(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H02M7/12 N
(21)【出願番号】P 2021041963
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028169(JP,A)
【文献】国際公開第2007/129469(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2871760(EP,A1)
【文献】特開2014-128126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に設けられた
コンデンサと、
前記スイッチング回路を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記スイッチング回路の動作を開始するときに、前記スイッチング回路から前記
コンデンサ側に流れる向きを正として、負の電流指令値に応じた電流が前記スイッチング回路と、前記
コンデンサまたは前記電源との間の電流経路に流れるように、前記スイッチング回路を制御
し、
前記スイッチング回路は、
並列に接続された2つのスイッチングアームであって、直列接続された2つのスイッチング素子を各スイッチングアームが備える2つのスイッチングアームを備え、
前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路のうちの一方が、2つの前記スイッチングアームのうちの一方における2つの前記スイッチング素子の直列接続点に接続され、
前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路のうちの他方が、2つの前記スイッチングアームのうちの他方における2つの前記スイッチング素子の直列接続点に接続され、
前記負の電流指令値は、
前記スイッチング回路の動作を開始するときに仮に通常制御を実行した場合に前記電流経路に流れる電流について、極性を反転させた値であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、
前記電源から与えられる交流電圧が0となるタイミングに応じて、前記スイッチング回路の動作を開始することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記一対の経路上に設けられたフィルタ回路を備え、
前記
コンデンサは、
前記フィルタ回路に設けられ
ていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記
コンデンサは、
前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路の間に接続され
ていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
3つの前記スイッチング回路を備え、
3つの前記スイッチング回路のそれぞれから前記電源側に向かう経路が、前記電源における三相交流電力を伝送する3本の経路にデルタ結線またはスター結線されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、
前記電源から与えられる交流電圧が0であるか否かを判定する処理と、
前記電源から与えられる交流電圧が0であると判定したときに、前記
負の電流指令値に基づいて、前記スイッチング回路を制御する処理と、
前記電源から与えられる交流電圧が0となったときから所定時間が経過したか否かを判定する処理と、
前記電源から与えられる交流電圧が0となったときから前記所定時間が経過したときに、通常電流指令値に基づいて、前記スイッチング回路を制御する処理と、を実行することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、スイッチング回路の動作を開始する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両が広く用いられている。近年では、電動車両に搭載されたバッテリから商用電源システム等の電源電力系統に電力を供給し、電源電力系統からバッテリに電力を供給するV2G(Vehicle to Grid)と呼ばれる技術につき研究が行われている。V2Gでは、バッテリから出力された電力を調整して電源電力系統に供給し、あるいは、電源電力系統から供給された電力を調整してバッテリに出力する電力変換装置が用いられる。また、電動車両に搭載されたバッテリから一般家庭、オフィス等で用いられる電気機器に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)と呼ばれる技術についても研究が行われている。V2Hにおいても、バッテリと電気機器との間の電力経路に電力変換装置が用いられる。
【0003】
以下の特許文献1には、絶縁型電力変換装置が記載されている。この絶縁型電力変換装置は、トランスで結合された2つのスイッチング回路を備えている。一方のスイッチング回路には交流電源が接続され、他方のスイッチング回路には直流電源が接続されている。2つのスイッチング回路のスイッチングにより、交流電源から直流電源に電力が供給され、あるいは、直流電源から交流電源に電力が供給される。交流電源が接続されるスイッチング素子には、双方向スイッチが用いられている。特許文献2には、スイッチング損失を低減するためのスイッチング動作が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-226162号公報
【文献】特開平5-48479号公報
【文献】特開2017-11985号公報
【文献】特開2013-138561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電力変換装置では、動作状態が変化するときに、電力変換装置の内部や電力変換装置に接続されている他の装置に、時間変化の大きい突入電流(衝撃電流)が流れることがある。例えば、電力変換装置に電源を接続したときには、電力変換装置と電源との接続部に突入電流が流れることがある。また、スイッチングを停止している状態からスイッチングを開始するときにも、電力変換装置に突入電流が流れることがある。
【0006】
特許文献2および3には、スイッチを用いて突入電流を抑制することが記載されている。しかし、この技術では回路構成が複雑になってしまうことがある。特許文献4には、電力変換装置(コンバータ回路)におけるスイッチングのデューティ比を調整することで、突入電流を抑制することが記載されている。しかし、電力変換装置に含まれているコンデンサの電圧の大きさと、電源が出力する電圧との大小関係によっては、突入電流を抑制することが困難な場合がある。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構成で電力変換装置に流れる突入電流を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スイッチング回路と、電源と前記スイッチング回路との間に設けられたコンデンサと、前記スイッチング回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチング回路の動作を開始するときに、前記スイッチング回路から前記コンデンサ側に流れる向きを正として、負の電流指令値に応じた電流が前記スイッチング回路と、前記コンデンサまたは前記電源との間の電流経路に流れるように、前記スイッチング回路を制御し、前記スイッチング回路は、並列に接続された2つのスイッチングアームであって、直列接続された2つのスイッチング素子を各スイッチングアームが備える2つのスイッチングアームを備え、前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路のうちの一方が、2つの前記スイッチングアームのうちの一方における2つの前記スイッチング素子の直列接続点に接続され、前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路のうちの他方が、2つの前記スイッチングアームのうちの他方における2つの前記スイッチング素子の直列接続点に接続され、前記負の電流指令値は、前記スイッチング回路の動作を開始するときに仮に通常制御を実行した場合に前記電流経路に流れる電流について、極性を反転させた値であることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記制御部は、前記電源から与えられる交流電圧が0となるタイミングに応じて、前記スイッチング回路の動作を開始する。
【0011】
望ましくは、前記一対の経路上に設けられたフィルタ回路を備え、前記コンデンサは、 前記フィルタ回路に設けられている。
【0012】
望ましくは、前記コンデンサは、前記電源から前記スイッチング回路に至る一対の経路の間に接続されている。
【0014】
望ましくは、3つの前記スイッチング回路を備え、3つの前記スイッチング回路のそれぞれから前記電源側に向かう経路が、前記電源における三相交流電力を伝送する3本の経路にデルタ結線またはスター結線されている。
【0015】
望ましくは、前記制御部は、前記電源から与えられる交流電圧が0であるか否かを判定する処理と、前記電源から与えられる交流電圧が0であると判定したときに、前記負の電流指令値に基づいて、前記スイッチング回路を制御する処理と、前記電源から与えられる交流電圧が0となったときから所定時間が経過したか否かを判定する処理と、前記電源から与えられる交流電圧が0となったときから前記所定時間が経過したときに、通常電流指令値に基づいて、前記スイッチング回路を制御する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構成で電力変換装置に流れる突入電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【
図3】電力変換装置における各部の電圧と各制御信号の例が示されている。
【
図4】相間電圧Eabおよびスイッチング電圧Vpuを示す図である。
【
図5】U相に関して制御部が実行する電流抑制制御のフローチャートである。
【
図7】本発明の応用実施形態に係る電力変換システムの構成を示す図である。
【
図8】第1ブリッジ電圧E1~第3ブリッジ電圧E3の例を示す図である。
【
図9】電力変換システムの実験結果を示す図である。
【
図10】電力変換システムの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。本明細書における上下左右の用語は図面における方向を示す。方向を示すこれらの用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る電力変換装置100の構成が示されている。電力変換装置100は、商用電源等の電源電力系統に接続され、負荷装置と電源電力系統との間で双方向に電力を伝送する。電力変換装置100は、フィルタ回路13、U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10v、W相スイッチング回路10w、U相電力変換器14u、V相電力変換器14v、W相電力変換器14w、制御部16、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cを備えている。
【0020】
a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cは、電源電力系統に接続される。電源電力系統は、a相端子12aとb相端子12bとの間に相間電圧Eabを与える。また、電源電力系統は、b相端子12bとc相端子12cとの間に相間電圧Ebcを与え、c相端子12cとa相端子12aとの間に相間電圧Ecaを与える。相間電圧Ebcは相間電圧Eabに対して120°だけ位相が遅れている。相間電圧Ecaは相間電圧Ebcに対して120°だけ位相が遅れている。
【0021】
なお、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cには、電源電力系統の他、電力を供給し得る外部電源装置が電源として接続されてもよい。この外部電源装置は、電力変換装置100から供給される電力によって充電される機能を有してもよい。
【0022】
フィルタ回路13は、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路FvおよびW相フィルタ回路Fwを備えている。U相フィルタ回路Fuは、a相端子12aから引き込まれた経路上で直列に接続されたインダクタL1uおよびL2uを備えている。U相フィルタ回路Fuは、さらに、インダクタL1uおよびL2uの直列接続点と、b相端子12bから引き込まれた経路との間に接続されたコンデンサCuを備えている。
【0023】
V相フィルタ回路Fvは、b相端子12bおよびc相端子12cのそれぞれから引き込まれた経路上に設けられ、U相フィルタ回路Fuと同様の構成を有している。インダクタL1v、L2vおよびコンデンサCvは、それぞれU相フィルタ回路FuのインダクタL1u、L2uおよびコンデンサCuに対応する。W相フィルタ回路Fwは、c相端子12cおよびa相端子12aのそれぞれから引き込まれた経路上に設けられ、U相フィルタ回路Fuと同様の構成を有している。インダクタL1w、L2wおよびコンデンサCwは、それぞれU相フィルタ回路FuのインダクタL1u、L2uおよびコンデンサCuに対応する。
【0024】
U相スイッチング回路10uは、並列に接続されたスイッチングアームAおよびBを備えている。スイッチングアームAは、直列接続されたスイッチング素子S1uおよびS2uを備えている。スイッチングアームBは、直列接続されたスイッチング素子S3uおよびS4uを備えている。
【0025】
V相スイッチング回路10vは、並列に接続されたスイッチングアームFおよびGを備えている。スイッチングアームFは、直列接続されたスイッチング素子S1vおよびS2vを備えている。スイッチングアームGは、直列接続されたスイッチング素子S3vおよびS4vを備えている。
【0026】
W相スイッチング回路10wは、並列に接続されたスイッチングアームPおよびQを備えている。スイッチングアームPは、直列接続されたスイッチング素子S1wおよびS2wを備えている。スイッチングアームQは、直列接続されたスイッチング素子S3wおよびS4wを備えている。
【0027】
各スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてよい。スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、2つのスイッチング素子が直列接続されるとは、一方のエミッタ電極に他方のコレクタ電極が接続されることをいう。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、2つのスイッチング素子が直列接続されるとは、一方のソース電極に他方のドレイン電極が接続されることをいう。
【0028】
スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、IGBTのエミッタ電極にアノード電極が接続され、コレクタ電極にカソード電極が接続されたダイオードをスイッチング素子が備える。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、MOSFETのソース電極にアノード電極が接続され、ドレイン電極にカソード電極が接続されたダイオードをスイッチング素子が備える。
【0029】
U相スイッチング回路10uにおけるスイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点と、U相スイッチング回路10uにおけるスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点は、U相フィルタ回路Fuを介してa相端子12aおよびb相端子12bに接続されている。すなわち、a相端子12aは、インダクタL1uおよびL2uを介して、U相スイッチング回路10uにおけるスイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点に接続されている。b相端子12bは、U相スイッチング回路10uにおけるスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点に接続されている。
【0030】
このように、電源電力系統(電源)からU相スイッチング回路10uに至る一対の経路のうちの一方は、2つのスイッチングアームAおよびBのうちの一方における2つのスイッチング素子の直列接続点に接続されている。すなわち、インダクタL1uおよびL2uが設けられた経路が、スイッチングアームAにおける2つのスイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点に接続されている。電源電力系統からU相スイッチング回路10uに至る一対の経路の間にはコンデンサCuが接続され、一対の経路上にはU相フィルタ回路Fuが設けられている。また、電源電力系統からU相スイッチング回路10uに至る一対の経路のうちの他方が、2つのスイッチングアームAおよびBのうちの他方における2つのスイッチング素子の直列接続点に接続されている。すなわち、コンデンサCuの下端側の経路が、スイッチングアームBにおける2つのスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点に接続されている。
【0031】
同様に、V相スイッチング回路10vにおけるスイッチング素子S1vおよびS2vの直列接続点と、V相スイッチング回路10vにおけるスイッチング素子S3vおよびS4vの直列接続点は、V相フィルタ回路Fvを介してb相端子12bおよびc相端子12cに接続されている。W相スイッチング回路10wにおけるスイッチング素子S1wおよびS2wの直列接続点と、W相スイッチング回路10wにおけるスイッチング素子S3wおよびS4wの直列接続点は、W相フィルタ回路Fwを介してc相端子12cおよびa相端子12aに接続されている。
【0032】
このように、U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wは、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwを介して、三相交流電力を伝送する3本の経路にデルタ結線されている。すなわち、U相フィルタ回路Fuの電源電力系統側の端子対は、a相端子12aとb相端子12bとの間に接続されている。そして、V相フィルタ回路Fvの電源電力系統側の端子対は、b相端子12bとc相端子12cとの間に接続され、W相フィルタ回路Fwの電源電力系統側の端子対は、c相端子12cとa相端子12aとの間に接続されている。
【0033】
U相スイッチング回路10uにおけるスイッチングアームAおよびBの上下の並列接続点は、U相電力変換器14uの正極端子15pおよび負極端子15nに接続されている。V相スイッチング回路10vにおけるスイッチングアームFおよびGの上下の並列接続点は、V相電力変換器14vの正極端子15pおよび負極端子15nに接続されている。W相スイッチング回路10wにおけるスイッチングアームPおよびQの上下の並列接続点は、W相電力変換器14wの正極端子15pおよび負極端子15nに接続されている。
【0034】
U相電力変換器14u、V相電力変換器14vおよびW相電力変換器14wのそれぞれが備える負荷端子20および22には、負荷装置が接続される。負荷装置は、電動車両が備える主機電池の充電回路や、オフィス、一般家庭に設けられる電気機器に供給する電力を調整する装置であってよい。
【0035】
各電力変換器は、正極端子15pおよび負極端子15nと、負荷端子20および22との間で電力変換を行う。例えば、各電力変換器は、正極端子15pおよび負極端子15nに現れる電圧を交流電圧に変換し、負荷端子20および22から出力する。あるいは、各電力変換器は、負荷端子20および22に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、正極端子15pおよび負極端子15nから出力する。
【0036】
制御部16は、スイッチング素子S1u~S4uに、それぞれ制御信号g1u~g4uを出力し、スイッチング素子S1u~S4uを制御する。また、制御部16は、スイッチング素子S1v~S4vに、それぞれ制御信号g1v~g4vを出力し、スイッチング素子S1v~S4vを制御する。さらに、制御部16は、スイッチング素子S1w~S4wに、それぞれ制御信号g1w~g4wを出力し、スイッチング素子S1w~S4wを制御する。制御信号がハイのときにスイッチング素子はオンとなり、制御信号がローのときにスイッチング素子はオフとなる。
【0037】
図2には、制御部16の構成が示されている。制御部16は、U相スイッチング回路10uを制御するための構成要素として、指令値生成部161uおよび制御信号生成部162uを備えている。また、制御部16は、V相スイッチング回路10vを制御するための構成要素として、指令値生成部161vおよび制御信号生成部162vを備えている。さらに、制御部16は、W相スイッチング回路10wを制御するための構成要素として、指令値生成部161wおよび制御信号生成部162wを備えている。
【0038】
制御部16は、プログラムを実行するプロセッサを含んでよい。この場合、制御部16は、プログラムを実行することによって、これらの構成要素(指令値生成部161u、制御信号生成部162u、指令値生成部161v、制御信号生成部162v、指令値生成部161wおよび制御信号生成部162w)を内部に構成する。
【0039】
本実施形態に係る電力変換装置100では、U相、V相およびW相のそれぞれに属する構成要素が同様の構成を有し、同様の処理を実行する。そこで、以下の説明では、U相に属する構成要素について説明し、V相およびW相に属する構成要素についての説明を簡略化する。
【0040】
制御部16は、相間電圧Eabが0となったときに、U相に対する電流抑制制御を開始する。制御信号生成部162uは、相間電圧Eabが正である間は、制御信号g3uをローに維持し、制御信号g4uをハイに維持する。これによって、相間電圧Eabが正である間は、スイッチング素子S3uがオフになり、スイッチング素子S4uがオンになる。
【0041】
相間電圧Eabが正である間、制御信号生成部162uは、互いにハイ/ローを反転させた制御信号g1uおよびg2uを生成する。これによって、スイッチング素子S1uおよびS2uは交互にオン/オフする。すなわち、スイッチング素子S1uがオフからオンに切り替わると共に、スイッチング素子S2uがオンからオフに切り替わり、スイッチング素子S1uがオンからオフに切り替わるときに、スイッチング素子S2uがオフからオンに切り替わる。
【0042】
指令値生成部161uは、U相電流指令値を制御信号生成部162uに出力する。U相電流指令値は、スイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点からコンデンサCuの上端に向かって流れ、コンデンサCuの下端からスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点に向かって流れる電流についての指令値である。
【0043】
制御信号生成部162uは、PDM(Pulse Density Modulation)、PWM(Pulse Width Modulation)等の方式に基づいて、U相電流指令値に応じたパルス幅(ハイになる時間長)を有する制御信号g1uおよびg2uを生成する。例えば、U相電流指令値が負方向に大きい程、制御信号g2uのパルス幅が長くなり、制御信号g1uのパルス幅が短くなるような制御信号g1uおよびg2uを生成する。この場合、U相電流指令値が負方向に大きい程、スイッチング素子S2uがオンになる時間が長くなり、スイッチング素子S1uがオンになる時間が短くなる。
【0044】
次に、相間電圧Eabが負である間、制御信号生成部162uは、制御信号g1uをローに維持し、制御信号g2uをハイに維持する。これによって、相間電圧Eabが負である間、スイッチング素子S1uがオフになり、スイッチング素子S2uがオンになる。
【0045】
相間電圧Eabが負である間、制御信号生成部162uは、互いにハイ/ローを反転させた制御信号g3uおよびg4uを生成する。相間電圧Eabが正である間の処理と同様の処理によって、制御信号生成部162uは、U相電流指令値に応じたパルス幅を有する制御信号g3uおよびg4uを生成する。
【0046】
U相スイッチング回路10uのスイッチングが停止している状態からスイッチングを開始した場合、U相電力変換器14uの正極端子15pおよび負極端子15nの間の電圧と、a相端子12aおよびb相端子12bの間の電圧との相違に応じて、U相スイッチング回路10uと電源電力系統との間の経路に電流が流れる。例えば、スイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点からコンデンサCuの上端に向かう突入電流が流れる。このような突入電流を許容するため、電力変換装置100が大型化することがある。また突入電流は、コンデンサCuのみならず電源電力系統にも流れることがあり、電源電力系統の動作に影響を及ぼすことがある。
【0047】
そこで、制御部16は、相間電圧Eabが0となったt=0から所定の時間tsが経過するまでの間、突入電流とは逆極性の電流を示す電流指令値に基づく電流が、突入電流経路に流れるように各スイッチング素子を制御する。ここで、U相についての突入電流経路は、スイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点からコンデンサCuの上端に向かい、コンデンサCuの下端からスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点に向かう経路である。
【0048】
電流抑制制御におけるU相電流指令値I*(抑制指令値)は、スイッチングの開始時に、通常の動作を行うための通常制御を仮に実行した場合に、突入電流経路に流れる電流の極性を反転したものであってよい。U相電流指令値Iu*は、スイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点からコンデンサCuの上端に向かい、コンデンサCuの下端からスイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点に向かう方向の電流に対する値を正とする。抑制指令値および時間tsは、実験やシミュレーションに基づいて決定されてよい。時間tsは、例えば、電源電力系統から電力変換装置100に与えられる三相交流電圧の周期の1/8であってよい。時刻t=tsより後は、U相電流指令値Iu*は、通常電流指令値Icmdとなる。
【0049】
このように、制御部16は、U相スイッチング回路10uの動作を開始するときに、U相スイッチング回路10uからコンデンサCu(受動素子)側に流れる向きを正として、負の電流指令値であるU相電流指令値Iu*に応じた電流がU相スイッチング回路10uと、コンデンサCuまたは電源電力系統との間に流れるように、U相スイッチング回路10uを制御する。
【0050】
図3には、電力変換装置100における各部の電圧の時間波形の例と、制御信号g1u~g4uの時間波形の例が示されている。
図3の左半分には相間電圧Eabが正である間の時間波形が示されており、右半分には相間電圧Eabが負である間の時間波形が示されている。
【0051】
図3(a)にはU相電力変換器14uの負荷端子20および22に現れる電圧Vtuの時間波形が示されている。
図3(b)には、正極端子15pおよび負極端子15nに現れる電圧Vsuの時間波形が示されている。
図3(a)および
図3(b)に示されている例では、U相電力変換器14uは、正極端子15pおよび負極端子15nに現れる電圧を矩形の交流電圧に変換し、負荷端子20および22から出力する。
【0052】
図3(c)~
図3(f)には、それぞれ制御信号g1u~g4uの時間波形が示されている。
図3(c)~
図3(f)の左側に示されているように、相間電圧Eabが正である間、制御信号g3uはローに維持され、制御信号g4uはハイに維持されている。制御信号g1uおよびS2uは交互にハイ/ローを繰り返す。
図3(c)~
図3(f)の右側に示されているように、相間電圧Eabが負である間、制御信号g1uはローに維持され、制御信号g2uはハイに維持されている。制御信号g3uおよびS4uは交互にハイ/ローを繰り返す。
【0053】
図3(g)には、スイッチング素子S1uおよびS2uの直列接続点と、スイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点との間のスイッチング電圧Vpuが示されている。この図では、スイッチング素子S3uおよびS4uの直列接続点の電圧が基準電圧とされている。
【0054】
図4(a)には相間電圧Eabの時間波形が示されている。
図4(b)にはスイッチング電圧Vpuの時間波形が示されている。ただし、
図4では、
図3に比べて、単位時間当たりの時間軸の長さが縮小されている。
【0055】
上記のように、相間電圧Eabが正である間、制御信号g3uはローに維持され、制御信号g4uはハイに維持されている。また、相間電圧Eabが負である間、制御信号g1uはローに維持され、制御信号g2uはハイに維持されている。この動作によって、相間電圧Eabが正である間と、相間電圧Eabが負である間とで、スイッチング電圧Vpuの極性が異なっている。
【0056】
また、相間電圧Eabが正である間、制御信号g1uおよびg2uは、U相電流指令値Iu*の大きさに応じたパルス幅を有する。また、相間電圧Eabが負である間、制御信号g3uおよびS4uは、U相電流指令値Iu*の大きさに応じたパルス幅を有する。したがって、スイッチング電圧Vpuは、U相電流指令値Iu*の大きさに応じたパルス幅を有する。
【0057】
図5には、U相に関して制御部16が実行する電流抑制制御のフローチャートが示されている。制御部16は相間電圧Eabを測定する(S101)。制御部16は、相間電圧Eabが0となったか否かを判定する(S102)。制御部16は、相間電圧Eabが0でないときはステップS101の処理に戻り、相間電圧Eabを測定する。制御部16は、相間電圧Eabが0となったときは、抑制指令値に従ってスイッチング素子S1u~S4uを制御する(S103)。制御部16は、相間電圧Eabが0となったときから時間tsが経過したか否かを判定し(S104)、時間tsが経過するまで抑制指令値に従って、スイッチング素子S1u~S4uを制御する(S103)。制御部16は、相間電圧Eabが0となったときから時間tsが経過したときは、通常電流指令値Icmdに従って、スイッチング素子S1u~S4uを制御する(S105)。
【0058】
上記では、U相スイッチング回路10uおよびU相電力変換器14uの動作について説明した。V相スイッチング回路10vおよびV相電力変換器14vの動作と、W相スイッチング回路10wおよびW相電力変換器14wの動作は、U相スイッチング回路10uおよびU相電力変換器14uの動作と同様である。
【0059】
V相についての突入電流経路は、スイッチング素子S1vおよびS2vの直列接続点からコンデンサCvの上端に向かい、コンデンサCvの下端からスイッチング素子S3vおよびS4vの直列接続点に向かう経路である。W相についての突入電流経路は、スイッチング素子S1wおよびS2wの直列接続点からコンデンサCwの上端に向かい、コンデンサCwの下端からスイッチング素子S3wおよびS4wの直列接続点に向かう経路である。
【0060】
U相スイッチング回路10uについては、相間電圧Eabが0となるタイミングで電流抑制制御が開始されるのに対し、V相スイッチング回路10vについては、相間電圧Ebcが0となるタイミングで電流抑制制御が開始される。また、W相スイッチング回路10wについては、相間電圧Ecaが0となるタイミングで電流抑制制御が開始される。
【0061】
本実施形態に係る電流抑制制御によれば、U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wが動作を開始するときに各突入電流経路に流れる突入電流が抑制される。これによって、突入電流に対する耐性を高めるために電力変換装置100を大型化する必要がなくなる。また、電源電力系統の動作に影響を及ぼすことが回避され、あるいは電源電力系統の動作に及ぼす影響が抑制される。
【0062】
上記では、U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wが、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwを介して、三相交流電力を伝送する3本の経路にデルタ結線された例が示された。U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wは、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwを介して、三相交流電力を伝送する3本の経路にスター結線されてもよい。
【0063】
図6には、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwのそれぞれの電源電力系統側の一対の端子が、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cにスター結線された変形例が示されている。U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路FvおよびW相フィルタ回路Fwのそれぞれにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、下側の端子は中性点Nで共通に接続されている。すなわち、U相フィルタ回路Fuにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、スイッチングアームBに接続される端子は中性点Nに接続されている。V相フィルタ回路Fvにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、スイッチングアームGに接続される端子は中性点Nに接続されている。W相フィルタ回路Fwにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、スイッチングアームQに接続される端子は中性点Nに接続されている。
【0064】
U相フィルタ回路Fuにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、インダクタLu1およびLu2を介してスイッチングアームAに接続される端子はa相端子12aに接続されている。V相フィルタ回路Fvにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、インダクタLv1およびLv2を介してスイッチングアームFに接続される端子はb相端子12bに接続されている。W相フィルタ回路Fwにおける電源電力系統側の一対の端子のうち、インダクタLw1およびLw2を介してスイッチングアームPに接続される端子はc相端子12cに接続されている。
【0065】
図7には、本発明の応用実施形態に係る電力変換システム102の構成が示されている。電力変換システム102は、電力変換装置100のU相電力変換器14u、V相電力変換器14vおよびW相電力変換器14wのそれぞれにおける負荷端子20および22に、3相ポート/2ポート電力変換装置104を接続したものである。
【0066】
図7には、U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wが、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwを介して、電源電力系統にデルタ結線された例が示されている。U相スイッチング回路10u、V相スイッチング回路10vおよびW相スイッチング回路10wは、U相フィルタ回路Fu、V相フィルタ回路Fv、およびW相フィルタ回路Fwを介して、電源電力系統にスター結線されてもよい。
【0067】
U相電力変換器14uは、ダイオードDu、コンデンサC2u、抵抗器Ruおよびブリッジ回路18uを備えている。ダイオードDuのアノード電極は正極端子15pに接続されている。コンデンサC2uおよび抵抗器Ruは並列接続されている。コンデンサC2uおよび抵抗器Ruの上端はダイオードDuのカソード電極に接続され、コンデンサC2uおよび抵抗器Ruの下端は負極端子15nに接続されている。
【0068】
ブリッジ回路18uは、自らの負荷端子20を正極端子15pまたは負極端子15nに導通させるスイッチングアームと、自らの負荷端子22を正極端子15pまたは負極端子15nに導通させるスイッチングアームとを備えている。ブリッジ回路18uは、正極端子15pおよび負極端子15nの間の電圧をスイッチングし、負荷端子20および22から出力する。あるいは、ブリッジ回路18uは、負荷端子20および22の間の電圧をスイッチングし、正極端子15pおよび負極端子15nから出力する。
【0069】
図3(a)にはU相電力変換器14uの負荷端子20および22に現れる電圧の時間波形が示されている。
図3(b)には、正極端子15pおよび負極端子14nに現れる電圧の時間波形が示されている。
【0070】
V相電力変換器14vは、ダイオードDv、コンデンサC2v、抵抗器Rvおよびブリッジ回路18vを備えている。V相電力変換器14vは、U相電力変換器14uと同様の構成を有し、U相電力変換器14uと同様の動作をする。ダイオードDv、コンデンサC2v、抵抗器Rvおよびブリッジ回路18vは、それぞれ、ダイオードDu、コンデンサC2u、抵抗器Ruおよびブリッジ回路18uに対応している。
【0071】
W相電力変換器14wは、ダイオードDw、コンデンサC2w、抵抗器Rwおよびブリッジ回路18wを備えている。W相電力変換器14wは、U相電力変換器14uと同様の構成を有し、U相電力変換器14uと同様の動作をする。ダイオードDw、コンデンサC2w、抵抗器Rwおよびブリッジ回路18wは、それぞれ、ダイオードDu、コンデンサC2u、抵抗器Ruおよびブリッジ回路18uに対応している。
【0072】
3相ポート/2ポート電力変換装置104は、トランスTu、TvおよびTw、インダクタL3u、L3vおよびL3w、ならびに3相ブリッジ回路40を備えている。トランスTuの1次巻線は、U相電力変換器14uの負荷端子20および22に接続されている。トランスTvの1次巻線はV相電力変換器14vの負荷端子20および22に接続され、トランスTwの1次巻線はW相電力変換器14wの負荷端子20および22に接続されている。
【0073】
トランスTuの2次巻線の一端は3相ブリッジ回路40の第1端子T1に接続され、トランスTuの2次巻線の他端は3相ブリッジ回路40の第2端子T2に接続されている。トランスTvの2次巻線の一端は3相ブリッジ回路40の第2端子T2に接続され、トランスTvの2次巻線の他端は3相ブリッジ回路40の第3端子T3に接続されている。トランスTwの2次巻線の一端は3相ブリッジ回路40の第3端子T3に接続され、トランスTwの2次巻線の他端は3相ブリッジ回路40の第1端子T1に接続されている。
【0074】
3相ブリッジ回路40は、第1端子T1を正極端子38pまたは負極端子38nに接続するスイッチングアームを備えている。3相ブリッジ回路40は、さらに、第2端子T2を正極端子38pまたは負極端子38nに接続するスイッチングアームと、第3端子T3を正極端子38pまたは負極端子38nに接続するスイッチングアームとを備えている。
【0075】
トランスTuの2次巻線のタップにはインダクタL3uの一端が接続され、インダクタL3uの他端は正極端子36pに接続されている。トランスTvの2次巻線のタップにはインダクタL3vの一端が接続され、インダクタL3vの他端は正極端子36pに接続されている。トランスTwの2次巻線のタップにはインダクタL3wの一端が接続され、インダクタL3wの他端は正極端子36pに接続されている。インダクタL3u、L3vおよびL3wが接続される2次巻線のタップは、2次巻線を等分割する点に設けられたセンタータップであってよい。負極端子36nは、負極端子38nに接続されている。正極端子36pと負極端子36nとの間には、コンデンサC3が接続されている。
【0076】
3相ブリッジ回路40は、第1端子T1~第3端子T3の相互間の電圧をスイッチングし、正極端子36pおよび負極端子36nから出力する。あるいは、3相ブリッジ回路40は、正極端子36pおよび負極端子36nの間の電圧をスイッチングし、第1端子T1~第3端子T3の相互間から出力する。
【0077】
3相ブリッジ回路40は、第1端子T1~第3端子T3の相互間の電圧をスイッチングし、正極端子38pおよび負極端子38nから出力する。あるいは、3相ブリッジ回路40は、正極端子38pおよび負極端子38nの間の電圧をスイッチングし、第1端子T1~第3端子T3の相互間から出力する。
【0078】
3相ブリッジ回路40は、正極端子36pおよび負極端子36nの間の電圧と、正極端子38pおよび負極端子38nの間の電圧との比率が、所定値となるようにスイッチングを行う。
【0079】
3相ブリッジ回路40は、第1ブリッジ電圧E1、第2ブリッジ電圧E2および第3ブリッジ電圧E3の瞬時値の加算合計値が0となるスイッチングを行ってよい。ここで、第1ブリッジ電圧E1は、第2端子T2の電位を基準とした第1端子T1の電圧である。第2ブリッジ電圧E2は、第3端子T3の電位を基準とした第2端子T2の電圧であり、第3ブリッジ電圧E3は、第1端子T1の電位を基準とした第3端子T3の電圧である。また、3相ブリッジ回路40は、第1ブリッジ電圧E1~第3ブリッジ電圧E3のそれぞれの絶対値の1周期に亘る時間積分値が同一となるように、スイッチングを行ってよい。
【0080】
U相電力変換器14uの負荷端子20および22には、第1ブリッジ電圧E1をトランスTuの巻線比倍した電圧が印加される。V相電力変換器14vの負荷端子20および22には、第2ブリッジ電圧E2をトランスTvの巻線比倍した電圧が印加される。W相電力変換器14wの負荷端子20および22には、第3ブリッジ電圧E3をトランスTwの巻線比倍した電圧が印加される。ここで、巻線比とは、2次巻線の巻き数に対する1次巻線の巻き数の比率をいう。
【0081】
このような動作によって、3相ポート/2ポート電力変換装置104は、トランスTu、TvおよびTwのそれぞれの1次巻線と、正極端子36pおよび負極端子36nと、正極端子38pおよび負極端子38nとの相互間で、双方向に電力を伝送する。
【0082】
図8には、第1ブリッジ電圧E1~第3ブリッジ電圧E3の時間波形の例が示されている。横軸は時間を示し縦軸は電圧値を示す。
図5に示されているように、第1ブリッジ電圧E1~第3ブリッジ電圧E3の瞬時値の加算合計値は0である。また、第1ブリッジ電圧E1~第3ブリッジ電圧E3のそれぞれの絶対値の1周期に亘る時間積分値は同一である。
【0083】
これによって、U相電力変換器14u、V相電力変換器14vおよびW相電力変換器14wと3相ブリッジ回路40との間で、各トランスを介して伝送される電力について、相ごとのばらつきが小さくなり、各相で均等に電力が伝送される。各相の電力容量を必要最小限に均等とすることで、電力変換システム102が小型化される。
【0084】
図9および
図10には電力変換システム102の実験結果が示されている。
図9は、電流抑制制御を行った場合の実験結果を示し、
図10は従来の制御を行った場合の実験結果を示している。
図9に示された指令信号50u、50vおよび50wは、それぞれ、U相、V相およびWのスイッチングを開始することを示す信号である。指令信号50u、50vおよび50wのレベルがハイからローに変化したときに、それぞれ、U相、V相およびW相のスイッチングが開始される。
図9には、時刻t=t1、t2およびt3において、それぞれ、U相、V相およびW相のスイッチングが開始されたことが示されている。
【0085】
図9に示された電流波形52は、3相ポート/2ポート電力変換装置104の正極端子36pから流入する電流の時間波形である。電圧波形54は、相間電圧Eabの時間波形である。三相交流電流波形56は、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cに流れる電流の時間波形である。
【0086】
図10に示された指令信号60u、60vおよび60wは、それぞれ、U相、V相およびWのスイッチングを開始することを示す信号である。指令信号60u、60vおよび60wのレベルがハイからローに変化したときに、それぞれ、U相、V相およびW相のスイッチングが開始される。
図10には、時刻t=t1において、U相、V相およびW相のスイッチングが同時に開始されたことが示されている。
【0087】
図10に示された電流波形62は、3相ポート/2ポート電力変換装置104の正極端子36pから流入する電流の時間波形である。電圧波形64は、相間電圧Eabの時間波形である。三相交流電流波形66は、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cに流れる電流の時間波形である。
【0088】
図9および
図10から明らかなように、a相端子12a、b相端子12bおよびc相端子12cに流れる電流は、電流抑制制御を行うことによって従来の制御を行った場合に比べて抑制されている。さらに、3相ポート/2ポート電力変換装置104の正極端子36pから流入する電流も、従来の制御を行った場合に比べて抑制されている。
【符号の説明】
【0089】
10u U相スイッチング回路、10v V相スイッチング回路、10w W相スイッチング回路、12a a相端子、12b b相端子、12c c相端子、13 フィルタ回路、14u U相電力変換器、14v V相電力変換器、14w W相電力変換器、15p,36p,38p 正極端子、15n,36n,38n 負極端子、16 制御部、161u,161v,161w 指令値生成部、162u,162v,162w 制御信号生成部、18u,18v,18w ブリッジ回路、20,22 負荷端子、40 3相ブリッジ回路、50u,50v,50w,60u,60v,60w 指令信号、52,62 電流波形、54,64 電圧波形、56,66 三相交流電流波形、100 電力変換装置,102 電力変換システム、104 3相ポート/2ポート電力変換装置、L1u~L3u,L1v~L3v,L1w~L3w インダクタ、Cu,Cv,Cw,C2u,C2v,C2w C3 コンデンサ、Du,Dv,Dw ダイオード、Ru,Rv,Rw 抵抗器、S1u~S4u,S1v~S4v,S1w~S4w スイッチング素子、g1u~g4u,g1v~g4v,g1w~g4w 制御信号、Tu,Tv,Tw トランス、T1 第1端子、T2 第2端子、T3 第3端子、Fu U相フィルタ回路、Fv V相フィルタ回路、Fw W相フィルタ回路。