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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
F04C29/00 T
F04C29/00 S
F04C29/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021103103
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002086
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩志
(72)【発明者】
【氏名】秋本 諒
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-115015(JP,A)
【文献】特開2015-214944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部と、
前記モータ部により生成された回転動力を用いて冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記モータ部と前記圧縮部とが格納される空間を形成する圧縮機筐体とを備え、
前記圧縮機筐体の外周面には、複数の溶接部が形成され、
前記圧縮機筐体のうちの前記複数の溶接部が形成された部分の厚さは、前記圧縮機筐体のうちの前記複数の溶接部が形成されていない他の部分の厚さより大きく、
前記モータ部は、
ロータと、
前記ロータを前記圧縮機筐体に対して回転させるステータと、を有し、
前記複数の溶接部のうちの1つの溶接部である第1の溶接部は、前記圧縮機筐体に形成される孔を介して前記ステータに接合され、
前記ステータは、前記第1の溶接部を介して前記圧縮機筐体に固定され、
前記第1の溶接部は、前記ステータの上下方向全体に亘って形成されている、
圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮機筐体は、筒状に形成されるメインシェル部を有し、
前記メインシェル部のうちの第1部分と、前記メインシェル部のうちの前記第1部分と異なる第2部分との間の継ぎ目は、前記複数の溶接部のうちの他の1つの溶接部である第2の溶接部を介して接合される
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮機筐体は、前記第1の溶接部とは異なる位置に、前記第2の溶接部を有する、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機筐体は、
筒状に形成されるメインシェル部と、
前記メインシェル部の一端側の開口部を閉鎖するトップ部と、
前記メインシェル部の他端側の開口部を閉鎖するボトム部と、を有し、
前記メインシェル部の外周面には、前記一端側の開口部と前記他端側の開口部とを結ぶ複数の線にそれぞれ沿う前記複数の溶接部が形成される
請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ部と、モータ部により生成された回転動力を用いてガス冷媒を圧縮する圧縮部と、モータ部と圧縮部とが配置される内部空間が形成された圧縮機筐体とを備える圧縮機が知られている(特許文献1)。このような圧縮機は、空調機や冷凍機に広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-90004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような圧縮機は、モータ部から圧縮機筐体に伝達される振動により、圧縮機筐体が振動し、圧縮機筐体から発生する騒音が大きくなるという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、騒音を低コストで低減する圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による圧縮機は、モータ部と、前記モータ部により生成された回転動力を用いて冷媒を圧縮する圧縮部と、前記モータ部と前記圧縮部とが格納される空間を形成する圧縮機筐体とを備えている。前記圧縮機筐体の外周面には、複数の溶接部が形成され、前記圧縮機筐体のうちの前記複数の溶接部が形成された部分の厚さは、前記圧縮機筐体のうちの前記複数の溶接部が形成されていない他の部分の厚さより大きい。前記モータ部は、ロータと、前記ロータを前記圧縮機筐体に対して回転させるステータと、を有し、前記複数の溶接部のうちの1つの溶接部である第1の溶接部は、前記圧縮機筐体部に形成される孔を介して前記ステータに接合され、前記ステータは、前記第1の溶接部を介して前記圧縮機筐体に固定され、前記第1の溶接部は、前記ステータの上下方向全体に亘って形成されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の圧縮機は、騒音を低コストで低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例1の圧縮機を示す側面図である。
図3図3は、実施例1の圧縮機を示す上面図である。
図4図4は、実施例2の圧縮機を示す側面図である。
図5図5は、実施例3の圧縮機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる圧縮機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の圧縮機10を示す縦断面図である。実施例1の圧縮機10は、圧縮機本体1と取付脚7とアキュムレータ8とを備えている。圧縮機本体1は、圧縮機筐体2とシャフト3と圧縮部5とモータ部6とを備えている。圧縮機筐体2の内部には、密閉された内部空間21が形成されている。内部空間21は、概ね円柱状に形成されている。圧縮機筐体2は、吐出管23を備えている。吐出管23は、一端が内部空間21の上部に配置されるように、他端が内部空間21の外部に配置されるように、圧縮機筐体2に接合されている。
【0011】
シャフト3は、棒状に形成されている。シャフト3は、円柱状に形成された内部空間21の中心軸に重なる回転軸31に沿うように、内部空間21に配置され、回転軸31を中心軸として回転可能に圧縮機筐体2に支持されている。シャフト3は、第1偏心部32と第2偏心部33とを備えている。第1偏心部32と第2偏心部33とは、内部空間21の下部に配置され、シャフト3に固定されている。すなわち、第1偏心部32と第2偏心部33とは、シャフト3を介して回転軸31を中心に回転可能に圧縮機筐体2に支持されている。
【0012】
圧縮部5は、内部空間21の下部に配置され、シャフト3の第1偏心部32と第2偏心部33とを囲んでいる。圧縮部5は、いわゆるロータリ型の圧縮機構であり、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とを備え、2つの流路221が形成されている。第1環状ピストン51は、第1偏心部32に嵌合し、シャフト3が回転することにより公転する。第2環状ピストン52は、第2偏心部33に嵌合し、シャフト3が回転することにより公転する。圧縮部5は、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とが公転することにより、2つの流路221を介して供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を内部空間21のうちの圧縮部5より上側の空間に供給する。
【0013】
モータ部6は、内部空間21のうちの圧縮部5より上側の空間に配置されている。モータ部6は、ロータ61とステータ62と複数の巻き線63とを備えている。ロータ61は、シャフト3に固定されている。ステータ62は、ロータ61を囲むように、内部空間21に配置され、圧縮機筐体2に固定されている。ステータ62には、ロータ61に向かって突出する複数のティース部が形成されている。複数の巻き線63は、複数のティース部にそれぞれに巻き付けられている。
【0014】
取付脚7は、概ね三角形の板状に形成されている。取付脚7は、圧縮機10が設置される設置面に載置される。取付脚7は、取付脚7が載置される設置面が沿う面が、円柱状に形成される内部空間21の中心軸に対して垂直になるように、圧縮機筐体2の下に配置されている。取付脚7は、圧縮機筐体2に固定されている。
【0015】
アキュムレータ8は、アキュムレータ容器71とアキュムレータ本体72とを備えている。アキュムレータ容器71の内部には、内部空間74が形成されている。内部空間74は、概ね円柱状に形成されている。アキュムレータ容器71は、圧縮機10の設置面が沿う平面に対して内部空間74の円柱の中心軸が垂直になるように、すなわち、内部空間74の中心軸が圧縮機本体1の内部空間21の中心軸に平行であるように、配置されている。
【0016】
アキュムレータ本体72は、低圧導入管75と2つの低圧連絡管76とを備えている。低圧導入管75は、一端が内部空間74の上部に配置されるように、かつ、他端が内部空間74の外部に配置されるように、アキュムレータ容器71に接合されている。2つの低圧連絡管76の内部には、流路78がそれぞれ形成されている。2つの低圧連絡管76は、流路78の一端が内部空間74の上部に配置されるように、かつ、流路78の他端が内部空間74の外部に配置されるように、アキュムレータ容器71を貫通している。さらに、2つの低圧連絡管76のうちのアキュムレータ容器71を貫通している部分は、アキュムレータ容器71に接合され、アキュムレータ容器71に固定されている。2つの低圧連絡管76のうちの内部空間74に配置される側の上端は、アキュムレータ容器71に固定されておらず、2つの低圧連絡管76に振動が伝達されたときに、振動することがある。さらに、2つの低圧連絡管76の上端は、開放されており、流路78は、2つの低圧連絡管76の上端を介して内部空間74の上部に接続されている。2つの低圧連絡管76のうちの内部空間74の外部に配置される部分は、流路78の他端が圧縮機本体1の流路221にそれぞれ接続されるように、圧縮機筐体2を貫通している。2つの低圧連絡管76のうちの圧縮機筐体2を貫通している部分は、圧縮機筐体2に接合され、圧縮機筐体2に固定されている。
【0017】
図2は、実施例1の圧縮機10を示す側面図である。圧縮機10は、アキュムレータホルダ91と固定バンド92とをさらに備えている。アキュムレータホルダ91は、圧縮機筐体2とアキュムレータ8との間の領域に配置され、圧縮機筐体2に固定されている。固定バンド92は、アキュムレータ容器71を囲むように周方向に掛け渡され、固定バンド92の両端は、アキュムレータホルダ91に固定されている。アキュムレータ容器71は、固定バンド92の両端がアキュムレータホルダ91に固定されることにより、圧縮機筐体2に固定されている。
【0018】
圧縮機筐体2は、メインシェル部81とトップ部82とボトム部83とを備えている。メインシェル部81は、筒状に形成され、上側開口部84と下側開口部85とが形成されている。トップ部82は、メインシェル部81の上側開口部を閉鎖し、溶接によりメインシェル部81に接合されている。ボトム部83は、メインシェル部81の下側開口部を閉鎖し、溶接によりメインシェル部81に接合されている。
【0019】
メインシェル部81は、いわゆる電縫管から形成される。電縫管は例えば鋼板などを管状に丸め、その継目を溶接して形成される。本実施例では、鋼板の2つの端(一端である第1部分と他端である第2部分と)が接するように鋼板が筒状に成形されて2つの端が接合されることにより形成されている。メインシェル部81には、溶接部86が形成されている。溶接部86は、管状に成形された鋼板の2つの端を接合する溶接により形成されている。溶接としては、プラズマ溶接、レーザー溶接が例示される。溶接部86は、外周面87から突出するように形成されている。溶接部86が沿う線分88は、回転軸31に平行であり、メインシェル部81の上側開口部84と下側開口部85と結んでいる。
【0020】
メインシェル部81のうちの溶接部86が形成されている継ぎ目溶接部分861は、図3に示されているように、メインシェル部81のうちのアキュムレータ8から遠い側に形成されている。図3は、実施例1の圧縮機10を示す上面図である。すなわち、溶接部86は、メインシェル部81のうちのアキュムレータホルダ91が固定されているホルダ固定部分911の反対側の部分に形成されている。継ぎ目溶接部分861は、溶接部86と、溶接部86により溶接される鋼板(母材)とから形成されている。継ぎ目溶接部分861の厚さは、溶接される前の鋼板の厚さより大きく、メインシェル部81のうちの溶接部86が形成されていない部分の厚さより大きい。継ぎ目溶接部分861は、厚さが大きいことにより、溶接部86を折り曲げようとする力に対して変形し難く、溶接部86を折り曲げようとする力に対抗するメインシェル部81の剛性を向上させている。
【0021】
メインシェル部81には、母材である鋼板の上に所要の組成の金属が溶接によって必要な寸法(厚さ)になるように溶着(肉盛溶接ともいう)される。溶着される金属の組成としては、母材が形成される金属の組成と同じの組成が例示される。肉盛溶接が施される部位(肉盛溶接部ともいう)として、第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94とがさらに形成されている。第1肉盛溶接部93は、肉盛り溶接により形成され、溶接部86と同様に、外周面87から突出するように形成されている。第1肉盛溶接部93が形成されている第1肉盛溶接部分931は、第1肉盛溶接部93と、メインシェル部81のうちの第1肉盛溶接部93が接合される母材部分とから形成されている。第1肉盛溶接部93は、直線状に形成され、第1肉盛溶接部93が沿う線分は、回転軸31に平行であり、メインシェル部81の上側開口部84と下側開口部85と結んでいる。このとき、第1肉盛溶接部93は、継ぎ目溶接部分861と、メインシェル部81のうちのアキュムレータホルダ91が固定されているホルダ固定部分911とに異なる部分に形成されている。
【0022】
第2肉盛溶接部94は、肉盛り溶接により形成され、溶接部86と同様に、外周面87から突出するように形成されている。第2肉盛溶接部94が形成されている第2肉盛溶接部分941は、第2肉盛溶接部94と、メインシェル部81のうちの第2肉盛溶接部94が接合される母材部分とから形成されている。第2肉盛溶接部94は、直線状に形成され、第2肉盛溶接部94が沿う線分は、回転軸31に平行であり、メインシェル部81の上側開口部84と下側開口部85とを結んでいる。このとき、第2肉盛溶接部94は、継ぎ目溶接部分861と、第1肉盛溶接部分931と、ホルダ固定部分911とに異なる部分に形成されている。たとえば、溶接部86と第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94とは、メインシェル部81の外周面87を円周方向に概ね3等分するように、形成されている。
【0023】
[圧縮機10の動作]
圧縮機10は、図示しない冷凍サイクル装置に設けられ、冷凍サイクル装置に冷媒を循環させることに利用される。すなわち、アキュムレータ8の内部空間74には、冷凍サイクル装置のうちのアキュムレータ8の前段の機器から低圧導入管75を介して冷媒が供給される。冷媒は、内部空間74で液冷媒と低圧ガス冷媒とに分離され、液冷媒は、内部空間74の下部に貯留され、低圧ガス冷媒は、内部空間74の上部に貯留される。内部空間74の上部に貯留された低圧ガス冷媒は、2つの低圧連絡管76のうちの内部空間74の上部に配置される一端から2つの流路78に流入し、圧縮機本体1の2つの流路221に供給される。
【0024】
圧縮機本体1のモータ部6のステータ62は、複数の巻き線63に三相電圧が適切に印加されることにより、ステータ62の内側の空間に回転磁界を生成する。ロータ61は、回転磁界が生成されることにより、回転軸31を中心に回転する。モータ部6は、ロータ61が回転軸31を中心に回転することにより、回転軸31を中心にシャフト3を回転させる。第1偏心部32と第2偏心部33とは、シャフト3が回転することにより、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とを公転させる。
【0025】
圧縮部5は、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とが公転することにより、2つの流路221を介してアキュムレータ8から低圧ガス冷媒を吸入し、その吸入された低圧ガス冷媒を圧縮することにより高圧ガス冷媒を生成する。その生成された高圧ガス冷媒は、内部空間21のうちの圧縮部5とモータ部6との間の空間に供給される。内部空間21のうちの圧縮部5とモータ部6との間の空間に供給された高圧ガス冷媒は、モータ部6に形成されている隙間を通過することにより、内部空間21のうちのモータ部6より上の空間に供給される。内部空間21のうちのモータ部6より上の空間に供給された高圧ガス冷媒は、吐出管23を介して冷凍サイクル装置のうちの圧縮機本体1の後段の装置に吐出される。圧縮部5は、第1環状ピストン51と第2環状ピストン52とが公転することにより、さらに、振動する。
【0026】
圧縮機筐体2は、圧縮部5が冷媒を圧縮するときに圧縮部5の振動が伝達されることにより、振動し、弾性変形する。圧縮機筐体2は、メインシェル部81に溶接部86と第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94とが形成されていることにより、メインシェル部81のうちの継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941との剛性が向上している。このため、継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941とは、変形し難い。圧縮機筐体2は、メインシェル部81のうちの継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941とが変形し難いことにより、継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941とが変形する程度を小さくすることができる。圧縮機筐体2は、継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941とが変形する程度が小さいことにより、継ぎ目溶接部分861と第1肉盛溶接部分931と第2肉盛溶接部分941とが変形することにより発生する振動が低減する。圧縮機10は、圧縮機筐体2のメインシェル部81が変形することにより発生する振動が低減することにより、その振動により発生する騒音のレベルを低減することができる。
【0027】
[比較例の圧縮機]
比較例の圧縮機は、既述の実施例1の圧縮機10の圧縮機筐体2のメインシェル部81が他のメインシェル部に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機10と同じである。その置換されたメインシェル部は、メインシェル部81と同様に、筒状に形成されている。その置換されたメインシェル部は、さらに、外周面から突出する溶接部が形成されておらず、既述の第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94とが設けられていない。その置換されたメインシェル部は、さらに、厚さが概ね均一になるように、形成されている。
【0028】
比較例の圧縮機は、既述の実施例1の圧縮機10と同様に動作する。比較例の圧縮機の圧縮機筐体2のメインシェル部は、圧縮部5が冷媒を圧縮するときに圧縮部5の振動が伝達されることにより、振動し、弾性変形する。メインシェル部に形成される電縫管の継ぎ目は、一般的に、メインシェル部のうちの継ぎ目と異なる部分に比較して、剛性が大きく、振動し難い。また、メインシェル部のうちのアキュムレータホルダ91が固定されているホルダ固定部分911は、アキュムレータホルダ91の慣性により振動し難い。このため、比較例の圧縮機の圧縮機筐体2は、ホルダ固定部分911の反対側にメインシェル部に形成される電縫管の継ぎ目が形成されているときに、第1部分95と第2部分96とが変形しやすくなっている。第1部分95は、メインシェル部のうちのアキュムレータホルダ91が固定されている部分と、メインシェル部の継ぎ目との中間の領域に配置されている。第2部分96は、メインシェル部のうちの第1部分95が形成されている領域の反対側の領域に配置され、メインシェル部のうちのアキュムレータホルダ91が固定されている部分と、メインシェル部の継ぎ目との中間の領域に形成されている。このとき、圧縮機筐体2の振動は、メインシェル部のうちの第1部分95が変形することにより発生する振動と、メインシェル部のうちの第2部分96が変形することにより発生する振動とを含んでいる。
【0029】
圧縮機筐体2は、第1部分95が変形して振動することにより、第1方向97に向かって騒音を発生させる。第1方向97は、メインシェル部の外周面のうちの第1部分95が配置される部分が向いている方向であり、第1部分95から外径側に向かう方向である。圧縮機筐体2は、第2部分96が変形して振動することにより、第2方向98に向かって騒音を発生させる。第2方向98は、メインシェル部の外周面のうちの第2部分96が配置される部分が向いている方向であり、第2部分96から外径側に向かう方向であり、第1方向97の反対方向である。
【0030】
実施例1の圧縮機10は、圧縮機筐体2のメインシェル部81に溶接部86と第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94とが形成されていることにより、メインシェル部81の剛性が向上しており、メインシェル部81の第1部分95と第2部分96とに関しても変形し難い。実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81の第1部分95と第2部分96とが変形し難いことにより、比較例の圧縮機に比較して、圧縮部5が冷媒を圧縮するときに、第1部分95と第2部分96とが変形する程度が小さい。実施例1の圧縮機10は、第1部分95と第2部分96とが変形する程度が小さいことにより、第1部分95と第2部分96とが変形することにより発生する振動を低減することができ、メインシェル部81から第1方向97と第2方向98とに向かって発生する騒音を低減することができる。
【0031】
[実施例1の圧縮機10の効果]
実施例1の圧縮機10は、モータ部6と、モータ部6により生成された回転動力を用いて冷媒を圧縮する圧縮部5と、モータ部6と圧縮部5とが格納される空間を形成する圧縮機筐体2とを備えている。圧縮機筐体2の外周面87には、溶接により溶接部が形成されている。溶接部としては、溶接部86または第1肉盛溶接部93または第2肉盛溶接部94が例示される。メインシェル部81のうちの溶接部が形成された部分は、溶接部と、溶接部により溶接される母材とから形成されている。メインシェル部81のうちの溶接部が形成された部分の厚さは、メインシェル部81のうちの溶接部が形成されていない他の部分の厚さより大きい。
【0032】
この場合、実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81に溶接部が形成されることにより、圧縮機筐体2の剛性を向上させることができる。実施例1の圧縮機10は、圧縮機筐体2の剛性が向上することにより、圧縮機筐体2を変形し難くすることができる。圧縮機10は、圧縮機筐体2が変形し難いことにより、圧縮部5の振動により圧縮機筐体2が変形する程度を小さくすることができ、圧縮機筐体2を振動し難くすることができる。圧縮機10は、圧縮機筐体2が振動し難いことにより、圧縮機筐体2から発生する騒音を低減することができる。板厚が厚い鋼板を用いて形成される電縫管は、板厚が薄い鋼板を用いて形成される電縫管に比較して、剛性が大きいことが知られている。板厚が厚い鋼板は、薄い鋼板に比較して、材料費が大きく、また、板厚が厚い鋼板の曲げ加工は、薄い鋼板の曲げ加工に比較して、コストが大きい。このため、厚さが厚い電縫管は、厚さが薄い電縫管に比較して、コストが大きい。実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81に溶接部を形成して圧縮機筐体2の剛性を向上させることにより、厚さが大きい電縫管を用いて圧縮機筐体2の剛性を向上させることに比較して、圧縮機筐体2の剛性をより低コストで向上させることができる。
【0033】
また、実施例1の圧縮機10の溶接部86は、メインシェル部81の外周面87のうちのメインシェル部81の上側開口部84と下側開口部85とを結ぶように形成されている。この場合、実施例1の圧縮機10は、溶接部86が上側開口部84または下側開口部85に達していない場合に比較して、メインシェル部81の剛性をより向上させることができる。実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81の剛性が大きいことにより、メインシェル部81を変形させる程度を小さくすることができ、メインシェル部81から発生する騒音をより低減することができる。
【0034】
また、実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81は、鋼板の2つの端(第1部分と第2部分と)が接するように鋼板が管状に成形されて2つの端が溶接部86により接合されることにより形成されている。この場合、実施例1の圧縮機10は、メインシェル部81が形成されるときに形成される溶接部86を用いてメインシェル部81の剛性を向上させることができ、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させることができる。
【0035】
また、実施例1の圧縮機10のメインシェル部81には、継ぎ目が接合されるときに形成される溶接部86と異なる他の第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94が形成されている。メインシェル部81のうちの第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94が形成された部分の厚さは、メインシェル部81のうちの溶接部86、93、94が形成されていない他の部分の厚さより大きい。この場合、実施例1の圧縮機10は、圧縮機筐体2の剛性をさらに向上させることができ、振動をより低減することができ、圧縮機筐体2から発生する騒音をより低減することができる。
【0036】
ところで、既述の実施例1の圧縮機10のメインシェル部81には、3つの溶接部86、93、94が形成されているが、厚みを持たせる溶接部が1つだけ形成されていてもよい。また、メインシェル部81には、2つの溶接部が形成されていてもよく、4以上の溶接部が形成されていてもよい。この場合も、圧縮機は、圧縮機筐体2の全体を厚くすることなく、圧縮機10の重量を大きく増加させることなく、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させることができ、圧縮機筐体2から発生する騒音を低減することができる。
【0037】
ところで、既述の実施例1の圧縮機10のメインシェル部81の継ぎ目を接合する溶接部86は、メインシェル部81のうちの溶接部86が形成されている継ぎ目溶接部分861が他の部分より厚くなるように形成されているが、他の部分と同じ厚さになるように形成されてもよい。この場合でも、圧縮機10は、第1肉盛溶接部93と第2肉盛溶接部94が形成されていることにより、圧縮機筐体2の全体を厚くすることなく、圧縮機10が軽量のまま、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させることができ、圧縮機筐体2から発生する騒音を低減することができる。
【0038】
ところで、既述の実施例1の圧縮機10の3つの溶接部86、93、94は、それぞれ、回転軸31に平行である線分に沿って形成されているが、回転軸31に対して傾斜している線、屈曲した曲線に沿って形成されてもよい。
【実施例2】
【0039】
実施例2の圧縮機は、図4に示されているように、既述の実施例1の圧縮機10の圧縮機筐体2のメインシェル部81が他のメインシェル部101に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機10と同じである。図4は、実施例2の圧縮機を示す側面図である。メインシェル部101には、複数のステータ固定用孔102が形成されている。複数のステータ固定用孔102は、メインシェル部101のうちのステータ62に隣接している部分に形成されている。
【0040】
メインシェル部101には、複数の肉盛溶接部103が形成されている。複数の肉盛溶接部103は、メインシェル部101の外周面87に沿う複数の弦巻線(螺旋)にそれぞれ沿って形成され、さらに、複数のステータ固定用孔102を覆うように形成されている。複数の肉盛溶接部103の各々は、外周面87から突出するように形成されている。すなわち、メインシェル部101のうちの複数の肉盛溶接部103が形成されている部分の厚さは、メインシェル部101のうちの複数の肉盛溶接部103が形成されていない部分の厚さより大きい。このため、複数の肉盛溶接部103は、既述の溶接部86、93、94と同様に、メインシェル部101の剛性を向上させることができる。複数の肉盛溶接部103の各々は、複数のステータ固定用孔102のうちのいくつかのステータ固定用孔を介してステータ62に接合され、メインシェル部101に接合されることによりステータ62をメインシェル部101に固定している。
【0041】
実施例2の圧縮機は、ステータ62をメインシェル部81に固定する複数の肉盛溶接部103を用いてメインシェル部81の剛性を向上させることができ、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させることができる。
【実施例3】
【0042】
実施例3の圧縮機は、図5に示されているように、既述の実施例1の圧縮機10の圧縮機筐体2のメインシェル部81が他のメインシェル部111に置換され、他の部分は、既述の実施例1の圧縮機10と同じである。図5は、実施例3の圧縮機を示す側面図である。メインシェル部111には、既述の実施例2の圧縮機のメインシェル部101と同様に、複数のステータ固定用孔102が形成されている。
【0043】
メインシェル部111には、溶接部113が形成されている。溶接部113は、複数のステータ固定用孔102を覆うように、メインシェル部111の外周面87上にジグザグに屈曲した1つの曲線に沿って形成されている。溶接部113は、外周面87から突出するように形成されている。すなわち、メインシェル部111のうちの溶接部113が形成されている部分の厚さは、メインシェル部111のうちの溶接部113が形成されていない部分の厚さより大きい。このため、溶接部113は、既述の溶接部86、93、94と同様に、メインシェル部111の剛性を向上させることができる。溶接部113は、複数のステータ固定用孔102のうちのいくつかのステータ固定用孔を介してステータ62に接合され、メインシェル部111に接合されることによりステータ62をメインシェル部111に固定している。
【0044】
実施例3の圧縮機は、ステータ62をメインシェル部81に固定する溶接部113を用いてメインシェル部81の剛性を向上させることができ、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させることができる。
【0045】
ところで、既述の実施例の圧縮機は、メインシェル部81、101、111の継ぎ目の溶接部86の部分の厚さが、溶接部86が形成されていない他の部分の厚さより厚く形成されているが、溶接部86の部分の厚さが他の部分の厚さと等しくなるように形成されてもよい。メインシェル部81、101、111は、一般的に、薄板から形成されている。薄板は、比較的低い入熱で溶接されるために、溶接部の冷却速度が速く、溶接部は、メインシェル部81、101、111のうちの溶接部が形成されていない部分に比較して硬くなっている。このため、溶接部86の部分の厚さが他の部分の厚さと等しくなっている場合でも、圧縮機は、第1肉盛溶接部93、第2肉盛溶接部94、複数の肉盛溶接部103、または、溶接部113がさらに形成されていることにより、アキュムレータ容器71の剛性を低コストで向上させ、圧縮機筐体2の振動による騒音を低コストで低減することができる。
【0046】
ところで、既述の実施例の圧縮機の圧縮機筐体2は、メインシェル部81、101、111とトップ部82とボトム部83との3ピースから形成されているが、2ピース以下のピースから形成されてもよく、4ピース以上のピースから形成されていてもよい。このような場合でも、圧縮機は、圧縮機筐体2のうちの外周面87が形成されている部分に溶接部86が設けられていることにより、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させ、圧縮機筐体2の振動による騒音を低コストで低減することができる。
【0047】
ところで、既述の実施例の圧縮機の圧縮機本体1は、ステータ62が圧縮機筐体2に溶接により固定されているが、溶接と異なる他の手段によりステータ62が圧縮機筐体2に固定されてもよい。その手段としては、焼き嵌めが例示される。このような場合でも、圧縮機は、圧縮機筐体2に溶接部(たとえば、溶接部86、第1肉盛溶接部93、第2肉盛溶接部94)が設けられていることにより、圧縮機筐体2の剛性を低コストで向上させ、圧縮機筐体2の振動による騒音を低コストで低減することができる。
【0048】
ところで、既述の実施例の圧縮機の圧縮機本体1は、2シリンダ型のロータリ圧縮機から形成されているが、2シリンダ型と異なる他の型のロータリ圧縮機から形成されてもよい。他の型のロータリ圧縮機としては、1つのシリンダを備える1シリンダ型のロータリ圧縮機が例示される。また、既述の実施例の圧縮機の圧縮機本体1は、ロータリ型の圧縮機構から形成されているが、ロータリ型と異なる他の型の圧縮機構から形成されてもよい。他の型の圧縮機構としては、スクロール型の圧縮機構が例示される。このような場合でも、圧縮機は、アキュムレータ容器71に溶接部86が設けられていることにより、アキュムレータ容器71の剛性を低コストで向上させ、アキュムレータ容器71の振動による騒音を低コストで低減することができる。
【0049】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10:圧縮機
1 :圧縮機本体
2 :圧縮機筐体
8 :アキュムレータ
71:アキュムレータ容器
72:アキュムレータ本体
81:メインシェル部
82:トップ部
83:ボトム部
86:溶接部
93:第1肉盛溶接部
94:第2肉盛溶接部
図1
図2
図3
図4
図5