(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20240416BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240416BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240416BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20240416BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20240416BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240416BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240416BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240416BHJP
F02D 41/30 20060101ALI20240416BHJP
F02B 19/10 20060101ALI20240416BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240416BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240416BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240416BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/24
B60W20/15
F02D41/04
F02D29/06 D
F02D45/00 368S
F02D29/02 Z
F02D41/30
F02B19/10 G
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
(21)【出願番号】P 2023509894
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013205
(87)【国際公開番号】W WO2022208579
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 遼太
(72)【発明者】
【氏名】中田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】城田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 捷
(72)【発明者】
【氏名】倉田 和郎
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013741(JP,A)
【文献】特開2018-105171(JP,A)
【文献】特開2018-184033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60K 6/442
B60K 6/24
B60W 20/15
F02D 41/04
F02D 29/06
F02D 45/00
F02D 29/02
F02D 41/30
F02B 19/10
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力を駆動に使用する第1走行モードと前記内燃機関の動力を発電に使用しモータで駆動する第2走行モードとを走行状態に応じて切り替えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の主燃焼室となる主室と、
前記主室と連通し前記内燃機関の副燃焼室となる副室と、
前記主室に燃料を供給する主室噴射手段と、
前記主室噴射手段による燃料供給後に前記副室に燃料を供給する副室噴射手段と、
前記第2走行モード時の空燃比を前記第1走行モード時よりもリーンにする制御手段とを備え
、
前記制御手段が、前記第2走行モード時に前記主室噴射手段から供給される燃料量である主室噴射量を前記第1走行モード時よりも減少させる
ことを特徴とする、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の動力を駆動に使用する第1走行モードと前記内燃機関の動力を発電に使用しモータで駆動する第2走行モードとを走行状態に応じて切り替えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の主燃焼室となる主室と、
前記主室と連通し前記内燃機関の副燃焼室となる副室と、
前記主室に燃料を供給する主室噴射手段と、
前記主室噴射手段による燃料供給後に前記副室に燃料を供給する副室噴射手段と、
前記第2走行モード時の空燃比を前記第1走行モード時よりもリーンにする制御手段とを備え
、
前記制御手段が、前記第2走行モード時に前記副室噴射手段から供給される燃料量である副室噴射量を前記第1走行モード時よりも減少させる
ことを特徴とする、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
バッテリの充電率を最大限回復させるチャージモードを設定するための設定手段を備え、
前記制御手段が、前記第2走行モード時に前記チャージモードが設定された場合に、前記チャージモードの非設定時よりも空燃比をリッチにする
ことを特徴とする、請求項1
または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段が、
前記内燃機関の回転速度及び負荷に基づいて前記副室噴射手段から供給される燃料量である副室噴射量を算出し、
前記内燃機関の筒内圧力に基づいて前記副室噴射量の補正量を算出するとともに、
前記第2走行モード時における前記補正量を前記第1走行モード時よりも減少させる
ことを特徴とする、請求項
1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記筒内圧力の移動平均に基づいて前記補正量を算出するとともに、
前記第2走行モード時における前記移動平均の算出区間を前記第1走行モード時よりも長くする
ことを特徴とする、請求項
4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、内燃機関及びモータが搭載されたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源として内燃機関及びモータ(電動機)が搭載されたハイブリッド車両において、車両の走行状態に応じて走行モードを設定し、駆動源を使い分けながら車両を駆動する技術が知られている。例えば、アクセル開度や車速に基づいて決定される走行モードに応じて、駆動源の種類や内燃機関の燃焼状態,空燃比等を変更する制御が知られている。このような制御により、車両の燃費性能や走行性能が改善されうる(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-247679号公報
【文献】特開平09-280085号公報
【文献】特開平09-079063号公報
【文献】特開2000-087785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の燃焼状態の安定性は、走行モードに応じて変動する。例えば、内燃機関の駆動力が駆動輪に伝達されるような走行モードでは、駆動輪に要求される加減速度や路面勾配の変化によってエンジンに作用する負荷が変動し、燃焼状態が不安定化しやすい傾向がある。一方、内燃機関の駆動力が発電機の駆動のみに使用されるような走行モードでは、エンジンに作用する負荷が変動しにくく、燃焼状態が安定化しやすい傾向がある。したがって、内燃機関の作動状態は、走行モード毎の特性の違いを考慮して制御することが好ましい。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、ハイブリッド車両における走行モードの種類にかかわらず、内燃機関の燃焼安定性を適正化することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関の動力を駆動に使用する第1走行モードと内燃機関の動力を発電に使用しモータで駆動する第2走行モードとを走行状態に応じて切り替えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記内燃機関の主燃焼室となる主室と、前記主室と連通し前記内燃機関の副燃焼室となる副室と、前記主室に燃料を供給する主室噴射手段と、前記主室噴射手段による燃料供給後に前記副室に燃料を供給する副室噴射手段と、第2走行モード時の空燃比を第1走行モード時よりもリーンに設定する制御手段とを備える。前記制御手段は、前記第2走行モード時に前記主室噴射手段から供給される燃料量である主室噴射量を前記第1走行モード時よりも減少させる。あるいは、前記制御手段は、前記第2走行モード時に前記副室噴射手段から供給される燃料量である副室噴射量を前記第1走行モード時よりも減少させる。
【発明の効果】
【0007】
本件のハイブリッド車両の制御装置によれば、走行モードの種類にかかわらず、内燃機関の燃焼安定性を適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本件に係る制御装置が適用されるハイブリッド車両の構造を示す模式図である。
【
図2】
図1のハイブリッド車両に搭載されるエンジンの構造を示す模式図である。
【
図3】
図1のハイブリッド車両に搭載される他のエンジンの構造を示す模式図である。
【
図4】
図1のハイブリッド車両に搭載される他のエンジンの構造を示す模式図である。
【
図5】
図1のハイブリッド車両に搭載される他のエンジンの構造を示す模式図である。
【
図6】(A),(B)は走行モードに応じた目標空燃比の設定例を示すマップである。
【
図7】(A),(B)は充電モードに応じた目標空燃比の設定例を示すマップである。
【
図8】(A),(B)は走行モードに応じた補正量の設定例を示すマップである。
【
図9】(A),(B)は筒内圧力(平均値)の算出手法を説明するための図である。
【
図10】制御内容(燃料噴射)に係るフローチャートである。
【
図11】制御内容(筒内圧力に基づく補正)に係るフローチャートである。
【
図12】制御内容(筒内圧力の算出)に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
図1~
図12は、ハイブリッド車両の制御装置を説明するための図である。本件に係る制御装置は、
図1に示す車両30に適用される。この車両30は、エンジン10,モータ31,ジェネレータ32を搭載したハイブリッド車両である。モータ31及びジェネレータ32は、それぞれが電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えたモータジェネレータである。モータ31は、おもに車両30の駆動力を生成するために用いられ、車両30の減速時には回生発電を行う。
【0010】
ジェネレータ32は、おもにエンジン10の駆動力で発電するために用いられ、エンジン10の始動時にはスタータとしても機能する。エンジン10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であり、燃料(ガソリン,軽油等)を含む混合気を燃焼室内で燃焼させることで回転軸を駆動する。エンジン10で生成される駆動力は、ジェネレータ32に発電させるために、あるいは駆動輪を駆動するために用いられる。なお、車両30の駆動力は、基本的にはエンジン10及びモータ31で生成されるが、ジェネレータ32でも生成されうる。
【0011】
エンジン10,モータ31,ジェネレータ32の三者の間には、トランスアクスル36が介装される。トランスアクスル36は、入力された駆動力を変速して出力する機能と、駆動輪への動力伝達経路を切り替える機能とを併せ持つ歯車機構である。トランスアクスル36に内蔵されるクラッチの断接状態を制御することで、動力伝達経路が変更される。この車両30には、動力伝達経路が異なる複数の走行モードが設けられる。例えば、パラレル走行モードは、エンジン10及びモータ31の駆動力を併用して走行するモードであり、EV走行モードは、エンジン10を停止させたままモータ31の駆動力のみを使用して走行するモードである。また、シリーズ走行モードは、エンジン10の駆動力をジェネレータ32での発電に使用しつつモータ31の駆動力を用いて走行するモードであり、ENG走行モードは、モータ31を停止させたままエンジン10の駆動力のみを使用して走行するモードである。これらの走行モードは、走行状態に応じて択一的に設定される。
【0012】
モータ31及びジェネレータ32の各々には、バッテリ33(二次電池)が電気的に接続される。バッテリ33に求められる主要な機能は、モータ31及びジェネレータ32を駆動するための電力を供給する機能や、モータ31及びジェネレータ32で生成された電力(回生電力,発電電力)を蓄える機能である。また、モータ31及びジェネレータ32の各々とバッテリ33とをつなぐ電気回路上には、インバータ34,35が介装される。インバータ34,35は、バッテリ33側の直流電力とモータ31及びジェネレータ32側の交流電力とを相互に変換する変換器(AC-DCインバータ)である。
【0013】
本件のエンジン10としては、副室式のガソリンエンジンが適用される。
図2~
図5はいずれも、連通する主室8(主燃焼室)及び副室5(副燃焼室)がシリンダ内に形成された副室式のエンジン10の構造を模式的に示している。
図2,
図3は、主室8や吸気ポート11に設けられた噴射弁(ポート噴射弁1,筒内噴射弁3,多機能噴射弁4)から燃料を供給する方式(パッシブ方式)のうち、火炎を形成するための燃料が主室8から副室5に向かって噴射される方式のエンジン10の構造を示す。
図2は、副室5に燃料を供給するための噴射弁(副室噴射弁2)と主室8に燃料を供給するための噴射弁(ポート噴射弁1,筒内噴射弁3)とが別設されたエンジン10である。一方、
図3は、単一の噴射弁(多機能噴射弁4)を用いて主室8と副室5とのそれぞれに燃料を吹き分けるエンジン10である。また、
図4は、火炎を形成するための燃料が副室5の内部に直接的に供給される方式(アクティブ方式)のエンジン10の構造を示す。
図5は、パッシブ方式のうち
図2及び
図3とは異なる方式のエンジン10の構造の一例を示す。
【0014】
本件のエンジン10には、主室8に燃料を供給する主室噴射手段と、副室5に燃料を供給する副室噴射手段とが設けられる。
図2~
図5に示すように、副室5は、例えば燃焼室内の頂面中央部からピストン側に向かって膨出した中空の半球状に形成される。
図2~
図5は、ペントルーフ型のシリンダヘッドにおいて、吸気ポート11と排気ポート12との間に副室5が配置された事例を示している。副室5の位置は、燃焼室の全体形状を考慮して、あるいは、吸気バルブ13や排気バルブ14の動作範囲を考慮して設定することが好ましい。また、吸気ポート11や排気ポート12よりもシリンダの外側(シリンダ筒面に近い位置)に副室5を配置してもよい。副室5と主室8とを隔てる隔壁6には、微小な孔7が形成される。また、副室5の内部には、点火プラグ9の電極が配置される。副室5の内部で燃料混合気が点火されると、その火炎が複数の孔7を介して副室5から主室8へとトーチ状に噴出するようになっている。
【0015】
図2,
図4に示すポート噴射弁1は、主室噴射手段の一つであって、吸気ポート11に燃料を噴射するインジェクタである。ポート噴射弁1による燃料の噴射方向は、例えば開放状態の吸気バルブ13と吸気ポート11との隙間に向かう方向に設定される。また、筒内噴射弁3も主室噴射手段の一つであって、主室8に燃料を噴射するインジェクタである。筒内噴射弁3による燃料の噴射方向は、例えば圧縮行程で燃焼室内に形成される気流(タンブル流やスワール流)の向きや流速に応じて設定される。ポート噴射弁1及び筒内噴射弁3のいずれか一方は省略可能である。
【0016】
図2に示す副室噴射弁2は、副室噴射手段の一つであって、副室5に燃料を噴射するパッシブ型のインジェクタである。副室噴射弁2の噴射方向は、例えば副室5へ向かう方向に設定される。ただし、副室噴射弁2の噴射方向は、副室5へ向かう方向のみに限定されるわけではない。例えば、シリンダ内に形成される気流(タンブル流やスワール流)の向きや流速を考慮して、副室5からややずれた位置に向かって燃料を噴射させてもよい。また、
図4に示す副室噴射弁2′も副室噴射手段の一つであり、副室5の内部に直接的に燃料を噴射するアクティブ型のインジェクタである。
【0017】
図3に示す多機能噴射弁4は、主室噴射手段としての機能と副室噴射手段としての機能とを兼ね備えたインジェクタである。多機能噴射弁4の先端には、少なくとも二つの噴孔が形成される。一方の噴孔は、
図2中の筒内噴射弁3と同様の燃料噴射を実現するための噴孔であって、主室8に供給される燃料が噴射される噴孔である。他方の噴孔は、
図2中の副室噴射弁2と同様の燃料噴射を実現するための噴孔であって、副室5に供給される燃料が噴射される噴孔である。各々の噴孔の開閉状態は、個別に制御される。
【0018】
なお、
図5に示すポート噴射弁1,筒内噴射弁3も、主室噴射手段としての機能と副室噴射手段としての機能とを兼ね備えたインジェクタである。これらのポート噴射弁1,筒内噴射弁3は、噴射時期を相違させることで、主室8と副室5とのそれぞれに燃料を吹き分ける機能を持つ。副室噴射手段による燃料供給は、一つの燃焼サイクル(吸気行程,圧縮行程,燃焼行程,排気行程の四行程からなるサイクル)において、主室噴射手段による燃料供給の後に実施される。したがって、単一の噴射弁のみで主室噴射と副室噴射が実施される場合であっても、噴射タイミングに基づいてそれらを明確に区別することが可能である。主室噴射,副室噴射の各々の噴射回数は、一回でもよいし複数回でもよい。
【0019】
なお、主室噴射手段から噴射される燃料の全てが主室8のみで燃焼するとは限らず、一部の燃料は副室5にも流入しうる。同様に、副室噴射手段から噴射される燃料の全てが副室5のみで燃焼するとは限らず、一部の燃料は主室8にも流出しうる。しかしながら、主室噴射手段から噴射される燃料は、主室8で燃焼することが意図された燃料であって、主室8で燃焼しやすいタイミングで噴射され、そのほとんどが主室8で燃焼する。同様に、副室噴射手段から噴射される燃料は、副室5で燃焼することが意図された燃料であって、副室5で燃焼しやすいタイミングで噴射され、そのほとんどが副室5で燃焼する。したがって、主室噴射手段を「主室8での燃焼に適したタイミングで燃料を供給する手段」と定義してもよいし、副室噴射手段を「副室5での燃焼に適したタイミングで燃料を供給する手段」と定義してもよい。
【0020】
本件に係るエンジン10には、
図1~
図5に示すように、ノックセンサ15,筒内圧センサ16,エンジン回転数センサ17,アクセル開度センサ18,車速センサ19,チャージボタンセンサ20が設けられる。ノックセンサ15は、異常燃焼の一種であるノッキングの有無を把握するためのセンサであり、例えばシリンダの振動によって生じる力,圧力,加速度などを検出する。筒内圧センサ16は、燃焼室内における燃焼状態を把握するためのセンサであり、主室8の圧力(筒内圧)を検出する。
【0021】
エンジン回転数センサ17は、エンジン10の作動状態を把握するためのセンサであり、例えば単位時間あたりのエンジン回転数(クランクシャフトの角速度)を検出する。アクセル開度センサ18は、エンジン10に要求されるトルク(ドライバ要求トルク)の大きさを把握するためのセンサであり、図示しないアクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出する。車速センサ19は、エンジン10が搭載された車両の車速(走行速度)を検出するセンサである。
【0022】
チャージボタンセンサ20(設定手段)は、チャージモードをユーザが設定するためのボタンとその操作状態を検出するセンサとが一体化された装置である。チャージモードとは、バッテリ33の充電率(SOC)を最大限回復させることを目的とした充電モードである。充電モードは、バッテリ33の充電状態に関する制御モードであって、走行モード(パラレル走行モード,シリーズ走行モード,EV走行モード,ENG走行モード)とは独立して設定される。チャージボタンセンサ20がオンに操作されるとチャージモードが設定され、エンジン10及びジェネレータ32が駆動されて発電が実施されて、バッテリ33が満充電状態になるまで充電される。バッテリ33が満充電状態になるとチャージボタンセンサ20がオフになり、チャージモードが解除される。
【0023】
チャージモード以外の充電モードの具体例としては、通常充電モードやセーブモードが挙げられる。通常充電モードは、バッテリ33の充電率が所定範囲(例えば、40~60%の範囲)に収まるように発電が実施される充電モードであり、セーブモードはバッテリ33の充電率がユーザに指定される所定値以上に維持されるように発電が実施される充電モードである。上記の各種センサ15~20で検出された各種情報は、ECU21に伝達される。
【0024】
ECU21は、エンジン10の作動状態を制御するための電子制御装置(Engine Control Unit, Electronic Control Unit)であって、プロセッサとメモリとを搭載した電子デバイスである。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)などのマイクロプロセッサであり、メモリは、例えばROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),不揮発メモリなどである。ECU21で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてメモリに記録,保存される。プログラムの実行時には、プログラムの内容がメモリ空間内に展開され、プロセッサによって実行される。
【0025】
ECU21は、図示しない車載ネットワークを介して、制御対象となる装置及び各種センサ15~20の各々に接続される。
図2~
図5に示すように、制御対象となる装置にはポート噴射弁1,副室噴射弁2,2′,筒内噴射弁3,多機能噴射弁4,点火プラグ9が含まれる。エンジン10の燃料噴射量や点火時期,吸気バルブ13及び排気バルブ14の動作は、ECU21によって統括的に管理される。なお、
図1~
図5に示されていないセンサで検出された情報を併用して、燃料噴射量,点火時期等を補正することも可能である。例えば、外気温センサやエンジン冷却水温センサなどで検出された温度情報に基づき、燃料噴射量や点火時期を補正してもよい。
【0026】
ECU21には、モード判定手段22,筒内圧取得手段23,点火制御手段24,燃料制御手段25が設けられる。これらの要素は、ECU21で実現される機能を表現したものであり、例えばECU21内のROMや補助記憶装置に記録,保存されるソフトウェアとしてプログラミングされうる。あるいは、そのソフトウェアに対応する電子回路(ハードウェア)として実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが混在するシステムとして実現されてもよい。
【0027】
モード判定手段22は、走行モードと充電モードとを判定するものである。走行モードは、バッテリ33の充電率,車速,アクセル開度等に基づいて判定される。例えば、車速が所定速度未満(発進時)であり、アクセル開度が所定開度未満であって、バッテリ33の充電率が所定値以上であるときには、EV走行モードとなる。また、充電率が所定値未満まで低下したときや、アクセル開度が所定開度以上まで踏み込まれたときには、ENG走行モードやパラレル走行モードが設定される。また、充電率がさらに低下したときには、シリーズ走行モードが設定される。これらの走行モードは、少なくとも車両30の走行状態に応じて自動的に設定される。なお、走行モードを設定するためのスイッチやレバーを用意して、ユーザが主体的にいずれかの走行モードを設定できるようにしてもよい。
【0028】
パラレル走行モード及びENG走行モードは、エンジン10の動力を車両30の駆動に使用するモードであり、第1走行モードとも呼ばれる。また、シリーズ走行モードは、エンジン10の動力をジェネレータ32での発電に使用しつつ、車両30をモータ31で駆動するモードであり、第2走行モードとも呼ばれる。
充電モードは、チャージボタンセンサ20の操作状態に基づいて判定される。チャージボタンセンサ20がオンに操作されていれば、チャージモードが設定される。一方、チャージボタンセンサ20がオフであれば、チャージモードは非設定となり、例えば通常充電モードが設定される。
【0029】
筒内圧取得手段23は、主室8の圧力の実測値または予測値に基づき、燃焼サイクル毎の燃焼状態を代表する筒内圧力の情報を取得するものである。ここでは、例えば一回の燃焼サイクルにおける主室8の平均圧力や最大圧力が、その燃焼サイクルの筒内圧力として検出または算出される。主室8の圧力の実測値としては、筒内圧センサ16で検出された値を用いることができる。また、主室8の圧力の予測値は、例えば気体の状態方程式に基づいて算出してもよい。あるいは、公知の三次元数値流体解析ソフトウェアにエンジン10の諸元や燃料混合気の成分といった諸条件を入力し、燃焼室内での燃焼状態をシミュレートすることで算出してもよい。
【0030】
点火制御手段24は、点火プラグ9の点火時期SA(燃料混合気を点火するタイミング)を制御するものである。点火時期SAは、エンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて設定される。エンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて設定される点火時期SAは、標準点火時期とも呼ばれる。なお、ノックセンサ15でノッキングが検出されている場合には、点火時期SAを標準点火時期よりもリタードさせる制御を実施してもよい。ただし、副室式エンジンにおいては、適切な点火時期SAの範囲が他のエンジンと比較して狭く、点火時期SAの変化をできるだけ抑制することが望まれる。このような実情を踏まえて、ノッキングが検出されたとしても点火リタード制御を実施しないこととしてもよい。あるいは、ノックセンサ15でノッキングが検出された時間が所定時間を超えた場合に限って、点火リタード制御を開始することとしてもよい。
【0031】
燃料制御手段25は、主室噴射手段が供給する燃料量である主室噴射量と、副室噴射手段が供給する燃料量である副室噴射量とを制御するものである。これらの燃料量は、基本的にはエンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて設定される。また、燃料制御手段25は、筒内圧取得手段23で取得された筒内圧力に基づいて副室噴射量を補正する。
本件の燃料制御手段25は、燃料量の設定に先立ち、走行モードや充電モードの種類に応じて空燃比の目標値(目標空燃比)を設定する。その後、設定された目標空燃比になるように、吸入空気量に応じた量の燃料量を主室噴射量と副室噴射量とに分けて算出する。さらに、その副室噴射量を筒内圧力に応じて補正した上で、主室噴射手段及び副室噴射手段を制御する。
【0032】
図6(A)は、第1走行モード時(パラレル走行モード時,ENG走行モード時)に設定される目標空燃比の特性を例示するマップである。このマップでは、目標空燃比がエンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて設定されており、エンジン負荷が高いほど目標空燃比がリッチ(小さな値)に設定されている。また、エンジン負荷が一定であれば、エンジン回転数が高いほど目標空燃比がリッチ(小さな値)に設定されている。なお、
図6(A)においては、エンジン回転数の低下に伴い、エンジン負荷に対する目標空燃比の変化勾配が急勾配になる特性を示している。
【0033】
図6(B)は、第2走行モード時(シリーズ走行モード時)に設定される目標空燃比の特性を例示するマップである。このマップにおいても、目標空燃比がエンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて設定されているが、第2走行モード時の目標空燃比は、第1走行モード時よりもリーンに設定される。ここで、第1走行モード時に設定される目標空燃比〔
図6(A)のグラフ〕を
図6(B)中に破線で示す。エンジン負荷とエンジン回転数とが同一である場合、第2走行モード時に設定される目標空燃比は、第1走行モード時に設定される目標空燃比と比較して、常にリーン寄りの値になるように設定される。したがって、
図6(B)中でエンジン負荷と目標回転数との関係を示す実線グラフは、同一のエンジン回転数でその実線グラフに対応する破線グラフよりも常に上方に描かれる。
【0034】
図7(A)は、第2走行モード時であってチャージモードの非設定時(通常充電モード時)における目標空燃比の特性を例示するマップである。ここでは、
図6(B)と同一の特性が示されている。一方、
図7(B)は、第2走行モード時にチャージモードが設定された場合の目標空燃比の特性を例示するマップである。チャージモード時の目標空燃比は、通常充電モード時よりもリッチに設定される。ここで、チャージモード時に設定される目標空燃比〔
図7(A)のグラフ〕を
図7(B)中に破線で示す。エンジン負荷とエンジン回転数とが同一である場合、チャージモード時に設定される目標空燃比は、通常充電モード時に設定される目標空燃比と比較して、常にリッチ寄りの値になるように設定される。したがって、
図7(B)中でエンジン負荷と目標回転数との関係を示す実線グラフは、同一のエンジン回転数でその実線グラフに対応する破線グラフよりも常に下方に描かれる。
【0035】
目標空燃比の設定後、燃料制御手段25は、エンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて目標吸入空気量を算出し、その目標吸入空気量を目標空燃比で除算することで燃料噴射量を算出する。また、その燃料噴射量を所定の割合で分割して主室噴射量と副室噴射量とを算出する。主室噴射量と副室噴射量との分割割合は、あらかじめ設定された固定値であってもよいし、車両30の走行状態に応じて(例えばエンジン負荷,エンジン回転数,車速,アクセル開度等に応じて)設定される可変値であってもよい。
【0036】
ここで、エンジン負荷,エンジン回転数,吸入空気量が一定であるものと仮定して、第1走行モード時の主室噴射量FMAIN1,副室噴射量FSUB1と、第2走行モード時の主室噴射量FMAIN2,副室噴射量FSUB2との関係について説明する。まず、第2走行モード時には、第1走行モード時よりも空燃比がリーンであることから、(FMAIN1+FSUB1)>(FMAIN2+FSUB2)である。本件では、以下の三種類のパターンのいずれかに従って各々の燃料量が設定される。つまり、走行モードが第1走行モードから第2走行モードへと変化したときには、少なくとも主室噴射量FMAIN2,副室噴射量FSUB2のいずれかが減少するようになっている。
(パターン1) FMAIN1=FMAIN2 かつ FSUB1>FSUB2
(パターン2) FMAIN1>FMAIN2 かつ FSUB1>FSUB2
(パターン3) FMAIN1>FMAIN2 かつ FSUB1=FSUB2
【0037】
図8(A)は、第1走行モード時に設定される副室噴射量の補正量の特性を例示するマップである。補正量の値は、例えば筒内圧力が通常の変動範囲に収まっている場合には0に設定される。一方、筒内圧力が通常の変動範囲を超えるほど高い場合には、その筒内圧力が高いほど小さな値(負の範囲で絶対値が大きな値)に設定される。これにより、筒内圧力が高すぎる状況下での副室噴射量が減量され、ノッキングの発生が抑制されやすくなる。また、筒内圧力が通常の変動範囲を下回るほど低い場合には、その筒内圧力が低いほど大きな値(正の範囲で絶対値が大きな値)に設定される。これにより、筒内圧力が低すぎる状況下での副室噴射量が増量され、燃焼不良が解消されやすくなる。
【0038】
図8(B)は、第2走行モード時に設定される副室噴射量の補正量の特性を例示するマップである。第2走行モード時の補正量は、第1走行モード時よりも小さい値に設定される。ここで、第1走行モード時に設定される補正量〔
図8(A)のグラフ〕を
図8(B)中に破線で示す。負の補正量が設定される領域(筒内圧力が高すぎる領域)においては、副室噴射量の補正量を示す実線グラフが破線グラフよりも上方に描かれる。一方、正の補正量が設定される領域(筒内圧力が低すぎる領域)においては、副室噴射量の補正量を示す実線グラフが破線グラフよりも下方に描かれる。このように、補正量を削減することで、副室噴射量の補正による燃焼ばらつきの発生が抑制される。
【0039】
副室噴射量の補正量を設定する際に用いられる筒内圧力の値には、筒内圧取得手段23で取得された筒内圧力の値をそのまま使用してもよい。あるいは、筒内圧取得手段23で取得された筒内圧力の移動平均を使用してもよい。この場合、移動平均の算出区間の長さは、第1走行モード時と第2走行モード時とで相違させてもよい。
図9(A)は、第1走行モード時における移動平均の算出区間N
1を例示する図である。ここでは、5回分の燃焼サイクルに対応する筒内圧力の平均値が算出されている。一方、
図9(B)は、第2走行モード時における移動平均の算出区間N
2を例示する図である。ここでは、10回分の燃焼サイクルに対応する筒内圧力の平均値が算出されており、N
1<N
2である。移動平均の算出区間を長くすることで、外乱に対する感度が軽減され、筒内圧力がより安定化しやすくなる。
【0040】
なお、副室噴射量は、副室噴射手段に供給される燃料の圧力や噴射圧をコントロールすることで増減させてもよい。この場合、燃料噴射開始時SOI(Start Of Injection)や燃料噴射終了時EOI(End Of Injection)を変更することなく噴射の勢いを弱めたり強めたりすることで、一回の燃焼サイクルで供給される副室噴射量を増減させることができる。あるいは、燃料噴射開始時SOIや燃料噴射終了時EOIをコントロールすることで副室噴射量を増減させてもよい。この場合、副室噴射手段に供給される燃料の圧力や噴射圧を一定に保ちつつ、燃料噴射期間を短縮したり延長したりすることで、一回の燃焼サイクルで供給される副室噴射量を増減させることができる。
また、副室噴射量を補正する際に、副室噴射量を減少(または増加)させた分だけ主室噴射量を増加(または減少)させて、トータルの燃料噴射量が変化しないようにしてもよい。あるいは、主室噴射量を変化させることなく副室噴射量のみを増減させてもよい。
【0041】
[2.フローチャート]
図10~
図12は、ECU21で実施される制御の内容を説明するためのフローチャートである。これらのフローチャートに示される制御は互いに独立して実行され、所定の周期(例えば、一回の燃焼サイクルに対応する周期)で繰り返し実行される。
図10は、燃料噴射に係るフローであり、少なくともエンジン10が作動している走行モードで実行される。ステップA1では、モード判定手段22において、走行モードと充電モードとが判定される。走行モードは、バッテリ33の充電率,車速,アクセル開度等に基づいて判定され、充電モードは、チャージボタンセンサ20の操作状態に基づいて判定される。
【0042】
ステップA2では、走行モードが第2走行モードであるか否かが判定される。この条件が不成立の場合には、走行モードが第1走行モードであると判断されてステップA3に進む。ステップA3では、燃料制御手段25において目標空燃比が設定される。例えば、
図6(A)に示すようなマップが参照されて、エンジン負荷とエンジン回転数とに応じた目標空燃比が設定される。その後、ステップA7に進む。
一方、ステップA2の条件が成立する場合にはステップA4に進む。ステップA4では、ステップA3で設定される目標空燃比よりもリーンな目標空燃比が設定される。例えば、
図6(B)に示すようなマップが参照されて、目標空燃比の値がやや大きめの値に設定される。その後、ステップA5に進む。
【0043】
ステップA5では、充電モードがチャージモードであるか否かが判定される。この条件が不成立の場合には、そのままステップA7に進む。一方、ステップA5の条件が成立する場合には、ステップA6に進む。ステップA6では、チャージモードの非設定時よりもリッチな目標空燃比が設定される。例えば、
図7(B)に示すようなマップが参照されて、目標空燃比の値がやや小さめの値に変更される。その後、ステップA7に進む。ステップA7では、目標空燃比が得られるような主室噴射量と副室噴射量とが算出され、続くステップA8で燃料噴射が実施される。
【0044】
図11は、筒内圧力に基づく補正に係るフローである。ステップB1では、筒内圧取得手段23において燃焼サイクル毎の筒内圧力の情報が取得される。続くステップB2では、走行モードが第1走行モードであるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB3に進み、筒内圧力に基づいて副室噴射量の補正量が算出される。例えば、
図8(A)に示すようなマップが参照されて、副室噴射量の補正量が算出される。その後、ステップB5に進み、副室噴射量が補正される。一方、ステップB2の条件が不成立の場合には、走行モードが第2走行モードであると判断されて、ステップB4に進む。ステップB4では、筒内圧力に基づき、第1走行モード時よりも少ない補正量が算出される。例えば、
図8(B)に示すようなマップが参照されて、副室噴射量の補正量が算出される。その後、ステップB5に進み、副室噴射量が補正される。
【0045】
図12は、筒内圧力(移動平均)の算出に係るフローである。ステップC1では、筒内圧取得手段23で取得された燃焼サイクル毎の筒内圧力の情報について、所定期間分の情報が読み出される。ここでは、少なくとも算出区間N
2よりも長い期間に対応する筒内圧力の情報が用意される。続くステップC2では、走行モードが第1走行モードであるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップC3に進み、比較的短い算出区間N
1における筒内圧力の平均値が算出される。一方、ステップC2の条件が不成立の場合にはステップC4に進み、比較的長い算出区間N
2における筒内圧力の平均値が算出される。ステップC3,C4で算出された筒内圧力の平均値の情報は、
図11のフローのステップB3,B4において、副室噴射量の補正量を算出するのに用いられる。
【0046】
[3.作用,効果]
(1)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、制御手段(すなわちECU21)の作用により、第2走行モード時の空燃比が第1走行モード時よりもリーン化され、言い換えれば第1走行モード時の空燃比が第2走行モード時よりもリッチ化される。第1走行モードは、エンジン10の動力が車両30の駆動に用いられる走行モードであり、エンジン回転数やエンジン負荷が大きく変動しうる走行モードである。したがって、第1走行モード時の空燃比をリッチにすることで、失火や燃焼不良の発生を防止することができ、燃焼安定性を向上させることができる。
また、第2走行モードは、エンジン10の動力がジェネレータ32での発電に使用される走行モードであり、エンジン回転数やエンジン負荷の変動が小さい走行モードである。したがって、第2走行モード時の空燃比をリーンにすることで、燃焼安定性を確保しつつ燃費を向上させることができる。このように、上記のハイブリッド車両30の制御装置によれば、走行モードの種類にかかわらず、エンジン10の燃焼安定性を適正化することができる。
【0047】
(2)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、第2走行モード時にチャージモードが設定された場合に、チャージモードの非設定時よりも空燃比がリッチ化される。これにより、エンジン10の燃焼安定性を向上させて、ジェネレータ32での発電をより確実に実施させることができる。また、エンジン10で生成されるトルクが増大することから、ジェネレータ32での発電効率を向上させることができ、バッテリ33の充電率を速やかに回復させることができる。
【0048】
(3)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、副室式のエンジン10において、第2走行モード時の主室噴射量FMAIN2を第1走行モード時の主室噴射量FMAIN1よりも減少させる制御が実施されうる。このような制御を実施した場合には、おもに主室噴射手段を制御して空燃比を制御することになり、副室噴射量の差(FSUB2-FSUB1)を小さくすることができる。したがって、トーチ火炎の不安定化を抑制することができ、燃焼安定性を向上させることができる。
【0049】
(4)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、副室式のエンジン10において、第2走行モード時の副室噴射量FSUB2を第1走行モード時の副室噴射量FSUB1よりも減少させる制御が実施されうる。このような制御を実施した場合には、主室噴射量の差(FMAIN2-FMAIN1)を小さくすることができ、燃焼安定性を維持することができ、排気中のNOx量を減少させることができる。
【0050】
(5)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、エンジン10の筒内圧力に基づいて副室噴射量の補正量が算出されうる。例えば、
図8(A),(B)に示すように、第2走行モード時における副室噴射量の補正量は、第1走行モード時よりも少なくなるように制御されうる。換言すれば、第1走行モード時における副室噴射量の補正量は、第2走行モード時よりも多くなるように制御されうる。このような制御を実施した場合、回転変動や負荷変動の燃焼への影響が大きい第1走行モードでは、第2噴射量を増加補正することで燃焼のばらつきを抑制できる。また、回転変動や負荷変動の燃焼への影響が小さい第2走行モードでは、第2噴射量を減少補正することで、第2噴射量の増減による燃焼ばらつきが発生することを抑制できる。
【0051】
(6)上記のハイブリッド車両30の制御装置では、筒内圧力の移動平均に基づいて副室噴射量の補正量が算出されうる。例えば、
図9(A),(B)に示すように、第2走行モード時における移動平均の算出区間N
2が、第1走行モード時の算出区間N
1よりも長く設定されうる。換言すれば、第1走行モード時における移動平均の算出区間N
1は、第2走行モード時の算出区間N
2よりも短く設定されうる。このような制御を実施した場合、第1走行モード時には、筒内圧力の変化に対する平均値の応答性を向上させることができ、筒内圧力の急変に対して適切に副室噴射量を増減させることができる。一方、筒内圧力が比較的安定している第2走行モード時においては、算出区間N
2を長くすることで平均値の分散が小さくなり、外乱に対する感度を低くすることができる。これにより、副室噴射量の急変を防止することができ、筒内圧力をより安定させることができる。また、筒内圧力が安定することで、ノッキングや燃焼変動が抑制されるため、燃費を向上させることができる。さらに、エンジン10の振動や騒音を低減させることができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0052】
[4.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。例えば上記の実施例では、副室式のエンジン10を例示したが、エンジン10の種類はこれに限定されない。少なくとも、車両30の駆動及び発電に使用されうるものであれば、どのような内燃機関であっても適用可能である。また、ハイブリッド車両30の走行モードとしては、少なくともエンジン10の動力を駆動に使用する第1走行モードと、エンジン10の動力を発電に使用しモータ31で駆動する第2走行モードとがあればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ポート噴射弁(主室噴射手段)
2,2′ 副室噴射弁(副室噴射手段)
3 筒内噴射弁(主室噴射手段)
4 多機能噴射弁(主室噴射手段,副室噴射手段)
5 副室
6 隔壁
7 孔
8 主室
9 点火プラグ
10 エンジン
11 吸気ポート
12 排気ポート
13 吸気バルブ
14 排気バルブ
15 ノックセンサ
16 筒内圧センサ
17 エンジン回転数センサ
18 アクセル開度センサ
19 車速センサ
20 チャージボタンセンサ(設定手段)
21 ECU(制御手段)
22 モード判定手段
23 筒内圧取得手段
24 点火制御手段
25 燃料制御手段
30 車両(ハイブリッド車両)
31 モータ
32 ジェネレータ
33 バッテリ
34 インバータ
35 インバータ
36 トランスアクスル