(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用サンルーフ構造
(51)【国際特許分類】
B60J 7/00 20060101AFI20240416BHJP
B60J 7/043 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60J7/00 Z
B60J7/043
(21)【出願番号】P 2022577995
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2021003444
(87)【国際公開番号】W WO2022162925
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 滋
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 義幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-016432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00
B60J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに設けられるサンルーフ部と、前記ルーフの前後方向に延びる第一骨格部材と、前記第一骨格部材と交差する前記ルーフの交差方向に延びる第二骨格部材とを備えた車両用サンルーフ構造において、
前記第一骨格部材と前記第二骨格部材のうち一方は、前記サンルーフ部の重心を通
って前記交差方向または前記前後方向に延びる仮想軸線
と交わる位置に設けられた軸上連結部材
のみによって、前記サンルーフ部と連結され、
前記第一骨格部材と前記第二骨格部材のうち他方は、前記ルーフの平面視を基準として、前記仮想軸線に対して離間した一方側のみに設けられた連結部材
によって、前記サンルーフ部と連結される車両用サンルーフ構造。
【請求項2】
前記ルーフの平面視を基準として、前記仮想軸線と交差するように前記サンルーフ部の重心を通る他の仮想軸線を境として前記サンルーフ部を一側と他側に区分けした際に、
前記連結部材は、前記サンルーフ部と前記他の仮想軸線との交差箇所と、前記交差箇所の一側に位置する箇所と、前記交差箇所の他側に位置する箇所との少なくとも一つの箇所に設けられる請求項1に記載の車両用サンルーフ構造。
【請求項3】
前記一方
側とは反対側に位置する
前記連結部材の設けられていない
前記サンルーフ部の他方側は、前記第一骨格部材又は前記第二骨格部材に固定されている請求項1又は2に記載の車両用サンルーフ構造。
【請求項4】
前記軸上連結部材は、前記連結部材よりも高剛性である請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用サンルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフに設けられるサンルーフ部と、ルーフに対して交差状に設けられる第一骨格部材及び第二骨格部材とを備えた車両用サンルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用サンルーフ構造が種々提案されている。例えば、特開2012-40999号公報に記載されている車両のルーフ骨格構造は、上面視で角形のサンルーフユニット(サンルーフ部)と、車幅方向両端で前後方向に延びるルーフサイドレール(第一骨格部材)とを備えている。そしてサンルーフユニットは、その四隅側にそれぞれ設けられたブラケットによって各ルーフサイドレールに結合されている。また特開2004-161104号公報に記載されているサンルーフ装置のパネル支持機構では、サンルーフパネルを支持する略矩形のインナフレームが、その前側に設けられたブラケットを介して、ルーフパネルの下面に配設されて車幅方向に延びるルーフリインフォース(第二骨格部材)に固定されている。
【発明の概要】
【0003】
ところで上記構成では、車両のNV性能(静粛性等)の確保の観点から、サンルーフ部が車体の振動と共振し難い構成であることが望ましい。すなわち走行時に路面から伝わる振動やエンジン等の振動は、車体を構成するピラーを通じてサンルーフ部に伝達される。このとき車体の振動と共振したサンルーフ部が、周囲のルーフパネルを振動させるように揺れることで、意図しない音(こもり音等の異音)が発生することがある。もっともサンルーフ部にマスダンパーを別途配設して共振を抑制することも考えられるが、そうすると車両の重量増加が避けられない。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の重量増加を抑えつつ、サンルーフ部の共振を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用サンルーフ構造は、車両のルーフに設けられるサンルーフ部と、ルーフの前後方向に延びる第一骨格部材と、第一骨格部材と交差するルーフの交差方向に延びる第二骨格部材とを備えている。この種の構成では、車両の重量増加を抑えつつ、サンルーフ部の共振を抑制することが望ましい。そこで本発明のサンルーフ構造では、第一骨格部材と第二骨格部材のうち一方は、サンルーフ部の重心を通って交差方向または前後方向に延びる仮想軸線と交わる位置に設けられた軸上連結部材のみによって、サンルーフ部と連結され、第一骨格部材と第二骨格部材のうち他方は、ルーフの平面視を基準として、仮想軸線に対して離間した一方側のみに設けられた連結部材によって、サンルーフ部と連結される。本発明では、連結部材の剛性を調整するなどして、サンルーフ部の連結部材の設けられていない側を、共振を抑制するように軸上連結部材を支点として上下に振れさせることが可能となる。そして本発明のサンルーフ構造では、サンルーフ部の振れによって共振を抑制するため、マスダンパーを別途設定する必要がなく、車両の重量増加を極力抑えることができる。
【0005】
第2発明の車両用サンルーフ構造は、第1発明の車両用サンルーフ構造において、ルーフの平面視を基準として、仮想軸線と交差するようにサンルーフ部の重心を通る他の仮想軸線を境としてサンルーフ部を一側と他側に区分けした際に、連結部材は、サンルーフ部と他の仮想軸線との交差箇所と、交差箇所の一側に位置する箇所と、交差箇所の他側に位置する箇所との少なくとも一つの箇所に設けられる。本発明では、複数又は単数の連結部材を、他の仮想軸線を基準として所望の位置に設けることにより、サンルーフ部の連結部材の設けられていない側をより確実に振れさせることが可能となる。
【0006】
第3発明の車両用サンルーフ構造は、第1発明又は第2発明の車両用サンルーフ構造において、一方側とは反対側に位置する連結部材の設けられていないサンルーフ部の他方側は、第一骨格部材又は第二骨格部材に固定されている。本発明では、連結部材の設けられていないサンルーフ部の他方側が、第一骨格部材又は第二骨格部材に固定されて補強されているため、ルーフに対する取付け性の確保に資する構成となる。
【0007】
第4発明の車両用サンルーフ構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用サンルーフ構造において、軸上連結部材は、連結部材よりも高剛性である。本発明では、支点となる軸上連結部材を高剛性とすることで、サンルーフ部の取付け性(支持性)をより確実に確保しつつ、サンルーフ部の連結部材の設けられていない側を振れさせ易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る第1発明によれば、車両の重量増加を抑えつつ、サンルーフ部の共振を抑制することができる。また第2発明によれば、サンルーフ部の共振をより確実に抑制することができる。また第3発明によれば、ルーフに対する取付け性の確保に資する構成となる。そして第4発明によれば、サンルーフ部の取付け性を確保しつつ、サンルーフ部の共振をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ルーフを部分的に分解して示す模式図である。
【
図3】車両用サンルーフ構造を下側から見た概略平面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線断面に相当するルーフの概略断面図である。
【
図5】ルーフガラスを示すルーフの概略拡大断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線断面に相当するルーフの概略断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線断面に相当するルーフの概略断面図である。
【
図8】連結部材の配置箇所を示す車両用サンルーフ構造の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図8を参照して説明する。各図には、車両(ルーフ)の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示し、左右方向が車幅方向に相当する。また
図4~
図7では、便宜上、車両用サンルーフ構造の主構成を図示し、その他の部材の図示を省略している。
【0011】
[車両のルーフの概要]
車両用サンルーフ構造SMについて説明する前に、まず
図1及び
図2に示す車両2のルーフ3の概要について説明する。車両2のルーフ3には、前後に長い角形のルーフパネル4と、その車幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレール5a,5bと、車幅方向に延びる複数のルーフリインフォース6~10とが設けられている。ルーフパネル4は、後方に向かうにつれて緩やかに上方に湾曲しており、その車幅方向両側の端縁はルーフサイドレール5a,5bに固定されている。またルーフサイドレール5a,5bは、車体11を構成する前後左右、及び中央部分の支柱であるピラー(12,13,14)によって支持されている(
図1では、便宜上、車両左側のピラーのみ図示する)。ここで各ルーフサイドレール5a等は、
図4に示すように、インナパネル51とアウタパネル52とが、それぞれの左右のフランジ53,54で固定されることで中空の閉じ断面に形成される。そして各ルーフサイドレール5a等の車両内側(
図4では左側)のフランジ54には、ルーフパネル4の車幅方向端部(図では右端部)が重ねられて固定されている。
【0012】
また
図1及び
図2に示す複数のルーフリインフォース6~10は、ルーフパネル4を下方から支える梁状構造であり、左右のルーフサイドレール5a,5b間に架け渡されている。そして車両2のルーフ3には、車両前後方向に適宜の間隔をあけて複数本(各図では5本)のルーフリインフォースが設けられている。すなわちルーフ3の前部には、前後一対のフロントルーフリインフォース6,7が配設され、ルーフ3の後部には、前後一対のリヤルーフリインフォース8,9が配設されている。またルーフ3の後端部には、後端ルーフリインフォース10が配設されている。ここで各ルーフリインフォース6~10の長手方向両端(車幅方向の両端)は、ルーフパネル4と共に左右のルーフサイドレール5a,5bに固定されている。また各ルーフリインフォース6~10は、その短手方向両端(車両前後方向の両端)がルーフパネル4の下面に固定されている。例えば前側のリヤルーフリインフォース8は、
図6に示すように、横断面形状が略U字形の溝状に形成されており、その溝の開口部分の前後の両端縁に略平坦な前後のフランジ部81,82が折り曲げ成形されている。そして前側のリヤルーフリインフォース8は、そのフランジ部81,82でルーフパネル4に固定されている。
【0013】
また
図1及び
図2を参照して、ルーフパネル4の前部には、左右のルーフサイドレール5a,5bと、前後のフロントルーフリインフォース6,7とに囲まれた範囲に、左右に長い角形の前部開口部3aが設けられている。このルーフパネル4の前部開口部3aにはフロントサンルーフ部20が設けられている。またルーフパネル4の後部には、左右のルーフサイドレール5a,5bと、前後のリヤルーフリインフォース8,9とに囲まれた範囲に、左右に長い角形の後部開口部3bが設けられている。そしてルーフパネル4の後部開口部3bは、前部開口部3aよりも大寸に形成されているとともに、後述するリヤサンルーフ部30が設けられている。
【0014】
[車両用サンルーフ構造]
そして車両用サンルーフ構造SMは、
図1~
図3に示すように、上述したリヤサンルーフ部30と、左右のルーフサイドレール5a,5bと、前側のリヤルーフリインフォース8とから構成されている。すなわち左右のルーフサイドレール5a,5bは、本発明の第一骨格部材に相当し、前側のリヤルーフリインフォース8は、本発明の第二骨格部材に相当する。またリヤサンルーフ部30は、本発明のサンルーフ部に相当し、後述する複数種類の連結部材41~44を介して左右のルーフサイドレール5a,5bと前側のリヤルーフリインフォース8に連結されている。そして上記構成の車両用サンルーフ構造SMでは、車両2の重量増加を極力回避しつつ、リヤサンルーフ部30が車体の振動と共振しないように配慮すべきである。そこで本実施例では、後述する軸上連結部材41,42及び連結部材43,44によって、車両2の重量増加を抑えつつ、リヤサンルーフ部30の共振を抑制することとした。以下、車両用サンルーフ構造SMの各構成について詳述する。
【0015】
[リヤサンルーフ部(サンルーフ部)]
図1に示すリヤサンルーフ部30は、
図2及び
図3に示すように、左右に長い角形のルーフガラス31と、後述する開口リインフォース33とを、後部開口部3bの受部32に固定することで構成されている。ここで後部開口部3bの受部32は、
図4~
図6に示すように、後部開口部3bの内縁全周を段差的に一段低くした部位であり、ルーフガラス31を嵌め込めるように形成されている。そしてルーフガラス31は、
図5に示すように、その外縁を受部32に接着剤321で固定された状態で、ルーフパネル4に概ね面一な状態で配設されている。またルーフガラス31と後部開口部3b(受部32)の間には、これらの隙をシールするウエザストリップ322が設けられている。
【0016】
またリヤサンルーフ部30の周縁には、
図3~
図6に示すように、ルーフパネル4の受部32の下面に固定された板状の開口リインフォース33が設けられている。この開口リインフォース33は、
図3に示すように、前後方向に延びる右側骨格部311及び左側骨格部312と、車幅方向に延びる前側骨格部313及び後側骨格部314とを角形に形成することで構成されている。そしてリヤサンルーフ部30の左部に位置する左側骨格部312は、左側の受部32に固定されて外方(図の左方)に張り出し、右部に位置する右側骨格部311も、右側の受部32に固定された状態で外方(図の右方)に張り出している。またリヤサンルーフ部30の前部に位置する前側骨格部313は、
図6に示すように、前側の受部32に固定された状態で外方(前方)に張り出し、後部に位置する後側骨格部314も、後側の受部32に固定された状態で外方(後方)に張り出している。こうしてリヤサンルーフ部30は、そのルーフガラス31及び開口リインフォース33が受部32に固定されることで、ルーフパネル4と一体となるようにルーフ3に設けられている。
【0017】
[軸上連結部材]
そして
図3に示すリヤサンルーフ部30は、左右の軸上連結部材41,42を介して、左右のルーフサイドレール5a,5b(第一骨格部材)に連結されている。この左右の軸上連結部材41,42は、リヤサンルーフ部30の重心300を支えられるような位置に設けられる。本実施例では、リヤサンルーフ部30の重心300を通って車幅方向(左右方向)に延びる仮想軸線VL1を想定する。そして仮想軸線VL1上に配置された左右の軸上連結部材41(42)を、リヤサンルーフ部30と、対応するルーフサイドレール5a(5b)とに架け渡して固定する。こうすることで各軸上連結部材41,42によって、リヤサンルーフ部30の重心300を支えつつ、このリヤサンルーフ部30と左右のルーフサイドレール5a,5b(第一骨格部材)とを連結することができる。
【0018】
ここで
図3に示す右側の軸上連結部材41と左側の軸上連結部材42とは、左右対称となっている以外は概ね同一の構造を有している。右側の軸上連結部材41は、上述の仮想軸線VL1上で、リヤサンルーフ部30と右側のルーフサイドレール5a間に架け渡されて固定されている。この右側の軸上連結部材41は、
図3及び
図4を参照して、車幅方向外側(図の右側)に向かうにつれて次第に下方に傾斜しており、その前縁と右縁と後縁にかけての部分には外方に張り出す周辺フランジ部位411が形成されている。そして右側の軸上連結部材41では、
図4に示すように、その左側の周辺フランジ部位411が開口リインフォース33の右側骨格部311に重ねられて固定されている。また左側の周辺フランジ部位411は、右側のルーフサイドレール5aのインナパネル51に重ねられて固定されている。そして
図3に示す左側の軸上連結部材42も、右側の軸上連結部材41と左右対称となるように、リヤサンルーフ部30の左側骨格部312と左側のルーフサイドレール5b間に架け渡されて固定されている(
図3の左側の軸上連結部材42では、便宜上、右側の軸上連結部材41と共通する部位の符号を省略する)。
【0019】
ここで
図3に示す左右の軸上連結部材41,42は、ルーフ3に対するリヤサンルーフ部30の取付け性(支持性)を確保する観点から、後述する連結部材43,44よりも高剛性であることが望ましい。例えば各軸上連結部材41,42の剛性を高める手法として、その架け渡し方向と直交する幅方向(図の前後方向)の寸法を相対的に大きくしたり、比較的高剛性の素材を使用したりする手法を例示できる。また
図3及び
図7を参照して、例えば右側の軸上連結部材41を、下方に突出する箱形に形成したり、ビード状の凹部位412等の補強構造を設けたりして、構造的に剛性を高めることもできる。
【0020】
[連結部材]
また
図3に示すリヤサンルーフ部30は、複数又は単数の連結部材(43,44)を介して、前側のリヤルーフリインフォース8(第二骨格部材)に連結されている。この連結部材(43,44)は、後述するリヤサンルーフ部30の振れを生じさせるために、各軸上連結部材41,42とは異なる位置に設けられる。ここで連結部材の配置箇所の設定に際しては、
図8に示すルーフ3の平面視を基準として、リヤサンルーフ部30の重心300を通って前後方向(交差方向)に延びる他の仮想軸線VL2を想定する。つぎに他の仮想軸線VL2を境に、リヤサンルーフ部30を右側301と左側302(一側と他側)とに区分けする。そして連結部材を、リヤサンルーフ部30と他の仮想軸線VL2との交差箇所X1と、交差箇所X1の右側に位置する右側箇所X2と、交差箇所X1の左側に位置する左側箇所X3との少なくとも一つの箇所に設けることができる。このとき他の仮想軸線VL2を、仮想軸線VL1と直交するように設けることで、この他の仮想軸線VL2を基準として配置された連結部材を、各軸上連結部材41,42から極力離して配置しておくことができる。そこで本実施例では、
図3に示すように、右側箇所X2に配置された右前側の連結部材43と、左側箇所X3に配置された左前側の連結部材44とによって、リヤサンルーフ部30と前側のリヤルーフリインフォース8とを連結している。
【0021】
ここで
図3に示す右前側の連結部材43と左前側の連結部材44とは、配置位置が異なる以外は概ね同一の構造を有している。右前側の連結部材43は、上述の右側箇所X2で、リヤサンルーフ部30と前側のリヤルーフリインフォース8間に架け渡されて固定されている。この右前側の連結部材43は、
図3及び
図6を参照して、前方に向かうにつれて次第に下方に傾斜しており、その右縁と左縁には外方に張り出す左右フランジ部位431,432が形成されている。そして右前側の連結部材43は、その後側の左右フランジ部位431,432が開口リインフォース33の前側骨格部313の前縁(張り出し端)に重ねられて固定されている。また前側の左右フランジ部位431,432は、前側のリヤルーフリインフォース8の下面に重ねられて固定されている。そして
図3に示す左前側の連結部材44も、右前側の連結部材43と同様に、リヤサンルーフ部30の前側骨格部313と前側のリヤルーフリインフォース8間に架け渡されて固定されている(
図3の左前側の連結部材44では、便宜上、左右フランジ部位の符号を省略する)。
【0022】
[サンルーフ部の全体構成]
図3に示すリヤサンルーフ部30では、各連結部材43,44を、リヤサンルーフ部30の前側骨格部313が位置する前部側(車両用サンルーフ構造の一方)のみに設けて仮想軸線VL1から離間させている。このためリヤサンルーフ部30の前部側は、上下の振れが極力生じないように、各連結部材43,44によって適度に拘束されている。またリヤサンルーフ部30の後側骨格部314が位置する後部側(車両用サンルーフ構造の他方)は、前部とは反対側に位置して連結部材が設けられていない側となる。このためリヤサンルーフ部30の後部側は、後述するように各連結部材43,44の剛性を調整、即ち、コントロールすることで相対的に上下に振らし易い箇所となっている。特に各連結部材43,44を仮想直線VL1(各軸上連結部材41,42)から極力離して配置しておくことで、リヤサンルーフ部30の後部側を一層振れさせ易くすることができる。またリヤサンルーフ部30の後部は、上述したようにルーフパネル4と一体となり、その後方に位置する後側のリヤルーフリインフォース9(第二骨格部材)に固定されている。このためリヤサンルーフ部30の後部側は、ルーフ3に対するルーフガラス31の取付け性が確保された状態で、上下に振れることが可能となっている。
【0023】
そして各連結部材43,44の剛性は、
図3及び
図6を参照して、その厚み寸法D(板厚)を調整することでコントロールでき、また素材の種類や構造を変更することでも調整できる。そこで本実施例では、各連結部材43,44の剛性を調整して、リヤサンルーフ部30の後部の振れの態様(振れ幅や位相等)を、車体との共振を抑制できるように、即ち、異音の出るリヤサンルーフ部30の揺れを打ち消せるように設定しておく。ここで適切なリヤサンルーフ部30の振れの態様(各連結部材43,44の剛性)は、一律に定まるものではなく、リヤサンルーフ部30や車両全体の構成を考慮して選定される。この連結部材の剛性の選定手法は特に限定しないが、例えば剛性の異なる連結部材を複数用意し、その中から、発生する異音が小さくなるような連結部材を選定することができる。すなわち異なる剛性の連結部材を用いたリヤサンルーフ部30を複数用意し、リヤサンルーフ部30毎に所定範囲の振動周波数を入力する。そして各リヤサンルーフ部30の共振の起こる振動周波数(Hz)域において、発生する異音の強さ(dB)をそれぞれ測定し、その中から異音の強さが所定の目標値以下のものを選定する。
【0024】
[車両用サンルーフ構造の挙動(軸上連結部材及び連結部材の働き)]
図1に示す車両2では、NV性能の確保の観点から、リヤサンルーフ部30が車体11の振動と共振し難いように構成されることが望ましい。このため車両用サンルーフ構造SMでは、
図3に示すように、リヤサンルーフ部30の重心300を通る仮想軸線VL1上で左右のルーフサイドレール5a,5b(第一骨格部材)にリヤサンルーフ部30を連結する各軸上連結部材41,42と、各軸上連結部材とは異なる位置で前側のリヤルーフリインフォース8(第二骨格部材)にリヤサンルーフ部30を連結する各連結部材43,44とが設けられている。上記構成であると、各連結部材43,44の剛性を調整するなどして、リヤサンルーフ部30の連結部材の設けられてない後部側(車両用サンルーフ構造の他方)を、左右の軸上連結部材41,42を支点として上下に振れさせることができる(
図6の白矢印を参照)。
【0025】
そこで本実施例では、上述したように、リヤサンルーフ部30の後部の振れの態様(各連結部材43,44の剛性)を、車体との共振を抑制できるように、即ち、異音の出るリヤサンルーフ部30の揺れを打ち消せるように設定しておく。このため車両走行時等の振動がリヤサンルーフ部30に伝達された際に、リヤサンルーフ部30の後部側が、その後方のルーフパネル4部分と共に共振を抑制するように強制的に上下に振れる。こうしてリヤサンルーフ部30の後部側の振れによって、リヤサンルーフ部30の共振を抑制することにより、当該共振に起因する異音の発生を極力回避することが可能となる。そして車両用サンルーフ構造SMでは、リヤサンルーフ部30(後部)の振れによって共振を抑制するため、マスダンパーを別途設定する必要がなく、車両2の重量増加を極力抑えることができる。こうして車両用サンルーフ構造SMは、NV性能をコントロール出来る効率的なボデー構造となり、車両2の軽量化やボデー構造の最適化に資する構成となる。このため本実施例によれば、車両2の重量増加を抑えつつ、リヤサンルーフ部30の共振を抑制することができる。
【0026】
さらに車両用サンルーフ構造SMでは、複数又は単数の連結部材(43,44)を、他の仮想軸線VL2を基準として所望の位置に設けることにより、リヤサンルーフ部30の後部をより確実に振れさせることが可能となる。特に仮想軸線VL1と直交する他の仮想軸線VL2上又はその近傍に連結部材(43,44)を設けて、各軸上連結部材41,42から極力離しておくことで、リヤサンルーフ部30の後部を振れさせ易くなる。またリヤサンルーフ部30の後部側(車両用サンルーフ構造の他方)は、後側のリヤルーフリインフォース9(第二骨格部材)に固定されて補強されているため、ルーフ3に対する取付け性の確保に資する構成となる。そして本実施例では、支点となる各軸上連結部材41,42を高剛性とすることで、リヤサンルーフ部30の取付け性をより確実に確保しつつ、リヤサンルーフ部30の後部側を振れさせ易くすることができる。
【0027】
[変更例]
本実施形態の車両用サンルーフ構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、連結部材と軸上連結部材の構成を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えば連結部材と軸上連結部材との剛性に差を設けてもよく、剛性に差を設けなくともよい。また軸上連結部材と連結部材の形状も板状のほかに、棒状や柱状などの各種の形状を採用できる。また連結部材の配置数や配設位置も、連結部材の強度等を考慮して適宜設定され、単数配置してもよく、複数(3以上)配置してもよい。なお複数の連結部材(軸上連結部材)は、形状や寸法が同一であってもよく異なっていてもよい。また
図3に示す連結部材によって、リヤサンルーフ部と後側のリヤルーフリインフォース(第二骨格部材)を連結して、リヤサンルーフ部の前部側(車両用サンルーフ構造の他方)を振れさせ易くすることもできる。そしてこのような場合には、リヤサンルーフ部の前部側が前側のリヤルーフリインフォース(第二骨格部材)に固定される。なお車両用サンルーフ構造の他方は、必ずしも第一骨格部材又は第二骨格部材に固定されていなくともよい(例えば
図3に示す後側のリヤルーフリインフォースを省略してもよい)。
【0028】
また軸上連結部材の配置箇所は、車幅方向や前後方向などのルーフの面方向に延びる仮想軸線を基準に設定できる。例えば
図3を参照して、前後方向に延びる仮想軸線を設定した場合、軸上連結部材によってサンルーフ部と前後のリヤルーフリインフォース(第二骨格部材)とを連結することができる。そしてこの場合には、連結部材によって、リヤサンルーフ部と左右いずれかのルーフサイドレール(第一骨格部材)を連結することができる。このときサンルーフ部の右部側又は左部側のいずれかが、車両用サンルーフ構造の他方となって、左右いずれかのルーフサイドレール(第一骨格部材)に固定される。また仮想軸線又は他の仮想軸線を、多角形のサンルーフ部に対して対角線状に想定することも可能である。なお他の仮想軸線は、仮想軸線に交差する適宜の向きに延ばすことができ、必ずしも直交させる必要はない。
【0029】
また車両2及びルーフ3及びサンルーフ部30の構成も適宜変更可能である。例えばサンルーフ部は、ルーフの適宜の位置(例えばフロントサンルーフ部の位置やルーフの後端側など)に設けることができる。またサンルーフ部の形状も、上方視で角形のほか、各種の多角形状や、円形状や半円形状や楕円形状の円弧形状に設定できる。またルーフガラスの構成及び配設手法や、開口リインフォースの構成及び配設手法も、車両の構成に応じて適宜設定することができる。なおルーフガラス及び開口リインフォースの固定方法は、その素材に応じて、接着や締結や溶接などの各種手法を採用できる。また第一骨格部材及び第二骨格部材として、ルーフに設けられる各種の補強構造(剛体構造)を使用でき、これらは、必ずしも直交状に配置されている必要はなく交差状に配置されておればよい。