(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240416BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2021140627
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】市村 岳志
(72)【発明者】
【氏名】八田 太伺
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110660(JP,A)
【文献】特開2021-109487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0283700(US,A1)
【文献】国際公開第2019/026663(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/086124(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/110705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスにより展開及び膨張するバッグ本体により外殻部分が構成されたエアバッグを備え、
前記エアバッグは、前記膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた非膨張展開形態の前記バッグ本体が折り畳まれることにより収納用形態にされて、乗物に搭載された乗物用シートの幅方向における側部の内部に収納され、
前記バッグ本体は、前記乗物用シートに着座した乗員の首部よりも下側の部位のうち、少なくとも胸部の側方で展開及び膨張する下膨張部と、前記乗員の前記胸部よりも上側の部位の側方で展開及び膨張する上膨張部とを備え、
前記下膨張部は、前記乗員に近い側の表下布部と遠い側の裏下布部とを備え、前記上膨張部は、前記乗員に近い側の表上布部と遠い側の裏上布部とを備え、
前記バッグ本体の内部には、前記上膨張部を、上側ほど前記乗員に近づくように傾斜した状態で展開及び膨張させる内部テザーが配置され、
前記内部テザーは、前記乗員から遠い側の裏端部において前記裏上布部に結合され、かつ同乗員に近い側の表端部において、前記表上布部及び前記表下布部のうち、前記裏端部の結合箇所よりも低い箇所に結合され、
前記バッグ本体が前記非膨張展開形態にされている前記エアバッグでは、前記内部テザーが平面状をなしているエアバッグ装置。
【請求項2】
前記下膨張部は、前記表下布部及び前記裏下布部を、上側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成され、
前記上膨張部は、前記表上布部及び前記裏上布部を、下側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成され、
前記表下布部、前記裏下布部及び前記表上布部は、大布片により一体に形成され、
前記裏上布部は、前記大布片よりも小さな小布片により形成され、かつ自身の下側の周縁部において前記裏下布部の上側の周縁部に結合されている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記バッグ本体が前記非膨張展開形態にされている前記エアバッグでは、前記裏上布部の前記裏下布部に対する結合箇所の少なくとも一部は、前記内部テザーにおける前記裏端部の結合箇所よりも低く、かつ前記表端部の結合箇所よりも高い箇所に位置している請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートの側方でエアバッグを展開及び膨張させることで乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車幅方向に複数の車両用シートが並設された車両の中には、ファーサイドエアバッグ装置と呼ばれるタイプのエアバッグ装置が搭載されたものがある。このタイプのエアバッグ装置におけるエアバッグの外殻部分は、バッグ本体によって構成される。ここで、バッグ本体が、膨張用ガスを充填されることなく平面状に展開させられた形態を、バッグ本体の非膨張展開形態というものとする。バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグは、折り畳まれることによりコンパクトな収納用形態にされて、車両用シートのうち、隣の車両用シートに近い側の側部内に収納される。
【0003】
そして、側突等により、車両のサイドドア等の側壁部に対し、側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合には、バッグ本体に膨張用ガスが供給される。この膨張用ガスにより、バッグ本体が膨張し、一部を上記側部内に残した状態で車両用シートから出て、隣の車両用シートとの間で展開及び膨張する。衝撃の加わった側壁部から遠い側の車両用シートに着座している乗員の上半身は、慣性により、その側壁部側へ移動しようとするが、上記バッグ本体によって受け止められ、衝撃から保護される。
【0004】
上記ファーサイドエアバッグ装置の一形態として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このエアバッグ装置におけるバッグ本体は、ガス発生器が配置された下膨張部と、下膨張部とは別に設けられ、かつ同下膨張部よりも容量の少ない上膨張部とを備える。
【0005】
上膨張部は、上側ほど乗員に近づくように傾斜した状態で、下膨張部に対し結合されている。すなわち、上膨張部の下端部と、下膨張部の上端部とには、連通孔がそれぞれ形成される。そして、上膨張部及び下膨張部は、連通孔の周囲に設けられた結合部により相互に結合される。
【0006】
上記特許文献1に記載されたファーサイドエアバッグ装置によると、車両に対する衝撃の検出又は予測に応じて、ガス発生器から下膨張部に膨張用ガスが供給される。この膨張用ガスにより、下膨張部が展開及び膨張を開始する。下膨張部内の膨張用ガスの一部は、連通孔を通って上膨張部に流入する。そのため、下膨張部の展開及び膨張の開始に遅れて、上膨張部の展開及び膨張が開始される。
【0007】
そして、乗員の胸部が下膨張部によって受け止められて衝撃から保護される。乗員の首部及び頭部が上膨張部によって受け止められて衝撃から保護される。
特に、上膨張部は、上側ほど乗員に近づくように傾斜するため、傾斜しない場合よりも頭部及び首部に近づく。乗員の胸部よりも上側の部位は、早期に上膨張部に接触し、同上膨張部によって受け止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1では、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグを収納用形態にする際の折り畳みやすさについて特に考慮されていない。
また、上記特許文献1では、上膨張部が下膨張部とは別に設けられていて、結合部によって下膨張部に結合されている。結合部の分、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグの厚みが増し、折り畳みにくくなるおそれがある。
【0010】
上記の問題は、上記ファーサイドエアバッグ装置に限らず、車両用シートと側壁部との間で、バッグ本体を展開及び膨張させる、いわゆるサイドエアバッグ装置でも同様に起り得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するエアバッグ装置は、膨張用ガスにより展開及び膨張するバッグ本体により外殻部分が構成されたエアバッグを備え、前記エアバッグは、前記膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた非膨張展開形態の前記バッグ本体が折り畳まれることにより収納用形態にされて、乗物に搭載された乗物用シートの幅方向における側部の内部に収納され、前記バッグ本体は、前記乗物用シートに着座した乗員の首部よりも下側の部位のうち、少なくとも胸部の側方で展開及び膨張する下膨張部と、前記乗員の前記胸部よりも上側の部位の側方で展開及び膨張する上膨張部とを備え、前記下膨張部は、前記乗員に近い側の表下布部と遠い側の裏下布部とを備え、前記上膨張部は、前記乗員に近い側の表上布部と遠い側の裏上布部とを備え、前記バッグ本体の内部には、前記上膨張部を、上側ほど前記乗員に近づくように傾斜した状態で展開及び膨張させる内部テザーが配置され、前記内部テザーは、前記乗員から遠い側の裏端部において前記裏上布部に結合され、かつ同乗員に近い側の表端部において、前記表上布部及び前記表下布部のうち、前記裏端部の結合箇所よりも低い箇所に結合され、前記バッグ本体が前記非膨張展開形態にされている前記エアバッグでは、前記内部テザーが平面状をなしている。
【0012】
上記の構成によれば、乗物に対し、乗物用シートの側方から衝撃が加わると、同乗物用シートに着座している乗員の上半身は、慣性により、衝撃の加わった側へ移動しようとする。一方、上記衝撃に応じ、収納用形態のエアバッグのバッグ本体に膨張用ガスが供給されて、下膨張部及び上膨張部がそれぞれ乗員の側方で展開及び膨張する。
【0013】
乗員の首部よりも下側の部位のうち、少なくとも胸部は、下膨張部によって受け止められる。乗員の胸部よりも上側の部位は上膨張部によって受け止められる。これらの受け止めにより、乗員の上半身が衝撃から保護される。
【0014】
特に、上膨張部の展開及び膨張に伴い、内部テザーが、乗物用シートの幅方向のうち互いに遠ざかる側へ引っ張られて緊張状態になる。裏上布部において内部テザーの裏端部が結合された箇所に対し、表上布部及び表下布部のうち内部テザーの表端部が結合された箇所に向かう力(引っ張り力)が作用する。内部テザーにおける表端部の結合箇所は、裏端部の結合箇所よりも低い箇所に位置する。そのため、上膨張部は、上側ほど乗員に近づくように傾斜した状態になる。上膨張部は、傾斜しない場合よりも乗員に近づく。従って、乗員の胸部よりも上側の部位は、少ない移動量で早期に上膨張部に接触し、同上膨張部によって受け止められる。
【0015】
ところで、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグは、折り畳まれることにより収納用形態にされる。バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグの折り曲げやすさは、内部テザーから影響を受ける。
【0016】
この点、上記の構成によれば、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグにおいて、内部テザーが平面状をなしている。内部テザーは、たるんでおらず、また折り曲げられてもいない。そのため、エアバッグの厚みが、内部テザーのたるみ、折り曲げ等により増すことがない。従って、エアバッグは収納用形態にされる際に、折り曲げやすい。
【0017】
上記エアバッグ装置において、前記下膨張部は、前記表下布部及び前記裏下布部を、上側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成され、前記上膨張部は、前記表上布部及び前記裏上布部を、下側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成され、前記表下布部、前記裏下布部及び前記表上布部は、大布片により一体に形成され、前記裏上布部は、前記大布片よりも小さな小布片により形成され、かつ自身の下側の周縁部において前記裏下布部の上側の周縁部に結合されていることが好ましい。
【0018】
ここで、上記特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、下膨張部と上膨張部とが互いに独立していて、連通孔においてのみ連通している。バッグ本体では、膨張用ガスにより、まず下膨張部が展開及び膨張を開始する。下膨張部がある程度展開及び膨張した後に、同下膨張部内の膨張用ガスが連通孔を通って上膨張部に供給される。そのため、バッグ本体の膨張の初期には、下膨張部の内圧が高くなる。下膨張部が仮に織布によって形成されていると、下膨張部は、高い内圧に耐え得るように、繊度の高い糸からなる織布によって形成される必要がある。しかし、糸の繊度が高くなるに従い、織布の厚みが増し、折り曲げにくくなる。また、エアバッグは、折り畳まれて収納用形態にされたときに過度に大きくなる。
【0019】
この点、上記の構成によれば、バッグ本体の形成に用いられる布片は、大布片及び小布片といった大きさの異なる2種類の布片である。大布片は、表下布部、裏下布部及び表上布部を有し、小布片は裏上布部を有する。表下布部及び裏下布部が、上側の周縁部とは異なる周縁部において結合されることにより、下膨張部が形成される。表上布部及び裏上布部が、下側の周縁部とは異なる周縁部において結合されることにより、上膨張部が形成される。表上布部及び表下布部は大布片の一部であって、互いに繋がっている。さらに、裏上布部の下側の周縁部と、裏下布部の上側の周縁部とが結合される。上記バッグ本体では、上膨張部が下端部において下膨張部の上端部に繋がった状態となる。バッグ本体における下膨張部及び上膨張部は、互いに繋がって一体となった、1つの容量の大きな膨張部とみなすことができる。
【0020】
従って、膨張用ガスを、バッグ本体の膨張の初期から下膨張部及び上膨張部に供給することが可能となる。バッグ本体の内圧は、同バッグ本体の膨張の初期に、膨張用ガスが専ら下膨張部に供給される場合(特許文献1がこれに該当する)の同下膨張部の内圧よりも低くなる。上膨張部及び下膨張部がともに織布によって形成される場合、上記内圧に耐え得る織布として、特許文献1に記載されたバッグ本体における織布よりも、繊度の低い糸からなる織布を用いることが可能となる。繊度の低い糸からなる織布は、繊度の高い糸からなる織布よりも薄い。従って、エアバッグが折り曲げにくくなることが起こりにくい。また、折り畳まれて収納用形態にされたときのエアバッグの大きさを小さくすることが可能である。
【0021】
上記エアバッグ装置において、前記バッグ本体が前記非膨張展開形態にされている前記エアバッグでは、前記裏上布部の前記裏下布部に対する結合箇所の少なくとも一部は、前記内部テザーにおける前記裏端部の結合箇所よりも低く、かつ前記表端部の結合箇所よりも高い箇所に位置していることが好ましい。
【0022】
ここで、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグの折り曲げやすさは、内部テザーが平面状をなしているかどうかのほかにも、次の箇所からも影響を受ける。
・裏上布部の裏下布部に対する結合箇所
・内部テザーにおける裏端部の結合箇所
・内部テザーにおける表端部の結合箇所
特に、裏上布部の裏下布部に対する結合箇所の高さと、裏端部の結合箇所の高さとが同一であると、その高さでは両結合箇所が重なり、エアバッグの厚みが増す。同様に、裏上布部の裏下布部に対する結合箇所の高さと、表端部の結合箇所の高さとが同一であると、その高さでは両結合箇所が重なり、エアバッグの厚みが増す。
【0023】
この点、上記の構成によれば、裏上布部の裏下布部に対する結合箇所の少なくとも一部は、裏端部の結合箇所よりも低く、かつ表端部の結合箇所よりも高い。裏上布部の裏下布部に対する結合箇所の少なくとも一部が裏端部の結合箇所に重ならず、全体が重なる場合に比べ、エアバッグの厚みが小さくなる。同様に、裏上布部の裏下布部に対する結合箇所の少なくとも一部が表端部の結合箇所に重ならず、全体が重なる場合に比べ、エアバッグの厚みが小さくなる。
【0024】
従って、エアバッグは収納用形態にされる際に、一層折り曲げやすい。また、収納用形態にされたときに、エアバッグが過度に大きくなることが一層起こりくい。
【発明の効果】
【0025】
上記エアバッグ装置によれば、上膨張部を上側ほど乗員に近づくように傾斜させるエアバッグを備えるエアバッグ装置において、収納用形態にされる際のエアバッグの折り畳みやすさの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態において、ファーサイドエアバッグ装置が適用された車両の部分平面図である。
【
図2】上記実施形態において、車両用シート、エアバッグ、コンソールボックス及び乗員を車両前方から見た概略断面図である。
【
図3】上記実施形態において、エアバッグモジュールが組み込まれたシートバックの側部の内部構造を示す部分平断面図である。
【
図4】上記実施形態において、ファーサイドエアバッグ装置が設けられた車両用シート及びその周辺部分を乗員及びエアバッグとともに示す部分側面図である。
【
図5】上記実施形態において、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグモジュールを反乗員側から見た側面図である。
【
図6】
図5におけるエアバッグモジュールの内部構造を示す側断面図である。
【
図7】上記実施形態において、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグモジュールを乗員側から見た側面図である。
【
図10】上記実施形態において、裏上補強布及び内部テザーが結合された裏上布部の側面図である。
【
図11】上記実施形態において、各種補強布が結合されたインナチューブの展開図である。
【
図12】上記実施形態における外部テザーの側面図である。
【
図13】上記実施形態において、各種補強布が結合された大布片の展開図である。
【
図14】上記実施形態におけるエアバッグの製作途中の形態を示す展開図である。
【
図15】上記実施形態において、バッグ本体が非膨張展開形態にされているエアバッグの位置関係を説明する説明図である。
【
図16】上記実施形態において、エアバッグが収納用形態にされているエアバッグモジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、エアバッグ装置を、車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が、予め定められた正規の姿勢で着座しているものとする。
【0028】
図1に示すように、車両10の左右方向における両側部は、ドア、ピラー等からなる側壁部11,12によって構成されている。車室内には、車両用シート13,14が、左右方向に並べられた状態で配置されている。側壁部11に近い側の車両用シート13は運転席として機能するものであり、ここに乗員(運転者)P1が着座する。側壁部12に近い側の車両用シート14は助手席として機能するものであり、ここに乗員P2が着座する。両車両用シート13,14間の下部には、コンソールボックス18が設置され、床等に固定されている。車両用シート13,14は互いに同様の構成を有している。そのため、ここでは一方の車両用シート13についてのみ説明し、車両用シート14については説明を省略する。
【0029】
図2及び
図4に示すように、車両用シート13は、シートクッション15、シートバック16及びヘッドレスト17を備えている。シートクッション15は、乗員P1が着座する箇所である。シートバック16は、乗員P1の上半身を後方から支えるためのものである。シートバック16は、シートクッション15の後方から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されている。ヘッドレスト17は、乗員P1の頭部PHを後方から支えるためのものであり、シートバック16上に配置されている。
【0030】
車両用シート13は、シートバック16が前方を向く姿勢で配置されている。このように配置された車両用シート13の幅方向は、左右方向と合致する。
図3は、シートバック16の幅方向における両側の側部のうち、隣の車両用シート14側の側部21の内部構造を示している。シートバック16の内部には、その骨格部分をなすシートフレームが配置されている。
【0031】
側部21の内部には、シートフレームの一部を構成するサイドフレーム部22が配置されている。サイドフレーム部22は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。
【0032】
サイドフレーム部22を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド23が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード24が配置されている。なお、シートパッド23は表皮によって被覆されているが、
図3ではその表皮の図示が省略されている。
【0033】
シートパッド23内において、サイドフレーム部22よりも隣の車両用シート14側には、収納部25が設けられている。収納部25には、ファーサイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABMが組み込まれている。
【0034】
収納部25の前部の角部からは、隣の車両用シート14側の斜め前側方に向けてスリット26が延びている。シートパッド23の前側の角部23cとスリット26とによって挟まれた箇所(
図3において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、エアバッグ41によって破断される破断予定部27を構成している。
【0035】
エアバッグモジュールABMは、エアバッグ41と、同エアバッグ41に膨張用ガスを供給するガス発生器31とを主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0036】
<ガス発生器31>
図3及び
図5に示すように、ガス発生器31は、インフレータ32と、そのインフレータ32を覆うリテーナ33とを備えている。ここでは、インフレータ32として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ32は円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生する図示しないガス発生剤が収容されている。インフレータ32は、その上端部にガス噴出部32aを有している。また、インフレータ32の下端部には、同インフレータ32への作動信号の入力配線となる図示しないケーブルが接続されている。
【0037】
なお、インフレータ32としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0038】
一方、リテーナ33は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ32をエアバッグ41と一緒にサイドフレーム部22に締結する機能を有する部材である。リテーナ33の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ33の互いに上下方向へ離間した複数箇所、本実施形態では2箇所には、同リテーナ33をサイドフレーム部22に取付けるための部材として、隣の車両用シート14から遠ざかる側へ延びるボルト34が固定されている。なお、ガス発生器31は、インフレータ32とリテーナ33とが一体になったものであってもよい。
【0039】
<エアバッグ41>
図5及び
図6に示すように、エアバッグ41は、その外殻部分を構成するバッグ本体42、内部テザー75、インナチューブ81及び外部テザー101を備えている。
【0040】
[バッグ本体42]
図5及び
図7は、バッグ本体42が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた形態(以下「非膨張展開形態」という)のエアバッグモジュールABMを示している。また、
図6は、
図5におけるエアバッグモジュールABMの内部構造を示している。
【0041】
図4~
図7に示すようにバッグ本体42は、下膨張部43及び上膨張部51を備えている。下膨張部43は、乗員P1の首部PNよりも下側の部位のうち、少なくとも胸部PT、本実施形態では、胸部PT、腹部PB等の側方で展開及び膨張する。
【0042】
図5、
図7及び
図13に示すように、下膨張部43は、表下布部44、表下補強布45、裏下布部46及び裏下補強布47を備えている。表下布部44は、乗員P1に近い側に位置する。表下補強布45は、表下布部44の周縁部の一部に重ねられた状態で配置されている。表下補強布45は、結合部49によって表下布部44に結合されている。裏下布部46は、乗員P1から遠い側に位置する。裏下補強布47は、裏下布部46の周縁部の一部に重ねられた状態で配置されている。裏下補強布47は、後述する突部46aの上側の周縁部に重ねられた状態で配置された裏下突部補強部47aを含んでいる。裏下補強布47は、結合部50によって裏下布部46に結合されている。
【0043】
下膨張部43は、表下補強布45及び裏下補強布47を間に挟んだ状態で、表下布部44及び裏下布部46を、上側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成されている。この結合は、下周縁結合部61によってなされている。
【0044】
図2に示すように、下膨張部43は、左右方向の膨張厚みが上端部で最大となり、下側ほど徐々に小さくなり、下端部で最小となるように形成されている。下膨張部43は、上端部に、隣の車両用シート14のシートバック16に接触する接触部48を有している。
【0045】
下膨張部43は、展開及び膨張したときに、下端部が次の条件を満たす形状及び大きさとなるように形成されている。その条件とは、下膨張部43の下端が、コンソールボックス18の上面18tよりも下方に位置することである。
【0046】
これに対し、上膨張部51は、乗員P1の胸部PTよりも上側の部位の側方で展開及び膨張する。
図6、
図7、
図10及び
図13に示すように、上膨張部51は、表上布部52、裏上布部53及び裏上補強布54を備えている。表上布部52は乗員P1に近い側に位置し、裏上布部53は乗員P1から遠い側に位置する。裏上補強布54は、裏上布部53の下側の周縁部に重ねられた状態で配置されている。裏上補強布54は、結合部59によって裏上布部53に結合されている。
【0047】
上膨張部51は、表上布部52と裏上布部53とを、下側の周縁部とは異なる周縁部において結合させることにより形成されている。この結合は、上周縁結合部62によってなされている。
【0048】
図10及び
図13に示すように、表下布部44、裏下布部46及び表上布部52は、大布片56により一体に形成されている。裏上布部53は、上記大布片56よりも小さな小布片57によって形成されている。大布片56及び小布片57は、基布、パネル布等とも呼ばれる。
【0049】
展開状態の大布片56の左右方向における中央部には、上下方向に延びる折り線58が設定されている。大布片56は、折り線58に沿って折り曲げられている。この折り曲げにより、裏下布部46が表下布部44に対し重ね合わされている。上記裏下布部46は、自身の上部に、上方へ突出する突部46aを有している(
図5、
図8参照)。
【0050】
裏上布部53の下部を除く大部分の形状は、大布片56における表上布部52の形状に対し線対称の関係を有している。裏上布部53は、自身の下部に、下方へ突出する突部53aを有している(
図8参照)。
【0051】
裏上布部53における突部53aの周縁部、すなわち、裏上布部53の下側の周縁部は、裏下布部46の突部46aの周縁部、すなわち、裏下布部46の上側の周縁部に対し結合されている。この結合は、両突部46a,53aの間に上記裏下突部補強部47a及び裏上補強布54を介在させた状態で、中間周縁結合部63によってなされている(
図5、
図8参照)。
【0052】
上記結合部49,50,59、下周縁結合部61、上周縁結合部62及び中間周縁結合部63は、それぞれ布部を縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。
上記縫製に関し、本実施形態では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線である。この線種は、縫糸を側方から見た状態を示している(例えば、
図5における下周縁結合部61、上周縁結合部62等参照)。2つ目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線である。この線種は、裏下布部46、裏上布部53等の奥に位置していて直接は見えない縫糸の状態を示している(
図6における上結合部92、下結合部94等参照)。3つ目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線(破線の一種)である。この線種は、縫合の対象となる表下布部44及び裏下布部46の間や、表上布部52及び裏上布部53の間における縫糸の状態を示している(
図6における下周縁結合部61、上周縁結合部62等参照)。従って、縫製が3つ目の線種で表現されている図は、縫製部分を通る断面に沿った断面構造を示している。
【0053】
これらの点は、後述する前結合部68、後結合部69、裏結合部76、表結合部77、結合部86、上結合部92、下結合部94及び結合部95,102についても同様である。
【0054】
なお、本実施形態では、折り線58が下膨張部43の後端部に位置するように大布片56(
図13参照)が二つ折りされているが、折り線58が他の端部、例えば前端部、下端部等に位置するように大布片56が二つ折りされてもよい。
【0055】
大布片56及び小布片57は、ポリエステル糸、ポリアミド糸等からなる織布によって形成されており、高い強度と可撓性とを有している。
図5及び
図7に示すように、非膨張展開形態のバッグ本体42の前端部には、表下布部44、裏下布部46、表上布部52及び裏上布部53の境界部分である前境界部66が存在する。前境界部66には、下周縁結合部61、上周縁結合部62及び中間周縁結合部63に跨がった状態で、表上布部52、表下布部44、裏上布部53及び裏下布部46を結合する前結合部68が設けられている。この前結合部68により、バッグ本体42の内部の膨張用ガスが前境界部66から漏れ出るのを規制し、漏出に起因するバッグ本体42の内圧低下を抑制するようにしている。
【0056】
また、非膨張展開形態のバッグ本体42の後端部には、表下布部44、裏下布部46、表上布部52及び裏上布部53の境界部分である後境界部67が存在する。後境界部67には、上周縁結合部62及び中間周縁結合部63に跨がった状態で、表上布部52、表下布部44、裏上布部53及び裏下布部46を結合する後結合部69が設けられている。この後結合部69により、バッグ本体42の内部の膨張用ガスが後境界部67から漏れ出るのを規制し、漏出に起因するバッグ本体42の内圧低下を抑制するようにしている。
【0057】
互いに重ね合わされた表下布部44及び裏下布部46のそれぞれの後下端部では、下周縁結合部61による結合がなされていない。この箇所は、上記ガス発生器31の挿入口71を構成している。下膨張部43において挿入口71よりも上方の部分は、バッグ本体42をサイドフレーム部22(
図3参照)に固定するための固定部72を構成している。
【0058】
[内部テザー75]
図2に示すように、エアバッグ41は、バッグ本体42の上部内に内部テザー75を備えている。
図6、
図8及び
図10に示すように、内部テザー75は、バッグ本体42と同様の素材からなる布片によって構成されている。バッグ本体42が非膨張展開形態にされたとき、内部テザー75は、前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも長い略矩形状をなす。内部テザー75の上端部は、上膨張部51が膨張したときに乗員P1から遠い側に位置する裏端部75aとなる。内部テザー75の下端部は、上膨張部51が膨張したときに乗員P1に近い側に位置する表端部75bとなる(
図2参照)。
【0059】
内部テザー75の裏端部75aは、裏上布部53に対し、裏結合部76によって結合されている。
図15に示すように、裏結合部76による裏端部75aの結合箇所は、中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所よりも高い箇所に設定されている。
【0060】
図6、
図8及び
図10に示すように、内部テザー75の表端部75bは、表上布部52及び表下布部44の境界部分に対し、表結合部77によって結合されている。
図8及び
図15に示すように、表結合部77による表端部75bの結合箇所は、上記中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の大部分よりも低い箇所に設定されている。表現を変えると、中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の大部分は、裏結合部76による裏端部75aの結合箇所と、表結合部77による表端部75bの結合箇所とによって挟まれた領域Z1に設定されている。なお、ここでの結合箇所の大部分とは、同結合箇所における前端部及び後端部を除く部分である。
【0061】
上記の結合態様により、内部テザー75は、裏上布部53と、表上布部52及び表下布部44の境界部分との間に架け渡されている。
図8に示すように、内部テザー75は、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているとき、平面状をなしている。また、
図2に示すように、内部テザー75はバッグ本体42の展開及び膨張に伴い緊張状態になることで、上膨張部51を、上側ほど乗員P1の首部PN及び頭部PHに近づくように傾斜させる。
【0062】
[インナチューブ81]
図6に示すように、エアバッグ41は、下膨張部43内にインナチューブ81を備えている。インナチューブ81は、ガス発生器31の少なくともガス噴出部32aを取り囲んでいる。インナチューブ81は、ガス噴出部32aから噴出された膨張用ガスを下方及び上方へ向かうように整流する機能を有している。
【0063】
図11及び
図14に示すように、インナチューブ81の形成のために、バッグ本体42と同様の素材からなる布片82が1枚又は複数枚(本実施形態では2枚)用いられている(
図8参照)。展開状態の各布片82の左右方向における中央部には、上下方向へ延びる折り線83が設定されている。
【0064】
図6及び
図11に示すように、複数枚の布片82は、同布片82の上部において、折り線83を跨いだ状態で配置された上補強布91によって補強されている。複数の布片82と上補強布91とは、上結合部92によって結合されている。複数枚の布片82は、上記上補強布91よりも下方において折り線83を跨いだ状態で配置された下補強布93によって補強されている。複数の布片82と下補強布93とは、下結合部94によって結合されている。
【0065】
図6及び
図14に示すように、インナチューブ81は、折り線83が大布片56の折り線58に合致させられた状態で、結合部95によって大布片56に結合されている。
布片82は、折り線83に沿って二つ折りされて重ね合わされている。ここでは、布片82のうち、重ね合わされた2つの部分を区別するために、乗員P1に近い側に位置するものを表布部84といい、乗員P1から遠い側に位置するものを裏布部85というものとする。
【0066】
重ね合わされた表布部84及び裏布部85のそれぞれにおいて、折り線83から遠い側(前側)の周縁部には補強布78が重ねられた状態で配置されている。乗員P1に近い側の補強布78は、表布部84に対し結合部79によって結合されている。乗員P1から遠い側の補強布78は、裏布部85に対し結合部79によって結合されている。重ね合わされた表布部84及び裏布部85の前部は、両補強布78を間に挟んだ状態で、結合部86によって相互に結合されている。
【0067】
また、
図6に示すように、重ね合わされた表布部84及び裏布部85の下部の一部は、上記下周縁結合部61の一部によって、表下布部44及び裏下布部46に共縫いされている。重ね合わされた表布部84及び裏布部85の後端縁(折り線83)を除く3箇所には、相互に結合されていない箇所が設定されている。
【0068】
重ね合わされた表布部84及び裏布部85のそれぞれの前下部において相互に結合されていない箇所は、ガス流出口87を構成している。ガス流出口87は下方に向けて開口している。
【0069】
重ね合わされた表布部84及び裏布部85のそれぞれの上端部において相互に結合されていない箇所は、ガス流出口88を構成している。ガス流出口88は、上方に向けて開口している。
【0070】
重ね合わされた表布部84及び裏布部85のそれぞれの後下部において相互に結合されていない箇所は、ガス発生器31の挿入口89を構成している。挿入口89は下方へ向けて開口している。
【0071】
インナチューブ81は、ガス流出口87,88の間に流出孔90を有している。流出孔90は、インナチューブ81から下膨張部43へ流出する膨張用ガスの流量を調整するために設けられている。本実施形態では、流出孔90が、表布部84及び裏布部85のそれぞれに形成されているが、一方のみに形成されてもよい。
【0072】
なお、インナチューブ81は、折り線83が自身の前端部に位置するように二つ折りされてもよい。この場合には、表布部84及び裏布部85は、それらの後端部において相互に結合されることになる。また、インナチューブ81は、表布部84及び裏布部85が折り線83に沿って分離されたものであってもよい。
【0073】
[ガス発生器31の配置態様]
図5及び
図6に示すように、ガス発生器31の多くの部分は、挿入口71,89を通じて、バッグ本体42の後端部内であって、インナチューブ81内に挿入されている。さらに、
図9に示すように、各ボルト34が挿入口71,89の上方で表布部84及び表下布部44に挿通されることにより、同ガス発生器31がインナチューブ81及びバッグ本体42に対し位置決めされた状態で係止されている。ボルト34の多くの部分は、バッグ本体42の外部に露出されている。
【0074】
[外部テザー101]
図5、
図8及び
図12に示すように、外部テザー101は、バッグ本体42と同様の素材からなる布片によって形成されていて、全体として帯状をなしている。
【0075】
外部テザー101の一方の端部101aは、裏上布部53の下側の周縁部と、裏下布部46の上側の周縁部とに対し、上記中間周縁結合部63とは別に設けられた結合部102によって結合されている。なお、上記端部101aは、中間周縁結合部63が利用されて、裏上布部53及び裏下布部46に共縫いされてもよい。
【0076】
外部テザー101の他方の端部101bには孔101cがあけられている。
<エアバッグモジュールABMの配置態様>
ところで、
図5及び
図7に示すように、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41は、折り畳まれることにより、
図16に示すようにコンパクトな収納用形態にされている。これに伴い、ガス発生器31及びエアバッグ41を主要な構成部材として有するエアバッグモジュールABMもまたコンパクトにされている。エアバッグ41は、結束テープ105によって収納用形態に保持されている。
【0077】
上記エアバッグモジュールABMは、バッグ本体42の大部分をガス発生器31の前方に位置させた状態で、
図3に示す収納部25に収納されている。そして、バッグ本体42から露出するボルト34が、サイドフレーム部22に対し、隣の車両用シート14側から挿通され、同ボルト34にナット35が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器31が、バッグ本体42の固定部72及びインナチューブ81(
図3では図示略)と一緒にサイドフレーム部22に固定されている。
【0078】
なお、ガス発生器31は、上述したボルト34及びナット35とは異なる部材によってサイドフレーム部22に固定されてもよい。また、リテーナ33が用いられることなくインフレータ32がサイドフレーム部22に直接固定されてもよい。
【0079】
図2に示すように、外部テザー101の端部101bは、車両用シート13の側部21に対するバッグ本体42の固定部72の固定部分に係止される。本実施形態では、この固定部分として、ガス発生器31の一方のボルト34が利用される。
【0080】
すなわち、外部テザー101は、バッグ本体42の車両用シート14(側壁部12)側の面に沿って斜め後下方へ延ばされる。さらに、外部テザー101は、固定部72の後方を通って、バッグ本体42の車両用シート13(側壁部11)側へ回り込ませられる。そして、上記端部101bの孔101cに対し、上側に位置するボルト34が挿通されることで、端部101bが上側のボルト34に係止される。
【0081】
このようにすることで、外部テザー101は、車両用シート13の側部21に対する固定部72の固定部分と、裏上布部53及び裏下布部46の結合部分との間に架け渡される。
【0082】
<ファーサイドエアバッグ装置のその他の構成>
ファーサイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABMのほかに、
図4に示す衝撃センサ111及び制御装置112を備えている。衝撃センサ111は加速度センサ等からなり、側壁部12に対し側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置112は、コンピュータプログラム(ソフトウエア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウエア回路、あるいはそれらの組合わせ、を含む回路として構成されている。制御装置112は、衝撃センサ111からの検出信号に基づきガス発生器31の作動を制御する。本実施形態では、制御装置112は、衝撃センサ111が側壁部12に対し、側方から所定値以上の大きさの衝撃が加わったことを検出した場合に、ガス発生器31に対し、同ガス発生器31を作動させるための作動信号を出力する。
【0083】
また、図示はしないが、車室内には、乗員P1を車両用シート13に拘束するためのシートベルト装置と、乗員P2を車両用シート14に拘束するためのシートベルト装置とが設けられている。
【0084】
<実施形態の作用及び効果>
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
【0085】
<(1)エアバッグ41の折り畳みやすさ、収納性について>
(1-1)
図5及び
図7に示すように、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41は、折り畳まれることにより、
図16に示す収納用形態にされる。収納用形態にされる際のエアバッグ41の折り曲げやすさは、
図6及び
図8に示す内部テザー75から影響を受ける。また、収納用形態にされたエアバッグ41の大きさは、内部テザー75から影響を受ける。
【0086】
バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41において、仮に、内部テザー75がたるんでいたり折り曲げられたりしていると、その分、同エアバッグ41の厚みが増す。そのため、エアバッグ41は、収納用形態にされる際に、折り曲げにくくなる。また、エアバッグ41は、折り畳まれて収納用形態にされると、上記たるみ、折り曲げ等の分、大きくなる。
【0087】
この点、本実施形態では、
図15に示すように、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41において、内部テザー75は、
図6及び
図8に示すように平面状をなしている。内部テザー75は、たるんでおらず、また折り曲げられてもいない。そのため、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41の厚みが、内部テザー75のたるみ、折り曲げ等に起因して増すことがない。従って、バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41が収納用形態にされる際に、折り曲げやすい。また、エアバッグ41は、収納用形態にされたときに過度に大きくなることが起こりにくい。
【0088】
(1-2)バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41の折り曲げやすさは、上述したように、内部テザー75が平面状をなしているかどうかのほかにも、次の箇所からも影響を受ける(
図8参照)。
【0089】
・中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所
・裏結合部76による裏端部75aの結合箇所
・表結合部77による表端部75bの結合箇所
特に、中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の高さと、裏結合部76による裏端部75aの結合箇所の高さとが仮に同一であると、その高さでは両結合箇所が重なり、エアバッグ41の厚みが増す。同様に、中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の高さと、表結合部77による表端部75bの結合箇所の高さとが仮に同一であると、その高さでは両結合箇所が重なり、エアバッグ41の厚みが増す。
【0090】
この点、本実施形態では、
図8及び
図15に示すように、中間周縁結合部63による裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の全体は、裏結合部76による裏端部75aの結合箇所よりも低い箇所に位置する。また、上記裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の大部分は、表結合部77による表端部75bの結合箇所よりも高い箇所に位置する。裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の全体は、裏結合部76による裏端部75aの結合箇所に重ならず、同全体が重なる場合に比べ、エアバッグ41の厚みが小さくなる。同様に、裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の大部分は、表結合部77による表端部75bの結合箇所に重ならず、全体が重なる場合に比べ、エアバッグ41の厚みが小さくなる。
【0091】
従って、エアバッグ41は、収納用形態にされる際に一層折り曲げやすい。また、エアバッグ41は、収納用形態にされたときに、過度に大きくなることが一層起こりにくい。
(1-3)上記特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、下膨張部と上膨張部とが互いに独立していて、連通孔においてのみ連通している。バッグ本体では、膨張用ガスにより、まず下膨張部が展開及び膨張する。下膨張部がある程度展開及び膨張した後に、同下膨張部内の膨張用ガスが連通孔を通って上膨張部に供給される。そのため、バッグ本体の膨張の初期には、下膨張部の内圧が高くなる。下膨張部は、高い内圧に耐え得るように、繊度の高い糸からなる織布によって形成される必要がある。しかし、糸の繊度が高くなるに従い、織布の厚みが増し、エアバッグが折り曲げにくくなる。また、折り畳まれて収納用形態にされたときにエアバッグが過度に大きくなる。エアバッグを車両用シートに収納する際に大きなスペースが必要となり、収納性が低下する。
【0092】
この点、
図13及び
図10に示すように、本実施形態において、バッグ本体42の形成に用いられる布片は、大布片56及び小布片57といった大きさの異なる2種類の布片である。大布片56は、表下布部44、裏下布部46及び表上布部52を有し、小布片57は裏上布部53を有する。
図5及び
図7に示すように、表下布部44及び裏下布部46が、上側の周縁部とは異なる周縁部において結合されることにより、下膨張部43が形成される。表上布部52及び裏上布部53が、下側の周縁部とは異なる周縁部において結合されることにより、上膨張部51が形成される。表上布部52及び表下布部44は大布片56の一部であって、互いに繋がっている。さらに、裏上布部53の下側の周縁部と、裏下布部46の上側の周縁部とが結合されている。バッグ本体42では、上膨張部51が下端部において下膨張部43の上端部に繋がった状態となる。バッグ本体42における下膨張部43及び上膨張部51は、互いに繋がって一体となった、1つの容量の大きな膨張部とみなすことができる。
【0093】
従って、バッグ本体42の膨張の初期から下膨張部43及び上膨張部51に対し、膨張用ガスを供給することが可能となる。バッグ本体42の内圧は、同バッグ本体42の膨張の初期に、膨張用ガスが専ら下膨張部に供給される場合(特許文献1がこれに該当する)の同下膨張部の内圧よりも低くなる。
【0094】
上記内圧に耐え得る織布として、特許文献1に記載されエアバッグにおける織布よりも、繊度の低い糸からなる織布を用いることができる。繊度の低い糸からなる織布は、繊度の高い糸からなる織布よりも薄く柔らかい。
【0095】
従って、本実施形態におけるエアバッグ41は折り畳みやすく、折り畳み性に優れる。また、折り畳まれて収納用形態にされたときにエアバッグ41が小さくなる。エアバッグ41が収納用形態にされたエアバッグモジュールABMを車両用シート13に搭載するのに必要なスペースが小さくなる。小さな収納部25に対してもエアバッグモジュールABMを収納することができ、収納性が向上する。
【0096】
<(2)車両10に対し側方から衝撃が加わらないとき>
図1及び
図4において、車両10の走行中等に、側壁部12に対し側方から所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ111によって検出されないときには、制御装置112からガス発生器31に対し、上記作動信号が出力されず、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ41は、
図3に示すように、収納用形態で収納部25に収納され続ける。
【0097】
<(3)車両10に対し側方から衝撃が加わったとき>
側壁部12が特定側壁部とされて、この側壁部12に対し、
図1において矢印で示すように、側突等による衝撃が側方から加わると、衝撃の加わった側壁部12から遠い側である運転席側の乗員P1の上半身が、慣性により側壁部12側へ移動しようとする。この移動には、側壁部12側へ倒れ込む動きも含まれる。
【0098】
これに対し、側壁部12に側方から所定値以上の衝撃が加わったことが
図4の衝撃センサ111によって検出されると、その検出信号に応じ制御装置112からガス発生器31に対し、上記作動信号が出力される。この作動信号に応じて、ガス発生器31のガス噴出部32aから膨張用ガスが噴出される。
【0099】
ガス発生器31の少なくともガス噴出部32aがインナチューブ81によって取り囲まれた本実施形態では、ガス噴出部32aから噴出された膨張用ガスはインナチューブ81内を流れる。
図6に示すように、インナチューブ81内を流れる膨張用ガスの一部は、各流出孔90から下膨張部43内に流れ、他の一部はガス流出口87を通り、下膨張部43内の下方に向かって流れる。下膨張部43に膨張用ガスが供給されることで、同下膨張部43の内圧が上昇する。下膨張部43は、折りを解消しながら、すなわち展開しながら膨張を開始する。
【0100】
また、ガス噴出部32aから噴出された膨張用ガスの他の一部は、ガス流出口88を通って上膨張部51に流入する。さらに、上膨張部51に対しては、上記流出孔90及びガス流出口87から流出して下膨張部43を経由した膨張用ガスの一部が流入する。これらの膨張用ガスにより、上膨張部51の内圧が上昇する。上膨張部51が展開及び膨張を開始する。
【0101】
これらの下膨張部43及び上膨張部51の展開及び膨張の過程で、結束テープ105(
図16参照)が破断される。上記のように展開及び膨張する下膨張部43及び上膨張部51は、
図3における収納部25の近くでシートパッド23を押圧し、破断予定部27においてシートパッド23を破断させる。その後も膨張用ガスの供給が続けられることにより、下膨張部43は、固定部72及びその周辺部分を収納部25内に残した状態で、同収納部25から車両用シート13の外部へ出る。その後も、膨張用ガスが供給されることで、下膨張部43及び上膨張部51が、展開及び膨張を続ける。
【0102】
ここで、コンソールボックス18と乗員P1との間の隙間は元々狭い。これに加え、乗員P1の上半身が慣性により、衝撃の加わった側へ移動するために、上記隙間は時間の経過とともに狭くなる。
【0103】
(3-1)この点、本実施形態では、インナチューブ81のガス流出口87から流出した膨張用ガスにより下膨張部43が早期に下方へ展開及び膨張する。また、
図2に示すように、下膨張部43は、左右方向の膨張厚みが下側ほど小さくなるように膨張する。そのため、下膨張部43の下端部は上記のような狭い隙間に入り込みやすい。
【0104】
(3-2)その後も膨張用ガスが供給される下膨張部43は、
図2及び
図4に示すように、車両用シート13,14間を前上方へ向けて展開及び膨張する。下膨張部43は、乗員P1の胸部PT及び腹部PBの側方で展開及び膨張する。
【0105】
側壁部12側へ移動しようとする乗員P1の腕部PA、胸部PT及び腹部PBによって下膨張部43が押される。この押圧によって、下膨張部43が固定部72を支点として、隣の車両用シート14側へ倒れようとする。
【0106】
この点、本実施形態では、下膨張部43の下端部は、コンソールボックス18と乗員P1との間で展開及び膨張する。下膨張部43においてコンソールボックス18の上面18tよりも低い部分は、コンソールボックス18と乗員P1との間に入り込んだ状態となる。下膨張部43の上記部分は、コンソールボックス18に接触することで、それ以上、側壁部12側へ動くことを、コンソールボックス18によって規制される。その結果、下膨張部43のうち、コンソールボックス18の上面18tよりも低い部分の位置が安定する。
【0107】
(3-3)
図2に示すように、下膨張部43は、左右方向の膨張厚みが上端部で最大となるように膨張する。そのため、下膨張部43の上端部の接触部48は、隣の車両用シート14のシートバック16のうち、乗員P1側の側部に接触する。この接触により、下膨張部43が隣のシートバック16によって受け止められる。下膨張部43は、それ以上倒れることを隣のシートバック16によって規制される。胸部PT及び腹部PBは、上記隣のシートバック16に対し、接触部48において接触した下膨張部43によって受け止められ、車両用シート14側への移動を規制される。乗員P1の上半身の移動を規制して、同上半身を衝撃から保護するエアバッグ41の性能が高められる。
【0108】
(3-4)また、膨張用ガスが上膨張部51に供給されると、同上膨張部51が乗員P1の首部PN及び頭部PHの側方で、展開及び膨張する。
上膨張部51の上記展開及び膨張に伴い、表上布部52及び裏上布部53が車両用シート13の幅方向のうち互いに遠ざかる側へ拡がろうとする。しかし、表上布部52及び裏上布部53の上記動きに伴い内部テザー75が引っ張られる。内部テザー75は、裏端部75aが表端部75bよりも高い箇所に位置するように傾斜した姿勢で緊張状態になる。バッグ本体42において内部テザー75の架け渡された箇所のそれ以上の膨張が規制される。また、裏上布部53において裏端部75aが結合された箇所に対し、表上布部52及び表下布部44の境界部分であって表端部75bが結合された箇所に向かう力(引っ張り力)が作用する。表端部75bの結合箇所は、裏端部75aの結合箇所よりも低い。そのため、上膨張部51は、上側ほど首部PN及び頭部PHに近づくように傾斜した状態になる。上膨張部51は、傾斜しない場合に比べ首部PN及び頭部PHに近づく。
【0109】
上膨張部51と頭部PH及び首部PNとの間隔は、同上膨張部51が傾斜しない場合よりも狭い。そのため、胸部PT及び腹部PBが下膨張部43によって受け止められた状態で、乗員P1の首部PN及び頭部PHが慣性により、側壁部12側へ移動しようとすると、首部PN及び頭部PHは少ない移動量で上膨張部51に接触する。首部PN及び頭部PHは、早期に上膨張部51によって受け止められる。従って、上膨張部51が乗員P1側へ傾斜しない場合に比べ、首部PN及び頭部PHを衝撃から保護する性能が向上する。
【0110】
(3-5)バッグ本体42の上記展開及び膨張に伴い外部テザー101が引っ張られる。外部テザー101は、車両用シート13の側部21に対する固定部72の固定部分と、裏上布部53及び裏下布部46の結合部分との間で緊張状態になる。バッグ本体42の前方への展開及び膨張が、外部テザー101により規制される。この規制により、下膨張部43は車両用シート14(側壁部12)側へ展開及び膨張しやすくなる。接触部48を、隣のシートバック16のうち、車両用シート13側の側部に対し、より的確に接触させることができる。
【0111】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(4-1)特許文献1に記載されたバッグ本体では、下膨張部と上膨張部とが独立していて、両膨張部を、連通孔の周りで結合している。この結合構造を採ると、バッグ本体を形成するために、少なくとも3枚の布片が必要となる。連通孔を有する表下布部と、連通孔を有する表上布部とが用いられ、互いの連通孔が合致するように、表下布部と表上布部とが重ねられる。このことから、表下布部と表上布部とは別々の布片によって構成される。表下布部と表上布部とを、連通孔の周りで結合させるために、表上布部と裏上布部とは別々の布片によって構成される。このようにして、3枚の布片が用いられる。
【0112】
もちろん、表下布部と裏下布部として、別々の布片が用いられてもよく、この場合には、4枚の布片が用いられることになる。このように、特許文献1に記載されたエアバッグは多くの枚数の布片が必要となる。布片の枚数が多くなるに従い、折り畳まれて収納用形態にされたときのエアバッグの大きさが大きくなる。
【0113】
この点、本実施形態では、上述したように、下膨張部43と上膨張部51とを連通させた状態で繋ぎ、バッグ本体42を全体として1つの膨張部によって構成している。そのために、バッグ本体42を、表下布部44、表上布部52及び裏下布部46を有する大布片56と、裏上布部53を有する小布片57とによって形成している。従って、少ない布片によってバッグ本体42を形成することができる。折り畳まれて収納用形態にされたときのエアバッグ41の大きさを小さくすることができ、収納部25に対する収納性がよい。
【0114】
(4-2)特許文献1に記載されたエアバッグの形成に際しては、表下布部の周縁部及び裏下布部の周縁部を縫合する作業と、表下布部と表上布部とを、連通孔の周りで結合させる作業と、表上布部の周縁部及び裏上布部の周縁部を縫合する作業とが行なわれる。このことから、エアバッグを形成する作業が大変である。
【0115】
これに対し、本実施形態では、小布片57の周縁部を大布片56の周縁部に縫合させることで、小布片57を大布片56に結合させてバッグ本体42を形成しているため、特許文献1に記載された技術よりも簡単にバッグ本体42を形成することができる。
【0116】
(4-3)左右方向の膨張厚みを、上下方向のどの箇所でも一定となるように下膨張部43を膨張させることによっても、同下膨張部43を隣の車両用シート14のシートバック16に接触させることができる。しかし、その場合には、下膨張部43の容量が不要に大きくなってしまう。
【0117】
この点、本実施形態では、膨張厚みが上端部で最大となるように下膨張部43を形成している。すなわち、下膨張部43の左右方向の膨張厚みを、部分的に大きくしている。この膨張厚みの大きな箇所を隣の車両用シート14との接触部48としている。そのため、下膨張部43の容量を少なくすることができる。
【0118】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0119】
<ガス発生器31について>
・上記実施形態において、ガス発生器31のうち少なくともガス噴出部32aが固定部72の内部に配置されることを条件に、同ガス発生器31の配置態様が変更されてもよい。例えば、ガス発生器31の全体が固定部72の内部に配置されてもよい。
【0120】
また、ガス発生器31のうち、ガス噴出部32a及びその周辺部分のみが固定部72の内部に配置されてもよい。
<バッグ本体42について>
・上記実施形態において、バッグ本体42の固定部72は、サイドフレーム部22に代えて、車両用シート13の側部21を構成する部材のうち、同サイドフレーム部22と同程度に高い剛性を有する部材に固定されてもよい。
【0121】
・バッグ本体42は、上記実施形態のように、同バッグ本体42の略全体が膨張するものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0122】
・下膨張部43は、乗員P1の上半身の側方であって、首部PNよりも下側の部位のうち、少なくとも胸部PTの側方で展開及び膨張するものであることを条件に、上記上半身のうち、上記実施形態とは異なる部位の側方で展開及び膨張するものに変更されてもよい。
【0123】
例えば、下膨張部43は、上半身のうち、胸部PTよりも上側の部位の側方で展開及び膨張するものであってもよい。また、下膨張部43は、胸部PT及び腹部PBに加え、腰部の側方で展開及び膨張するものであってもよい。
【0124】
・バッグ本体42が非膨張展開形態にされているエアバッグ41において、裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の一部のみが、裏端部75aの結合箇所よりも低く、かつ表端部75bの結合箇所よりも高い箇所に位置してもよい。
【0125】
また、裏上布部53の裏下布部46に対する結合箇所の全体が、裏端部75aの結合箇所よりも低く、かつ表端部75bの結合箇所よりも高い箇所に位置してもよい。
<内部テザー75について>
・内部テザー75の表端部75bは、裏端部75aの結合箇所よりも低い箇所であることを条件に、表上布部52及び表下布部44のうち、上記実施形態の箇所(境界部分)とは異なる箇所に結合されてもよい。表端部75bが結合される対象は、表上布部52であってもよいし、表下布部44であってもよい。
【0126】
<インナチューブ81について>
・インナチューブ81からガス流出口88が省略されてもよい。
・上記実施形態において、インナチューブ81が適宜省略されてもよい。
【0127】
<外部テザー101について>
・外部テザー101の端部101bは、ガス発生器31における2本のボルト34のうち、上側に位置するボルト34に代え、又は加え、下側に位置するボルト34に係止されてもよい。
【0128】
・ガス発生器31においてボルト34とは異なる箇所に、端部101bが係止される箇所が別途設けられ、ボルト34に代え、又は加え、上記箇所に端部101bが係止されてもよい。
【0129】
・上記端部101bは、ガス発生器31に代えて、サイドフレーム部22に係止されてもよい。
・上記端部101bは、車両用シート13の側部21に対するバッグ本体42における固定部72の固定部分であることを条件に、同側部21を構成する部材のうち、サイドフレーム部22と同程度に高い剛性を有する部材に係止されてもよい。
【0130】
・上記実施形態において、外部テザー101が適宜省略されてもよい。
<ファーサイドエアバッグ装置の適用対象となる車両用シートについて>
・上記実施形態のファーサイドエアバッグ装置は、車両用シート13に代えて、又は加えて車両用シート14に適用されてもよい。ファーサイドエアバッグ装置が、例えば車両用シート14にのみ適用される場合には、エアバッグモジュールABMが、車両用シート14のうち、車両用シート13に近い側の側部21内に収納される。このようにすると、
図1における側壁部11が特定側壁部とされて、衝撃が側壁部11に加わった場合、エアバッグ41によって乗員P2を拘束して衝撃から同乗員P2を保護することができる。
【0131】
<エアバッグ装置の種類>
・上記エアバッグ装置は、ファーサイドエアバッグ装置に限らず、通常のサイドエアバッグ装置に適用されてもよい。この場合、車両用シート13,14のシートバック16のうち、隣の車両用シート14,13から遠い側、表現を変えると隣接する側壁部11,12に近い側の側部21内に、エアバッグモジュールABMが収納される。
【0132】
<その他>
・制御装置112は、側壁部11,12に衝撃が加わることを予測した場合に、ガス発生器31に作動信号を出力する仕様に変更されてもよい。
【0133】
・上記実施形態のファーサイドエアバッグ装置は、隣り合う車両用シート13,14間にコンソールボックス18が設置された車両10に適用されると、上述したように、バッグ本体42を起立した状態に保持することができ、特に大きな効果が得られる。しかし、上記実施形態のファーサイドエアバッグ装置は、コンソールボックスが設置されていない車両にも適用可能である。
【0134】
・上記エアバッグ装置は、シートバック16が車両10の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート13,14が配置された車両10にも適用可能である。
・上記実施形態では、車両用シート13が運転席とされ、車両用シート14が助手席とされたが、車両用シート13,14は、独立したものであれば、車両の後部座席(2列目以降の座席)であってもよい。この場合、後部座席の側方でエアバッグを展開及び膨張させることで、乗員を衝撃から保護する。
【0135】
・上記エアバッグ装置は、3つ以上の車両用シートがそれらの幅方向に並設された車両にも適用可能である。この場合、車両の特定側壁部に対し、衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合に、エアバッグを展開及び膨張させる。
【0136】
・上記エアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記エアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等に装備されて、乗物用シートの側方でエアバッグを展開及び膨張させることで、乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0137】
10…車両(乗物)
13,14…車両用シート(乗物用シート)
21…側部
41…エアバッグ
42…バッグ本体
43…下膨張部
44…表下布部
46…裏下布部
51…上膨張部
52…表上布部
53…裏上布部
56…大布片
57…小布片
75…内部テザー
75a…裏端部
75b…表端部
P1,P2…乗員
PN…首部
PT…胸部