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特許7472906構造化された金属電極およびその非液体電解質との組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】構造化された金属電極およびその非液体電解質との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240416BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/64 A
H01M4/62 Z
H01M4/40
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/052
H01M6/18 E
H01M6/16 A
H01M4/1395
H01M12/08 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021525138
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2019080425
(87)【国際公開番号】W WO2020094729
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102018127787.3
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521196154
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム ユーリッヒ ゲゼルシャフトミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヴィンター
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ディーター ヴィームヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フィンスターブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユリア アリニチェヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マリア ビーカー
(72)【発明者】
【氏名】キルスィ ヤルカネン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク リーベナウ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン コレク
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ベキング
(72)【発明者】
【氏名】マリアン クリスチアン スタン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチアン シュモール
(72)【発明者】
【氏名】パウロ シュミッツ
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017201233(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/64
H01M 4/62
H01M 4/40
H01M 10/0562
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01M 6/18
H01M 6/16
H01M 4/1395
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(2)または集電体の表面が複数の互いから離間した止まり穴のような凹部(6)を含み、前記このように構造化された表面が固体高分子電解質(20)でコーティングされ、前記凹部(6)が、≧200μmから≦500μmの範囲の長さ、幅および/または深さを有し、前記固体高分子電解質(20)で充填されることを特徴とするエネルギー貯蔵のための金属電極または集電体。
【請求項2】
前記電極(2)の前記構造化された表面が、平な表面の同じ寸法の面積に関して、≧20%から≦200%の範囲で拡大されることを特徴とする請求項1に記載の金属電極または集電体。
【請求項3】
前記凹部(6)が、≧300μmから≦400μmの範囲の長さ、幅および/または深さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の金属電極または集電体。
【請求項4】
前記固体高分子電解質(20)が、ポリ[ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン]、ポリ((オリゴ)オキソエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属-メタクリレート、ポリ[ビス((メトキシエトキシ))エトキシ)-co-(リチウム-トリフルオロ-オキソボラン)ポリホスファゼン]、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン-b-ポリ(エチレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/酸化プロピレンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシロキサン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)ならびにそれらの混合物を含む群から選択されるポリマーを含むことを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の金属電極または集電体。
【請求項5】
前記固体高分子電解質(20)が、≧5μmから≦150μmの範囲の層厚を有する層を形成することを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の金属電極または集電体。
【請求項6】
前記電極(2)の金属がリチウムであり、前記リチウムの表面は、多数の前記止まり穴のような凹部(6)を含むことによって構造化されたリチウム表面を有し、化学修飾が施されていることを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の金属電極または集電体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の集電体または金属電極、非液体電解質および対電極を含むことを特徴とする一次または二次エネルギー貯蔵。
【請求項8】
前記非液体電解質が:
-固体高分子電解質、
-ゲル高分子電解質、または
-反対側の表面がゲル高分子電解質または固体高分子電解質でコーティングされたリチウムイオン伝導性セラミックの、ガラス状のまたはガラスセラミックの固体電解質から成る多層配列を含む複合電解質
を含むことを特徴とする請求項7に記載のエネルギー貯蔵。
【請求項9】
前記セラミック固体電解質が、
Ta5+、Nb5+、Te5+、またはW6+によりZr4+格子間サイト上で、および/またはAl3+またはGa3+によりLi格子間サイト上で置換されることにより、立方晶構造で安定化されたジルコン酸リチウムランタン(LLZO)、
リチウム-ランタン-タンタル-ジルコン酸塩Li6.75LaZr1.75Ta0.412(LLZTO)、リチウム-ランタン-チタン酸塩(La、Li)TiO(LLTO)、および/またはリチウム-アルミニウム-ゲルマニウム-リン酸塩Li+xAlyGe-y(PO(LAGP)を含む群から選択され、ここで、0.3x<0.6および0.3y<0.5であり;
-前記ガラス質固体電解質は、リン酸リチウム(LIPON)を含む群から選択され、および/または硫化物ベースの固体電解質は、LiS-P、LiPS(LPS)、LiS-GeS、LiS-GeS-P、Li2S-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、LiSO-LiO-BおよびLiS-GeS-P(LGPS)を含む群から選択され;および/または
-ガラスセラミック固体電解質は、実験式Li1+x-y III IV 2-x-y(POのNASICONと同構造のリチウム化合物を含むグループから選択され、0≦x<1.0≦y<1および(1+xy)>1、およびMIIIは3価の陽イオン、MIVは4価の陽イオンおよびMは5価の陽イオンであり(LATP、特にLi1+xAlxTi2-x(PO)、Li11および/またはLiIであることを特徴とする請求項8に記載のエネルギー貯蔵。
【請求項10】
凹部を有する前記金属表面の前記構造化がロールツーロール法によって実行されることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー貯蔵用の金属電極または集電体を製造する方法。
【請求項11】
前記化学修飾が、前記リチウム表面と、1.3-ジオキソラン中の二酸化炭素、1-フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレン炭酸(VC)または硝酸リチウムとの接触反応によって生成される炭酸リチウムを含むリチウムイオン伝導層から形成されることを特徴とする請求項6に記載の金属電極または集電体。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の金属電極が負極(アノード)であり、前記対電極が正極であることを特徴とする請求項7に記載の一次または二次エネルギー貯蔵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学的エネルギー貯蔵の分野に関する。特に本発明は、構造化された金属電極およびその非液体電解質と組み合わせた使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたはリチウムのような金属をベースにした金属電池は、従来のリチウムイオン電池に対し、より高い理論エネルギー密度を達成できるという利点を提供する。特にリチウム空気電池は高い比容量およびエネルギーを有する。これらの可逆金属電池中でリチウム金属はアノードとして使用される。しかしリチウム金属の反応性およびその結果としての使用中の性能と安全性の低下などのために、実用化にはまだ完全に至っていない。特にリチウムは酸化還元電位が低く、容量が大きく、分子量が低いため、非常に有望な電極材料である。しかし特に高電流密度での電極上のデンドライト成長に起因する低いサイクル安定性および安全性の懸念が用途を制限する。リチウム電極は高い過電位あるいは過電圧ならびに高セル抵抗を有しうる。このためリチウム電極の使用はこれまで、いくつかの例外を除いて一次電池に限定されてきた。
【0003】
リチウム電極の表面を、それが液体電解質と一緒に使用される場合、放電率、充電率およびサイクル安定性が向上するように、凹部によって構造化することが、特許文献1からすでに公知である。特許文献2はさらに構造化されたリチウム金属アノードを開示し、構造化の空洞はアノード材料で充填されている。特許文献3は正極上に固体多層構造が形成された固体電解質電池を記載し、1つの電解質層は固体もう1つの電解質層よりも明確に軟性である。金属電極の構造は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102013114233(A1)号
【文献】独国特許出願公開第102014207999(A1)号
【文献】米国特許第6576371(B1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属電極の電位を利用するためにはさらなる改善が必要である。そのため本発明は、より低い堆積抵抗を有する金属電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、エネルギー貯蔵、特に電気化学的エネルギー貯蔵のための金属電極または集電体によって解決され、電極または集電体の表面は、離間して配置された複数の止まり穴のような凹部を含み、そのように構造化された表面には固体高分子電解質がコーティングされ、凹部は固体高分子電解質で充填される。
【0007】
驚くべきことに、金属電極または集電体の表面に設けられる凹部および固体高分子電解質による機能性コーティングとの本発明の組み合わせは、堆積電圧あるいは堆積抵抗の大幅な低減を可能にすることが見出された。こうしてセル抵抗の明らかな減少を示すことができた。これは特に非液体電解質の使用に関連して有利である。なぜならこれらに対するリチウム電極の抵抗が基本的に高いためである。これにより金属電極、特にリチウム電極のサイクル性は非液体電解質によって大幅に改善されることができ、それによってセルの耐用年数を大幅に延ばしうる。さらに機能性コーティングは、ゲルポリマー、固体ポリマー、セラミック固体、ガラス、およびこれらの組み合わせ、いわゆるハイブリッドのような非液体電解質との接触を改善することができる。非液体電解質の使用は、リチウム電極の使用の安全性をさらに向上させ、特に、誤動作または電池の損傷が発生した場合に高い安全性を提供できる。さらなる利点は、方向付けられたリチウム堆積を有する保護された金属電極が提供されうることである。
【0008】
理論に縛られることなく、本発明の利点は、構造化された金属電極間の接触を促進する構造化と機能的コーティングとの組み合わせに基づくと言える。構造化には簡単な、ロールツーロール法に移行できる処理原理を使用でき、コーティングは簡単な塗着技術を使用して設けられる。電極あるいは集電体の処理は拡張可能性の高いシステムに移行でき、それによって商業的利益を強化できる。
【0009】
「ポリマー電解質」あるいはポリマーの電解質という概念は、ポリ[ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン](MEEP)のようなポリマー中のリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)のような塩の溶液と理解される。電荷の輸送はここでは、ポリマー電解質を通る塩の陽イオン、特にリチウムイオンの運動によって行われる。「固体高分子電解質」という概念は、その中で溶解したリチウム塩を有するポリマーを意味すると理解され、これは室温での架橋により固体凝集状態にあり、液体溶媒などの液体成分を含まない。
【0010】
凹部およびコーティングが設けられる電極の表面は、電解質がガルバニセルまたは電池中に存在する側に適切に相応する。電極の表面は複数の、特に多数の凹部を有する。個々の凹部は互いから離間し、これは凹部の生成により互いの中に移行できないことを排除しない。凹部は止まり穴のようである。本発明の文脈において「止まり穴のような」という概念は、凹部が金属電極を完全に貫通しない、つまり基部または先端を有することを意味すると理解される。
【0011】
凹部あるいは構造化の形状は変形しうる。凹部は異なる形状を有しうる。例えば凹部は、長方形、台形、ドーム形、または三角形の断面を有することができる。変形法により金属に凹部を設けることができる。凹部は例えばエンボス加工法を使いスタンプを介して、またはローラ、特にカレンダーローラによって設けることができる。機械的構造化のためのそのような方法が好ましい。レーザまたはビーム法も使用できる。電極として使用できる金属箔は好ましくは出発材料あるいは金属は圧延を使って製造できる。リチウムの場合、特に合金が設けられ、あるいはコーティングされたローラが使用される。凹部に応じてプラスに構造化された表面を有するスタンプまたはローラは、所望の厚さの金属箔に凹部を設けることができる。スタンプまたはローラの構造化の形状は、直方体、円柱、ピラミッド、キャップ付き直方体および/または半円から選択できるため、凹部の形状は、逆直方体、シリンダー、ピラミッド、キャップ付き直方体および/または半円に相応可能である。好ましくは直方体またはピラミッド形または円筒形を使用する。
【0012】
形状、例えば長方形またはピラミッドの形に加えて、さらにスタンプまたはローラの先端の大きさおよび間隔も変えることができ、異なる構造化および表面の拡大を得ることができる。例えば構造間の間隔を変えることができる。構造間の間隔が変化すると、異なる構造化密度が生じる。リチウム電極の表面全体は、構造化の密度が高くなることによってかく拡大し、表面の拡大は欠陥間隔に関連する。好ましい実施形態では、電極の構造化表面は、同じ寸法の平らな表面の面積に関して、≧20%から≦200%、好ましくは≧30%から≦150%、好適には≧50%から≦100%の範囲で拡大する。ここでは平らな表面の面積を100%と設定する。
【0013】
さらに、例えば正方体の針、スタンプまたはローラなどのポジティブ構造は、より大きなまたはより小さな構造化の効果を達成するために、それらの長さ、幅、および高さに関して変更をすることができる。これに関連して、リチウムのような使用される電極材料の厚さも、エンボス構造の高さによって削減されることができる。凹部はマイクロメートル範囲の大きさを有することが好ましい。マイクロメートル範囲の大きさの構造化は、大規模な産業規模で有利に製造されうる。好ましい実施形態では、凹部は≧100μmから≦800μmの範囲、好ましくは≧200μmから≦500μmの範囲、好適には≧300μmから≦400μmの範囲の長さ、幅、および/または深さを有する。長方形の凹部の場合、長さ、幅、および深さは、≧100μm×100μm×100μmから≦800μm×800μm×800μmの範囲、好ましくは≧200μm×200μm×200μmから≦500μm×500μm×500μmの範囲、好適には≧300μm×300μm×300μmから≦400μm×400μm×400μmでありうる。構造化表面あるいは構造化電極は、特に、微細構造化表面あるいは微細構造化リチウム電極である。
【0014】
さらなる好ましい実施形態では、凹部が≧25μmから≦75μmの範囲、好ましくは≧30μmから≦50μmの範囲、好適には≧35μmから≦40μmの深さ、および≧100μmから≦800μmの範囲、好ましくは≧200μmから≦500μmの範囲、好適には≧300μmから≦400μmの長さおよび/または幅を有する。特に直方体形の凹部の場合、長さ、幅および深さは、≧100μm×100μm×25μmから≦800μm×800μm×75μmの範囲、好ましくは≧200μm×200μm×30μmから≦500μm×500μm×50μmの範囲、好適には≧300μm×300μm×35μmから≦400μm×400μm×40μmでありうる。
【0015】
その中に凹部がエンボス加工されるリチウム箔のような金属電極の厚さは、ここでは≧150μmから≦800μmの範囲、好ましくは≧300μmから≦500μmの範囲でありうる。さらにはリチウムを、例えば銅のようなキャリア素材としての他の金属または集電体の層または箔に、例えば圧着して設けることも可能である。そのことから金属電極は銅のような他の金属の層に設けられたリチウム層からも形成されうる。リチウム層はさらに、網、メッシュ、発泡体のような電子伝導性の三次元構造、例えばキャリア素材としての銅網または銅発泡体に設けることができる。ここではリチウムおよびキャリア素材を含めた総厚さが≧20μmから≦60μmの範囲、好ましくは≧25μmから≦40μmの範囲でありうる。
【0016】
実施形態では、凹部の深さが、金属電極またはリチウム層の、キャリア素材としての金属、集電体またはその他の構造上での総厚さ100%に関し、≧30%から≦70%の範囲、好ましくは≧40%から≦60%の範囲、特に≧50%から≦60%の範囲でありうる。
【0017】
スタンプまたは好ましくは圧延を使ったリチウム構造化のコンセプトは、スタンプあるいは圧延製造における微細な機械的限界に応じて、ほとんどすべての構造化パターンに適用できる。特に圧延を使った構造化は、工業規模のスケール拡大の可能性を有する。このようにして先端部構造化を有する相応のローラを、ロールツーロール法のために構築することができる。ブロックプレスまたは圧延の材料として、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなリチウムに対して反応しない材料、ならびにアルミニウム、ステンレス、銅のようなリチウムと合金化しない金属が適合する。
【0018】
構造化された表面には固体高分子電解質がコーティングされており、これによって表面の凹部が充填される。構造化されたリチウム表面を非液体電解質で濡らし、拡大した表面積を十分に活用するために、機能性コーティング法を用いることができる。このようなコーティングの場合、溶液は電解質の成分、適切なポリマー、導電性塩、および好ましくは紫外光活性化された架橋添加剤から製造され、これらは適切な溶媒に溶解される。この溶液あるいは混合物は、均一なコーティングを生成するために、構造化されたリチウム表面に塗着されうる。コーティングされたリチウム電極は、高温で乾燥されることができるため、溶媒を蒸発させ、紫外光を照射し、それによってポリマーを架橋させ、それによって固体高分子電解質を有するコーティングが形成される。この方法を使って構造化されたリチウム電極に高分子電解質の薄層を設けることができるため、層が表面パターンに従い、それによって全表面を濡らす。
【0019】
好ましい実施形態では、固体高分子電解質が、ポリ[ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン](MEEP)、ポリ((オリゴ)オキソエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリ[ビス( (メトキシエトキシ)エトキシ)-co-(リチウム-トリフルオロ-オキソボラン)ポリホスファゼン](MEE-co-BFLiP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリスチレンb-ポリ(エチレンオキシド) (SPE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(フッ化ビニリデン-コヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエステル、酸化ポリプロピレン、酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)ならびにそれらの混合物を含む群から選択されたポリマーを含む。MEEPならびにその誘導体MEE-co-BFLIP、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)またはポリスチレン-b-ポリ(エチレンオキシド)(SPE)のようなブロックコポリマーをポリマーとして使用できることが好ましい。PEOは付加的に、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム-ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミド(Pyr14TFSI)または1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミド(Im12TFSI)のようなイオン液体と組み合わせることもできる。
【0020】
リチウムアノードと共に使用する場合、好ましい電解質塩はリチウム塩である。好ましいリチウム塩は、例えば100℃または120℃の高温で分解しないものである。好ましい実施形態では、リチウム塩は、リチウム-ビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、リチウム-ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiN(SOCF、LiTFSI)、リチウム-ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO、LiFSI)、リチウム-ジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)および/またはリチウム-トリフレート(LiSOCF、LiTf)を含む群から選択される。特に好ましいリチウム塩は、LiBOB、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiTFSIおよび/またはLiFSI、特にLiBOB LITFSI、LiPFおよびLiBFを含む群から選択される。
【0021】
好ましい架橋剤は、ベンゾフェノン、ポリスチレンに使用されるジビニルベンゼン、およびその誘導体がアミン官能化PEOを架橋することができる多面体オリゴマーシルセスキオキサン(英語:Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane(POSS))を含む群から選択される。好ましい溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)1.3-ジオキソラン(DOL)、アセトニトリル(ACN)および/またはアジポニトリル(ADP)を含む群から選択される。
【0022】
特に好ましいポリマーはポリ[ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン]、MEEP)であり、好ましいリチウム塩はリチウム-ビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)であり、好ましい架橋添加剤はベンゾフェノンである。好ましい溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0023】
固体高分子電解質層中のポリマーの割合は、固体高分子電解質の総重量に関して、≧10重量%から≦90重量%の範囲、好ましくは≧15重量%から≦85重量%の範囲、好適には≧20重量%から≦80重量%の範囲でありうる。固体高分子電解質層中の導電性塩の割合は、固体高分子電解質のポリマー含有量に関して、≧6重量%から≦20重量%の範囲、好ましくは≧8重量%から≦16重量%の範囲、好適には≧10重量%から≦12重量%の範囲でありうる。固体高分子電解質層中の架橋剤の割合は、固体高分子電解質のポリマー含有量に関して、≧5重量%から≦20重量%の範囲、好ましくは≧7重量%から≦17重量%の範囲、好適には≧10重量%から≦15重量%の範囲でありうる。
【0024】
好ましい実施形態では、固体高分子電解質は、≧5μmから≦150μm、好ましくは≧15μmから≦100μm、好適には≧20μmから≦50μmの範囲の層厚を有する層を形成する。ここでの層の厚さの数値は、凹部の深さを考慮せずに、表面上の溶媒を含まない層の厚さに関連する。言い換えれば、固体高分子電解質は、それによって電極または集電体の表面上に≧5μmから≦150μmの範囲の層厚を有する連続層を形成する。
【0025】
機能性コーティングの方法は、リチウム合金、ナトリウム、マグネシウム、または亜鉛のような他の構造化された、あるいは構造化可能な金属電極、および大部分が銅またはアルミ箔で形成されている集電体に有利に適用されることができる。そのため電極または集電体の実施形態では、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅および/または鉄、好ましくはリチウムを含む群から選択される。好ましい実施形態では電極の金属がリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、および/または鉄を含む群から選択される。金属電極は高い比エネルギーを有する。ここでは亜鉛および特にリチウムまたはナトリウム電極が、特に商業的な関心の対象となる。特に好ましい実施形態では金属がリチウムである。リチウムは酸化還元電位が低く、容量が大きいため、非常に好ましい電極材料である。
【0026】
固体高分子電解質から成る機能性コーティングでコーティングする前に、リチウムのような金属を化学修飾することができる。これは例えば1.3-ジオキソラン(DOL)中の1-フルオロエチレンカーボネート(FEC)またはビニレンカーボネート(VC)または硝酸リチウム(LiNO)のような電解質添加剤に浸漬塗装することによって行うことができ、それによって保護層、いわゆるSEI(固体電解質中間相)が金属、特にリチウム上に形成されうる。さらに金属、特にリチウムは、例えばそれをCO雰囲気に晒すことによって化学修飾することができ、それによって炭酸塩層が金属上に成形される。これらのタイプの修飾は、提示された機械的修正および非液体電解質と組み合わせることができる。好ましい実施形態では、金属はリチウムであり、構造化リチウム表面は化学修飾を有し、好ましくは炭酸リチウムを含むリチウムイオン伝導層から選択され、リチウム表面と、1.3-ジオキソラン(DOL)中の二酸化炭素、1-フルオロエチレンカーボネート(FEC)、炭酸ビニレン(VC)または硝酸リチウム(LiNO)との接触反応によって生成される。このようにして電極のさらなる安定化を達成することができる。
【0027】
炭酸リチウムの他に、酸化リチウムおよび水酸化リチウムもSEIの構成要素でありえ、それは様々な炭酸塩または雰囲気中に含まれる元素酸素との反応によって形成される。さらに1-フルオロエチレンカーボネート(FEC)との反応によってフッ化リチウムが、およびSEIに挿入される硝酸リチウムまたは元素窒素との反応によって窒化リチウムが生成されうる。SEIを構築するために使用できるさらなる化学的構成要素は、金属およびポリマー、セラミックなどの他の無機化合物である。特に合金金属はSEI中の部材として好ましい。さらに特に、金属電極に対して安定的であり、リチウムイオン伝導性を有するポリマーおよび無機成分は、保護層の好ましい構成要素である。
【0028】
コーティングされ構造化された金属電極は、非液体電解質と組み合わせられうる。非液体電解質は、適切な金属イオン伝導性を有するポリマー、セラミック、またはガラスを含みうる。そこから得られる固体高分子電解質、ゲルポリマー電解質または混合相/複合電解質と組み合わせられた、構造化およびコーティングされた金属電極は、特に適切なカソード材料を備えたアノードとして使用可能である。
【0029】
本発明のさらなる対象は、本発明による集電体または本発明による金属電極、非液体電解質および対電極を含む、一次または二次エネルギー貯蔵、特に電気化学的エネルギー貯蔵に関する。本発明による金属電極は好ましくは負極(アノード)であり、対極はそれに対応して正極である。エネルギー貯蔵装置は、好ましくは、リチウム金属電池、リチウム金属アキュムレータ、リチウムイオンアキュムレータ、リチウムポリマー電池、リチウムイオンコンデンサ、スーパーコンデンサ、ハイブリッド(スーパー)コンデンサ、デュアルイオン電池および/または(アース)アルカリ金属イオン電池を含む群から選択される。二次電気化学エネルギー貯蔵が好ましい。
【0030】
集電体および電極の説明については、上記の説明を参照されたい。本発明の文脈において「エネルギー貯蔵」という概念は、一次および二次エネルギー貯蔵装置、すなわち電池(一次貯蔵)およびアキュムレータ(二次貯蔵)を含む。一般的な用語では、アキュムレータは「電池」という大概念を使用して呼ばれることが多い。リチウムイオン電池という概念は、特に明記しない限り、リチウムイオンアキュムレータと同義語として使用される。本発明の意味での「電気化学エネルギー貯蔵」という概念は、電気化学コンデンサ(英語:electrochemical capacitors)、二重層コンデンサ(英語: electrochemical double-layer capacitors)、スーパーコンデンサあるいはウルトラコンデンサ(英語:supercapacitors、ultracapacitors)、またはいわゆる疑似コンデンサ(英語:pseudo capacitors)も含む。電気化学コンデンサは、文献ではスーパーコンデンサとも呼ばれ、電池に対しては電力密度が高いことで、従来のコンデンサに対してはエネルギー密度が高いことで特徴付けられる電気化学エネルギー貯蔵である。
【0031】
ハイブリッド(スーパー)コンデンサは、電力密度が最適化され、電極とエネルギー密度が最適化された電極の組み合わせを含む。その大部分は非対称コンデンサである。電力密度が最適化された電極は、主に二重層ベースの静電容量によって特徴付けられ、エネルギー密度が最適化された側は、主にファラデー法から生じるいわゆる疑似静電容量によって特徴付けられる。好ましいハイブリッドスーパーコンデンサは、いわゆるリチウムイオンコンデンサである。マイナス側にはリチウムインターカレーション材を、プラス側には活性炭電極を使用する。そのためハイブリッドスーパーコンデンサは、電池とコンデンサ技術のハイブリッドである。
【0032】
電気化学的エネルギー貯蔵は、金属電極を備えたガルバニセル、例えば、金属空気電池、金属硫黄電池または金属酸素電池またはアキュムレータまたは(アース)アルカリ金属イオンアキュムレータまたはスーパーコンデンサでありうる。リチウムベースのエネルギー貯蔵が好ましい。リチウムベースのエネルギー貯蔵は、好ましくは、リチウム電池、リチウム空気電池、リチウム硫黄電池、リチウム金属アキュムレータ、リチウムイオンアキュムレータ、リチウムポリマー電池またはリチウムイオンコンデンサを含む群から選択される。リチウム空気電池、リチウム硫黄電池およびリチウム金属アキュムレータが好ましい。修飾およびコーティングされた金属電極は、特にリチウム金属電池に適合する。好ましい実施形態では本発明による電極はアノードである。本発明の文脈において「アノード」という概念は、金属リチウムが堆積される負極を意味すると理解される。
【0033】
リチウム電池またはリチウムイオンアキュムレータでは、上記の電極を負極として使用することができる。正極には、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト混合酸化物(NMC)、リチウム-コバルト酸化物(LCO)、リチウム-ニッケル酸化物(LNO)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム混合酸化物(NCA)、リチウム-ニッケル-マンガン混合酸化物(LNMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸鉄マンガンリチウム(LFMP)、銅またはアルミニウム箔または金属グリッドまたはカーボンフリースに集電体として塗着されるリチウムおよびニッケルに富む層状酸化物(英語:Li-rich or Ni-rich layered oxide)のようなリチウム含有金属酸化物またはリチウム含有金属リン酸塩を活物質として使用することができる。本発明の文脈において「活物質」という概念は、金属、特にリチウムイオンを可逆的に吸収および放出することができる材料、「挿入」または「インターカレーション」と呼ばれるプロセスを意味する。そのため活物質は、結合剤、導電性炭素、または集電体のような電極の他の可能な構成要素とは対照的に、充電および放電中に発生する電気化学反応に「積極的に」関与する。さらに活物質は、グラファイトまたは有機p型材料のような陰イオン吸収材料でありうる。そのため硫黄または酸素/空気のような変換材料も正極として使用可能である。
【0034】
電気化学的エネルギー貯蔵、特に本発明による電極を含むリチウムまたはリチウム金属電池は、著しく低減された堆積電圧あるいは堆積抵抗を提供することができる。さらにセル抵抗の大幅な削減を可能にする。特に非液体電解質の使用に関連して、使用の安全性をさらに高めることができる。
【0035】
非液体電解質として、好ましくは固体電解質、ゲルポリマー電解質およびハイブリッド電解質と呼ばれるポリマーおよびセラミック電解質から成る混合電解質の3種類の電解質を使用することができる。好ましい実施形態では、非液体電解質は、固体高分子電解質、ゲルポリマー電解質、またはリチウムイオン伝導性セラミック、ガラス状のまたはガラスセラミック固体電解質から成る多層配置を含む複合電解質を含み、その反対側の表面にはゲルポリマー電解質または固体高分子電解質が塗着される。
【0036】
これらのタイプの非液体電解質は、リチウム金属の使いやすさを向上させ、安全性を高める。異なる電解質システムは、それぞれ異なる用途に利点を有する。固体高分子電解質は、例えばパウチ設定に柔軟な構造で使用できる。固体高分子電解質は、好ましくは30℃~80℃の温度範囲で使用可能である。有機溶媒を使用しないことは有利であり、それによって著しく向上した安全性を提供できる。
【0037】
「ゲルポリマー電解質」という概念は、液体電解質が全体的にゲル状電解質としてポリマーマトリックス中に存在する電解質を意味すると理解される。液体電解質は、従来の水性または有機溶媒ベースの電解質であることができ、それは金属塩、好ましくはLiBOB、LiPF、LiBF、LiFSI、LiCIO、LiDFOBのようなリチウム塩を含み、それらは有機炭酸塩、ニトリル、ジニトリル、エーテル、グリコール、イオン液体またはそれらの混合物に溶解し、電解質はさらに公知の電解質添加剤を含みうる。ゲルポリマー電解質もパウチ設定のような柔軟な構造に使用可能である。ゲルポリマー電解質は、好ましくは0~50℃の温度範囲で使用可能である。この場合にも、有機溶媒または水性溶媒の部分がゲル膜に密閉されているため、非液体構造によって安全性を高めることができるという利点がある。
【0038】
無機電解質およびポリマーから形成されたいわゆるハイブリッド電解質は、特に40~100℃の範囲の高温用途に使用可能である。セラミックの比率が高いハイブリッド電解質は、特にボタン電池のような剛性のあるハウジングを備えたシステムに適合する。有機成分あるいはポリマー成分の割合が小さいため、ハイブリッド電解質は、特に高い安全性を提供できる。
【0039】
固体高分子電解質を有するセルを製造するために、構造化されコーティングされたリチウム電極に固体高分子電解質膜が設けられる。対称リチウム型リチウム電池の場合、2つのリチウム電極の間に固体高分子電解質膜を配置することができる。本発明の文脈において「膜」という概念は、例えばポリマー電解質の薄層を意味するものとして理解される。高分子膜の厚さは、≧10μmから≦150μm、好ましくは≧15μmから≦100μm、好適には≧20μmから≦50μmの範囲でありうる。実施形態では電極間あるいは固体高分子電解質膜間の固体高分子電解質が、固体高分子電解質を有する構造化表面のコーティングに亘って提供されうる。他の実施形態では付加的にもう1つの固体高分子電解質膜が電極間の層厚の増強のために配置されうる。
【0040】
ポリマーおよび導電性塩として好ましくは、電極の機能性コーティングに使用されるポリマーおよび導電性塩を使用することができる。これに関したポリマー、導電性塩および架橋剤の説明については、上記の説明を参照されたい。好ましいポリマーは、MEEP、ポリ((オリゴ)オキソエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属-メタクリレート、MEE-co-BF3LiP、PEO、PEGDME、SPE、PVdF、PVdF-HFP、PAN、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、PMMA、PMAN、ポリシロキサン、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。好ましい導電性塩は、LiBOB、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiTFSI、LiFSI、LiDFOBおよび/またはLiTfを含む群から選択される。固体高分子電解質には、MEEPポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物が特に好ましい。固体高分子電解質膜は、ポリマーとリチウム塩の混合物のUV感受性架橋剤を使用したUV誘起架橋によって得ることができる。
【0041】
ゲルポリマー電解質を有するセルでは、構造化されコーティングされたリチウム電極上にゲルポリマー電解質膜が配置される。対称型リチウム電池の場合、ゲルポリマー電解質を2つのリチウム電極の間に配置できる。ゲルポリマー層の厚さは、≧10μmから≦150μm、好ましくは≧15μmから≦100μm、好適には≧20μmから≦50μmの範囲でありうる。ポリマーおよび導電性塩として好ましくは電極の機能的コーティングに使用されるポリマーおよび導電性塩を使用することができる。これに関するポリマー、導電性塩および架橋剤の説明については、上記の説明を参照されたい。ゲルポリマー電解質に好ましい導電性塩は、LiBOB、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiTFSIおよびLiSIから選択される。ゲルポリマー電解質を有するセルのさらなる実施形態では、液状電解質が少なくとも1つの構造化され固体高分子電解質でコーティングされたリチウム電極上に添加され、これはさらなる構造化され固体高分子電解質でコーティングされたリチウム電極の付加的な固体高分子電解質膜なしで配置されうる。
【0042】
ゲルポリマー電解質を備えたセルを製造するために、固体高分子電解質膜、例えば、MEEPポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物を、構造化およびコーティングされたリチウム電極上に配置することができる。液体電解質は、次の段階でこれに追加されうる。固体ポリマーが液体電解質により濡れるとゲルが形成され、漏れのない電解質が生成され、それによってこれが非液体電解質を形成する。さらなる実施形態では、ゲルポリマー電解質を有するセルを生成するために液体電解質が少なくとも1つの構造化され固体高分子電解質でコーティングされたリチウム電極に添加され、これがさらなる構造化され固体高分子電解質でコーティングされたリチウム電極の固体高分子電解質膜なしで配置されうる。
【0043】
溶媒としては、有機溶媒、特に環状または線状炭酸塩、エーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ニトリル、ジニトリルならびにイオン液体が好ましい。有機溶媒は、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ジメトキシエタン、1.3-ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、フッ素化環状または線状炭酸塩、エーテル、Pyr14TFSIのようなイオン性液体および/またはそれらの混合物を含む群から選択される。溶媒は、好ましくは、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよび/またはそれらの混合物を含む群から選択される。ゲル化の溶媒として例えば、EC:DMC(質量比1:1)、EC:DEC(3:7)またはEC:EMC(3:7)のような組み合わせを使用できる。例えばセル構築中にゲルポリマー電解質を製造するために、質量比1:1のEC:DMC(1:1重量%)中に0.7M LiBOBを含む液体電解質を固体高分子電解質に加えることができる。
【0044】
本発明の意味での「複合材料」という概念は、2つ以上の材料からなる複合材料として理解されるべきである。従って「ハイブリッド電解質」は、2つ以上の結合された材料から形成される電解質として理解されるべきである。「ガラスセラミック」という概念は本発明の文脈において、溶融技術を使用して製造された素材であるガラスから始まり、合目的的な温度処理によって制御され、ガラス相および結晶相を含むガラスセラミックに変換される材料として理解されるべきである。
【0045】
材料は特に、リチウムイオン伝導性セラミック、ガラス状またはガラスセラミック固体電解質、ポリマー、およびリチウム塩を含む群から選択される。好ましいガラスセラミックは、NASICON(ナトリウム超イオン伝導体、ナトリウム超イオン伝導体)と類似構造を有するリチウム化合物である。「ガラス状」電解質は、リン酸リチウム(LIPON)およびLiSベースのオキシ硫化ガラスのような材料と理解される。
【0046】
ハイブリッドまたは複合電解質を有するセルを製造するため、構造化されコーティングされたリチウム電極上に、反対側の表面がゲルポリマー電解質または固体ポリマーでコーティングされた、リチウムイオン伝導性セラミックの、ガラス状のまたはガラスセラミックの固体電解質からなる多層配列が配置される。多層配置は例えば、ポリマーでコーティングされた固体電解質成形体を含むことができる。固体電解質成形体、例えばペレットは、例えばLLZO材料(Li6.6LaZr1.6Ta0.412)から形成されうる。ペレットは、リチウム電極の機能性コーティングに関して説明したように、固体高分子電解質混合物、例えばMEEP、LiBOBおよびTHFに溶解したベンゾフェノンで両面からコーティングされ、乾燥後に紫外光で架橋されることができる。ゲルポリマー電解質で多層配列を生成するために、固体高分子電解質層を液体電解質でゲル化することができる。
【0047】
好ましい実施形態では:
-セラミック固体電解質は、Ta5+、Nb5+、Te5+またはW6+により、Zr4+格子間サイトで、および/またはAl3+またはGa3+によりLi格子間サイト上で置換されることにより、立方晶構造で安定化されたリチウム-ランタン-ジルコン酸(LLZO)、リチウム-ランタン-タンタル-ジルコン酸Li6.75LaZr1.75Ta0.412(LLZTO)、リチウム-ランタン-チタン酸塩(La、Li)TiO(LLTO)、および/またはリチウム-アルミニウム-ゲルマニウム-ホスフェートLi1+xAlGe2-y(PO(LAGP)を含む群から選択され、ここでは0.3x<0.6および0.3y<0.5であり;
-ガラス状固体電解質はリン酸リチウム(LIPON)を含む群から選択され、および/または硫化物ベースの固体電解質は、LiS-P、LiPS(LPS)、LiS-GeS、LiS-GeS-P、LiS-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、LiSO-LiO-BおよびLiS-GeS-P(LGPS)好ましくはLi10GeP12を含む群から選択され;および/または、
-ガラスセラミック固体電解質は、実験式Li1+x-y III IV 2-x-y(POのNASICONと同構造のリチウム化合物を含む群から選択され、ここでは0≦x<1.0≦y<1および(1+x-y)>1であり、MIIIは3価陽イオン、MIVは4価陽イオンおよびMは5価陽イオン(LATP)であり、特にLi1+xAlTi2-x(PO、Li11および/またはLiIである。
【0048】
実験式Li1+x-y III IV 2-x-y(POのNASICONと同構造のリチウム化合物の場合、Mは好ましくはTa5+および/またはNb5+から選択され、MIIIは好ましくはAl3+、Cr3+、Ga3+から選択され、および/またはFe3+および/またはMIVは好ましくはTi4+、Zr4+および/またはSi4+から選択される。NASICONと同構造の好ましいリチウム化合物は、例えばリチウム-アルミニウム-チタン-ホスフェート(LATP)、特にLi1+xAlTi2-x(PO)(POのようなLi1+xAlTi2-x(PO)であり、焼結基板として6・10-3S/cmのイオン伝導度を有しうる。
【0049】
好ましくはZr4+格子間サイト上でTa5+,Nb5+,Te5+により置換されることにより、および/または例えばLi6.6LaZr1.6Ta0,412のようなLi格子間サイト上でAl3+またはGa3+により置換されることにより、ジルコン酸ランタンリチウム(LLZO)のようなセラミック固体電解質が立方晶構造で安定化される。置換の割合はここで好ましくは、式単位あたり0.4~0.5の範囲であり、および/または式単位あたりのリチウムイオンの割合は≧6.5である。これは高い導電性に寄与しうる。LLZOセラミックの利点は、これがリチウム金属に対して安定していることである。有利なことに、立方ガーネット構造を有するLLZOセラミックは、高いリチウムイオン伝導性を有する。LLZOセラミックの利点は、リチウム金属に対して安定していることである。有利なことにLLZOセラミックは高いリチウムイオン伝導性を有する。好ましい(La、Li)TiO(LLTO)セラミックは、La0.57Li0.33TiOである。好ましいLi1+xAlGe2-y(PO(LAGP)セラミックは、Li1.5Al0.5Ge1.5(POである。
【0050】
金属電極の凹部は例えばリチウムなどの金属に成形加工により設けることができる。凹部は例えば圧延、特にカレンダー圧延またはエンボス加工によって形成できる。凹部に対応したプラスに構造化された表面を有するローラで、所望の厚さの金属箔に凹部を設けることができる。量生産に適したローラが用意されている。特に面積が大きい微細構造化されたエンボスローラが適合する。大きな直径の微細構造化されたローラを使うことで、構造物あるいは凹部を素早く、かつ無限に刻印できる。代替的に電極として使用可能な金属箔を手作業で刻印することもできる。凹部の所望の密度または数に応じて、圧延やエンボス加工を繰り返すことができる。有利なことに、この方法には産業的尺度にまで拡大する潜在力がある。
【0051】
そのため本発明のさらなる対象は、本発明による金属電極またはエネルギー貯蔵用の集電体を製造するための方法に関し、凹部を有する金属表面の構造化はロールツーロール法によって実施される。電極または集電体の表面は、互いに対して離間して配置された複数の止まり穴状の凹部を含み、このように構造化された表面は、固体高分子電解質でコーティングされ、凹部は固体高分子電解質で充填される。電極および集電体の説明については上記の説明を参照されたい。
【0052】
ロールツーロール法(英語ではReel-to-ReelまたはRoll-to-Roll法(R2R))では、出発材料は箔の巻上にあり、巻き戻され、処理され、完成品として再び巻き上げられる。それによって大量の個数を低費用で、安全に、問題なく処理できる。さらに相応の上層構造を有するローラを、ロールツーロールプロセス用に設計できる。このような方法は、工業規模または手作業で経済的かつ効率的な方法を可能にし、簡単な圧延プロセスで大きな表面積をカバーしうる。特にマイクロメートル範囲の寸法、例えば、≧100μmから≦800μmの範囲の長さ、幅、および/または深さを有する凹部は、ロールツーロール法を使って工業的に良好に実現されうる。
【0053】
リチウムの圧縮または圧延中の圧力は、≧5バールから≦30バール、好ましくは≧7バールから≦20バール、好適には≧10バールから≦15バールの範囲でありうる。
【0054】
この方法のさらなる段階では、構造化された表面、特にリチウム表面を固体電解質でコーティングすることができる。固体高分子電解質でコーティングすることにより、電極または集電体の拡大された表面を電気化学的プロセスに完全に使用することができる。好ましくはここでは機能性コーティング法が使用される。
【0055】
コーティングは、特にスプレーコーティングによって塗着することができ、まずMEEPのような適合するポリマー、LiBOBのようなリチウム塩を含む混合物またはコーティング溶液、およびベンゾフェノンのような紫外線(UV)活性化可能な架橋添加剤が、THFのような適合する溶媒中で生成される。次にこの混合物は、例えばドロップコーティングを使って、構造化された表面、好ましくはリチウム表面に塗着されうる。溶液でコーティングすることにより均一なコーティングを形成できる。ドロップコーティングの溶媒としてTHFの代わりに、1.3-ジオキソラン(DOL)、アセトニトリル(ACN)またはアジポニトリル(ADP)を使用できる。溶媒中のポリマー、リチウム塩および架橋添加剤などのコーティング混合物の成分の濃度はここでは、≧0.15mg/μLから≦1mg/μL、好ましくは≧0.2mg/μLから≦0.75mg/μL、好適には≧0.3mg/μLから≦0.5mg/μLまでの範囲でありうる。
【0056】
リチウム電極の表面に塗着されたコーティング混合物は、溶媒が蒸発するように高温で乾燥させることができる。コーティングの乾燥温度は、≧50℃から≦80℃、好ましくは≧55℃から≦75℃、好適には≧70℃から≦70℃の範囲でありうる。
【0057】
続いて乾燥した電極に好ましくは紫外光が照射され、ポリマーが架橋される。これにより安定したコーティングを形成することができる。この方法を使用すると、ポリマー電解質から成る薄層を構造化リチウム電極に塗着できるため、層が表面パターンに従い、それによって表面全体を濡らす。ポリマーを架橋するための曝露時間は、≧11分から≦25分、好ましくは≧13分から≦20分、好適には≧15分から≦18分の範囲でありうる。
【0058】
簡単に実施できるロールツーロール法は、構造化に有利に使用でき、コーティングは簡単なコーティング技術を使用して塗着できる。従って、電極あるいは集電体の処理は、産業に使用されるシステムにて適用できる。
【0059】
本発明を説明するために役立つ例および図を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の実施形態による、機能性コーティングを有する構造化され化学的に修飾された金属電極を製造するための製造あるいはプロセスの概略図を示す。
図2a】機械的に修正されたリチウム金属電極を示し、1000μm間隔の直方体を有するスタンプを示す。
図2b】機械的に修正されたリチウム金属電極を示し、500μm間隔の直方体を有するスタンプを示す。
図3a】構造化およびコーティングされたリチウム電極のSEM画像を示す。
図3b】炭素のEDS分析を示す。
図4】Li/Li対称セルとしての本発明の様々な実施形態による、固体高分子電解質ならびに非液体電解質でコーティングされた構造化表面を有するリチウム電極を備えたエネルギー貯蔵デバイスのセル構造を示す。
図5a】固体高分子電解質を有する構造化リチウム電極(「修飾(56%)」正方形)および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。
図5b】20℃または60℃で測定された対応する電位プロファイルを示す。
図5c】固体高分子電解質を備えた構造化リチウム電極(「修飾(56%)」正方形)および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。
図5d】20℃または60℃で測定された相応する電位プロファイルを示す。
図6a】ゲルポリマー電解質を有する構造化リチウム電極(「修飾(56%)」正方形)および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。
図6b】相応する電位プロファイルを示す。
図7a】ハイブリッド電解質を有する構造化リチウム電極(「修飾(56%)」正方形)および非構造化リチウム電極を備えた比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。
図7b】相応する電位プロファイルを示す。
図8a】リチウム析出溶解実験の結果を示す。
図8b】CO雰囲気に保存された構造化リチウム電極を有する対称ボタン電池構造、および比較セルのアイドリング時の複雑なセル抵抗の経時推移を示す。
図9a】リチウム析出溶解実験の結果を示す。
図9b】FECに保存された構造化リチウム電極を有する対称ボタン電池構造および比較セルのアイドリング時の複雑なセル抵抗の経時推移を示す。
図10a】リチウム析出溶解実験の結果を示す。
図10b】DOL中のLiNOに保存された、構造化されたリチウム電極を有する対称ボタン電池構造および比較セルのアイドリング時の複雑な細胞抵抗の経時推移を示す。
図11a】リチウム析出溶解実験の結果を示す。
図11b】VCに保存された構造化リチウム電極を有する対称ボタン電池構造および比較セルのアイドリング時の複雑な細胞抵抗の経時推移を示す。
図12】Li/Li対称セルとして付加的なポリマー電解質膜を有する、あるいは有さない、固体高分子電解質によりコーティングされ構造化された表面を備えたリチウム電極を有するエネルギー貯蔵のセル構造を示す。
図13】付加的に高分子電解質膜を有する、あるいは有さない、固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極のナイキスト線図を示す。
図14a】非構造化制御に対する異なる電極厚さおよび凹部の深さのための固体高分子電解質を有する対称セルのナイキスト線図を示す。
図14b】非構造化制御に対する異なる電極厚さおよび凹部の深さのための固体高分子電解質を有する対称セルのナイキスト線図を示す。
図14c】非構造化制御に対する異なる電極厚さおよび凹部の深さのための固体高分子電解質を有する対称セルのナイキスト線図を示す。
図15】異なる電極厚さおよび凹部の深さのための固体高分子電解質を有する対称セルのナイキスト線図を示す。
図16a】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図16b】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図16c】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図16d】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図16e】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図16f】固体高分子電解質を有する構造化されたリチウム電極および構造化されていない比較セルのための、60℃および0.075mA/cmの定電流密度のときの電位プロファイルを示す。
図17a】厚さ300μmのリチウム金属電極中の深さ150μmの凹部のREM画像を示す。
図17b】拡大された部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、本発明の実施形態による機能性コーティングを有する構造化され、化学的に修飾された金属電極を製造するための方法段階の概略図を示す。金属箔2、例えばリチウムは、第1段階でローラ4を使い、例えばロールツーロール法によって、互いに離間して配置された複数の止まり穴のような凹部6を備える。このように構造化された表面は、次の段階で化学修飾8を施され、リチウム表面の、例えば二酸化炭素または1-フルオロエチレンカーボネートとの接触反応によって、リチウムイオン伝導性炭酸リチウム層10が構造化表面上に形成される。次の段階で、ポリマー、リチウム塩および溶媒中で紫外線(UV)によって活性化されうる架橋添加剤、例えば、MEEP、LiBOBおよびTHF中のベンゾフェノンを含むコーティング溶液14が、スプレーコーティング12を使って構造化リチウム表面に塗着される。次の段階で溶媒は乾燥16を使って除去される。続いて乾燥したコーティングが紫外光18で照射され、ポリマーが架橋される。これによって構造化された表面は、固体高分子電解質20でコーティングされ、凹部6は、固体高分子電解質20で充填される。
【実施例1】
【0062】
機能性コーティングを有する構造化リチウム電極の製造
1.1 構造化
リチウム箔は、スタンプを押すことによってリチウム表面上に構造化された。リチウムは水との反応性が高いため、アルゴン雰囲気下のグローブボックスまたは脱水空気のある乾燥室で作業を行った。電極の製造には、幅19mm、厚さ500μmのリチウム金属ストリップ(アルベマール社製、厚さ500μm、純度の高いバッテリーグレード)を使用した。これらは300μm×300μm×300μmの規則的に配置された小さな直方体を備えたポリオキシメチレン(POM)製のスタンプで処理された。スタンプをリチウムストリップ上に位置付けたため、直方体はリチウムの方向に向けられた。上から油圧プレスを使用して15バールの圧力を4~5秒間加えたため、直方体が軟質金属に押跡を残した。個々の直方体間の互いに対する間隔が1000μm(スタンプ1)と500μm(スタンプ2)と異なる2つのスタンプを使用したため、使用するスタンプによってリチウムの欠陥密度が異なり、したがって表面は異なる拡大を示した。続いて直径12mmの円形電極を、修飾されたリチウム金属ストリップから押し抜いた。
【0063】
図2aは、1000μm間隔の直方体を有するスタンプ(スタンプ1)により機械的に構造化されたリチウム金属電極を示し、図2bは、500μm間隔の直方体を有するスタンプ(スタンプ2)により機械的に構造化されたリチウム金属電極を示す。構造化により、リチウム電極の表面全体は平らな表面に関し、1000μm間隔で20%および500μm間隔で56%拡大した。
【0064】
1.2 コーティング
続いて構造化されたリチウム表面は固体高分子電解質でコーティングされた。コーティングのためにポリ〔ビス((メトキシエトキシ)エトキシ)ホスファゼン〕(MEEP)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)および紫外光活性架橋添加剤ベンゾフェノンの溶液が、テトラヒドロフラン(THF)中で、50:2:3の重量比で製造された。MEEP、LiBOBおよびベンゾフェノンはより良好に均質化するためにテトラヒドロフラン(THF)中で溶解され、それは1時間撹拌された後、減圧下で蒸発された。得られた黄色がかった高粘度の溶液は、さらなる使用のために20℃で保存された。
【0065】
電極をコーティングするためのドロップコーティング法では、100mgの粘性のある非架橋ポリマー混合物を約300μLのTHFに溶解し、エッペンドルフピペットを使用して1.1段階で得られたリチウム電極に電極あたり60μLを均一に滴下した。電極を65℃の炉で一晩乾燥させて溶媒を蒸発させ、続いて構造化リチウム表面上のポリマー層を紫外光下で18分間架橋させた。
【0066】
コーティングされたリチウム電極は、走査型電子顕微鏡(SEM、ツァイス 登録商標Auriga電子顕微鏡)およびEDX分析(オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を使って検査された。図3aは、機能性コーティングを備えた500μm間隔の直方体を有するスタンプ(スタンプ2)で機械的に構造化されたリチウム電極のSEM画像を示す。図3aから分かるように、高分子電解質コーティングはリチウム表面の構造に従い、表面全体を覆った。得られたポリマー層は、凹部の深さを含めて約450μm(±20μm)の厚さを有した。充填された凹部の上の層の厚さは約150μmだった。これは、あまり強く構造化されていない表面にも当てはまった。図3bは炭素のEDX分析を示す。図3bから分かるように、エンボス加工によって引き起こされた欠陥を除いて、炭素は、凹部および層に一貫して均一に分布していた。EDX分析はさらに、酸素と窒素の元素ならびにMEEPポリマーのリンおよびLiBOB塩から成るホウ素がそれぞれ全体に均等に分配されて存在していることを示した。
【0067】
この結果は、使用した方法により、高分子電解質から成る約150μmの薄層を構造化リチウム電極上に塗着できるため、層が表面パターンに従い、それによって表面全体を濡らすことを示す。
【実施例2】
【0068】
電気化学セルの製造
セルは3つの異なる電解質で製造された:固体高分子電解質、ゲル高分子電解質、および両面をゲル高分子電解質でコーティングされたセラミック電解質から成るハイブリッド電解質である。リチウム構造化は、すべての場合において、実施例1.1に記載の方法により、500μm間隔の凹部を有するスタンプ2を使用し、実施例1.2による固体高分子電解質でのコーティングを実施した。比較セルとして、同様にコーティングされた非構造化リチウム電極を備えた同一構造のセルがそれぞれ製造された。
【0069】
2032ボタン電池は電気化学分析用に構築された。セルは対称型リチウム電池として構築された。このために、それぞれ2つのコーティングされた電極が、コーティングされた側が互いに向き合うように互いの上に配置された。2つの電極間の接触および、そのためセルの起こり得る短絡をも回避するために、それぞれ1つの非液体電解質が電極間に配置された。セル構造の他の構成要素は、電極とセルハウジングの間に存在したスペーサープレートとスプリングワッシャーだった。これらは、電極のコーティング間の接触の問題が生じないように、電極を十分に互いに対して押し付ける必要があった。電極と電解質から成る組み合わせの厚さに応じてスペーサおよびバネが調整された。
【0070】
2.1 固体高分子膜の製造
実施例1.2で生成された非架橋の高粘度ポリマー混合物を、シリコン処理されたポリエステル箔(登録商標Maylar)上に添加した。2枚目の箔を上に置き、まだ液体であるポリマー混合物を、約150μm(±20μm)厚さの層に分布した。架橋のために、この形態のポリマー混合物を18分間紫外光に晒した。続いて箔の1つを架橋ポリマー膜から容易に剥がすことができ、13mmの所望の大きさの小さな丸い膜を押し抜くことができた。これらはピンセットで簡単に扱うことができた。
【0071】
2.2 固体高分子電解質を有するセルの製造
固体高分子電解質を有するセルのため、構造化リチウム電極、および比較として非構造化リチウム電極を、まず実施例1.2に記載の方法に従ってコーティングした。実施例2.1によるMEE-ポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物から成る付加的な固体高分子電解質膜が、セルのリチウム電極間に挿入された。
【0072】
図4aでセル構造が概略的に示され、固体高分子電解質コーティング20を有するそれぞれ1つの構造化リチウム電極2がアノードおよびカソードとして使用され、固体高分子電解質膜22が非液体電解質として使用される。
【0073】
2.3 ゲルポリマー電解質を有するセルの製造
ゲルポリマー電解質を有するセルのため、構造化リチウム電極、ならびに比較のために非構造化リチウム電極を、まず実施例1.2に記載の方法に従ってコーティングした。セル中で、実施例2.1によるMEEPポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物から成る付加的な固体高分子電解質膜をリチウム電極の間に挿入した。ここからゲルポリマー電解質を生成するために、セル構築中に質量比1:1のEC:DMC(1:1重量%)中に0.7M LiBOBから成る液体電解質を、固体高分子電解質に添加した。固体ポリマーを液体電解質で濡らすことにより、ポリマーのゲル化が生じ、漏れのないゲル電解質が得られた。従ってこれは非液体として定義される。
【0074】
図4bでセル構造は概略的に示され、固体高分子電解質コーティング20を有するそれぞれ1つの構造化リチウム電極2はアノードおよびカソードとして使用され、MEEPポリマーおよびLiBOB塩および液体電解質24から成る架橋混合物から成る固体高分子電解質膜22の塗着からゲルポリマー電解質が結果として生じる。
【0075】
2.4 ハイブリッド電解質を有するセルの製造
ハイブリッド電解質を有するセルの場合、リチウム電極は上記のようにコーティングされた。電極の間にLLZO(Alを添加したLi6.6LaZr1.6Ta0.412、ユーリッヒ研究センター)から成る厚さ400μmの層から成る、両側が厚さ約100μmのゲルポリマー電解質の層でコーティングされた、ポリマーコーティングされた固体電解質ペレットが配置された。電極のコーティングのように、LLZO材料の両面に、ドロップコーティングを使い、MEEPポリマー、LiBOB塩およびベンゾフェノンから成るTHFに溶解した非架橋ポリマー混合物を架橋剤としてコーティングし、紫外光下で乾燥させた後に架橋することにより、ゲルポリマーでコーティングされた固体電解質が製造された。固体ポリマー層からLLZO材料上にゲルポリマーを生成するために、セルの構築中に、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート(EC:DMC、1:1重量%)から成る質量比1:1の混合物中の0.7M LiBOBから成る液体電解質が、それぞれポリマー固体電解質ペレットとリチウム電極の間の固体電解質の総量に添加された。
【0076】
図4cは、セル構造を概略的に示し、固体高分子電解質コーティング20を有するそれぞれ1つの構造化リチウム電極2が、アノードおよびカソードとして使用された。MEEPポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物から成る固体高分子電解質膜22で両面がコーティングされたLLZO材料26から成るペレットは液体電解質24に含浸され、それによってゲルポリマー電解質による両面コーティングが生じた。
【実施例3】
【0077】
固体高分子電解質を有するセルの電気化学的特性表示
実施例2.1に従って製造された固体高分子電解質を有する構造化およびコーティングされたリチウム電極を有するセルならびに非構造化リチウム電極を有する比較セルは、インピーダンス測定およびサイクリング実験(リチウム溶解/堆積)を使って互いに比較された。
【0078】
電気化学的検査は2032ボタン電池で実施された。セルはアルゴンの不活性ガス雰囲気で充填されたグローブボックス(MBraun)内で組み立てられた。サイクリング中に0.01mA/cmの定電流密度が適用され、一方の電極にリチウムが堆積し、もう一方の電極でリチウムが溶解した。電極上での次の分極は過電圧として測定された。電流の方向は1時間後に逆になった。測定は20℃および60℃で-1.5Vと1.5Vの間(セル電圧の終了基準)で行われた。20℃での結果を図5aおよび図5bに示し、60℃での結果を図5cおよび図5dに示す。
【0079】
図5aは、固体高分子電解質を有する構造化およびコーティングされたリチウム電極(「修飾(56%)」正方形)および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。図5aから分かるように、インピーダンス測定は、固体高分子電解質を有するセルのリチウム構造化による抵抗の有意な減少を示した。表面に1000μmの間隔で凹部があり、それによって表面が20%拡大したリチウム電極を使用したさらなる試験でも同様に、明確な、比較するとやや少ない、抵抗の減少が示された。これは、構造密度が高く、それによってリチウム表面が大きいほど強く、抵抗が減少することを示す。電極のより大きな表面積が表面での電気化学反応を軽減し、過電圧が減少すると考えられる。
【0080】
図5bは、固体高分子電解質を有する構造化リチウム電極(「修飾(56%)」)および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」)の電位プロファイルを示す。堆積/溶解実験もリチウム構造化による過電圧の減少を示した。ここでもわずかに構造化された表面を使用したさらなる比較テストでは、効果が大きいほど構造化が密になり、それによって表面が大きくなることが示された。
【0081】
図5cおよび図5dは、表面抵抗および過電圧が20℃においてよりも低いことを示し、これはより良好なイオン伝導性を意味する。
【実施例4】
【0082】
ゲルポリマー電解質を有するセルの電気化学的特性表示
実施例2.2に従って製造された構造化およびコーティングされたリチウム電極およびゲルポリマー電解質を有するセル、ならびに非構造化リチウム電極を有する比較セルを、実施例3で説明されたように、インピーダンス測定およびサイクル実験(リチウム溶解/堆積)を使って検査し、測定は20℃で行われた。
【0083】
図6aは、ゲルポリマー電解質を有する構造化およびコーティングされたリチウム電極(「修飾(56%)」正方形)、および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。図6aから分かるように、リチウム構造化による抵抗の有意な減少は、ゲルポリマー電解質を有するセルについても達成された。それに応じて過電圧の有意な減少は、図6bに示された堆積/溶解実験においても達成された。
【実施例5】
【0084】
ハイブリッド電解質を有するセルの電気化学的特性表示
実施例2.3に従い、両面が厚さ100μmのゲルポリマー電解質層でコーティングされたLLZO固体電解質から成るハイブリッド電解質を有する、構造化およびコーティングされたリチウム電極によって製造されたセル、ならびに非構造化リチウム電極を有する比較セルは、実施例3に記載されたように、インピーダンス測定およびサイクリング実験(リチウム溶解/堆積)を使って検査された。測定は60℃で行われた。
【0085】
図7aは、ハイブリッド電解質および構造化およびコーティングされたリチウム電極を有するセル(「修飾(56%)」正方形)、および非構造化リチウム電極を有する比較セル(「未処理」、アスタリスク)のナイキスト線図を示す。図7aから分かるように、固体およびゲルポリマー電解質の場合に類似して、ハイブリッド電解質を有するセルについても界面抵抗の有意な減少が得られた。それに対応して、過電圧の低減は、図7bに示される堆積/溶解実験においても達成された。
【実施例6】
【0086】
COガス処理による構造化リチウム電極の化学コーティング
さらに構造化リチウム電極上の化学的保護層、いわゆる「人工的SEI」の効果も検査された。これらは電池の耐用年数を延長し、潜在的に安全性を高める。このために、リチウムは実施例1.1に記載されたように機械的に処理され、500μm間隔の凹部および、それにより56%の表面拡大が適用された。次に構造化された電極が純粋なCO中で3週間保存された。続いて実施例1.2に記載されたように電極がコーティングされた。
【0087】
形成された炭酸塩保護層の効果の電気化学的調査のために、実施例2.2で説明したように、リチウム電極間のMEEPポリマーおよびLiBOB塩の架橋混合物から成る固体高分子電解質膜を有する対称ボタン電池を製造し、インピーダンス測定およびサイクリング実験を行った。比較セルには乾燥室で水分を排除し3週間保存した構造化リチウム電極を使用した。
【0088】
サイクリングは、0.01mA/cm、0.025mA/cm、および0.05mA/cmの定電流密度で実施された。電極上の次の分極は過電圧として測定された。電流の方向は1時間後に逆になった。測定は60℃で-1.5Vと1.5Vの間(セル電圧の終了基準)の範囲で実行された。結果は図8aおよび図8bに示される。
【0089】
図8aはリチウム堆積溶解実験の結果を示し、図8bは、56%の表面拡大を伴う構造化リチウム電極、MEEPポリマーによる機能コーティングおよび固体ポリマー膜を有する対称ボタン電池構造、CO雰囲気で保存された構造化電極、および濃縮炭酸塩層のない電極を備えた比較セルの、アイドリング時の複雑なセル抵抗の経時変化を示す。比較は、図8aから分かるように、COガス処理の場合、過電圧の減少が生じ、図8bから分かるように表面抵抗の減少を確認できることを示す。
【0090】
これらの結果は、COでガス処理すると過電圧がさらに減少し、表面抵抗がさらに減少することを示す。従ってCOとの接触によって成形された保護層はさらなる改善を示す。
【実施例7】
【0091】
層形成添加剤による構造化リチウム電極の化学コーティング
さらに、公知の添加剤である炭酸ビニレン(VC)および1-フルオロエチレンカーボネート(FEC)から、ならびに硝酸リチウムによって形成された化学的保護層の効果を検査した。ここで構造化リチウム電極は、炭酸ビニレン、1-フルオロエチレンカーボネートまたは1.3-ジオキソランに溶解した10重量%の硝酸リチウムの中で、それぞれ2日間保存された。比較セル用に、構造化されたリチウム電極は乾燥室で水分を排除し2日間保存された。続いて実施例6に説明されたように、固体高分子電解質膜を有する対称ボタン電池が製造され、インピーダンス測定およびサイクリング実験が実施された。
【0092】
図9aはリチウム堆積溶解実験の結果を示し、図9bは56%の表面拡大を有する構造化リチウム電極、FECに保存されたMEEPポリマーおよび固体ポリマー膜による機能コーティングを備えた対称ボタン電池構造、およびFEC層のない電極を有する比較セルのための、アイドリング中の複雑なセル抵抗の経時変化を示す。比較は、図9aで見られるように、FECコーティングの場合に不変の過電圧が生じたことを示しているが、図9bから見られるように、減少した表面抵抗を確認することができた。FEC保存での過電圧は参照電極の過電圧と同一だが、その効果は表面張力で最も強く見られる。24時間後、これはFECコーティングなしの機械的に構造化されたセルの場合の半分の大きさだった。これは、リチウムの輸率が増加するという特徴を有する層によって説明できる。
【0093】
図10aはリチウム堆積溶解実験の結果を示し、図10bはLiNO:DOLに保存された構造化リチウム電極を有する対称ボタン電池構造および比較セルのアイドリング中の複雑なセル抵抗の経時変化を示す。比較は、図10aから分かるように、LiNO:DOL保存の場合にわずかに減少した過電圧が生じたことを示し、図10bから分かるように、減少した表面抵抗を確認できた。
【0094】
そのため、LiNOおよび1,3-ジオキソランの組み合わせも同様に、化学的に修飾されていない構造化電極と比較して改善された挙動を示す。特にセル構築後はすでに一定であった表面抵抗の場合に違いがあった。これはすでに良好に不動態化されたリチウム表面を示す。
【0095】
図11aおよび図11bが示すように、リチウム電極が炭酸ビニレンに保存された後、セルは増加した過電圧および増加した表面抵抗を示した。そのため炭酸ビニレンは抵抗が増加したリチウム上に層を生成した。これは、より厚い層あるいはより多い高分子成分の層の形成によって説明することができる。そのため他の物質と比較して、炭酸ビニレンは、抵抗および過電圧の点であまり有利ではないと分類することができるが、軟性の保護層の場合には好ましい場合がある。
【0096】
そのため全体として、構造化された、特に微細構造化された電極の化学コーティングとの組み合わせにより、さらに修飾された特性を有するリチウム表面を得ることができる。図示された例の中で、COが最良の化学修飾として特定された。
【実施例8】
【0097】
異なる厚さの固体高分子電解質を有するセルの比較
固体高分子電解質を有するセルが、実施例2.2で説明されたように、スタンプ2(300μm×300μm×300μmの直方体、表面の拡大56%の結果として生じた間隔500μm)を使い、構造化されたリチウム電極が実施例1.2で説明された方法でコーティングされ、電極の間に、MEEPポリマーおよびLiBOB塩から成る架橋混合物から成る固体高分子電解質膜が挿入された。
【0098】
電極間での付加的な固体高分子電解質膜の使用をせずに、固体高分子電解質により少ない電解質量を有するもう1つのセルが生成された。ここではポリマー電解質の厚さだけが両電極コーティング(ドロップコーティング)から生じた。
【0099】
図12aはセル構造Iを概略的に示し、それには図4aで示されたものが相応し、固体高分子電解質コーティング20を有するそれぞれ1つの構造化されたリチウム電極2が、アノードとカソードとして使用され、非液体電解質として固体高分子電解質膜22が使用される。図12bは付加的な固体高分子電解質膜のない相応するセル構造IIを示す。
【0100】
電気化学的検査は例3で説明されたように2032ボタンセルで行われた。図13は電極コーティング(「膜+ドロップコーティング」、直方体、概略図I)に付加的に、膜形状の固体高分子電解質を有する、構造化されたリチウム電解質のためのナイキスト線図を、電極コーティング(「膜+ドロップコーティング」、アスタリスク、概略図II)のみを有するセル構造のためにも、示す。測定は60℃で行われた。図13で分かるように、より少ない電解質量は電荷移動抵抗の低減をもたらす。
【0101】
それは、固体高分子電解質が構造化された電極の間で2つの薄層の組み合わせのみによって構造化されたリチウム電極上で形成される実施形態も、良好な結果をみせることを示す。
【実施例9】
【0102】
リチウム電極中の凹部の異なる深さの比較
リチウム電極の凹部の深さの変化およびそれに伴う金属電極の表面拡大の変化が検査された。ここでは同様に構造化により修飾された電極材料がより薄いリチウム金属電極の形状に縮小された。そのために元々の厚さ500μmのリチウム箔 (アルベマール社製)が圧延方法(ロールプレス)で300μmあるいは150μmに圧延された。
【0103】
リチウム電極の機械的修正のために、新しいブロックプレス・スタンプが適合した寸法で使用された。厚さ500μmのリチウム箔のために、ブロック寸法300μm×300μm×300μmおよびブロック間隔500μmのスタンプ2が使用され、厚さ300μmのリチウム箔のために、ブロック寸法150μm(高さ)×300μm×300μmのスタンプ3が、および厚さ150μmのリチウム箔のために、ブロック寸法75μm(高さ)×300μm×300μmのスタンプ4が使用された。次の表は構造化のパラメータをまとめる:
【0104】
【表1】
【0105】
固定高分子電解質を有する構造化されコーティングされたリチウム電極を有する相応に製造されたセル、ならびに相応な厚さの非構造化リチウム電極を有するそれぞれ1つの比較セルは、インピーダンス測定により、実施例3で説明されたように60℃で互いに比較された。
【0106】
図14のナイキスト線図は、それぞれ非構造化比較セルに対して、電極厚500μmの固定高分子電解質および深さ300μmの凹部を有する対称セルを図14aで、300μmおよび深さ150μmを図14bで、150μmおよび深さ75μmを図14cで示す。図14で示されるナイキスト線図は、各構造化について、非構造化比較セルに対する、構造化されたセル(直方体)における抵抗の低減が示される。しかしこの効果は、凹部の深さが小さいほど弱かった。なぜなら表面の拡大が縮小したためである。これは図15の様々な修飾された電極の直接比較によっても示される。深さ75μmの凹部および14%の表面拡大により構造化された厚さ150μmの電極は、他の2つよりも明確に大きな抵抗を有し、深さ300μmの凹部を備えた厚さ500μmの電極はより小さな抵抗値を示した。
【0107】
さらにサイクリング実験(電気化学的リチウム溶解/堆積)が修飾されたおよび未修飾のリチウム金属電極を有する対称セルを使って行われた。図16は固定高分子電解質(「修飾」、実線)を有するそれぞれの構造化されたリチウム電極、および非構造化リチウム電極(「未処理」、点線)を有するそれぞれの比較セルの60℃での電位プロファイルおよび0.075mA/cmの定電流密度を、図16aでは電極厚さ500μmおよび凹部深さ300μmで、図16bでは電極厚さ300μmおよび凹部深さ150μmで、図4cでは150μmおよび深さ75μmで、100時間の時間経過に亘って示す。図16d、eおよびfはそれぞれ最初の20時間の過電圧を、電極厚500μmおよび凹部深さ300μm、300μmおよび深さ150μm、および150μmおよび深さ75μmの場合で示す。
【0108】
図16から分かるように、未修飾電極を有するセルは0.075mA/cmの定電流密度および温度60℃でその厚さに関係なく、部分的に直接、定義された過電圧制限1.5Vに達し、それは直接、充電および放電プロセスの遮断をもたらした。これに比較して、修飾電極は最初の50サイクルに亘り、300μmのリチウムおよび300μmの凹部で最大約0.6V、150μmのリチウム箔および5μmの凹部を有する電極で約0.3Vという、定常的によりわずかな過電圧を示した。このように機械的修正はサイクル安定性およびセル耐用年数を高めうるようである。
【0109】
循環電極は続いて走査型電子顕微鏡を使って検査された。図17aでは厚さ300μmのリチウム金属電極中の深さ150μmの凹部の断面が示される。ポリマーコーティング側は上を向く。図17bは拡大した部分を示す。図17aで分かるように、凹部は非常に良好にポリマーで充填された。このようにドロップコーティング塗着法は薄いリチウム電極にも適用可能である。
【0110】
凹部の上にさらにポリマー中の膨らみが見える。そこではポリマーが凹部中で分離したリチウムにより上方に押されていたと考えられる。全体的に、リチウムは凹部中で大概均等に分離されたことがわかる。図17bの拡大図では、しかしリチウムは凹部中で均一に分離されていただけではないことが見て取れる。凹部の壁および土台には同様に、より高い表面を有する、ポリマー中に突出するリチウム分離が形成された。
【0111】
この結果は、全電極を濡らすためには、ドロップコーティングを使ったコーティングのみにより塗着されたポリマー電解質量で十分であったことを示す。付加的な膜はその電池としての性質によりセル耐用年数を延長するが、同時にセル中の電解質抵抗を高める。さらに、ドロップコーティングおよびブロックプレス法がより薄いリチウム電解質にも適用可能であることが示された。75μm、150μmおよび300μmの凹部はポリマーによる良好な濡らしを有し、修飾によりインピーダンスと過電圧は低減されうる。ポリマー電解質量はリチウムの大幅に均一な分離を促す。
【0112】
この特許出願の基礎となる発明は、助成番号03XP0084Aおよび03XP0084CでBMBFによって資金提供されたプロジェクトで成立した。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図15
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図16f
図17a
図17b