(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
F04D29/58 S
(21)【出願番号】P 2022546282
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031399
(87)【国際公開番号】W WO2022050174
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020148131
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】中山 隼
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕司
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0006997(US,A1)
【文献】国際公開第98/030790(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0158714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F02B 39/00
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、
前記インペラを収容し、且つ前記気体の吸引口を備えたハウジングと、
前記ハウジングに設けられたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに設けられ、且つ前記吸引口を通過する前記気体との間で熱交換可能に配置されている放熱フィンと、
前記電動モータの駆動を制御すると共に、前記ヒートシンクに接続されているインバータと、を備え
、
前記ヒートシンクは、前記吸引口を形成する管路部と、前記管路部の外方に張り出したフランジ部と、を備え、
前記インバータは、前記フランジ部に当接して前記ヒートシンクに接続されている、回転機械。
【請求項2】
前記インバータは環状であり、前記吸引口を取り囲むように配置されている請求項1記載の回転機械。
【請求項3】
前記放熱フィンは、前記吸引口の内周面から突出され、前記気体の流路上に配置されている、請求項1または2記載の回転機械。
【請求項4】
前記放熱フィンは、前記インペラの回転軸線に沿った方向に延在している請求項3記載の回転機械。
【請求項5】
前記放熱フィンは、前記内周面から突出した高さよりも、前記回転軸線に沿った方向の長さの方が長い、請求項4記載の回転機械。
【請求項6】
電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、
前記インペラを収容し、且つ前記気体の吸引口を備えたハウジングと、
前記ハウジングに設けられたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに設けられ、且つ前記吸引口を通過する前記気体との間で熱交換可能に配置されている放熱フィンと、
前記電動モータの駆動を制御すると共に、前記ヒートシンクに接続されているインバータと、を備え、
前記ヒートシンクは、前記吸引口を形成する管路部と、前記管路部の外方に張り出したフランジ部と、を備え、
前記インバータは環状であり、前記フランジ部に当接して前記ヒートシンクに接続されてい
る、回転機械。
【請求項7】
前記インバータは、前記管路部の外周面に当接して前記ヒートシンクに接続されており、
前記放熱フィンは、前記管路部の内周面から突出している、請求項1~6のいずれか一項記載の回転機械。
【請求項8】
前記放熱フィンは、前記インペラの回転軸線回りの周方向で等間隔に配置されている、請求項7記載の回転機械。
【請求項9】
電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、
前記インペラを収容し、且つ前記気体の吸引口を備えたハウジングと、
前記ハウジングに設けられたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに設けられ、且つ前記吸引口を通過する前記気体との間で熱交換可能に配置されている放熱フィンと、
前記電動モータの駆動を制御すると共に、前記ヒートシンクに接続されているインバータと、を備え、
前記ヒートシンクは、前記吸引口を形成する内管部と、前記内管部の外側に設けられた外管部と、を備え、
前記放熱フィンは、前記内管部と前記外管部との間に配置され、且つ前記内管部に熱交換可能に接続されてい
る、回転機械。
【請求項10】
電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、
前記インペラを収容するインペラケーシングと、
前記インペラケーシングに接続されて前記気体の吸引口を形成する管路部と、
前記管路部に当接しており、前記電動モータの駆動を制御するインバータと、
前記管路部の内周面から突出され、前記気体の流路上に配置されている放熱フィンと、
前記管路部の外方に張り出したフランジ部と、を備え、
前記インバータは、前記フランジ部に当接している、回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンからの排ガスによってタービンインペラが回転され、回転軸を介してタービンと同軸に設けられたコンプレッサインペラが回転して圧縮空気をエンジンに供給する遠心圧縮機が開示されている。特許文献2及び3には、電動モータの駆動により、コンプレッサインペラが回転する回転機械が開示されている。特許文献4には、電動モータの駆動によって圧縮機構が冷媒を圧縮する圧縮機が開示されている。特許文献5には、電動モータの駆動によってコンプレッサインペラが回転する遠心圧縮機が開示されている。特許文献6には、シャフトを回転させる電動機が開示されている。特許文献7には、電動送風機が開示されている。特許文献8には、インバータ一体型交流電動モータが開示されている。これらの従来技術のうち、例えば、特許文献2、3には、コンプレッサインペラを回転させる電動モータを駆動制御するインバータが開示されている。インバータは、電動モータを駆動制御する際に熱を帯びるので適宜に冷却が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/102146号
【文献】特開2012-62777号公報
【文献】特開2013-176193号公報
【文献】特開2008-57426号公報
【文献】特開2013-24057号公報
【文献】特開2013-188105号公報
【文献】特開1991-111700号公報
【文献】特開2004-274992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータは、例えば、電動モータを収容するハウジングなどに設置されている。ハウジングには、電動モータやインバータを冷却するための冷媒が通過する通路や配管が設けられている。この冷媒によってインバータを適切に冷却するためには、冷媒が通過する通路や配管の構造が複雑になり易く、また、通路や配管を形成するための構造的な制限もあってスペースの有効利用を図り難かった。
【0005】
本開示は、インバータを冷却しながら、スペースの有効利用も可能になる回転機械を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電動モータと、電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、インペラを収容し、且つ気体の吸引口を備えたハウジングと、ハウジングに設けられたヒートシンクと、ヒートシンクに設けられ、且つ吸引口を通過する気体との間で熱交換可能に配置されている放熱フィンと、電動モータの駆動を制御すると共に、ヒートシンクに接続されているインバータと、を備えた回転機械である。
【0007】
また、本開示の一態様は、電動モータと、電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、インペラを収容するインペラケーシングと、インペラケーシングに接続されて気体の吸引口を形成する管路部と、管路部に当接しており、電動モータの駆動を制御するインバータと、管路部の内周面から突出され、気体の流路上に配置されている放熱フィンと、を備えた回転機械である。
【発明の効果】
【0008】
本開示のいくつかの態様によれば、インバータを冷却しながら、スペースの有効利用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る回転機械を示す模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、コンプレッサを拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、吸引口を通過する空気の流れを示す模式的な断面図であり、(a)の図は放熱フィンを備えた形態であり、(b)の図は放熱フィンを備えていない比較形態である。
【
図5】
図5は、流量と圧力比との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るコンプレッサ部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一例は、電動モータと、電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、インペラを収容し、且つ気体の吸引口を備えたハウジングと、ハウジングに設けられたヒートシンクと、ヒートシンクに設けられ、且つ吸引口を通過する気体との間で熱交換可能に配置されている放熱フィンと、電動モータの駆動を制御すると共に、ヒートシンクに接続されているインバータと、を備えた回転機械である。
【0011】
本開示の一例は、ヒートシンクを介して放熱フィンに熱的に接続されているインバータを備えている。放熱フィンは、吸引口を通過する気体との間で熱交換可能に配置されている。つまり、インペラの回転によって吸引口から吸い込まれる気体を利用してインバータの冷却が可能になる。その結果、インバータ用の冷却流路を縮小しても、インバータの冷却が可能になる。また、吸引口を通過する気体の流量によってはインバータ用の冷却流路の省略も可能になる。つまり、インバータ用の冷却流路を形成するためのスペースを軽減でき、スペースの有効利用も可能になる。
【0012】
いくつかの例において、インバータは環状であり、吸引口を取り囲むように配置されていてもよい。環状のインバータは吸引口を取り囲むため、インバータの周方向で冷却効果に偏りが生じ難く、インバータの周方向でインバータを均一に冷却できる。
【0013】
いくつかの例において、放熱フィンは、吸引口の内周面から突出され、気体の流路上に配置されていてもよい。放熱フィンは、吸引口の内周面から突出しているので、吸引口を通過する気体に直接接して熱を奪われる。その結果、インバータの冷却効率を向上できる。
【0014】
いくつかの例において、放熱フィンは、インペラの回転軸線に沿った方向に延在していてもよい。吸引口を通過する気体は、吸引口の内周面付近で流れが乱れ易い。一方、この回転機械では、放熱フィンによって流れがインペラの回転軸線方向に整えられるので、整流を得易くなり、サージマージンを向上できる。
【0015】
いくつかの例において、放熱フィンは、内周面から突出した高さよりも、回転軸線に沿った方向の長さの方が長くてもよい。その結果、吸引口を通過する気体の圧損軽減とインバータの冷却効率の向上とを両立できる。
【0016】
いくつかの例において、ヒートシンクは、吸引口を形成する管路部と、管路部の外方に張り出したフランジ部と、を備えていてもよい。また、インバータは環状であり、フランジ部に当接してヒートシンクに接続されていてもよい。インバータは、フランジ部を介して吸引口を取り囲むように配置されることになるため、周方向で偏りなく、均一に冷却される。
【0017】
いくつかの例において、ヒートシンクは、吸引口を形成する管路部を備え、インバータは、管路部の外周面に当接してヒートシンクに接続されており、放熱フィンは、管路部の内周面から突出していてもよい。
【0018】
いくつかの例において、放熱フィンは、インペラの回転軸線回りの周方向で等間隔に配置されていてもよい。
【0019】
いくつかの例において、ヒートシンクは、吸引口を形成する内管部と、内管部の外側に設けられた外管部と、を備え、放熱フィンは、内管部と外管部との間に配置され、且つ内管部に熱交換可能に接続されていてもよい。
【0020】
本開示の一例は、電動モータと、電動モータの駆動によって回転すると共に、気体を吸い込んで圧縮するインペラと、インペラを収容するインペラケーシングと、インペラケーシングに接続されて気体の吸引口を形成する管路部と、管路部に当接しており、電動モータの駆動を制御するインバータと、管路部の内周面から突出され、気体の流路上に配置されている放熱フィンと、を備えた回転機械である。
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本開示における回転機械1の一例を示している。具体的には電動アシスト型のターボチャージャーである。本開示の回転機械1は、排気ガスの流れを受けて回転するタービン2と、タービン2の回転力を伝達する回転軸3と、タービン2の回転力で空気A(気体の一例)を取り込んで圧縮するコンプレッサ4とを備えている。また、回転機械1はタービン2とコンプレッサ4との間に電動モータ5を配置している。電動モータ5は、インバータ6により、駆動を制御されている。
【0023】
電動モータ5は、モータハウジング50内に収容されている。モータハウジング50の一方の端部、つまり、回転軸3に沿った方向の一方の側面にはタービンハウジング21が固定されている。タービンハウジング21内には、回転軸3に回転力を伝達するタービンインペラ22が配置されている。モータハウジング50の他方の端部、つまり、回転軸3に沿った方向の他方の側面にはコンプレッサハウジング41が固定されている。コンプレッサハウジング41内には、回転軸3の回転力で回転するコンプレッサインペラ42が配置されている。
【0024】
電動モータ5は、回転軸3に固定されたロータ51と、ロータ51を囲むように配置されたステータ52と、を備えている。ステータ52は、モータハウジング50に固定されたコアと、コアに巻回されたコイル52aとを備えている。コイル52aはインバータ6に通電可能に接続されている。電動モータ5は、インバータ6によって電力の周波数制御が行われることにより、回転速度が制御されている。
【0025】
モータハウジング50には、回転軸3を回転自在に支持する第1の軸受53及び第2の軸受54が設けられている。第1の軸受53は、電動モータ5とコンプレッサハウジング41との間に配置されている。第2の軸受54は、電動モータ5とタービンハウジング21との間に配置されている。また、モータハウジング50には、電動モータ5を冷却するための冷却流路55が形成されている。冷却流路55は、ステータ52の周りを周回するように設けられている。冷却流路55には熱交換器7で冷却された冷媒が導入される。例えば、水冷式の場合、冷媒として水などの液体を使用できる。
【0026】
図2に示されるように、コンプレッサハウジング41には、タービン2の作用及び電動モータ5の駆動によって回転するコンプレッサインペラ42が収容されている。コンプレッサインペラ42は、回転することによって空気Aを吸い込んで圧縮する。コンプレッサハウジング41は、コンプレッサインペラ42を収容するインペラケーシング8と、吸引口10を形成する管状のヒートシンク9とを備えている。
【0027】
インペラケーシング8には、昇圧のためのディフューザ81が設けられている。ディフューザ81は、コンプレッサインペラ42の周りに設けられている。更に、インペラケーシング8には、ディフューザ81に連通するスクロール82及び排出口83が形成されている。排出口83は、スクロール82に連通している。スクロール82を通過した圧縮空気Ax(圧縮気体)は、排出口83から排出される。また、インペラケーシング8は、ヒートシンク9に接続する端部(入口部)を備えている。インペラケーシング8は、その端部において外方に張り出したフランジ状の接続部84を備えている。インペラケーシング8の内部流路85は、入口部に向けて内径がテーパ状に拡径している。
【0028】
ヒートシンク9は、インペラケーシング8に接続されて空気Aの吸引口10を形成する管路部91と、管路部91の外方に張り出したフランジ部92とを備えている。ヒートシンク9は、インペラケーシング8の接続部84にフランジ部92を当接されて固定されている。なお、インペラケーシング8とヒートシンク9との接続態様は他の形態であってもよく、また、インペラケーシング8とヒートシンク9とを一体成形したり、または、溶接等によって一体化させたりしてもよい。
【0029】
管路部91の内周面91aは、吸引口10の内周面に相当する。管路部91には、内周面91aから中心(回転軸線Lx)に向けて突出している複数の放熱フィン11が設けられている。つまり、放熱フィン11は、空気Aが通過する流路C上に配置されている。その結果、放熱フィン11は、吸引口10を通過する空気Aとの間で熱交換可能に配置されている。本開示における複数の放熱フィン11は、回転軸線Lx回りの周方向Cd(
図3参照)で等間隔に配置されている。放熱フィン11は、矩形の板状であり、回転軸線Lxに沿った方向に延在している。放熱フィン11は、管路部91の内周面91aから突出した高さHよりも、回転軸線Lxに沿った方向の長さLの方が長くなっている。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、ヒートシンク9のフランジ部92にはインバータ6が固定(接続)されている。つまり、インバータ6はヒートシンク9に対して熱的に接続されている。なお、熱的に接続されているとは、熱交換可能な接続を意味し、物理的に直接接触している態様のみならず、伝熱グリスなどの熱伝導材料を介在させて間接的に接続されている態様も含まれる。また、間接的に接続されている態様とは、空気層が介在する状態の熱抵抗よりも、熱抵抗が小さくなる状態と定義することもできる。
【0031】
また、インバータ6は、円環状(ドーナツ状)であり、回転軸線Lxに沿った方向から見た場合に吸引口10を取り囲むように配置されている。インバータ6の基板61の表面は、フランジ部92に当接して熱的に接続されている。インバータ6の内周縁6aは、管路部91の外周面91bに当接して熱的に接続されている。
【0032】
インバータ6の基板61上には、IGBT、バイポーラトランジスタ、MOSFET、またはGTOなどのデバイス62や、Capacitorなどの蓄電装置63が実装されている。インバータ6から引き出された引き出し線は、電動モータ5(ステータ52)のコイル52aに接続されている。
【0033】
次に、本開示の回転機械1の作用、効果を説明する。インバータ6は、ヒートシンク9を介して放熱フィン11に接続されている。放熱フィン11は、吸引口10を通過する空気Aとの間で熱交換可能に配置されている。つまり、回転機械1は、コンプレッサインペラ42の回転によって吸引口10から吸い込まれる空気Aを利用してインバータ6を冷却可能である。その結果、本開示の回転機械1では、インバータ6用の冷却流路を設けることなく、インバータ6の効果的な冷却が可能になる。例えば、空気Aを利用することで、インバータ6は夏場でも40℃未満に冷却できる。
【0034】
また、コンプレッサインペラ42を高負荷運転させると、インバータ6の温度も上昇し易い。しかしながら、コンプレッサインペラ42の高負荷運転により、空気Aの流量が増えると、放熱フィン11に接触して熱を奪う空気Aの流量も増えることになり、冷却効果の観点から相殺できるので効率がよい。
【0035】
また、本開示の回転機械1では、吸引口10を通過する空気Aによってインバータ6を適切に冷却できると想定されるため、他の冷却流路は形成していない。しかしながら、例えば電動モータ5用の冷却流路55から分岐する補助の冷却流路を形成し、この冷却流路によってインバータ6を補助的に冷却することも可能である。この場合も、インバータ6を冷却する冷却流路は補助的な流路でよく、簡易的な構成にすることができる。
【0036】
また、本開示の回転機械1はターボチャージャーであり、モータハウジング50(電動モータ5)を挟んで、コンプレッサ4とは反対側にタービン2が設けられている。タービン2は高温となり、冷却という観点では不利になり易い。しかしながら、本開示の回転機械1では、タービン2に対して電動モータ5よりも離れた位置にインバータ6を配置しているため冷却効果を高め易くなっている。
【0037】
以上の通り、本開示の回転機械1によれば、インバータ6用の冷却流路55を省略、あるいは補助的な利用に抑えることができる。したがって、インバータ6用の冷却流路を形成するためのスペースを軽減でき、スペースの有効利用も可能になる。
【0038】
また、インバータ6は環状であり、吸引口10を取り囲むように配置されている。その結果、インバータ6の周方向Cd、つまり、回転軸線Lx回りの方向で冷却効果に偏りが生じ難く、インバータ6の均一な冷却に有利である。
【0039】
また、放熱フィン11は、吸引口10の内周面91aから突出され、空気Aの流路C上に配置されている。その結果、放熱フィン11は、吸引口10を通過する空気Aに直接接して熱を奪われることになり、インバータ6の冷却効率を向上できる。
【0040】
また、放熱フィン11は、コンプレッサインペラ42の回転軸線Lxに沿った方向に延在しており、サージマージンを向上できる。具体的には、モータ低速時のパフォーマンスが向上する。この効果について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、吸引口10を通過する空気Aの流れを示す模式的な断面図である。
図4の(a)の図は本開示の実施形態であり、(b)の図は放熱フィン11を備えていない比較形態である。また、
図5は、流量と圧力比との関係を示すグラフであり、本開示の形態を実線で示し、比較形態を破線で示している。
【0041】
図4の(b)図に示されるように、比較形態は、吸引口100から空気Aを吸い込んで圧縮するコンプレッサインペラ101を備えている。比較形態において、吸引口100を通過する空気Aは、吸引口100の内周面100a付近で流れが乱れ易い。一方、
図4の(a)図に示されるように、本開示に係る回転機械1では、放熱フィン11によって流れがコンプレッサインペラ42の回転軸線Lx方向に整えられており、低流量(モータ低速時)でのサージマージンを向上できる。
【0042】
また、
図2に示されるように、放熱フィン11は、内周面91aから突出した高さHよりも、回転軸線Lxに沿った方向の長さLの方が長い。その結果、吸引口10を通過する空気Aの圧力損失の軽減とインバータ6の冷却効率の向上とを両立できる。
【0043】
また、本開示のヒートシンク9は、吸引口10を形成する管路部91と、管路部91の外方に張り出したフランジ部92と、を備えている。インバータ6は環状であり、フランジ部92に当接してヒートシンク9に固定されている。つまり、インバータ6は、フランジ部92を介して吸引口10を取り囲むように配置されることになるため、周方向Cdで偏りなく、均一な冷却に有利になる。
【0044】
次に、
図6を参照し、他の実施形態に係る回転機械1Aについて説明する。
図6は、回転機械1Aのコンプレッサ4Aにおいて、特に、吸引口10Aが形成された部分を拡大して示す斜視図である。なお、他の実施形態に係る回転機械1Aは、上述の実施形態に係る回転機械1と同様の構造や構成を備えており、その同様の構造や構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図6に示されるように、コンプレッサハウジング41には、電動モータ5Aの駆動によって回転し、空気Aを吸い込んで圧縮するコンプレッサインペラ42が収容されている。コンプレッサハウジング41は、コンプレッサインペラ42を収容するインペラケーシング8と、内部に吸引口10Aを形成するヒートシンク9Aとを備えている。
【0046】
ヒートシンク9Aは、インペラケーシング8に接続されて空気Aの吸引口10Aを形成する管路部91Aと、管路部91Aの外方に張り出したフランジ部92Aとを備えている。フランジ部92Aには、環状のインバータ6が熱交換可能に固定されている。
【0047】
管路部91Aは、二重管構造であり、内側の円筒部分(内管部91c)によって空気Aが通過する吸引口10Aが形成されている。また、外側の円筒部分(外管部91d)には、内周面91aから突出している放熱フィン11Aが設けられている。放熱フィン11Aは、外管部91dと内管部91cとの間に配置されている。放熱フィン11Aは、内管部91cに熱交換可能に接続されており、吸引口10Aを通過する空気Aとの間で熱交換可能に配置されている。
【0048】
放熱フィン11Aは、ステータ52Aのコアとして機能しており、放熱フィン11Aにはコイル52bが巻回されてステータ52Aが形成されている。コイル52bが巻回された放熱フィン11Aは回転軸線Lxに沿った方向に延在しており、回転軸3に固定されたロータを囲むように配置されて電動モータを形成している。
【0049】
本開示に係るインバータ6は、ヒートシンク9Aを介して放熱フィン11Aに接続されている。放熱フィン11Aは、吸引口10Aを通過する空気Aとの間で熱交換可能に配置されている。つまり、コンプレッサインペラ42の回転によって吸引口10Aから吸い込まれる空気Aを利用してインバータ6の冷却が可能になる。その結果、インバータ6用の冷却流路を設けることなく、インバータ6の効果的冷却が可能になる。また、吸引口10Aを通過する空気Aの流量によってはインバータ6用の冷却流路の省略も可能になる。つまり、インバータ6用の冷却流路を形成するためのスペースを軽減でき、スペースの有効利用も可能になる。
【0050】
本開示は、上記の実施形態のみに限定されない。例えば、上記の実施形態では、回転機械の一例として電動アシスト型のターボチャージャーを説明したが、電動モータを備え、気体を圧縮するインペラを備えた回転機械に広く適用でき、例えばタービンを備えておらず、電動モータの駆動によって主体的にインペラが回転する回転機械であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 回転機械
5 電動モータ
6 インバータ
8 インペラケーシング
9 ヒートシンク
10 吸引口
11 放熱フィン
41 コンプレッサハウジング(ハウジング)
42 コンプレッサインペラ(インペラ)
91 管路部
91a 内周面(吸引口の内周面)
92 フランジ部
A 空気(気体)
H 放熱フィンの高さ
L 放熱フィンの長さ
Lx 回転軸線
Cd 周方向