IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-内燃機関 図1
  • 特許-内燃機関 図2
  • 特許-内燃機関 図3
  • 特許-内燃機関 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/40 20160101AFI20240416BHJP
   F02M 26/20 20160101ALI20240416BHJP
   F02M 26/34 20160101ALI20240416BHJP
   F02M 26/37 20160101ALI20240416BHJP
   F02M 26/35 20160101ALI20240416BHJP
   F02M 26/41 20160101ALI20240416BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F02M26/40
F02M26/20
F02M26/34
F02M26/37 311
F02M26/35
F02M26/41 311
F02D21/08 L
F02D21/08 301C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023088501
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】向山 智之
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-317225(JP,A)
【文献】特開2022-067177(JP,A)
【文献】特開平07-174048(JP,A)
【文献】特開昭52-081429(JP,A)
【文献】特開平03-111661(JP,A)
【文献】特開2001-152846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/40
F02M 26/20
F02M 26/34
F02M 26/37
F02M 26/35
F02M 26/41
F02D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室から排出された排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路から分岐した分岐通路に設けられ、前記排気ガスの圧力を高くする昇圧部と、
前記昇圧部で昇圧された前記排気ガスを前記燃焼室に噴射する第1噴射部と、
吸気が吸入された前記燃焼室に燃料を噴射する第2噴射部と、
を備え、
前記第1噴射部は、前記第2噴射部の前記燃料の噴射方向の上方に位置しており、鉛直下方に前記排気ガスを噴射し、
前記第1噴射部は、
前記排気ガスを前記燃焼室に導くための流路部と、
前記流路部と前記燃焼室を連通している複数の連通孔と、を有し、
前記複数の連通孔は、前記第2噴射部を囲むように設けられている、
内燃機関。
【請求項2】
前記第1噴射部は、前記第2噴射部による前記燃料の噴射中に、前記排気ガスを前記燃焼室に噴射する、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第1噴射部は、前記第2噴射部が噴射した前記燃料に向けて、前記排気ガスを噴射する。
請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記流路部及び前記連通孔は、前記燃焼室を覆うシリンダヘッドに設けられている、
請求項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記第2噴射部による前記燃料の噴射方向は、前記燃焼室の中央から放射状となっており、
前記連通孔は、前記燃料の各噴射方向において、拡散中の前記燃料へ前記排気ガスが向かう位置に設けられている、
請求項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記昇圧部は、前記燃焼室に吸入される吸気量に基づいて、前記排気ガスの圧力を調整する、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記昇圧部は、前記吸気量が多いほど前記排気ガスの圧力を高くする、
請求項に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記分岐通路に設けられ、前記排気ガス中のCO2を分離する分離部を更に備え、
前記昇圧部は、分離されたCO2の圧力を高くし、
前記第1噴射部は、昇圧された前記CO2を前記燃焼室に噴射する、
請求項1に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に排気ガスを噴射する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、NOxの低減や燃費改善を実現すべく、排気ガスであるEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスを燃焼室に供給して燃焼温度を低くするエンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-86992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では、EGRガスの供給前に燃焼室に吸入された吸気量が多いと、燃焼室内の吸気の圧力が高いため、EGRガスを燃焼室に供給できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、燃焼室に排気ガスを適切に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、燃焼室から排出された排気ガスが流れる排気通路と、前記排気通路から分岐した分岐通路に設けられ、前記排気ガスの圧力を高くする昇圧部と、前記昇圧部で昇圧された前記排気ガスを前記燃焼室に噴射する第1噴射部と、を備える、内燃機関を提供する。
【0007】
また、吸気が吸入された前記燃焼室に燃料を噴射する第2噴射部を更に備え、前記第1噴射部は、前記第2噴射部による前記燃料の噴射中に、前記排気ガスを前記燃焼室に噴射することとしてもよい。
【0008】
また、前記第1噴射部は、前記第2噴射部が噴射した前記燃料に向けて、前記排気ガスを噴射することとしてもよい。
【0009】
また、前記第1噴射部は、前記排気ガスを前記燃焼室に導くための流路部と、前記流路部と前記燃焼室を連通している連通孔と、を有することとしてもよい。
【0010】
また、前記流路部及び前記連通孔は、前記燃焼室を覆うシリンダヘッドに設けられていることとしてもよい。
【0011】
また、吸気が吸入された前記燃焼室に燃料を噴射する第2噴射部を更に備え、前記流路部及び前記連通孔は、前記第2噴射部を囲むように設けられていることとしてもよい。
【0012】
また、前記第2噴射部による前記燃料の噴射方向は、前記燃焼室の中央から放射状となっており、前記連通孔は、前記燃料の各噴射方向において、拡散中の前記燃料へ前記排気ガスが向かう位置に設けられていることとしてもよい。
【0013】
また、前記昇圧部は、前記燃焼室に吸入される吸気量に基づいて、前記排気ガスの圧力を調整することとしてもよい。
【0014】
また、前記昇圧部は、前記吸気量が多いほど前記排気ガスの圧力を高くすることとしてもよい。
【0015】
また、前記分岐通路に設けられ、前記排気ガス中のCO2を分離する分離部を更に備え、前記昇圧部は、分離されたCO2の圧力を高くし、前記第1噴射部は、昇圧された前記CO2を前記燃焼室に噴射することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃焼室に排気ガスを適切に供給できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一の実施形態に係る内燃機関1の構成を説明するための模式図である。
図2】導入室57及び連通孔58の構成説明するための図である。
図3】ガス噴射部56が噴射した排気ガスの燃焼室15内の流れを説明するための模式図である。
図4】第1変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<内燃機関の構成>
図1は、一の実施形態に係る内燃機関1の構成を説明するための模式図である。
内燃機関1は、例えば、トラック等の車両に搭載された多気筒エンジンである。図1では、説明の便宜上、一つの気筒のみが示されている。内燃機関1は、ディーゼルエンジンであるが、これに限定されず、例えばガソリンエンジンであってもよい。
【0019】
内燃機関1は、図1に示すように、エンジン本体10と、燃料噴射部16と、吸気通路20と、排気通路30と、EGR通路40と、ガス噴射ユニット50と、制御部90を有する。なお、図1では、説明の便宜上、エンジン本体10内の吸気弁及び排気弁は省略されている。
【0020】
エンジン本体10は、シリンダ12と、シリンダヘッド13と、ピストン14を有する。シリンダ12、シリンダヘッド13及びピストン14で囲まれた空間に、燃焼室15が形成されている。エンジン本体10は、燃焼室15内の吸気と燃料の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる。
【0021】
燃料噴射部16は、エンジン本体10内の燃焼室15に燃料を噴射するインジェクタである。具体的には、燃料噴射部16は、吸気が吸入された燃焼室15に燃料を噴射する。燃料噴射部16は、ここではコモンレール式燃料噴射装置である。燃料噴射部16は、先端にノズル17を有し、ノズル17から燃焼室15に燃料が噴射される。なお、ノズル17は周方向に沿って複数あり、各ノズル17による燃料の噴射方向は、燃焼室15の中央から放射状となっている。
【0022】
吸気通路20は、エンジン本体10に吸入する吸気が流れる通路である。吸気弁25が開状態である際に、吸気通路20からエンジン本体10に吸気が流入する。吸気弁25が閉じている際には、エンジン本体10に吸気が流入しない。吸気弁25は、アクチュエータの動作によって開状態と閉状態の間で移動する。吸気通路20には、吸気を過給する過給機のコンプレッサが設けられている。コンプレッサによって圧力が高くなった吸気が、エンジン本体10の燃焼室15に吸入される。
【0023】
排気通路30は、エンジン本体10から発生する排気ガスが流れる通路である。具体的には、排気通路30は、燃焼室15から排出された排気ガスが流れる。排気弁35が開状態である際に、燃料室15から排気通路30に排気ガスが排出される。排気通路30には、吸気通路20に設けられた過給機のコンプレッサと連結されたタービンが設けられている。排気ガスによってタービンが回転することで、コンプレッサが吸気の圧力を高くする。
【0024】
EGR通路40は、排気通路30を流れる排気ガスの一部をエンジン本体10へ還流させる通路である。EGR通路40は、排気通路30と吸気通路20とを繋いでおり、排気ガスの一部であるEGRガスがEGR通路40を介して吸気通路20に流れる。このため、燃焼室15に吸入される吸気には、空気に加えてEGRガスも含まれる。EGR通路40には、クーラー42と、EGR弁43が設けられている。クーラー42は、EGRガスを冷却する。EGR弁43は、クーラー42の下流側に設けられた開閉可能な弁であり、EGRガスの流量を調整する。
【0025】
ガス噴射ユニット50は、排気通路30を流れる排気ガスを燃焼室15に噴射するためのユニットである。ガス噴射ユニット50は、EGR通路40を介さずに、排気ガスのみを燃焼室15に噴射する。EGRガスを含む吸気を燃焼室15に吸入する際には、吸気中の空気の量を確保するために過給圧を大きくする必要があるが、ガス噴射ユニット50が排気ガスのみを噴射することで、吸気中の空気の量を確保しやすくなる。
また、ガス噴射ユニット50は、燃料噴射部16による燃料の噴射中に、排気ガスを噴射する。この場合には、噴射された排気ガスが取り込んだ空気も、噴射された燃料に取り込まれることになるため、空気と燃料を混合させやすくなる。
なお、ガス噴射ユニット50の詳細構成については、後述する。
【0026】
制御部90は、内燃機関1全体の動作を制御する。例えば、制御部90は、燃料噴射部16による燃料の噴射と、ガス噴射ユニット50による排気ガスの噴射とを制御する。具体的には、制御部90は、燃料噴射部16による燃料噴射中に、ガス噴射ユニット50による排気ガスの噴射を行わせる。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。制御部90は、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって、燃料噴射部16及びガス噴射ユニット50の動作を制御する。
【0027】
<ガス噴射ユニットの詳細構成>
図1図3を参照しながら、ガス噴射ユニット50の詳細構成について説明する。
ガス噴射ユニット50は、図1に示すように、分岐通路52と、ポンプ53と、タンク54と、昇圧ポンプ55と、ガス噴射部56と、導入室57と、連通孔58を有する。本実施形態では、ガス噴射部56、導入室57及び連通孔58が第1噴射部に該当し、燃料噴射部16が第2噴射部に該当する。
【0028】
分岐通路52は、図1に示すように排気通路30から分岐した通路であり、排気通路30を流れる排気ガスを燃焼室15に導く。分岐通路52は、排気通路30とガス噴射部56の間を接続している。分岐通路52の排気通路30からの分岐位置は、EGR通路40の排気通路30からの分岐位置よりも、排気通路30においてエンジン本体10側に位置する。分岐通路52には、ポンプ53、タンク54及び昇圧ポンプ55が設けられている。
【0029】
ポンプ53は、排気通路30を流れる排気ガスを分岐通路52へ導く。具体的には、ポンプ53は、排気通路30を流れる排気ガスの一部を吸引して、分岐通路52の下流側へ送り出す。
【0030】
タンク54は、分岐通路52においてポンプ53の下流側に設けられている。タンク54は、ポンプ53が送り出した排気ガスを収容する収容室である。タンク54には、排気ガスが一次的に貯められている。
【0031】
昇圧ポンプ55は、分岐通路52を流れる排気ガスの圧力を高くする昇圧部の機能を有する。昇圧ポンプ55は、タンク54内の排気ガスを吸引して圧縮することで、排気ガスの圧力を高くする。昇圧ポンプ55は、圧力が高くなった排気ガスを、ガス噴射部56へ向けて送り出す。昇圧ポンプ55は、例えば真空ポンプであるが、これに限定されない。
【0032】
昇圧ポンプ55は、燃焼室15に吸入される吸気量に基づいて、分岐通路52を流れる排気ガスの圧力を調整してもよい。例えば、昇圧ポンプ55は、燃焼室15に吸入される吸気量が多いほど、排気ガスの圧力を高くする。具体的には、制御部90は、燃焼室15に吸入される吸気量を特定し、特定した吸気量に応じた圧力になるように昇圧ポンプ55によって排気ガスの圧力を高くする。
【0033】
ガス噴射部56は、シリンダヘッド13に設けられている。ガス噴射部56は、昇圧ポンプ55で昇圧された排気ガスを燃焼室15に噴射する。ガス噴射部56は、先端にノズルを有し、ノズルから排気ガスを燃焼室15に向けて噴射する。これにより、高圧の排気ガスを燃焼室15に噴射できる。ガス噴射部56から噴射された排気ガスは、後述する導入室57と連通孔58とを介して、燃焼室15に噴射される。
【0034】
ガス噴射部56は、燃焼室15に吸気が吸入された後に、排気ガスを燃焼室15に噴射する。すなわち、制御部90は、吸気通路20から燃焼室15への吸気が終わると、ガス噴射部56に排気ガスを噴射させる。具体的には、制御部90は、吸気弁25を開状態から閉状態へ変更すると吸気が終わったと判定し、ガス噴射部56に排気ガスを噴射させる。燃焼室15内の吸気量が多くても、排気ガスの圧力が高くなっているので、排気ガスが燃焼室15に供給される。
【0035】
ガス噴射部56は、燃料噴射部16による燃料の噴射中に、排気ガスを燃焼室15に噴射する。具体的には、制御部90は、燃料噴射部16が燃料を噴射した直後に、ガス噴射部56に排気ガスを燃焼室15に噴射させる。そして、制御部90は、燃料の噴射が終了するまで、ガス噴射部56による排気ガスの噴射を継続する。これにより、排気ガスと燃料とが混合され、燃焼温度を下げることが可能となる。
【0036】
ガス噴射部56は、燃料噴射部16が霧状に噴射した燃料に向けて、排気ガスを噴射する。具体的には、ガス噴射部56は、霧状に噴射されて拡散している燃料に向けて、排気ガスを噴射する。これにより、燃焼室15に噴射された排気ガスが、拡散中の燃料と混合しやすくなる。
【0037】
導入室57は、燃焼室15を覆うシリンダヘッド13に設けられている。導入室57は、ガス噴射部56が噴射した排気ガスを燃焼室15に導く機能を有する。導入室57は、円筒状に形成されている。導入室57は、ガス噴射部56と連通した内部空間57aを有する。内部空間57aは、ガス噴射部56が噴射した排気ガスが流れる流路部となっている。
【0038】
図2は、導入室57及び連通孔58の構成説明するための図であり、図1のA-A方向から見た図である。導入室57は、図2に示すように、燃料噴射部16を囲むように設けられている。導入室57の中央には、貫通部57bが形成されており、燃料噴射部16が貫通部57bに位置している。
【0039】
連通孔58は、導入室57と燃焼室15を連通している。連通孔58は、導入室57の内部空間57aの底面57cに形成されている。連通孔58は、図2に示すように、周方向において所定間隔で複数設けられている。複数の連通孔58は、半径方向において燃料噴射部16から等距離に位置している。すなわち、複数の連通孔58は、燃料噴射部16を囲む位置に設けられている。連通孔58の直径は、ガス噴射部56によって噴射された排気ガスが勢いよく通過できる大きさであり、燃料噴射部16の直径よりも小さい。
【0040】
図3は、ガス噴射部56が噴射した排気ガスの燃焼室15内の流れを説明するための模式図である。ここでは、燃料噴射部16から霧状に噴射される燃料の噴射方向の一つが、図3に示す矢印方向F1であるものとする。燃料噴射部16から霧状に噴射された燃料は、燃料噴射部16から遠ざかるにつれて拡散する。燃料噴射部16が燃料を噴射すると、燃焼室15内の空気が、図3の矢印F2で示すように噴射された燃料に向かって流れる。このため、燃料噴射部16が噴射した燃料は、空気を取り込む。
【0041】
連通孔58は、図3に示すように燃料の噴射方向の上方に位置しており、連通孔58から矢印F3のように噴出された排気ガスは、拡散中の燃料に向かう。連通孔58から噴出された排気ガスに、燃焼室15内の空気が図3に示す矢印F4に示すに向かう。このため、排気ガスは、空気を巻き込みながら燃料に向かい、燃料に取り込まれる。この結果、燃料と空気の混合が促進される。
【0042】
図3では、連通孔58が鉛直方向に排気ガスを噴射するように形成されていることとしたが、これに限定されない。例えば、連通孔58は、排気ガスが燃料の噴射先に向かうように斜めに設けられていてもよい。この場合には、排気ガスが空気を取り込む時間が長くなるので、取り込む空気量を多くできる。
【0043】
図3に示す連通孔58以外の連通孔58(図2参照)も、燃料の噴射方向の上方に位置している。このように、導入室57に形成された複数の連通孔58の各々は、燃料の各噴射方向において、拡散中の燃料へ排気ガスが向かう位置に設けられている。このように複数の連通孔58から排気ガスが、空気を巻き込みながら燃料に向かって噴出されることで、燃料と空気の混合がさらに促進される。
【0044】
<変形例>
(第1変形例)
図4は、第1変形例を説明するための模式図である。
第1変形例においては、図4に示すように、分岐通路52に分離部60が設けられている。分離部60は、分岐通路52においてポンプ53と排気通路30の分岐点との間に位置している。
【0045】
分離部60は、排気ガスに含まれるCO2を分離し、分離したCO2を昇圧ポンプ55へ向けて送り出す機能を有する。分離部60は、排気ガスからCO2を分離させる分離膜を有する。分離部60は、分離されたCO2のみを昇圧ポンプ55へ向けて送り出し、排気ガス中のCO2以外を排出通路62に送り出す。排出通路62は、排気通路30と連通されており、CO2が除かれた排気ガスは排気通路30へ流れる。
【0046】
昇圧ポンプ55は、CO2の圧力を高くして、ガス噴射部56に供給する。ガス噴射部56は、昇圧されたCO2を、導入室57を介して燃焼室15に噴射する。ガス噴射部56は、燃料噴射部16が燃料を噴射中に、噴射された燃料に向かってCO2を噴射する。燃焼室15にCO2が噴射されることで、燃焼温度を効果的に下げることができ、NOxを効果的に抑制できる。
【0047】
(第2変形例)
第2変形例においては、第1変形例で説明した分離部60の位置に、排気ガスを冷却するクーラーが設けられている。分岐通路52に設けられたクーラーで冷却された排気ガスが、ガス噴射部56に供給されることで、冷却された排気ガスが燃焼室15に噴射されることになる。これにより、燃焼温度を下げることができる。
なお、分岐通路52にクーラーに加えて、分離部60が設けられていてもよい。この場合には、燃焼温度をより効果的に下げることができる。
【0048】
(第3変形例)
上記では、ガス噴射ユニット50が、導入室57を有することとしたが、これに限定されない。例えば、複数の連通孔58の位置に、ガス噴射部56が設けられていてもよい。この場合には、複数のガス噴射部56の各々で排気ガスの噴射量を調整することができる。
【0049】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の内燃機関1は、排気通路30から分岐した分岐通路52に設けられ排気ガスの圧力を高くする昇圧ポンプ55と、昇圧ポンプ55で昇圧された排気ガスを燃焼室15に噴射するガス噴射部56とを有する。
これにより、燃焼室15内の吸気量が多くても、圧力が高くなった排気ガスを燃焼室15内に供給することができ、燃焼室15内の燃焼温度を低くすることができる。また、吸気の吸入と排気ガスの噴射とを分けることで、EGRガスを含む吸気を燃焼室15に供給する場合に比べて、過給圧を大きくしなくても吸気量を確保しやすくなる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
1 内燃機関
15 燃焼室
16 燃料噴射部
30 排気通路
52 分岐通路
55 昇圧ポンプ
56 ガス噴射部
57 導入室
58 連通孔
60 分離部
【要約】
【課題】燃焼室に排気ガスを適切に供給する。
【解決手段】内燃機関1は、燃焼室15から排出された排気ガスが流れる排気通路30と、排気通路30から分岐した分岐通路52に設けられ、排気ガスの圧力を高くする昇圧ポンプ55と、昇圧ポンプ55で昇圧された排気ガスを燃焼室15に噴射するガス噴射部56を備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4