IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械の安全装置 図1
  • 特許-作業機械の安全装置 図2
  • 特許-作業機械の安全装置 図3
  • 特許-作業機械の安全装置 図4
  • 特許-作業機械の安全装置 図5
  • 特許-作業機械の安全装置 図6
  • 特許-作業機械の安全装置 図7
  • 特許-作業機械の安全装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】作業機械の安全装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240416BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240416BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240416BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/24 B
H04N7/18 J
G08B21/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022082015
(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公開番号】P2023170337
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 裕樹
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190148(JP,A)
【文献】特開2021-014736(JP,A)
【文献】特許第7037393(JP,B2)
【文献】特許第2733355(JP,B2)
【文献】特許第3673419(JP,B2)
【文献】特開2021-070988(JP,A)
【文献】特開2000-027228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/24
H04N 7/18
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作装置を含む作業機械であって前記操作装置は前記作業機械を動かすための操作を受ける作業機械の安全装置であって、
前記作業機械の周囲に存在する検知対象物を検知する検知部と、
警報を発出することが可能な警報装置と、
前記操作に含まれる警報対象操作の大きさである対象操作量を検出する操作量検出器と、
前記検知部により検知される前記検知対象物が前記作業機械の周囲に設定された警報領域内に存在しかつ前記対象操作量が予め設定された許容操作量を上回る場合にのみ前記警報装置に操作警報を発出させ、前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合には前記操作装置に前記警報対象操作が与えられていても前記検知対象物の存否にかかわらず前記操作警報の発出を停止させるように構成されている制御部と、を備える、作業機械の安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記許容操作量は、前記作業機械において前記警報対象操作により動かされる部位である対象部位が実際に動き始める操作量よりも小さい、作業機械の安全装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、オペレータに視認されることが可能な画像を表示する表示装置をさらに備え、前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在する場合に前記対象操作量にかかわらず前記表示装置に前記検知対象物の存在を示す警告画像を表示させるように構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記作業機械は、走行動作を行うことが可能な下部走行体と、当該下部走行体に対して旋回動作を行うことが可能な上部旋回体と、を含み、当該上部旋回体にオペレータが搭乗可能であり、前記警報領域は少なくとも前記上部旋回体の後方の領域を含み、前記警報対象操作は、前記下部走行体に前記走行動作を行わせるための走行操作と、前記上部旋回体に前記旋回動作を行わせるための旋回操作と、を含む、作業機械の安全装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械の安全装置であって、前記作業機械は、前記上部旋回体から前方に張り出すように当該上部旋回体に支持される作業装置をさらに含み、前記操作装置に与えられる前記操作に前記作業装置を動かすための作業操作が含まれ、当該作業操作は前記警報対象操作から除外されている、作業機械の安全装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記警報対象操作は、前記操作装置に与えられる操作のうち当該操作によって動かされる部位である対象部位を前記検知対象物に近づける方向の操作に限定されている、作業機械の安全装置。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合に、前記操作警報よりも制限された検知警報を前記警報装置に発出させるように構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機械の安全装置であって、前記検知警報は、場所、音量及び時間のうちの少なくとも一つにおいて前記操作警報よりも制限された警報である、作業機械の安全装置。
【請求項9】
請求項8に記載の作業機械の安全装置であって、前記警報装置は、前記作業機械の運転室の内部及び外部のそれぞれに警報を発出することが可能であり、前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量を上回る場合には前記操作警報として前記警報装置に前記運転室の内部及び外部の双方に警報を発出させ、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合に前記検知警報として前記運転室の内部にのみ警報を発出させるように、構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項10】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御部は、前記警報対象操作のうち動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に動作制限制御を行うように構成され、前記動作制限制御は、前記動作制限対象操作によって動かされる対象部位の動作である制限対象動作を制限する制御である、作業機械の安全装置。
【請求項11】
請求項10に記載の作業機械の安全装置であって、前記制御部は、前記動作制限制御が開始されてから予め設定された警報時間が経過した時点で前記操作警報を停止させるように構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項12】
請求項11に記載の作業機械の安全装置であって、前記警報領域内に停止領域及び速度制限領域が設定され、前記制御部は、前記停止領域内に前記検知対象物が存在するときに前記動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に前記制限対象動作を強制停止させるとともに前記警報装置に第1の操作警報を発出させ、前記速度制限領域内に前記検知対象物が存在するときに前記動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に前記制限対象動作の速度を制限するとともに前記操作警報として前記警報装置に前記第1の操作警報よりも制限された第2の操作警報を発出させるように構成されている、作業機械の安全装置。
【請求項13】
請求項1に記載の作業機械の安全装置であって、前記作業機械は、前記操作装置に与えられる操作が無効とされる操作ロック状態と当該操作が有効とされる操作ロック解除状態とに切換可能であり、前記制御部は、前記作業機械が前記操作ロック解除状態にある場合にのみ前記警報装置に前記操作警報を発出させ、前記作業機械が前記操作ロック状態にあるときは前記対象操作量にかかわらず前記操作警報を停止させる、作業機械の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械の周辺に存在する検知対象物を検知して警報を行う装置が知られている。例えば特許文献1には、作業機械の周囲の所定範囲内における人の存否を検出し、その検出結果に基づいて操作者に対する警報の制御を行う装置が開示されている。この装置は、前記作業機械が作業可能状態にあるか否か(具体的にはゲートロックレバーがロック解除状態にあるか否か)を判定する機能を備え、前記作業機械が作業可能状態にないと判定され、かつ、前記所定範囲内に人が存在すると判定された場合に、前記作業機械が作業可能状態にあると判定された時点で警報を開始するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される装置では、実際に作業機械の操作がされていなくても作業可能な状態にあれば警報が行われるので、当該警報の頻度が高い。従って、オペレータが警報に慣れてしまい、その分だけ前記警報による注意喚起の効果が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、作業機械の周囲における検知対象物の存否に基づいて好適な頻度で警報を行うことが可能な安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、作業機械のための安全装置であって、検知部と、警報装置と、操作検出器と、制御部と、を備える。前記作業機械は操作装置を含み、前記操作装置は前記作業機械を動かすための操作を受け、当該操作は警報対象操作を含む。前記検知部は、前記作業機械の周囲に存在する検知対象物を検知する。前記警報装置は警報を発出することが可能である。前記操作検出器は、前記警報対象操作の大きさである対象操作量を検出する。前記制御部は、前記検知部により検知される前記検知対象物が前記作業機械の周囲に設定された警報領域内に存在しかつ前記対象操作量が予め設定された許容操作量を上回る場合にのみ前記警報装置に操作警報を発出させ、前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合には前記検知対象物の存否にかかわらず前記操作警報の発出を停止させるように構成されている。
【0007】
この装置によれば、検知対象物の検知に基づく警報を適正なタイミングで効果的に行うことが可能である。具体的に、前記検知対象物が前記警報領域内に存在することが検知された場合にあっても、前記警報対象操作の大きさである前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合には前記操作警報が発出されず、当該対象操作量が当該許容操作量を上回る場合にのみ、すなわち、実際にオペレータにより前記警報対象操作が行われている場合にのみ、前記操作警報が発出されるので、当該操作警報の頻度を抑えながら、適正なタイミングで効果的に前記操作警報を発出させることができる。
【0008】
前記許容操作量は、任意に設定されることが可能であるが、前記作業機械において前記警報対象操作により動かされる部位である対象部位が実際に動き始める操作量よりも小さいことが、好ましい。このことは、前記操作装置に前記警報対象操作が与えられかつ前記対象部位が動き出す前の時点で前記警報装置に前記操作警報の発出を指令することを可能にし、これにより、前記操作警報の頻度を抑えながら、より安全性の高いタイミングで前記操作警報が発出されることを可能にする。
【0009】
前記安全装置は、オペレータに視認されることが可能な画像を表示する表示装置をさらに備え、前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在する場合に前記対象操作量にかかわらず前記表示装置に前記検知対象物の存在を示す警告画像を表示させるように構成されていることが、好ましい。前記警告画像の表示は、前記操作警報の頻度を抑えながら、当該操作警報が行われていない場合にもオペレータが前記検知対象物の存在を認識することを可能にし、これにより、より高い安全性が確保されることを可能にする。
【0010】
前記作業機械が、走行動作を行うことが可能な下部走行体と、当該下部走行体に対して旋回動作を行うことが可能な上部旋回体と、を含み、当該上部旋回体にオペレータが搭乗可能である場合、前記警報領域は少なくとも前記上部旋回体の後方の領域を含み、前記警報対象操作は、前記下部走行体に前記走行動作を行わせるための走行操作と、前記上部旋回体に前記旋回動作を行わせるための旋回操作と、を含むことが、好ましい。このことは、前記上部旋回体に搭乗するオペレータによる視認が困難な当該上部旋回体の後部と検知対象物との接触または接近が有効に抑止されることを可能にする。
【0011】
この態様において、前記作業機械が、前記上部旋回体から前方に張り出すように当該上部旋回体に支持される作業装置をさらに含み、前記操作装置に与えられる前記操作に前記作業装置を動かすための作業操作が含まれている場合、当該作業操作は前記警報対象操作から除外されていてもよい。このように、前記上部旋回体から前方に張り出していてオペレータから比較的視認されることが容易な前記作業装置のための前記作業操作が前記警報対象操作から除外されることは、高い安全性を保ちながら前記操作警報の発出の頻度が適正に抑えられることを可能にする。
【0012】
前記警報対象操作は、前記操作装置に与えられる操作のうち当該操作によって動かされる部位である対象部位を前記検知対象物に近づける方向の操作に限定されていてもよい。換言すれば、前記操作装置に与えられる操作のうち前記対象部位を前記検知対象物から遠ざける方向の操作は前記警報対象操作から除外されてもよい。このように危険度の少ない操作が前記警報対象操作から除外されることは、高い安全性を保ちながら前記操作警報の発出の頻度が適正に抑えられることを可能にする。
【0013】
前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合に、前記操作警報よりも制限された検知警報を前記警報装置に発出させるように構成されてもよい。このことは、前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合にもオペレータが前記検知対象物の存在を認識することを可能にする。しかも、前記検知警報は前記操作警報よりも制限された警報であるため、前記対象操作量が大きいときにのみ発出される前記操作警報による注意喚起効果は高く維持することが可能である。
【0014】
前記検知警報は、例えば、場所、音量及び時間のうちの少なくとも一つにおいて前記操作警報よりも制限された警報であることが、好ましい。例えば、前記警報装置が、前記作業機械の運転室の内部及び外部のそれぞれに警報を発出することが可能である場合、前記制御部は、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量を上回る場合には前記操作警報として前記警報装置に前記運転室の内部及び外部の双方に警報を発出させ、前記警報領域に前記検知対象物が存在しかつ前記対象操作量が前記許容操作量以下である場合に前記検知警報として前記運転室の内部にのみ警報を発出させるように、構成されてもよい。このことは、前記対象操作量が前記許容操作量以下である段階では前記運転室の搭乗者にのみ前記検知対象物の存在を知らせながら、前記対象操作量が前記許容操作量を上回った時点で前記運転室の外部の作業員に適正なタイミングで注意喚起をすることを、可能にする。
【0015】
前記制御部は、前記警報対象操作のうち動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に動作制限制御を行うように構成されていることが、好ましい。前記動作制限制御は、前記動作制限対象操作によって動かされる対象部位の動作である制限対象動作を制限する制御であり、前記対象部位と前記検知対象物との接触または接近がより有効に抑止されることを可能にする。
【0016】
前記制御部は、前記動作制限制御が開始されてから予め設定された警報時間が経過した時点で前記操作警報を停止させるように構成されてもよい。このように操作警報が停止されても、前記動作制限制御が継続されることにより、高い安全性が確保される。換言すれば、前記動作制限制御が開始されてから所定の警報時間が経過するまでは当該動作制限制御に加えて前記操作警報が発出されることにより、当該動作制限制御が実行されていることが明確に報知される一方、前記警報時間が経過した後は前記操作警報を停止させることにより当該操作警報の発出時間を抑えてその高い注意喚起効果を維持することができる。
【0017】
前記動作制限制御及び前記警報制御の具体的な組み合わせとして、前記警報領域内に停止領域及び速度制限領域が設定され、前記制御部は、前記停止領域内に前記検知対象物が存在するときに前記動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に(前記動作制限制御として)前記制限対象動作を強制停止させるとともに前記操作警報として前記警報装置に第1の操作警報を発出させ、前記速度制限領域内に前記検知対象物が存在するときに前記動作制限対象操作が前記操作装置に与えられた場合に(前記動作制限制御として)前記制限対象動作の速度を制限するとともに前記操作警報として前記警報装置に前記第1の操作警報よりも制限された第2の操作警報を発出させるように構成されてもよい。このことは、オペレータに対して危険度に応じた操作警報が発出されることを可能にする。
【0018】
前記作業機械が、前記操作装置に与えられる操作が無効とされる操作ロック状態と当該操作が有効とされる操作ロック解除状態とに切換可能である場合、前記制御部は、前記作業機械が前記操作ロック解除状態にある場合にのみ前記警報装置に前記操作警報を発出させ、前記作業機械が前記操作ロック状態にあるときは前記対象操作量にかかわらず前記操作警報を停止させるように、構成されてもよい。前記操作ロック状態では、前記操作装置に前記警報対象操作が与えられても当該警報対象操作が無効とされていて前記制限対象動作が行われないので、このような状態では前記操作警報の発出を控えることによって、高い安全性は維持しながら前記操作警報の発出頻度をさらに抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、作業機械の周囲における検知対象物の存否に基づいて好適な頻度で警報を行うことが可能な安全装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の例である油圧ショベルを示す側面図である。
図2】前記油圧ショベル及びその周囲に設定される警報領域を示す平面図である。
図3】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びコントローラ等を示すブロック図である。
図4】前記コントローラの主要な機能を示すブロック図である。
図5】前記コントローラにより実行される安全制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
図6】前記安全制御のサブルーチンであって当該安全制御に含まれる警報制御の流れを示すフローチャートである。
図7】前記安全制御のサブルーチンであって当該安全制御に含まれる動作制限制御の流れを示すフローチャートである。
図8】操作装置に与えられる実際の操作量に対するパイロット圧の特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1及び図2は、油圧ショベルを示し、当該油圧ショベルは、本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される作業機械である。前記油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、作業駆動装置と、を備える。
【0023】
前記下部走行体10は、右及び左にそれぞれ配置された一対の右クローラ11R及び左クローラ11Lを備える。前記右及び左クローラ11R,11Lのそれぞれは、前記下部走行体10が前記地面Gの上を走行するように動作する。
【0024】
前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を含む。前記複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17と、運転室であるキャブ18と、前記上部旋回体12の後端部を構成するカウンタウェイト19と、を含む。
【0025】
前記作業装置14は、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、起伏可能に前記旋回フレーム16の前端に支持される。前記アーム22は前記ブーム21に対して上下方向に回動可能となるように前記ブーム21の先端部に連結される。前記バケット24は、掘削作業等を行うための先端アタッチメントであり、前記アーム22に対して上下方向に回動可能となるように前記アーム22の先端部に取付けられる。
【0026】
図3は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路、複数の対象物検知器、操作ロックセンサ61、警報装置62、表示装置64、及びコントローラ70を示す。前記コントローラ70は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記油圧回路に含まれる各要素の作動を制御する。一方、前記コントローラ70は、前記複数の対象物検知器、前記警報装置62及び前記表示装置64及びに電気的に接続されてこれらとともに安全装置を構成する。
【0027】
前記油圧回路は、ポンプユニット30、複数の油圧アクチュエータ、複数の制御弁、操作装置、複数の操作弁及び複数のパイロット圧センサを含む。
【0028】
前記ポンプユニット30は、複数の油圧ポンプを含み、当該複数の油圧ポンプは、少なくとも一つのメインポンプとパイロットポンプとを含む。前記複数の油圧ポンプは、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力により駆動されて作動油を吐出する。
【0029】
前記複数の油圧アクチュエータは、それぞれが前記ポンプユニット30からの作動油の供給を受けて前記油圧ショベルの可動部位を動かすものであり、図1に示される複数の作業用油圧シリンダ、すなわち、ブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28と、図3に示される旋回モータ32、右走行モータ33及び左走行モータ34と、を含む。
【0030】
前記ブームシリンダ26は、作動油の供給を受けることにより、前記上部旋回体12に対して前記ブーム21を起伏させるように伸縮する。前記アームシリンダ27は、作動油の供給を受けることにより、前記ブーム21に対して前記アーム22を回動させるように伸縮する。前記バケットシリンダ28は、作動油の供給を受けることにより、前記アーム22に対して前記バケット24を回動させるように伸縮する。
【0031】
前記旋回モータ32は、一対の右旋回ポート及び左旋回ポートを含み、当該右旋回及び左旋回ポートのうちの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(右旋回方向または左旋回方向)に前記上部旋回体12を旋回させるように動作する。
【0032】
前記右走行モータ33は、一対の右前進ポート及び右後進ポートを含み、当該右前進及び右後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記右クローラ11Rを動かすように動作する。同様に、前記左走行モータ34は、一対の左前進ポート及び左後進ポートを含み、当該左前進及び左後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記左クローラ11Lを動かすように動作する。
【0033】
前記複数の制御弁は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれの動きの制御を可能とするように開閉動作をする弁であり、図3に示される旋回制御弁36、右走行制御弁37及び左走行制御弁38を含む。
【0034】
前記旋回制御弁36は、前記ポンプユニット30と前記旋回モータ32との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記旋回モータ32に供給される作動油の方向及び流量(旋回流量)を変化させるように開閉動作する。前記旋回制御弁36は、右旋回パイロットポート及び左旋回パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記右旋回ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記左旋回ポートに当該パイロット圧の大きさに対応した流量(左旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0035】
前記右走行制御弁37は、前記ポンプユニット30と前記右走行モータ33との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記右走行モータ33に供給される作動油の方向及び流量(右走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記右走行制御弁37は、右前進パイロットポート及び右後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記右後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0036】
前記左走行制御弁38は、前記ポンプユニット30と前記左走行モータ34との間に介在し、前記ポンプユニット30から前記左走行モータ34に供給される作動油の方向及び流量(左走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記左走行制御弁38は、左前進パイロットポート及び左後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記左前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0037】
前記複数の制御弁は、その他、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28のそれぞれについて設けられる図略のブーム制御弁、アーム制御弁及びバケット制御弁を含む。
【0038】
前記操作装置は、前記油圧ショベルを動かすための操作を受けて前記コントローラ70に操作信号を入力するものであり、前記複数の制御弁にそれぞれ対応する複数の操作器を含む。前記複数の操作器のそれぞれは、前記パイロットポンプに接続されるいわゆるリモコン弁により構成され、当該リモコン弁に与えられた操作に対応したパイロット圧が対応する制御弁に与えられることを許容するように開弁する。
【0039】
前記操作装置に与えられる操作は、後に詳述する複数の警報対象操作を含む。当該複数の警報対象操作は、この実施の形態では、前記下部走行体10に対して前記上部旋回体12を旋回させるための旋回操作、並びに、前記右及び左クローラ11R,11Lをそれぞれ動かすための右走行操作及び左走行操作であり、当該右走行操作及び左走行操作は前記下部走行体10に走行動作を行わせる走行操作に相当する。
【0040】
図3は、前記複数の操作器のうち前記警報対象操作がそれぞれ与えられる旋回操作器42、右走行操作器43及び左走行操作器44を示す。
【0041】
前記旋回操作器42は、旋回レバー及びこれに連結される旋回パイロット弁を含み、前記旋回パイロット弁は、前記旋回制御弁36の前記右旋回及び左旋回パイロットポートのうち前記旋回レバーに与えられる旋回操作の方向に対応したパイロットポートに当該旋回操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。前記右走行操作器43は、右走行レバー及びこれに連結される右走行パイロット弁を含み、前記右走行パイロット弁は、前記右走行制御弁37の前記右前進及び左前進パイロットポートのうち前記右走行レバーに与えられる右走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該右走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。同様に、前記左走行操作器44は、左走行レバー及びこれに連結される左走行パイロット弁を含み、前記左走行パイロット弁は、前記左走行制御弁38の前記左前進及び左前進パイロットポートのうち前記左走行レバーに与えられる左走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該左走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。
【0042】
前記複数の操作器は、前記旋回操作器42及び前記右走行及び左走行操作器43,44の他、前記ブーム21を動かすためのブーム操作を受けて前記ブーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するブーム操作器、前記アーム22を動かすためのアーム操作を受けて前記アーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するアーム操作器、及び、前記バケット24を動かすためのバケット操作を受けて前記バケット制御弁へのパイロット圧の供給を許容するバケット操作器を含む。前記ブーム操作、前記アーム操作及び前記バケット操作は、いずれも前記作業装置14を動かすための作業操作であるが、この実施の形態では前記警報対象操作から除外されている。
【0043】
前記複数の操作弁は、前記複数の操作器のうち前記警報対象操作に対応する操作器、すなわち前記旋回操作器42、前記右走行操作器43及び前記左走行操作器44と、これらの操作器に対応する前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38のそれぞれのパイロットポートと、の間にそれぞれ介在し、前記コントローラ70による前記旋回パイロット圧及び前記右及び左走行パイロット圧の制限を可能にする。具体的に、前記複数の操作弁のそれぞれは電磁式の減圧弁により構成され、当該減圧弁は当該減圧弁に入力される制限指令に対応した度合いで前記パイロットポートに入力されるパイロット圧の制限、つまり、当該パイロット圧に対応する動作の速度の制限を行う。この実施の形態に係る前記減圧弁のそれぞれは電磁逆比例減圧弁であり、前記制限指令が大きいほど大きな度合いで前記パイロット圧を制限する。しかし、当該減圧弁は電磁比例減圧弁であってもよい。
【0044】
具体的に、前記複数の操作弁は、図3に示される右旋回操作弁46R及び左旋回操作弁46L、右前進走行操作弁47F及び右後進走行操作弁47B、並びに左前進走行操作弁48F及び左後進走行操作弁48Bを含む。
【0045】
前記右旋回操作弁46Rは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記右旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記右旋回パイロットポートに入力される右旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記右旋回操作弁46Rに入力される右旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左旋回操作弁46Lは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記左旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記左旋回パイロットポートに入力される左旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記左旋回操作弁46Lに入力される左旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0046】
前記右前進走行操作弁47Fは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右前進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右前進パイロットポートに入力される右前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右前進走行操作弁47Fに入力される右前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記右後進走行操作弁47Rは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右後進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右後進パイロットポートに入力される右後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右後進走行操作弁47Rに入力される右後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0047】
前記左前進走行操作弁48Fは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左前進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左前進パイロットポートに入力される左前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左前進走行操作弁48Fに入力される左前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左後進走行操作弁48Rは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左後進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左後進パイロットポートに入力される左後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左後進走行操作弁48Rに入力される左後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0048】
前記複数のパイロット圧センサのそれぞれは、前記操作装置に与えられる操作のうちの前記警報対象操作の大きさである対象操作量を検出する操作量検出器である。具体的に、当該複数のパイロット圧センサのそれぞれは圧力センサにより構成され、前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38のそれぞれに入力されるパイロット圧を検出して当該パイロット圧の大きさに対応した検出信号、つまり前記対象操作量に対応する検出信号、を前記コントローラ70に入力する。具体的に、前記複数のパイロット圧センサは、前記右旋回パイロット圧を検出する右旋回パイロット圧センサ52Rと、前記左旋回パイロット圧センサを検出する左旋回パイロット圧センサ52Lと、前記右前進パイロット圧を検出する右前進パイロット圧センサ53Fと、前記右後進パイロット圧を検出する右後進パイロット圧センサ53Bと、前記左前進パイロット圧を検出する左前進パイロット圧センサ54Fと、前記左後進パイロット圧を検出する左後進パイロット圧センサ54Bと、を含む。
【0049】
前記油圧回路において、前記旋回モータ32、前記旋回制御弁36及び前記右旋回及び左旋回操作弁46R,46Lは、前記ポンプユニット30とともに、前記上部旋回体12を旋回させるための旋回駆動回路を構成する。同様に、前記右走行モータ33、前記右走行制御弁37及び前記右前進及び右後進走行操作弁47F,47Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記右クローラ11Rを動かすための右走行駆動回路を構成し、前記左走行モータ34、前記左走行制御弁38及び前記左前進及び左後進走行操作弁48F,48Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記左クローラ11Lを動かすための左走行駆動回路を構成する。
【0050】
前記複数の対象物検知器は、前記油圧ショベルの特定部位にそれぞれ配置され、前記油圧ショベルの周囲に存在する検知対象物を検知するとともに、当該特定部位から前記検知対象物までの距離を含む位置情報を取得することを可能にする検知信号を生成して前記コントローラ70に入力する。前記複数の対象物検知器のそれぞれは、この実施の形態では単眼カメラ、ステレオカメラといった撮像装置により構成され、前記検知対象物を含む撮影画像を生成する。
【0051】
具体的に、この実施の形態に係る前記複数の対象物検知器は、前記上部旋回体12に配置され、図2に示される右対象物検知器60R、左対象物検知器60L及び後対象物検知器60Bを含む。前記右対象物検知器60Rは、少なくとも前記上部旋回体12の右側方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の右側部に配置され、前記左対象物検知器60Lは、少なくとも前記上部旋回体12の左側方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の左側部に配置される。同様に、前記後対象物検知器60Bは、少なくとも前記上部旋回体12の後方に位置する検知対象物を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の後端部に配置される。
【0052】
前記操作ロックセンサ61は、操作ロックレバーが操作ロック位置及び操作ロック解除位置の何れにあるのかを検知する。前記操作ロックレバーは、前記キャブ18内に設けられ、前記操作ロック位置(例えば乗降口を開通する位置)と前記操作ロック解除位置(例えば前記乗降口を閉鎖する位置)との間で切換えられることが可能である。前記操作ロックレバーが前記操作ロック位置にあるとき、前記コントローラ70は前記パイロットポンプと前記操作装置(前記複数の操作器)との間に設けられた図略の操作ロック弁を閉弁させて当該操作装置からのパイロット圧の出力を阻止することにより、前記操作装置に与えられる操作が無効とされる操作ロック状態を形成する。一方、前記操作ロックレバーが前記操作ロック解除位置にあるとき、前記コントローラ70は前記操作ロック弁を開弁させて当該操作装置からのパイロット圧の出力を許容することにより、前記操作が有効とされる操作ロック解除状態を形成する。
【0053】
前記警報装置62は、前記コントローラ70から警報指令が入力されたときにその警報指令に対応した警報を発出する。前記警報装置62は、音による警報を行うもの、例えばブザー、でもよいし、光による警報を行うもの、例えば警報ランプでもよい。この実施の形態に係る前記警報装置62は、内部警報器62A及び外部警報器62Bを含む。前記内部警報器62Aは、前記キャブ18の内部に設けられ、当該内部に向けて、つまり前記キャブ18に搭乗するオペレータに向けて、警報を発出することが可能である。前記外部警報器62Bは、前記キャブ18の外部に設けられ、当該外部に向けて、つまり、前記キャブ18の外部の作業員等に向けて、警報を発出することが可能である。
【0054】
前記表示装置64は、表示画面を有するとともに、当該表示画面がオペレータにより視認されることが可能となる位置で前記キャブ18内に配置される。前記表示装置64は、前記コントローラ70から入力される表示指令信号に対応した画像の表示を行う。
【0055】
前記コントローラ70は、前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号に基づいて前記油圧ショベルの周辺における検知対象物の存否、及び、検知対象物の位置についての情報である位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて安全制御を実行する。
【0056】
前記安全制御は、動作制限制御と、警報制御と、表示制御と、を含む。
【0057】
前記動作制限制御は、前記位置情報に基づいて前記油圧ショベルの動作のうちの制限対象動作を制限する制御である。前記制限対象動作の候補は、この実施の形態では、前記警報対象操作と対応しており、前記下部走行体10に対する前記上部旋回体12の旋回動作と、前記右クローラ11R及び前記左クローラ11Lによる走行動作と、が含まれる。当該候補には、前記作業装置14の動作、例えば前記ブーム21の起伏動作及び前記アーム22の回動動作を含まれてもよいが、この実施の形態では除外されている。
【0058】
前記警報制御は、前記検知対象物の検知と前記警報指令操作とに基づいて前記警報装置62に警報を発出させる制御であり、前記表示制御は、前記検知対象物の検知に基づいて前記表示装置64に前記検知対象物の存在を知らせる警告画像を表示させる制御である。
【0059】
前記コントローラ70は、前記安全制御を実行するために図4に示されるような複数の機能を備え、当該複数の機能は、位置情報生成部72、安全制御判定部74、旋回制限指令部76、走行制限指令部78、警報指令部82及び表示指令部84を含む。これらの機能は、例えば、前記コントローラ70に含まれるCPUが当該コントローラ70に含まれるメモリに予め格納されたプログラムを実行することにより、実現される。
【0060】
前記位置情報生成部72は、前記対象物検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号を周期的に(具体的には予め設定されたサンプリング周期が経過するごとに)取り込み、当該画像信号を処理することにより、当該対象物検知器60R,60L,60Bの撮影範囲内における検知対象物の判別と、検知対象物が存在する場合の当該検知対象物の前記上部旋回体12に対する位置の特定と、を行い、当該位置に関する情報である位置情報を生成する。すなわち、前記位置情報生成部72は、前記対象物検知器60R,60L,60Bとともに、前記検知対象物の検知及びその位置の特定を行う検知部を構成する。前記検知対象物は、少なくとも人(作業員)を含むことが好ましく、人以外の物を含んでもよい。
【0061】
前記安全制御判定部74は、前記位置情報生成部72により生成される前記位置情報に基づき、前記安全制御の実行の要否及び当該安全制御の内容を特定する。具体的に、この実施の形態に係る前記安全制御判定部74は、図2に示される基準姿勢にある前記油圧ショベルの周囲に設定された警報領域を格納し、当該警報領域は図2に示される複数の領域、すなわち右内側領域AR1、右外側領域AR2、後内側領域AB1、後外側領域AB2、左内側領域AL1及び右内側領域AL2、に区分されている。前記基準姿勢は、前記下部走行体10の前後方向(走行方向)と前記上部旋回体12の前後方向とが合致する姿勢である。前記作業装置14は前記上部旋回体12から前方に張り出すように当該上部旋回体12に支持されている。
【0062】
前記複数の領域のうち、前記右内側及び右外側領域AR1,AR2は、前記右対象物検知器60Rの検知範囲に対応して設定された領域であり、前記右内側領域AR1は前記上部旋回体12の右側面のすぐ近傍に設定され、前記右外側領域AR2は前記右内側領域AR1のすぐ外側に設定されている。同様に、前記後内側及び後外側領域AB1,AB2は、前記後対象物検知器60Bの検知範囲に対応して設定された領域であり、前記後内側領域AB1は前記上部旋回体12の後端面のすぐ近傍に設定され、前記後外側領域AB2は前記後内側領域AB1のすぐ外側に設定されている。また、前記左内側及び左外側領域AL1,AL2は、前記左対象物検知器60Lの検知範囲に対応して設定された領域であり、前記左内側領域AL1は前記上部旋回体12の後端面のすぐ近傍に設定され、前記左外側領域AL2は前記左内側領域AL1のすぐ外側に設定されている。
【0063】
前記安全制御判定部74は、前記複数の領域のうち前記検知対象物が存在する領域を判別し、その判別した領域と、前記操作装置に与えられる前記警報対象操作(この実施の形態では前記旋回操作、前記右走行操作及び前記左走行操作)と、に基づき、実行されるべき安全制御を特定する。具体的に、前記安全制御判別部74は、前記領域及び前記警報対象操作とこれらに対応する動作制限制御の内容との関係について次の表1に示すような関係を格納し、当該関係に基づいて実行されるべき動作制限制御さらには警報制御を特定する。
【0064】
【表1】
【0065】
例えば検知対象物が領域AB1内において検知された場合、前記安全制御判別部74は、実行されるべき動作制限制御として、前記後進走行動作を強制停止させ、前記右旋回動作及び前記左旋回動作についてはその速度を制限し、前記前進走行動作及び作業動作(作業装置14の動作)は制限しない制御を特定する。
【0066】
一方、前記安全制御判別部74は、前記警報制御として、検知対象物が前記複数の領域のうち停止領域または速度制限領域内に存在するとき、前記旋回操作及び前記走行操作のうちの少なくとも一方の操作の大きさである対象操作量が予め設定された許容操作量を超える場合にのみ、前記警報装置62から操作警報を発出させる制御を特定する。換言すれば、前記安全制御判別部74は、前記警報領域内に検知対象物が存在していても、前記旋回操作及び前記走行操作の何れの操作量も前記許容操作量以下である場合には、前記警報の発出を停止させる制御を特定する。当該警報制御の詳細については後述する。
【0067】
前記旋回制限指令部76は、旋回制限指令信号を生成する。前記旋回制限指令信号は、前記上部旋回体12の旋回動作を制限するための信号であり、具体的には、右旋回動作または左旋回動作の速度の制限または強制停止を行う制御が特定された場合に、当該速度(旋回速度)の制限について決定された前記制限度合いで前記速度を制限し、あるいは強制停止させるための信号である。前記旋回制限指令部76は、前記右旋回操作弁46R及び前記左旋回操作弁46Lのうち制限すべき動作に対応する操作弁(右旋回動作が制限される場合には右旋回操作弁46R)に前記旋回制限指令信号を入力する。
【0068】
前記走行制限指令部78は、走行制限指令信号を生成する。前記走行制限指令信号は、前記下部走行体10の走行動作を制限するための信号であり、具体的には、前進走行動作または後進走行動作の速度の制限または強制停止を行う制御が特定された場合に、当該速度(走行速度)の制限について決定された前記制限度合いで前記速度を制限し、あるいは強制停止させるための信号である。前記走行制限指令部78は、前記右前進走行操作弁47F、前記右後進走行操作弁47B、前記左前進走行操作弁48F及び前記左後進走行操作弁48Bのうち制限すべき前記特定動作に対応する操作弁(後進走行動作が制限される場合には右後進走行操作弁47B及び左前進走行操作弁48B)に前記走行制限指令信号を入力する。
【0069】
前記警報指令部82は、前記安全制御判定部74により特定された警報制御に対応する警報指令信号を生成し、当該警報指令信号を前記警報装置62に入力することにより当該警報装置62に警報を発出させる。当該警報の発出時期及び内容については後述する。
【0070】
前記表示指令部84は、前記安全制御判定部74により特定された表示制御に対応して表示指令信号を生成し、当該表示指令信号を前記表示装置64に入力することにより、前記警告画像を表示させる。前記警告画像は、オペレータに検知対象物の存在を知らせるための画像であり、この実施の形態では検知対象物の位置を表示する対象物表示画像である。前記対象物表示画像は、例えば、鳥瞰画像において検知対象物を含むエリアが枠により囲まれて強調表示されたものが好適である。
【0071】
次に、前記コントローラ70により行われる前記安全制御の内容を、図5図7のフローチャートを参照しながらより具体的に説明する。図5は前記安全制御のメインルーチンを示し、図6は前記安全制御のサブルーチンであって当該安全制御に含まれる動作制限制御の流れを示し、図7は前記安全制御のサブルーチンであって当該安全制御に含まれる警報制御の流れを示す。図5に示される前記メインルーチンは、予め設定されたサンプリング周期(例えば50ms)が経過する度に繰り返し実行される。
【0072】
(1)メインルーチン(図5
前記コントローラ70の前記位置情報生成部72は、前記サンプリング周期が経過する度に前記対象物検知器60R,60L,60Bから入力される画像信号を取り込んで画像処理することにより位置情報を取得する(ステップS10)。具体的に、前記位置情報生成部72は、前記画像における検知対象物の存否の判定と、当該検知対象物が存在すると判定した場合の当該検知対象物の前記上部旋回体12に対する位置についての情報の生成と、を行う。
【0073】
一方、前記コントローラ70の前記安全制御判定部74は、前記油圧ショベルが前記操作ロック解除状態にある(つまりそれぞれの操作が有効である)か否かを判定し(ステップS20)、当該操作ロック状態にある場合にのみ(ステップS30でYES)、図6に示される動作制限制御(ステップS30)、図7に示される警報制御(ステップS40)及び表示制御(ステップS50,S60)を実行する。前記操作ロック状態は、前記操作装置に前記警報対象操作が与えられても当該警報対象操作が無効とされていて前記制限対象動作が行われない状態であるので、このような状態では安全制御が実行されなくても高い安全性が維持される。そして、このような状態において前記警報制御(ステップS40)の実行を控えることによって警報の発出頻度を抑えることができる。ただし、前記ステップS30は省略されてもよい。つまり、油圧ショベルが操作ロック解除状態にあることが安全制御の実行の条件から除外されてもよい。
【0074】
前記操作ロック解除状態にある場合(ステップS20でYES)、前記コントローラ70は、前記動作制限制御(ステップS30)及び前記警報制御(ステップS40)の内容如何にかかわらず、警報領域内で検知対象物が検知されている場合(この実施の形態では図2に示される複数の領域AR1,AR2,AB1,AB2,AL1,AL2のいずれかに検知対象物が存在する場合;ステップS50でYES)に前記表示装置64に表示指令信号を入力し、当該表示装置の画面を前記対象物表示画像を表示する画面に切換えさせる(ステップS60)。このことは、前記動作制限制御(ステップS30)及び前記警報制御(ステップS40)の内容如何にかかわらず、具体的には、実際に動作制限または警報が行われているか否かにかかわらず、オペレータが検知対象物の存在を認識することを可能にする。
【0075】
なお、本発明において前記警告画像の表示は必須ではない。あるいは、前記表示装置64が検知対象物の存否にかかわらず前記油圧ショベルの鳥瞰画像(検知対象物が存在する場合にはこれを含む画像)を常に表示するものであってもよい。
【0076】
(2)動作制限制御(図6
前記コントローラ70は、前記警報領域内に検知対象物が検知されたか否か、この実施の形態では図2に示される前記複数の領域のうちのいずれかに検知対象物が存在するか否か、を判定し(ステップS31)、当該警報領域内に検知対象物が存在すると判定した場合に(ステップS31でYES)、制御フラグを初期値0から1に変更して(ステップS32)、前記複数の操作弁のうち前記検知対象物が存在する領域に対応する対象操作弁に制限指令を入力する(ステップS33)。例えば検知対象物が図2及び表1に示される領域AB1にある場合、当該領域AB1は後進操作について停止領域に該当し、右旋回操作及び左旋回操作について速度制限領域に該当するため、コントローラ70は右後進及び左後進走行操作弁47に停止指令(後進走行動作を停止させる指令)を入力するとともに、右及び左旋回操作弁46R,46Lに速度制限指令(右及び左旋回動作の速度を制限する指令)を入力する。これにより、前記後進操作が行われている場合には前記後進動作が強制的に停止され、前記右旋回操作または前記左旋回操作が行われている場合には実際の右旋回動作または左旋回動作の速度が前記右旋回操作または前記左旋回操作の操作量に対応する速度よりも低い速度に制限される。
【0077】
前記動作制限制御が実行された場合、警報時間カウント値CAに1が加算される(ステップS34)。前記警報時間カウント値CAは、前記動作制限制御が開始されてからの経過時間であって後述の警報が発出されている時間を計測するために設定された値であり、前記サンプリング周期が経過する度にインクリメントされる。
【0078】
一方、前記警報領域内に前記検知対象物が存在しないと判定した場合(ステップS31でNO)、コントローラ70は、前記制御フラグが1であるか否か、つまり現在が動作制限実行中であるか否か、を判定する(ステップS35)。制御フラグが1でない場合すなわち0である場合(ステップS35でNO)、つまりこれまでも動作制限制御が行われていない場合、コントローラ70は当該動作制限制御を行わない(つまり何れの操作弁にも制限指令を入力しない)が、制御フラグが1である場合(ステップS35でYES)、つまり、動作制限制御が既に開始されている場合、コントローラ70は、前記警報領域内での検知対象物の検知がなくなった時点(ステップS31でNO)からの経過時間を計測するための制御時間カウント値CCに1を加算し(ステップS36)、当該制御時間カウント値CCが予め設定された目標カウント値CCoに達するまでは現状の指令を維持する(ステップS37でYES、及びステップS38A)。つまり、前記コントローラ70は、前記警報領域内で検知対象物が検知されなくなっても(ステップS31でNO)、前記目標カウント値CCoに相当する所定時間が経過するまではそれまでの動作制限制御を継続する。そして、前記制御時間カウント値CCが前記目標カウント値CCoに達した時点すなわち前記所定時間が経過した時点で(ステップS37でNO)、現指令を解除して前記動作制限制御を終了し(ステップS38B)、前記制御フラグを0にリセットする(ステップS39)。
【0079】
(3)警報制御(図7
前記コントローラ70は、この実施の形態では、前記警報時間カウント値CAが予め設定された目標カウント値CAoに達しているか否かを判定し(ステップS41)、当該警報時間カウント値CAが当該目標カウント値CAoに満たない期間においてのみ(ステップS44でYES)、つまり、前記動作制限制御が開始されてから前記目標カウント値CAoに相当する警報時間が経過するまでの期間でのみ、以下の警報制御を実行する。
【0080】
前記コントローラ70は、前記警報装置62から操作警報を発出させるための前提条件として、警報対象操作である旋回操作及び走行操作のうちの少なくとも一方の操作量(対象操作量)が予め設定された許容操作量を上回っているか否かを判定する。この実施の形態では、前記コントローラ70は、前記旋回操作器42から前記旋回制御弁36に向けて出力される旋回パイロット圧Pisが前記許容操作量に相当する許容旋回パイロット圧Pisoを上回っているか否かの判定と(ステップS42)、前記右走行及び左走行操作器43,44から前記右走行及び左走行制御弁37,38に向けて出力される走行パイロット圧Pitが前記許容操作量に相当する許容走行パイロット圧Pitoを上回っているか否かの判定と(ステップS43)、を行う。
【0081】
前記旋回パイロット圧Pis及び前記走行パイロット圧Pitがそれぞれ前記許容パイロット圧Piso,Pito以下である場合(ステップS42,S43のそれぞれでNO)、コントローラ70は、前記検知対象物の存否にかかわらず警報(操作警報)の発出はさせない。このことは、当該警報の発出頻度を抑えて当該警報が高い注意喚起効果を維持することを可能にする。
【0082】
一方、前記旋回パイロット圧Pisが前記許容パイロット圧Pisoを上回り(ステップS42でYES)、あるいは前記走行パイロット圧Pitが前記許容パイロット圧Pitoを上回る場合(ステップS43でYES)、前記コントローラ70は、検知対象物の存否及び検知対象物が存在する領域の判定を行ってその判定結果に基づき発出されるべき警報を決定する(ステップS44~S47)。
【0083】
前記検知対象物が前記停止領域に存在すると判定した場合(ステップS44でYES)、前記コントローラ70は、前記警報装置62に第1の操作警報を発出させるための指令である第1操作警報指令を当該警報装置62に入力する(ステップS46)。また、前記検知対象物が前記停止領域には存在しないが速度制限領域に存在する場合には、前記警報装置62に第2の操作警報を発出させるための指令である第2操作警報指令を当該警報装置62に入力する(ステップS47)。前記停止領域及び前記速度制限領域は、前記警報対象操作のうちその操作量(対象操作量)が前記許容操作量を上回ると判定された警報対象操作に対応して停止制御及び速度制限制御がそれぞれ設定される領域であり、例えば前記許容操作量を上回ると判定された警報対象操作が後進操作の場合には前記領域AB1及び前記領域AB2がそれぞれ前記停止領域及び前記速度制限領域に該当する。
【0084】
前記第2の操作警報は、前記第1の操作警報よりも制限された警報であり、具体的には、場所、音量及び時間のうちの少なくとも一つにおいて前記第1の操作警報よりも制限された警報であることが、好ましい。このことは、オペレータまたは作業員に危険度に応じた警報が提供されることを可能にする。
【0085】
前記許容パイロット圧Piso,Pito(許容操作量に対応するパイロット圧)のそれぞれは、任意に設定されることが可能であるが、好ましくは、旋回動作及び走行動作がそれぞれ開始されるのに必要なパイロット圧の最低値より低い値であるのがよい。例えば、実際に旋回レバー及び走行レバーに与えられる操作量SLに対応する旋回パイロット圧Pis及び走行パイロット圧Pitが図8に示すような特性を有する場合において、前記パイロット圧Pis,Pitがそれぞれ図8に示される操作量SLaに対応するパイロット圧Pisa,Pitaを上回る場合にのみ実際に旋回動作及び走行動作が開始される場合、前記許容パイロット圧Piso,Pitoはそれぞれ前記パイロット圧Pisa,Pitaよりも低い値に設定されることが、好ましい。このことは、前記操作装置に前記旋回操作乃至前記走行操作が与えられかつ実際に旋回動作乃至走行動作が開始される前の時点で前記警報装置62に前記操作警報の発出を指令することを可能にし、これにより、前記操作警報の頻度を抑えながら、より安全性の高いタイミングで前記操作警報が発出されることを可能にする。
【0086】
前記警報時間カウント値CAが前記目標カウント値CAoに達した時点すなわち前記動作制限制御が開始されてから所定の警報時間が経過した時点で(ステップS41でNO)、当該警報時間カウント値CAが0にリセットされ(ステップS48)、前記第1または第2の操作警報の発出が停止される。このように操作警報の発出が停止されても、前記動作制限制御が継続されることにより、高い安全性が確保される。換言すれば、前記動作制限制御が開始されてから前記警報時間が経過するまでは当該動作制限制御に加えて前記操作警報が発出されることにより、高い安全性が確保される一方、前記警報時間が経過した後は前記操作警報を停止させることにより当該操作警報の発出時間を抑えて当該操作警報の注意喚起効果を高く保持することができる。
【0087】
ただし、前記操作警報の発出の終了時期は特に限定されない。当該操作警報は、前記警報領域における検知対象物の存在が検知されなくなるまで継続されてもよい。
【0088】
また、前記旋回及び走行パイロット圧Pis,Pitがそれぞれ前記許容パイロット圧Piso,Pito以下であるが前記警報領域内に検知対象物が存在すると判定された場合、前記コントローラ70は、操作警報(この実施の形態では前記第1及び第2の操作警報)よりも制限された検知警報を前記警報装置62に発出させるように構成されてもよい。当該制限も、場所、音量及び時間のうちの少なくとも一つにおける制限であることが好ましい。例えば、前記のように警報装置62が内部警報器62A及び外部警報器62Bを併有する場合において、前記操作警報として前記内部及び外部警報器62A,62Bの双方から前記キャブ18の内部及び外部の双方に警報を発出させ、前記検知警報として前記内部警報器62Aから前記キャブ18の内部にのみ警報を発出させるように、構成されてもよい。このことは、前記旋回操作または走行操作の操作量が前記許容操作量以下である段階では前記キャブ18内の搭乗者にのみ前記検知対象物の存在を知らせながら、前記操作量が前記許容操作量を上回った時点で前記キャブ18の外部の作業員に適正なタイミングで注意喚起をすることを、可能にする。
【0089】
また、検知対象物が前記停止領域及び前記速度制限領域の何れに存在するかにかかわらず常に同じ操作警報が発出されてもよい。例えば、前記対象操作量が前記許容操作量を上回り、かつ、検知対象物が警報領域内で検知された場合には、前記検知対象物が前記複数の領域AR1,AR2,AB1,AB2,AL1,AL2のいずれに存在する場合にも同じ操作警報が発出されてもよい。
【0090】
その他、本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0091】
(1)警報対象操作について
本発明に係る警報対象操作は、作業機械を動かすための操作の中から選出されたものであればよく、必ずしも前記旋回操作及び前記走行操作に限定されない。例えば、作業機械の種類や大きさによっては、前記旋回操作及び前記走行操作の少なくとも一方に代え、あるいはこれに加え、他の操作(例えば作業装置を動かすための作業操作)が前記警報対象操作に設定されてもよい。
【0092】
ただし、図2に示される油圧ショベルのように下部走行体及び上部旋回体を含む作業機械であって、当該上部旋回体にオペレータが搭乗可能である場合、前記警報領域は少なくとも前記上部旋回体の後方の領域を含み、前記警報対象操作は、前記旋回操作及び前記走行操作を含むことが、好ましい。このことは、前記上部旋回体に搭乗するオペレータによる視認が困難な当該上部旋回体の後部と検知対象物との接触または接近が有効に抑止されることを可能にする。
【0093】
一方、作業装置が、前記作業装置14のように上部旋回体から前方に張り出すように当該上部旋回体に支持されていてオペレータによる視認が容易である場合、当該作業装置14を動かすための前記作業操作は前記警報対象操作から除外することにより、高い安全性を保ちながら前記操作警報の発出の頻度を適正に抑えることが可能である。
【0094】
また、前記警報対象操作は、前記操作装置に与えられる操作のうち当該操作によって動かされる部位である対象部位を前記検知対象物に近づける方向の操作に限定されていてもよい。例えば、図2に示される複数の領域のうち前記上部旋回体12の後方の前記領域AB1又はAB2においてのみ検知対象物が検知されている場合、前記下部走行体10を前進させる前進走行操作は前記警報対象操作から除外されてもよい。このように危険度の少ない操作が前記警報対象操作から除外されることは、高い安全性を保ちながら前記操作警報の発出の頻度が適正に抑えられることを可能にする。
【0095】
(2)動作制限制御について
前記実施の形態に係るコントローラ70は、予め設定された複数の領域のうち検知対象物が存在する領域に基づいて動作制限制御を決定するものであるが、これに代え、作業機械について設定された基準位置から検知対象物までの距離に基づいて動作制限制御が決定されてもよい。例えば、前記距離が第1の距離以下の場合には強制停止制御が行われ、前記距離が第1の距離よりも大きく、かつ、当該第1の距離よりも大きい第2の距離以下であるときには速度制限制御が行われてもよい。この場合も、前記検知対象物に対して前記作業機械を近づける方向の操作(つまり前記距離を小さくする方向の操作)についてのみ、前記制限対象制御及び前記警報制御の少なくとも一方が実行されることが、好ましい。
【0096】
図2に示される警報領域(複数の停止または速度制限領域)は、前記油圧ショベルが前記基準姿勢にあることを前提として設定されたものであるが、当該領域は下部走行体10に対する上部旋回体12の旋回角度に応じて変更されてもよい。例えば、前記下部走行体10の走行方向に対して前記上部旋回体12の前後方向が直交する姿勢では、当該上部旋回体12の後方(前記走行方向の後側)に警報領域や走行動作制限領域が設定されてもよい。あるいは、前記基準姿勢以外の姿勢での走行が禁止されてもよい。
【0097】
また、本発明において前記動作制限制御は必須ではない。例えば、前記安全制御として前記警報制御のみが行われてもよい。この場合、前記警報領域は必ずしも複数の領域に分割される必要もない。あるいは、当該警報領域が第1の操作警報を発出するための第1の警報領域と前記第1の操作警報よりも制限された第2の操作警報を発出するための第2の警報領域とに区分されてもよい。
【0098】
(3)検知部について
本発明に係る検知部を構成する検知器は、撮像装置に限定されない。例えば、赤外線深度センサやミリ波レーダといった単なる距離センサであってもよい。また、撮像装置が適用される場合において、当該撮像装置は、単眼カメラでもよいし、三次元情報を生成することが可能な撮像装置、例えばステレオカメラであってもよい。
【0099】
(4)操作装置について
本発明に係る操作装置は、前記旋回操作器42及び前記走行操作器43,44のようなリモコン弁により構成されるもの、つまり与えられた操作に対応したパイロット圧を出力するもの、に限定されない。当該操作装置は、例えば、与えられた操作の大きさ(操作量)に対応した電気信号(操作信号)を生成して制御部に入力する電気レバー装置であってもよい。この場合も、前記操作量が予め設定された許容操作量を上回る場合にのみ操作警報の発出を実行することにより、当該操作警報の発出の頻度を抑えて当該操作警報の高い注意喚起効果を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 下部走行体
12 上部旋回体
30 ポンプユニット
32 旋回モータ
33 右走行モータ
34 左走行モータ
36 旋回制御弁
37 右走行制御弁
38 左走行制御弁
42 旋回操作器
43 右走行操作器
44 左走行操作器
46R 右旋回操作弁
46L 左旋回操作弁
47F 右前進走行操作弁
47B 右後進走行操作弁
48F 左前進走行操作弁
48B 左後進走行操作弁
60R,60L,60B 対象物検知器
61 操作ロックセンサ
62 警報装置
64 表示装置
70 コントローラ
72 位置情報生成部
74 安全制御判定部
76 旋回制限指令部
78 走行制限指令部
82 警報指令部
84 表示指令部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8