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特許7472991建設機械の作業制御方法、作業制御システム及び作業制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】建設機械の作業制御方法、作業制御システム及び作業制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
E02F9/22 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022545527
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026600
(87)【国際公開番号】W WO2022044601
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020144049
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉本 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-328785(JP,A)
【文献】特開2002-234700(JP,A)
【文献】特開平6-10906(JP,A)
【文献】特開2017-57644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の可動部を可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成ステップと、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御ステップと、を有し、
前記初動入力モデル生成ステップが、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定ステップと、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定ステップと、
前記第1の初動計測値と、前記第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成ステップと、
を有する作業制御方法。
【請求項2】
前記第1の初動入力値測定ステップでは、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第1の初動計測値を測定し、
前記第2の初動入力値測定ステップでは、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成ステップでは、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する制御入力算出ステップと、を有する請求項1に記載の作業制御方法。
【請求項3】
前記フィードバック制御ステップは、
前記建設機械の前記可動部の位置情報に基づき前記建設機械の現在姿勢を取得し、前記現在姿勢に対応する前記初動入力値を前記初動入力モデルを用いて算出された値で更新する初動入力更新ステップと、
前記現在姿勢と前記建設機械の目標姿勢との誤差を更新する誤差更新ステップと、
前記誤差と、前記初動入力値とを入力として、前記誤差を小さくする前記制御入力値を算出して前記建設機械に与える制御入力算出ステップと、を有する請求項1又は2に記載の作業制御方法。
【請求項4】
前記誤差更新ステップでは、前記建設機械に行わせる作業を指示する作業指示が更新された場合、前記建設機械の前記目標姿勢を含む制御パラメータを更新するパラメータ更新ステップを行う請求項3に記載の作業制御方法。
【請求項5】
前記初動入力モデル生成ステップは、前記建設機械が作業を行う稼動期間以外の期間に前記初動入力モデルを生成する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の作業制御方法。
【請求項6】
前記建設機械は、自機の姿勢を操作する操作レバーと、前記操作レバーに取り付けられたアクチュエータとを有し、
前記制御入力値に基づき前記アクチュエータを操作することで前記操作レバーを介した前記建設機械の制御を行う建設機械制御ステップを有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の作業制御方法。
【請求項7】
建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成手段と、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御手段と、を有し、
前記初動入力モデル生成手段が、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、
前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、
を行う作業制御システム。
【請求項8】
前記第1の初動入力値測定処理では、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第1の初動計測値を測定し、
前記第の初動入力値測定処理では、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成処理では、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する請求項7に記載の作業制御システム。
【請求項9】
建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成手段と、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御手段と、を有し、
前記初動入力モデル生成手段が、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、
前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、
を行う作業制御装置。
【請求項10】
前記第1の初動入力値測定処理では、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第1の初動計測値を測定し、
前記第の初動入力値測定処理では、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成処理では、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する請求項に記載の作業制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の作業制御方法、作業制御システム及び作業制御装置に関し、特に建設機械の姿勢を制御する操作レバーを有する建設機械の作業制御方法、作業制御システム及び作業制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械の無人制御が多く提案されている。例えば、特許文献1、2には建設機械の制御に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、建設機械の作業機制御装置に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の建設機械の作業機制御装置は、作業機の各腕を回転駆動するそれぞれの作業機シリンダと、各腕毎に設けられた作業機操作レバーと、該レバーからの指令信号に応じて各作業機シリンダへの圧油供給流量を制御する流量制御系とを具えた建設機械において、各作業機の望ましい操作応答特性が規定された規範モデル部と、この規範モデルの操作応答特性を設定する規範モデル設定手段と、各作業機のシリンダ速度検出手段と、シリンダ速度検出手段の検出値をフィードバック信号として用い、各作業機の操作応答特性が規範モデル部の操作応答特性に一致するよう適応制御を実行し、各作業機に対する圧油供給流量の制御指令値を補正し、この補正制御指令値によって各作業機シリンダを速度制御する適応制御手段とを具える。
【0004】
また、特許文献2には、産業車両の油圧回路における電磁弁制御装置に関する技術が開示されている。特許文献2に記載の産業車両の油圧回路における電磁弁制御装置は、CPUはバッテリと電磁弁との間に設けられたトランジスタに入力されるPWM信号のデューティ値(%)を決めるデューティ出力値Doutのフィードバック制御を行う。キーオン後最初(1回目)にティルトレバーが操作(ティルト操作)されてから所定時間(300ms)を経過した時点のデューティ出力値Doutと、そのときの目標電流値Iaimとを、それぞれ学習値Drec,Irecとして記憶する。キーオン後2回目以降のティルト操作からは前回のティルト操作で学習した学習値Drec,Irecを用いて、そのときの目標電流値Iaimに応じて計算したDout=Iaim・Drec/Irecをデューティ出力値の初期値とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-328785号公報
【文献】特開平11-171498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建設機械では、操作レバーの操作開始点とシリンダーの動作開始点との間にズレが生じる遊びが設けられている。しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、操作レバーの遊びの大きさが考慮されておらず、建設機械の無人制御の精度が十分ではない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる建設機械の作業制御方法の一態様は、建設機械の可動部を可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成ステップと、前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御ステップと、を有し、前記初動入力モデル生成ステップが、前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定ステップと、前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定ステップと、前記第1の初動計測値と、前記第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成ステップと、を有する。
【0008】
一実施の形態にかかる建設機械の作業制御システムの一態様は、建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成部と、前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御部と、を有し、前記初動入力モデル生成部が、前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、を行う。
【0009】
一実施の形態にかかる建設機械の作業制御装置の一態様は、建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成部と、前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御部と、を有し、前記初動入力モデル生成部が、前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、を行う。
【発明の効果】
【0010】
実施の形態にかかる建設機械の作業制御方法、作業方法システム及び作業制御装置によれば、操作レバーの遊びの大きさが変化しても高い精度で建設機械の姿勢制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる作業制御システムの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる作業制御システムの概略的なブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる作業制御システムの詳細なブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる作業制御システムの動作を説明するフローチャートである。
図5】実施の形態1にかかる初動入力モデル生成部の動作を説明するフローチャートである。
図6】実施の形態1にかかるフィードバック制御部の動作を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態2にかかる作業制御システムのブロック図である。
図8】実施の形態2にかかるフィードバック制御部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下で説明する建設機械の作業制御方法、作業制御システム、及び、作業制御装置は、シリンダーを用いて機械の関節を駆動する建設機械を制御する。そこで、以下の説明では、建設機械としてバックホウを例とする。また、以下の説明では、作業制御処理を行う処理ブロックがネットワークを通じて複数の箇所に分散して配置される作業制御システムについて説明するが、作業制御システムに含まれる処理ブロックを1つの装置とする作業制御装置としてもよい。また、作業制御システムにおいて行われる制御内容をもって作業制御方法と称す。これらの具体例については、後述する記載の中で詳細に説明する。
【0013】
図1に実施の形態1にかかる作業制御システム1の概略図を示す。図1に示す建設機械10は、バックホウである。建設機械10は、クローラー11、旋回台12、コックピット13、ブーム14、アーム15、バケット16を有する。クローラー11は、建設機械10を移動させるための無限軌道である。旋回台12は、コックピット13及びブーム14等が搭載されるシャシーを旋回させる。コックピット13は、建設機械10の姿勢を操作する操作レバー等が配置される操作室である。また、図示を簡略化したが、作業制御システム1では、コックピット13内に操作レバーを操作するアクチュエータ17が配置される。また、ブーム14、アーム15、及び、バケット16は、それぞれが可動部に相当し、油圧シリンダーによって稼動する。この油圧シリンダーは、コックピット13に備え付けられた操作レバーを操作することで伸縮する。なお、可動部に該当する部分は油圧シリンダー以外にも例えばモーターで駆動される部位も含まれるが、以下の説明では、可動部の例として油圧シリンダーを説明する。
【0014】
また、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10の可動部に姿勢角を検出する姿勢センサ181~184を取り付ける。図1に示す例では、姿勢センサ181が旋回台12の回転角を検出し、姿勢センサ182がブーム14の現在角度を検出し、姿勢センサ183がブーム14とアーム15の相対角度を検出し、姿勢センサ184がアーム15とバケット16の相対角度を検出する。
【0015】
そして、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10に対応して姿勢制御装置20及び作業制御装置30を設ける。姿勢制御装置20は、アクチュエータ17を動作させるための命令を与える。また、姿勢制御装置20は、姿勢センサ181~184から取得した角度の情報に基づき姿勢検出値を生成する。作業制御装置30は、建設機械10の姿勢を決定する制御入力値を姿勢制御装置20から得た情報に基づき生成する。
【0016】
実施の形態1にかかる作業制御システム1では、アクチュエータ17を介して与える建設機械10の操作レバーの変位量に応じて建設機械10のブーム14等の可動部が稼動を開始する入力値を初動入力値と称す。そして、この初動入力値を制御の基準として建設機械10の制御を実施する。また、この初動入力値は、シリンダーの特性上、シリンダーの伸縮量によって変化する。そこで、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、異なるシリンダーの伸縮状態から初動入力モデルを生成し、当該初動入力モデルを用いて建設機械10の制御開始時の姿勢ごとに初動入力値を更新する。そして、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、更新した初動入力値を建設機械10に与える入力値の最小値として補償するように建設機械制御部へのフィードバック制御入力値を算出する。以下では、実施の形態1にかかる作業制御システム1について以下で詳細に説明する。
【0017】
まず、実施の形態1にかかる作業制御システム1の処理ブロックの構成について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる作業制御システムの概略的なブロック図を示す。なお、図2では、建設機械10は作業制御システム1の制御対象のものとして示した。図2に示す例では、姿勢制御装置20に建設機械制御部21、姿勢検出部22が設けられる。作業制御装置30に初動入力モデル生成部31、フィードバック制御部32が設けられる。そして、姿勢制御装置20と作業制御装置30とを用いて建設機械10を操作する。
図2に示す例は一例であり、例えば姿勢制御装置20と作業制御装置30を1つの装置とし、建設機械10と姿勢制御装置20とを通信により接続することもできる。また、姿勢制御装置20を建設機械10と一体にとなるように設け、姿勢制御装置20と作業制御装置30とが通信により接続される形態とすることもできる。例えば、作業制御装置30をクラウドストレージに配置し、姿勢制御装置20と通信による接続することもできる。また、建設機械10は作業制御装置30による制御対象であり、姿勢制御装置20は、作業制御装置30が建設機械10を具体的に動作させるためのインタフェースとも捉えられ、その場合、作業制御装置30が作業制御システム1の主要部分と考えることが出来る。
【0018】
作業制御装置30は、初動入力モデル生成部31及びフィードバック制御部32を有する。初動入力モデル生成部31は、建設機械10の可動部(例えば、旋回台12、ブーム14、アーム15、バケット16)が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する。フィードバック制御部32は、初動入力モデルを用いて、建設機械10の姿勢に対応する初動入力値を算出し、初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定する。ここで、初動入力モデル生成部31は、第1の初動入力測定処理と、第2の初動入力測定処理と、モデル生成処理とを行う。第1の初動入力測定処理では、可動部の可動範囲中の第1の位置に可動部を制御した第1の状態において、可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する。第2の初動入力測定処理では、可動部の可動範囲中の第1の位置とは異なる第2の位置に可動部を制御した第2の状態において、可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する。モデル生成処理では、第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して建設機械10の任意の姿勢に対する初動入力値を導き出す初動入力モデルを生成する。
【0019】
続いて、実施の形態1にかかる作業制御システム1のより詳細な構成について説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかる作業制御システム1のブロック図を示す。なお、図3では、作業制御システム1の制御対象である建設機械10も説明のために示した。図3に示すように、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、姿勢制御装置20、作業制御装置30を有する。そして、姿勢制御装置20には、建設機械制御部21、姿勢検出部22が設けられる。また、作業制御装置30には、初動入力モデル生成部31、フィードバック制御部32が設けられる。
【0020】
建設機械制御部21は、フィードバック制御部32が算出するフィードバック制御入力値に基づきアクチュエータを動作させることで、建設機械10内の操作レバーを変位させる。また、建設機械制御部21は、初動入力モデル生成部31が初動入力モデルを生成する際には、初動入力モデル生成部31から制御入力値が与えられ、当該制御入力値に基づき建設機械10の操作レバーを変位させるものとする。
【0021】
姿勢検出部22は、建設機械10のアーム等の可動部に設けられたセンサ181~184から各可動部の関節角を取得して建設機械10の姿勢を表す姿勢検出値として出力する。初動入力モデル生成部31は、建設機械10の可動部を可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する。また、フィードバック制御部32は、初動入力モデルを用いて現在姿勢に対応する初動入力値を算出し、初動入力値を最小値として補償するフィードバック制御入力値を算出する。
【0022】
ここで、初動入力モデル生成部31及びフィードバック制御部32について詳細に説明する。初動入力モデル生成部31は、初動入力測定部311、モデル生成部312を有する。初動入力測定部311は、初動入力モデルを生成する際に、建設機械10の可動部を変位させるために建設機械制御部21に与える入力値を出力し、姿勢検出部22が出力する姿勢検出値に基づく可動部の可動開始状態の検出を行うことで、姿勢毎の初動入力値の測定を行う。より具体的には、初動入力測定部311は、第1の初動入力値測定ステップと、第2の初動入力値測定ステップとを実施する。
【0023】
第1の初動入力測定ステップでは、可動部の可動範囲中の第1の位置に可動部を制御した第1の状態において、可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する。第2の初動入力測定ステップでは、可動部の可動範囲中の第1の位置とは異なる第2の位置に可動部を制御した第2の状態において、可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する。この第1の初動入力測定ステップと第2の初動入力測定ステップのより具体的な動作の一例は以下のようになる。
第1の初動入力値測定ステップでは、可動部を駆動するシリンダーが伸張した第1の状態において段階的に変化する入力値を建設機械制御部21に印加して、可動部が動き始めた時点の入力値を第1の初動計測値として計測する。さらに、実施の形態1では、この第1の初動入力値測定ステップにおいて、第1の状態となったシリンダーに対してシリンダーが伸びる正の方向とシリンダーが縮む負の方向とにそれぞれ動くように入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第1の初動計測値を測定する。
【0024】
第2の初動入力値測定ステップでは、可動部を駆動するシリンダーが短縮した第2の状態において段階的に変化する入力値を建設機械制御部21に印加して、可動部が動き始めた時点の入力値を第2の初動計測値として計測する。さらに、実施の形態1では、この第2の初動入力値測定ステップにおいて、第2の状態となったシリンダーに対してシリンダーが伸びる正の方向とシリンダーが縮む負の方向とにそれぞれ動くように入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第2の初動計測値を測定する。
【0025】
モデル生成部312は、第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して建設機械10の任意の姿勢に対する初動入力値を導き出す初動入力モデルを生成するモデル生成ステップを実施する。
【0026】
フィードバック制御部32は、初動入力更新部321、誤差更新部322、制御入力算出部323を有する。初動入力更新部321は、建設機械10の可動部の位置情報(例えば、姿勢検出値)に基づき建設機械10の姿勢を取得し、姿勢に対応する初動入力値を初動入力モデルを用いて算出された値で更新する初動入力更新ステップを実施する。誤差更新部322は、現在姿勢と建設機械10の目標姿勢との誤差を更新する誤差更新ステップを実施する。制御入力算出部323は、誤差と、初動入力値とを入力として、誤差を小さくするフィードバック制御入力値を算出して建設機械10に与える制御入力算出ステップを実施する。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかる作業制御システム1の動作について説明する。そこで、図4に実施の形態1にかかる作業制御システムの動作を説明するフローチャートを示す。図4に示すように、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、運用を開始する前に、初動入力モデル生成処理を行う(ステップS1)。このステップS1では、建設機械制御部21、姿勢検出部22及び初動入力モデル生成部31を用いた初動入力モデルの生成処理を行う。また、ステップS1の初動入力モデル生成処理では、第1の初動入力測定処理、第2の初動入力測定処理及びモデル生成処理を行う。そして、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、ステップS1で生成した初動入力モデルを用いて建設機械10の運用を実施するフィードバック制御処理を運用終了まで継続する(ステップS2、S3)。つまり、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10が作業を行う稼動期間以外の期間に初動入力モデルを生成する。このように建設機械10の稼動期間以外の期間に初動入力モデルを生成することで、建設機械10を稼働中に初動入力モデルが変化せず、建設機械10を安定稼働させることができる。
【0028】
ここで、ステップS1の初動入力モデル生成処理とステップS2のフィードバック制御処理について詳細に説明する。図5に実施の形態1にかかる初動入力モデル生成部の動作を説明するフローチャートに示す。
【0029】
初動入力モデル生成部31は、まず、初動入力測定部311が初動入力値を未測定の駆動部位を選択する(ステップS11)。次いで、初動入力測定部311は、第1の初動入力測定ステップとして、ステップS12、S13の処理を行う。初動入力測定部311は、選択した駆動部位について、第1の初動入力値測定ステップの負方向の初動入力値の計測を行う(ステップS12)。より具体的には、ステップS12では、初動入力測定部311は、姿勢検出部より検出された最大姿勢(例えば、第1の状態)における負方向の初動入力値を計測する。ここで、ステップS12で計測した初動入力値を(1)式で示す。なお、以下の説明において、θupperは、第1の状態となったときの駆動部位から建設機械制御部21が検出した姿勢角である。
【数1】
【0030】
続いて、初動入力測定部311は、選択した駆動部位について、第1の初動入力値測定ステップの正方向の初動入力値の計測を行う(ステップS13)。より具体的には、ステップS13では、初動入力測定部311は、姿勢検出部より検出された最大姿勢(例えば、第1の状態)における正方向の初動入力値を計測する。ここで、ステップS13で計測した初動入力値を(2)式で示す。
【数2】
【0031】
続いて、初動入力測定部311は、第2の初動入力測定ステップとして、ステップS14、S15の処理を行う。初動入力測定部311は、選択した駆動部位について、第2の初動入力値測定ステップの負方向の初動入力値の計測を行う(ステップS14)。より具体的には、ステップS14では、初動入力測定部311は、姿勢検出部より検出された最小姿勢(例えば、第2の状態)における負方向の初動入力値を計測する。ここで、ステップS14で計測した初動入力値を(3)式で示す。なお、以下の説明において、θlowerは、第2の状態となったときの駆動部位から建設機械制御部21が検出した姿勢角である。
【数3】
【0032】
続いて、初動入力測定部311は、選択した駆動部位について、第2の初動入力値測定ステップの正方向の初動入力値の計測を行う(ステップS15)。より具体的には、ステップS15では、初動入力測定部311は、姿勢検出部より検出された最小姿勢(例えば、第2の状態)における正方向の初動入力値を計測する。ここで、ステップS15で計測した初動入力値を(4)式で示す。
【数4】
【0033】
続いて、初動入力モデル生成部31では、初動入力測定部311が取得した4つの初動入力値を用いてモデル生成部312により初動入力モデルを算出する(ステップS16)。このステップS16で生成される初動入力モデルは、例えば、シリンダーが伸びる正方向とシリンダーが縮む負方向との2つある。そこで、実施の形態1にかかる初動入力モデル生成部31において生成される初動入力モデルを(5)式及び(7)式に示す。なお、(5)式は、正方向にシリンダーを変位させる場合の初動入力モデルUmin_p(θ)を示し、(7)式は、負方向にシリンダーを変位させる場合の初動入力モデルUmin_m(θ)を示す。なお、θは姿勢検出部22において検出される駆動部位の姿勢角を示す。
【数5】
なお、(5)式のαは(6)式で表される。
【数6】
【数7】
なお、(7)式のαは(8)式で表される。
【数8】
【0034】
初動入力モデル生成部31は、建設機械10の全ての駆動部位についてステップS11~S16の処理を繰り返す。そして、初動入力モデル生成部31は、建設機械10の全ての駆動部位についての初動入力モデルを生成したことに応じて初動入力モデル生成処理を終了する。なお、初動入力モデル生成部31のモデル生成部312は、生成した初動入力モデルにより初動入力更新部321に保持されている初動入力モデルを更新する。
【0035】
続いて、フィードバック制御部32により実施するフィードバック制御処理について説明する。図6に実施の形態1にかかるフィードバック制御部32の動作を説明するフローチャートを示す。
【0036】
図6に示すように、フィードバック制御部32は、まず、初動入力更新部321を用いて姿勢検出部22から建設機械10の制御対象部位の姿勢検出値を取得し、建設機械10の現在姿勢θを把握する(ステップS21)。次いで、初動入力更新部321は、保持している初動入力モデルを用いて現在姿勢θに対する初動入力値を更新する(ステップS22)。
【0037】
次いで、誤差更新部322が現在姿勢θと目標姿勢の誤差を更新する(ステップS23)。その後、制御入力算出部323が、現在姿勢θに対するフィードバック制御入力値を算出すし(ステップS24)、算出したフィードバック制御入力値を建設機械制御部21に与える(ステップS25)。なお、フィードバック制御部32は、ステップS23~S25の処理を繰り返しながら建設機械10の姿勢が目標姿勢となるまで制御する。
【0038】
ここで、ステップS24のフィードバック制御入力値の算出方法について詳細に説明する。まず、フィードバック制御入力値をuとすると、フィードバック制御入力値uは、(9)式で表される。なお、以下の式において、θは現在姿勢、θrは目標姿勢、Umaxは入力最大値、Umin(θ)は初動入力値(ただし、姿勢方向は省略した)、Emaxは目標姿勢と現在姿勢の誤差に対する減速開始位置、Eminは目標姿勢に対する収束判定閾値である。
【数9】
なお、Kpは(10)式で表される。
【数10】
また、eは(11)式で表される。
【数11】
【0039】
上記(9)式によれば、フィードバック制御入力値は、最小値を初動入力値Umin(θ)とする値であることがわかる。つまり、制御入力算出部323は、制御開始時の建設機械10の姿勢毎に算出された初動入力値を最小値として補償したフィードバック制御入力値を算出することがわかる。
【0040】
上記説明より、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10の駆動部位について、異なる変位量となる第1の状態と第2の状態とし、第1の状態と第2の状態のそれぞれについて初動入力値を測定する。そして、作業制御システム1は、測定した初動入力値を用いて任意の姿勢に対して適切な初動入力値を算出可能な初動入力モデルを生成する。作業制御システム1は、初動入力モデル生成部31が生成した初動入力モデルを用いて現在姿勢に最適な初動入力値を算出し、この初動入力値を最低値として補償するフィードバック制御入力値を初動入力モデル生成部31が算出する。
【0041】
これにより、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、操作レバーの遊び量が建設機械10の姿勢毎に異なるものであっても、高い精度で建設機械10を制御可能なフィードバック制御入力値により建設機械10を制御することができる。
【0042】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる作業制御システム1の別の形態となる作業制御システム2について説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
図7に実施の形態2にかかる作業制御システム2のブロック図を示す。図7に示すように、実施の形態2にかかる作業制御システム2は、実施の形態1にかかる作業制御システム1に作業指示部41を追加したものである。また、実施の形態2にかかる作業制御システム2は、実施の形態1にかかる作業制御システム1のフィードバック制御部32をフィードバック制御部42に置き換えたものである。フィードバック制御部42は、誤差更新部322を誤差更新部422に置き換えたものである。誤差更新部422は、誤差更新部322にパラメータ更新部422aを追加したものである。
【0044】
作業指示部41は、建設機械10を用いて行う作業の内容に関する情報をフィードバック制御部42に与える。フィードバック制御部42の誤差更新部422は、作業指示部41から与えられた指示に基づき建設機械10に行わせる作業を指示する作業指示が更新されたことを認識した場合には、パラメータ更新部422aにより建設機械10の目標姿勢を含む制御パラメータを更新するパラメータ更新ステップを行う。なお、制御パラメータには、(10)式に含まれる最大入力量Umax及び減速開始閾値Emaxが含まれるものとする。
【0045】
続いて、実施の形態2にかかるフィードバック制御部42を用いたフィードバック制御処理について詳細に説明する。そこで、図8に実施の形態2にかかるフィードバック制御部42の動作を説明するフローチャートを示す。なお、図8に示したフローチャートの説明では、図6で示した実施の形態1にかかる作業制御システム1のフローチャートと異なるステップS31、S32について説明する。
【0046】
図8に示すように、実施の形態2にかかるフィードバック制御部42の動作では、実施の形態1にかかるフィードバック制御部32の動作に対してステップS31、S32の動作が追加される。ステップS31、S32の処理は、ステップS22とステップS23の間で行われる。ステップS31では、作業指示部41が作業内容を更新したか否かを判断する。そして、ステップS31において、作業内容が更新されたと判断した場合、誤差更新部422は、パラメータ更新部422aを用いて現在の作業内容に応じた目標姿勢、入力最大量及び減速開始閾値を含む制御パラメータを更新する。そして、実施の形態2にかかる作業制御システム2では、ステップS32において更新された目標姿勢、入力最大量及び減速開始閾値に基づき現在姿勢との誤差の算出(ステップS24)及びフィードバック制御入力値の算出(ステップS25)を行う。
【0047】
上記説明より、実施の形態2にかかる作業制御システム2によれば、作業指示部41により作業内容を更新することを誤差更新部422に指示することで、建設機械10に様々な作業を行わせながら、実施の形態1にかかる作業制御システム1と同様の高精度の制御を行うことができる。例えば、掘削作業では、バケット16が土砂を持ち上げるためにバケット16を閉じるための力がバケット16が空の状態よりも必要になる。そのため、掘削作業においては、バケット16に与えるトルクが高くなるような制御パラメータを採用する。また、別の例としては、土砂をトラックに降ろす際には、トラックとバケット16の衝突を回避するために高い位置精度で制御を行う必要がある。そのため、トラックへの土砂積載作業においては位置精度を高める制御パラメータを採用する。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0049】
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理(例えば、図4~6、8で説明した処理)を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。 また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0050】
この出願は、2020年8月28日に出願された日本出願特願2020-144049を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0051】
また、上記実施の形態は以下の観点を含む。
(付記1)
建設機械の可動部を可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成ステップと、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御ステップと、を有し、
前記初動入力モデル生成ステップが、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定ステップと、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定ステップと、
前記第1の初動計測値と、前記第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成ステップと、
を有する作業制御方法。
(付記2)
前記第1の初動入力値測定ステップでは、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第1の初動計測値を測定し、
前記第2の初動入力値測定ステップでは、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成ステップでは、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する制御入力算出ステップと、を有する付記1に記載の作業制御方法。
(付記3)
前記フィードバック制御ステップは、
前記建設機械の前記可動部の位置情報に基づき前記建設機械の現在姿勢を取得し、前記現在姿勢に対応する前記初動入力値を前記初動入力モデルを用いて算出された値で更新する初動入力更新ステップと、
前記現在姿勢と前記建設機械の目標姿勢との誤差を更新する誤差更新ステップと、
前記誤差と、前記初動入力値とを入力として、前記誤差を小さくする前記制御入力値を算出して前記建設機械に与える制御入力算出ステップと、を有する付記1又は2に記載の作業制御方法。
(付記4)
前記誤差更新ステップでは、前記建設機械に行わせる作業を指示する作業指示が更新された場合、前記建設機械の前記目標姿勢を含む制御パラメータを更新するパラメータ更新ステップを行う付記3に記載の作業制御方法。
(付記5)
前記初動入力モデル生成ステップは、前記建設機械が作業を行う稼動期間以外の期間に前記初動入力モデルを生成する付記1乃至4のいずれか1項に記載の作業制御方法。
(付記6)
前記建設機械は、自機の姿勢を操作する操作レバーと、前記操作レバーに取り付けられたアクチュエータとを有し、
前記制御入力値に基づき前記アクチュエータを操作することで前記操作レバーを介した前記建設機械の制御を行う建設機械制御ステップを有する付記1乃至5のいずれか1項に記載の作業制御方法。
(付記7)
建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成手段と、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御手段と、を有し、
前記初動入力モデル生成手段が、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、
前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、
を行う作業制御システム。
(付記8)
前記第1の初動入力値測定処理では、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第1の初動計測値を測定し、
前記第の初動入力値測定処理では、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成処理では、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する付記7に記載の作業制御システム。
(付記9)
前記フィードバック制御手段は、
前記建設機械の前記可動部の位置情報に基づき前記建設機械の現在姿勢を取得し、前記現在姿勢に対応する前記初動入力値を前記初動入力モデルを用いて算出された値で更新する初動入力更新手段と、
前記現在姿勢と前記建設機械の目標姿勢との誤差を更新する誤差更新手段と、
前記誤差と、前記初動入力値とを入力として、前記誤差を小さくする制御入力値を算出して前記建設機械に与える制御入力算出手段と、を有する付記7又は8に記載の作業制御システム。
(付記10)
前記誤差更新手段は、前記建設機械に行わせる作業を指示する作業指示が更新された場合、前記建設機械の前記目標姿勢を含む制御パラメータを更新するパラメータ更新手段を有する付記9に記載の作業制御システム。
(付記11)
前記初動入力モデル生成手段は、前記建設機械が作業を行う稼動期間以外の期間に前記初動入力モデルを生成する付記7乃至10のいずれか1項に記載の作業制御システム。
(付記12)
前記建設機械は、自機の姿勢を操作する操作レバーと、前記操作レバーに取り付けられたアクチュエータとを有し、
前記制御入力値に基づき前記アクチュエータを操作することで前記操作レバーを介した前記建設機械の制御を行う建設機械制御手段を有する付記7乃至11のいずれか1項に記載の作業制御システム。
(付記13)
建設機械の可動部が可動し始める初動入力値を算出する初動入力モデルを生成する初動入力モデル生成手段と、
前記初動入力モデルを用いて、前記建設機械の姿勢に対応する前記初動入力値を算出し、前記初動入力値以上の値を有する制御入力値を特定するフィードバック制御手段と、を有し、
前記初動入力モデル生成手段が、
前記可動部の可動範囲中の第1の位置に前記可動部を制御した第1の状態において、前記可動部が動き始める第1の初動計測値を計測する第1の初動入力値測定処理と、
前記可動部の可動範囲中の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記可動部を制御した第2の状態において、前記可動部が動き始める第2の初動計測値を計測する第2の初動入力値測定処理と、
前記第1の初動計測値と、第2の初動計測値の間を補完して前記建設機械の任意の姿勢に対する前記初動入力値を導き出す前記初動入力モデルを生成するモデル生成処理と、
を行う作業制御装置。
(付記14)
前記第1の初動入力値測定処理では、前記第1の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて第1の初動計測値を測定し、
前記第の初動入力値測定処理では、前記第2の状態となった前記可動部に対して前記可動部の正の方向と前記可動部の負の方向とにそれぞれ動くように前記建設機械に入力値を与えて正方向と負方向とのそれぞれについて前記第2の初動計測値を測定し、
前記モデル生成処理では、正方向の前記第1の初動計測値と、負方向の前記第1の初動計測値と、正方向の前記第2の初動計測値と、負方向の前記第2の初動計測値と、を用いて前記初動入力モデルを生成する付記13に記載の作業制御装置。
(付記15)
前記フィードバック制御手段は、
前記建設機械の前記可動部の位置情報に基づき前記建設機械の現在姿勢を取得し、前記現在姿勢に対応する前記初動入力値を前記初動入力モデルを用いて算出された値で更新する初動入力更新手段と、
前記現在姿勢と前記建設機械の目標姿勢との誤差を更新する誤差更新手段と、
前記誤差と、前記初動入力値とを入力として、前記誤差を小さくする前記制御入力値を算出して前記建設機械に与える制御入力算出手段と、を有する付記13又は14に記載の作業制御装置。
(付記16)
前記誤差更新手段は、前記建設機械に行わせる作業を指示する作業指示が更新された場合、前記建設機械の前記目標姿勢を含む制御パラメータを更新するパラメータ更新手段を有する付記15に記載の作業制御装置。
(付記17)
前記初動入力モデル生成手段は、前記建設機械が作業を行う稼動期間以外の期間に前記初動入力モデルを生成する付記13乃至16のいずれか1項に記載の作業制御装置。
(付記18)
前記建設機械は、自機の姿勢を操作する操作レバーと、前記操作レバーに取り付けられたアクチュエータとを有し、
前記制御入力値に基づき前記アクチュエータを操作することで前記操作レバーを介した前記建設機械の制御を行う建設機械制御手段を有する付記13乃至17のいずれか1項に記載の作業制御装置。
【符号の説明】
【0052】
1 作業制御システム
2 作業制御システム
10 建設機械
11 クローラー
12 旋回台
13 コックピット
14 ブーム
15 アーム
16 バケット
17 アクチュエータ
181 姿勢センサ
182 姿勢センサ
183 姿勢センサ
184 姿勢センサ
20 姿勢制御装置
21 建設機械制御部
22 姿勢検出部
30 作業制御装置
31 初動入力モデル生成部
311 初動入力測定部
312 モデル生成部
32 フィードバック制御部
321 初動入力更新部
322 誤差更新部
323 制御入力算出部
41 作業指示部
42 フィードバック制御部
422 誤差更新部
422a パラメータ更新部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8