(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】量子ドット、量子ドットを用いた波長変換部材、照明部材、バックライト装置、並びに、表示装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/88 20060101AFI20240416BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240416BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240416BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240416BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240416BHJP
【FI】
C09K11/88 ZNM
C09K11/08 G
H01L33/50
G02B5/20
F21V9/30
(21)【出願番号】P 2023078630
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2019018900の分割
【原出願日】2018-10-12
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017198667
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小椋 佑子
(72)【発明者】
【氏名】高三潴 由香
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和則
(72)【発明者】
【氏名】堤 絵美
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅典
(72)【発明者】
【氏名】荷方 惣一朗
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-525394(JP,A)
【文献】国際公開第2009/034777(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
G02B 5/20
F21V 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カドミウムを含ま
ない量子ドットであって、蛍光半値幅が、25nm以下であ
り、
Cuの残存量が100ppm以下であり、
前記量子ドットは、亜鉛とセレン、或いは、亜鉛とセレンと硫黄とを含有するナノクリスタルであることを特徴とする量子ドット。
【請求項2】
前記量子ドットは、前記ナノクリスタルをコアとし、前記コアの表面にシェルが被覆されたコアシェル構造を有することを特徴とする請求項
1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記コアが、ZnSeSで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記量子ドットの表面が配位子で覆われていることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の量子ドット。
【請求項5】
前記配位子は、脂肪族アミン系、ホスフィン系、及び、脂肪族カルボン酸系の少なくともいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項
4に記載の量子ドット。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の量子ドットを含むことを特徴とする波長変換 部材。
【請求項7】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の量子ドットを含むことを特徴とする照明部材。
【請求項8】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の量子ドットを含むことを特徴とするバックライト装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の量子ドットを含むことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムを含まない量子ドット、量子ドットを用いた波長変換部材、照明部材、バックライト装置、並びに、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、数百~数千個程度の原子から構成された、粒径が数nm~数十nm程度のナノ粒子である。量子ドットは、蛍光ナノ粒子、半導体ナノ粒子、又はナノクリスタルとも呼ばれる。量子ドットは、ナノ粒子の粒径や組成によって、発光波長を種々変更することができるという特徴を有する。
【0003】
量子ドットの性能を表すものとして、蛍光量子収率(Quantum Yield:QY)や蛍光半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)が挙げられる。量子ドットを可視光領域の波長変換材料として用いる場合、その最も大きな特徴として、表現可能な色の範囲が広いこと、すなわち高色域化が挙げられる。量子ドットを用いて高色域化を達成するためには、蛍光半値幅を狭くすることが重要である。
【0004】
量子ドットを用いたディスプレイの用途として、フォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)を発光原理として採用する場合、バックライトに青色LEDを用いて励起光とし、量子ドットを用いて緑色光、赤色光に変換する方法が採用されている。一方で、例えばエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)を発光原理として採用する場合、或いは、他の方法で3原色すべてを量子ドットで発光させる場合などは青色発光の量子ドットが必要となる。その際、高色域化を達成する場合には、緑色、及び、赤色のみならず、青色光の半値幅の狭いことが必要となる。従って、RGB3色すべてを量子ドットで発光させる場合、青色発光の量子ドットの蛍光半値幅が狭いことが必要となる。
【0005】
青色の量子ドットとしては、カドミウム(Cd)を用いたセレン化カドミウム(CdSe)系の量子ドットが代表的なものとして挙げられるが、カドミウムは国際的に規制されており、セレン化カドミウム系の量子ドットを用いた材料の実用化には高い障壁があった。
【0006】
一方、カドミウムを使用しない、Cdフリー系の量子ドットとしてはCuInS2やAgInS2などのカルコパイライト系量子ドットや、インジウムホスフィド(InP)系量子ドットなど開発が進んでいる(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、現行で開発されているものは一般的に半値幅が広く、青色発光の量子ドットとしては適さない。
【0007】
一方、青色発光の材料としては、窒化ガリウム(GaN)やセレン化亜鉛(ZnSe)など、比較的バンドギャップの大きいものが知られている。量子ドットとしては、ZnSe量子ドットが開発されており、ZnSeを用いて青色発光の蛍光体を合成する例は多数報告されている。しかしながら、従来の青色LEDの代替品となるような波長、及び半値幅を備えた実用的なZnSe量子ドットの報告はほとんどされていない。
【0008】
例えば、下記の非特許文献1では、有機亜鉛化合物と比較的反応性の高いと考えられるジフェニルホスフィンセレニドを用いた直接的なZnSeの合成方法について詳細に記載されている。本論文で得られたZnSeは、蛍光波長が430nm程度であり、実用化に用いる青色の蛍光波長である450nmには満たないため実用には適さない。
【0009】
また、下記の非特許文献2においても、水系でのZnSe合成方法が報告されている。反応は低温で進行するものの、半値幅が30nm以上でやや広く、蛍光波長は430nmに満たないため、これを用いて従来の青色LEDの代替品として用いて高色域化を達成するには不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2007/060889号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Organic Electronics 15 (2014) 126-131
【文献】Materials Science and Engineering C 64 (2016) 167-172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、青色量子ドットの研究開発は進んでいるものの、いずれの量子ドットも量産可能なレベルで、蛍光波長430nm以上で、且つ蛍光半値幅25nm以下を達成していない。
【0013】
上述したZnSeに関し、直接合成による合成方法では、亜鉛原料の反応性を高めるために、例えば、ジエチル亜鉛(Et2Zn)などの有機亜鉛化合物を使用する方法がある。しかしながら、ジエチル亜鉛は反応性が高く、空気中で発火するため不活性ガス気流下で取り扱わなければならないなど、原料の取り扱いや保管が難しく、それを用いた反応も発熱、発火等の危険を伴うため、量産には不向きである。また同様に、セレン原料の反応性を高めるために、例えば、水素化セレン(H2Se)を用いた反応なども毒性、安全性の観点から量産には適さない。
【0014】
また、上記のような反応性の高い亜鉛原料やセレン原料を用いた反応系では、ZnSeは生成するものの、粒子生成が制御されておらず、結果として生じたZnSe半値幅が広くなる。
【0015】
蛍光半値幅の狭いZnSe量子ドットの合成方法は報告されているが、青色で、且つ半値幅が狭く、更に量産可能な安全な方法で半値幅が狭いZnSeの合成確認された報告例はなかった。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、Cdフリーで蛍光半値幅が狭い、青色蛍光を発する量子ドットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明における量子ドットは、カドミウムを含まない量子ドットであって、蛍光半値幅が、25nm以下であり、Cuの残存量が100ppm以下であり、前記量子ドットは、亜鉛とセレン、或いは、亜鉛とセレンと硫黄とを含有するナノクリスタルであることを特徴とする。
【0019】
本発明では、前記量子ドットは、前記ナノクリスタルをコアとし、前記コアの表面にシェルが被覆されたコアシェル構造を有することが好ましい。
【0020】
本発明では、前記コアが、ZnSeSで形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明では、前記量子ドットの表面が配位子(Ligand)で覆われていることが好ましい。
【0022】
本発明では、前記配位子は、脂肪族アミン系、ホスフィン系、及び、脂肪族カルボン酸系の少なくともいずれか1種又は2種から選択されることが好ましい。
【0023】
本発明における波長変換部材は、上記の量子ドットを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明における照明部材は、上記の量子ドットを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明におけるバックライト装置は、上記の量子ドットを含むことを特徴とする。
【0026】
本発明における表示装置は、上記の量子ドットを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、粒子形状やサイズの揃った量子ドットを合成できるため、蛍光半値幅を狭くでき、高色域化の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1Aは本発明の実施形態における量子ドットの模式図である。
図1Bは本発明の実施形態における量子ドットの模式図である。
【
図2】実施例1におけるZnSeの蛍光(Photoluminescence:PL)スペクトルである。
【
図3】実施例2におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図4】実施例3におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図5】実施例4におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図6】実施例5におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図7】実施例6におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図8】実施例7におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図9】実施例8におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図10】実施例9におけるZnSeのPLスペクトルである。
【
図11】実施例1におけるZnSeの走査線電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)写真である。
【
図12】実施例1におけるZnSeのX線回折(Xray Diffraction:XRDスペクトルである。
【
図13】実施例1におけるCu
2SeのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0030】
図1A及び
図1Bは、本実施形態における量子ドットの模式図である。
図1Aに示す量子ドット1は、カドミウム(以下、Cdと称する)を含まないナノクリスタルである。
【0031】
本実施形態では、量子ドット1は、亜鉛とセレン(以下、Zn、Seと称する)、又は、亜鉛とセレンと硫黄(Zn、Se、Sと称する)とを含有するナノクリスタルであることが好ましい。
【0032】
量子ドット1は、バンド端発光による蛍光特性を有し、その粒子がナノサイズであることより量子サイズ効果を発現する。
【0033】
ここで「ナノクリスタル」とは、数nm~数十nm程度の粒径を有するナノ粒子を指す。本実施形態では、多数の量子ドット1を、略均一の粒径にて生成することができる。
【0034】
量子ドット1に含まれる、ZnとSe、或いは、ZnとSeとSは主成分であるが、これら元素以外の元素が含まれていてもよい。ただし、Cdは含まず、また、リン(P)も含まないことが好適である。有機リン化合物は高価であり、また空気中で酸化されやすいため合成が不安定化し、コストの上昇や蛍光特性の不安定化、製造工程の煩雑性を招きやすくなる。
【0035】
本実施形態の量子ドット1は、蛍光半値幅が25nm以下である。「蛍光半値幅」とは、蛍光スペクトルにおける蛍光強度のピーク値の半分の強度での蛍光波長の広がりを示す半値全幅(Full Width at Half Maximum)を指す。また、蛍光半値幅は23nm以下であることが好ましい。また、蛍光半値幅は20nm以下であることがより好ましい。また、蛍光半値幅は17nm以下であることが更により好ましい。このように、本実施形態では蛍光半値幅を狭くすることができるため、高色域化の向上を図ることができる。
【0036】
本実施形態では、後述するように、量子ドット1を合成する反応系として、銅カルコゲニドを前駆体として合成した後に、前駆体に対して金属交換反応を行う。このような間接的な合成反応に基づいて量子ドット1を製造することで、蛍光半値幅を狭くすることができ、具体的には25nm以下の蛍光半値幅を達成することができる。
【0037】
量子ドット1の表面には多数の有機配位子2が配位していることが好ましい。これにより、量子ドット1同士の凝集を抑制でき、目的とする光学特性が発現する。反応に用いることのできる配位子は特に限定されないが、例えば、以下の配位子が、代表的なものとして挙げられる。
脂肪族1級アミン系、オレイルアミン:C18H35NH2、ステアリル(オクタデシル)アミン:C18H37NH2、ドデシル(ラウリル)アミン:C12H25NH2、デシルアミン:C10H21NH2、オクチルアミン:C8H17NH2
脂肪酸、オレイン酸:C17H33COOH、ステアリン酸:C17H35COOH、パルミチン酸:C15H31COOH、ミリスチン酸:C13H27COOH、ラウリル(ドデカン)酸:C11H23COOH、デカン酸:C9H19COOH、オクタン酸:C7H15COOH
チオール系、オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH
ホスフィン系、トリオクチルホスフィン:(C8H17)3P、トリフェニルホスフィン:(C6H5)3P、トリブチルホスフィン:(C4H9)3P
ホスフィンオキシド系、トリオクチルホスフィンオキシド:(C8H17)3P=O、トリフェニルホスフィンオキシド:(C6H5)3P=O、トリブチルホスフィンオキシド:(C4H9)3P=O
【0038】
本実施形態における量子ドット1の蛍光量子収率(Quantum Yield)は、10%以上である。また、蛍光量子収率は、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。このように、本実施形態では、量子ドットの蛍光量子収率を高めることができる。
【0039】
本実施形態では、蛍光波長を、410nm以上470nm以下程度にまで自由に制御することができる。本実施形態における量子ドット1は、亜鉛以外にカルコゲン元素を用いた、ZnSeをベースとする固溶体である。本実施形態では、量子ドット1の粒径及び、量子ドット1の組成を調整することによって、蛍光波長を制御することが可能である。このため、蛍光波長は、410nm以上であることが好ましく、430nm以上であることがより好ましい。また蛍光波長は、440nm以上であることが好ましく、470nm以下であることがより好ましく、460nm以下であることが更に好ましい。
【0040】
なお、本実施形態では、蛍光波長を青色に制御することが可能である。
【0041】
図1Bに示す量子ドット1は、コア1aと、コア1aの表面に被覆されたシェル1bと、を有するコアシェル構造である。
図1Bに示すように、量子ドット1の表面には多数の有機配位子2が配位していることが好ましい。また、
図1Bに示す量子ドット1の蛍光半値幅は25nm以下である。
【0042】
図1Bに示す量子ドット1のコア1aは、
図1Aに示すナノクリスタルである。したがって、コア1aは、ZnSe、或いは、ZnSeSで形成されることが好ましい。シェル1bは、コア1aと同様に、カドミウム(Cd)を含まない。シェル1bは、特に材質を問うものではないが、例えば、硫化亜鉛(ZnS)等で形成される。
【0043】
なお、シェル1bは、コア1aの表面に固溶化した状態であってもよい。
図1Bでは、コア1aとシェル1bとの境界を点線で示したが、これは、コア1aとシェル1bとの境界を分析により確認できてもできなくてもどちらでもよいことを指す。なお、本実施形態では、ZnSeコアのみでも蛍光を発する特徴を有する。
【0044】
図1Bに示す量子ドット1も、
図1Aと同様に、蛍光波長を、410nm以上で470nm以下程度にまで自由に制御することができる。そして、本実施形態では、蛍光波長を青色に制御することが可能である。
【0045】
続いて、本実施形態の量子ドット1の製造方法について説明する。
【0046】
まず、本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから銅カルコゲニド(前駆体)を合成する。具体的には、前駆体としては、セレン化銅:Cu2Se、或いは、セレン化硫化銅:Cu2SeSであることが好ましい。
【0047】
ここで、本実施形態では、Cu2SeのCu原料を、特に限定はしないが、例えば、下記の有機銅試薬や無機銅試薬を用いることができる。すなわち、酢酸塩として酢酸銅(I)Cu(OAc)、酢酸銅(II):Cu(OAc)2、脂肪酸塩として、ステアリン酸銅:Cu(OC(=O)C17H35)2、オレイン酸銅:Cu(OC(=O)C17H33)2、ミリスチン酸銅:Cu(OC(=O)C13H27)2、ドデカン酸銅:Cu(OC(=O)C11H23)2、銅アセチルアセトネート:Cu(acac)2、ハロゲン化物として1価、又は2価の両方の化合物が使用可能であり、塩化銅(I):CuCl、塩化銅(II):CuCl2、臭化銅(I):CuBr、臭化銅(II):CuBr2、ヨウ化銅(I):CuI、ヨウ化銅(II):CuI2などを用いることができる。
【0048】
本実施形態では、セレンは、有機セレン化合物(有機カルコゲニド)を原料として用いる。特に化合物の構造を限定するものではないが、例えば、トリオクチルホスフィンにセレンを溶解させたトリオクチルホスフィンセレニド:(C8H17)3P=Se、或いは、トリブチルホスフィンにセレンを溶解させたトリブチルホスフィンセレニド:(C4H9)3P=Se等を用いることができる。又は、オクタデセンのような長鎖の炭化水素である高沸点溶媒にセレンを高温で溶解させた溶液(Se-ODE)や、又はオレイルアミンとドデカンチオールの混合物に溶解させた溶液(Se-DDT/OLAm)などを用いることができる。
【0049】
本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とを混合し溶解させる。溶媒としては、高沸点の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素として、オクタデセンを用いることができる。これ以外にも芳香族系の高沸点溶媒として、t-ブチルベンゼン:t-butylbenzene、高沸点のエステル系の溶媒として、ブチルブチレート:C4H9COOC4H9、ベンジルブチレート:C6H5CH2COOC4H9などを用いることが可能であるが、脂肪族アミン系、又は脂肪酸系の化合物や脂肪族リン系の化合物、又はこれらの混合物を溶媒として用いることも可能である。
【0050】
このとき、反応温度を140℃以上で250℃以下の範囲に設定し、銅カルコゲニド(前駆体)を合成する。なお、反応温度は、より低温の、140℃以上で220℃以下であることが好ましく、更に低温の、140℃以上で200℃以下であることがより好ましい。
【0051】
また、本実施形態では、反応法に特に限定はないが、半値幅の狭い量子ドットを得るために、粒径の揃ったCu2Se、Cu2SeSを合成することが重要である。
【0052】
また、本実施形態では、コアとして、より半値幅の狭いZnSeを得るためには、硫黄(S)をコアに固溶させることが重要である。このため前駆体であるCu2Seの合成において、チオールを添加することが好ましく、より半値幅の狭い量子ドットを得るためには、Se原料としてSe-DDT/OLAmを使用することがより好ましい。特にチオールを限定するものでないが、例えば、オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH、等である。
【0053】
次に、ZnSe、又は、ZnSeSの原料として、有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物を用意する。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物は、空気中でも安定で取り扱い容易な原料である。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物の構造を特に限定するものではないが、金属交換反応を効率よく行うためには、イオン性の高い亜鉛化合物を使用するのが好ましい。例えば、以下に示す有機亜鉛化合物及び無機亜鉛化合物を用いることができる。すなわち、酢酸塩として酢酸亜鉛:Zn(OAc)2、硝酸亜鉛:Zn(NO3)2、脂肪酸塩として、ステアリン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H35)2、オレイン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H33)2、パルミチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C15H31)2、ミリスチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C13H27)2、ドデカン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C11H23)2、亜鉛アセチルアセトネート:Zn(acac)2、ハロゲン化物として、塩化亜鉛:ZnCl2、臭化亜鉛:ZnBr2、ヨウ化亜鉛:ZnI2、カルバミン酸亜鉛としてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C2H5)2)2、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(CH3)2)2、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C4H9)2)2等を用いることができる。
【0054】
続いて、上記の有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物を、銅カルコゲニドの前駆体が合成された反応溶液に添加する。これにより、銅カルコゲニドの銅(Cu)と、亜鉛(Zn)との金属交換反応が生じる。金属交換反応を、180℃以上280℃以下で生じさせることが好ましい。また、金属交換反応を、より低温の、180℃以上250℃以下で生じさせることがより好ましい。
【0055】
本実施形態では、CuとZnの金属交換反応は、定量的に進行し、ナノクリスタルには前駆体のCuが含有されないことが好ましい。前駆体のCuが残留すると、Cuがドーパントとして働き、別の発光機構で発光して半値幅が広がってしまうためである。このCuの残存量は100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が理想的である。
【0056】
また、本実施形態では、金属交換を行う際に、前駆体の金属を配位又はキレートなどにより反応溶液中に遊離させる補助的な役割をもつ化合物が必要である。
【0057】
上述の役割を有する化合物としては、Cuと錯形成可能なリガンドが挙げられる。例えば、リン系リガンド、アミン系リガンド、硫黄系リガンドが好ましく、その中でも、その効率の高さからリン系リガンドが更に好ましい。
【0058】
これにより、CuとZnとの金属交換が適切に行われ、ZnとSeとをベースとする蛍光半値幅の狭い量子ドットを製造することができる。
【0059】
本実施形態では、有機銅化合物、或いは、無機銅化合物と、有機カルコゲン化合物とから、銅カルコゲニドを前駆体として合成し、前駆体を用いて金属交換することによって量子ドットを合成する。このように、本実施形態では、まず、前駆体の合成を経て量子ドットを合成しており、直接合成していない。このような間接的な合成により、反応性が高過ぎて取り扱いが危険な試薬を使う必要はなく、半値幅の狭いZnSe系量子ドットを安全かつ安定的に合成することが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、前駆体を単離・精製することなく、ワンポットで、Cu-Znの金属交換を行い、所望の量子ドットを得ることが可能である。一方、前駆体の銅カルコゲニドを一度、単離・精製してから使用してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、合成した量子ドットは、洗浄、単離精製、被覆処理やリガンド交換などの各種処理を行わずとも蛍光特性を発現する。
【0062】
ただし、
図1Bに示すように、ZnSe、或いは、ZnSeS等のナノクリスタルからなるコア1aをシェル1bで被覆することによって、蛍光量子収率を更に増大させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、コア/シェル構造を前駆体の段階で合成することが可能である。例えば、シェル構造にセレン化亜鉛(ZnSe)を用いた場合、前駆体の銅カルコゲニドはCu2Se/Cu2Sである。これを1つの反応容器でS原料を連続的に添加することによって合成し、引き続き、Cu-Znの金属交換を行うことによって、ZnSe/ZnSを得ることが可能である。
【0064】
また、本実施形態では、シェル構造に用いるS原料としては、特に限定するものではないが、以下の原料が代表的なものとして挙げられる。
【0065】
チオール類:オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH、ベンゼンチオール:C6H5SH、又は、オクタデセンのような長鎖の炭化水素である高沸点溶媒に硫黄を溶解させた溶液(S-ODE)や、又はオレイルアミンとドデカンチオールの混合物に溶解させた溶液(S-DDT/OLAm)などを用いることができる。
【0066】
図1A、
図1Bに示す量子ドット1の用途を、特に限定するものでないが、例えば、青色蛍光を発する本実施形態の量子ドット1を、波長変換部材、照明部材、バックライト装置、及び、表示装置等に適用することができる。
【0067】
本実施形態の量子ドット1を波長変換部材、照明部材、バックライト装置、及び、表示装置等の一部に適用し、例えば、フォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)を発光原理として採用する場合、光源からのUV照射により、青色蛍光を発することを可能とする。或いは、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)を発光原理として採用する場合、或いは、他の方法で3原色すべてを量子ドットで発光させる場合、本実施形態の量子ドット1を用いた青色蛍光を発する発光素子とすることができる。本実施形態では、緑色蛍光を発する量子ドット、赤色蛍光を発する量子ドットとともに、青色蛍光を発する本実施形態の量子ドット1を含む発光素子(フルカラーLED)とすることで、白色を発光させることが可能になる。
【0068】
波長変換部材は、シート状、フィルム状或いは成形体で形成される。例えば、量子ドットが樹脂に分散されてなる成形体は、収納空間を有する容器に圧入等により収納される。このとき、成形体の屈折率は、容器の屈折率より小さいことが好ましい。これにより、成形体に進入した光の一部が、容器の内壁で全反射する。したがって、容器の側方から外部に漏れる光の梁を減らすことができる。本実施の形態における蛍光半値幅の狭い量子ドットを、波長変換部材、照明部材、バックライト装置、及び、表示装置等に適用することで、発光特性を効果的に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0070】
<原料>
本発明では、カドミウムを含まない量子ドットを合成するにあたり以下の原料を用いた。
溶媒
オクタデセン:Aldrich株式会社製、出光興産株式会社製
オレイルアミン:花王株式会社製:ファーミン
オレイン酸:花王株式会社製:ルナックO-V
トリオクチルホスフィン:北興化学株式会社製
塩化亜鉛:Aldrich株式会社製、又はキシダ化学株式会社製
ヨウ化亜鉛:Aldrich株式会社製
酢酸亜鉛2水和物:生駒化学株式会社製
無水酢酸亜鉛:Aldrich株式会社製
セレン(4N:99.99%):新興化学株式会社製、又はAldrich株式会社製
硫黄:キシダ化学株式会社製
<測定機器>
蛍光分光計:日本分光株式会社製 F-2700
紫外-可視光分光光度計:日立株式会社製 V-770
量子収率測定装置:大塚電子株式会社製 QE-1100
X線回折装置(XRD):Bruker社製 D2 PHASER
走査線電子顕微鏡(SEM):日立株式会社製 SU9000
【0071】
[実施例1]
100mL反応容器に、アセチルアセトナト銅:Cu(acac)2 131mgと、ドデカンチオール:DDT 1.5mLと、オレイルアミン:OLAm 4.75mLと、オクタデセン:ODE 6.25mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0072】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.3M)1.75mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0073】
Cu2Se反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0074】
その後、Cu2Se(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 682mgとトリオクチルホスフィン:TOP 10mLと、オレイルアミン:OLAm 0.4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe)を、室温まで冷却した。
【0075】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0076】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液14mLに、塩化亜鉛:ZnCl2 682mgとトリオクチルホスフィン:TOP 5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.5mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で120分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0077】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図2に示すように、蛍光波長が約446.0nm、蛍光半値幅が約16.6nmである光学特性が得られた。
【0078】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約30.6%であった。
【0079】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にトルエンを加えて分散させ、ZnSe(S)粒子の分散溶液とした。
【0080】
[実施例2]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 36.3mgと、ドデカンチオール:DDT 0.3mLと、Se-DDT/OLAm溶液(0.5M)0.4mLと、オクタデセン:ODE 10mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0081】
この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 273mgと、トリオクチルホスフィン:TOP 3mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0082】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図3に示すように、蛍光波長が約445.5nm、蛍光半値幅が約23.0nmである光学特性が得られた。
【0083】
[実施例3]
100mL反応容器に、アセチルアセトナト銅:Cu(acac)2 131mgと、ドデカンチオール:DDT 1.5mLと、オレイルアミン:OLAm 4.75mLと、オクタデセン:ODE 6.25mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0084】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.5M)1mLを添加し、200℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0085】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.2M)1mLを添加し、200℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2SeS)を、室温まで冷却した。
【0086】
Cu2SeS反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にTOPを加えて分散させた。
【0087】
その後、Cu2SeS-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 682mgと、オレイルアミン:OLAm 0.4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSeS)を、室温まで冷却した。
【0088】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図4に示すように、蛍光波長が約454.0nm、蛍光半値幅が約19.7nmである光学特性が得られた。
【0089】
[実施例4]
100mL反応容器に、オレイン酸銅のオクタデセン溶液(0.2M):Cu(OLAc)2-ODE 1.2mLと、Se-ODE溶液 3mLと、溶液ドデカンチオール:DDT 0.4mLと、オクタデセン:ODE 3mLを入れた。この溶液を200℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2SeS)を、室温まで冷却した。
【0090】
このCu2SeS反応液にトリオクチルホスフィン:TOP 5mLとオレイルアミン:OLAm 1.0mL、塩化亜鉛:ZnCl2 940mgとを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、200℃で20分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSeS)を、室温まで冷却した。
【0091】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図5に示すように、蛍光波長が約434.0nm、蛍光半値幅が約23.5nmである光学特性が得られた。
【0092】
[実施例5]
300mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 543mgと、ドデカンチオール:DDT 9mLと、オレイルアミン:OLAm 28.5mLと、オクタデセン:ODE 37.5mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0093】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.3M)10.5mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0094】
Cu2Se(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0095】
その後、Cu2Se(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 4092mgとトリオクチルホスフィン:TOP 60mLと、オレイルアミン:OLAm 2.4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0096】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0097】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 4092mgとトリオクチルホスフィン:TOP 30mLと、オレイルアミン:OLAm 3mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で120分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0098】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.1M)15mLを添加し、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0099】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0100】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 2052mgとトリオクチルホスフィン:TOP 36mLと、オレイルアミン:OLAm 1.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0101】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図6に示すように、蛍光波長が約445.5nm、蛍光半値幅が約13.3nmである光学特性が得られた。
【0102】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約52%であった。
【0103】
[実施例6]
300mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 543mgと、ドデカンチオール:DDT 9mLと、オレイルアミン:OLAm 9mLと、オクタデセン:ODE 57mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0104】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.3M)10.5mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0105】
この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 4092mgとトリオクチルホスフィン:TOP 60mLと、オレイルアミン:OLAm 2.4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe)を、室温まで冷却した。
【0106】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0107】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 6150mgとトリオクチルホスフィン:TOP 30mLと、オレイルアミン:OLAm 3mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0108】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.1M)15mLを添加し、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0109】
その後、この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 2052mgとトリオクチルホスフィン:TOP 36mLと、オレイルアミン:OLAm 1.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0110】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図7に示すように、蛍光波長が約436.0nm、蛍光半値幅が約15.2nmである光学特性が得られた。
【0111】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約66%であった。
【0112】
[実施例7]
300mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 546mgと、ドデカンチオール:DDT 9mLと、オレイルアミン:OLAm 9mLと、オクタデセン:ODE 57mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0113】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.3M)8.4mLを添加し、220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0114】
Cu2Se反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0115】
その後、Cu2Se(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 4092mgとトリオクチルホスフィン:TOP 60mLと、オレイルアミン:OLAm 2.4mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe)を、室温まで冷却した。
【0116】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0117】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 4092mgとトリオクチルホスフィン:TOP 30mLと、オレイルアミン:OLAm 3mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0118】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.1M)15mLを添加し、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0119】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0120】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 2052mgとトリオクチルホスフィン:TOP 36mLと、オレイルアミン:OLAm 1.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で60分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0121】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図8に示すように、蛍光波長が約432.0nm、蛍光半値幅が約15.3nmである光学特性が得られた。
【0122】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約70%であった。
【0123】
[実施例8]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 72.6mgと、オレイルアミン:OLAm 0.263mLと、オクタデセン:ODE 10mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0124】
この溶液に、Se-ODE溶液(0.1M)2mLを添加し、145℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se)を、室温まで冷却した。
【0125】
この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 546mgとトリオクチルホスフィン:TOP 5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe)を、室温まで冷却した。
【0126】
ZnSe反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0127】
その後、ZnSe-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 546mgとトリオクチルホスフィン:TOP 5mLと、オレイルアミン:OLAm 0.1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe)を、室温まで冷却した。
【0128】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.1M)2mLを添加し、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0129】
その後、この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 274mgとトリオクチルホスフィン:TOP 6mLと、オレイルアミン:OLAm 0.2mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、230℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0130】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図9に示すように、蛍光波長が約425.5nm、蛍光半値幅が約22.1nmである光学特性が得られた。
【0131】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約63%であった。
【0132】
[実施例9]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 182mgと、ドデカンチオール:DDT 3mLと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、オクタデセン:ODE 12.5mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0133】
この溶液に、Se-DDT/OLAm溶液(0.5M)2mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱し、さらに、Se-ODE溶液(0.1M)8mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(Cu2Se(S))を、室温まで冷却した。
【0134】
この溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 1364mgとトリオクチルホスフィン:TOP 20mLと、オレイルアミン:OLAm 0.8mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0135】
ZnSe(S)反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0136】
その後、ZnSe(S)-ODE溶液に、塩化亜鉛:ZnCl2 2050mgとトリオクチルホスフィン:TOP 10mLと、オレイルアミン:OLAm 1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で120分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S))を、室温まで冷却した。
【0137】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、
図10に示すように、蛍光波長が約452.5nm、蛍光半値幅が約16.2nmである光学特性が得られた。
【0138】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約25%であった。
【0139】
[実施例10]
実施例6の反応溶液に、ドデシルアミン:DDA 0.6mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で5分間、攪拌しつつ加熱した。
【0140】
この溶液に、S-ODE溶液(0.1M)6mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱し、さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)12mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。S-ODE溶液、オクタン酸亜鉛溶液の加熱撹拌の操作を計2回行った。その後、200℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0141】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約436.0nm、蛍光半値幅が約14.7nmである光学特性が得られた。
【0142】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約58%であった。
【0143】
[実施例11]
実施例6の反応溶液100mLに、ドデシルアミン:DDA 1mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、220℃で5分間、攪拌しつつ加熱した。
【0144】
この溶液に、S-DDT/OLAm溶液(0.1M)10mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱し、さらに、オクタン酸亜鉛溶液(0.1M)20mLを添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。S-ODE溶液、オクタン酸亜鉛溶液の加熱撹拌の操作を計2回行った。その後、200℃で30分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0145】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約436.0nm、蛍光半値幅が約15.1nmである光学特性が得られた。
【0146】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約48%であった。
【0147】
[実施例12-1]
実施例5の反応溶液10mLに、エタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0148】
この溶液に、オレイルアミン:OLAm 0.75mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、320℃で3分間、攪拌しつつ加熱した。
【0149】
その後、オレイン酸亜鉛溶液(0.4M)5mLとドデカンチオール:DDT 0.375mLの混合液を0.25mL添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。この混合液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計3回行った。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0150】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にヘキサンを加えて分散させ、ZnSe(S)-ZnS粒子の分散溶液とした。
【0151】
得られたヘキサン分散溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約445.5nm、蛍光半値幅が約22.5nmである光学特性が得られた。
【0152】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約3%であった。
【0153】
[実施例12-2]
実施例6の反応溶液12.5mLに、エタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0154】
この溶液に、オレイルアミン:OLAm 0.75mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、320℃で3分間、攪拌しつつ加熱した。
【0155】
その後、オレイン酸亜鉛溶液(0.4M)5mLとドデカンチオール:DDT 0.375mLの混合液を0.25mL添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。この混合液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計3回行った。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0156】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にヘキサンを加えて分散させ、ZnSe(S)-ZnS粒子の分散溶液とした。
【0157】
得られたヘキサン分散溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約431.0nm、蛍光半値幅が約18.0nmである光学特性が得られた。
【0158】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約9%であった。
【0159】
[実施例12-3]
実施例7の反応溶液10mLに、エタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0160】
この溶液に、オレイルアミン:OLAm 0.75mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、320℃で3分間、攪拌しつつ加熱した。
【0161】
その後、オレイン酸亜鉛溶液(0.4M)5mLとドデカンチオール:DDT 0.375mLの混合液を0.25mL添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。この混合液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計3回行った。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0162】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にヘキサンを加えて分散させ、ZnSe(S)-ZnS粒子の分散溶液とした。
【0163】
得られたヘキサン分散溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約432.0nm、蛍光半値幅が約21.0nmである光学特性が得られた。
【0164】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約23%であった。
【0165】
[実施例13]
実施例7の反応溶液10mLに、エタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収し、その沈殿にODEを加えて分散させた。
【0166】
この溶液を、不活性ガス(N2)雰囲気下にて、280℃で3分間、攪拌しつつ加熱した。
【0167】
その後、オレイン酸亜鉛溶液(0.4M)5mLとドデカンチオール:DDT 0.375mLの混合液を0.25mL添加し220℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。この混合液を追加添加し、加熱撹拌を行う操作を計12回行った。得られた反応溶液(ZnSe(S)-ZnS)を、室温まで冷却した。
【0168】
また、得られた反応液にエタノールを加え沈殿を発生させ、遠心分離を施して沈殿を回収した。そして、その沈殿にヘキサンを加えて分散させ、ZnSe(S)-ZnS粒子の分散溶液とした。
【0169】
得られたヘキサン分散溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約430.0nm、蛍光半値幅が約16.0nmである光学特性が得られた。
【0170】
得られた反応溶液を、量子効率測定システムで測定した。その結果、量子収率が約54%であった。
【0171】
[比較例1]
100mL反応容器に、オレイン酸亜鉛:Zn(OLAc)2-ODE溶液(0.4M)0.833mLと、Se-ODE溶液(0.1M)10mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、280℃で35分間攪拌しつつ加熱した。
【0172】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約459.0nm、蛍光半値幅が約45.2nmである光学特性が得られた。
【0173】
[比較例2]
100mL反応容器に、Se-ODE溶液(0.1M)20mLを入れ、不活性ガス(N2)雰囲気下、260℃で3分間攪拌しつつ加熱した。
【0174】
この溶液に、オレイン酸亜鉛:Zn(OLAc)2-ODE溶液(0.4M)1.67mLを添加し、240℃で30分間攪拌しつつ加熱した。
【0175】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約461.0nm、蛍光半値幅が約65.8nmである光学特性が得られた。
【0176】
[実施例14]
100mL反応容器に、無水酢酸銅:Cu(OAc)2 183mgと、オレイルアミン:OLAm 0.66mLと、オクタン酸 0.64mL、オクタデセン:ODE 8.7mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0177】
この溶液に、トリオクチルホスフィンセレニド溶液:Se-TOP溶液(0.2M)2.5mLを添加し、230℃で120分間攪拌しつつ加熱した。
【0178】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約406.5nm、蛍光半値幅が約20.8nmである光学特性が得られた。
【0179】
[実施例15]
100mL反応容器に、オクタン酸亜鉛:141mgと、オクタデセン:ODE 20mLを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0180】
この溶液に、トリブチルホスフィンセレニド溶液:Se-TBP溶液(0.2M)0.2mLを添加し、280℃で30分間攪拌しつつ加熱した。
【0181】
得られた反応溶液を、蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が約415.0nm、蛍光半値幅が約22.5nmである光学特性が得られた。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【表8】
表8に示すように、本実施例では、いずれも蛍光半値幅が25nm以下であった。また、20nm以下にすることができ、更に、17nm以下に制御することが可能であるとわかった。
【0190】
また、表8に示すように、蛍光波長を、410nm~470nmの範囲内で調整することが可能であるとわかった。また、蛍光波長を、430nm~470nmの範囲に調整することが可能であり、更には、440nm~460nmの範囲内に調整することも可能であるとわかった。
【0191】
また、実施例1のZnSe粒子の分散溶液を、走査型電子顕微鏡(SEM)、及びX線回折(XRD)装置を用いて測定した。
図11が、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定結果であり、
図12が、X線回折(XRD)の測定結果である。
【0192】
また、実施例1のCu
2Se粒子の分散溶液を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。その結果が
図13に示されている。
【0193】
図11及び
図13に示すように、量子ドットとしてのZnSe粒子、及び前駆体としてのCu
2Seの各粒子径をほぼ均一に生成できたことがわかった。
【0194】
また、
図12に示すZnSeのXRDスペクトルのピーク値より、ZnSe固溶体が生成していることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明によれば、青色蛍光を発する量子ドットを安定して得ることができる。そして本発明の量子ドットを、LEDやバックライト装置、表示装置等に適用することで、各装置において優れた発光特性を得ることができる。