IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-曲げセンサ 図1
  • 特許-曲げセンサ 図2
  • 特許-曲げセンサ 図3
  • 特許-曲げセンサ 図4
  • 特許-曲げセンサ 図5
  • 特許-曲げセンサ 図6
  • 特許-曲げセンサ 図7
  • 特許-曲げセンサ 図8
  • 特許-曲げセンサ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】曲げセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20240416BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01L1/16 B
G01B7/30 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531942
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2022025581
(87)【国際公開番号】W WO2023276955
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021108331
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 圭助
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021856(WO,A1)
【文献】特開2021-043171(JP,A)
【文献】特開平06-174407(JP,A)
【文献】特開2015-015018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055257(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113838373(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電フィルムと、
前記圧電フィルムの主面に配置され、前記圧電フィルムを、折り曲げ可能な基材に貼り付ける粘着剤と、
を備え、
前記圧電フィルムの端面のうち少なくとも前記基材とともに折り曲げられる折り曲げ箇所が前記粘着剤で覆われている、
曲げセンサ。
【請求項2】
前記圧電フィルムの前記主面は、第1主面および第2主面を有し、
前記粘着剤は、前記第1主面に配置される第1粘着剤および前記第2主面に配置される第2粘着剤を有し、
前記圧電フィルムの前記折り曲げ箇所が前記第1粘着剤または前記第2粘着剤で覆われている、
請求項1に記載の曲げセンサ。
【請求項3】
前記第1粘着剤および前記第2粘着剤が接触している、
請求項2に記載の曲げセンサ。
【請求項4】
前記圧電フィルムを平面視した面積は、前記粘着剤を平面視した面積よりも小さい、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の曲げセンサ。
【請求項5】
前記圧電フィルムは、平面視して前記折り曲げ箇所における折り曲げ線に沿った第1方向の長さが前記粘着剤の前記第1方向の長さよりも短い、
請求項4に記載の曲げセンサ。
【請求項6】
前記圧電フィルムの前記第1方向の長さは、前記粘着剤の前記第1方向の長さよりも4%以上短い、
請求項5に記載の曲げセンサ。
【請求項7】
前記圧電フィルムは、平面視して前記折り曲げ箇所の両端面が前記粘着剤に覆われている、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の曲げセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、曲げセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2Bには、圧電フィルムの両主面に粘着剤が配置された圧電パネルが開示されている。特許文献1の圧電パネルは、例えばタッチセンサに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-47281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電フィルムを折り曲げ可能な電子機器に搭載すると、折り曲げ箇所に応力が集中し、圧電フィルムにクラックが生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態の目的は、折り曲げ可能な機器において応力の集中を防止し、クラックの発生を防止する曲げセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る曲げセンサは、圧電フィルムと、前記圧電フィルムの主面に配置され、前記圧電フィルムを、折り曲げ可能な基材に貼り付ける粘着剤と、を備えている。前記圧電フィルムの端面のうち少なくとも前記基材とともに折り曲げられる折り曲げ箇所が前記粘着剤で覆われている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、折り曲げ可能な機器において応力の集中を防止し、クラックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は曲げセンサ1を備えた電子機器100の斜視図であり、図1(B)は折り曲げた状態の電子機器100の斜視図である。
図2】電子機器100の断面模式図である。
図3】曲げセンサ1の一部拡大断面図である。
図4】圧電フィルム11を切り出す前のマザーシートを示す平面図である。
図5図5(A)は参考例に係るひずみ分布を示す図であり、図5(B)は本実施形態に係るひずみ分布を示す図である。
図6】曲げセンサ1の一部拡大断面図である。
図7】変形例に係る曲げセンサ1の一部拡大断面図である。
図8】曲げセンサ1の平面図である。
図9】圧電フィルム11を切り出す前のマザーシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る曲げセンサ1および当該曲げセンサ1を備えた電子機器100について、図を参照しながら説明する。なお、各図面において、説明を容易にするため、電極および配線等は省略している。
【0010】
図1(A)は曲げセンサ1を備えた電子機器100の斜視図である。図1(B)は折り曲げた状態の電子機器100の斜視図である。電子機器100は、例えばスマートフォン等の情報処理装置である。
【0011】
図2は、図1(A)に示す電子機器100を、図1(A)に示すI-I線で切断した断面模式図である。なお、図2は、説明のために曲げセンサ1を大きく表示し、他の電子部品等は省略している。
【0012】
図1(A)に示すように、電子機器100は、略直方体形状の筐体102を備える。電子機器100は、筐体102に配置された平板状の表面パネル103を備える。表面パネル103は、ユーザが指またはペンなどを用いてタッチ操作を行う操作面として機能する。以下、筐体102の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。
【0013】
図2に示すように、電子機器100は、筐体102の内側に曲げセンサ1を備える。曲げセンサ1は、表面パネル103のうち筐体102の内側になる面に貼り付けられている。曲げセンサ1は、粘着剤10、圧電フィルム11、粘着剤12、および保護フィルム13を備えている。
【0014】
曲げセンサ1は、粘着剤10で電子機器100の表面パネル103に貼り付けられる。なお、この例では、曲げセンサ1は、表面パネル103に貼り付けられているが、曲げセンサ1は、表示器やタッチセンサ等に貼り付けられる場合もある。なお、曲げセンサ1が透明である場合、曲げセンサ1は表示器よりも表面パネル103側に配置してもよい。
【0015】
筐体102、表面パネル103、および曲げセンサ1は、可撓性を有する。これにより、電子機器100は、折り曲げることができる。この例では、電子機器100は、X方向に平行な折り曲げ線Lを中心とする所定範囲を折り曲げ箇所L1として折り曲げることができる。なお、この例では、表面パネル103を内側にして折り曲げるが、表面パネル103を外側にして折り曲げてもよい。
【0016】
電子機器100は、0°~180°まで開閉することができる。曲げセンサ1は、電子機器100の折り曲げの有無および折り曲げの状態(現在の開閉角度)を検出する。なお、電子機器100は、屈曲部にヒンジまたは蛇腹構造等を設けることにより折り曲げ可能としてもよい。
【0017】
曲げセンサ1の圧電フィルム11は、平面視して矩形状に形成されている。粘着剤10、粘着剤12、および保護フィルム13は、平膜状であり、圧電フィルム11と同様に平面視して矩形状に形成されている。
【0018】
圧電フィルム11は、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)またはポリ乳酸等のキラル高分子からなる。ポリ乳酸(PLA)は、L型ポリ乳酸(PLLA)またはD型ポリ乳酸(PDLA)のいずれを用いてもよい。圧電フィルム11は、電子機器100が折り曲げられ、平面方向に伸縮することで分極し、第1主面および第2主面に電位差を生じる。
【0019】
圧電フィルム11の両主面には不図示の電極が形成されている。これら電極は、不図示の電圧検出回路に接続される。電圧検出回路は、両主面の電極の電位差を検出する。電圧検出回路に接続される不図示の演算器は、電位差(電圧)が所定値以上になった場合に基材である表面パネル103の折り曲げを検出する。演算器は、電圧に積分等の演算をすることで、表面パネル103の折り曲げ状態(開閉角度)を検出することもできる。
【0020】
図3は、曲げセンサ1の一部拡大断面図である。図3において筐体102は省略している。圧電フィルム11の主面は、第1主面および第2主面を有する。この例では、Z方向に沿って、第1主面に第1粘着剤である粘着剤12が貼り付けられ、第2主面に第2粘着剤である粘着剤10が貼り付けられる。第1主面は、粘着剤12を介して保護フィルム13が貼り付けられる。第2主面は、粘着剤10を介して表面パネル103が貼り付けられる。なお、本実施形態において保護フィルム13は必須の構成ではない。この場合、粘着剤12も不要である。
【0021】
圧電フィルム11は、基材である表面パネル103とともに折り曲げられる折り曲げ箇所L1の端面(X方向の端面)が粘着剤10で覆われている。図4は、圧電フィルム11を切り出す前のマザーシートを示す平面図である。圧電フィルム11は、図4に示すマザーシートからピナクル刃などでカットして個片化する。図4の例では、圧電フィルム11は、第2主面側からピナクル刃によりカットされる。すると、第2主面に配置された粘着剤10の断面は、ピナクル刃により圧電フィルム11のX方向の端面に沿って延び、圧電フィルム11の端面を覆う。
【0022】
これにより、圧電フィルム11のうち、少なくとも折り曲げ箇所L1のX方向の端面は、粘着剤10により覆われる。粘着剤10は、ひずみを緩和し、応力を緩和する。したがって、粘着剤10は、圧電フィルム11のうち折り曲げ箇所L1のX方向の端面における応力の集中を防止する。
【0023】
図5(A)は参考例に係るひずみ分布を示す図であり、図5(B)は本実施形態に係るひずみ分布を示す図である。参考例のひずみ分布は、圧電フィルムの端面が粘着剤で覆われていない場合のシミュレーションである。
【0024】
図5(A)に示す様に、参考例の圧電フィルムでは、折り曲げ箇所L1におけるX方向の端面付近にひずみが集中している。これに対して、本実施形態の圧電フィルム11では、ひずみが分散して、折り曲げ箇所L1におけるX方向の端面付近に大きなひずみが生じていない。
【0025】
この様に、本実施形態の曲げセンサ1は、折り曲げ可能な機器において圧電フィルム11に対する応力の集中を防止し、圧電フィルム11のクラックの発生を防止することができる。
【0026】
図3では、圧電フィルム11の端面が第2主面側の粘着剤10で覆われる例を示した。しかし、例えば以下の様に、圧電フィルム11の端面が第1主面側の粘着剤12で覆われていてもよい。
【0027】
図6は、曲げセンサ1の一部拡大断面図である。図6に示す様に、圧電フィルム11の端面は、第1主面側の粘着剤12で覆われていてもよい。この場合、圧電フィルム11は、第1主面側からピナクル刃によりカットされる。すると、第1主面に配置された粘着剤12の断面は、ピナクル刃により圧電フィルム11のX方向の端面に沿って延び、圧電フィルム11の端面を覆う。
【0028】
また、図6に示す様に、保護フィルム13も同時にマザーシートからカットする場合、圧電フィルム11の端面は、さらに保護フィルム13で覆われる場合もある。この場合、保護フィルム13により圧電フィルム11の端面も保護される。
【0029】
図7は、変形例に係る曲げセンサ1の一部拡大断面図である。図7の例では、粘着剤10および粘着剤12が互いに接触している。この場合、圧電フィルム11のX方向の端面は、粘着剤12により完全に覆われる。図7の例では、第1主面側から圧電フィルム11をカットしているため、粘着剤12が圧電フィルム11の端面に沿って延びて粘着剤10に接触しているが、第2主面側から圧電フィルム11をカットすれば、粘着剤10が圧電フィルム11の端面に沿って延びて粘着剤12に接触する。これにより、曲げセンサ1は、さらに応力の集中を防止することができる。
【0030】
図8は、曲げセンサ1の平面図である。図9は、圧電フィルム11を切り出す前のマザーシートを示す平面図である。図9に示す圧電フィルム11は、Y方向の中央部分におけるX方向に沿った長さがY方向の端部におけるX方向の長さよりも短くなっている。
【0031】
図7の様に第1粘着剤および第2粘着剤を接触させるには、例えば図8および図9の平面図に示す様に、平面視して圧電フィルム11の面積が粘着剤(粘着剤10または粘着剤12)の面積よりも小さくすればよい。これにより、マザーシートから圧電フィルム11を切り出す際に、第1粘着剤および第2粘着剤が接触する。
【0032】
図8および図9の圧電フィルム11の例では、Y方向の端部以外のほとんどの箇所で、圧電フィルム11のX方向に沿った長さが、粘着剤10(または粘着剤12)のX方向に沿った長さより短くなっている。しかし、圧電フィルム11は、少なくとも折り曲げ箇所L1においてX方向に沿った長さが粘着剤10(または粘着剤12)よりも短くなっていればよい。すなわち、圧電フィルム11は、平面視して折り曲げ箇所L1における折り曲げ線に沿った第1方向(X方向)の長さが粘着剤(粘着剤10または粘着剤12)の第1方向の長さよりも短くなっていればよい。
【0033】
これにより、マザーシートから圧電フィルム11を切り出す際に、少なくとも折り曲げ箇所L1において、第1粘着剤および第2粘着剤が接触する。よって、曲げセンサ1は、さらに応力の集中を防止することができる。
【0034】
なお、折り曲げ箇所L1における圧電フィルムのX方向の長さは、粘着剤のX方向の長さよりも4%以上短いことが好ましい。発明者は、折り曲げ箇所L1における圧電フィルムのX方向の長さを、粘着剤のX方向の長さよりも4%以上短くすることで、応力の集中を防止し、クラックの発生を防止することができる旨、確認した。
【0035】
最後に、前記実施形態の説明は、すべての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の範囲を含む。
【0036】
例えば、本実施形態では、圧電フィルム11のX方向の両端面が粘着剤で覆われている例を示した。しかし、圧電フィルム11のうち、X方向の少なくとも1つの端面が粘着剤で覆われていれば、応力の集中を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 :曲げセンサ
10 :粘着剤
11 :圧電フィルム
12 :粘着剤
13 :保護フィルム
100 :電子機器
102 :筐体
103 :表面パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9