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特許7472907塩素系液体漂白剤組成物用容器及び漂白剤物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】塩素系液体漂白剤組成物用容器及び漂白剤物品
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/84 20060101AFI20240416BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20240416BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240416BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B65D85/84
B65D1/02 100
C08L67/00
C08L77/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021526047
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022095
(87)【国際公開番号】W WO2020250794
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019108922
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024828(JP,A)
【文献】特開2011-132394(JP,A)
【文献】特開平11-091757(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150109(WO,A1)
【文献】特表2003-527457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/84
B65D 1/02
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系液体漂白剤組成物が容器に収容された漂白剤物品であり、
前記容器が、
ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、
ポリエステル樹脂(A)の含有量が90~99質量%であり、
顔料(B)とポリアミド樹脂(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である
樹脂組成物からなる、漂白剤物品。
【請求項2】
塩素系液体漂白剤組成物が、次亜塩素酸ナトリウムを0.5~15質量%含有する、請求項に記載の漂白剤物品。
【請求項3】
塩素系液体漂白剤組成物が、界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の漂白剤物品。
【請求項4】
塩素系液体漂白剤組成物が、アルカリ剤を含有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項5】
ポリアミド樹脂(C)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項6】
ポリアミド樹脂(C)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項7】
ポリアミド樹脂(C)が、炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むω-アミノカルボン酸に由来する構成単位を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項8】
ポリアミド樹脂(C)が、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン11及びナイロン12から選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項9】
樹脂組成物中のポリアミド樹脂(C)の含有量が、1質量%以上9質量%以下である、請求項1~8のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項10】
ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含むジオールに由来する構成単位を有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項11】
顔料(B)が、銅、亜鉛、及びチタンから選ばれる1種以上を含有する顔料である、請求項1~10のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項12】
前記容器が単層容器である、請求項1~11のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、リサイクル原料を含み、該リサイクル原料が、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及び前記ポリアミド樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素系液体漂白剤組成物用容器及び漂白剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素系漂白剤を収容する容器には、ポリエチレン等のポリオレフィン製の容器が主に使用されている。これは、ポリオレフィンは基本的に炭化水素からなる分子骨格を有し、分子内に反応性の高い部分を有さないため、漂白剤に含まれるアルカリや次亜塩素酸塩等による劣化を防ぐことができるためである。
さらに、容器の外観に装飾性を付与し、内容物を光線等から保護するために、容器の樹脂に着色剤を配合することも検討されている。
たとえば、特許文献1には、容器外面の着色と遮光性を付与するために、遮光性を有する顔料を含有するオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂からなる内層と、該内層の色とは異なる色相の顔料を含有する熱可塑性樹脂からなる外層とを備えたブロー容器が開示されている。
また、特許文献2には、単層であっても耐塩素含有水性に優れた成形品を製造するために、酸価を有さない熱可塑性樹脂と、特定の酸価の熱可塑性樹脂と、顔料とを含有する着色樹脂組成物が開示されている。
【0003】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂は、透明性、光沢性等の外観に優れ、機械的性能、保香性、ガスバリア性、リサイクル性にも優れるという特長を有している。そのため、ポリエステル樹脂は、フィルム、シート、中空容器等の各種包装材料に広く利用されている。しかし、エステル結合を有するため、アルカリ性である塩素系漂白剤を収容する場合、加水分解を受けやすく、長期保存時には機械的特性が劣化する。
前記のような優れた性質を有するポリエステル樹脂を、塩素系漂白剤用の容器に用いる試みも行われている。たとえば、特許文献3には、透明性の向上とクラックの抑制を目的として、ポリエステル樹脂と特定のポリアミド樹脂を特定量含有する樹脂組成物から形成される塩素系液体漂白剤組成物用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-341748号公報
【文献】特開平10-310705号公報
【文献】国際公開第2017/150109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエステル樹脂を主基材とする容器に塩素系漂白剤を収容した場合、前記のように機械的特性が劣化するばかりでなく、着色した際の色調も徐々に変化し、容器自体の色が悪化してしまうという問題があった。更に有効成分である塩素が分解し、漂白性能が低下するという問題もあった。
そのため、漂白剤を収容して長期保存した際に、機械的特性を維持しつつ、なかでもクラックの発生を抑制しつつ、ポリエステル樹脂の特長である外観にも優れ、目的とする色調を長期間維持でき、内容物を劣化から保護できる容器が求められていた。
本発明は、長期保存時のクラックの発生を抑制しつつ、容器の色調を保持し、内容物を保護することができる塩素系液体漂白剤組成物用容器、及び塩素系液体漂白剤組成物と容器を含む漂白剤物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題に鑑みて鋭意検討した結果、顔料によって着色したポリエステル樹脂を主材とする樹脂組成物に、顔料に対して、ポリアミド樹脂を特定の割合で含有させた容器を塩素系漂白剤用の容器として用いることで、前記の課題が解決されることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕~〔14〕に関する。
【0007】
〔1〕
ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の含有量が90~99質量%であり、顔料(B)とポリアミド樹脂(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である樹脂組成物からなる、塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔2〕
ポリアミド樹脂(C)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有する、前記〔1〕に記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔3〕
ポリアミド樹脂(C)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔4〕
ポリアミド樹脂(C)が、炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むω-アミノカルボン酸に由来する構成単位を有する、前記〔1〕に記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔5〕
ポリアミド樹脂(C)が、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン11及びナイロン12から選ばれる1種以上である、前記〔1〕に記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔6〕
樹脂組成物中のポリアミド樹脂(C)の含有量が、1質量%以上9質量%以下である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔7〕
ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含むジオールに由来する構成単位を有する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔8〕
顔料(B)が、銅、亜鉛、及びチタンから選ばれる1種以上を含有する顔料である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔9〕
前記容器が単層容器である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔10〕
前記樹脂組成物が、リサイクル原料を含み、該リサイクル原料が、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及び前記ポリアミド樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の塩素系液体漂白剤組成物用容器。
〔11〕
塩素系液体漂白剤組成物が容器に収容された漂白剤物品であり、前記容器が、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の含有量が、90~99質量%であり、顔料(B)とポリアミド樹脂(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である、樹脂組成物からなる、漂白剤物品。
〔12〕
塩素系液体漂白剤組成物が、次亜塩素酸ナトリウムを0.5~15質量%含有する、前記〔11〕に記載の漂白剤物品。
〔13〕
塩素系液体漂白剤組成物が、界面活性剤を含有する、前記〔11〕又は〔12〕に記載の漂白剤物品。
〔14〕
塩素系液体漂白剤組成物が、アルカリ剤を含有する、前記〔11〕~〔13〕のいずれか1つに記載の漂白剤物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期保存時のクラックの発生を抑制しつつ、容器の色調を保持することができる塩素系液体漂白剤組成物用容器、及び塩素系液体漂白剤組成物が容器に収容された漂白剤物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の含有量が90~99質量%であり、(B)と(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である樹脂組成物からなる、塩素系液体漂白剤組成物用容器、及び塩素系液体漂白剤組成物が前記容器に収容された漂白剤物品である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0010】
[塩素系液体漂白剤組成物用容器]
本発明の塩素系液体漂白剤組成物用容器(以下、単に「容器」ともいう。)は、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の含有量が90~99質量%であり、(B)と(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である樹脂組成物からなる。
なお、前記ポリエステル樹脂(A)の含有量は、前記樹脂組成物を100質量%とする含有量である。
【0011】
本発明の容器は、塩素系液体漂白剤組成物を収容した状態での長期保存時のクラックの発生を抑制しつつ、容器の色調を保持することができるものである。このような効果が得られる作用機構は不明であるが、以下のように推察される。
ポリエステル樹脂からなる容器の外観の装飾性や意匠性の向上、並びに内容物の保護を目的として染料や顔料などの着色剤を用いて色彩を付与することが行われるが、アルカリ性である塩素系漂白剤によって、樹脂が加水分解されるうえに、塩素系漂白剤に含有される次亜塩素酸塩によって、色素が分解されるためか、色調が徐々に変化する。本発明では、着色剤として、分子状態で樹脂中に溶解している染料ではなく、粒子状態で樹脂中に分散しており、耐光性、耐水性に優れる顔料を用いることで内容物の影響を受けにくくなっていると考えられる。更にエステル結合に比べ極性の高いアミド結合を有するポリアミド樹脂を顔料に対して適量加えることで、ポリアミドが顔料粒子表面に吸着し、顔料を覆っているとも考えられる。ポリアミドは、ポリエステルと比較して加水分解に強く、耐アルカリ性も高いため、長期保存時にもクラック等の樹脂自体の劣化を防ぎつつ、色調の変化も抑え、内容物の劣化も抑えることができるものと考えられる。
【0012】
<ポリエステル樹脂(A)>
本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸とジオールの共重合体、ラクトンあるいはヒドロキシカルボン酸の重合体、またこれらモノマーの混合物の共重合体が挙げられ、ジカルボン酸とジオールの共重合体が好ましい。
好ましいポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する構成単位(以下、「ジカルボン酸単位」ともいう。)と、ジオールに由来する構成単位(以下、「ジオール単位」ともいう。)とを有する。
【0013】
ジカルボン酸単位が、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。ジカルボン酸単位中のテレフタル酸に由来する構成単位が80モル%以上であれば、ポリエステル樹脂が非晶質となりにくく、そのため、該ポリエステル樹脂を使用して容器を作製した場合、熱収縮しにくくなり、耐熱性が良好となる。
また、ジオール単位が、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。
すなわち、ポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸単位とジオール単位の組み合わせとして、ポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含むジオールに由来する構成単位を有することが好ましく、主成分がポリエチレンテレフタレートからなるものであることがより好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂(A)には、テレフタル酸以外のジカルボン酸、エチレングリコール以外のジオール等の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、スルホフタル酸、スルホフタル酸金属塩、及びテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が好ましい。
エチレングリコール以外のジオールは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0015】
更に、ポリエステル樹脂(A)には、モノカルボン酸、モノアルコール等の単官能性化合物由来の構成単位を含んでもよく、カルボキシ基及びヒドロキシ基から選択されるエステル形成基を少なくとも3つ有する多官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。
【0016】
ポリエステル樹脂(A)は、公知の直接エステル化法やエステル交換法によって製造することができる。ポリエステル樹脂(A)の製造時に使用する重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物等を用いることができる。
また、ポリエステル樹脂(A)は、リサイクル済みポリエステルを含んでもよく、2種以上の樹脂の混合物でもよい。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、特に制限はないが、0.5~2.0dL/gが好ましく、0.6~1.5dL/gがより好ましい。固有粘度が0.5dL/g以上であるとポリエステル樹脂の分子量が充分に高いために、容器は構造物として必要な機械的性質を発現することができる。
なお、固有粘度は、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(=6/4質量比)混合溶媒に、測定対象のポリエステル樹脂を溶解して0.2、0.4、0.6g/dL溶液を調製し、25℃にて自動粘度測定装置(マルバーン・パナリティカル社製、Viscotek DSV)により固有粘度を測定したものである。
【0018】
本発明の容器において、ポリエステル樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物中、90~99質量%であり、91質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、93質量%以上が更に好ましく、また、98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、96質量%以下が更に好ましく、95質量%以下がより更に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の含有量が前記範囲内であると、得られる容器が軽量となり、外観も良好となる。
【0019】
<顔料(B)>
本発明に用いられる顔料(B)は、容器の外観を目的の色調に着色するものであれば、特に制限はなく、目的によって、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、緑系、青系、黄系、赤系の各色調の顔料が好ましく用いられ、なかでも緑系顔料、青系顔料がより好ましく、緑系顔料が更に好ましい。
【0020】
本発明に用いられる顔料(B)は、金属元素を有することが好ましく、銅、亜鉛、及びチタンから選ばれる1種以上を含有する顔料が好ましく、銅を含有する顔料がより好ましい。
顔料には、無機顔料と有機顔料があるが、本発明においては、無機顔料が好ましく用いられる。
無機顔料のなかでも、銅、亜鉛、及びチタンから選ばれる1種以上を含有する顔料が好ましく、銅を含有する顔料がより好ましい。
無機顔料の具体例としては、酸化銅・酸化チタン・酸化亜鉛・べんがら、チタンイエロー・焼成顔料グリーン・酸化クロム・コバルトブルー・シリカ・アルミナ等の金属酸化物類、カドミウムイエロー・カドミウムレッド等の硫化物類、群青等の珪酸塩類、黄鉛・クロムバーミリオン等のクロム酸塩類、タルク・カオリン・クレー等の粘土類、塩化銅・炭酸銅・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウム・亜硫酸カルシウム・硫酸カルシウム・水酸化アルミニウム・硫酸バリウム・炭酸マグネシウム等の無機塩類、カーボンブラック等が挙げられ、金属酸化物類、無機塩類が好ましく、無機塩類がより好ましい。
【0021】
有機顔料のなかでも、銅、亜鉛、及びチタンから選ばれる1種以上を含有する顔料が好ましく、銅を含有する顔料がより好ましい。
有機顔料の具体例としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリノン系顔料、キナクドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインジゴ系顔料等が挙げられ、フタロシアニン系顔料が好ましい。
【0022】
顔料は、粉末等の固体の状態で樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂(A)又はポリアミド樹脂(C)あるいはこれらの混合物に配合してもよいが、予め溶媒等に分散させたもの(以下、顔料分散体とも称する。)を用いることが好ましい。顔料を溶媒等に分散させることで、得られた樹脂組成物を容器に成形する際の成形性を良好にすることができる。
市販の顔料分散体としては、銅系の顔料であるPIGMENT VERDE(カラーマトリックス社製)等が挙げられる。
【0023】
容器中の顔料の平均粒径は、1~50000nmが好ましく、1~10000nmがより好ましく、1~1000nmが更に好ましい。
【0024】
本発明の容器において、顔料(B)の含有量は、樹脂組成物中、0.01質量%以上が好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上がより更に好ましい。また、5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下がより更に好ましい。
【0025】
<ポリアミド樹脂(C)>
本発明に用いられるポリアミド樹脂(C)は、ジカルボン酸とジアミンの共重合体、ラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合体、及びこれらモノマーの混合物の共重合体が挙げられる。なかでも、ジカルボン酸とジアミンの共重合体が好ましい。
ジカルボン酸とジアミンの共重合体のなかでも、ジカルボン酸と芳香環構造を有するジアミンの共重合体及びジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体が好ましく、ジカルボン酸と芳香環構造を有するジアミンの共重合体がより好ましい。
以下に、好ましい態様である、ジカルボン酸と芳香環構造を有するジアミンの共重合体(以下、ポリアミド樹脂(C1)ともいう。)、ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体(以下、ポリアミド樹脂(C2)ともいう。)及びラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合体(以下、ポリアミド樹脂(C3)ともいう。)について説明する。
【0026】
(ジカルボン酸と芳香環構造を有するジアミンの共重合体:ポリアミド樹脂(C1))
ポリアミド樹脂(C1)は、ジアミンに由来する構成単位(以下、ジアミン単位ともいう。)とジカルボン酸に由来する構成単位(以下、ジカルボン酸単位ともいう。)を有する。
【0027】
ポリアミド樹脂(C1)のジアミン単位を構成する化合物である芳香環構造を有するジアミンとしては、キシリレンジアミンが好ましい。
ポリアミド樹脂(C1)は、ジアミン単位中にキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上がより更に好ましい。ジアミン単位の70モル%以上をキシリレンジアミンに由来する構成単位とすることにより、該ポリアミドを使用して得られた容器における塩素系液体漂白剤組成物によるクラックの発生を効率よく抑制し、色調を保持することができる。
なお、キシリレンジアミンは、オルト、メタ、パラのいずれのキシリレンジアミンでもよいが、耐薬品性の観点から、メタキシリレンジアミンであることが好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂(C1)のジアミン単位を構成する化合物として、芳香環構造を有するジアミン以外のジアミンとして、直鎖状又は分岐状の脂肪族ジアミン、脂環式構造を有するジアミンが挙げられ、色調を効率よく保持する点と入手性から、直鎖状又は分岐状の脂肪族ジアミンが好ましい。
【0029】
直鎖状又は分岐状の脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び5-メチルノナメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環式構造を有するジアミンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、及びアミノエチルピペラジン等が挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の3価以上の多価アミンやブチルアミン、ヘキシルアミン、及びオクチルアミン等のモノアミンを用いてもよい。
【0030】
ポリアミド樹脂(C1)は、ジカルボン酸単位中に炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上がより更に好ましい。ジカルボン酸単位の70モル%以上を炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とすることにより、得られる容器の塩素系液体漂白剤組成物耐性を効率よく高めることができる。
【0031】
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸が挙げられ、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。これらのα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリアミド樹脂(C1)のジカルボン酸単位を構成しうる化合物として、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外に、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、及び3,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等の脂環式構造を有するジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、オルソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸などの芳香環構造を有するジカルボン酸等が例示できる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、及びトリカルバリル酸等の3価以上の多価カルボン酸を用いてもよく、モノカルボン酸を用いてもよい。
【0033】
なお、ポリアミド樹脂(C1)を構成する単位として、上述のジアミン単位、ジカルボン酸単位以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、アミノカルボン酸等に由来する構成単位を含んでもよく、具体的には、脂肪族アミノカルボン酸に由来する構成単位、芳香族アミノカルボン酸等に由来する構成単位が挙げられる。
【0034】
前記ジカルボン酸単位に用いられるジカルボン酸、多価カルボン酸及びモノカルボン酸を構成する化合物には、無水物及び短鎖アルキルエステルが含まれる。短鎖アルキルエステルとしては、具体的には炭素数1~3、すなわちメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びイソプロピルエステルが挙げられ、なかでもメチルエステルが好ましい。また、アミノカルボン酸に由来する構成単位を構成する化合物には、無水物であるラクタムが含まれる。
【0035】
また、ポリアミド樹脂(C1)のジアミン単位とジカルボン酸単位の組み合わせとして、ポリアミド樹脂(C1)が、キシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する構成単位を70モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有することが好ましく、ポリアミド樹脂(C)が、キシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する構成単位を80モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0036】
(ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体:ポリアミド樹脂(C2))
ポリアミド樹脂(C2)のジアミン単位を構成する化合物である脂肪族ジアミンとしては、炭素数4~20の脂肪族ジアミンが好ましく、具体的には、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び5-メチルノナメチレンジアミン等が挙げられ、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンがより好ましく、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミンが更に好ましい。
【0037】
ポリアミド樹脂(C2)のジアミン単位を構成する化合物として、脂肪族ジアミン以外のジアミンとして、芳香環式構造を有するジアミン、脂環式構造を有するジアミンが挙げられる。
【0038】
ポリアミド樹脂(C2)は、ジカルボン酸単位を構成する化合物として、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には、前記の化合物が挙げられる。
ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体における炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸が挙げられ、アジピン酸、セバシン酸が好ましい。これらのα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ポリアミド樹脂(C2)のジカルボン酸単位を構成しうる化合物として、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外に、前記の脂環式構造を有するジカルボン酸、芳香環を有するジカルボン酸が挙げられ、具体的な化合物は、ジカルボン酸と芳香環式構造を有するジアミンの共重合体に用いられるものと同様である。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、3価以上の多価カルボン酸を用いてもよく、モノカルボン酸を用いてもよい。
また、ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体であるポリアミド樹脂(C)のジアミン単位とジカルボン酸単位の組み合わせとして、ポリアミド樹脂(C)が、炭素数4~20の脂肪族ジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位を有することが好ましい。
【0040】
(ラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合体:ポリアミド樹脂(C3))
ポリアミド樹脂(C3)が、ラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合体である場合、ω-アミノカルボン酸に由来する構成単位(以下、アミノカルボン酸単位ともいう。)は、炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸に由来する構成単位を含むことが好ましく、炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上がより更に好ましい。
ポリアミド樹脂(C3)のアミノカルボン酸単位を構成する化合物として、その無水物であるラクタム、炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸が挙げられ、入手性の点からラクタムが好ましい。
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω-ラウリルラクタム等が挙げられ、ε-カプロラクタムが好ましい。
炭素数4~20のω-アミノ直鎖脂肪族カルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のジアミン単位、ジカルボン酸単位、パラ-アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等に由来する構成単位も共重合単位として使用できる。
【0041】
(ポリアミド樹脂(C)の例)
本発明におけるポリアミド樹脂(C)の具体例としては、ポリアミドMXD6(ポリキシリレンアジパミド)、ポリアミドMXD10(ポリキシリレンセバカミド)、ポリアミドMXD6I(イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド)、ナイロン6(ポリカプロアミド)、ナイロン66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ナイロン610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ナイロン612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ナイロン1010(ポリデカメチレンセバカミド)、ナイロン11(ポリウンデカンアミド)、ナイロン116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ナイロン12(ポリドデカンアミド)、及びこれらの共重合体などが挙げられ、入手性、色調保持性及びクラック抑制性能の観点から、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン11及びナイロン12から選ばれる1種以上が好ましく、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン12から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリアミドMXD6及びポリアミドMXD10から選ばれる1種以上が更に好ましい。これらのポリアミド樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
(ポリアミド樹脂(C)の製造方法)
ポリアミド樹脂(C)は、溶融重縮合法により製造されることが好ましい。
溶融重縮合法は、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によって製造する方法が好ましい。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系の温度を上昇させながら、重縮合を進めることが好ましい。
【0043】
ポリアミド樹脂(C)の重縮合反応系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合反応時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、アミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れる点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0044】
ポリアミド樹脂(C)の重縮合反応系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(C)中のリン原子濃度換算で、1~500ppmが好ましく、3~450ppmがより好ましく、5~400ppmが更に好ましい。リン原子含有化合物の添加量を前記範囲内にすることで重縮合反応中のポリアミドの着色を防止すると共に、ポリアミドのゲル化を抑制することができるため、得られる容器の外観を良好に保つことができる。
また、ポリアミド樹脂(C)の重縮合反応系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を添加してもよい。
【0045】
溶融重縮合法で得られたポリアミド樹脂(C)は、ペレット化した後、乾燥して使用することが好ましく、更に重合度を高めるために固相重合することがより好ましい。
固相重合は、減圧下、ペレットを加熱して行うことが好ましい。
【0046】
(ポリアミド樹脂(C)の特性等)
ポリアミド樹脂(C)の相対粘度は、好ましくは1.5~4.2、より好ましくは1.6~4.0、更に好ましくは1.7~3.8、より更に好ましくは1.9~3.0である。
ポリアミド樹脂(C)の相対粘度を前記範囲に設定することで成形加工性が安定し、外観の良好な容器を得ることができる。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂(C)の相対粘度は、以下の方法により測定される。具体的には、ポリアミド樹脂を0.2g精秤し、96質量%硫酸20mLに20~30℃で撹拌溶解する。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、当該溶液の落下時間(t)を測定する。また、96質量%硫酸の落下時間(t0)も同様に測定する。下記式より、測定したt及びt0の値を用いて、ポリアミド樹脂の相対粘度を算出する。
相対粘度=t/t0
【0047】
樹脂組成物中のポリアミド樹脂(C)の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、3.5質量%以上がより更に好ましく、4質量%以上がより更に好ましく、5質量%以上がより更に好ましい。また、9質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。
ポリアミド樹脂(C)の含有量が1質量%以上であると、クラックの発生を十分に抑制することができ、含有量が9質量%以下であると、得られる容器の成形性、外観が良好となる。特に、ポリアミド(C)の含有量が3.5質量%以上であると、得られる容器の色素保持性が優れる。
本発明の容器において、樹脂組成物中の顔料(B)とポリアミド樹脂(C)の質量比[(B)/(C)]は、1/99~20/80であり、1/99~15/85が好ましく、1/99~13/87がより好ましく、3/97~13/87がより好ましく、5/95~10/90が更に好ましい。
顔料に対して、ポリアミドを前記の比率で配合することで、効果的に色調を保持することができる。
樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)とポリアミド樹脂(C)の質量比[(A)/(C)]は、91/9~99/1が好ましく、91/9~96/4がより好ましく、91/9~95/5が更に好ましい。
【0048】
本発明の容器を構成する樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)以外の成分を含有していてもよいが、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)の合計量は、容器全体の70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上がより更に好ましい。
【0049】
<リサイクル原料>
本発明の容器を構成する樹脂組成物には、リサイクル原料を含んでいてもよく、環境負荷の低減の観点から、リサイクル原料を含むことが好ましい。
リサイクル原料としては、上述のリサイクル済みポリエステルや、リサイクル済みポリアミド等が挙げられ、これらには顔料が含まれていてもよい。
また、本発明の容器をリサイクルしたリサイクル済み樹脂組成物を含んでいてもよい。
前記リサイクル済みポリエステル、リサイクル済みポリアミド、それらに含まれる顔料、及びリサイクル済み樹脂組成物に含まれる樹脂及び顔料が、前記ポリエステル樹脂(A)、前記顔料(B)、前記ポリアミド樹脂(C)に該当する場合、その含有量はそれぞれ前記ポリエステル樹脂(A)の含有量、前記顔料(B)の含有量、前記ポリアミド樹脂(C)の含有量に加える。
本発明の塩素系液体漂白剤組成物用容器を構成する樹脂組成物は、リサイクル原料を含み、該リサイクル原料が、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及び前記ポリアミド樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
リサイクル原料を含む場合、リサイクル原料の含有率は、1~20質量%が好ましく、5~15質量%が好ましい。リサイクル原料の含有率がこの範囲であると、本発明の効果であるクラックの抑制と色調を保持しつつ、環境負荷も低減することができる。
【0050】
<その他の成分>
本発明の容器が含有するその他の成分としては、リサイクル助剤、遷移金属等が例示される。
【0051】
リサイクル助剤は、リサイクル済みポリエステルを得るにあたり、リサイクル工程における黄変を抑制する効果を有する化合物であり、リサイクル助剤として、アルデヒド捕捉剤が好ましい。
前記リサイクル助剤としては、ポリエステル樹脂の黄変を抑制する能力を有し、かつ、アミノ基を含有する化合物が好ましく、具体的には、アントラニルアミド、アントラニル酸、及びナイロン6I/6Tよりなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。
【0052】
本発明の容器は、ポリアミド樹脂(C)の酸化反応を誘起させて酸素吸収機能を高め、ガスバリア性を高める目的で、遷移金属を含んでもよい。
遷移金属としては、酸素吸収能を発現させる観点から、コバルト、鉄、マンガン、及びニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
本発明において、酸素吸収能が良好に発現する観点から、遷移金属を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトネート錯体、酸化物、及びハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
上記遷移金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明の容器は、前記成分に加え、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、滑剤、展着剤等の添加物を含んでもよい。
【0054】
<容器の製造方法及び容器>
本発明の容器は、少なくともポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含む樹脂組成物を成形して、容器を得ることが好ましい。
前記樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、含有割合の少ない成分の混練分散性を高めるために、予めマスターバッチを調製することが好ましい。
たとえば、顔料(B)は粉末のまま用いてもよいが、少量のポリエステル樹脂(A)、少量のポリアミド樹脂(C)あるいはこれらの混合物と混練し、マスターバッチとしておくことが好ましく、少量のポリエステル樹脂(A)と混練し、マスターバッチとしておくことがより好ましい。
また、顔料(B)を予め溶媒等に分散させておくことが更に好ましく、顔料分散液を少量のポリエステル樹脂(A)、少量のポリアミド樹脂(C)あるいはこれらの混合物と混練し、マスターバッチとしておくことがより更に好ましく、顔料分散液を少量のポリエステル樹脂(A)と混練し、マスターバッチとしておくことがより更に好ましい。
【0055】
顔料(B)を含有するマスターバッチ、ポリエステル樹脂(A)及びポリアミド樹脂(C)を、予めドライブレンド方式で混合した後に、溶融混練してもよく、顔料(B)を含有するマスターバッチ、ポリエステル樹脂(A)及びポリアミド樹脂(C)をドライブレンド方式で混合した後に、得られたドライブレンド品をそのまま射出成形機等の成形機で成形してもよいが、ドライブレンド品をそのまま射出成形機等の成形機で成形することが好ましい。
マスターバッチあるいは樹脂組成物を溶融混練によって得る際の溶融混練温度は、240~295℃が好ましく、245~292℃がより好ましく、250~290℃が更に好ましい。
マスターバッチあるいは樹脂組成物を溶融混練によって得る際の溶融混練の時間は特に限定されないが、1秒~5分が好ましく、3秒~4分がより好ましく、5秒~3分が更に好ましい。
前記溶融混練に使用される装置は特に限定されないが、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等)などが挙げられる。
【0056】
前記のように、顔料(B)を含有するマスターバッチ、ポリエステル樹脂(A)及びポリアミド樹脂(C)をドライブレンド方式で混合する際に、前記のリサイクル原料をこれらと混合してもよい。すなわち、顔料(B)を含有するマスターバッチ、ポリエステル樹脂(A)、ポリアミド樹脂(C)及びリサイクル原料を、予めドライブレンド方式で混合した後に、溶融混練してもよく、顔料(B)を含有するマスターバッチ、ポリエステル樹脂(A)、ポリアミド樹脂(C)及びリサイクル原料をドライブレンド方式で混合した後に、得られたドライブレンド品をそのまま射出成形機等の成形機で成形してもよいが、ドライブレンド品をそのまま射出成形機等の成形機で成形することが好ましい。
【0057】
ここで用いられるリサイクル原料は、前記の<リサイクル原料>の項で説明したものが好ましく、リサイクル済みポリエステル、リサイクル済みポリアミド等が挙げられ、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明の容器をリサイクルしたリサイクル済み樹脂組成物を含んでいてもよい。本発明の容器を製造する過程で生じる成形不良品や市場からの回収品から得られるリサイクル済み樹脂組成物を用いることが好ましく、本発明の容器を製造する過程で生じる成形不良品から得られるリサイクル済み樹脂組成物を用いることがより好ましい。成形不良品を回収することで、歩留まりを向上させることができる。
また、リサイクル原料の形状は、ペレット状、フレーク状、又は粉末状であることが好ましい。
【0058】
本発明の容器の製造方法は、特に限定されないが、前記のようにして得られた樹脂組成物を成形して得ることが好ましい。成形方法としては、圧縮成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、延伸ブロー成形法が挙げられ、延伸ブロー成形法が好ましい。
たとえば、射出成形機から金型内に溶融した前記樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、延伸温度まで加熱してブロー延伸して得ることが好ましい。延伸ブロー成形法によって得られる場合には、その延伸倍率は2~30倍が好ましく、3~25倍がより好ましく、5~20倍が更に好ましい。
【0059】
本発明の容器は、ボトル状の中空容器であることが好ましく、あらゆる成形機で均質な容器を得る観点から、単層容器であることが好ましい。本発明の容器は、単層で優れた塩素系液体漂白剤組成物耐性が得られる。
【0060】
[漂白剤物品]
本発明の漂白剤物品は、塩素系液体漂白剤組成物が前記容器に収容されたものであり、具体的には、塩素系液体漂白剤組成物が容器に収容された漂白剤物品であり、前記容器が、ポリエステル樹脂(A)、顔料(B)及びポリアミド樹脂(C)を含有し、ポリエステル樹脂(A)の含有量が90~99質量%であり、(B)と(C)の質量比[(B)/(C)]が1/99~20/80である樹脂組成物からなる、漂白剤物品である。
【0061】
<塩素系液体漂白剤組成物>
本発明の容器が収容する塩素系液体漂白剤組成物(以下、単に「漂白剤組成物」ともいう)について説明する。
【0062】
(漂白成分)
前記漂白剤組成物は、漂白成分として、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸塩等を含有することが好ましく、次亜塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸塩を含有することがより好ましく、次亜塩素酸塩を含有することが更に好ましい。
前記の亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸塩は、金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
漂白成分のなかでも次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
【0063】
前記塩素系液体漂白剤組成物が次亜塩素酸ナトリウムを含有する場合、該次亜塩素酸ナトリウムの含有量は、0.5~15質量%が好ましく、1~12質量%がより好ましく、2~9質量%が更に好ましく、2~8質量%がより更に好ましい。
次亜塩素酸ナトリウムの含有量が上記範囲内であると、良好な漂白性及び保存安定性が得られる。
【0064】
(アルカリ剤)
前記塩素系液体漂白剤組成物は、アルカリ剤を含有することが好ましい。アルカリ剤は、漂白剤組成物中の次亜塩素酸ナトリウム等の漂白成分の安定性を高めることに加え、汚れに対して十分な漂白効果を得るために添加するものである。
アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、珪酸塩、リン酸塩等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウムが好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
前記漂白剤組成物中のアルカリ剤の濃度は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。アルカリ剤の濃度が上記範囲内であると、次亜塩素酸ナトリウムの安定性も良好となると共に、十分な漂白効果が得られる。
【0065】
(キレート剤)
前記漂白剤組成物は、キレート剤を含有してもよい。
キレート剤は、漂白剤組成物中に含まれる重金属をトラップすることで、漂白剤組成物を安定化する機能を有する。たとえば、アミノホスホン酸-N-オキサイド、特に〔ニトリロトリス(メチレン)〕トリスホスホン酸-N-オキサイド、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸塩、架橋型ポリカルボン酸塩等が挙げられる。キレート剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、特に限定されない。
キレート剤の含有量は、漂白剤組成物中で0.1~30質量%が好ましく、0.3~20質量%がより好ましい。キレート剤の含有量がこの範囲内であることにより、十分な洗浄力が得られる。
【0066】
(界面活性剤)
前記塩素系液体漂白剤組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含有することにより、種々の表面物性を有する物品に対する漂白性能が向上する。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤が挙げられ、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0067】
アニオン性界面活性剤は、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩が挙げられ、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩が好ましく、硫酸エステル塩、カルボン酸塩がより好ましく、硫酸エステル塩が更に好ましい。
硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられ、アルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。
アルキルエーテル硫酸エステル塩の具体例として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩がより好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のアルキル基は、炭素数12~18が好ましく、炭素数12~14がより好ましく、炭素数12が更に好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のエチレンオキシ基の平均付加モル数は、0.5~10が好ましく、1~5がより好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0068】
カルボン酸塩は、脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩等が挙げられる。
スルホン酸塩は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
リン酸エステル塩は、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0069】
両性界面活性剤は、アルキルアミンオキサイド、アルキルベタイン、アルキルアミノ脂肪酸塩が挙げられ、アルキルアミンオキサイドが好ましい。
非イオン性界面活性剤は、しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤は、主として衛生化性を与えるために用いる。
【0070】
これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアミンオキサイドが好ましい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。塩素系液体漂白剤組成物中の界面活性剤の含有量は、0.01~7.0質量%が好ましく、0.03~5.0質量%がより好ましく、0.05~3.0質量%が更に好ましい。
【0071】
(その他の成分等)
前記漂白剤組成物は、溶媒を含有することが好ましい。塩素系液体漂白剤組成物中の溶媒の含有量は、漂白成分、界面活性剤、アルカリ剤、キレート剤、及び本項に挙げたその他の成分の残部であることが好ましい。
漂白剤組成物に含有される溶媒としては、水、及び水混和性の有機溶媒が挙げられ、水であることが好ましい。塩素系液体漂白剤組成物中の水の含有量は、80~98質量%が好ましく、88~98質量%がより好ましく、90~98質量%が更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であると、保存安定性に優れる。
水混和性の有機溶媒としては、アルコール類、エーテル類等が例示される。
前記漂白剤組成物は、更に蛍光染料;BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等のラジカルスカベンジャー;炭酸カルシウム、シリカ、モンモリロナイト、スメクタイト等の研磨剤・にごり剤;テルペンアルコール系香料に代表される香料等を含有してもよい。
【0072】
塩素系液体漂白剤組成物のpHは、アルカリ性であることが好ましく、20℃におけるpHは11~13.8が好ましく、11.3~13.7がより好ましく、11.5~13.5が更に好ましい。塩素系液体漂白剤組成物のpHが上記範囲内であると、貯蔵安定性及び漂白効果の点から好ましい。
【実施例
【0073】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に使用した材料、評価方法、及びボトルの製造方法は、以下の通りである。
【0074】
1.材料
[容器]
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエチレンテレフタレート樹脂(商品名:ユニペットBK-2180、三菱ケミカル株式会社製、固有粘度=0.83dL/g、スルホン酸金属塩基を有しない)を使用した。使用に際しては、除湿乾燥機にて、150℃、8時間乾燥したものを用いた。
【0075】
<顔料(B)>
(顔料分散体)
顔料分散体のPIGMENT VERDE(カラーマトリックス社製)を、前記のポリエチレンテレフタレート樹脂に溶融混練し、顔料濃度3質量%のマスターバッチを調製した。
(顔料粉末)
粉末顔料のIrgalite Green GFNP(BASFカラー&エフェクトジャパン株式会社製、Pigment Green 7、塩素化フタロシアニン)を、前記のポリエチレンテレフタレート樹脂に溶融混練し、顔料濃度3質量%のマスターバッチを調製した。
【0076】
<染料>
染料として、樹脂用染料SDN緑(オカダヤ社製)を前記のポリエチレンテレフタレート樹脂に溶融混練し、染料濃度3質量%のマスターバッチを調製した。
前記顔料及び染料を実施例及び比較例で用いる際には、顔料及び染料が樹脂組成物(容器)中、表1に示した量になるようにマスターバッチを使用した。
【0077】
<ポリアミド樹脂(C)>
(MXD6)
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶に、アジピン酸15kg、次亜リン酸ナトリウム一水和物15gを仕込み、十分窒素置換し、更に少量の窒素気流下にて180℃に昇温し、アジピン酸を均一に溶融させた後、系内を撹拌しつつ、これにメタキシリレンジアミン13.8kgを、170分を要して滴下した。この間、内温は連続的に245℃まで上昇させた。なお、重縮合により生成する水は、分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を更に260℃まで昇温し、1時間反応を継続した後、ポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷後ペレット化してポリマーを得た。
次に、上記の操作にて得たポリマーを加熱ジャケット、窒素ガス導入管、真空ラインを備えた50L回転式タンブラーに入れ、回転させつつ系内を減圧にした後、純度99容量%以上の窒素で常圧にする操作を3回行った。その後、窒素流通下にて系内を140℃まで昇温させた。次に系内を減圧にし、更に190℃まで連続的に昇温し、190℃で30分保持した後、窒素を導入して系内を常圧に戻した後、冷却してポリアミド(ポリメタキシリレンアジパミド)を得た。得られたポリアミドは、相対粘度2.7であった。
(PA6)
ナイロン6(ポリアミド6、商品名:UBEナイロン1022B、宇部興産株式会社製)を使用した。
【0078】
[塩素系液体漂白剤組成物]
(次亜塩素酸ナトリウム6質量%)
市販の漂白剤 キッチンハイター(花王株式会社製、次亜塩素酸ナトリウム(6質量%)、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、水酸化ナトリウム、pH:13~13.5)をそのまま用いた。
(次亜塩素酸ナトリウム3質量%)
前記の漂白剤 キッチンハイターを同量(質量)のイオン交換水にて希釈し、次亜塩素酸ナトリウム3質量%の塩素系液体漂白剤組成物を得た。
【0079】
2.評価方法
[保管試験]
実施例及び比較例で得られた500mLボトル容器に、前記塩素系液体漂白剤組成物500mLを充填し、40℃の環境下で6ヵ月保管後のボトルに発生したクラックの有無を目視で評価した。
【0080】
[色差測定(色調保持性の評価)]
各実施例及び比較例の容器と同じ樹脂組成物を用いて、50μmの厚みのフィルムを作製した。当該フィルムを前記塩素系液体漂白剤組成物に浸漬し、40℃の環境下で1ヵ月間保管した。日本電色工業株式会社製の色差計(ZE2000)を用いて、漂白剤浸漬前後のa値を比較し、その差の値をa値変化として表1に示す。なお、a値変化の数値が小さいほど、色調保持性が良好である。また、4段階評価を次の基準で行った。A~Cが実用上、使用可能である。2.0以下であればA、2.0を超えて3.5以下であればB、3.5を超えて5.0以下であればC、5.0を超えた場合はDとした。
【0081】
3.ボトル(塩素系液体漂白剤組成物用容器)の製造
[実施例1~7及び比較例1、2]
得られたボトル(塩素系液体漂白剤組成物用容器)を構成する樹脂組成物中のポリエチレンテレフタレート樹脂、顔料又は染料を含有したマスターバッチ、及びポリアミドを、各成分が表1に示した量となるよう計量した後、ドライブレンドし、プリフォーム射出成形機(住友重機械工業株式会社製、型式:SE130DU-CI)に投入し、下記条件により射出成形し、単層プリフォームとした。
単層プリフォーム成形条件は、以下の通りである。
・プリフォーム1個の質量:25g
・ホットランナー/シリンダー温度:285℃
・ホットランナーノズル温度:290℃
・金型冷却水温度:15℃
・成形サイクルタイム:33sec
【0082】
更に、作製した単層プリフォームを冷却後、ブロー成形装置(株式会社フロンティア製、型式:EFB-1000ET)を用いて、下記条件にて二軸延伸ブロー成形し、単層ボトル(高さ223mm、胴径65mm、容量500mL、肉厚330μm、質量25.0g)を得た。金型は、500mLペタロイド底型、ブロー前表面温度(プリフォーム加熱後の表面温度)は107~110℃であった。
二軸延伸ブロー成形条件は、以下の通りである。
・プリフォーム加熱温度:107~110℃
・延伸ロッド用圧力:0.5MPa
・一次ブロー圧力:0.5MPa
・二次ブロー圧力:2.5MPa
・一次ブロー遅延時間:0.32sec
・一次ブロー時間:0.28sec
・二次ブロー時間:2.0sec
・ブロー排気時間:0.6sec
・金型温度:30℃
上記のようにしてボトルを得た。次に得られたボトルを用いて、上述の方法に基づいて評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
[比較例3]
前記実施例1のボトル(塩素系液体漂白剤組成物用容器)の製造において、顔料分散体を含有したマスターバッチを用いず、ポリエステル樹脂(A)の量を94.5質量%から95質量%とした以外は実施例1と同様にして、顔料を含有しない樹脂組成物からなるボトルを得た。
【0085】
[有効塩素濃度測定(内容物保護性の評価)]
実施例1及び比較例3で得られたボトル容器に前記塩素系液体漂白剤組成物を充填し、40℃の環境下で6ヵ月保管後のボトルのブリーチ液を下記の方法で分析し、次亜塩素酸ナトリウム濃度を測定した。初期の塩素系液体漂白剤組成物の有効塩素濃度と保管試験後の有効塩素濃度の差が2%以内であれば合格とする基準によって容器の内容物保護性を評価した。比較例3は有効塩素濃度の差が2.5%であり不合格であったが、実施例1は0.8%であり合格であった。このことから、実施例のボトルで保管した漂白剤組成物は、有効塩素濃度が減少しにくいことがわかった。
分析方法:有効塩素を求めるには、次亜塩素酸ナトリウムと共存する酢酸溶液中においてヨウ化カリウムから遊離するヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する。
試料10mLにヨウ化カリウム2gおよび50%(v/v)酢酸水溶液6mLを加え密栓してよく振り混ぜ、暗所に5分間放置する。遊離したヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム液で滴定し、ヨウ素が還元されて溶液が淡黄色を呈してきて終点が近くなったら、0.5%デンプン溶液3mLを加え青色が消失したところを終点とした。有効塩素(質量/体積(%))は、次式により求めた。
有効塩素(質量/体積(%))={(a-b)×f×0.0037221/v}×100/10×100
a:試料の滴定量(mL)
b:ブランク滴定量(mL)
f:1.002
v:試料採取量(mL)
【0086】
実施例と比較例の評価結果によれば、実施例のボトルは、保管試験においてもクラックの発生がなく、色差測定においても、色調の変化が少なく、色調保持性に優れ、更に長期保管時の塩素濃度量の変化も少なく、内容保護性にも優れることがわかった。
【0087】
4.リサイクルフレークの製造
廃棄ボトル(不良品ボトル)のリサイクルを模して、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得られたボトルを粉砕し、次のようにリサイクルフレークを作製した。ボトルを粉砕して得られたフレークを真空乾燥器(自動シーケンス真空乾燥器、DP610P、ヤマト科学株式会社製)にて150℃で6時間乾燥した。乾燥後のフレークは水分率測定装置(VA-236/CA-200、株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用いて水分率が500ppm以下であることを確認した。乾燥後のフレークをリサイクルフレーク(リサイクル済み樹脂組成物)とした。なお、実施例1、実施例2、比較例1で及び比較例2で得られたボトルから得られたフレークをそれぞれフレーク1、フレーク2、フレーク3及びフレーク4とした。
【0088】
5.ボトル(塩素系液体漂白剤組成物用容器)の製造
[実施例8~12及び比較例4~6]
ポリエチレンテレフタレート樹脂、顔料又は染料を含有したマスターバッチ、ポリアミド、及びリサイクルフレークを、各成分が表2に示す製造時の成分組成の量となるよう計量した後、ドライブレンドし、プリフォーム射出成形機(住友重機械工業株式会社製、型式:SE130DU-CI)に投入し、下記条件により射出成形し、単層プリフォームとした。
単層プリフォーム成形条件は、以下の通りである。
・プリフォーム1個の質量:25g
・ホットランナー/シリンダー温度:285℃
・ホットランナーノズル温度:290℃
・金型冷却水温度:15℃
・成形サイクルタイム:33sec
【0089】
更に、作製した単層プリフォームを冷却後、ブロー成形装置(株式会社フロンティア製、型式:EFB-1000ET)を用いて、下記条件にて二軸延伸ブロー成形し、単層ボトル(高さ223mm、胴径65mm、容量500mL、肉厚330μm、質量25.0g)を得た。金型は、500mLペタロイド底型、ブロー前表面温度(プリフォーム加熱後の表面温度)は107~110℃であった。
二軸延伸ブロー成形条件は、以下の通りである。
・プリフォーム加熱温度:107~110℃
・延伸ロッド用圧力:0.5MPa
・一次ブロー圧力:0.5MPa
・二次ブロー圧力:2.5MPa
・一次ブロー遅延時間:0.32sec
・一次ブロー時間:0.28sec
・二次ブロー時間:2.0sec
・ブロー排気時間:0.6sec
・金型温度:30℃
上記のようにしてボトルを得た。次に得られたボトルを用いて、上述の方法に基づいて評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例と比較例の評価結果によれば、リサイクル済み樹脂組成物を用いた場合においても、実施例のボトルは、保管試験においてもクラックの発生がなく、色差測定においても、色調の変化が少なく、色調保持性に優れることがわかった。