように、生体センサ88を備えている点が、第3実施形態と異なっている。第4実施形態の場合、生体センサ88は、ベスト32の左前部32aに配設されて、非接触の状態で、保護対象者1の生体情報(心拍や呼吸等)を取得して、装着具11Cで覆ったものが人体であることを検知可能なセンサである(実施形態の場合、心臓の鼓動を検知可能としている)。そして、生体センサ88は、人体を検知した状態のオン信号を、取着具スイッチ80のオン信号とともに、制御装置60の制御本体部61に出力するように構成されている(図20参照。)
第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cでも、第3実施形態と同様に、装着具11Cのベスト32を保護対象者1に装着させて、取着具としてのスライドファスナ36を結合させれば、取着具スイッチ80がオンされる(図21のステップS501でYES参照)。そのため、制御装置60の制御本体部61は、装着具11Cが人体である保護対象者1に装着されているか否かを判定し(ステップS502)、人体に装着されていれば(ステップS502でYES)、制御開始処理を終了して、通常作動処理に移行する。
【0076】
通常作動処理では、図示しないが、図9と同様に、保護対象者1は、既に、着用エアバッグ装置10Cを装着して、種々の歩行を含めた動作を行っており、制御本体部61は、転倒検知センサ62の信号値を入力させて、図示しない転倒判定部により、保護対象者1の転倒の有無を判定し(図9のステップS201参照)、そして、保護対象者1が転倒した場合には、制御本体部61は、図示しない転倒判定部が転倒検知センサ62からの信号から転倒を検知し(図9のステップS201でYES参照)、ガス発生器40を作動させる(図9のステップS202参照)。すると、エアバッグ50が膨張して、保護膨張部52(L,R)を保護対象部位7としての大腿骨転子部3(L,R)を覆うように、膨張して配置させることから、転倒先から大腿骨転子部3(L,R)が保護される(図19の二点鎖線参照)。ガス発生器40が作動された後には、制御本体部61は、処理を終える。
【0077】
そして、第4実施形態では、装着具11Cにおける取着具36が、結合されていなければ、オン信号を出力しないことから、制御装置60は、制御を開始せず、さらに、その際、保護対象者1である人体に装着していなければ、装着時の付随的な動作に伴なってオン信号を出力する電気部品としての生体センサ88が、オン信号を出力しない。すなわち、制御装置60は、装着具11Cを確実に保護対象者1に装着し、そして、取着具36の結合を完了させなければ、制御を開始しないことから、例えば、人に装着させずに、取着具36を結合せただけでは、制御装置60は、制御を開始しないことから、ガス発生器40の誤作動が抑制される。
【0078】
また、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、制御装置60の駆動用電源が、着用エアバッグ装置10を収納可能な収納具90に設けられた充電器92から充電可能な充電池64、から構成されている(図4,22参照)。
【0079】
そのため、第1実施形態では、着用エアバッグ装置10を所定の収納具90に収納して、充電器92を利用すれば、制御装置60の駆動用電源の充電池64が充電されることから、使い勝手がよい。
【0080】
特に、第1実施形態では、図22~24に示すように、着用エアバッグ装置10を収納しておく収納具90の充電器92の充電口92b,92cに、バックル17の係合凸部18と係合凹部23とを、接続口部22,26として、接合させれば、リード線72,73を利用して、充電可能に構成されている。既述したように、充電口92bは、係合凸部18からなる接続口部22を接合させるものであり、係合凹部23と同様な構造としており、凸部側接点70aと接触する充電器92の本体92aに対して図示しないリード線を介して接続される端子92baを配設させている。また、充電口92cは、係合凹部23からなる接続口部26を接合させるものであり、係合凸部18と同様な構造としており、凹部側接点70bと接触する充電器92の本体92aに対して図示しないリード線を介して接続される端子92caを配設させている。そのため、充電口92b,92cに対して、バックル17の係合凸部18からなる接続口部22と係合凹部23からなる接続口部26とを接合させれば、対応する接点70a,70bと端子92ba,92caが導通されて、充電池64が充電される。この場合、取着具17の結合部位を構成する各接続口部22,26を、相互に結合させずに、充電器92側の対応する充電口92b、92cに接合させれば、制御装置60の制御開始条件の一つである取着具17の結合を成立させずに、制御装置60の駆動用電源の充電池64が充電されることから、一層、ガス発生器40の誤作動を抑制して、使い勝手が良好となる。
【0081】
勿論、充電池64の充電は、充電口92b,92cへ接合させること無く、図25,26に示す収納具90Dに設けた充電器のように、非接触式の電磁誘導方式とした充電パッド95を利用して、充電させるように構成してもよい。なお、この収納具90Dでは、端子92baを有しない充電口92bと同様な連結部材93に、バックル17の係合凸部18に結合させ、端子92caを有しない充電口92cと同様な連結部材94に、バックル17の係合凹部23に結合させて、着用エアバッグ装置10を収納保持している。
【0082】
なお、各実施形態では、制御装置60の制御開始条件の成立のオン信号を、それぞれ、取着具スイッチ70,80のオン信号と、他の操作ボタン76、挿入ピン29、スマートフォン検知センサ85、及び、生体センサ88のオン信号と、2つとして説明したが、三種類以上のオン信号、すなわち、操作ボタン76、挿入ピン29、スマートフォン検知センサ85、及び、生体センサ88等を適宜組み合わせて、取着具スイッチ70,80のオン信号の他、人為的な操作若しくは装着時の付随的な動作に伴なう他の電気部品の二つ以上のオン信号を、制御装置60の制御開始条件成立の要件としてもよい。、
【符号の説明】
【0083】
1…保護対象者、3(L,R)…大腿骨転子部、7…保護対象部位、10,10A,10B,10C…着用エアバッグ装置、11,11A,11B,11C…装着具、12…(装着本体部)腰ベルト、17,17A…(取着具)バックル、
18,18A…(結合部位)係合凸部、22…接続口部、23,23A…(結合部位)係合凹部、26…接続口部、29…挿入ピン、32…(装着本体部)ベスト、36…(取着具)スライドファスナ、40…(収納部位)収納部、40…ガス発生器、50…エアバッグ、52(L,R)…保護膨張部、60…制御装置、61…制御本体部、62…転倒検知センサ、64…(駆動用電源)充電池、70…取着具スイッチ、70a,70b…接点、76…操作ボタン、76a…押圧スイッチ、80…(ファスナ用)取着具スイッチ、81a、82a…接点、84…スマートフォン、85…スマートフォン検知センサ、88…生体センサ、90,90D…収納具、92…充電器、95…(充電器)充電パッド、G…膨張用ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26