(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】積層型セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H01G4/30 517
H01G4/30 311E
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
(21)【出願番号】P 2023014049
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2020079251の分割
【原出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大原 隆志
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216319(JP,A)
【文献】特開2019-176025(JP,A)
【文献】特開2020-027828(JP,A)
【文献】特開2010-080731(JP,A)
【文献】特開2006-270047(JP,A)
【文献】特開2006-287200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセラミック層と前記複数のセラミック層間の界面に沿って配置された内部電極とを含む積層構造
であり、前記セラミック層の延びる方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の主面と、前記第1および第2の主面と直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の端面と、前記第1および第2の主面に直交するとともに前記第1および第2の端面に直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の側面と、有する、部品本体と、前記内部電極に電気的に接続されかつ前記部品本体の外表面に設けられた外部電極と、を備える、積層型セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層型セラミック電子部品となるべき未焼成の積層型セラミック電子部品を得る第1段階と、次いで、
前記未焼成の積層型セラミック電子部品から焼結状態の積層型セラミック電子部品を得る第2段階と、
を備え、
前記第1段階は、
加熱によって消失する材料からなる消失性インクと、焼成によって前記セラミック層となるセラミック含有インクと、焼成によって前記内部電極となる第1金属含有インクと、焼成によって前記外部電極となる第2金属含有インクと、をそれぞれ用意する工程と、
前記消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、前記未焼成の積層型セラミック電子部品の外形の少なくとも一部を規定するサポート体を成形する工程と、
前記セラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、前記セラミック層となるべき未焼成のセラミック層を成形する工程と、
前記第1金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、前記内部電極となるべき未焼成の内部電極を成形する工程と、
前記第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、前記外部電極となるべき未焼成の外部電極を成形する工程と、
を備え、
前記未焼成の部品本体および前記未焼成の外部電極からなる前記未焼成の積層型セラミック電子部品は、その外表面において、前記部品本体の前記第1および第2の主面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の主面方向面と、前記部品本体の前記第1および第2の端面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の端面方向面と、前記部品本体の前記第1および第2の側面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の側面方向面と、を形成しており、
前記未焼成のセラミック層を成形する工程および前記未焼成の外部電極を成形する工程は、前記サポート体によって、
前記未焼成の積層型セラミック電子部品における、前記第2の主面方向面と、前記第1および第2の端面方向面と、前記第1および第2の側面方向面と、が規定された状態で実施され、
前記第2段階は、
前記サポート体を加熱により消失させる工程と、
前記未焼成の積層型セラミック電子部品を焼結させる工程と、
を備える、積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記サポート体を成形する工程は複数回実施され、前記未焼成のセラミック層を成形する工程は複数回実施され、および前記未焼成の外部電極を成形する工程は複数回実施される、請求項1に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記未焼成のセラミック層を成形する工程は、前記サポート体を成形する工程の後に実施されるものを含み、前記未焼成の外部電極を成形する工程は、前記サポート体を成形する各工程の後に実施されるものを含む、請求項2に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記未焼成の内部電極を成形する工程は複数回実施される、請求項3に記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1段階は、前記未焼成の内部電極を成形する工程において成形された前記未焼成の内部電極の厚みに等しいか略等しい厚みを有する未焼成の段差吸収層を、前記セラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって成形する工程をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1段階において、少なくとも、前記サポート体を成形する工程、前記未焼成の外部電極を成形する工程、前記未焼成のセラミック層を成形する工程、前記サポート体を成形する工程、前記未焼成の外部電極を成形する工程、および前記未焼成の内部電極を成形する工程、がこの順序で繰り返される、請求項1ないし5のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第2段階において、前記未焼成の積層型セラミック電子部品を加熱する工程の後、連続して前記未焼成の積層型セラミック電子部品を焼成する工程が実施される、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層型セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、インクジェット印刷法を適用して実施される積層型セラミック電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある技術として、たとえば特開2015-216319号公報(特許文献1)には、インクジェット印刷法を用いたセラミック電子部品の製造方法が記載されている。インクジェット印刷法は、たとえばスクリーン印刷法の場合とは異なり、印刷版を用いないため、少量多品種の生産に対して迅速に対応することができ、また、複雑なパターンの印刷膜の形成に適している。
【0003】
特許文献1において記載される製造方法が適用されるセラミック電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサがある。積層セラミックコンデンサは、一般的に、積層された複数のセラミック層と複数のセラミック層間の界面に沿って配置された内部電極とを含む積層構造の部品本体と、内部電極に電気的に接続されかつ部品本体の外表面に設けられた外部電極と、を備えている。
【0004】
このような積層セラミックコンデンサを製造するため、特許文献1に記載の技術では、未焼成のセラミック層をインクジェット印刷法により成形する工程、未焼成の内部電極をインクジェット印刷法により成形する工程、および外部電極をインクジェット印刷法により成形する工程が、所定の順序で繰り返されることによって、未焼成の積層セラミックコンデンサが得られ、次いで、これが焼成されることによって、積層セラミックコンデンサが完成される。
【0005】
特許文献1では、インクジェット印刷法において用いるインクの顔料体積濃度を適切な範囲に選ぶことにより、得られたセラミック電子部品において、構造欠陥を発生しにくくする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット印刷法は、前述したように、少量多品種の生産に対して迅速に対応することができ、また、複雑なパターンの印刷膜の形成に適しているという利点を有している。しかしながら、積層型セラミック電子部品の製造方法において、インクジェット印刷法を適用する場合、製造途中での形状保持が問題となることがあり、よって、完成品の形状の精度に関して、より向上されることが望まれる。
【0008】
そこで、この発明の目的は、製造途中での形状保持の問題を改善し得る、積層型セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、積層された複数のセラミック層と複数のセラミック層間の界面に沿って配置された内部電極とを含む積層構造であり、セラミック層の延びる方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の主面と、第1および第2の主面と直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の端面と、第1および第2の主面に直交するとともに第1および第2の端面に直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の側面と、有する、部品本体と、内部電極に電気的に接続されかつ部品本体の外表面に設けられた外部電極と、を備える、積層型セラミック電子部品の製造方法に向けられる。
【0010】
この発明に係る製造方法は、積層型セラミック電子部品となるべき未焼成の積層型セラミック電子部品を得る第1段階と、次いで、未焼成の積層型セラミック電子部品から焼結状態の積層型セラミック電子部品を得る第2段階と、を備える。
【0011】
第1段階では、まず、加熱によって消失する材料からなる消失性インクと、焼成によって上記セラミック層となるセラミック含有インクと、焼成によって上記内部電極となる第1金属含有インクと、焼成によって上記外部電極となる第2金属含有インクと、がそれぞれ用意される。
【0012】
そして、第1段階では、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、未焼成の積層型セラミック電子部品の外形の少なくとも一部を規定するサポート体を成形する工程と、セラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、セラミック層となるべき未焼成のセラミック層を成形する工程と、第1金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、内部電極となるべき未焼成の内部電極を成形する工程と、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極となるべき未焼成の外部電極を成形する工程と、が実施される。
【0013】
ここで、未焼成の部品本体および未焼成の外部電極からなる未焼成の積層型セラミック電子部品は、その外表面において、部品本体の第1および第2の主面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の主面方向面と、部品本体の第1および第2の端面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の端面方向面と、部品本体の第1および第2の側面に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の側面方向面と、を形成している。
そして、未焼成のセラミック層を成形する工程および未焼成の外部電極を成形する工程は、サポート体によって、未焼成の積層型セラミック電子部品における、第2の主面方向面と、第1および第2の端面方向面と、第1および第2の側面方向面と、が規定された状態で実施されることを特徴としている。
【0014】
また、第2段階では、サポート体を加熱により消失させる工程と、未焼成の積層型セラミック電子部品を焼結させる工程と、が実施される。この第2段階において、サポート体は、未焼成の積層型セラミック電子部品の焼成時の収縮を阻害せず、焼成雰囲気を保持した状態で、たとえば、温度300℃~800℃の間で80体積%以上が消失し、焼成終了後には、その残渣が残らないようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る積層型セラミック電子部品の製造方法によれば、積層型セラミック電子部品の成形段階である第1段階で、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、未焼成の積層型セラミック電子部品の外形の少なくとも一部を規定するサポート体を成形し、このサポート体によって、未焼成の積層型セラミック電子部品における、第2の主面方向面と、第1および第2の端面方向面と、第1および第2の側面方向面と、が規定された状態で、未焼成のセラミック層および未焼成の外部電極をインクジェット印刷法により成形するようにしている。したがって、少なくともセラミック層および外部電極を含む未焼成の積層型セラミック電子部品が、第1段階において、サポート体によって、その外形が強制的に決められ、かつ第2段階に至るまで、外形が適正に維持される。その結果、高い形状精度をもって積層型セラミック電子部品を製造することができる。
【0016】
また、この発明に係る積層型セラミック電子部品の製造方法によれば、サポート体、セラミック層、内部電極および外部電極の成形に際して、インクジェット印刷法を適用しているので、少量多品種の生産に対して迅速に対応することができ、また、複雑なパターンの内部電極および外部電極に対しても、十分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明に係る製造方法によって製造される積層型セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した積層セラミックコンデンサ1の線II-IIに沿う断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第1段階に含まれる複数の工程(1)~(9)を順次示す断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第1段階に含まれる工程であって、
図3に示した工程(9)に続く複数の工程(10)~(15)を順次示す断面図である。
【
図5】
図4に示した工程(10)~(15)に相当する工程を適宜回数繰り返した後に得られた上記積層セラミックコンデンサ1の製造途中の構造物を示す断面図である。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第1段階に含まれる工程であって、
図5に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【
図7】
図6に示した工程に続く工程を示す断面図であり、上記積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第1段階を終え、第2段階に移る状態にある未焼成の積層セラミックコンデンサ20を含む構造物を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2を参照して、この発明に係る製造方法によって製造される積層型セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1について説明する。
【0019】
積層セラミックコンデンサ1は、積層された複数のセラミック層2と複数のセラミック層2間の界面に沿って配置された各々複数の第1および第2の内部電極3および4とを含む積層構造の部品本体5を備える。部品本体5は、直方体または略直方体形状をなしている。積層セラミックコンデンサ1にあっては、セラミック層2は、誘電体セラミックから構成される。第1の内部電極3と第2の内部電極4とは、部品本体5の積層方向において交互に配置され、静電容量を形成するように、セラミック層2を介して互いに対向している。
【0020】
部品本体5は、セラミック層2の延びる方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の主面6および7と、主面6および7と直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の端面8および9と、主面6および7に直交するとともに端面8および9にも直交する方向に延び、かつ互いに対向する第1および第2の側面10および11とを有する。
【0021】
部品本体5の外表面、より具体的には、第1および第2の端面8および9には、それぞれ、第1および第2の外部電極12および13が設けられる。第1の外部電極12は、部品本体5の第1の端面8から、第1の端面8に隣接する第1および第2の主面6および7ならびに第1および第2の側面10および11の各一部にまで延びる状態で設けられる。第2の外部電極13は、部品本体5の第2の端面9から、第2の端面9に隣接する第1および第2の主面6および7ならびに第1および第2の側面10および11の各一部にまで延びる状態で設けられる。
【0022】
第1の内部電極3は、部品本体5の第1の端面8にまで引き出され、第1の外部電極12に電気的に接続される。第2の内部電極4は、部品本体5の第2の端面9にまで引き出され、第2の外部電極13に電気的に接続される。
【0023】
次に、
図3ないし
図7を参照して、上述した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0024】
積層セラミックコンデンサ1を製造するにあたって、積層セラミックコンデンサ1となるべき未焼成の積層セラミックコンデンサ20を得る第1段階の工程と、次いで、未焼成の積層セラミックコンデンサ20から焼結状態の積層セラミックコンデンサ1を得る第2段階の工程と、が実施される。
【0025】
第1段階では、まず、消失性インクと、焼成によってセラミック層2となるセラミック含有インクと、焼成によって内部電極3および4となる第1金属含有インクと、焼成によって外部電極12および13となる第2金属含有インクと、がそれぞれ用意される。
【0026】
上述した消失性インクは、製造しようとする積層セラミックコンデンサ1ないしは未焼成の積層セラミックコンデンサ20の外形の少なくとも一部を規定するサポート体21-1~21-8(たとえば
図7参照)を成形するためのものである。サポート体21-1~21-8は、製品としての積層セラミックコンデンサ1では不要であり、したがって、サポート体21-1~21-8となる消失性インクは、加熱によって消失する材料からなる。
【0027】
消失性インクは、たとえば、有機顔料および微粒子ポリマー(好ましくは、真球状微粒子ポリマー)の少なくとも一方からなる有機材料粉末と、分散剤としてのポリカルボン酸系共重合体と、溶剤としてのメトキシブタノール、エチレングリコール、および1,3-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種と、樹脂としてのセルロース樹脂、アクリル樹脂、およびポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種と、を含む。
【0028】
好ましくは、消失性インクにおいて、有機材料粉末および樹脂の合計体積に対する有機材料粉末の体積の比率(PVC)は60%以上かつ90%以下とされ、より好ましくは、75%以上かつ80%以下とされる。このように樹脂量が少なくても、後述する実験例からわかるように、有機材料粉末の沈降速度を十分に低くすることができ、したがって、この消失性インクは、円滑かつ安定なインクジェット印刷を実行することを可能にする。
【0029】
また、有機材料粉末としての有機顔料は、キナクリドン類(Pigment Red 57:1、Pigment Violet 19など)、Pigment Yellow 180、および銅フタロシアニン(Pigment Blue 15:3など)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0030】
消失性インクにおいて、樹脂として、セルロース樹脂を含む場合、セルロース樹脂としては、水系セルロース樹脂を含むことが好ましい。水系セルロース樹脂は、より具体的には、ヒドロキシプロピルセルロースを含むことが好ましい。
【0031】
消失性インクに含まれる溶剤として、メトキシブタノールを用いる場合、これを単独で用いるのではなく、エチレングリコール、および/または1,3-ブタンジオールとの混合溶剤として用いることにより、インクジェット印刷法においてインクの吐出挙動が改善される場合がある。
【0032】
上述したセラミック含有インクに含まれるセラミック粉末としては、たとえば、SrTiO3、CaZrO3、MgO、SiO2、Al2O3、Cr2O3、MnO2、Y2O3、CaTi、ZrO3、SrZrO3、BaTiO3、BaTi、およびCaO3から選ばれる少なくとも1種を含む粉末を用いることができる。
【0033】
また、第1金属含有インクまたは第2金属含有インクに含まれる金属粉末としては、たとえば、Ni、Fe、Cu、Al、Ag、W、C、Au、Sn、Pd、Pt、Mn、Li、およびSiから選ばれる少なくとも1種を含む粉末を用いることができる。なお、第1金属含有インクに含まれる金属粉末と第2金属含有インクに含まれる金属粉末とは、互いに異なっていても、互いに同じであってもよい。
【0034】
上述したセラミック含有インクは、消失性インクにおける有機材料粉末を、セラミック粉末のような無機材料粉末で置き換えたものであることが好ましい。また、上述した第1金属含有インクおよび第2金属含有インクの各々は、消失性インクにおける有機材料粉末を、金属粉末のような無機材料粉末で置き換えたものであることが好ましい。これによって、消失性インクの場合と同様、樹脂量が少なくても、無機材料粉末の沈降速度を十分に低くできるという効果が奏される。
【0035】
したがって、セラミック含有インク、第1金属含有インクおよび第2金属含有インクは、上記無機材料粉末に加えて、分散剤としてのポリカルボン酸系共重合体と、溶剤としてのメトキシブタノール、エチレングリコール、および1,3-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種と、樹脂としてのセルロース樹脂、アクリル樹脂、およびポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種と、を含むことが好ましい。
【0036】
上述したように、消失性インクと、セラミック含有インクと、第1金属含有インクと、第2金属含有インクと、がそれぞれ用意された後、
図3(1)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-1が成形される。サポート体21-1は、次いで、必要に応じて乾燥される。以降の工程においても、説明を省略するが、インクジェット印刷後に、必要に応じて乾燥工程が実施される。
【0037】
次に、
図3(2)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-2が成形される。
【0038】
なお、
図3ないし
図6では、図示された各工程において付加された要素がいずれであるかを見つけ出しやすくするため、図示された各工程の直前の工程の後に付加された要素にのみ参照符号を付すことにする。
【0039】
次に、
図3(3)に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-1および13-1が成形される。このとき、サポート体21-2によって、未焼成の外部電極12-1および13-1の輪郭が規定される。未焼成の外部電極12-1および13-1は、外部電極12および13における、部品本体5の第2の主面7上に位置する部分に相当する。
【0040】
次に、
図3(4)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-3が成形される。
【0041】
次に、
図3(5)に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-2および13-2が成形される。このとき、サポート体21-3によって、未焼成の外部電極12-2および13-2の輪郭の一部が規定される。
【0042】
次に、
図3(6)に示すように、セラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、セラミック層2となるべき未焼成のセラミック層2-1が成形される。このとき、サポート体21-3によって、未焼成のセラミック層2-1の輪郭の一部が規定される。
【0043】
次に、
図3(7)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-4が成形される。
【0044】
次に、
図3(8)に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-3および13-3が成形される。このとき、サポート体21-4によって、未焼成の外部電極12-3および13-3の輪郭の一部が規定される。
【0045】
次に、
図3(9)に示すように、第1金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、第1の内部電極3となるべき未焼成の内部電極3-1が成形される。
【0046】
上述した未焼成の内部電極3-1は所定の厚みを有している。この厚みによる段差を吸収するため、好ましくは、
図3(9)に示すように、未焼成の内部電極3-1の厚みに等しいか略等しい厚みを有する未焼成の段差吸収層22-1がセラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって成形される。未焼成の段差吸収層22-1を成形する工程は、上記未焼成の内部電極3-1を成形する工程と同時に実施されても、いずれか一方を先に、いずれか他方を後に、というように、これら工程は別時点で実施されてもよい。
【0047】
次に、
図4(10)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-5が成形される。
【0048】
次に、
図4(11)に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-4および13-4が成形される。このとき、サポート体21-5によって、未焼成の外部電極12-4および13-4の輪郭の一部が規定される。
【0049】
次に、
図4(12)に示すように、セラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、セラミック層2となるべき未焼成のセラミック層2-2が成形される。このとき、サポート体21-5によって、未焼成のセラミック層2-2の輪郭の一部が規定される。
【0050】
次に、
図4(13)に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-6が成形される。
【0051】
次に、
図4(14)に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-5および13-5が成形される。このとき、サポート体21-6によって、未焼成の外部電極12-5および13-5の輪郭の一部が規定される。
【0052】
次に、
図4(15)に示すように、第1金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、第2の内部電極4となるべき未焼成の内部電極4-1が成形される。また、未焼成の内部電極4-1の厚みに等しいか略等しい厚みを有する未焼成の段差吸収層22-2がセラミック含有インクをインクジェット方式により吐出することによって成形される。
【0053】
その後、
図4に示した工程(10)~(15)に相当する工程が適宜回数繰り返される。その結果、
図5に示す積層セラミックコンデンサ1の製造途中の構造物が得られる。
図5に示した構造物の最上層には、サポート体21-7、未焼成の外部電極12-6および13-6、ならびに未焼成のセラミック層2-3が位置している。
【0054】
次に、
図6に示すように、消失性インクをインクジェット方式により吐出することによって、サポート体21-8が成形される。
【0055】
次に、
図7に示すように、第2金属含有インクをインクジェット方式により吐出することによって、外部電極12および13となるべき未焼成の外部電極12-7および13-7が成形される。このとき、サポート体21-8によって、未焼成の外部電極12-7および13-7の輪郭の一部が規定される。未焼成の外部電極12-7および13-7は、外部電極12および13における、部品本体5の第1の主面6上に位置する部分に相当する。
【0056】
以上のようにして、積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第1段階を終え、
図7に示すように、サポート体21-1~21-8によってサポートされた状態で、未焼成の積層セラミックコンデンサ20が得られる。
図7および図2を参照して、未焼成の積層セラミックコンデンサ20は、未焼成の部品本体5および未焼成の外部電極12および13からなるもので、その外表面において、部品本体5の第1および第2の主面6および7に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の主面方向面6aおよび7aと、部品本体5の第1および第2の端面8および9に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の端面方向面8aおよび9aと、部品本体5の第1および第2の側面10および11に沿ってそれぞれ延びる第1および第2の側面方向面(図7紙面方向に延びる面)と、を形成している。
また、上述したように、未焼成のセラミック層2を成形する工程および未焼成の外部電極12および13を成形する工程は、サポート体21によって、未焼成の積層セラミックコンデンサ20における、第2の主面方向面6aおよび7aと、第1および第2の端面方向面8aおよび9aと、第1および第2の側面方向面と、が規定された状態で実施される。
【0057】
上述のような第1段階におけるサポート体、未焼成の外部電極、未焼成の内部電極および未焼成の段差吸収層の成形を実行するため、各々別のインクジェットヘッドを順次作動させる3次元インクジェット印刷法が必要回数実施されることが好ましい。
【0058】
次に、積層セラミックコンデンサ1の製造方法における第2段階に移る。第2段階では、上記サポート体21-1~21-8を消失させるため、未焼成の積層セラミックコンデンサ20を加熱する工程と、未焼成の積層セラミックコンデンサ20を焼結させるため、未焼成の積層セラミックコンデンサ20を焼成する工程と、が実施される。この第2段階を終えたとき、
図1および
図2に示した焼結状態の積層セラミックコンデンサ1が得られる。
【0059】
通常、未焼成の積層セラミックコンデンサ20を焼成する工程では、脱脂、およびそれに続く本焼成が実施される。サポート体21-1~21-8の除去は、このような一連の焼成過程の間に達成される。すなわち、サポート体21-1~21-8は、未焼成の積層セラミックコンデンサ20の焼成時の収縮を阻害せず、焼成雰囲気を保持した状態で、たとえば、温度300℃~800℃の間で80体積%以上が消失し、焼成終了後には、その残渣が残らないようにすることができる。
【0060】
図2および
図7は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ1および未焼成の積層セラミックコンデンサ20を模式的に示したものであり、実際の製品では、たとえば
図2に示した内部電極3および4の積層数は、図示したものより多くされることが通常である。
【0061】
図3ないし
図7では、1個の積層セラミックコンデンサ1を得るための工程が示されている。しかしながら、積層セラミックコンデンサを量産するためには、たとえば
図7に示したサポート体21-1~21-8の平面寸法をより大きくし、サポート体21-1~21-8において、複数個の未焼成の積層セラミックコンデンサ20を面方向に分布させた状態で得られるように、第1段階を進めればよい。この場合、第2段階において、サポート体21-1~21-8を除去すれば、複数個の積層セラミックコンデンサ1が個々に分離された状態で得られる。
【0062】
なお、図示された積層セラミックコンデンサ1では、第1の外部電極12は、複数の第1の内部電極3を外部に引き出すとともに、複数の第1の内部電極3を互いに電気的に接続する機能も果たしている。同様に、第2の外部電極13は、複数の第2の内部電極4を外部に引き出すとともに、複数の第2の内部電極4を互いに電気的に接続する機能も果たしている。ここで、第1の外部電極12が有する複数の第1の内部電極3を互いに電気的に接続する機能は、部品本体5の内部に設けられる第1のビア導体によって達成され、第2の外部電極13が有する複数の第2の内部電極4を互いに電気的に接続する機能は、部品本体5の内部に設けられる第2のビア導体によって達成されるように構成されてもよい。このように、ビア導体が設けられる場合であっても、上述した製造方法を適用することができる。
【0063】
以上、この発明に係る積層型セラミック電子部品の製造方法を、積層セラミックコンデンサに関連して説明したが、この発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、多層セラミック基板、積層型電池、LCフィルタ、コネクタ、コイルなど、他の積層型セラミック電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0064】
また、この発明において有利に用いられる消失性インクについて、有機材料粉末として、Pigment Red 57:1、Pigment Violet 19、Pigment Yellow 180、Pigment Blue 15:3、および真球状微粒子ポリマー(樹脂ビーズ)を用いた各場合の具体的な好ましい組成を質量比で表わすと、以下のとおりである。なお、これらの組成比では、有機材料粉末および樹脂の合計体積に対する有機材料粉末の体積の比率(PVC)は75%以上かつ80%以下と設定されている。
【0065】
(1)Pigment Red 57:1またはPigment Violet 19を用いた場合:
有機材料粉末 8.36 ~ 8.37質量部
溶剤 90.18 ~89.63質量部
分散剤 0.58 ~ 0.59質量部
樹脂 0.80 ~ 1.28質量部
可塑剤 0.08 ~ 0.13質量部。
【0066】
(2)Pigment Yellow 180を用いた場合:
有機材料粉末 8.35 ~ 8.37質量部
溶剤 90.14 ~89.59質量部
分散剤 0.29質量部
樹脂 1.11 ~ 1.58質量部
可塑剤 0.11 ~ 0.16質量部。
【0067】
(3)Pigment Blue 15:3を用いた場合:
有機材料粉末 8.35 ~ 8.34質量部
溶剤 90.17 ~89.66質量部
分散剤 0.54質量部
樹脂 0.85 ~ 1.32質量部
可塑剤 0.08 ~ 0.13質量部。
【0068】
(4)真球状微粒子ポリマーを用いた場合:
有機材料粉末 6.10 ~ 6.09質量部
溶剤 91.85 ~90.37質量部
分散剤 0.43質量部
樹脂 1.00 ~ 1.48質量部
可塑剤 0.10 ~ 0.15質量部。
【0069】
以下、この発明において有利に用いられる消失性インクに関して実施した実験例について説明する。
【0070】
[実験例1]
実験例1では、消失性インクに含まれる有機材料粉末として、Pigment Red 57:1およびPigment Violet 19を用いた。
【0071】
また、消失性インクに含まれる樹脂として、水系セルロース樹脂、より具体的には、日本曹達社製セルロース樹脂「ヒドロキシプロピルセルロース」を用いた。
【0072】
消失性インクを作製するにあたって、上記有機材料粉末、分散剤としてのポリカルボン酸系共重合体、および以下の表1の「溶剤」の欄に示す溶剤を、ボールミルにて、回転数150rpmで16時間、混合攪拌し、分散剤を有機材料粉末に付着させた。次いで、上記樹脂を添加し、再びボールミルにて、回転数150rpmで4時間、混合攪拌した。次いで、孔径1μmのフィルタにて、1回濾過し、粒径1μmを超える有機材料粉末および不純物を除去した。次いで、溶剤を再び添加し、ズリ速度1000s-1における粘度が30mPa・s以下となるように粘度調整した。
【0073】
このようにして、試料となる、表1に示す組成を有する実施例1~10および比較例11~18に係る消失性インクを得た。
【0074】
【0075】
表1の組成について、「溶剤」の欄に示されたA~Fは次のとおりである。
【0076】
A:エキネン
B:メトキシブタノール
C:イソプロピルアルコール
D:エタノール
E:1,3-ブタンジオール
F:エチレングリコール
なお、「B+F」は、メトキシブタノールとエチレングリコールとを質量比1:1で混合した混合溶剤であることを示している。
【0077】
また、表1の組成において、「PVC」は、有機材料粉末および樹脂の合計体積に対する有機材料粉末の体積の百分率を示している。
【0078】
他方、表1の特性にある各項目は、次のように評価されたものである。
【0079】
「1000s-1粘度」…アントンパール社製コーン型レオメーター「MCR301」を用い、ズリ速度1000s-1における3秒後の粘度を測定した。コーン型レオメーターにおいて、コーンとしては、径50mm(CP50)のものを用いた。温度条件は、25℃±2℃とした。
【0080】
「沈降速度」…日本ルフト製「LUMiSizer651」を用い、透過光プロファイルで測定した。測定結果をIntegrationモードで解析し、時間あたりの透過光量に換算した結果を「沈降速度」としている。なお、表1の「沈降速度」の値は、ある測定範囲での変化率を相対的な比較値として示しており、したがって、100%/hを超えても異常ではない。
【0081】
「長期安定性」…消失性インクを作製後、3か月経過した後に、粘度測定および沈降速度測定を行ない、経時変化の有無を確認した。初期特性から、±10%以上変化しなかったものを「〇」で表わし、±10%以上変化したものを「×」で表わした。
【0082】
「吐出性/印刷性」…ピエゾインクジェット印刷機を用いて、インクの吐出を行ない、主滴からの分離が無く、印刷塗膜に滲みが無いものを「〇」で表わし、印刷塗膜に滲みが認められたものを「×」で表わした。
【0083】
なお、上述した表1における組成の表示方法および特性の評価方法は、後述する表2ないし表12においても同様である。
【0084】
表1からわかるように、実施例1~10に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が4.7%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0085】
他方、比較例11~18に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が100.2%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0086】
なお、表1には示されていないが、樹脂として、水系セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースではなく、水系ではないセルロース樹脂としてのエチルセルロースを用いた場合、沈降速度が10~20%程度悪化することが確認された。
【0087】
[実験例2]
実験例2では、実験例1と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、アクリル樹脂を用いた点を除いて、実験例1の場合と同様の手順で、試料となる、表2に示す組成を有する実施例21~30および比較例31~38に係る消失性インクを得た。なお、アクリル樹脂としては、より具体的には、三菱ケミカル社製アクリル樹脂「ダイヤナール」を用いた。
【0088】
【0089】
表2からわかるように、実施例21~30に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が9.8%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0090】
他方、比較例31~38に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が110.2%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0091】
[実験例3]
実験例3では、実験例1と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いた点を除いて、実験例1の場合と同様の手順で、試料となる、表3に示す組成を有する実施例41~50および比較例51~58に係る消失性インクを得た。なお、ポリビニルブチラール樹脂としては、より具体的には、積水化学社製ポリビニルブチラール樹脂「エスレック」を用いた。
【0092】
【0093】
表3からわかるように、実施例41~50に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が12.9%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0094】
他方、比較例51~58に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が110.4%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0095】
[実験例4]
実験例4では、消失性インクに含まれる有機材料粉末として、Pigment Yellow 180を用いた。
【0096】
また、消失性インクに含まれる樹脂として、実験例1の場合と同様、水系セルロース樹脂、より具体的には、日本曹達社製セルロース樹脂「ヒドロキシプロピルセルロース」を用いた。
【0097】
消失性インクを作製するにあたっては、実験例1の場合と同様の手順で、試料となる、表4に示す組成を有する実施例61~65および比較例66~69に係る消失性インクを得た。
【0098】
【0099】
表4からわかるように、実施例61~65に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が28.7%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0100】
他方、比較例66~69に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が133.3%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0101】
なお、表4には示されていないが、実験例4についても、樹脂として、水系セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースではなく、水系ではないセルロース樹脂としてのエチルセルロースを用いた場合、沈降速度が10~20%程度悪化することが確認された。
【0102】
[実験例5]
実験例5では、実験例4と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、アクリル樹脂を用いた点を除いて、実験例4の場合と同様の手順で、試料となる、表5に示す組成を有する実施例71~75および比較例76~79に係る消失性インクを得た。なお、アクリル樹脂としては、より具体的には、実験例2の場合と同様、三菱ケミカル社製アクリル樹脂「ダイヤナール」を用いた。
【0103】
【0104】
表5からわかるように、実施例71~75に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が29.2%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0105】
他方、比較例76~79に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が149.9%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0106】
[実験例6]
実験例6では、実験例4と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いた点を除いて、実験例4の場合と同様の手順で、試料となる、表6に示す組成を有する実施例81~85および比較例86~89に係る消失性インクを得た。なお、ポリビニルブチラール樹脂としては、より具体的には、実験例3の場合と同様、積水化学社製ポリビニルブチラール樹脂「エスレック」を用いた。
【0107】
【0108】
表6からわかるように、実施例81~85に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が33.4%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0109】
他方、比較例86~89に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が155.2%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0110】
[実験例7]
実験例7では、消失性インクに含まれる有機材料粉末として、Pigment Blue 15:3を用いた。
【0111】
また、消失性インクに含まれる樹脂として、実験例1の場合と同様、水系セルロース樹脂、より具体的には、日本曹達社製セルロース樹脂「ヒドロキシプロピルセルロース」を用いた。
【0112】
消失性インクを作製するにあたっては、実験例1の場合と同様の手順で、試料となる、表7に示す組成を有する実施例91~95および比較例96~99に係る消失性インクを得た。
【0113】
【0114】
表7からわかるように、実施例91~95に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が46.3%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0115】
他方、比較例96~99に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が137.9%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0116】
なお、表7には示されていないが、実験例7についても、樹脂として、水系セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースではなく、水系ではないセルロース樹脂としてのエチルセルロースを用いた場合、沈降速度が10~20%程度悪化することが確認された。
【0117】
[実験例8]
実験例8では、実験例7と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、アクリル樹脂を用いた点を除いて、実験例7の場合と同様の手順で、試料となる、表8に示す組成を有する実施例101~105および比較例106~109に係る消失性インクを得た。なお、アクリル樹脂としては、より具体的には、実験例2の場合と同様、三菱ケミカル社製アクリル樹脂「ダイヤナール」を用いた。
【0118】
【0119】
表8からわかるように、実施例101~105に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が48.3%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0120】
他方、比較例106~109に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が160.3%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0121】
[実験例9]
実験例9では、実験例7と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いた点を除いて、実験例7の場合と同様の手順で、試料となる、表9に示す組成を有する実施例111~115および比較例116~119に係る消失性インクを得た。なお、ポリビニルブチラール樹脂としては、より具体的には、実験例3の場合と同様、積水化学社製ポリビニルブチラール樹脂「エスレック」を用いた。
【0122】
【0123】
表9からわかるように、実施例111~115に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が51.8%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0124】
他方、比較例116~119に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が170.4%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0125】
[実験例10]
実験例10では、消失性インクに含まれる有機材料粉末として、真球状微粒子ポリマーを用いた。
【0126】
また、消失性インクに含まれる樹脂として、実験例1の場合と同様、水系セルロース樹脂、より具体的には、日本曹達社製セルロース樹脂「ヒドロキシプロピルセルロース」を用いた。
【0127】
消失性インクを作製するにあたっては、実験例1の場合と同様の手順で、試料となる、表10に示す組成を有する実施例121~125および比較例126~129に係る消失性インクを得た。
【0128】
【0129】
表10からわかるように、実施例121~125に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が9.4%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0130】
他方、比較例126~129に係る試料では、樹脂として、水系セルロース樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が170.4%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0131】
なお、表10には示されていないが、実験例10についても、樹脂として、水系セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースではなく、水系ではないセルロース樹脂としてのエチルセルロースを用いた場合、沈降速度が10~20%程度悪化することが確認された。
【0132】
[実験例11]
実験例11では、実験例10と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、アクリル樹脂を用いた点を除いて、実験例10の場合と同様の手順で、試料となる、表11に示す組成を有する実施例131~135および比較例136~139に係る消失性インクを得た。なお、アクリル樹脂としては、より具体的には、実験例2の場合と同様、三菱ケミカル社製アクリル樹脂「ダイヤナール」を用いた。
【0133】
【0134】
表11からわかるように、実施例131~135に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が11.8%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0135】
他方、比較例136~139に係る試料では、樹脂として、アクリル樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が169.5%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【0136】
[実験例12]
実験例12では、実験例10と比較して、消失性インクに含まれる樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いた点を除いて、実験例10の場合と同様の手順で、試料となる、表12に示す組成を有する実施例141~145および比較例146~149に係る消失性インクを得た。なお、ポリビニルブチラール樹脂としては、より具体的には、実験例3の場合と同様、積水化学社製ポリビニルブチラール樹脂「エスレック」を用いた。
【0137】
【0138】
表12からわかるように、実施例141~145に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いながら、溶剤として、メトキシブタノール、1,3-ブタンジオール、および/またはエチレングリコールを用いているので、「沈降速度」が13.9%/h以下と低く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「〇」の評価が得られた。
【0139】
他方、比較例146~149に係る試料では、樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いているが、溶剤として、エキネン、イソプロピルアルコール、またはエタノールを用いているので、「沈降速度」が174.3%/h以上と高く、「長期安定性」および「吐出性/印刷性」について「×」の評価となった。
【符号の説明】
【0140】
1 積層セラミックコンデンサ
2 セラミック層
3,4 内部電極
3-1,4-1 未焼成の内部電極
5 部品本体
6,7 主面
6a,7a 主面方向面
8,9 端面
8a,9a 端面方向面
10,11 側面
12,13 外部電極
12-1~12-7,13-1~13-7 未焼成の外部電極
20 未焼成の積層セラミックコンデンサ
21-1~21-8 サポート体
22-1~22-2 未焼成の段差吸収層