(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20240416BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240416BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240416BHJP
G05G 1/44 20080401ALI20240416BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20240416BHJP
G05G 5/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60T7/06 E
B60T8/17 B
G05G1/30 E
G05G1/44
G05G5/03 A
G05G5/04 B
(21)【出願番号】P 2021082797
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳志
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】松永 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】北斗 大輔
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-108214(JP,A)
【文献】特開2012-082725(JP,A)
【文献】特開2017-049892(JP,A)
【文献】特開2019-067005(JP,A)
【文献】特開2012-218647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/06
B60T 8/17
G05G 1/30
G05G 1/44
G05G 5/03
G05G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者(81)に踏込み操作されるペダル装置であって、
軸心(CL)を中心とする揺動可能に支持され、前記使用者に踏込み操作されることで、前記軸心を中心とする周方向の一方側に揺動するペダル(40)と、
ハウジング(10)と、
前記ハウジング内に配置され、前記ペダルに対して前記周方向の他方側に力を与える反力発生部(60)と、
前記ハウジングの外側に配置され、かつ前記ペダルに支持されて前記ペダルとともに前記軸心を中心として揺動し、前記ペダルが前記使用者に踏込み操作されていない状態で前記ハウジングに接触することにより前記ペダルを止める制止部(781、11a)と、
前記ペダルとともに前記軸心を中心として揺動するアーム(32、32A)と、
前記軸心の軸方向(DPa)へ延びる回転軸(31)と、を備え、
前記アームは、前記ペダルに対して独立して設けられており、
前記制止部は、前記アームに設けられており、
前記ペダルは、前記回転軸を介して前記軸心を中心とする揺動可能に支持されており、
前記ペダル、前記ハウジング、前記反力発生部、および前記制止部は、車両(80)に搭載されており、
前記反力発生部は、前記回転軸に対して車両進行方向前側に配置されており、
前記制止部は、前記回転軸に対して前記車両進行方向前側に配置されているペダル装置。
【請求項2】
前記アームは、前記ペダルに接続されている請求項
1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記制止部および前記アームは、一体に成形されている一体成形物を構成する請求項
1に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記回転軸は、前記アームに接続されている請求項
1に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記ハウジングおよび前記制止部のうちいずれか一方には、前記ペダルを止める際に前記制止部および前記ハウジングの間に生じる衝撃を緩和する緩和部材(781b、781c)が設けられている請求項1ないし
4のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項6】
前記緩和部材は、樹脂材料によって構成されている請求項
5に記載のペダル装置。
【請求項7】
前記制止部は、金属材料によって構成されている金属製部品(781a)を含む請求項1ないし
6のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項8】
前記制止部は、シャフト(781a)と、前記シャフトをその軸心(BL)を中心とする外周側から覆うリング状に形成されているリング(781b)と、を備える請求項1ないし
7のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項9】
前記リングは、前記シャフトの前記軸心の軸方向に貫通する貫通孔(783)を有し、
前記リングの前記貫通孔に前記シャフトが挿入された状態で、前記リングが弾性変形して弾性力を前記シャフトに与える請求項
8に記載のペダル装置。
【請求項10】
前記制止部は、前記ペダルに対して前記使用者に最も踏込み操作された際に前記ハウジングに接触することにより、前記ペダルを止める請求項1ないし
9のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項11】
前記ペダルは、オルガン式ペダル装置を構成する請求項1ないし
10のいずれか1つに記載のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペダル装置では、運転者により踏み込まれることにより揺動可能に構成されているペダルと、ペダルに対して下側に配置されてペダルとともに揺動するアームと、アームを収納するハウジングを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ハウジング内には、バネ等によって構成され、運転者からペダルに与えられる踏力に抗してペダルに与える力を発生させる反力発生機構が設けられている。
【0004】
ハウジング内のうち反力発生機構の上側には、運転者によりペダルが踏み込まれていない状態で、アームのストッパに接触してペダルを止める制止部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のペダル装置では、ハウジング内の制止部が運転者によりペダルが踏み込まれていない状態でアームのストッパに接触してペダルを止める。このため、ハウジング内の制止部がアームのストッパに繰り返し接触すると、制止部、或いはストッパが摩耗して摩耗紛が発生し、その摩耗粉が反力発生機構に悪影響を与える虞が生じる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、摩耗紛が反力発生部に悪影響を与えることを抑えるようにしたペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
使用者(81)に踏込み操作されるペダル装置であって、
軸心(CL)を中心とする揺動可能に支持され、使用者に踏込み操作されることで、軸心を中心とする周方向の一方側に揺動するペダル(40)と、
ハウジング(10)と、
ハウジング内に配置され、ペダルに対して周方向の他方側に力を与える反力発生部(60)と、
ハウジングの外側に配置され、かつペダルに支持されてペダルとともに軸心を中心として揺動し、ペダルが使用者に踏込み操作されていない状態でハウジングに接触することによりペダルを止める制止部(781、11a)と、
ペダルとともに軸心を中心として揺動するアーム(32、32A)と、
軸心の軸方向(DPa)へ延びる回転軸(31)と、を備え、
アームは、ペダルに対して独立して設けられており、
制止部は、アームに設けられており、
ペダルは、回転軸を介して軸心を中心とする揺動可能に支持されており、
ペダル、ハウジング、反力発生部、および制止部は、車両(80)に搭載されており、
反力発生部は、回転軸に対して車両進行方向前側に配置されており、
制止部は、回転軸に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0009】
したがって、制止部は、反力発生部に対してハウジングによって隔離されている。このため、制止部がハウジングに繰り返し接触して制止部或いはハウジングが摩耗して摩耗紛が発生しても、摩耗紛は、反力発生部に対してハウジングによって隔離されることになる。これにより、摩耗紛が反力発生部に悪影響を与えることを抑えるようにしたペダル装置を提供することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態において自動車に搭載されているペダル装置、およびブレーキバイワイヤシステムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態における
図1のペダル装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態における
図1のペダル装置において、アームを透視した状態で解放時ストッパ部、ハウジングのストッパ溝を示す透視図であり、ペダルが運転者に踏み込まれていない状態でペダルが止まっている状態を示す部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態における
図1のペダル装置を車両幅方向から視た模式図であり、ペダル装置のハウジング内に配置されている反力発生機構の説明の補助に用いられる図である。
【
図5】
図1のペダル装置にて、ペダル軸心を中心とする周方向に沿って形成される面でストッパ溝を切断した断面図であり、ペダルが運転者に踏み込まれていない状態で解放時ストッパがハウジングのストッパ溝の内壁に接触している状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態におけるペダル装置を車両幅方向から視た模式図であり、アームおよび解放時ストッパを反力発生機構に対して車両進行方向後側に配置した状態を示す図である。
【
図7】第3実施形態におけるペダル装置を車両幅方向から視た模式図であり、アームおよび解放時ストッパを反力発生機構に対して車両進行方向前側に配置した状態を示す図である。
【
図8】第4実施形態におけるペダル装置においてアームに解放時ストッパのシャフトが圧入によって固定されている構成を示す断面図である。
【
図9】第5実施形態におけるペダル装置においてアームに解放時ストッパのシャフトがボルトによって固定されている構成を示す断面図である。
【
図10】第6実施形態におけるペダル装置においてアームに解放時ストッパのシャフトがカシメによって固定されている構成を示す断面図である。
【
図11】第7実施形態におけるペダル装置において、アームおよび解放時ストッパが一体成形物を構成している旨の説明を補助するための図であり、
図5に対応する断面図である。
【
図12】第7実施形態におけるペダル装置においてアームおよび解放時ストッパを車両幅方向から視た斜視図である。
【
図13】第8実施形態におけるペダル装置において、ペダルが運転者に踏み込まれていない状態で解放時ストッパがハウジングのストッパ溝および解放時ストッパを模式的に示した図である。
【
図14】第8実施形態におけるペダル装置において、ペダルが運転者に踏み込まれていない状態で解放時ストッパがハウジングのストッパ溝の内壁に接触してペダルが止まっている状態を示す断面図であり、
図5に対応する図である。
【
図15】第8実施形態におけるペダル装置において、ペダルが運転者に最も踏み込まれている状態で解放時ストッパがハウジングのストッパ溝の内壁に接触してペダルが止まっている状態を模式的示した図である。
【
図16】第8実施形態におけるペダル装置において、ペダルが運転者に最も踏み込まれている状態で解放時ストッパがハウジングのストッパ溝の内壁に接触してペダルが止まっている状態を示す断面図であり、
図5に対応する図である。
【
図17】第9実施形態におけるペダル装置において、アームにストッパ溝、内壁を設け、ハウジングに解放時ストッパを設け構成を示す断面図であり、
図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のペダル装置1は自動車80に搭載される装置であり、自動車80の乗員である運転者81の踏力により踏込み操作される。このペダル装置1は、自動車80を制動する制動操作を行うためのブレーキペダル装置として自動車80に設けられている。
【0014】
詳しく言うと、
図1の自動車80ではブレーキバイワイヤシステム82が採用されており、ペダル装置1は、そのブレーキバイワイヤシステム82に用いられるブレーキペダル装置である。ブレーキバイワイヤシステム82とは、ペダル装置1から出力される電気信号に基づき、自動車80に搭載される電子制御装置83の駆動制御によりマスターシリンダで発生させた液圧によりブレーキ回路を介して各車輪のブレーキパッドを駆動するシステムである。
【0015】
なお、
図1の4つの矢印はそれぞれ、ペダル装置1が搭載される自動車80の向きを示す。
【0016】
車両進行方向Daと自動車80の上下方向(言い換えると、自動車80の天地方向)である車両上下方向Dbとが、4つの矢印でそれぞれ示されている。また、本実施形態の説明では、車両進行方向Daにおける前側は車両進行方向前側とも称され、車両進行方向Daにおける後側は車両進行方向後側とも称される。車両上下方向Dbにおける上側は車両上側とも称され、車両上下方向Dbにおける下側は車両下側とも称される。
【0017】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、ペダル装置1は、ハウジング10、回転軸31、アーム32、ペダル40、反力発生機構60、ロッド76、および回転角度センサ90などを備えている。本実施形態のペダル装置1は、オルガン式ペダル装置である。
【0018】
そのオルガン式のペダル装置1とは、ペダル40のうち運転者81に踏まれる部位がペダル40の揺動中心CLに対して車両上方(すなわち、車両搭載時の天地方向における上方)に配置される構成のものをいう。そして、オルガン式のペダル装置1では、ペダル40は、そのペダル40に与えられる運転者81の踏力が増すほど、ペダル40のうち揺動中心CLよりも車両上方の部位を車室内のフロア2またはダッシュパネルへ近づける向きに揺動する。なお、ペダル40の揺動中心CLとは、ペダル40の揺動における回転中心である。また、本実施形態の説明では、そのペダル40の揺動中心CLはペダル軸心CLとも称される。
【0019】
ハウジング10は、ハウジング本体10Aおよびベースプレート10Bによって構成されている。ハウジング本体10Aの内側には、内部空間としてのハウジング空間が形成されている。ハウジング本体10Aは、ハウジング空間から車両下側に向けて開口されている開口部を備える。
【0020】
ベースプレート10Bは、ハウジング本体10Aの開口部を車両下側から塞ぐように配置されている。ハウジング本体10Aは、ベースプレート10Bを介して車体の一部であるフロア2またはダッシュパネルなどに取り付けられる。すなわち、ハウジング10とベースプレート10Bは、車体に固定され回転しない非回転部材を構成する。
【0021】
このハウジング本体10Aとベースプレート10Bは一体に固定されると共に、フロア2に対して固定される。例えば、ハウジング本体10Aはボルト止めなどによりベースプレート10Bに固定され、そのベースプレート10Bがボルト止めなどによりフロア2に固定される。
【0022】
このようにハウジング本体10Aとベースプレート10Bはフロア2に取り付けられる。そして、ハウジング本体10Aとベースプレート10Bは、ペダル40および反力発生機構60等を支持する支持体として機能する。なお、フロア2は車室の床を構成するものである。また、ダッシュパネルは、自動車80のエンジンルーム等の車室外と車室内とを区切る隔壁であり、バルクヘッドと呼ばれることもある。
【0023】
ハウジング本体10Aのハウジング空間には、反力発生機構60などが設けられている。
【0024】
ベースプレート10Bは、例えば板状の部材であり、ハウジング本体10Aのうちペダル40側とは反対側に設けられている。すなわち、ベースプレート10Bは、ハウジング本体10Aに対してフロア2側に設けられ、ペダル装置1がフロア2に取り付けられた車両搭載状態ではハウジング本体10Aとフロア2との間に挟まれている。
【0025】
ベースプレート10Bは、ハウジング本体10Aのうち車両前側の部位から車両後側の部位に亘り連続して延びており、上記したように自動車80のフロア2に対しボルトなどによって固定される。ハウジング本体10A、およびベースプレート10Bは、例えば金属材料などで構成されている。
【0026】
回転軸31は、ハウジング本体10Aによって回転可能に支持されている。詳細には、ハウジング本体10Aには、ペダル軸心CLを中心としてそのペダル軸心CLの軸方向へ延びる回転軸穴が形成され、その回転軸穴に、回転軸31が挿入されている。
【0027】
また、ハウジング本体10Aには、回転角度センサ90が取り付けられている。この回転角度センサ90としては、例えばホール素子または磁気抵抗素子などを用いた磁気式のセンサ回路、或いは、ロータリーエンコーダなどを用いた光学式のセンサ回路を採用することが可能である。
【0028】
回転角度センサ90は、回転軸31の回転角度を検出し、その回転軸31の回転角度を示す電気信号を
図1の電子制御装置83へ出力する。なお、ペダル40と回転軸31は互いに固定されており一体回転するので、回転軸31の回転角度は、ペダル40の回転角度と同じである。
【0029】
アーム32は、ペダル40に対して独立して設けられ、ペダル40のうち運転者81からの踏力を受ける面とは反対側の面であるペダル裏面40bに設けられている。アーム32は、ペダル40と回転軸31とを連結し、そのペダル40と回転軸31とを一体回転させる。アーム32は、ペダル40のうちペダル裏面40bに固定された裏板部321と、その裏板部321に対してほぼ垂直に設けられる側板部322とを一体に有している。そのアーム32の裏板部321は、ペダル40に対し例えばネジ止めなどによって固定されている。
【0030】
アーム32の側板部322はハウジング10の側方に配置され、側板部322には回転軸31の一端が固定されている。このように、アーム32にはペダル40と回転軸31とがそれぞれ固定されているので、アーム32とペダル40と回転軸31は、ペダル軸心CLを中心として一体回転する。
【0031】
また、回転軸31はアーム32を介してペダル40に連結している。そのため、ペダル40は、そのペダル40の可動範囲内の何れの回転角度にあってもハウジング10に接触することなく、そのハウジング10から離れて配置されている。
【0032】
ペダル40は、板厚方向Dtに厚みを有し延伸方向Dsへ延びる板形状を成しており、例えば金属材料または樹脂材料などで構成されている。板厚方向Dtは、延伸方向Dsに直交する方向である。延伸方向Dsはペダル40の長手方向となる方向である。
【0033】
ペダル40は、板厚方向Dtの一方側からペダル40に対し運転者81に踏込み操作されることに伴って、ペダル軸心CLを中心とする周方向一方側に揺動する。従って、ペダル40の板厚方向Dtの一方側は、言い換えれば、運転者81に踏込み操作される側であるペダル40の操作側である。また、その板厚方向Dtの一方側とは反対側の他方側は、言い換えれば、ペダル40の操作側とは反対側の反操作側である。
【0034】
詳細には、ハウジング10が、回転軸31を介してペダル40をペダル軸心CLまわりに揺動可能に支持している。そして、ペダル40はアーム32を介して回転軸31に固定されているので、ペダル40と回転軸31は一体となって、運転者81の踏込み操作に伴ってペダル軸心CLまわりに揺動する。
【0035】
なお、本実施形態では、ペダル軸心CLの軸方向とペダル40の板厚方向Dtと延伸方向Dsは互いに交差する方向、厳密には互いに垂直な方向である。また、本実施形態の説明では、ペダル40の板厚方向Dtはペダル板厚方向Dtとも称され、ペダル40の延伸方向Dsはペダル延伸方向Dsとも称される。
【0036】
ペダル40は、そのペダル40に対し運転者81の踏込み操作が為されていない非踏込み状態(言い換えれば、解放状態)では、車両進行方向Daに対して斜めに配置される。具体的には、ペダル40は、そのペダル40の上端部が下端部に対し車両前方かつ車両上方となるように斜めに配置される。すなわち、ペダル40の非踏込み状態では、ペダル延伸方向Dsの一方側がペダル延伸方向Dsの他方側に比して車両下方とされて、ペダル40の板形状は延びている。なお、本実施形態では、後述するペダル40の最大踏込み状態でも、ペダル延伸方向Dsの一方側がペダル延伸方向Dsの他方側に比して車両下方になる。
【0037】
また、ペダル40の厚みは一定ではなく、ペダル40は、厚肉部411と、厚肉部411に対しペダル延伸方向Dsの一方側に配置されている薄肉部412とを有している。その厚肉部411は、薄肉部412と比較して厚みが大きくなっている。例えば、厚肉部411では、薄肉部412から延設され薄肉部412と同じ厚みの板状部分に対し板厚方向Dtの一方側に板状の別部品が積層固定された構造になっている。本実施形態では、ペダル40のうち、ペダル板厚方向Dtの一方側を向いて厚肉部411に形成された面が、運転者81の踏込み操作の際に運転者81に踏まれるペダル40の踏面40aとして機能する。
【0038】
また、ペダル40は、そのペダル40のうちペダル板厚方向Dtの他方側に設けられたペダル裏面40bを有している。このペダル裏面40bは、ペダル板厚方向Dtの他方側を向いた外側面である。このペダル裏面40bは、ペダル延伸方向Dsにおけるペダル40の全長にわたって形成されている。
【0039】
本実施形態では、ペダル40のうちペダル延伸方向Dsの一方側は、ペダル40のうちペダル延伸方向Dsの他方側に比べて車両進行方向後側に配置されている。
【0040】
ここで、ペダル40と回転軸31等との位置関係について言及すると、回転軸31は、ペダル裏面40bよりもペダル板厚方向Dtの他方側に配置されている。また、ハウジング10および反力発生機構60は、ペダル40に対しペダル板厚方向Dtの他方側に配置されている。反力発生機構60は、回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0041】
ペダル40は、運転者81の踏込み操作に伴って、1回転未満の限られた所定の回転角度範囲(言い換えると、可動範囲)内でペダル軸心CLまわりに揺動する。ペダル40の揺動における上記回転角度範囲は、詳細にはペダル40の最小回転位置から最大回転位置までの範囲である。すなわち、ペダル40の非踏込み状態ではペダル40の回転角度は最小回転位置になり、ペダル40が運転者81に最も踏み込まれた最大踏込み状態にはペダル40の回転角度は最大回転位置になる。
【0042】
なお、
図2、
図3、および後述の
図4、
図5は、ペダル40の非踏込み状態、すなわちペダル40に対して運転者81の踏力が与えられていない状態でペダル装置1を表示している。
【0043】
例えば、上記の回転角度範囲内において、ペダル40は、そのペダル40に対しペダル板厚方向Dtの一方側から与えらえる運転者81の踏力が増加するほど、ペダル40の上端部が車両前方かつ車両下方へ変位するように揺動する。要するに、ペダル40は、その運転者81の踏力が増加するほど、揺動中心CLを中心とする周方向一方側に揺動する。逆に、ペダル40は、そのペダル40に対しペダル板厚方向Dtの一方側から与えられる運転者81の踏力が減少するほど、反力発生機構60の作用によりペダル40の上端部が車両後方かつ車両上方へ変位するように回転動作する。要するに、ペダル40は、その運転者81の踏力が減少するほど、揺動中心CLを中心とする周方向他方側に揺動する。
【0044】
本実施形態では、ペダル40の最小回転位置は、解放時ストッパ781によって規定される。ペダル40の最大回転位置は、踏込時ストッパ782によって規定される。
【0045】
本実施形態の解放時ストッパ781は、ハウジング10の外側に配置されている。解放時ストッパ781は、
図5に示すように、シャフト781a、およびリング781bを備える。シャフト781aは、アーム32の側板部322に固定されて金属材料によって棒状に形成されている金属製部品としての軸である。すなわち、解放時ストッパ781は、金属製部品としてのシャフト781aを含んでいる。シャフト781aは、側板部322からペダル軸心CLの軸方向に沿ってハウジング10側へ突き出ている。
【0046】
リング781bには、シャフト781aの軸心BLの軸方向に貫通する貫通孔783が設けられている。リング781bは、シャフト781aをその軸心BLを中心とする外周側から覆うリング状に形成されている。すなわち、リング781bは、シャフト781aに対してその軸心BLを中心とする外周側に配置されている。
【0047】
本実施形態では、リング781bの貫通孔783にシャフト781aが圧入されることによりリング781bがシャフト781aに固定されている。リング781bの貫通孔783にシャフト781aが挿入される前では、リング781bの貫通孔783の直径寸法がシャフト781aの直径寸法よりも小さくなっている。このため、リング781bの貫通孔783にシャフト781aが挿入された状態で、リング781bが弾性変形して弾性力をシャフト781aに与える。すなわち、リング781bの貫通孔783にシャフト781aが圧入された状態でリング781bがシャフト781aに固定されている。
【0048】
リング781bは、樹脂材料によって構成されている。リング781bは、解放時ストッパ781がハウジング10のストッパ溝10cの内壁10d(すなわち、制止部)に当たる際に解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる衝撃を緩和する緩和部材である。
【0049】
ここで、ストッパ溝10cは、ハウジング10においてハウジング空間側に凹むように形成されている。ストッパ溝10cは、ペダル軸心CLを中心とする円弧状に延びるように形成されている。ストッパ溝10cの内壁10dは、ペダル40を最小回転位置で止める際に解放時ストッパ781のリング781bが接触する接触部を構成する。
【0050】
解放時ストッパ781は、ハウジング10の側面に形成されてストッパ溝10cに入り込んでおり、ペダル40の揺動と共にそのストッパ溝10cの内部を移動する。すなわち、解放時ストッパ781は、ハウジング10の外側に配置されている。このため、ストッパ溝10cの内部および解放時ストッパ781は、反力発生機構60に対してハウジング10によって隔離されることになる。
【0051】
解放時ストッパ781は、ペダル40の非踏込み状態では、ストッパ溝10cの内壁10dに対しペダル軸心CLを中心とする周方向に突き当たり、これによりペダル40を最小回転位置に止める。解放時ストッパ781は、回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0052】
踏込時ストッパ782は、ハウジング10のうちペダル軸心CLよりも車両前方に位置する部位に設けられている。具体的には、踏込時ストッパ782は、ハウジング10のうち車両前方に位置する壁面の上端部に設けられている。踏込時ストッパ782は、ペダル40の最大踏込み状態ではペダル裏面40bのうちの上端部またはその近傍に接触し、ペダル40を最大回転位置に保持する。
【0053】
反力発生機構60は、運転者81がペダル40に与える踏力に対する反力を発生させる。反力発生機構60は、複数のバネ、機構部品等によって構成され、複数のバネの弾性変形に基づく弾性力(すなわち、反力)をロッド76を介してペダル40に与える反力発生部である。具体的には、反力発生機構60は、弾性力をペダル40に対してペダル軸心CLを中心とする周方向他方側に与える。
【0054】
反力発生機構60は、ハウジング10内に収容されているので、ペダル40に対し反操作側に配置されている。反力発生機構60はハウジング10内において、ベースプレート10Bに支持されている。
【0055】
図2、
図3、
図4に示すように、ロッド76は、ペダル40と反力発生機構60との間に設けられている。ロッド76は、運転者81の踏力がペダル40に与えられることに伴い、ロッド76を介してペダル40に押される。
【0056】
詳細には、ロッド76は、ペダル40の反操作側にペダル40から突き出るように設けられている。例えば、ロッド76は、ペダル裏面40bから棒状に突き出たように形成されている。ロッド76のうち反操作側に設けられたロッド先端部が反力発生機構60に接触している。
【0057】
ロッド76は、ペダル40から突き出た向きが固定されるようにペダル40に連結されている。ロッド76においてペダル40から突き出た向きが固定されるとは、言い換えれば、ロッド76の軸心が固定され変化しないということである。
【0058】
このようにペダル40に連結されたロッド76は、ペダル40に対する運転者81の踏込み操作に伴って反力発生機構60を押圧する。一方、ロッド76は、反力発生機構60から発生される弾性力をペダル40に対してペダル軸心CLを中心とする周方向他方側に与える。
【0059】
次に、本実施形態のペダル装置1の作動について
図1~
図5を参照して説明する。
【0060】
まず、運転者81の踏力がペダル40に印加されると、ペダル40と回転軸31とアーム32はペダル軸心CLまわりに揺動する。詳細には、ペダル40と回転軸31とアーム32は、ペダル40のうちペダル軸心CLよりも車両上方の部位がフロア2側またはダッシュパネル側へ移動するようにペダル軸心CLまわりに揺動する。言い換えると、ペダル40は、非踏込み状態から最大踏込み状態へと姿勢変化する揺動を行う。
【0061】
このとき、回転角度センサ90は、回転軸31の回転角度を示す電気信号を電子制御装置83へ出力する。電子制御装置83は、ブレーキバイワイヤシステム82に含まれるブレーキ回路を駆動制御して自動車80の制動に必要な液圧(例えば、油圧)を発生させ、その液圧によりブレーキパッドを駆動して自動車80を減速または停止させる。
【0062】
また、ペダル40が非踏込み状態から最大踏込み状態へと姿勢変化する揺動では、ペダル40が非踏込み状態から最大踏込み状態に近づくほど、反力発生機構60を構成する複数のバネは大きく弾性変形する。このため、ペダル40が非踏込み状態から最大踏込み状態に近づくほど、反力発生機構60からロッド76を介してペダル40に対して周方向の他方側に与える弾性力が大きくなる。
【0063】
このとき、ペダル40の揺動に伴って、解放時ストッパ781がストッパ溝10c内をペダル軸心CLを中心とする周方向の一方側に移動する。
【0064】
更にペダル40が揺動してペダル40が踏込時ストッパ782に突き当たると、ペダル40は最大踏込み状態になる。
【0065】
その後、ペダル40が運転者81の足部から解放されて、ペダル40に対する運転者81の踏力の印加が止められると、反力発生機構60における複数のバネは弾性変形が戻ることなる。
【0066】
この際、反力発生機構60におけるバネの弾性力がロッド76を介してペダル40に与えられた状態で、ペダル40が踏込時ストッパ782から離れ、ペダル40と回転軸31とアーム32はペダル軸心CLを中心とする周方向他方側に揺動する。
【0067】
詳細には、ペダル40と回転軸31とアーム32は、ペダル40のうちペダル軸心CLよりも車両上方の部位がフロア2の反対側またはダッシュパネルの反対側へ移動するようにペダル軸心CLまわりに揺動する。言い換えると、ペダル40は、最大踏込み状態から非踏込み状態へと姿勢変化する揺動を行う。
【0068】
このとき、解放時ストッパ781がペダル軸心CLを中心とする周方向の他方側にストッパ溝10c内を移動する。その後、解放時ストッパ781がストッパ溝10cの内壁10dに突き当たると、ペダル40が非踏込み状態で止まる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、ペダル装置1は、ペダル40のうち運転者81に踏まれる部位がペダル40の揺動中心CLに対して車両上方に配置されるオルガン式のペダル装置である。
ペダル装置1は、板厚方向Dtに厚みを有し延伸方向Dsへ延びる板形状に形成され、ペダル軸心CLを中心とする周方向に揺動可能にハウジング10によって支持されているペダル40を備える。ペダル40は、板厚方向Dtの一方側から使用者に踏込み操作されることで、ペダル軸心CLを中心とする周方向の一方側に揺動する。
【0070】
ペダル装置1は、ハウジング10と、ハウジング10内に配置され、ペダル40に対してペダル軸心CLを中心とする周方向の他方側に弾性力を与える反力発生機構60とを備える。ペダル装置1は、ハウジング10の外側に配置され、かつペダル40に支持され、ペダル40とともにペダル軸心CLを中心として揺動する解放時ストッパ781を備える。
【0071】
解放時ストッパ781は、ペダル40が運転者81に踏込み操作されていない状態でハウジング10のストッパ溝10cの内壁10dに接触することによりペダル40を最小回転位置に止める。
【0072】
以上により、解放時ストッパ781は、反力発生機構60に対してハウジング10によって隔離されることになる。
【0073】
このため、解放時ストッパ781がハウジング10の内壁10dに繰り返し接触して解放時ストッパ781或いは内壁10dが摩耗して摩耗紛が発生しても、摩耗紛は、反力発生機構60に対してハウジング10によって隔離されることになる。
【0074】
したがって、ハウジング10内の反力発生機構60に摩耗紛が悪影響を与えることを抑えることができる。よって、摩耗紛が反力発生機構60に悪影響を与えることを抑えるようにしたペダル装置1を提供することができる。
【0075】
以上説明した本実施形態のペダル装置1は、次の(1)~(8)作用効果を奏するものである。
【0076】
(1)ペダル装置1は、ペダル40に対して独立して設けられ、ペダル40が運転者81に踏込み操作されることで、ペダル40とともにペダル軸心CLまわりに揺動するアーム32を備える。解放時ストッパ781は、アーム32に設けられている。
【0077】
本実施形態では、ペダル40が運転者81の足部から解放されると、ペダル40は、反力発生機構60からの弾性力によって揺動する。
【0078】
したがって、アーム32の長さを調整したり、ペダル40に対するアーム32の取り付け位置を調整することにより、解放時ストッパ781を回転軸31から遠ざけることができる。このため、解放時ストッパ781が内壁10dに当たる際に解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる衝撃力を小さくすることができる。
【0079】
(2)ペダル装置1では、アーム32の長さを調整したり、ペダル40に対するアーム32の取り付け位置を調整することにより、解放時ストッパ781を回転軸31から遠ざけることができる。このため、解放時ストッパ781の公差ばらつきを起因とするペダル40の初期角度のばらつきを小さくすることができる。
【0080】
(3)ペダル装置1は、ペダル軸心CLを中心としてペダル軸心CLの軸方向DPaへ延びる回転軸31を備え、ペダル40は、回転軸31を介してペダル軸心CLを中心とする周方向に揺動可能にハウジング10に支持されている。
【0081】
ペダル40のうち延伸方向Dsの一方側は、ペダル40のうち延伸方向Dsの他方側に対して、車両進行方向後側に配置されている。反力発生機構60は、回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。解放時ストッパ781は、回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0082】
したがって、解放時ストッパ781を回転軸31に対して車両進行方向後側に配置する場合に比べて、ペダル装置1の体格を小型化することができる。このため、ペダル装置1の体格を大きくすることなく、解放時ストッパ781を回転軸31から遠ざけることができる。これにより、上記(1)と同様の効果が得られる。
【0083】
(4)本実施形態では、回転軸31は、アーム32に接続されている。このため、1つのアーム32によって、解放時ストッパ781の位置決めと回転軸31の位置決めとを実施することができる。
【0084】
このため、ペダル40に対して解放時ストッパ781と回転軸31とを支持するために2つのアームを設ける場合に比べて、ペダル装置1の部品点数を削減することができる。
【0085】
(5)リング781bは、樹脂材料によって構成されている。このため、緩和部材として、解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる衝撃を適切に緩和することができる。これに伴い、解放時ストッパ781が内壁10dに当たる際に生じる衝撃音を低減させることができる。
【0086】
(6)解放時ストッパ781は、金属製のシャフト781aを含む。このため、解放時ストッパ781が内壁10dに当ててペダル40を止める際に解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる高い衝撃力に解放時ストッパ781が耐えることができる。
【0087】
(7)解放時ストッパ781は、シャフト781aと、シャフト781aに対してその軸心BLを中心とする外周側に配置されてリング状に形成されているリング781bとを備える。
【0088】
このため、解放時ストッパ781のうちハウジング10の内壁10dに当たるリング781bの材料をシャフト781aの材料とを相違させることができる。これにより、リング781bの樹脂材料として、解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる衝撃を適切に緩和するのに適切な材料を選ぶことができる。
【0089】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、解放時ストッパ781および回転軸31を1つのアーム32で連結する例について説明した。しかし、解放時ストッパ781および回転軸31を別々のアーム32A、32Bに連結する本第2実施形態について
図6を参照して説明する。
【0090】
図6において、
図1~
図5と同一の符号は同一のものを示し、その説明を省略する。本実施形態と上記第1実施形態とは、アーム32A、32B以外は同一構成であり、以下、主にアーム32A、32Bについて説明する。
【0091】
アーム32Aは、ペダル40のうちペダル裏面40bに設けられている。アーム32Aは、ペダル40と回転軸31とを連結している。アーム32Bは、ペダル40のうちペダル裏面40bに設けられている。アーム32Bは、ペダル40と解放時ストッパ781とを連結している。
【0092】
本実施形態では、アーム32Bおよび解放時ストッパ781は、反力発生機構60に対して車両進行方向後側に配置されている。アーム32Bおよび解放時ストッパ781は、アーム32Aおよび回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0093】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、アーム32Bおよび解放時ストッパ781を反力発生機構60に対して車両進行方向後側に配置した例について説明した。しかし、これに代えて、本第3実施形態では、アーム32Bおよび解放時ストッパ781が反力発生機構60に対して車両進行方向前側に配置されている例について
図7を参照して説明する。
【0094】
図7において、
図6と同一の符号は同一のものを示し、その説明を省略する。本実施形態と上記第1実施形態とは、アーム32A、32Bの配置以外は同一構成である。アーム32Bおよび解放時ストッパ781は、アーム32Aおよび回転軸31に対して車両進行方向前側に配置されている。
【0095】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、上記第1実施形態において、アーム32と解放時ストッパ781との固定方法の具体例について
図8を参照して説明する。
【0096】
本実施形態では、アーム32の貫通孔32aに解放時ストッパ781のシャフト781aが圧入した状態で貫通孔32aにシャフト781aが嵌め込まれている。
【0097】
具体的には、シャフト781aを貫通孔32aに挿入する前の状態では、シャフト781aの直径寸法は貫通孔32aの直径寸法よりも大きくなっている。このため、シャフト781aを貫通孔32aに挿入することにより、シャフト781aは、アーム32のうち貫通孔32aを形成する孔形成部によって弾性変形により圧縮する。したがって、シャフト781aが貫通孔32aに挿入された状態で、シャフト781aが弾性力をアーム32のうち貫通孔32aを形成する孔形成部に与えることになる。
【0098】
このように本実施形態では、解放時ストッパ781のシャフト781aがアーム32の貫通孔32aに圧入されることにより、シャフト781aがアーム32に固定されることになる。
【0099】
なお、上記第4実施形態では、シャフト781aを貫通孔32aに挿入することにより、シャフト781aが、アーム32のうち貫通孔32aを形成する孔形成部によって、弾性変形に圧縮する例について説明した。
【0100】
しかし、これに代えて、シャフト781aを貫通孔32aに挿入することにより、シャフト781aによってアーム32のうち貫通孔32aを形成する孔形成部を弾性変形させるようにしてもよい。
【0101】
この場合、シャフト781aが貫通孔32aに挿入された状態で、アーム32のうち貫通孔32aを形成する孔形成部が弾性力をシャフト781aに与えることになる。
【0102】
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、解放時ストッパ781のシャフト781aがアーム32の貫通孔32aに圧入されることにより、解放時ストッパ781がアーム32に固定される例について説明した。
【0103】
しかし、これに代えて、本第5実施形態では、解放時ストッパ781のシャフト781aがアーム32に対してボルト33によって締結される例について
図9を参照して説明する。
【0104】
図9において
図8と同一符号は同一のもの示し、その説明を省略する。
【0105】
本実施形態では、ボルト33は、アーム32と解放時ストッパ781のシャフト781aとを締結している。このことにより、解放時ストッパ781がアーム32に固定されることになる。
【0106】
本実施形態と上記第4実施形態とは、アーム32と解放時ストッパ781との間の固定構造が相違するだけで、その他の構成は同一である。
【0107】
(第6実施形態)
上記第5実施形態では、解放時ストッパ781のシャフト781aがアーム32に対してボルト33によって締結される例について説明した。しかし、本第6実施形態では、解放時ストッパ781のシャフト781aをかしめることにより、解放時ストッパ781のシャフト781aとアーム32とを固定する例について説明する。
【0108】
本実施形態では、
図10に示すように、解放時ストッパ781のシャフト781aがアーム32の貫通孔32aに挿入された状態で解放時ストッパ781のシャフト781aがかしめられている。このことにより、解放時ストッパ781のシャフト781aとアーム32とを固定することができる。
【0109】
(第7実施形態)
上記第1~第6実施形態では、シャフト781aとアーム32とを独立した部品とした例について説明した。しかし、これに代えて、シャフト781aとアーム32とが一体に成形されている一体成形物を構成する本第7実施形態について
図11、
図12を参照して説明する。
【0110】
図11は、本実施形態のペダル装置1のシャフト781aとアーム32との構成を示す部分断面図であり、
図12は、本実施形態のペダル装置1のシャフト781aとアーム32との構成を示す斜視図である。
【0111】
本実施形態では、シャフト781aとアーム32とが、上述の如く、一体に成形されている一体成形物を構成する。解放時ストッパ781には、リング781bが用いられていなく、シャフト781aが解放時ストッパ781を構成している。シャフト781aとアーム32とは、金属材料によって構成されている。
【0112】
ハウジング10のストッパ溝10cの内壁10dには、解放時ストッパ781が内壁10dに当たる際に生じる衝撃を緩和する緩和部材781cが固定されている。緩和部材781cは、樹脂材料によって構成されている。
【0113】
以上説明した本実施形態によれば、ペダル装置1では、シャフト781aとアーム32とが、上述の如く、一体に成形されている一体成形物を構成する。このため、シャフト781aとアーム32とを独立した部品とする場合に比べて部品点数を減らすことができる。
【0114】
本実施形態では、ハウジング10のストッパ溝10cの内壁10dには、緩和部材781cが固定されている。このため、解放時ストッパ781が内壁10dに当たる際に解放時ストッパ781および内壁10dの間に生じる衝撃を緩和することができる。これに伴い、解放時ストッパ781が内壁10dに当たる際に生じる衝撃音を低減させることができる。
【0115】
(第8実施形態)
上記第1~第7実施形態では、ハウジング10の踏込時ストッパ782によってペダル40を最大回転位置に保持した例について説明した。しかし、これに代えて、ハウジング10のストッパ溝10cの内壁10eによってペダル40を最大回転位置に保持した本第8実施形態について
図13、
図14、
図15、
図16を参照して説明する。
【0116】
図13、
図15は、内壁10dに解放時ストッパ781が接触しているときのハウジング10のストッパ溝10cおよび解放時ストッパ781を模式的に示す図である。
図14、
図16は、内壁10eに解放時ストッパ781が接触しているときのハウジング10のストッパ溝10cおよび解放時ストッパ781を示す断面図である。
【0117】
本実施形態のペダル装置1では、ハウジング10のストッパ溝10cのうち揺動中心CLを中心とする周方向の一方側には、内壁10eが設けられている。内壁10eは、踏込時ストッパ782に代わりに設けられたものであり、ペダル40を最大回転位置に保持する役割を果たす。
【0118】
ハウジング10のストッパ溝10cのうち揺動中心CLを中心とする周方向の他方側には、上記第1実施形態と同様に、内壁10dが設けられている。内壁10dは、上記第1実施形態と同様に、ペダル40を最小回転位置に保持する役割を果たす。
【0119】
次に、本実施形態のペダル装置1の作動について
図13~
図16を参照して説明する。
【0120】
まず、ペダル40が運転者81の足部から解放されて、ペダル40に対する運転者81の踏力の印加が止められる。すると、反力発生機構60における複数のバネの弾性力がロッド76を介してペダル40に対して周方向Shの他方側に与えられた状態で、
図13、
図14に示すように、解放時ストッパ781がストッパ溝10cの内壁10dに突き当たる。このため、ペダル40を最小回転位置に止めることができる。
【0121】
その後、運転者81の踏力がペダル40に与えられると、ペダル40と回転軸31とアーム32はペダル軸心CLまわりに揺動する。このとき、ペダル40の揺動に伴って、解放時ストッパ781がストッパ溝10c内をペダル軸心CLを中心とする周方向の一方側に移動する。
【0122】
更にペダル40が揺動すると、
図15、
図16に示すように、解放時ストッパ781がストッパ溝10cの内壁10eに突き当たると、ペダル40は最大踏込み状態で止まる。
すなわち、運転者81がペダル40最も踏み操作された際に解放時ストッパ781が内壁10eに接触してペダル40を止めることができる。
【0123】
次に、運転者81の踏力がペダル40に与えられると、ペダル40と回転軸31とアーム32はペダル軸心CLまわりに揺動する。このとき、ペダル40の揺動に伴って、解放時ストッパ781がストッパ溝10c内をペダル軸心CLを中心とする周方向Shの一方側に移動する。
【0124】
以上説明した本実施形態によれば、ペダル装置1では、ハウジング10のストッパ溝10cのうち揺動中心CLを中心とする周方向Shの一方側には、内壁10eが設けられている。ペダル40が運転者81に最も踏込み操作された際に解放時ストッパ781がハウジング10のストッパ溝10cの内壁10eに接触することにより、ペダル40を最小回転位置と異なる最大回転位置に止めることができる。
【0125】
したがって、踏込時ストッパ782の代わりに、ハウジング10のストッパ溝10cの内壁10eを用いて、ペダル40を最大回転位置に止めることができる。このため、ハウジング10から踏込時ストッパ782を削除することができる。これにより、踏込時ストッパ782を用いる場合に比べて、ペダル装置1の部品点数を減らすことができる。
【0126】
(第9実施形態)
上記第1~第8実施形態では、ストッパ溝10cをハウジング10に設け、解放時ストッパ781をアーム32に設けた例について説明した。
【0127】
しかし、これに代えて、ストッパ溝10cをアーム32に設け、解放時ストッパ781をハウジング10に設けた本第9実施形態について
図17を参照して説明する。
【0128】
図17は、本実施形態のペダル装置1のストッパ溝10cおよび解放時ストッパ781を示す断面図である。
【0129】
アーム32には、ストッパ溝10c、および内壁11a、111bが形成されている。内壁11aは、ストッパ溝10cのうち周方向の一方側に設けられている。内壁111bは、ストッパ溝10cのうち周方向の他方側に設けられている。
【0130】
解放時ストッパ781は、ハウジング10に設けられている。解放時ストッパ781は、アーム32のストッパ溝10c内に入っている。
【0131】
次に、本実施形態のペダル装置1の作動について
図17を参照して説明する。
【0132】
まず、ペダル40が運転者81の足部から解放されて、ペダル40に対する運転者81の踏力の印加が止められる。すると、反力発生機構60における複数のバネの弾性力がロッド76を介してペダル40に対して周方向Shの他方側に与えられた状態で、解放時ストッパ781にストッパ溝10cの内壁11a(すなわち、制止部)が突き当たる。このため、ペダル40を最小回転位置に止めることができる。
【0133】
その後、運転者81の踏力がペダル40に与えられると、ペダル40と回転軸31とアーム32はペダル軸心CLまわりに揺動する。更にペダル40が揺動すると、解放時ストッパ781にストッパ溝10cの内壁11bに突き当たると、ペダル40は最大踏込み状態で止まることになる。
【0134】
以上説明した本実施形態によれば、ペダル装置1では、ストッパ溝10c、内壁11a、11bがアーム32に設けられ、解放時ストッパ781がハウジング10に設けられている。このため、本実施形態のペダル装置1においても、上記第8実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0135】
(他の実施形態)
(1)上記第1~第8実施形態では、ペダル装置1を車両としての自動車80に搭載した例について説明した。しかし、これに限らず、列車、電車等の車両にペダル装置1を搭載してもよい。有人ドローン、ヘリコプター、飛行機等の移動体にペダル装置1を搭載してもよく、或いは、eスポーツ等に用いられる競技機器、遊戯機器、工作機等の各種の産業機器にペダル装置1を搭載してもよい。
【0136】
(2)上記第1~第8実施形態では、ペダル装置1をブレーキペダル装置として自動車80に設けた例について説明した。しかし、これに限らず、ペダル装置1をアクセルペダル装置として自動車80に設けてもよく、ペダル装置1をクラッチペダル装置として自動車80に設けてもよい。
【0137】
(3)上記第1~第8実施形態では、車室内のフロア2またはダッシュパネルにペダル装置1を配置した例について説明した。しかし、これに限らず、立直した壁にペダル装置1を配置してもよい。
(4)上記第1~第8実施形態では、板状のペダル40を用いた例について説明したが、これに限らず、板状以外の形状のペダル40を用いてもよい。
(5)上記第1~第8実施形態では、アーム32、32A、32Bをペダル40に直接接続した例について説明したが、これに限らず、他の部材を介してアーム32、32A、32Bをペダル40に接続してもよい。
(6)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 ペダル装置
10 ハウジング
31 回転軸
32 アーム
40 ペダル
60 反力発生機構
76 ロッド
80自動車
90 回転角度センサ