(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】飛行体管制装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20240416BHJP
B64U 20/80 20230101ALI20240416BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20240416BHJP
B63B 79/40 20200101ALI20240416BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240416BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20240416BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20240416BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20240416BHJP
B64U 101/20 20230101ALN20240416BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20240416BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64U20/80
B64U20/87
B63B79/40
H04W84/06
H04W24/02
H04W16/18
H04B7/15
B64U101:20
B64U101:31
(21)【出願番号】P 2022531851
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022796
(87)【国際公開番号】W WO2021261347
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020109729
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141519
【氏名又は名称】梶田 邦之
(72)【発明者】
【氏名】大塩 啓一
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179445(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/047335(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/080044(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/049868(WO,A1)
【文献】特開2019-091288(JP,A)
【文献】特開2019-156078(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0014817(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00 ~ 5/06
B64U 20/80 ~ 20/87
B63B 79/40
H04W 84/02 ~ 84/06
H04W 24/00 ~ 24/02
H04W 16/18
H04B 7/15 ~ 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出手段と、
前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定手段と、
前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定手段と
を有
し、
前記決定手段は、前記港湾の入口付近を航行する船舶の密集度合に応じて、前記港湾の入口付近への新たな1以上の飛行体の配置を決定する
ことを特徴とする飛行体管制装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記密集度合の変化に応じて、前記港湾の入口付近へ配置する1以上の飛行体の数を変更することを特徴とする請求項
1に記載の飛行体管制装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記港湾の入口付近へ配置した前記新たな1以上の飛行体の配置を変更することを特徴とする請求項
1に記載の飛行体管制装置。
【請求項4】
前記密集度合は、前記港湾の入口付近を撮影した画像データに基づいて算出されることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【請求項5】
前記画像データは、前記港湾の入口付近を航行する船舶のうち、前記自動航行が可能な船舶のみを含むように生成された画像データであることを特徴とする請求項
4に記載の飛行体管制装置。
【請求項6】
前記港湾の入口付近を撮影した画像データは、位置測定用飛行体によって撮影された画像データであることを特徴とする請求項
4または5に記載の飛行体管制装置。
【請求項7】
前記港湾に設置された基地局は、通信事業者によって提供される公衆5G基地局、または、5Gコアシステムと合わせて提供されるローカル5G基地局の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【請求項8】
前記1以上の飛行体は、マルチホップ通信を利用することを特徴とする請求項
1乃至7のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【請求項9】
港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出ステップと、
前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定ステップと、
前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定ステップと
を含
み、
前記決定ステップは、前記港湾の入口付近を航行する船舶の密集度合に応じて、前記港湾の入口付近への新たな1以上の飛行体の配置を決定することを含む
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体管制装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上の通信ネットワークは主に衛星通信によって提供され、自動航行船舶にも、主に衛星通信が用いられることが予想される。しかしながら、衛星通信は不安定であり、港付近のように、船の入出港制御や船同士の衝突回避、船の渋滞を回避する集中管理制御などの高度な制御が必要になる通信には不向きである。
【0003】
また、そのような高度な制御のために、地上の基地局からの電波を利用することも考えられるが、港湾の形状や周りの地形によっては、
図2A及び
図2Bに示されるように、地上の基地局の電波が届く範囲に入らない船舶も存在し得る。例えば、
図2Aのように、基地局が断崖絶壁の上に設置されているため、海上の船舶に基地局の電波が届かないケースがある。また、例えば、
図2Bのように、港の入り口が地上の基地局から離れているため、港の入り口付近に存在する船舶に基地局の電波が届かないケースがある。さらに、
図3A及び
図3Bに示されるように、港湾の形状や港湾付近の船の航行状況によって、必要になる電波範囲は変動するため、電波範囲が固定されている地上の基地局だけではカバーしきれないケースもある。例えば、
図3Aのケースでは、入出港する船舶が少ない時間帯であるため、港の入り口付近が渋滞することは少なく、港湾内をカバーする電波範囲でよい。また、例えば
図3Bのケースでは、港の入り口が狭く、渋滞が頻繁に発生することが予想されるため、入り口付近で入出港の順番制御が必要になり、港湾外部までカバーする電波範囲が必要になる。
【0004】
特許文献1には、無線端末からの電波の受信状況に応じて動的に移動基地局の配備変更を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、港湾内の船舶に電波が行き渡るまでに時間を要する。また、特許文献1の方法では、自動航行に対応していない一般船舶からの受信電波も移動基地局の配置を決定する際の基準となるため、自動航行制御が不要な船舶まで移動基地局の通信圏内となってしまう。そのため、移動基地局を余分に配置することになり、コスト増となる。
【0007】
本発明の目的は、港湾付近を航行する自動航行船舶のための飛行体管制装置、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による飛行体管制装置は、港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出手段と、前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定手段と、前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様によるプログラムは、コンピュータを、上記飛行体管制装置として機能させることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様による方法は、港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出ステップと、前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定ステップと、前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、港湾付近を航行する自動航行船舶のための飛行体管制装置、方法、及びプログラムを提供することが可能になる。なお、本発明により、当該効果の代わりに、又は当該効果とともに、他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態におけるドローン管制システムの概要を説明する図である。
【
図2A】地上の基地局の電波が自動運転船舶に届かない状況を示す図である。
【
図2B】地上の基地局の電波が自動運転船舶に届かない状況を示す図である。
【
図3A】自動運転船舶の制御に必要な電波範囲を示す図である。
【
図3B】自動運転船舶の制御に必要な電波範囲を示す図である。
【
図4】第1の実施形態におけるドローン管制システムの全体構成を示す図である。
【
図5】第1の実施形態における基地局ドローンの概略構成を示す図である。
【
図6】第1の実施形態における位置測定用ドローンの概略構成を示す図である。
【
図7】第1の実施形態におけるドローン管制塔の概略構成を示す図である。
【
図8】第1の実施形態における自動運転船舶の概略構成を示す図である。
【
図9】第1の実施形態における基地局ドローンの初期配置を示す図である。
【
図10】第1の実施形態における港湾において必要となる電波範囲を示す図である。
【
図11】第1の実施形態における基地局ドローンの初期配置を決定するためのフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態における基地局ドローンの最適配置を決定するためのフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態における基地局ドローンの最適配置を説明する図である。
【
図14】第1の実施形態における船舶密度の計算を説明する図である。
【
図15】第1の実施形態におけるコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図16】第2の実施形態におけるドローン管制装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、同様に説明されることが可能な要素については、同一の符号を付することにより重複説明が省略され得る。
【0014】
説明は、以下の順序で行われる。
1.本発明の実施形態の概要
2.第1の実施形態
2.1.システムの構成
2.2.動作例
2.3.ハードウェア構成
2.4.効果の説明
3.第2の実施形態
3.1.システムの構成
3.2.動作例
【0015】
<<1.本発明の実施形態の概要>>
まず、本発明の実施形態の概要を説明する。
【0016】
図1は、一実施形態におけるドローン管制システムの概要を説明する図である。本発明の一実施形態では、港湾付近における船舶の、移動体通信を利用した自動航行(以下、自動運転とも称する)に必要となる通信ネットワークを、基地局機能を搭載したドローン(以下、基地局ドローンと呼ぶ)を飛行させることで実現するドローン管制システム100を提供する。ドローン管制システムは、港湾付近を航行する自動運転機能を搭載したすべての船舶(以下、自動航行船舶、または自動運転船舶と呼ぶ)が基地局ドローンの通信圏内(電波範囲内)に入るように、港湾の形状や地上の公衆基地局の電波範囲、港湾付近の船舶の運航状況によって最適な基地局ドローン配置を決定し、決定した基地局ドローン配置にしたがって基地局ドローンを制御するドローン管制塔を含む。なお、ドローンは、飛行体の一例であり、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)や有人飛行体とすることもできる。したがって、ドローン管制システムは、飛行体管制システムとも称し、ドローン管制塔は、飛行体管制塔とも称する。また、港湾付近を航行する自動航行船舶とは、例えば、港湾内部の自動航行船舶、または港湾内部と港湾外部との間を航行する自動航行船舶である。
【0017】
ネットワークの提供パターンとして、地上の5G基地局から電波を中継するマルチホップ通信を利用し、既設の公衆5G基地局を利用するパターンと、5Gコアシステムと合わせて提供するローカル5Gの基地局を利用するパターンが提供され、港湾周辺の公衆5G基地局の設置状況に応じてこの2パターンのうちのいずれかまたは双方を利用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態におけるドローン管制システムは、以下のような特徴を有する。
【0019】
(a)基地局ドローンが、マルチホップ通信を利用し、地上の5G基地局からの電波を、複数のドローンを経由して港湾付近の自動運転船舶に届ける。
(b)基地局ドローンの配置はドローン管制塔により管理され、ドローン管制塔は、港湾の形状、港湾付近の船の航行状況をもとに動的に基地局ドローンの最適配置を決定し、常に港湾付近の自動運転船舶に5G電波が行き届くように、基地局ドローンの飛行を制御する。
(c)ドローン管制塔が基地局ドローンの配置を決定する際の入力情報は、自動運転船舶からの情報のみとし、一般船舶からの受信信号は対象外とすることで、最適なドローン配備数で最適配置を決定するので、余分な基地局ドローンを配置せずにすみ、コストを抑えられる。
【0020】
なお、上述した本発明の実施形態の概要は、具体的な一例を用いて説明されており、当然ながら、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0021】
<<2.第1の実施形態>>
続いて、
図4~
図14を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0022】
<2.1.システムの構成>
図4は、第1の実施形態におけるドローン管制システムの全体構成を示す。ドローン管制システム100は、基地局ドローン101、位置測定用ドローン102、ドローン管制塔103、ローカル5G基地局104、及び公衆5G基地局105を含む。以下では、ドローン管制システムを構成する各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
(1)基地局ドローン101
基地局ドローン101は、5Gなどの無線通信ネットワークの基地局機能を搭載したドローンである。基地局ドローン101は、マルチホップ通信における地上の基地局からの電波の中継局(リピーター)となって、地上の基地局からの電波を港湾付近に存在する自動運転船舶106に届ける。
【0024】
図5は、本実施形態における基地局ドローンの機能ブロック図である。
【0025】
基地局ドローン101は、気圧、風圧、及び基地局ドローン内部の故障などを検知するセンサ群501、プロペラやモータなどを含む飛行駆動部502、ドローン間距離測定部503、ドローン間距離測定用のドローン間通信部504、ドローン配置信号制御部505、5G基地局514と通信する基地局ドローン101とマルチホップ通信を行うためのマルチホップ通信用のドローン間通信部506、自動運転信号通信部507、位置測定用ドローン間のドローン間通信部508、ネクストホップルーティング部509、マルチホップ通信用のドローン間通信部510、位置情報取得部511、衛星513とGPS(Global Positioning System)を介して通信するGPS通信部512を有する。
【0026】
(2)位置測定用ドローン102
位置測定用ドローン102は、高精度カメラを搭載しており、高精度カメラを利用して港湾内および港湾付近を撮影する。さらに、位置測定用ドローン102は、撮影された画像から、自動運転船舶のみを含む画像データを抽出し、抽出された画像データをドローン管制塔103に送信する。なお、位置測定用ドローンは一例であり、カメラを搭載したUAVや有人飛行体などの位置測定用飛行体によって撮影してよい。
【0027】
図6は、本実施形態における位置測定用ドローンの機能ブロック図である。
【0028】
位置測定用ドローン102は、気圧、風圧、及び位置測定用ドローン内部の故障などを検知するセンサ群601、プロペラやモータなどを含む飛行駆動部602、ドローン間距離測定部603、他の位置測定用ドローンとのドローン間距離測定用のドローン間通信部604、ドローン配置信号制御部605、基地局ドローン用のドローン間通信部606、画像撮影部607、画像データ解析部608、位置情報取得部609、衛星613とGPSを介して通信するGPS通信部610、自動運転船舶抽出部611、基地局ドローン用のドローン間通信部612を有する。
【0029】
(3)ドローン管制塔103
ドローン管制塔103は、港湾の設計図、並びに、港湾内および港湾付近の自動運転船舶の航行状況を示す画像データをもとに、基地局ドローン101の最適配置を決定し、基地局ドローン101の飛行制御を集中管理する。また、ドローン管制塔103は、自動運転船舶の航行状況を示す画像データをもとに、位置測定用ドローン102による撮影範囲を決定し、位置測定用ドローン102の飛行制御を集中管理する。
【0030】
図7は、本実施形態におけるドローン管制塔の機能ブロック図である。
【0031】
ドローン管制塔103は、図データ解析部701、ドローン配置計算部702、位置データ抽出部703、位置データ用の5G通信部704、ドローン制御信号生成部705、ドローン制御信号用の5G通信部706、船舶運航ルート計算部707、船舶制御信号生成部708、船舶制御信号用の5G通信部709、追加ドローン制御部710、基地局ドローン通信部711を有する。ドローン管制塔103は、上述した機能部を有するドローン管制装置(または、飛行体管制装置)として実装される。
【0032】
(4)ローカル5G基地局104
ローカル5G基地局104及び5Gコアシステムによって提供されるローカル5Gネットワークは、本発明の一実施形態におけるドローン管制システムを利用するユーザ専用に提供される。ローカル5Gのネットワーク制御技術は、一般的な5G技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
尚、船舶の自動運転には高度なネットワークが必要となるため、本実施形態は5Gを前提として説明しているが、自動運転制御が4GまたはLTEでも実施可能であれば、これらのネットワークを用いてもよい。
【0034】
(5)公衆5G基地局105
公衆5G基地局105は、通信事業者より提供される5G基地局である。
【0035】
尚、船舶の自動運転には高度なネットワークが必要となるため、本実施形態では5Gを前提として説明しているが、自動運転制御が4GまたはLTEでも可能であれば、これらのネットワークを用いてもよい。
【0036】
なお、ローカル5G基地局104及び公衆5G基地局105を総称して、単に基地局または5G基地局とも称する。
【0037】
(6)自動運転船舶106
自動運転船舶106は、入出港する際、ドローン管制塔103による集中管理によって操舵され、ドローン管制塔103からの制御信号によって制御される。
【0038】
図8は、本実施形態における自動運転船舶の機能ブロック図を示す。
【0039】
自動運転船舶106は、自動運転制御部801、及び自動運転信号通信部802を有する。尚、船舶の自動運転制御技術に関しては、将来的に実現されていることを前提とする。
【0040】
次に、本発明の一実施形態における通信の用途及び当該通信のルートを説明する。
【0041】
(1)船舶制御信号
船舶制御信号は、以下のルートを経由して、ドローン管制塔103から自動運転船舶106へ送信される。
ドローン管制塔~5G基地局(公衆5Gまたはローカル5G)~基地局ドローン(マルチホップ通信)~自動運転船舶
【0042】
(2)飛行制御信号(基地局ドローン101)
基地局ドローン101用の飛行制御信号は、以下のルートを経由して、ドローン管制塔103から基地局ドローン101へ送信される。
ドローン管制塔~5G基地局(公衆5Gまたはローカル5G)~基地局ドローン(マルチホップ通信)~基地局ドローン
【0043】
(3)飛行制御信号(位置測定用ドローン102)
位置測定用ドローン102用の飛行制御信号は、以下のルートを経由して、ドローン管制塔103から位置測定用ドローン102に送信される。
ドローン管制塔~5G基地局(公衆5Gまたはローカル5G)~基地局ドローン(マルチホップ通信)~位置測定用ドローン
【0044】
(4)画像データ
位置測定用ドローン102が生成した画像データは、以下のルートを経由して、位置測定用ドローン102からドローン管制塔103へ送信される。
位置測定用ドローン~基地局ドローン(マルチホップ通信)~5G基地局(公衆5Gまたはローカル5G)~ドローン管制塔
【0045】
<2.2.動作例>
(1)基地局ドローンの初期配置
図9は、本実施形態における基地局ドローンの初期配置を示す。図示されるように、1以上の基地局ドローン101は、港湾内が地上の基地局の電波、もしくは基地局ドローン101の電波で埋め尽くされるように初期配置される。
【0046】
図11は、本実施形態における基地局ドローンを初期配置するためのフローチャートを示す。基地局ドローンの初期配置は、当該フローチャートに従って決定される。具体的なフローを以下で説明する。
【0047】
まず、S1101において、ドローン管制塔103の図データ解析部701は、港湾の設計図など、港湾の形状の入力情報となるデータを受け取る。図データ解析部701は、受け取ったデータを使用して、港湾の形状をマップ化する。図データ解析部701は、港湾の形状をマップ化したデータ(以下、港湾形状マップとも称する)を、ドローン配置計算部702に入力する。
【0048】
次いで、S1102において、ドローン配置計算部702は、港湾形状マップを用いて、
図10に示すように港湾内部、および港湾入口部分で自動運転船舶106に必要となる電波範囲を算出する。すなわち、ドローン配置計算部702は、自動運転船舶106に必要となる電波範囲を算出する算出手段として機能する。
【0049】
次いで、S1103において、ドローン配置計算部702は、地上の5G基地局の電波範囲を測定し、測定された電波範囲を港湾形状マップにマッピングする。すなわち、ドローン配置計算部702は、地上の5G基地局の電波範囲を測定する測定手段としても機能する。
【0050】
次いで、S1104において、基地局ドローン101の電波範囲が入力されると、S1105において、ドローン配置計算部702は、S1102で算出された港湾内部で必要となる電波範囲から、S1103で測定された地上の5G電波が届く範囲を除外し、その残りの部分を埋め尽くすように、
図9のように基地局ドローン101の初期配置を決定する。すなわち、ドローン配置計算部702は、港湾内の全域が5G基地局もしくは基地局ドローン101の電波範囲内に入るように、基地局ドローン101の初期配置を決定する決定手段としても機能する。ドローン配置計算部702は、基地局ドローン101の初期配置データを、ドローン制御信号生成部705に入力する。
【0051】
次いで、S1106において、ドローン制御信号生成部705は、ドローン制御信号を生成し、生成されたドローン制御信号を、当該ドローン制御信号が必要となる全ての基地局ドローン101に、5G通信部706を介して送信する。このようにして、基地局ドローン101が、
図9のように港湾内に初期配置される。
【0052】
尚、基地局ドローン101の初期配置が決定した後、港湾内で自動運転船舶106が電波を受信できず、自動運転制御が効かない場合は、該当する自動運転船舶106からエラー信号と位置情報が着港後(例えば地上の基地局の電波を拾った後)にドローン管制塔103向けに発報される。ドローン管制塔103は、そのエラー信号と位置情報とによって港湾内で電波を受信できない位置を特定し、基地局ドローン101に配備修正要求を送信する。
【0053】
(2)基地局ドローンの動的配置変更
ドローン管制塔103は、港湾付近の自動運転船舶106の航行状況に応じて、基地局ドローン101の配置を動的に変更する。具体的には
図13に示すように、基地局ドローン101の初期配置時点では電波範囲外であった港湾外部のエリアに対して、自動運転船舶106の密度(密集度合とも称する)が高い密集エリアを特定し、その密集エリアが基地局ドローン101の電波範囲内に入るように、新たな1以上の基地局ドローン101を追加する。また、密度が低くなり、基地局ドローン101の電波が不要になった場合には、当該エリアをカバーする基地局ドローン101を帰艦させる。このように、ドローン管制塔103は、自動運転船舶106の混雑状況に応じて基地局ドローン101の電波範囲を変動させる。港湾の入口付近へ配置する新たな1以上の基地局ドローン101は、港湾内部と港湾外部との間を航行する自動航行船舶が少なくとも通信可能な電波範囲を構成することができる。
【0054】
図12は、本実施形態における基地局ドローンを動的に配置変更するためのフローチャートを示す。基地局ドローンの配置は、当該フローチャートに従って変更される。具体的なフローを以下で説明する。
【0055】
まず、S1201において、位置測定用ドローン102の画像撮影部607が、港湾入口付近の画像を撮影し、画像データを画像データ解析部608に入力する。港湾入口付近には、港湾外部のエリアが含まれる。画像は、静止画であっても動画であってもよい。最初の撮影範囲は、ユーザによって予め設定された範囲とする。
【0056】
次いで、S1202において、自動運転船舶から基地局ドローンを経由して受信する位置情報要求信号をもとに、自動運転船舶抽出部611が画像データと自動運転船舶の位置情報から自動運転船舶を特定し、特定された自動運転船舶の情報を画像データ解析部608に入力する。
【0057】
次いで、S1203において、画像データ解析部608は、S1201で入力された画像データと、S1202で特定された自動運転船舶の情報をもとに、自動運転に対応していない一般の船舶を除いた、自動運転船舶の数と位置を示す画像データを生成し、生成された画像データをドローン管制塔103に送信する。
【0058】
次いで、S1204において、ドローン管制塔103のドローン配置計算部702は、受信された画像データに基づいて、
図14のように、港湾入口付近の自動運転船舶の船舶密度を計算し、算出された密度が事前に設定された閾値を超える密集エリアを特定する。
【0059】
次いで、S1205において、ドローン配置計算部702は、特定された密集エリアを前回測定時の密集エリアと比較して、密集エリアが変化したかどうか判定する。密集エリアが変化し、拡大している場合は、S1206及びS1207に進む。
【0060】
S1206において、ドローン配置計算部702は拡大した密集エリアが基地局ドローンの範囲内に入るように、基地局ドローン101を増やす。また、S1207において、ドローン管制塔103は、位置測定用ドローン102に対して、撮影範囲の拡大を要求する。
【0061】
一方、S1205において密集エリアが縮小するように変化していると判定された場合は、S1208及びS1209に進む。
【0062】
S1208において、ドローン配置計算部702は縮小した密集エリアに対する基地局ドローン101を減らす。また、S1209において、ドローン管制塔103は、位置測定用ドローン102に対して、撮影範囲の縮小を要求する。
【0063】
さらに、S1205において密集エリアが変化していないと判定された場合、S1210に進む。
【0064】
S1210において、ドローン配置計算部702は、基地局ドローン101の配置変更が必要かどうか判定する。配置変更が必要であると判定された場合は、S1211及びS1212に進む。
【0065】
S1211において、ドローン配置計算部702は、基地局ドローンの配置を変更する。また、S1212において、ドローン管制塔103は、位置測定用ドローン102に対して、撮影範囲の変更を要求する。
【0066】
一方、S1210において配置変更が必要でないと判定された場合は、処理を終了する。
【0067】
この後、ドローン制御信号生成部705は、ドローン配置計算部702が算出したドローン配置に従ってドローン制御信号を生成し、生成されたドローン制御信号が基地局ドローンに送信される。
【0068】
<2.3.ハードウェア構成>
図15は、本実施形態におけるコンピュータのハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。図示されたコンピュータは、本実施形態のドローン管制システムを構成する基地局ドローンや位置測定用ドローンが備えることができる。また、ドローン管制塔103を構成するドローン管制装置として動作し得る。
【0069】
コンピュータ1500は、CPU1501と、主記憶装置1502と、補助記憶装置1503と、インタフェース1504と、通信インタフェース1505とを備える。
【0070】
コンピュータ1500の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置1503に記憶されている。CPU1501は、そのプログラムを補助記憶装置1503から読み出して主記憶装置1502に展開し、そのプログラムに従って、本実施形態で説明した各装置の動作を実行する。
【0071】
補助記憶装置1503は、一時的でない有形の媒体の例である。一時的でない有形の媒体の他の例として、インタフェース1504を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。また、プログラムが通信回線によってコンピュータ1500に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1500がそのプログラムを主記憶装置1502に展開し、そのプログラムに従って動作してもよい。
【0072】
また、各構成要素の一部または全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等や、これらの組み合わせによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0073】
<2.4.効果の説明>
本実施形態では、地上の公衆5G基地局の電波を活用するため、港湾専用に5G基地局を設置するよりは導入コストを低減することができる。また、様々な港湾形状に対応して電波範囲が決定されるため、ネットワーク構築の専門知識が不要となる。また、船舶の航行状況に応じて動的に5G電波の範囲を変更することができ、かつ、自動運転船舶の運航をドローン管制塔で集中管理するため、より効果的に船舶の渋滞緩和や、入出港の順序制御、船舶の着港制御が可能となる。
【0074】
また、他の実施形態として、位置測定用ドローンによって撮影された撮影データをもとに、荒れた天候の際には波の高さも時刻毎に測定し、その高さの変動具合から転覆の可能性が高い船舶に対して、注意喚起をドローン管制塔から信号として送信するようにしてもよい。
【0075】
また、密集度合によって5G電波の範囲を変動させる特徴を生かし、例えば災害時に基地局ドローンが、人が密集する地帯で5G基地局電波が届かない場所を自動で検知し、5G電波を届け、遠隔医療に役立てるなどの応用が可能である。また、本発明の実施形態は、港湾に限らず、5G基地局の電波が届かない場所を含む山に囲まれた地形などにも適用可能である。
【0076】
<<3.第2の実施形態>>
続いて、
図16を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。上述した第1の実施形態は、具体的な実施形態であるが、第2の実施形態は、より一般化された実施形態である。
【0077】
<3.1.システムの構成>
図16は、第2の実施形態におけるドローン管制装置の概略構成を示す図である。本実施形態におけるドローン管制装置1600は、算出部1601、測定部1602、及び決定部1603を有する。
【0078】
算出部1601は、港湾の形状に基づいて、自動運転が可能な船舶の運航に必要な第1の電波範囲を算出する。測定部1602は、港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する。決定部1603は、第1の電波範囲のうち第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の基地局ドローンの第3の電波範囲に入るように、1以上の基地局ドローンの配置を決定する。
【0079】
上述した装置の各処理部は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、および、そのコンピュータの通信インタフェースによって実現される。例えば、CPUが、そのコンピュータのプログラム記憶装置等のプログラム記録媒体からプログラムを読み込み、そのプログラムに従って、必要に応じて通信インタフェースを用いて、上述した各装置の各処理部として動作することができる。
【0080】
<3.2.動作例>
次に、第2の実施形態における動作例について説明する。
【0081】
第2の実施形態によれば、ドローン管制装置1600(算出部1601)は、港湾の形状に基づいて、自動運転が可能な船舶の運航に必要な第1の電波範囲を算出する。ドローン管制装置1600(測定部1602)は、港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する。ドローン管制装置1600(決定部1603)は、第1の電波範囲のうち第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の基地局ドローンの第3の電波範囲に入るように、1以上の基地局ドローンの配置を決定する。
【0082】
-第1の実施形態との関係
一例として、第2の実施形態におけるドローン管制装置1600は、第1の実施形態におけるドローン管制塔103である。この場合に、第1の実施形態についての説明は、第2の実施形態にも適用され得る。
【0083】
なお、第2の実施形態は、この例に限定されない。
【0084】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は例示にすぎないということ、及び、本発明のスコープ及び精神から逸脱することなく様々な変形が可能であるということは、当業者に理解されるであろう。
【0085】
例えば、本明細書に記載されている処理は、必ずしも上述した順序に沿って時系列に実行されなくてよい。例えば、各処理は、上述した順序と異なる順序で実行されても、並列的に実行されてもよい。また、各処理の一部が実行されなくてもよく、さらなる処理が追加されてもよい。
【0086】
また、本明細書において説明したドローン管制システムの構成要素を備える装置(例えば、ドローン管制塔を構成する複数の装置(又はユニット)のうちの1つ以上の装置(又はユニット)、又は上記複数の装置(又はユニット)のうちの1つのためのモジュール)が提供されてもよい。また、上記構成要素の処理を含む方法が提供されてもよく、上記構成要素の処理をプロセッサに実行させるためのプログラムが提供されてもよい。また、当該プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な非一時的記録媒体(Non-transitory computer readable medium)が提供されてもよい。当然ながら、このような装置、モジュール、方法、プログラム、及びコンピュータに読み取り可能な非一時的記録媒体も本発明に含まれ得る。
【0087】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0088】
(付記1)
港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出手段と、
前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定手段と、
前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定手段と
を有することを特徴とする飛行体管制装置。
【0089】
(付記2)
前記決定手段は、前記港湾の入口付近を航行する船舶の密集度合に応じて、前記港湾の入口付近への新たな1以上の基地局ドローンの配置を決定することを特徴とする付記1に記載の飛行体管制装置。
【0090】
(付記3)
前記決定手段は、前記密集度合の変化に応じて、前記港湾の入口付近へ配置する1以上の飛行体の数を変更することを特徴とする付記2に記載の飛行体管制装置。
【0091】
(付記4)
前記決定手段は、前記港湾の入口付近へ配置した前記新たな1以上の飛行体の配置を変更することを特徴とする付記2に記載の飛行体管制装置。
【0092】
(付記5)
前記密集度合は、前記港湾の入口付近を撮影した画像データに基づいて算出されることを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【0093】
(付記6)
前記画像データは、前記港湾の入口付近を航行する船舶のうち、前記自動航行が可能な船舶のみを含むように生成された画像データであることを特徴とする付記5に記載の飛行体管制装置。
【0094】
(付記7)
前記港湾の入口付近を撮影した画像データは、位置測定用飛行体によって撮影された画像データであることを特徴とする付記5または6に記載の飛行体管制装置。
【0095】
(付記8)
前記港湾に設置された基地局は、通信事業者によって提供される公衆5G基地局、または、5Gコアシステムと合わせて提供されるローカル5G基地局の少なくとも一方を含むことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【0096】
(付記9)
前記1以上の飛行体は、マルチホップ通信を利用することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の飛行体管制装置。
【0097】
(付記10)
コンピュータを、付記1乃至9のいずれか1項に飛行体管制装置として機能させるためのプログラム。
【0098】
(付記11)
港湾の形状に基づいて、移動体通信を利用した自動航行が可能な船舶の航行に必要な第1の電波範囲を算出する算出ステップと、
前記港湾に設置された地上の基地局の電波が届く第2の電波範囲を測定する測定ステップと、
前記第1の電波範囲のうち前記第2の電波範囲に含まれない領域が、基地局機能を搭載した1以上の飛行体の第3の電波範囲に入るように、前記1以上の飛行体の配置を決定する決定ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【0099】
この出願は、2020年6月25日に出願された日本出願特願2020-109729を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、港湾付近を航行する自動運転船舶のための管制システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
100 ドローン管制システム
101 基地局ドローン
102 位置測定用ドローン
103 ドローン管制塔
104 ローカル5G基地局
105 公衆5G基地局
106 自動運転船舶