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特許7472918弾性波デバイスおよびそれを備えたラダー型フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびそれを備えたラダー型フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240416BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240416BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/145 Z
H03H9/145 C
H03H9/64 Z
H03H9/25 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021574153
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003252
(87)【国際公開番号】W WO2021153736
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2020015067
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273120(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065666(WO,A1)
【文献】特開2007-060331(JP,A)
【文献】特開平02-250413(JP,A)
【文献】特開2017-153132(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043496(WO,A1)
【文献】特開平03-283710(JP,A)
【文献】特開昭63-097004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT(Interdigital Transducer)電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器の阻止域の下限周波数は、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数との間にあり、
前記共用反射器の阻止域の上限周波数は、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数との間にあり、
前記第1共振子における電極指のデューティは第1デューティであり、前記第2共振子における電極指のデューティは前記第1デューティよりも大きい第2デューティであり、
前記共用反射器の電極指の少なくとも一部は、前記第1デューティおよび前記第2デューティの間のデューティで形成される、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第2ピッチは、前記第1ピッチよりも狭く、
前記共用反射器の電極指の少なくとも一部は、前記第1ピッチおよび前記第2ピッチの間のピッチで形成される、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記共用反射器の電極指のピッチは、前記第1共振子から前記第2共振子に向かって徐々に狭くなる、請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記共用反射器の電極指のピッチは、前記第1共振子から前記第2共振子に向かって段階的に狭くなる、請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記共用反射器の電極指のデューティは、前記第1共振子から前記第2共振子に向かって徐々に大きくなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記共用反射器の電極指のデューティは、前記第1共振子から前記第2共振子に向かって段階的に大きくなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記第1共振子の電極指の厚みは、前記第2共振子の電極指の厚みよりも薄く、
前記共用反射器の少なくとも一部の電極指の厚みは、前記第1共振子の電極指の厚みよりも厚く、かつ、前記第2共振子の電極指の厚みよりも薄い、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記第1共振子、前記第2共振子、および前記共用反射器の上に配置された誘電体層をさらに備え、
前記第1共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みは、前記第2共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも厚く、
前記共用反射器の領域に配置された前記誘電体層の少なくとも一部は、前記第1共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも薄く、かつ、前記第2共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも厚い、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記第1共振子および前記第2共振子の各々は、
当該共振子に含まれるIDT電極と前記共用反射器との間に配置された第1反射器と、
当該IDT電極に対して、前記第1反射器と反対の端部に配置された第2反射器とを含み、
前記第1共振子の第1反射器の電極指は、前記第1ピッチで形成され、
前記第2共振子の第1反射器の電極指は、前記第2ピッチで形成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記第1反射器および前記共用反射器の電極指の数の和は、前記第2反射器の電極指の数と同じである、請求項9に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
前記共用反射器の電極指の長さは、各共振子のIDT電極における電極指の交叉幅以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項12】
前記第1IDT電極の交叉幅の中心を通り、前記第1IDT電極の電極指に直交する第1仮想線と、前記第2IDT電極の交叉幅の中心を通り、前記第2IDT電極の電極指に直交する第2仮想線とは重ならない、請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項13】
各IDT電極および各反射器は、電極指が接続されたバスバーを含み、
各IDT電極および各反射器において、電極指とバスバーとのなす角は0°より大きく90°より小さい、請求項1~12のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項14】
前記基板は、前記圧電層が配置される反射層をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項15】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器と、
前記第1共振子、前記第2共振子および前記共用反射器を覆うように配置された誘電体層とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第1値、第2値および第3値とした場合、前記第1値は、前記第2値と前記第3値と同じ、もしくは、前記第2値と前記第3値との間にあり、
前記誘電体層は、前記第1共振子および前記第2共振子の共振周波数の音速よりも遅いバルク波音速を有する材料により形成されており、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、電極指の厚み、および、誘電体層の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第4値、第5値および第6値とした場合、前記第4値は、前記第5値と前記第6値と同じ、もしくは、前記第5値と前記第6値との間にある、弾性波デバイス。
【請求項16】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器と、
前記第1共振子、前記第2共振子および前記共用反射器を覆うように配置された誘電体層とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第1値、第2値および第3値とした場合、前記第1値は、前記第2値と前記第3値と同じ、もしくは、前記第2値と前記第3値との間にあり、
前記誘電体層は、前記第1共振子および前記第2共振子の共振周波数の音速よりも速いバルク波音速を有する材料により形成されており、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、電極指の厚み、および、誘電体層の厚みの逆数を掛け合わせた値を、それぞれ第7値、第8値および第9値とした場合、前記第7値は、前記第8値と前記第9値と同じ、もしくは、前記第8値と前記第9値との間にある、弾性波デバイス。
【請求項17】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器の阻止域の下限周波数は、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数との間にあり、
前記共用反射器の阻止域の上限周波数は、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数との間にあり、
前記第1共振子の電極指の厚みは、前記第2共振子の電極指の厚みよりも薄く、
前記共用反射器の少なくとも一部の電極指の厚みは、前記第1共振子の電極指の厚みよりも厚く、かつ、前記第2共振子の電極指の厚みよりも薄い、弾性波デバイス。
【請求項18】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器と、 前記第1共振子、前記第2共振子、および前記共用反射器の上に配置された誘電体層とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器の阻止域の下限周波数は、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数との間にあり、
前記共用反射器の阻止域の上限周波数は、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数との間にあり、
前記第1共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みは、前記第2共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも厚く、
前記共用反射器の領域に配置された前記誘電体層の少なくとも一部は、前記第1共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも薄く、かつ、前記第2共振子の領域に配置された前記誘電体層の厚みよりも厚い、弾性波デバイス。
【請求項19】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器の阻止域の下限周波数は、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数との間にあり、
前記共用反射器の阻止域の上限周波数は、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数との間にあり、
前記第1共振子および前記第2共振子の各々は、
当該共振子に含まれるIDT電極と前記共用反射器との間に配置された第1反射器と、
当該IDT電極に対して、前記第1反射器と反対の端部に配置された第2反射器とを含み、
前記第1共振子の第1反射器の電極指は、前記第1ピッチで形成され、
前記第2共振子の第1反射器の電極指は、前記第2ピッチで形成され、
前記第1反射器および前記共用反射器の電極指の数の和は、前記第2反射器の電極指の数と同じである、弾性波デバイス。
【請求項20】
圧電層を有する基板と、
前記基板上に配置された第1共振子と、
前記基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
前記基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを備え、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器の阻止域の下限周波数は、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の下限周波数と前記第2共振子の阻止域の下限周波数との間にあり、
前記共用反射器の阻止域の上限周波数は、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、前記第1共振子の阻止域の上限周波数と前記第2共振子の阻止域の上限周波数との間にあり、
各IDT電極および各反射器は、電極指が接続されたバスバーを含み、
各IDT電極および各反射器において、電極指とバスバーとのなす角は0°より大きく90°より小さい、弾性波デバイス。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを含むラダー型フィルタであって、
前記第1共振子を含む複数の直列腕共振子と、
前記第2共振子を含む複数の並列腕共振子とを備え、
前記複数の直列腕共振子は、前記第1共振子よりも電極指のピッチが狭い第3共振子をさらに含む、ラダー型フィルタ。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを含むラダー型フィルタであって、
前記第1共振子を含む複数の直列腕共振子と、
前記第2共振子を含む複数の並列腕共振子とを備え、
前記複数の並列腕共振子は、前記第2共振子よりも電極指のピッチが広い第4共振子をさらに含む、ラダー型フィルタ。
【請求項23】
弾性波デバイスと、
複数の直列腕共振子と、
複数の並列腕共振子とを備え、
前記弾性波デバイスは、
圧電層を有する基板と、
基板上に配置された第1共振子と、
基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを含み、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第1値、第2値および第3値とした場合、前記第1値は、前記第2値と前記第3値と同じ、もしくは、前記第2値と前記第3値との間にあり、
前記複数の直列腕共振子は、前記第1共振子を含み、
前記複数の並列腕共振子は、前記第2共振子を含み、
前記複数の直列腕共振子は、前記第1共振子よりも電極指のピッチが狭い第3共振子をさらに含む、ラダー型フィルタ。
【請求項24】
弾性波デバイスと、
複数の直列腕共振子と、
複数の並列腕共振子とを備え、
前記弾性波デバイスは、
圧電層を有する基板と、
基板上に配置された第1共振子と、
基板上に配置され、前記第1共振子と周波数特性が異なる第2共振子と、
基板上において前記第1共振子と前記第2共振子との間に配置され、前記第1共振子および前記第2共振子の双方の反射器として機能する共用反射器とを含み、
前記第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含み、
前記第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含み、
前記共用反射器、前記第1共振子および前記第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第1値、第2値および第3値とした場合、前記第1値は、前記第2値と前記第3値と同じ、もしくは、前記第2値と前記第3値との間にあり、
前記複数の直列腕共振子は、前記第1共振子を含み、
前記複数の並列腕共振子は、前記第2共振子を含み、
前記複数の並列腕共振子は、前記第2共振子よりも電極指のピッチが広い第4共振子をさらに含む、ラダー型フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイスおよびそれを備えたラダー型フィルタに関し、より特定的には、弾性波デバイスを小型化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-303691号公報(特許文献1)には、複数の弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)共振子により構成されたフィルタ装置が開示されている。一般的に、このようなフィルタ装置においては、弾性表面波共振子において伝播される信号が共振子から漏れ出すことを抑制するために、弾性表面波共振子を形成する櫛歯(Interdigital Transducer:IDT)電極の両側に反射器が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-303691号公報
【文献】特開2002-176335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような弾性表面波共振子を用いたフィルタ装置は、たとえば、携帯電話あるいはスマートフォンに代表される携帯端末に用いられる場合がある。携帯端末においては、小型化および薄型化のニーズが依然として高く、それに伴って、フィルタ装置のような、当該携帯端末を構成する機器についてもさらなる小型化および低背化が求められている。
【0005】
このような課題に対して、たとえば特開2002-176335号公報(特許文献2)においては、隣接する弾性表面波共振子についてIDT電極間に配置される反射器を共用することにより、弾性波デバイス全体の小型化を図る構成が提案されている。しかしながら、デバイスの構成によっては、隣接する弾性表面波共振子の周波数特性が異なるため、単に反射器を共用するだけでは、かえってデバイス全体の周波数特性が低下してしまい、所望の特性が実現できない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の共振子により形成される弾性波デバイスにおいて、デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の局面に係る弾性波デバイスは、圧電層を有する基板と、上記基板上に配置された第1共振子および第2共振子と、共用反射器とを備える。第2共振子は、上記基板上において第1共振子に隣接して配置されており、第1共振子と周波数特性が異なっている。共用反射器は、上記基板上において第1共振子と第2共振子との間に配置され、第1共振子および第2共振子の双方の反射器として機能する。第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含む。第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含む。共用反射器の阻止域の下限周波数は、第1共振子の阻止域の下限周波数と第2共振子の阻止域の下限周波数と同じ、もしくは、第1共振子の阻止域の下限周波数と第2共振子の阻止域の下限周波数との間にある。共用反射器の阻止域の上限周波数は、第1共振子の阻止域の上限周波数と第2共振子の阻止域の上限周波数と同じ、もしくは、第1共振子の阻止域の上限周波数と第2共振子の阻止域の上限周波数との間にある。
【0008】
本開示の第2の局面に係る弾性波デバイスは、圧電層を有する基板と、上記基板上に配置された第1共振子および第2共振子と、共用反射器とを備える。第2共振子は、上記基板上において第1共振子に隣接して配置されており、第1共振子と周波数特性が異なっている。共用反射器は、上記基板上において第1共振子と第2共振子との間に配置され、第1共振子および第2共振子の双方の反射器として機能する。第1共振子は、電極指が第1ピッチで形成された第1IDT電極を含む。第2共振子は、電極指が第2ピッチで形成された第2IDT電極を含む。共用反射器、第1共振子および第2共振子について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値を、それぞれ第1値、第2値および第3値とした場合、第1値は、第2値と第3値と同じ、もしくは、第2値と第3値との間にある。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る弾性波デバイスによれば、各々がIDT電極を含む2つの弾性波共振子(第1共振子,第2共振子)の間に、双方の反射器として機能する共用反射器が配置される。そして、当該共用反射器における阻止域の下限周波数は、2つの共振子の阻止域の下限周波数の間に設定され、共用反射器における阻止域の上限周波数は、2つの共振子の阻止域の上限周波数の間に設定される。このような構成とすることによって、いずれの共振子のIDTからの信号も共用反射器によって反射される。したがって、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態1に係る弾性波デバイスにより形成されるフィルタ装置の回路構成である。
図2】本実施の形態1に係る弾性波デバイスの基本構成を説明するための上面図である。
図3】実施の形態1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図4】比較例の弾性波デバイスの上面図である。
図5】実施の形態1および比較例における弾性波デバイスを含むフィルタ装置の平面図である。
図6図5(b)の領域RG1の部分の詳細構成を説明するための図である。
図7図5(b)の領域RG2の部分の詳細構成を説明するための図である。
図8】比較例の弾性波デバイスの周波数特性を説明するための図である。
図9】実施の形態1の弾性波デバイスの周波数特性を説明するための図である。
図10】実施の形態1に係る弾性波デバイスの仕様の一例を示す図である。
図11】変形例1に係る弾性波デバイスの上面図である。
図12】変形例2に係る弾性波デバイスの上面図である。
図13】実施の形態2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図14】実施の形態2に係る弾性波デバイスの仕様の一例を示す図である。
図15】実施の形態3に係る弾性波デバイスの断面図である。
図16】実施の形態3に係る弾性波デバイスの仕様の一例を示す図である。
図17】実施の形態4に係る弾性波デバイスの断面図である。
図18】誘電体層の配置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(フィルタ装置の構成)
図1は、実施の形態1に従う弾性波デバイスにより形成されるフィルタ装置10の回路構成を示す図である。フィルタ装置10は、たとえば、通信装置の送信側回路に用いられるフィルタ装置であり、送信用端子TXとアンテナ端子ANTとの間に接続されたラダー型フィルタである。フィルタ装置10は、送信用端子TXで受けた信号をフィルタリングしてアンテナ端子ANTから出力する。
【0013】
フィルタ装置10は、送信用端子TXとアンテナ端子ANTとの間に直列接続された直列腕共振部S1~S5と、並列腕共振部P1~P4とを含む。直列腕共振部S1~S5および並列腕共振部P1~P4の各共振部は、少なくとも1つの弾性波共振子を含んで構成される。図1の例においては、直列腕共振部S1,S5および並列腕共振部P1~P4の各共振部は1つの弾性波共振子で構成され、直列腕共振部S2~S4の各共振部は2つの弾性波共振子で構成される。直列腕共振部S2は、直列接続された弾性波共振子S21,S22を含んで構成される。直列腕共振部S3は、直列接続された弾性波共振子S31,S32を含んで構成される。直列腕共振部S4は、直列接続された弾性波共振子S41,S42を含んで構成される。なお、各共振部に含まれる弾性波共振子の数はこれに限定されず、フィルタ装置の特性に合わせて適宜選択される。弾性波共振子としては、弾性表面波(SAW)共振子を用いることができる。
【0014】
並列腕共振部P1の一方端は、直列腕共振部S1と直列腕共振部S2との間の接続点と接続されており、他方端は接地電位に接続されている。並列腕共振部P2の一方端は、直列腕共振部S2と直列腕共振部S3との間の接続点と接続されており、他方端は接地電位に接続されている。並列腕共振部P3の一方端は、直列腕共振部S3と直列腕共振部S4との間の接続点と接続されており、他方端は接地電位に接続されている。並列腕共振部P4の一方端は、直列腕共振部S4と直列腕共振部S5との間の接続点と接続されており、他方端は接地電位に接続されている。
【0015】
(弾性波デバイスの構成)
次に、図2および図3を用いて、本実施の形態1に係る弾性波デバイス100の基本構成について説明する。図2は、弾性波デバイス100において、隣接共振子間に共用反射器が形成される部分の上面図である。また、図3は、隣接共振子間の部分の断面図である。
【0016】
図2および図3を参照して、弾性波デバイス100は、隣接した2つの弾性波共振子101,102と、共用反射器REF12とを含む。弾性波デバイス100に含まれる弾性波共振子101,102は、図1で説明したフィルタ装置10における、直列腕共振部S1~S5および並列腕共振部P1~P4のいずれかに含まれる共振子に対応する。
【0017】
弾性波共振子101,102は、IDT電極を含んで構成されるSAW共振子である。具体的には、弾性波共振子101は、IDT電極IDT1と、IDT電極IDT1の両側に配置された反射器REF1-1,REF1-2とを含む。弾性波共振子102は、IDT電極IDT2と、IDT電極IDT2の両側に配置された反射器REF2-1,REF2-2とを含む。
【0018】
IDT電極においては、対向する電極指の延在方向に直交する方向に弾性表面波が伝播する。反射器は、IDT電極の端部から漏れ出た弾性表面波を反射してIDT電極内に閉じ込めるために用いられる。これによって、弾性波共振子のQ値を高めることができる。
【0019】
図3に示されるように、各弾性波共振子の構成するIDT電極および反射器は、圧電層110を有する基板105上に形成されている。基板105は、圧電層110に加えて、低音速層121、高音速層122および支持層130とを含む。
【0020】
支持層130は、たとえばシリコン(Si)で形成された半導体基板である。支持層130上には、図3のZ軸の正方向に向かって、高音速層122、低音速層121および圧電層110が順に積層されている。
【0021】
圧電層110は、たとえば、タンタル酸リチウム(LiTaO)またはニオブ酸リチウム(LiNbO)のような圧電単結晶材料、あるいは、窒化アルミニウム(AlN)、LiTaOまたはLiNbOからなる圧電積層材料により形成される。圧電層110の上面(Z軸の正方向の面)には、機能素子であるIDT電極および反射器が形成されている。なお、図3の例においては、圧電層110として、タンタル酸リチウム(LT)が用いられている。
【0022】
IDT電極および反射器は、たとえばアルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、ニッケル、モリブデンの少なくとも一種からなる単体金属、またはこれらを主成分とする合金などの材料で形成されている。
【0023】
低音速層121は、当該低音速層121を伝播するバルク波音速が、圧電層110を伝播するバルク波音速よりも低速となる材料で形成されている。図3の例においては、低音速層121は二酸化ケイ素(SiO)で形成されている。しかしながら、低音速層121は二酸化ケイ素に限らず、たとえば、ガラス、酸窒化シリコン、酸化タンタルなどの他の誘電体、あるいは二酸化ケイ素にフッ素、炭素、ホウ素などを加えた化合物などで形成されてもよい。
【0024】
また、高音速層122は、当該高音速層122を伝播するバルク波音速が、圧電層110を伝播する弾性波音速よりも高速となる材料で形成されている。図3の例においては、高音速層122は窒化ケイ素(SiN)で形成されている。しかしながら、高音速層122は窒化ケイ素に限らず、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの材料で形成されてもよい。
【0025】
圧電層110の下方に、低音速層121および高音速層122を積層する構成とすることによって、低音速層121および高音速層122は反射層(ミラー層)120として機能する。すなわち、圧電層110から支持層130の方向に漏洩した弾性表面波は、伝播する音速の差によって高音速層122で反射され、低音速層121内に閉じ込められる。このように、反射層120により伝播される弾性表面波の音響エネルギの損失が抑制されるため、効率よく弾性表面波を伝播することができる。なお、図3においては、反射層120として、低音速層121および高音速層122がそれぞれ1層形成される例について説明したが、反射層120は複数の低音速層121および高音速層122が交互に配置された構成であってもよい。
【0026】
再び図2を参照して、弾性波共振子101の反射器REF1-1は、IDT電極IDT1における弾性波共振子102側に配置されている。反射器REF1-2は、IDT電極IDT1に対して、反射器REF1-1と反対側に配置されている。反射器REF1-1,REF1-2の電極指は、IDT電極IDT1の電極指と同じピッチで形成されている。
【0027】
また、弾性波共振子102の反射器REF2-1は、IDT電極IDT2における弾性波共振子101側に配置されている。反射器REF2-2は、IDT電極IDT2に対して、反射器REF2-1と反対側に配置されている。反射器REF2-1,REF2-2の電極指は、IDT電極IDT2の電極指と同じピッチで形成されている。
【0028】
共用反射器REF12は、弾性波共振子101の反射器REF1-1および弾性波共振子102の反射器REF2-1の間に配置される。反射器REF1-1の電極指の数と共用反射器REF12の電極指の数との和は、反射器REF1-2の電極指の数と同じ数に設定される。同様に、反射器REF2-1の電極指の数と共用反射器REF12の電極指の数との和は、反射器REF2-2の電極指の数と同じ数に設定される。共用反射器REF12の電極指の長さは、弾性波共振子101および弾性波共振子102に含まれるIDT電極における電極指の交叉幅以上の長さとなっている。
【0029】
共用反射器REF12の周波数特性は、弾性波共振子101の周波数特性および弾性波共振子102の周波数特性の間の中間的な周波数特性を有している。このような構成とすることによって、共用反射器REF12は、弾性波共振子101および弾性波共振子102の双方の反射器として機能する。
【0030】
実施の形態1においては、共用反射器REF12の電極指の少なくとも一部を、弾性波共振子101におけるIDT電極IDT1および反射器REF1-1,REF1-2の電極指のピッチ(第1ピッチ:PT1)と、弾性波共振子102におけるIDT電極IDT2および反射器REF2-1,REF2-2の電極指のピッチ(第2ピッチ:PT2)との間のピッチで形成することによって中間的な周波数特性を実現している。ここで、電極指のピッチとは、隣接する電極指の中心間距離である。
【0031】
なお、周波数特性は、各共振子および反射器に接続される配線を極力含まない状態で、ネットワークアナライザに接続されたコンタクトピンを接触させることによって測定することができる。
【0032】
なお、共用反射器REF12においては、電極指の全体が中間的なピッチで形成されていてもよいし、弾性波共振子101から弾性波共振子102に向かって徐々にピッチが変更される構成であってもよい。また、弾性波共振子101から弾性波共振子102に向かって段階的にピッチが変更される構成であってもよい。
【0033】
弾性波共振子101における反射器REF1-1および弾性波共振子102における反射器REF2-1は必ずしも必須ではなく、弾性波共振子101のIDT電極IDT1と、弾性波共振子102のIDT電極IDT2との間に、共用反射器REF12のみが配置される構成であってもよい。この場合、共用反射器REF12の電極指の数は、反射器REF1-2および反射器REF2-2の電極指の数と同じとすることが好ましい。
【0034】
図4は、比較例の弾性波デバイス100#における隣接共振子の上面図である。弾性波デバイス100#は、隣接した2つの弾性波共振子101#,102#を含む。弾性波デバイス100#においては、各弾性波共振子のIDT電極の両側に、同一形状の反射器(REF1-2,REF2-2)が配置されている。すなわち、各弾性波共振子において、両側に配置される反射器の電極指の数は同じである。したがって、たとえば、各反射器REF1-2,REF2-2の電極指の数が20本である場合、2つのIDT電極間に配置される反射器の電極指の総数は40本となる。
【0035】
一方、実施の形態1の弾性波デバイス100においては、たとえば、各反射器REF1-1,REF2-1の電極指の数を8本とし、共用反射器REF12の電極指の数を12本とすると、反射器REF1-1および共用反射器REF12の電極指の総数、ならびに、反射器REF2-1および共用反射器REF12の電極指の総数はそれぞれ20本となり、反射器REF1-2,REF2-2の電極指の数と同数となる。しかしながら、2つのIDT電極間に配置される反射器の電極指の総数は28本と少なくなる。したがって、各弾性波共振子に対して反射器として機能する電極指の数を維持して反射率の低下を抑制しつつ、2つのIDT電極間の間隔を狭くすることができる。これにより、比較例の弾性波デバイス100#と比較して、弾性波デバイス100を小型化することができる。
【0036】
図5は、比較例および実施の形態1における弾性波デバイスを含むフィルタ装置の平面図である。図5(a)は比較例の弾性波デバイスの構成を含む場合を示し、図5(b)は実施の形態1の弾性波デバイスの構成を含む場合を示している。図5(a),(b)においては、外部端子(TX,ANT,GND)と、各共振部(S1~S5,P1~P4)と、これらの共振部間を接続する配線部15の配置が示されている。このうち、直列腕共振部S2(弾性波共振子S21,S22)と並列腕共振部P1との間の部分(図5(b)の領域RG1)、および、直列腕共振部S4(弾性波共振子S41,S42)と並列腕共振部P4との間の部分(図5(b)の領域RG2)に、本実施の形態1の構成が適用されている。
【0037】
図5(a)に示されるように、フィルタ装置10#の幅W1は、弾性波共振子が隣接して配置される部分の長さによって制限される。そのため、図5(b)のフィルタ装置10のように、領域RG1,RG2の部分において、共用反射器を用いて弾性波共振子を隣接配置することによって、フィルタ装置10の幅W2を、比較例の場合よりも狭くすることができる(W2<W1)。
【0038】
図6および図7は、それぞれ、図5(b)の領域RG1,RG2の部分の詳細構成を説明するための図である。図6および図7のいずれにおいても、1つの弾性波共振子で構成される並列腕共振部と、2つの弾性波共振子で構成される直列腕共振部との間で、反射器が共有される構成となっている。
【0039】
図6を参照して、弾性波共振子S21は、IDT電極IDT_S21、および反射器REF_S21-1,REF_S21-2を含んで構成されており、弾性波共振子S22は、IDT電極IDT_S22、および反射器REF_S22-1,REF_S22-2を含んで構成されている。また、並列腕共振部P1を構成する弾性波共振子は、IDT電極IDT_P1、および反射器REF_P1-1,REF_P1-2を含んで構成されている。そして、これらの3つの弾性波共振子において、反射器REF_S21-1,REF_S22-1,REF_P1-1に対向するように、共用反射器REF_Aが配置されている。
【0040】
反射器REF_S21-1,REF_S22-1は、共用反射器REF_Aの第1端部側に互いに隣接して配置されており、反射器REF_P1-1は共用反射器REF_Aの第2端部側に配置されている。共用反射器REF_Aの電極指の長さは、反射器REF_P1-1の電極指の長さよりも長く、かつ、反射器REF_S21-1の電極指の長さと反射器REF_S22-1の電極指の長さとの和よりも長くなるように設定される。
【0041】
このような構成とすることによって、各弾性波共振子に個別に反射器を配置する場合に比べて、反射器REF_S21-2,REF_S22-2の端部から反射器REF_P1-2の端部までの長さを短縮することができる。
【0042】
図7を参照して、弾性波共振子S41は、IDT電極IDT_S41、および反射器REF_S41-1,REF_S41-2を含んで構成されており、弾性波共振子S42は、IDT電極IDT_S42、および反射器REF_S42-1,REF_S42-2を含んで構成されている。また、並列腕共振部P4を構成する弾性波共振子は、IDT電極IDT_P4、および反射器REF_P4-1,REF_P4-2を含んで構成されている。そして、これらの3つの弾性波共振子において、反射器REF_S41-1,REF_S42-1,REF_P4-1に対向するように、共用反射器REF_Bが配置されている。
【0043】
反射器REF_S41-1,REF_S42-1は、共用反射器REF_Bの第1端部側に互いに隣接して配置されており、反射器REF_P4-1は共用反射器REF_Bの第2端部側に配置されている。共用反射器REF_Bの電極指の長さは、反射器REF_P4-1の電極指の長さよりも長く、かつ、反射器REF_S41-1の電極指の長さと反射器REF_S42-1の電極指の長さとの和よりも長くなるように設定される。
【0044】
このような構成とすることによって、各弾性波共振子に個別に反射器を配置する場合に比べて、反射器REF_S41-2,REF_S42-2の端部から反射器REF_P4-2の端部までの長さを短縮することができる。
【0045】
次に、図8および図9を用いて、隣接する弾性波共振子において共用反射器を用いる場合の反射特性について説明する。図8および図9(a),(b)の各々においては、上段に反射器の反射係数の周波数特性が示され、下段に共振子のインピーダンスの周波数特性が示されている。図8および図9において、実線LN10および実線LN20は直列腕共振子を示しており、破線LN11および破線LN21は並列腕共振子を示している。
【0046】
図8を参照して、図1に示したようなラダー型フィルタにおいては、一般的に、直列腕共振子の共振周波数と並列腕共振子の反共振周波数とが略一致するように設計される。すなわち、直列腕共振子の反射器において反射係数が1に漸近する阻止域は、周波数f2~f4の間(領域AR10)となる。一方、並列腕共振子の反射器において反射係数が1に漸近する阻止域は、周波数f1~f3の間(領域AR11)となる。
【0047】
そのため、直列腕共振子と並列腕共振子の反射器を共用し、反射器の電極指のピッチを、どちらか一方の共振子のIDT電極の電極指ピッチに設定した場合には、周波数f2~f4の範囲(領域AR15)については反射率が確保できるものの、周波数f1~f2の範囲あるいは周波数f3~f4の範囲については反射率が大きく低下し得る。そうすると、この反射率が低下する領域において、一方の共振子からの弾性表面波が反射されずに他方の共振子に漏れ出してしまうため、フィルタ特性の劣化が生じ得る。
【0048】
一方で、本願実施の形態1のように、共用反射器の電極指ピッチの少なくとも一部を2つの共振子の電極指ピッチの中間のピッチに設定した場合、共用反射器の反射係数は、たとえば図9における一点鎖線LN12のようになる。そうすると、図9(a)に示されるように、直列腕共振子についての阻止域は、周波数f2~f31の範囲(領域AR16)に拡大される。同様に、並列腕共振子についての阻止域は、図9(b)に示されるように、周波数f11~f3の範囲(領域AR17)に拡大される。すなわち、共用反射器の阻止域の下限周波数は、第1共振子の阻止域の下限周波数と第2共振子の阻止域の下限周波数との間になり、共用反射器の阻止域の上限周波数は、第1共振子の阻止域の上限周波数と第2共振子の阻止域の上限周波数との間になる。したがって、共用反射器の電極指ピッチをどちらか一方の共振子の電極指ピッチに統一した場合に比べて、フィルタ装置における阻止範囲を拡大することができ、結果としてフィルタ特性の劣化を抑制することができる。
【0049】
なお、実施の形態1において「阻止域」とは、反射係数のピーク値の70%の値よりも高い反射係数を有する周波数範囲を示す。実施の形態1において、阻止域の下限周波数は、各共振子の共振周波数に対応する。また、阻止域の上限周波数は、各共振子のインピーダンス特性において、ストップバンドリプル(図8における領域RG10,RG11)が出現し始める周波数に対応する。
【0050】
各共振子において、励振される弾性表面波の強度は、IDT電極の中央領域で最大となり、両端の反射器の領域内では上記中央領域からの距離が遠くなるにしたがって単調に減少する。そのため、共用反射器においてIDT電極からの距離が遠いほど、電極指ピッチがIDT電極の電極指ピッチと異なっていても反射率の低下の影響が小さくなる。したがって、共用反射器における電極指ピッチを、一方の共振子の電極指ピッチから他方の共振子の電極指ピッチまで、徐々にあるいは段階的に変化させて設定することによって、図9における周波数f1~f11および周波数f31~f4の間の反射率を確保することが可能となり、反射率低下の影響をさらに低減できる。
【0051】
なお、図9のように直列腕共振子および並列腕共振子を共用反射器を用いて隣接させる場合、阻止域の高周波数側および低周波数側の範囲が少なからず狭められてしまう。そのため、ラダー型フィルタにおいて、フィルタ全体としての通過帯域端部での減衰特性の急峻性を維持させるために、最も高周波数側の減衰極を形成する共振子および最も低周波数側の減衰極を形成する共振子については、共用反射器を用いないほうが好ましい。
【0052】
一般的に、ラダーフィルタにおいては、高周波数側の減衰極は直列腕共振子によって形成され、低周波数側の減衰極は並列腕共振子によって形成される。そのため、複数の直列腕共振子を含む直列腕共振部においては、共用反射器を用いる直列腕共振子(第1共振子)よりもさらに電極指ピッチが狭く設定された直列腕共振子(第3共振子)を含むようにすることが好ましい。
【0053】
また、複数の並列腕共振子を含む並列腕共振部においては、共用反射器を用いる並列腕共振子(第2共振子)よりもさらに電極指ピッチが広く設定された並列腕共振子(第4共振子)を含むようにすることが好ましい。
【0054】
以上のように、隣接する2つおよび弾性波共振子(第1共振子,第2共振子)の間に共用反射器を配置し、当該共用反射器の電極指ピッチの少なくとも一部を、第1共振子のIDT電極の電極指ピッチと、第2共振子のIDT電極の電極指ピッチの間のピッチに設定して、中間的な周波数特性とすることによって、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することが可能となる。
【0055】
図10は、実施の形態1に係る弾性波デバイス100の仕様の一例を示す図である。当該実施例においては、共振子1のIDT電極の対数は130対であり、電極指の本数は261本である。また、波長(=電極指ピッチ×2)は1.5495μmであり、共振周波数は2453.39MHzである。一方、共振子2のIDT電極の対数は90対であり、本数は181本である。また、波長は1.60700μmであり、共振周波数は2358.11MHzである。共用反射器のIDT本数は8本であり、共用反射器と各IDT電極との間に配置された反射器のIDT本数は10本である。なお、各共振子において、デューティはいずれも0.5である。また、共振器1および共振器2の電極指の膜厚はいずれも同じである。
【0056】
当該実施例においては、共用反射器の波長は、共振子1から共振子2に向かって、1.5495μmから1.90700μmへ徐々に長くなっている。このように、共用反射器の波長(電極指ピッチ)を、2つの共振子の波長(電極指ピッチ)の中間的なピッチとすることによって、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。なお、共振器1および共振器2は電極指の膜厚およびデューティが同じであるため、電極指ピッチが大きい共振子2の周波数の方が、共振器1の周波数に比べて低くなる。
【0057】
(変形例1)
図2で示した実施の形態1の弾性波デバイス100においては、隣接して配置される2つの弾性波共振子が、弾性表面波の伝播方向の中心が一致するように、すなわちIDT電極の交叉幅の中心を通り電極指に直交する方向が一致するように配置されている構成について説明した。しかしながら、2つの弾性波共振子において弾性表面波の伝播方向の中心は異なっていてもよい。
【0058】
図11は、変形例1に係る弾性波デバイス100Aの上面図である。弾性波デバイス100Aは、図2と同様の構成を有する弾性波共振子101A,102Aと、弾性波共振子101A,102Aの間に配置された共用反射器REF12Aとを含む。弾性波共振子101Aは、IDT電極IDT1Aと、反射器REF1A-1,REF1A-2とを含む。弾性波共振子102Aは、IDT電極IDT2Aと、反射器REF2A-1,REF2A-2とを含む。
【0059】
弾性波デバイス100Aにおいては、2つの弾性波共振子101A,102Aにおける弾性表面波の伝播方向の中心がオフセットして重ならない構成となっている。具体的には、弾性波共振子101Aの電極指の交叉幅の中心を通り、当該電極指に直交する仮想線CL1と、弾性波共振子102Aの電極指の交叉幅の中心を通り、当該電極指に直交する仮想線CL2とが、電極指の延伸方向にオフセットしている。
【0060】
共用反射器REF12Aの電極指は、弾性波共振子101Aにおける反射器REF1A-1の電極指、および、弾性波共振子102Aにおける反射器REF2A-1の電極指の双方に対向する長さを有している。
【0061】
なお、当該構成は、図6および図7で前述したフィルタ装置10の領域RG1,RG2にも適用されている。
【0062】
このように、隣接する弾性波共振子における弾性表面波の伝播方向が重ならない場合であっても、各共振子の電極指に対向するような長さの電極指を有する共用反射器を用いることによって、弾性波デバイスの小型化とともに、基板上における機能素子の配置の自由度を高めることができる。また、仮に共用反射器から弾性表面波がリークした場合であっても、リークした弾性表面波は相手方の弾性波共振子におけるIDT電極の交叉幅中心から外れた領域に進入することになるため、弾性表面波の伝播方向にオフセットがなく重なっている場合に比べて相手方の弾性波共振子への影響を低減することができる。
【0063】
(変形例2)
実施の形態1および変形例1の弾性波デバイスにおいては、IDT電極および反射器における電極指が、電極指に接続されたバスバーに対して直交する方向に延在する構成について説明した。変形例2の弾性波デバイスにおいては、IDT電極および反射器の電極指が、バスバーに対して傾斜配置された構成について説明する。
【0064】
図12は、変形例2に係る弾性波デバイス100Bの上面図である。弾性波デバイス100Bにおいては、弾性波共振子101B,102Bと、弾性波共振子101B,102Bの間に配置された共用反射器REF12Bとを含む。変形例1と同様に、弾性波共振子101Bと弾性波共振子102Bとは、オフセットした位置に配置されている。
【0065】
弾性波共振子101Bは、IDT電極IDT1Bと、IDT電極IDT1Bの両側に配置された反射器REF1B-1,REF1B-2とを含む。弾性波共振子102Bは、IDT電極IDT2Bと、IDT電極IDT2Bの両側に配置された反射器REF2B-1,REF2B-2とを含む。
【0066】
共用反射器REF12Bは、反射器REF1B-1と反射器REF2B-1との間に配置されている。反射器REF1B-1の電極指の数と共用反射器REF12Bの電極指の数の和は、反射器REF1B-2の電極指の数と同じである。また、反射器REF2B-1の電極指の数と共用反射器REF12Bの電極指の数の和は、反射器REF2B-2の電極指の数と同じである。弾性波デバイス100Bにおいて、弾性波共振子101B,102Bおよび共用反射器REF12Bの電極指は、バスバーに対して斜めに接続されている。電極指とバスバーとのなす角は、0°より大きく90°より小さい。
【0067】
弾性波共振子においては、一般的に電極指に直交する方向に弾性表面波が伝播する。すなわち、図12に示されるように、弾性波共振子101Bにおいては矢印RA1の方向に弾性表面波が伝播し、弾性波共振子102Bにおいては矢印RA2の方向に弾性表面波が伝播する。このように、隣接する弾性波共振子をオフセット配置し、さらにバスバーに対して電極指を傾斜配置することによって、一方の弾性波共振子における弾性表面波の伝播方向を、他方の弾性波共振子のIDT電極における電極指の交叉幅領域外とすることができる。したがって、共用反射器から弾性表面波がリークした場合における他方の弾性波共振子への影響をさらに低減することができる。
【0068】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、隣接する弾性波共振子の電極指ピッチが異なる構成の場合に、共用反射器の電極指のピッチを中間的なピッチにすることによって、共用反射器の周波数特性を調整する構成について説明した。
【0069】
実施の形態2においては、隣接する弾性波共振子の電極指のデューティが異なる構成の場合に、共用反射器の電極指のデューティを中間的なデューティとすることによって、共用反射器の周波数特性を調整する構成について説明する。なお、電極指のデューティとは、電極指のピッチに対する電極指の占める割合(電極指の幅)である。
【0070】
図13は、実施の形態2に係る弾性波デバイス100Cの断面図である。弾性波デバイス100Cは、弾性波共振子101C,102Cと、弾性波共振子101C,102Cの間に配置された共用反射器REF12Cとを含む。
【0071】
共用反射器REF12Cは、弾性波共振子101CのIDT電極IDT1Cの一方側に配置された反射器REF1C-1と、弾性波共振子102CのIDT電極IDT2Cの一方側に配置された反射器REF2C-1との間に配置されている。なお、弾性波デバイス100Cにおいては、弾性波共振子101Cの電極指ピッチおよび弾性波共振子102Cの電極指ピッチは同じピッチである。
【0072】
弾性波共振子101CにおけるIDT電極および反射器の電極指のデューティ(第1デューティ)はDT1に設定されており、弾性波共振子102CにおけるIDT電極および反射器の電極指のデューティ(第2デューティ)はDT2(DT2>DT1)に設定されている。そして、共用反射器REF12Cにおける電極指の少なくとも一部は、上記の第1デューティDT1および第2デューティDT2の間の中間的なデューティで形成されている。好ましくは、共用反射器REF12Cの電極指のデューティは、弾性波共振子101Cから弾性波共振子102Cに向かって徐々に、あるいは段階的に大きくなるように設定される。
【0073】
このように、隣接する弾性波共振子における電極指のデューティが異なる場合には、共用反射器の少なくとも一部の電極指について中間的なデューティに設定することによって、共用反射器の周波数特性を2つの弾性波共振子の周波数特性の間の周波数特性に設定することができる。これにより、実施の形態1と同様に、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。
【0074】
なお、2つの弾性波共振子における電極指のピッチおよびデューティが異なる場合には、共用反射器における電極指のピッチおよびデューティの双方を、中間的な値に設定するようにしてもよい。
【0075】
図14は、実施の形態2に係る弾性波デバイス100Cの仕様の一例を示す図である。当該実施例においては、共振子1および共振子2の各々のIDT電極の対数は130対であり、電極指の本数は261本である。また、共振子1および共振子2の各々についての波長(=ピッチ×2)はいずれも1.5495μmである。共用反射器のIDT本数は8本であり、共用反射器と各IDT電極との間に配置された反射器のIDT本数は10本である。共振子1の共振周波数は2453.39MHzであり、共振子2の共振周波数は2446.86MHzである。なお、共振器1および共振器2の電極指の膜厚はいずれも同じである。
【0076】
当該実施例においては、共振子1のデューティは0.5にされており、共振子2のデューティは0.55に設定されている。共用反射器におけるデューティは、共振子1から共振子2に向かって、0.5から0.55へ徐々に変化している。このように、共用反射器のデューティを、2つの共振子のデューティの中間的なデューティとすることによって、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。なお、共振器1および共振器2は電極指ピッチおよび電極指膜厚が同じであるため、デューティが大きい共振子2の周波数の方が、共振器1の周波数に比べて低くなる。
【0077】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、隣接する弾性波共振子の電極指の膜厚が異なる構成の場合に、共用反射器の電極指の膜厚を中間的な膜厚とすることによって、共用反射器の周波数特性を調整する構成について説明する。
【0078】
図15は、実施の形態3に係る弾性波デバイス100Dの断面図である。弾性波デバイス100Dは、弾性波共振子101D,102Dと、弾性波共振子101D,102Dの間に配置された共用反射器REF12Dとを含む。
【0079】
共用反射器REF12Dは、弾性波共振子101DのIDT電極IDT1Dの一方側に配置された反射器REF1D-1と、弾性波共振子102DのIDT電極IDT2Dの一方側に配置された反射器REF2D-1との間に配置されている。
【0080】
弾性波デバイス100Dおいては、弾性波共振子101Dの電極指のピッチおよびデューティは弾性波共振子102Dの電極指のピッチおよびデューティと同じであるが、2つの弾性波共振子101D,102Dの電極指の膜厚が異なっている。具体的には、弾性波共振子101Dの電極指の膜厚(第1電極指膜厚)はET1に設定されており、弾性波共振子102Dの電極指の膜厚(第2電極指膜厚)はET2(ET2>ET1)に設定されている。
【0081】
そして、共用反射器REF12Dにおける電極指の少なくとも一部の膜厚は、上記の第1電極指膜厚ET1および第2電極指膜厚ET2の間の中間的な膜厚で形成されている。言い換えれば、共用反射器REF12Dにおける電極指の少なくとも一部の膜厚は、第1電極指膜厚ET1よりも厚く、かつ、第2電極指膜厚ET2よりも薄い。好ましくは、共用反射器REF12Dの電極指の膜厚は、弾性波共振子101Dから弾性波共振子102Dに向かって徐々に、あるいは段階的に厚くなるように設定される。
【0082】
このように、隣接する弾性波共振子における電極指の膜厚が異なる場合には、共用反射器の少なくとも一部の電極指について中間的な膜厚に設定することによって、共用反射器の周波数特性を2つの弾性波共振子の周波数特性の間の周波数特性に設定することができる。これにより、実施の形態1と同様に、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。
【0083】
なお、2つの弾性波共振子において、電極指の膜厚に加えて、電極指のピッチおよび/またはデューティが異なる場合には、共用反射器の電極指のピッチおよび/またはデューティについても中間的な値に設定するようにしてもよい。
【0084】
図16は、実施の形態3に係る弾性波デバイス100Dの仕様の一例を示す図である。当該実施例においては、共振子1のIDT電極の対数は130対であり、電極指の本数は261本である。一方、共振子2のIDT電極の対数は90対であり、電極指の本数は181本である。共振子1および共振子2の各々についての波長(=ピッチ×2)はいずれも1.5495μmである。共用反射器のIDT本数は8本であり、共用反射器と各IDT電極との間に配置された反射器のIDT本数は10本である。共振子1の共振周波数は2453.39MHzであり、共振子2の共振周波数は2442.24MHzである。なお、共振子1および共振子2において、IDT電極のデューティはいずれも0.5である。
【0085】
当該実施例においては、共振子1における電極指の膜厚は121nmに設定されており、共振子2における電極指の膜厚は131nmに設定されている。共振子1から共振子2に向かって、121nmから131nmへ徐々に厚くなっている。このように、共用反射器における電極指膜厚を、2つの共振子における電極指膜厚の中間的な膜厚とすることによって、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。なお、共振器1および共振器2は電極指ピッチおよびデューティが同じであるため、電極指膜厚が厚い共振器2の周波数の方が、共振器1の周波数に比べて低くなる。
【0086】
[実施の形態4]
弾性波デバイスにおいては、基板上の機能素子を保護するために、IDT電極および反射器上に誘電体層が配置される場合がある。弾性波共振子の周波数特性は、この保護用の誘電体層の厚みによっても変化する。
【0087】
実施の形態4においては、隣接する弾性波共振子において、保護用の誘電体層の膜厚が異なる構成の場合に、当該誘電体層の膜厚を中間的な膜厚とすることによって、共用反射器の周波数特性を調整する構成について説明する。
【0088】
図17は、実施の形態4に係る弾性波デバイス100Eの断面図である。弾性波デバイス100Eは、弾性波共振子101E,102Eと、弾性波共振子101E,102Eの間に配置された共用反射器REF12Eと、弾性波共振子101E,102Eおよび共用反射器REF12E上に配置された誘電体層140とを含む。
【0089】
共用反射器REF12Eは、弾性波共振子101EのIDT電極IDT1Eの一方側に配置された反射器REF1E-1と、弾性波共振子102EのIDT電極IDT2Eの一方側に配置された反射器REF2E-1との間に配置されている。弾性波デバイス100Eにおいては、弾性波共振子101E,102EのIDT電極および反射器、ならびに共用反射器REF12Eにおける電極指のピッチ、デューティおよび膜厚は同じ値に設定されている。
【0090】
誘電体層140は、たとえば二酸化ケイ素、ガラス、酸窒化シリコン、酸化タンタル、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの材料であり、二酸化ケイ素にフッ素、炭素、ホウ素などを加えた化合物などで形成されてもよい。誘電体層140は、基板105の圧電層110上に配置された機能素子(IDT電極,反射器)を覆うように配置されている。弾性波共振子101Eの領域に配置されている誘電体層140の膜厚(第1誘電体膜厚)はFT1に設定されており、弾性波共振子102Eの領域に配置されている誘電体層140の膜厚(第2誘電体膜厚)はFT2(FT1<FT2)に設定されている。誘電体層140を弾性波共振子の共振周波数の音速よりも遅いバルク波音速を有する材料(二酸化ケイ素、ガラス、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化テルルなど)で形成した場合には、電極指上に配置された誘電体層が厚くなるほど、電極指が振動する際の質量が大きくなるため、共振器の共振周波数は低くなる。そのため、図17の構成においては、弾性波共振子102Eの共振周波数は、弾性波共振子101Eの共振周波数よりも低くなる。
【0091】
一方、誘電体層140を弾性共振子の共振周波数の音速よりも速いバルク波音速を有する材料(ガラス、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、DLC、ダイヤモンドなど)で形成した場合には、誘電体層が厚くなるほど、共振器の共振周波数は高くなる。
【0092】
なお、実施の形態4においては、誘電体層140の膜厚FT1,FT2は、IDT電極および反射器の電極指の上面から誘電体層140の表面までの距離として定義される。また、誘電体層140は、図18に示されるように、電極指のある部分における誘電体の上面の位置と、電極指のない部分における誘電体の上面の位置とが異なっていてもよい。
【0093】
そして、共用反射器REF12Eの領域に配置された誘電体層140の少なくとも一部の膜厚は、上記の第1誘電体膜厚FT1および第2誘電体膜厚FT2の間の中間的な膜厚で形成されている。言い換えれば、共用反射器REF12Eの領域に配置された誘電体層140の少なくとも一部の膜厚は、第1誘電体膜厚FT1よりも薄く、かつ、第2誘電体膜厚FT2よりも厚い。好ましくは、共用反射器REF12Eの領域に配置された誘電体層140の膜厚は、弾性波共振子101Eから弾性波共振子102Eに向かって徐々に、あるいは段階的に薄くなるように設定される。
【0094】
このように、隣接する弾性波共振子の領域に配置された保護用の誘電体層の膜厚が異なる場合には、共用反射器の領域に配置された誘電体層の少なくとも一部を中間的な膜厚に設定することによって、共用反射器の周波数特性を2つの弾性波共振子の周波数特性の間の周波数特性に設定することができる。これにより、実施の形態1と同様に、弾性波デバイスの周波数特性の低下を抑制しつつ、弾性波デバイスの小型化を実現することができる。
【0095】
なお、2つの弾性波共振子において、誘電体層の膜厚に加えて、電極指のピッチ、デューティおよび/または膜厚が異なる場合には、共用反射器の電極指のピッチ、デューティおよび/または膜厚についても中間的な値に設定するようにしてもよい。
【0096】
また、一般に、共振子の共振周波数、阻止域の周波数(上限周波数,下限周波数)、および反射器の周波数(上限周波数,下限周波数)は、電極指のピッチ、電極指のデューティ、電極指の厚み、圧電体層の厚み、および誘電体層の厚みの各パラメータに対して同様の依存傾向を示す。上述のように、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指厚みの各パラメータが大きいほど、各共振子の共振周波数は低くなる傾向にある。そのため、共用反射器REF12(REF12C,REF12D,REF12E)および弾性波共振子101(101C,101D,101E),102(102C,102D,102E)について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、および電極指の厚みを掛け合わせた値(=電極指ピッチ×電極指デューティ×電極指厚み)を、それぞれ第1値、第2値および第3値とすると、共用反射器REF12の第1値は、弾性波共振子101の第2値と弾性波共振子102の第3値との間になるように設定される。
【0097】
さらに、弾性波共振子101、弾性波共振子102および共用反射器REF12を覆い、弾性波共振子の共振周波数の音速よりも遅いバルク波音速を有する材料からなる誘電体層を備える場合には、この誘電体層厚みが大きいほど、各共振子の共振周波数は低くなる傾向にある。そのため、共用反射器REF12および弾性波共振子101,102について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、電極指の厚み、および、誘電体層の厚みを掛け合わせた値(=電極指ピッチ×電極指デューティ×電極指厚み×誘電体層厚み)を、それぞれ第4値、第5値および第6値とすると、共用反射器REF12の第4値は、弾性波共振子101の第5値と弾性波共振子102の第6値との間になるように設定される。
【0098】
もしくは、弾性波共振子101、弾性波共振子102および共用反射器REF12を覆い、弾性波共振子の共振周波数の音速よりも速いバルク波音速を有する材料からなる誘電体層を備える場合には、この誘電体層厚みが大きいほど、各共振子の共振周波数は高くなる傾向にある。そのため、共用反射器REF12および弾性波共振子101,102について、電極指のピッチ、電極指のデューティ、電極指の厚み、および、誘電体層の厚みの逆数を掛け合わせた値(=電極指ピッチ×電極指デューティ×電極指厚み/誘電体層厚み)を、それぞれ第7値、第8値および第9値とすると、共用反射器REF12の第7値は、弾性波共振子101の第8値と弾性波共振子102の第9値との間になるように設定される。
【0099】
なお、第1値~第3値、第4値~第6値、および第7値~第9値の関係が成立するためには、各パラメータがほぼ線形的に変化する領域を用いることが必要となるため、各弾性波共振子のデューティが0.65以下であることの条件が必要となる。
【0100】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
10,10# フィルタ装置、15 配線部、100,100A~100E,100# 弾性波デバイス、101,101A~101E,101#,102,102A~102E,102#,S21,S22,S31,S32,S41,S42 弾性波共振子、105 基板、110 圧電層、120 反射層、121 低音速層、122 高音速層、130 支持層、140 誘電体層、ANT アンテナ端子、IDT1,IDT1A~IDT1E,IDT2,IDT2A~IDT2E IDT電極、P1~P4 並列腕共振部、REF1,REF1A~REF1E,REF2,REF2A~REF2E,REF_P1,REF_P4,REF_S21,REF_S22,REF_S41,REF_S42 反射器、REF12,REF12A~REF12E,REF_A,REF_B 共用反射器、S1~S5 直列腕共振部、TX 送信用端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18