(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240416BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20240416BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/22
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2021503437
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000655
(87)【国際公開番号】W WO2020179219
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019040863
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019075237
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110648
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 均志
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0287452(US,A1)
【文献】特開2008-092727(JP,A)
【文献】特開2016-127732(JP,A)
【文献】特開2017-028798(JP,A)
【文献】特開2001-238406(JP,A)
【文献】特開2004-260898(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030322(WO,A1)
【文献】特開2018-027003(JP,A)
【文献】特開2017-127118(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/22
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、
前記モータに供給される電流を制御するインバータと、
前記モータを収容するモータ収容部および前記インバータを収容するインバータ収容部を有するハウジング本体と、
前記インバータ収容部の開口を覆うとともに前記インバータを支持するインバータハウジングと、を備え、
前記ハウジング本体には、前記モータを冷却する第1の冷媒が流れる第1冷却経路が設けられ、
前記インバータハウジングには、前記インバータを冷却する第2の冷媒が流れる第2冷却経路が設けられ、
前記第1冷却経路は、前記ステータの外周面に沿って前記第1の冷媒が流れる遮蔽流路を含み、
前記遮蔽流路
は、前記インバータ収容部の内部
であるインバータ室と前記モータ収容部の内部
であるモータ室とを区画する
隔壁の内部を通過する、
モータユニット。
【請求項2】
前記モータと前記インバータとを繋ぐバスバーを備え、
前記バスバーは、前記インバータ収容部の内部で、前記壁部に沿って配置される、
請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記第1冷却経路と前記第2冷却経路とは、互いに独立して設けられる、
請求項1又は2記載のモータユニット。
【請求項4】
前記ハウジング本体は、前記壁部を有し、
前記インバータ収容部の内部において前記インバータと前記壁部との間には、隙間が設けられる、
請求項1~3の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記遮蔽流路は、前記モータ収容部の内側面と前記ステータの外周面と間の隙間に位置する、
請求項1~4の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記モータに接続されるギヤ部を備え、
前記ハウジング本体は、前記ギヤ部を収容するギヤ収容部を有し、
前記第1の冷媒は、オイルであり、
前記第1冷却経路は、前記ギヤ収容部の内部を通過する、
請求項1~5の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記第1の冷媒の熱を前記第2の冷媒に移動させる熱交換器を備える、
請求項1~6の何れか一項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。
本願は、2019年3月6日に日本に出願された特願2019-040863号、2019年4月11日に日本に出願された特願2019-075237号および2019年6月13日に日本に出願された特願2019-110648号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車の駆動装置として、インバータを備えたモータユニットが開示されている。たとえば、特許文献1には、モータハウジングの外周には冷却流路が形成されており、冷却水を流してモータを冷却する構造が開示されている。この駆動装置は、インバータおよびモータに接触するとともに内部を冷却水が流れる支持部材(冷却器)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構造では、支持部材は、モータおよびインバータの発熱量は互いに異なるため、1つの冷却水によりこれらを冷却する場合、それぞれを効率的に冷却し難いという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、モータ及びインバータを効率的に冷却できるモータユニットの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータユニットの一つの態様は、モータ軸線を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、前記モータに供給される電流を制御するインバータと、前記モータを収容するモータ収容部および前記インバータを収容するインバータ収容部を有するハウジング本体と、前記インバータ収容部の開口を覆うとともに前記インバータを支持するインバータハウジングと、を備える。前記ハウジング本体には、前記モータを冷却する第1の冷媒が流れる第1冷却経路が設けられる。前記インバータハウジングには、前記インバータを冷却する第2の冷媒が流れる第2冷却経路が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、モータ及びインバータを効率的に冷却できるモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータユニットを模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のモータユニットの断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のハウジングの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のハウジングの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のモータユニットの軸方向一方側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のモータユニットの部分断面図である。
【
図8】
図8は、変形例の閉塞部を有するモータユニットの斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例のインバータハウジングの拡大斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のモータユニットの分解斜視図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のモータユニットにおいて、インバータ室内に配置された第2のバスバーユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータユニットについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両右方であり、-Y方向が車両左方である。
【0011】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸線J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸線J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸線J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸線J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
以下に説明する実施形態において、モータ軸線J2は車両と平行に延びる。したがって、以下の説明において、軸方向は、車両の幅方向と平行な方向である。本明細書において、軸方向一方側は-Y側であり、軸方向他方側は+Y側である。
【0013】
また、本明細書において、所定の方向(又は平面)に「沿って延びる」とは、厳密に所定の方向に延びる場合に加えて、厳密な方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
以下、本発明の例示的な一実施形態に係るモータユニット1について説明する。本実施形態のモータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。すなわち、モータユニット1は駆動装置である。
【0015】
図1は、モータユニット1を模式的に示す概念図である。
図2は、モータユニット1の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、モータユニット1は、モータ軸線J2を中心として回転するモータ(メインモータ)2と、モータ2に接続されるギヤ部3と、ハウジング6と、油路90を循環するオイル(第1の冷媒)Oと、水路10を循環する冷却水(第2の冷媒)Wと、インバータ8と、を備える。インバータ8は、モータ2の外周面側に配置される。また、ギヤ部3は、モータ2の軸方向の何れか一方側(本実施形態において軸方向他方側)に配置される。
【0017】
ハウジング6の内部には、モータ2、ギヤ部3、及びインバータ8を収容する収容空間80が設けられる。ハウジング6は、収容空間80においてモータ2、ギヤ部3、及びインバータ8を保持する。収容空間80は、モータ2を収容するモータ室81と、ギヤ部3を収容するギヤ室82と、インバータ8の一部および接続線を収容するインバータ室83とに区画される。換言すれば、モータ室81は、モータ収容部6aの内部である収容空間のことであり、ギヤ室82は、ギヤ収容部6bの内部である収容空間のことであり、インバータ室83は、インバータ収容部6cの内部である収容空間のことである。
【0018】
収容空間80内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。本実施形態において、モータ室81の底部81aは、ギヤ室82の底部82aより上側に位置する。また、モータ室81とギヤ室82とを区画する第1隔壁60baには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ室81とギヤ室82とを連通させる。隔壁開口68は、モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOをギヤ室82に移動させる。したがって、本実施形態においてオイル溜りPは、ギヤ室82の下部領域に位置する。
【0019】
<モータ>
モータ2は、ハウジング6のモータ室81に収容される。モータ2は、水平方向に延びるモータ軸線J2を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、ロータ20を回転可能に支持する第1のベアリング26および第2のベアリング27と、を備える。本実施形態のモータ2は、インナーロータ型モータである。
【0020】
ロータ20は、図示略のバッテリからインバータ8を介してステータ30に交流電流が供給されることで回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、複数のロータマグネット(図示略)と、を有する。ロータ20(すなわち、シャフト21、ロータコア24およびロータマグネット)は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸線J2を中心として回転する。ロータ20のトルクは、ギヤ部3に伝達される。
【0021】
シャフト21は、モータ軸線J2を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸線J2を中心として回転する。シャフト21は、中空部22を有する中空シャフトである。シャフト21には、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを連通させる連通孔23が設けられる。
【0022】
シャフト21は、ハウジング6のモータ室81とギヤ室82とを跨って延びる。シャフト21の軸方向他方側の端部は、モータ室81からギヤ室82側に突出する。ギヤ室82側に突出するシャフト21の端部には、ギヤ部3の第1のギヤ41が固定されている。
【0023】
シャフト21は、2つのベアリング(第1のベアリング26および第2のベアリング27)により回転可能に支持される。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、モータ室81に位置する。また、第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ロータコア24を挟んでシャフト21の軸方向両側にそれぞれ位置する。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ハウジング6に保持される。より具体的には、第1のベアリング26は閉塞部61に保持され、第2のベアリング27は第1隔壁60baに保持される。
【0024】
ロータコア24は、珪素鋼板を積層して構成される。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア24には、複数のロータマグネット(図示略)が固定される。複数のロータマグネットは、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0025】
ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、円環状のコアバック部32aと、コアバック部32aから径方向内側に延びる複数のティース部32bと、を有する。ティース部32bには、コイル線が巻かれている。ティース部32bに掛けまわされたコイル線は、コイル31を構成する。すなわち、コイル31は、インシュレータを介してステータコア32に巻き付けられる。後述するように、コイル31から延び出るコイル線31bは、第1のバスバーユニット70(
図6参照)および第2のバスバーユニット77(
図9を介して)を介してインバータ8に接続される。
【0026】
コイル31は、一対のコイルエンド31aを有する。一方のコイルエンド31aは、ステータコア32の軸方向一方側の端面から軸方向に突出し、他方のコイルエンド31aは、ステータコア32の軸方向他方側の端面から軸方向に突出する。
【0027】
<ギヤ部>
ギヤ部3は、ハウジング6のギヤ室82に収容される。ギヤ部3は、モータ軸線J2の軸方向他方側においてシャフト21に接続される。ギヤ部3は、減速装置4と差動装置5とを有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0028】
<減速装置>
減速装置4は、モータ2のロータ20に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。
【0029】
減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0030】
第1のギヤ41は、モータ2のシャフト21の外周面に設けられる。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸線J2を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸線J2と平行な中間軸線J4に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸線J4を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。第2のギヤ42と第3のギヤ43とは、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸線J4を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0031】
<差動装置>
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の出力シャフト55に同トルクを伝える機能を有する。差動装置5は、リングギヤ51と、ギヤハウジング(不図示)と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ(不図示)と、を有する。
【0032】
リングギヤ51は、モータ軸線J2と平行な差動軸線J5を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。すなわち、リングギヤ51は、他のギヤを介してモータ2に接続される。
【0033】
<インバータ>
インバータ8は、モータ2と電気的に接続される。インバータ8は、モータ2に供給される電流を制御する。インバータ8は、ハウジング6のインバータハウジング63に固定される。
【0034】
図3は、モータ軸線J2と直交する平面に沿うモータユニット1の断面図である。
図3に示すようにインバータ8は、スイッチング素子(第1部材)8Aと、コンデンサ(第2部材)8Bと、パワー基板8Cと、インバータバスバー8dと、を有する。本実施形態のスイッチング素子8Aは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子8Aおよびコンデンサ8Bは、それぞれパワー基板8Cに接続される。インバータ8は、車両に搭載されるバッテリ(不図示)に接続され、バッテリから供給された直流電流を交流電流に変換して、モータ2に供給する。
【0035】
インバータバスバー8dは、スイッチング素子8Aから延び出る。インバータバスバー8dは、接続部8jにおいて、後述する第2のバスバー78に接続される。
【0036】
<ハウジング>
図4および
図5は、互いに異なる方向から見たハウジング6の分解斜視図である。
ハウジング6は、ハウジング本体60、閉塞部61、ギヤハウジング62、インバータハウジング63と、を備える。
【0037】
ハウジング本体60は、モータ収容部6aとギヤ収容部6bとインバータ収容部6cとを有する。すなわち、ハウジング6は、モータ収容部6aとギヤ収容部6bとインバータ収容部6cとを有する。モータ収容部6aは、軸方向一方側に開口する。ギヤ収容部6bは、軸方向他方側に開口する。インバータ収容部6cは、上側に開口する。閉塞部61、ギヤハウジング62およびインバータハウジング63は、ハウジング本体60に固定される。
【0038】
ハウジング本体60と閉塞部61とは、軸方向に対向して配置され、互いに固定される。閉塞部61は、ハウジング本体60のモータ収容部6aの開口を覆う。ハウジング本体60と閉塞部61とに囲まれた空間は、モータ2が収容されるモータ室81を構成する。
【0039】
ハウジング本体60とギヤハウジング62とは、軸方向に対向して配置され、互いに固定される。ギヤハウジング62は、ハウジング本体60のギヤ収容部6bの開口を覆う。ハウジング本体60とギヤハウジング62とに囲まれた空間は、ギヤ部3が収容されるギヤ室82を構成する。
【0040】
ハウジング本体60とインバータハウジング63とは、上下方向に対向して配置され、互いに固定される。インバータハウジング63は、ハウジング本体60のインバータ収容部6cの開口を覆う。ハウジング本体60とインバータハウジング63とに囲まれた空間は、インバータ8が収容されるインバータ室83を構成する。
【0041】
<ハウジング本体>
ハウジング本体60は、単一の部材である。ハウジング本体60は、軸方向に延びる筒状の周壁部60aと、軸方向と直交する平面に沿って延びる板状の第1側板部60bおよび第2側板部60cと、軸方向に沿って延びる板状の第1接続板部60dおよび第2接続板部60eと、を有する。
【0042】
周壁部60aは、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。周壁部60aは、モータ2を径方向外側から囲む。
【0043】
図2に示すように、周壁部60aの外周面には、モータ軸線J2に沿って延びる第1のリブ60aaと、モータ軸線J2の周方向に沿って延びる第2のリブ60abと、が設けられる。第1のリブ60aaおよび第2のリブ60abは、ハウジング本体60の剛性を高めて、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。また、第1のリブ60aaは、ハウジング本体60をダイカスト成型する際の湯切り壁として利用してもよい。なお、湯切り壁とは、ハウジング本体60を成形する金型同士の接合部分である。
【0044】
周壁部60aの外周面のうち、上側を向く領域には、モータ室81の内圧を調整するブリーザ装置9が設けられる。ブリーザ装置9は、ハウジング6の上側に設けることが好ましい。これにより、車両が坂道を走行する場合であってもモータ室81内のオイルOが、ブリーザ装置9内に侵入することを抑制することができる。結果的に、車両が坂道を走行する場合であっても、ブリーザ装置9が、モータ室81の内圧を適切に調整できる。
【0045】
図4に示すように、第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側(-Y側)の端部に位置する。第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側の端部に接続される。第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側(-Y側)の縁部から車両後方側に延びる。第1側板部60bは、インバータ8の軸方向一方側に位置する。インバータ8の軸方向一方側を覆う。
【0046】
図6は、モータユニット1の軸方向一方側から見た側面図である。なお、
図6において、閉塞部61の図示を省略する。
第1側板部60bには、閉塞部61が締結される。第1側板部60bは、閉塞部61に覆われる第1隔壁60baと、第1隔壁60baの車両後方側に位置し閉塞部61から露出する第1突出部60bbと、を有する。第1隔壁60baは、収容空間80をモータ室81とインバータ室83とに区画する。
【0047】
図4に示すように、第1突出部60bbには、インバータ室83の内外を連通させる第1貫通孔60beが設けられる。すなわち、第1側板部60bには、軸方向に貫通する第1貫通孔60beが設けられる。第1貫通孔60beには、インバータ8からポンプ96に電源電圧および制御信号を供給する制御ラインが通過する。
図6に示すように、第1貫通孔60beには、第1コネクタ71が取り付けられる。第1コネクタ71は、軸方向一方側から第1貫通孔60beに挿入される。すなわち、第1コネクタ71は、インバータ室83の外側から第1貫通孔60beに取り付けられる。ポンプ96の制御ラインは、第1コネクタ71を介してインバータ8に接続される。
【0048】
図4に示すように、第1隔壁60baには、モータ室81とインバータ室83とを連通させる第2貫通孔60bfおよび第3貫通孔60bgが設けられる。すなわち、第1側板部60bには、軸方向に貫通する第2貫通孔60bfおよび第3貫通孔60bgが設けられる。
【0049】
第2貫通孔60bfには、モータ2の回転角を検知する回転角センサ50の信号ラインが通過する。
図6に示すように、第2貫通孔60bfには、センサ用コネクタ73が取り付けられる。センサ用コネクタ73は軸方向一方側から第2貫通孔60bfに挿入される。すなわち、センサ用コネクタ73は、モータ室81側から第2貫通孔60bfに取り付けられる。
【0050】
図4に示すように、第3貫通孔60bgには、インバータ8とステータ30とを繋ぎ、ステータに電源電圧を供給する電源ラインが通過する。
図6に示すように、第3貫通孔60bgには、第1のバスバーユニット70が挿入される。第1のバスバーユニット70については、後段において詳細に説明する。第1隔壁60baにおいて、第3貫通孔の周囲には第1のバスバーユニット70を第1隔壁60baに固定するためのネジ穴が設けられる。第1のバスバーユニット70は、軸方向一方側から第3貫通孔60bgに挿入される。
【0051】
また、第1側板部60bには、閉塞部61を固定するモータ側フランジ部60bcが設けられる。モータ側フランジ部60bcには、閉塞部61をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。モータ側フランジ部60bcは、第1隔壁60baおよび第1突出部60bbの軸方向一方側を向く面から軸方向に突出する。
【0052】
本実施形態によれば、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71は、第1側板部60bに対して軸方向一方側から他方側に向かって挿入することでハウジング本体60に取り付けられる。したがって、本実施形態によれば、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71のハウジング本体60に対する組付けを一方向から行うことができ、組み立て工程を簡素化することができる。加えて、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71の組付け方向は、閉塞部61の組付け方向とも一致するため、モータユニット1の組み立て工程をさらに簡素化することができる。
【0053】
本実施形態において、センサ用コネクタ73と第1コネクタ71との間には軸方向一方側に突出するモータ側フランジ部60bcが設けられる。すなわち、センサ用コネクタ73と第1コネクタ71との間に壁(モータ側フランジ部60bc)が配置される。これにより、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71は、互いのノイズの影響を受け難くなる。
【0054】
図5に示すように、第2側板部60cは、軸方向において第1側板部60bと対向する。第2側板部60cは、周壁部60aの軸方向他方側(+Y側)の端部に位置する。第2側板部60cは、インバータ8の軸方向他方側に位置する。第2側板部60cは、インバータ8の軸方向他方側を覆う。
【0055】
第2側板部60cは、周壁部60aの軸方向他方側の開口を覆う第2隔壁60caと、第2隔壁60caから車両後方側に延びる張出部60cbと、張出部60cbから上側に延びる第2突出部60ccと、を有する。第2隔壁60caおよび張出部60cbは、ギヤハウジング62に覆われる。一方で、第2突出部60ccは、ギヤハウジング62から露出する。
【0056】
張出部60cbには、車輪を支持する出力シャフト55が通過する第1の第2のシャフト通過孔67aが設けられる。張出部60cbは、第2のシャフト通過孔67aの内周面に保持されるベアリングを介して、出力シャフト55を回転可能に支持する。張出部60cbは、ギヤ室82とインバータ室83とを区画する第4隔壁60ceを有する。第4隔壁60ceと第2突出部60ccとは、上下方向に連なりインバータ収容部6cの軸方向他方側(+Y側)の壁面を構成する。
【0057】
第2隔壁60caは、収容空間80をモータ室81とギヤ室82とに区画する。モータ収容部6aは、周壁部60aと第2隔壁60caとから構成される。第2隔壁60caには、モータ室81内のオイルをギヤ室82内に誘導する隔壁開口68と、モータ2のシャフト21を挿通させる挿通孔69が設けられる。
【0058】
第2側板部60cには、ギヤハウジング62を固定するギヤ側フランジ部60cdが設けられる。ギヤ側フランジ部60cdは、ギヤ部3を径方向外側から囲む。ギヤ収容部6bは、第2側板部60cとギヤ側フランジ部60cdとから構成される。ギヤ側フランジ部60cdには、ギヤハウジング62をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。ギヤ側フランジ部60cdは、第2隔壁60caおよび張出部60cbの周囲を囲む。ギヤ側フランジ部60cdは、張出部60cbおよび第2突出部60ccの軸方向他方側を向く面から軸方向に突出する。
【0059】
第1接続板部60dおよび第2接続板部60eは、第1側板部60bと第2側板部60cとを繋ぐ。第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、互いに直交する。第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、互いに接続されている。
【0060】
第1接続板部60dは、第1側板部60bおよび第2側板部60cの車両後方側の端縁同士を繋ぐ。第1接続板部60dは、周壁部60aの車両後方側に位置する。第1接続板部60dは、板厚方向が車両前後方向と一致する。第1接続板部60dは、インバータ8の車両後方側に位置する。第1接続板部60dは、インバータ8の車両後方側を覆う。
【0061】
第1接続板部60dには、上下方向に沿って延びる複数のリブ60daが設けられる。リブ60daは、第1接続板部60dの上端部に位置するインバータ側フランジ部60fから下側に向かって延びる。第1接続板部60dにリブ60daが設けられることで、ハウジング本体60の剛性を高めて、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。
【0062】
第2接続板部60eは、第1側板部60bおよび第2側板部60cの下端縁同士を繋ぐ。第2接続板部60eは、周壁部60aの車両後方側に位置する。第2接続板部60eは、板厚方向が上下方向と一致する。第2接続板部60eは、周壁部60aに接続される。第2接続板部60eは、周壁部60aから車両後方側に向かって延びる。
【0063】
第2接続板部60eは、車両後方側の端部において、第1接続板部60dに接続される。すなわち、第1接続板部60dは、第2接続板部60eの車両後方側の端部から上側に延びる。第2接続板部60eは、インバータ8の下側に位置する。第2接続板部60eは、インバータ8の下側を覆う。
【0064】
図示を省略するが、第2接続板部60eの下面には、軸方向に沿って並ぶ複数のリブが設けられる。複数のリブは、周壁部60aから車両後方側に向かって延びる。第2接続板部60eにリブが設けられることで、ハウジング本体60の剛性を高めて、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。
【0065】
周壁部60aは、第1側板部60b、第2側板部60cおよび第2接続板部60eによって囲まれる第3隔壁(壁部)60acを有する。すなわち、ハウジング本体60は、第3隔壁60acを有する。第3隔壁60acは、収容空間80をモータ室81とインバータ室83とを区画する。
【0066】
第1側板部60bと第2側板部60cと第3隔壁60acと第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、インバータ8の周囲を囲む。すなわち、インバータ収容部6cは、第3隔壁60ac、第1側板部60b、第2側板部60c、第1接続板部60dおよび第2接続板部60eから構成される。第3隔壁60acと、第1接続板部60d、第1側板部60bおよび第2側板部60cの上端部には、インバータハウジング63を固定するインバータ側フランジ部60fが設けられる。
【0067】
図4に示すように、インバータ側フランジ部60fには、ギヤハウジング62をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。インバータ側フランジ部60fは、車両幅方向から見て、後方に向かうに従い下側に傾斜する。すなわち、インバータ側フランジ部60fは、第2接続板部60eに対して傾斜する。
【0068】
本実施形態によれば、ハウジング本体60は、インバータ室83とモータ室81とを区画する第3隔壁(第1の壁部)60acと、インバータ室83とギヤ室82とを区画する第4隔壁(第2の壁部)60ceと、を有する。第3隔壁60acは、インバータ収容部6cおよびモータ収容部6aの側壁を兼ねる。同様に第4隔壁60ceは、インバータ収容部6cおよびギヤ収容部6bの側壁を兼ねる。すなわち、本実施形態によれば、インバータ収容部6cが、モータ収容部6aおよびギヤ収容部6bと一体的に設けられることで、モータ収容部6aとギヤ収容部6bとに支持される。このため、インバータ収容部6cが、モータ収容部6a又はギヤ収容部6bのうち何れか一方のみによって支持される場合と比較して、インバータ収容部6cの剛性を高めることができ、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。
【0069】
本実施形態では、モータ収容部6a、インバータ収容部6cおよびギヤ収容部6bが単一の部材(ハウジング本体60)からなるため、互いの支持がより強固となり、インバータ収容部6cの振動抑制の効果が高められている。しかしながら、モータ収容部6a、インバータ収容部6cおよびギヤ収容部6bが、互いに別部材であっても、インバータ収容部6cが、モータ収容部6aおよびギヤ収容部6bに支持される場合には、インバータ収容部6cの振動抑制の効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態において、インバータ収容部6cは、軸方向一方側の壁部として第1側板部(第3の壁部)60bを有する。第1側板部60bには、閉塞部61が締結される。インバータ収容部6cは、閉塞部61が締結されることで補強され剛性が高められる。すなわち、本実施形態によれば、インバータ収容部6cの振動抑制の効果をさらに高めることができる。
【0071】
<閉塞部>
図4に示すように、閉塞部61は、ハウジング本体60のモータ側フランジ部60bcに固定される。閉塞部61は、モータ収容部6aの軸方向一方側の開口を塞ぐ。すなわち、閉塞部61は、モータ2の軸方向一方側を覆う。閉塞部61とモータ側フランジ部60bcとの間には、図示略のシール部材が挟み込まれる。シール部材は、モータ室81内のオイルが、閉塞部61とハウジング本体60との間から漏れ出ることを抑制する。
【0072】
閉塞部61は、
図6に示すハウジング本体60の第1隔壁60baに固定されるセンサ用コネクタ73および第1のバスバーユニット70を覆う。閉塞部61は、磁気シールドとしての機能を有していてもよい。この時、回転角センサ50の配線や第1のバスバーユニット70で生じるノイズが、第1コネクタ71等に影響を与えることを抑制できる。
【0073】
図4に示すように、閉塞部61は、閉塞部本体61aと、カバー61bと、を有する。また、閉塞部61は、閉塞部本体61aとカバー61bとの間を封止するシール部材(図示略)を有する。
【0074】
閉塞部本体61aは、閉塞平面部61aaとカバーフランジ部61abとを有する。カバーフランジ部61abは、閉塞平面部61aaから軸方向一方側に突出する。閉塞平面部61aaには、軸方向に貫通するシャフト挿通孔61acが設けられる。シャフト挿通孔61acは、軸方向から見てカバーフランジ部61abの内側に配置される。シャフト挿通孔61acの内側には、モータ2のシャフト21の軸方向一方側の端部が配置される。
【0075】
カバー61bは、閉塞部本体61aに設けられるカバーフランジ部61abに固定される。カバー61bは、軸方向一方側からシャフト挿通孔61acを覆う。カバー61bとカバーフランジ部61abとの間には、図示略のシール部材が挟み込まれる。シール部材は、モータ室81内のオイルが、カバー61bと閉塞部本体61aとの間から漏れ出ることを抑制する。
【0076】
図7は、閉塞部61を含むモータユニットの部分断面図である。
図7に示すように、閉塞部本体61aとカバー61bとの間には、回転角センサ50が収容されるセンサ収容部61hが設けられる。
【0077】
シャフト21の軸方向一方側の端部は、シャフト挿通孔61acを通過しセンサ収容部61hの内部に配置される。また、シャフト21の軸方向一方側の端部には、回転角センサ50のロータ部58が取り付けられる。ロータ部58は、シャフト21とともにモータ軸線J2周りに回転する。
【0078】
センサ収容部61hの内部において、閉塞部本体61aには、ロータ部58を囲むように回転角センサ50のステータ部59が固定される。ステータ部59は、ロータ部58との相対的な回転角を出力する。すなわち、回転角センサ50は、モータ2の回転角を検知する。本実施形態において、回転角センサ50は、レゾルバである。回転角センサ50の取り付けは、カバー61bを取り外してシャフト21の軸方向一方側の端部を開放した状態で行われる。
【0079】
従来構造では、回転角センサのステータ部の取り付け部の剛性が低い場合があり、ギヤ部分の振動が回転角センサの検出精度に影響を与える虞があった。本実施形態のモータユニット1は、係る課題を解決するためになされたものである。本実施形態によれば、ハウジング6が、モータ収容部6aの軸方向一方側の開口を覆う閉塞部61を有し、閉塞部61が、回転角センサ50を内部に収容するセンサ収容部61hを有する。回転角センサ50が、剛性が高い構造体である閉塞部61の内部に内包され固定される。これにより、回転角センサ50に振動が伝わることを抑制することができ、回転角センサ50による検出精度を高めることができる。
【0080】
図8は、本実施形態のモータユニット1に採用可能な変形例の閉塞部161を示すモータユニット1の斜視図である。本変形例の閉塞部161は、上述の実施形態と同様の効果を奏するための同様の構成を有する。さらに、本変形例の閉塞部161は、出力シャフト55を支持する機能、配管およびケーブルを支持する機能を有する。
【0081】
上述の実施形態と同様に、変形例の閉塞部161は、ハウジング本体60に固定される。また、閉塞部161は、モータ収容部6aの軸方向一方側の開口を塞ぐ。本変形例の閉塞部161は、閉塞部本体161aおよびカバー61bに加えて、さらに、第1の配管支持部(支持部)161eと、第2の配管支持部(支持部)161fと、一対のケーブル支持部(支持部)161dと、を有する。
【0082】
第1の配管支持部161eは、閉塞部161においてカバー61bの側部に位置する。一方で、第2の配管支持部161fは、閉塞部161においてカバー61bの上側に位置する。冷却水用配管11は、インバータハウジング63からクーラー97に向かって閉塞部161の上側から側部に沿って引き回される。第1および第2の配管支持部161e、161fは、閉塞部161の上側および側部において冷却水用配管11を支持する。
【0083】
第1の配管支持部161eは、第1の台座部161eaと結束バンド161ebとを有する。第1の台座部161eaは、例えば樹脂部材である。第1の台座部161eaは、閉塞部本体161aの軸方向側を向く面にボルト固定される。第1の台座部161eaは、軸方向一方側を向く座面において、冷却水用配管11と接触する。座面は、冷却水用配管11の管径に合わせて湾曲する。これにより、冷却水用配管11が第1の台座部161eaに対してずれにくくなる。第1の台座部161eaは、結束バンド161ebを通過させる挿通部が設けられる。挿通部は、軸方向一方側から見て座面の後方に位置する。結束バンド161ebは、第1の台座部161eaの挿通部を通されるとともに、冷却水用配管11に巻き付けられる。結束バンド161ebは、冷却水用配管11を第1の台座部161eaの座面に押し付ける。本変形例によれば、簡易な構造によって、冷却水用配管11を閉塞部161に固定することができる。
【0084】
第2の配管支持部161fは、第1の配管支持部161eと同様に第2の台座部161faと結束バンド161fbとを有する。第2の台座部161faは、例えば金属材料から構成される板状の部材である。第2の台座部161faは、閉塞部本体161aの軸方向一方側を向く面にボルト固定される。第2の台座部161faには、結束バンド161fbを通過させる貫通孔が設けられる。結束バンド161fbは、第2の台座部161faの貫通孔を通されるとともに、冷却水用配管11に巻き付けられる。本変形例によれば、簡易な構造によって、冷却水用配管11を閉塞部161に固定することができる。
【0085】
ケーブル支持部161dは、インバータ8とポンプ96とを繋ぐケーブル88を支持する。ケーブル支持部161dは、閉塞部161においてカバー61bの下側に位置する。ケーブル支持部161dは、例えば金属材料から構成される板状の部材である。ケーブル支持部161dは、閉塞部本体161aの軸方向一方側を向く面にボルト固定される。ケーブル支持部161dは、支持対象であるケーブル88の外径より若干小さい直径でカールするクリップ部161daを有する。クリップ部161daにケーブル88が挿入されることで、クリップ部161daは、弾性変形によってケーブル88を保持する。本変形例によれば、簡易な構造および簡易な手順でケーブル88を閉塞部161に固定できる。
【0086】
従来構造では、モータユニットに設けられるケーブルや配管の支持が不安定となる場合があった。本変形例の構成は、係る課題を解決するためになされたものである。本変形例によれば、閉塞部161は、ケーブル88又は冷却水用配管11を保持する支持部(第1および第2の配管支持部161e、161f並びにケーブル支持部161d)を有する。これにより、モータユニット1に振動が生じた場合であっても、冷却水用配管11およびケーブル88の接続部に加わる負荷を軽減することができ、これらの接続の信頼性を高めることができる。さらに、組み立て工程において、第1および第2の配管支持部161e、161f並びにケーブル支持部161dによって、冷却水用配管11およびケーブル88を予め閉塞部161に固定しておいてもよい。これにより、組み立て工程の簡素化を図ることができる。
【0087】
本変形例の閉塞部本体161aは、下側に延び出て出力シャフト55を保持するシャフト保持部161gを有する。すなわち、閉塞部161は、シャフト保持部161gを有する。シャフト保持部161gは、軸方向と直交する平面に沿う板状である。
【0088】
シャフト保持部161gには、軸方向に貫通するシャフト通過孔161gaが設けられる。シャフト通過孔161gaは、軸方向から見て円形である。シャフト通過孔161gaの内周面には、ベアリング161kが保持される。すなわち、ベアリング161kの外輪は、シャフト通過孔161gaの内周面に嵌る。シャフト保持部161gは、ベアリング161kを介して出力シャフト55を回転可能に支持する。
【0089】
一般的に、差動装置から延び出る一対の出力シャフトのうち、一方の出力シャフトが他方の出力シャフトと比較して長い場合がある。このような場合、従来構造では、当該長い出力シャフトの支持が不安定になりやすいという問題があった。本変形例の構成は、係る課題を解決するためになされたものである。本変形例によれば、閉塞部161は、ギヤ部3の一対の出力シャフト55のうち、インバータ収容部6cの下側を通過する一方の出力シャフト55を保持するシャフト保持部161gを有する。これにより、車輪までの距離が長く長尺となる出力シャフト55の支持を安定させることができる。さらに、本変形例によれば、シャフト保持部161gは、閉塞部161と一体的に設けられるため、部品点数の増加を抑えることができ、組み立て性を悪化させることがない。
【0090】
<ギヤハウジング>
ギヤハウジング62は、ギヤ側フランジ部60cdに固定される。ギヤハウジング62の形状は、軸方向一方側に開口する凹形状である。ギヤハウジング62の開口は、第2側板部60cに覆われる。ギヤハウジング62と第2側板部60cとで囲まれた空間は、ギヤ部3を収容するギヤ室82を構成する。
【0091】
ギヤハウジング62とギヤ側フランジ部60cdとの間には、図示略のシール部材が挟み込まれる。シール部材は、ギヤ室82内のオイルが、ギヤハウジング62とハウジング本体60との間から漏れ出ることを抑制する。
【0092】
ギヤハウジング62には、軸方向に貫通する第1のシャフト通過孔62cが設けられる。第1のシャフト通過孔62cは、軸方向から見て第2のシャフト通過孔67aと重なる。第1のシャフト通過孔62cには、車輪を支持する出力シャフト55が通過する。ギヤハウジング62は、第1のシャフト通過孔62cの内周面に保持されるベアリングを介して、出力シャフト55を回転可能に支持する。
【0093】
<インバータハウジング>
インバータハウジング63は、インバータ側フランジ部60fに固定される。インバータハウジング63の形状は、下側に開口する凹形状である。インバータハウジング63の開口は、ハウジング本体60に覆われる。より具体的には、インバータハウジング63の開口は、周壁部60aおよび第2接続板部60eに覆われる。
【0094】
インバータハウジング63とハウジング本体60とで囲まれた空間は、インバータ8を収容するインバータ室83を構成する。インバータハウジング63には、インバータ8およびインバータ8から延びる配線の一部が収容される。
【0095】
インバータハウジング63は、インバータ8を保持(収容)する本体収容部63aと、給電用コネクタ8eを保持(収容)する給電線収容部63bと、を有する。本体収容部63aと給電線収容部63bとは、軸方向に沿って並ぶ。給電線収容部63bは、本体収容部63aに対して軸方向他方側(+Y側)に位置する。
【0096】
図2に示すように、給電線収容部63bは、上下方向から見て、インバータ収容部6cの外側に位置する。すなわち、給電線収容部63bは、インバータ収容部6cの側面から突出する。給電線収容部63bは、本体収容部63aの側面から突出する。給電用コネクタ8eは、車両に搭載されるバッテリ(不図示)と、インバータ8とを電気的に接続し、バッテリからの電力をインバータ8に供給する。給電用コネクタ8eは、インバータ8の側面から幅方向に突出する。給電用コネクタ8eは、コネクタ端子を有する。コネクタ端子は、給電用コネクタ8eから車両前方向へ突出する。
【0097】
図9は、本実施形態に採用可能な変形例のインバータハウジング163の給電線収容部163bの拡大斜視図である。
図9に示すように、変形例のインバータハウジング163は、給電線収容部163bを補強する補強部164をさらに有する。すなわち、ハウジング6は、給電線収容部163bと、当該給電線収容部163bを補強する補強部164を有していてもよい。補強部164は、ハウジング本体60の第2側板部60cに沿って延びる締結板164bと、複数のリブ164aとを有する。補強部164は、締結板164bにおいて、インバータ収容部6cに締結される。複数のリブ164aは、上下方向に沿って延びる。複数のリブ164aは、給電線収容部163bの下面と第2側板部60cとを繋ぐ。補強部164は、給電線収容部163bを補強して、給電線収容部163bの剛性を高める。これにより、給電線収容部163bの振動が抑制され振動発生時に給電用コネクタ8eに加わる負荷を軽減できる。
なお本変形例において、補強部164は、インバータハウジング163と一体的に設けられハウジング本体60に固定される。しかしながら、補強部164は、ハウジング本体60と一体的に設けられインバータハウジングに固定される構成であってもよい。
【0098】
図3に示すように、本体収容部63aは、下側に開口する凹形状である。本体収容部63aの開口の縁には、取り付けフランジ部63cが設けられる。取り付けフランジ部63cは、インバータ側フランジ部60fと軸方向に対向する。インバータハウジング63は、取り付けフランジ部63cにおいてインバータ側フランジ部60fに固定される。
【0099】
図6に示すように、本体収容部63aの軸方向一方側の側面には、信号用コネクタ74が設けられる。信号用コネクタ74は、外部へとつながる信号線のコネクタである。本実施形態において、第1コネクタ71と信号用コネクタ74は同一方向を向く。これにより、ポンプ96へとつながるモータユニット1外部の配線と、外部へとつながる信号線とを同じ向きで取り付けることができ、モータユニット1の組立を簡素化することができる。さらに、モータユニット1の外観における配線の煩雑さを解消することもできる。
【0100】
図3に示すように、本体収容部63aは、水平方向に沿って延びる板状の天板部63acと、天板部63acの縁部から天板部63acの厚さ方向に沿って突出する側壁部63adと、を有する。すなわち、インバータハウジング63は、天板部63acと側壁部63adとを有する。側壁部63adは、天板部63acの厚さ方向から見て天板部63acの縁部に沿って矩形状に延びる。側壁部63adには給電用コネクタ8eが配置される。天板部63acは、インバータ収容部6cの開口を上側から覆う。天板部63acの裏面(すなわち、インバータ収容部6cの内側を向く面)には、インバータ8が固定される。これにより、インバータハウジング63は、インバータ8を支持する。
【0101】
本実施形態によれば、インバータ8が、ハウジング本体60から離脱可能なインバータハウジング63に固定される。したがって、定期点検および部品交換などのモータユニット1のメンテナンスを行う際に、インバータハウジング63とハウジング本体60との締結を解除することで、インバータ8をモータユニット1から容易に離脱することができる。この工程は、モータユニット1を車両に搭載した状態でも行うことができ、インバータ8のメンテナンス性を高めることができる。
【0102】
インバータハウジング63は、天板部63acと側壁部63adとによって、下側に開口する凹形状を構成する。すなわち、インバータハウジング63は、インバータハウジング開口部63hを有する。インバータハウジング開口部63hは、インバータ収容部6cの開口部6caに沿う。また、インバータ8の少なくとも一部は、インバータハウジング開口部63hから下側に突出して配置される。すなわち、インバータ収容部6cは、凹形状の部材の開口部同士を対向させ一方の開口部で他方の開口部を塞ぐ構造を有しており、インバータ8は開口部6ca、63hの境界に配置されている。
【0103】
図4に示すように、天板部63acには、インバータ8を冷却する冷却水Wが通される流路8bが設けられる。流路8bは、軸方向一方側に開口する導入口8baと排出口8bbとを有する。導入口8baおよび排出口8bbは幅方向の一方側に位置する。すなわち、流路8bの導入口8baおよび排出口8bbは、本体収容部63aの軸方向一方側の側面に設けられる。すなわち、流路8bの流路は、概して、重力方向上側から見てU字状である。
【0104】
図3に示すように、天板部63acは、下側(すなわち、インバータ室83側)に開口する凹部8hを有する。また、凹部8hは、流路8bの途中に設けられる。凹部8hの開口は、インバータ8のスイッチング素子8Aによって覆われる。凹部8hの内側面とスイッチング素子8Aの上面とで囲まれる領域には、冷却水Wが流れる。これによって、冷却水Wは、スイッチング素子8Aを直接的に冷却する。なお、凹部8hの開口縁とスイッチング素子8Aとの間には、冷却水Wを封止するガスケットが配置されている。
【0105】
本実施形態によれば、インバータハウジング63の天板部63acには、インバータ8を冷却する冷却水Wが流れる流路8bが設けられる。本実施形態によれば、インバータハウジング63に流路8bおよび流路8b内の冷却水Wの重さを加えることができ、インバータハウジング63の剛性を高めることができる。また、インバータ収容部6cの上側に重量物が配置することでインバータ収容部6cの振動を抑制できる。加えて、インバータハウジング63に流路8bを設けることで、流路8bがリブとしての機能を奏し、インバータハウジング63の剛性を高めることができる。結果的にインバータ収容部6cの振動を抑制できる。
【0106】
本実施形態によれば、インバータハウジング63は、天板部63acと天板部63acから突出する側壁部63adとを有することで剛性が高められている。これにより、インバータハウジング63の振動を抑制できる。また、本実施形態において、側壁部63adの突出高さは、モータ軸線J2から離れるに従い大きくなる。これにより、モータ収容部6aに干渉しない範囲で、側壁部63adの突出高さを十分に高くすることができインバータハウジング63の高剛性化の効果をさらに高めることができる。
【0107】
本実施形態によれば、インバータ8を冷却する流路8bは、モータ2に接するハウジング本体60とは別部材のインバータハウジング63に設けられる。これにより、モータ2の熱が冷却水Wに熱が伝わり難く、冷却水Wによるインバータの冷却効率を高めることができる。モータユニット1において、インバータ8およびモータ2は、ともに冷却されるが、インバータ8の温度はモータ2の温度よりも低く抑えることが要求される。本実施形態によれば、モータ2の熱が冷却水Wに伝わりにくいので、インバータ8の温度をモータの温度よりも低く抑えることができる。
【0108】
インバータ室83において、インバータ8はハウジング本体60と直接的に接触しない。インバータ室83において、インバータ8とハウジング本体60の第3隔壁60acとの間には、隙間Gが設けられる。第3隔壁60acは、モータ2を囲む周壁部60aの一部である。また、隙間Gは、空気が満たされた空気層である。このため、隙間Gは、インバータ8とモータ2との間で熱の交換を抑制する断熱層として機能する。これにより、インバータ8およびモータ2のうち一方が他方を加熱し、加熱された他方の動作に支障をきたすことを抑制できる。
【0109】
次に、インバータ室83におけるスイッチング素子8A、コンデンサ8Bおよびパワー基板8Cの配置について説明する。まず、インバータ室83内の構成を説明するにあたり基準方向を定義する。本実施形態において、天板部63acの厚さ方向は、鉛直方向(Z軸方向)と一致する。さらに、モータ軸線J2と直交しかつ天板部63acの厚さ方向と直交する方向を基準方向とする場合、基準方向はX軸と一致する。したがって以下の説明において、天板部63acの厚さ方向を単にZ軸方向といい、上述に定義した基準方向を単にX軸方向という。
【0110】
スイッチング素子8A、コンデンサ8Bおよびパワー基板8Cは、天板部63acから下側に向かってこの順で積層される。すなわち、インバータ8は、天板部63ac側から順に積層されるスイッチング素子8Aとコンデンサ8Bとパワー基板8Cとを有する。
【0111】
スイッチング素子8Aは、天板部63acに直接的に固定される。スイッチング素子8Aは、インバータ8を構成する部材のうち、発熱が最も著しい部材である。このため、スイッチング素子8Aを、冷却水Wが流れる流路8bが設けられた天板部63acに最も近い位置に配置することで、インバータ8を効率的に冷却できる。
【0112】
コンデンサ8Bは、スイッチング素子8Aの下側に積層される。コンデンサ8Bは、スイッチング素子8AよりX軸方向(すなわち、基準方向)の寸法が小さい。スイッチング素子8Aおよびコンデンサ8Bは、X軸方向においてモータの反対側(+X側)の端面が互いに一致する。スイッチング素子8Aの下面の一部は、コンデンサ8Bから露出する。すなわち、スイッチング素子8Aは、コンデンサ8Bによって覆われる第1の被覆領域8Aaと、コンデンサ8Bから露出する第1の露出領域8Abと、を有する。X軸方向において、第1の露出領域8Abは、第1の被覆領域8Aaよりモータ側に位置する。すなわち、第1の露出領域8Abは、X軸方向においてコンデンサ8Bよりモータ2側に位置する。これにより、インバータ8のZ軸方向の厚さを、モータ2側に近づくに従い薄くなる階段状にすることができる。モータ軸線と直交する方向(本実施形態においてX軸方向)において、インバータ8とモータ2とを近づけて配置することが可能となり、モータユニット1全体を小型化することができる。
【0113】
Z軸方向(すなわち、天板部63acの厚さ方向)から見て、第1の露出領域8Abは、モータ2と重なる。このため、Z軸方向においてインバータ8とモータ2とが互いに重ならない場合と比較して、Z軸方向と直交する方向の寸法を小型化できる。また、インバータ8は、第1の露出領域8Abにおいて、天板部63acの裏面を基準とする高さ寸法が最も小さい。すなわち、インバータ8は、モータ2と重なる領域において、天板部63acの裏面を基準とする高さ寸法が他の領域と比較して小さい。このため、インバータ8とモータ2とがZ軸方向において重なる領域において、モータユニット1が、Z軸方向に肥大化することを抑制できる。
【0114】
本実施形態によれば、X軸方向(すなわち、基準方向)から見て、インバータ8の少なくとも一部は、モータ2の少なくとも一部と重なる。このため、このため、X軸方向においてインバータ8とモータ2とが互いに重ならない場合と比較して、X軸方向と直交する方向の寸法を小型化できる。
【0115】
パワー基板(第3部材)8Cは、コンデンサ8Bの下側に積層される。パワー基板8Cは、コンデンサ8BよりX軸方向の寸法が小さい。コンデンサ8Bに対するパワー基板8Cの積層構成は、上述したスイッチング素子8Aに対するコンデンサ8Bの積層構成と同様である。すなわち、コンデンサ8Bは、パワー基板8Cによって覆われる第2の被覆領域8Baと、パワー基板8Cから露出する第2の露出領域8Bbと、を有する。第2の露出領域8Bbは、X軸方向においてパワー基板8Cよりモータ2側に位置する。インバータ8のZ軸方向の厚さを、モータ2側に近づくに従い薄くなる階段状にすることができ、モータユニット1全体の小型化を図ることができる。
【0116】
本実施形態において、インバータ収容部6cは、軸方向から見て、ギヤ部3の少なくとも一部に重なる。より具体的には、インバータ収容部6cは、軸方向から見て、ギヤ部3のリングギヤ51と重なる。すなわち、インバータ収容部6cを、ギヤ部3の軸方向への投影領域の内側に配置することができ、モータ2全体の軸方向への投影寸法を小型化できる。
【0117】
図2に示すように、本体収容部63aの天板部63acには、板厚方向に貫通する第1の窓部631および第2の窓部632が設けられる。また、天板部63acには、第1の蓋部材8caおよび第2の蓋部材8cbが固定される。第1の蓋部材8caは、第1の窓部631を覆う。第2の蓋部材8cbは、第2の窓部632を覆う。なお、流路8bは、前後方向において第1の窓部631と第2の窓部632との間を延びる。
【0118】
第1の窓部631は、インバータ8と給電用コネクタ8eとが締結される部位の直上に位置する。また、第1の窓部631の一部は、給電線収容部63bを上側に開口させる。第1の作業者は、工具を第1の窓部631からインバータ室83内に挿入して、インバータ8と給電用コネクタ8eとを電気的な接続作業および給電線収容部63bに収容される給電用の配線の接続作業を行う。
【0119】
図3に示すように、第2の窓部632は、インバータバスバー8dと第2のバスバー78との接続部8jの直上に位置する。作業者は、工具を第2の窓部632からインバータ室83内に挿入して、接続部8jにおいてインバータバスバー8dと第2のバスバー78とを接続する。
【0120】
インバータハウジング63とハウジング本体60とを固定する作業について説明する。
インバータ8は、予めインバータハウジング63に固定される。また、第2のバスバーユニット77は、予めハウジング本体60に固定される。さらに、第2のバスバー78と第1のバスバー75とは、予め接続される。この状態で、インバータハウジング63を、ハウジング本体60に固定する。次いで、インバータハウジング63の第2の窓部632から、工具を挿入し、第2のバスバー78とインバータバスバー8dとを接続する。次いで、第2の蓋部材8cbによって、第2の窓部632を覆う。以上の工程を経ることで、インバータハウジング63とハウジング本体60とが固定されるとともに、インバータ8とモータ2とが電気的に接続される。
【0121】
<バスバー>
図10は、モータユニット1の分解斜視図である。
モータユニット1は、モータ2とインバータ8とを電気的に繋ぐ第1のバスバーユニット70および第2のバスバーユニット77を有する。
【0122】
(第1のバスバーユニット)
第1のバスバーユニット70は、複数(3個)の第1のバスバー75と、複数の第1のバスバー75を保持する第1のバスバーホルダ76と、シール部材70Aと、を有する。
【0123】
第1のバスバー75は、板状の導体からなる。3つの第1のバスバー75は、ステータ30のU相、V相およびW相のコイル31からそれぞれ延び出るコイル線31bに接続される。第1のバスバー75は、第1のバスバーホルダ76を介してハウジング本体60の第1側板部60bに固定される。
【0124】
第1のバスバー75は、軸方向に沿って延びる第1のバスバー本体部75aと、第1のバスバー本体部75aの軸方向一方側に位置する端子接続部75bと、を有する。
【0125】
第1のバスバー本体部75aは、第1のバスバーホルダ76に設けられた保持孔76cに挿入される。第1のバスバー本体部75aの軸方向他方側の端部は、第1のバスバーホルダ76から露出する。第1のバスバー75は、第1のバスバー本体部75aの軸方向他方側の端部において、第2のバスバー78に接続される。
【0126】
端子接続部75bは、第1のバスバー本体部75aの板厚方向に折り曲げられる。端子接続部75bの板厚方向は、軸方向と一致する。端子接続部75bは、第1のバスバーホルダ76から露出する。端子接続部75bは、モータ2のコイル31に接続される。より具体的には、端子接続部75bは、コイル31から延び出て束ねられた導線に接続される。
【0127】
第1のバスバーホルダ76は、絶縁性の材料からなる。本実施形態において、第1のバスバーホルダ76は、樹脂材料からなる。第1のバスバーホルダ76は、第1のバスバー75を保持するホルダ本体部76aと、ホルダ本体部76aから突出するホルダフランジ部76bと、を有する。
【0128】
ホルダ本体部76aは、軸方向に沿って延びる四角柱形状である。ホルダ本体部76aは、第1側板部60bに設けられた第3貫通孔60bgに挿入される。ホルダ本体部76aは、軸方向直交する方向を向く外周面76abを有する。ホルダ本体部76aには、軸方向に貫通する3つの保持孔76cを有する。
【0129】
1つの保持孔76cには、1つの第1のバスバーホルダ76が挿入される。保持孔76cの内周面と第1のバスバーホルダ76との間には、例えば接着剤が注入される。接着剤は、保持孔76cの内周面と第1のバスバーホルダ76との隙間とを塞いでシールする。
【0130】
ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの軸方向一方側の端部に位置する。ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの外周面76abから軸方向と直交する平面に沿って突出する。ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの周囲に一周に亘って延びる。
【0131】
ホルダフランジ部76bには、軸方向に貫通する固定孔76baが設けられる。固定孔76baには、第1のバスバーユニット70をハウジング本体60の第1側板部60bに固定する固定ネジが挿入される。
【0132】
ホルダフランジ部76bは、軸方向他方側を向く対向面76bbを有する。対向面76bbは、第1側板部60bの軸方向一方側を向く面とは、シール部材70Aを介して対向する。シール部材70Aは、対向面76bbと第1側板部60bの軸方向一方側を向く面とによって、軸方向に挟み込まれる。シール部材70Aは、第1のバスバーホルダ76と第1側板部60bとの間をシールする。
【0133】
(第2のバスバーユニット)
第2のバスバーユニット77は、複数(3個)の第2のバスバー78と、複数の第2のバスバー78を保持する第2のバスバーホルダ79と、を有する。
【0134】
第2のバスバー78は、板状の導体からなる。3つの第2のバスバー78は、それぞれU相、V相、W相の第1のバスバー75に接続される。第2のバスバー78は、インバータ室83内に配置される。第2のバスバー78は、第2のバスバーホルダ79を介してハウジング本体60の周壁部60aの外周面に固定される。より具体的には、第2のバスバーユニット77は、複数の固定ネジ77aを用いて、周壁部60aのインバータ室83側を向く面にねじ固定されている。
【0135】
第2のバスバー78は、インバータ8に接続されるインバータ側端子接続部78cと、第1のバスバー75に接続されるモータ側端子接続部78dと、を有する。また、第2のバスバー78は、ハウジング本体60の周壁部60aの外周面に沿って上下方向に延びる第2のバスバー本体部78aを有する。3つの第2のバスバー78の第2のバスバー本体部78aは、軸方向に沿って並ぶ。第2のバスバー本体部78aの上端部には、インバータ側端子接続部78cが設けられる。
【0136】
図3に示すように、インバータ側端子接続部78cは、第2のバスバー本体部78aの板厚方向に折り曲げられる。インバータ側端子接続部78cは、水平方向に沿って延びる。第2のバスバー78は、インバータ側端子接続部78cにおいて、インバータバスバー8dに接続される。インバータバスバー8dおよびインバータ側端子接続部78cは、インバータ8と第2のバスバーとの接続部8jを構成する。
【0137】
インバータハウジング63には、インバータ8と第2のバスバー78との接続部8jを露出させる第2の窓部632が設けられる。第2のバスバー78は、ステータ30とインバータ8とを電気的に接続する。本実施形態によれば、第2の窓部632を介してインバータ室83に工具をアクセスすることが容易となる、ステータ30とインバータ8とを電気的に接続する工程を容易に行うことができる。
【0138】
図11は、インバータ室83内に配置された第2のバスバーユニット77の正面図である。
上述したように、第1のバスバー75の軸方向他方側(+Y側)の端部は、第3貫通孔60bgを通ってインバータ室83の内部に配置される。第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dは、インバータ室83の内部で、第1のバスバー75の軸方向他方側の端部に接続される。
より具体的には、第1のバスバー75の軸方向他方側の端部と第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dとは、板厚方向において互いに積層される。また、第1のバスバー75および第2のバスバー78の互いに積層された端部には、互いに重なり合う貫通孔がそれぞれ設けられる。貫通孔には、接続ネジ78fが挿入される。第1のバスバー75と第2のバスバー78とは、接続ネジ78fとナット(図示略)によって、互いに締結されて接続される。
【0139】
図3に示すように、第2のバスバーホルダ79は、ベース部材79bおよびカバー部材79aを有する。ベース部材79bおよびカバー部材79aは、絶縁性の材料からなる。本実施形態において、ベース部材79bおよびカバー部材79aは、樹脂材料からなる。
【0140】
ベース部材79bは、周壁部60aの外周面に沿って延びる板状である。ベース部材79bは、インバータ室83の内部において周壁部60aの外周面に固定される。カバー部材79aは、ベース部材79bの上面を覆う板状である。カバー部材79aは、ベース部材79bに固定される。また、カバー部材79aとベース部材79bとの間には、第2のバスバー78の第2のバスバー本体部78aおよび延長部78bが挟み込まれる。すなわち、第2のバスバーホルダ79は、ベース部材79bとカバー部材79aとの間に第2のバスバー78を挟み込んで第2のバスバー78を支持する。
【0141】
<冷却システム>
図1に示すように、モータユニット1には、第1冷却経路としての油路90と、第2冷却経路としての水路10と、が設けられる。油路(第1冷却経路)90にはオイルOが流れる。オイルOは、モータ2を冷却する。また、油路90は、ハウジング本体60に設けられる。一方で、水路(第2冷却経路)10には、冷却水Wが流れる。冷却水Wは、インバータ8及びオイルOを冷却する。また、水路10は、インバータハウジング63に設けられる。
【0142】
<油路>
図1に示すように、油路90は、ハウジング6に設けられる。油路90は、ハウジング6内の収容空間80に位置する。油路90は、収容空間80のモータ室81とギヤ室82とに跨って構成される。油路90は、オイルOをモータ2の下側のオイル溜りP(すなわち、収容空間80内の下部領域)からモータ2を経て、再びモータ2の下側のオイル溜りPに導くオイルOの経路である。
【0143】
なお、本明細書において、「油路」とは、収容空間80を循環するオイルOの経路を意味する概念である。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルが流れる「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路(例えばリザーバ)およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0144】
油路90は、モータ2の内部を通る第1の油路91と、モータ2の外部を通る第2の油路(油路)92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。オイルOは、第1の油路91および第2の油路92において、モータ2を内部および外部から冷却する。
【0145】
(第1の油路と第2の油路との共通部分)
まず、第1の油路91と第2の油路92との共通部分について説明する。第1の油路91および第2の油路92は、ともにオイル溜りPからオイルOをモータ2に供給して、再びオイル溜りPに回収する経路である。第1の油路91および第2の油路92において、オイルOは、モータ2から滴下して、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁開口68を介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。すなわち、第1の油路91および第2の油路92は、オイルOをモータ室81内の下部領域からギヤ室82内の下部領域に移動させる経路を含む。
(第1の油路)
第1の油路91において、オイルOは、オイル溜りPから差動装置5によりかき上げられてロータ20の内部に導かれる。オイルOには、ロータ20の内部で、ロータ20の回転に伴う遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20を径方向外側から囲むステータ30に向かって均等に拡散されステータ30を冷却する。
【0146】
第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ室82に設けられている。なお、第1のリザーバ93は、オイルOの所定量を一時的に溜める機能も有する。
【0147】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからかき上げられたオイルOが、第1のリザーバ93で受けられる経路である。オイル溜りPに溜るオイルOは、リングギヤ51によってかき上げられて、一部が第1のリザーバ93に供給され、一部がギヤ室82内に拡散される。ギヤ室82に拡散されたオイルOは、ギヤ室82内のギヤ部3の各ギヤに供給されてギヤの歯面にオイルOを行き渡らせる。本実施形態によれば、油路90はギヤ室82(すなわち、ギヤ収容部6bの内部)を通過する。これにより、オイルOを、モータ2の冷却用として使用するのみならず、ギヤ部3の各ギヤおよび各ベアリングの潤滑に使用することができる。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。各ギヤの歯面に供給され潤滑に使用されたオイルOは、滴下してギヤ室82の下側に位置するオイル溜りPに回収される。
【0148】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、オイルOが、シャフト21の連通孔23からロータコア24の内部を通過して径方向外側に飛散し、ステータ30に至る経路である。
【0149】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0150】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、ステータ30の下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、第2隔壁60caに設けられた隔壁開口68を介してギヤ室82に移動する。
【0151】
(第2の油路)
第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路92dを有する。第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、オイル配管(供給部)98と、が設けられる。ポンプ96は、オイルOをモータ2に供給する。また、クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。第2の油路92において、オイルOは、第1の流路92a、ポンプ96、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92d、オイル配管98の順で各部を通過して、モータ2に供給される。
【0152】
第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dは、収容空間80を囲むハウジング6の壁部を通過する。第1の流路92aは、収容空間80の下部領域のオイル溜りPとポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、ポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97と第4の流路92dを繋ぐ、第4の流路92dは第3の流路92cと収容空間80の上部領域とを繋ぐ。
【0153】
本実施形態において、第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dは、収容空間80を囲むハウジング6の壁部の内部を通過する。したがって、流路を設ける際に、別途管材を設ける必要がないので、部品点数の減少に寄与することができる。
【0154】
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92d、およびオイル配管98を介してモータ2にオイルOを供給する。すなわち、ポンプ96は、第2の油路92中でオイルOを循環させるために設けられる。
【0155】
ポンプ96の吸入口は、第1の流路92aに繋がる。また、ポンプ96の吐出口は、第2の流路92bに繋がる。ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92dおよびオイル配管98を介してモータ2に供給する。
【0156】
図1に示すように、クーラー97には、第1の流路92aおよび第2の流路92bが接続される。第1の流路92aおよび第2の流路92bは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、ラジエーター(図示略)で冷却された冷却水Wが通過する冷却水用配管11が接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管11を通過する冷却水Wとの間で熱交換されて冷却される。すなわち、本実施形態によれば、オイルOの熱を冷却水Wに移動させるクーラー(熱交換器)97を備える。なお、冷却水用配管11の経路中には、インバータ8が設けられる。インバータ8を冷却した冷却水Wは、冷却水用配管11を通過する。なお、インバータハウジング63に取り付けられる流路8bは、冷却水用配管11と接続される。
【0157】
第2の流路92bは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第2の流路92bは、モータ収容部6aの壁部の内部をモータ軸線J2の周方向に沿って延びる。また、第2の流路92bの軸方向位置は、ステータ30の軸方向位置と重なる。すなわち、第2の流路92bおよびステータ30は、軸方向における位置が互いに重なる。このため、第2の流路92bを通過するオイルOによって、ステータ30を冷却することができる。
【0158】
第3の流路92cは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。本実施形態によれば、第3の流路92cは、モータ収容部6aの壁部の内部をモータ軸線J2の周方向および軸方向に沿って延びる。また、第3の流路92cの軸方向位置は、ステータ30の軸方向位置と重なる。また、第3の流路92cの径方向位置は、ステータ30の径方向位置と重なる。すなわち、第3の流路92cおよびステータ30は、軸方向における位置が互いに重なる。このため、第3の流路92cを通過するオイルOによって、ステータ30を冷却することができる。特に、第3の流路92cには、クーラー97を通過した直後のオイルOが流れる。したがって、本実施形態によれば、第3の流路92cを流れるオイルOによって、ステータ30を効率的に冷却できる。なお、本実施形態では、第2の油路92において、クーラー97は、ポンプ96の下流側に配置されている。しかしながら、クーラー97は、第2の油路92においてポンプ96の上流側に配置されていてもよい。この場合、クーラー97と収容空間80の上部領域とを繋ぐ流路(本実施形態の第3の流路92cに相当)中にポンプ96が配置される構成となる。この場合であっても、クーラー97と収容空間80の上部領域とを繋ぐ流路の軸方向位置が、ステータ30の軸方向位置と重なる場合に、クーラー97を通過した直後のオイルOでステータ30を効率的に冷却できる。
【0159】
第4の流路92dは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第4の流路92dは、モータ室81に開口し当該開口においてオイル配管98に接続される。第4の流路92dは、ハウジング本体60の第2隔壁60caに沿って延びる。
【0160】
図1に示すように、オイル配管98は、収容空間80のモータ室81に位置する。オイル配管98は、コイル31およびコアバック部32aの外周面にオイルを供給する供給部として機能する。すなわち、油路90は、パイプ状の供給部を有する。
【0161】
オイル配管98は、モータ2の上側に位置する。オイル配管98の内部には、オイルが流れる。オイル配管98は、複数の第1の噴出孔98aおよび複数の第2の噴出孔98bを有する。
【0162】
第1の噴出孔98aは、軸方向に沿って延びる。また、第1の噴出孔98aは、オイル配管98の軸方向の両端部に設けられる。第1の噴出孔98aは、コイルエンド31aの上側に位置する。第1の噴出孔98aは、コイル31に対向しコイル31にオイルを噴出する。
【0163】
第2の噴出孔98bは、コアバック部32aの外周面に対向し外周面にオイルを噴出する。第2の噴出孔98bから噴出したオイルOは、上側から下側に向かってモータ2の外周面を伝って流れてモータ2の熱を奪う。これにより、モータ2全体が冷却される。
【0164】
第1の噴出孔98aおよび第2の噴出孔98bから噴出されモータ2を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、第2隔壁60caに設けられた隔壁開口68を介してギヤ室82に移動する。
【0165】
図12は、
図3の部分拡大図であり、第2の噴出孔98bから噴出されたオイルOの経路を示す。
油路90は、オイルOがステータ30の外周面を伝って流れる遮蔽流路95を有する。遮蔽流路95は、モータ収容部6aの内側面とステータ30の外周面との間の隙間に位置する。遮蔽流路95は、第2の噴出孔98bから噴出されたオイルOが流れる流路である。すなわち、遮蔽流路95を流れるオイルOは、コアバック部32aの外周面を伝って上側から下側に流れる。遮蔽流路95の少なくとも一部は、ステータ30の外周面とインバータ8との間を通過する。オイルOは、遮蔽流路95を通過する際にステータ30の外周面から熱を吸収する。本実施形態によれば、ステータ30の外周面とインバータ8との間に、ステータ30の外周面を冷却する遮蔽流路95が設けられることで、ステータ30の外周面がオイルOにより冷却され、ステータ30からインバータ8に熱が伝わることを抑制できる。さらに、インバータ8が高温となった場合においても、インバータ8からモータ2に熱が伝わることを抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、遮蔽流路95が設けられることで、インバータ8およびモータ2のうち一方が他方を加熱し、加熱された他方の動作に支障をきたすことを抑制できる。
【0166】
図12には、本実施形態に採用可能な、変形例の遮蔽流路195を破線で示す。変形例の遮蔽流路195は、インバータ室83とモータ室81とを区画する第3隔壁60acの内部を通過する。変形例の遮蔽流路195を採用する場合、実施形態の遮蔽流路95と比較して、モータ2とインバータ8との間における熱の遮蔽の効果を高めることができる。
【0167】
<水路>
図1に示すように、水路10は、ハウジング6に設けられる。水路10は、ハウジング6の内部を通過する流路8bと、ハウジング6の外部を通過する冷却水用配管11と、を有する。また、水路10の経路中には、上述したようにクーラー97が配置されている。
【0168】
本実施形態によれば、モータユニット1は、モータ2を冷却する冷媒(オイルO)とインバータ8を冷却する冷媒(冷却水W)とをそれぞれ有する。すなわち、本実施形態によれば、第1冷却経路としての油路90と第2冷却経路としての水路10とは、互いに独立して設けられる。このため、モータ2およびインバータ8の発熱量に応じて、それぞれを冷却する冷媒として最適なものを選択することができ、モータ2およびインバータ8を効率的に冷却できる。加えて、それぞれの冷却経路が独立するため、モータ2およびインバータ8のうち一方が他方に対して高温になった場合であっても、冷媒を介して一方から他方に熱が移動することを抑制できる。このため、モータ2およびインバータ8の経時的な温度変化に応じて、それぞれの冷却経路を独立して制御することができ、モータ2およびインバータ8を効果的に冷却することができる。
【0169】
本実施形態によれば、モータ2を冷却する冷媒(オイルO)とインバータ8を冷却する冷媒(冷却水W)とは、互いに異なる部材(ハウジング本体60とインバータハウジング63)とにそれぞれ設けられる。このため、モータ2の熱が冷却水Wに伝わったり、インバータ8の熱がオイルOに伝わったりすることを抑制できる。このため、オイルOでモータ2を、冷却水Wでモータ2を効率的に冷却することができる。
【0170】
なお、本実施形態では、第1の冷媒としてオイルOを採用し、第2の冷媒として冷却水Wを採用した場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、第1の冷媒と第2の冷媒とは、共にオイルOであってもよく、この場合であっても、第1冷却経路(油路90)と第2冷却経路(水路10)とが互いに独立した経路で設けられ、内部を流れるオイル同士が互いに混合しなければよい。
【0171】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0172】
1…モータユニット、2…モータ、3…ギヤ部、6…ハウジング、6a…モータ収容部、6b…ギヤ収容部、6c…インバータ収容部、8…インバータ、8b…流路、8e…給電用コネクタ、8A…スイッチング素子(第1部材)、8B…コンデンサ(第2部材)、8C…パワー基板(第3部材)、10…水路(第2冷却経路)、20…ロータ、21…シャフト、30…ステータ、50…回転角センサ、55…出力シャフト、60…ハウジング本体、60ac…第3隔壁(第1の壁部)、60b…第1側板部(第3の壁部)、60ce…第4隔壁(第2の壁部)、61,161…閉塞部、61h…センサ収容部、63,163…インバータハウジング、63ac…天板部、63ad…側壁部、63b,163b…給電線収容部、63h…インバータハウジング開口部、88…ケーブル、90…油路(第1冷却経路)、95,195…遮蔽流路、97…クーラー(熱交換器)、161d…ケーブル支持部(支持部)、161e…第1の配管支持部(支持部)、161f…第2の配管支持部(支持部)、161g…シャフト保持部、164…補強部、G…隙間、J2…モータ軸線、O…オイル(第1の冷媒)、W…冷却水(第2の冷媒)