(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】眼科装置及び眼科システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240416BHJP
A61B 3/15 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B3/10
A61B3/15
(21)【出願番号】P 2023067765
(22)【出願日】2023-04-18
(62)【分割の表示】P 2019139397の分割
【原出願日】2019-07-30
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮輔
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169135(WO,A1)
【文献】特開2019-058618(JP,A)
【文献】特開2018-042760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の情報を光学的に取得するための眼科装置であって、
前記被検眼で反射された光を受光可能な光学系を有するヘッド部と、
前記ヘッド部を移動可能に保持する駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記駆動機構は、回転可能に接続される第1アーム部及び第2アーム部を含む少なくとも2つのアームと、前記ヘッド部を移動可能とするための第一軸を中心に回転可能な第1機構部及び第2機構部を含む少なくとも2つの第一の回転支持機構と、前記第一軸の方向と異なる第二軸を中心に回転可能な第3機構部及び第4機構部及び第5機構部を含む少なくとも3つの第二の回転支持機構と、前記第一の回転支持機構及び前記第二の回転支持機構を駆動するための駆動部と、第1支持部及び第2支持部及び第3支持部及び第4支持部とを備え、
前記第1支持部には前記第1機構部が設けられ、前記第1支持部には前記第3機構部が接続され、前記第3機構部には前記第1アーム部が接続され、前記第1アーム部には前記第4機構部が接続され、前記第4機構部には前記第3支持部が接続され、前記第3支持部には前記第2アーム部が接続され、前記第2アーム部には前記
第5機構部が接続され、前記第5機構部には前記第4支持部が接続され、前記第4支持部には前記第2機構部が接続され、前記第2機構部には前記第2支持部が接続され、前記第2支持部には前記ヘッド部が支持され、
前記制御部は、前記第1機構部及び前記第2機構部を同期して前記第一軸を中心に回転させ、かつ、前記第3機構部及び前記第4機構部及び前記第5機構部を同期して前記第二軸を中心に回転させることにより、前記ヘッド部に設けられる偏向部材からの反射光の光軸が前記被検眼を通るように維持しながら、前記ヘッド部と前記被検眼との位置合わせをする眼科装置。
【請求項2】
前記被検眼と前記ヘッド部との相対位置を検出するためのアライメント検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記アライメント検出部の検出結果を用いて、前記ヘッド部と前記被検眼との位置合わせをするために前記駆動部を制御可能である請求項
1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記ヘッド部と前記駆動機構は、少なくとも2組で構成され、
2つの前記ヘッド部は、被検者の左右の被検眼で反射された光をそれぞれ受光可能である請求項1
又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記被検眼の視線位置を検出する視線位置検出部を更に備え、
前記制御部は、前記視線位置検出部の前記視線位置の検出結果を用いて、前記ヘッド部と前記被検眼との位置合わせをするために前記駆動部を制御可能である請求項1から
3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の眼科装置と、
ネットワークを介して前記光学系が受光した光に関する情報を受信する端末装置と、
を備える眼科システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の測定や撮影等に用いる眼科装置及び眼科システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置には、被検眼の特性を測定するための眼科測定装置や、被検眼の画像を得るための眼科撮影装置等が含まれる。被検眼の測定や撮影等を行うためには、被検眼(被検者)と眼科装置の位置を調整する必要がある。そのため、被検眼に対して眼科装置の位置を移動可能とする眼科装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、装置本体部が駆動部を介してベース部に設けられて構成された眼科装置が開示されている。特許文献1に記載された装置本体部には、被検眼の眼圧を測定する眼圧測定部と、被検眼のその他の光学特性(眼特性)を測定する眼特性測定部と、が設けられている。
【0004】
特許文献1に記載された駆動部は、装置本体部をベース部に対して、上下方向(Y軸方向)と、前後方向(Z軸方向)と、それらに直交する左右方向(X軸方向)と、に移動させる。具体的には、特許文献1に記載された駆動部は、Y軸駆動部分とZ軸駆動部分とX軸駆動部分とを有し、ベース部に対して装置本体部を上下方向(Y軸方向)と前後方向(Z軸方向)と左右方向(X軸方向)とにスライド移動させるスライド機構として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、測定部や撮影部などを含む検査部が設けられた装置本体部をスライド移動させるスライド機構が設けられていると、駆動部が大掛かりになり、眼科装置の小型化を図ることが困難となる課題がある。また、当該機構を用いて装置本体部の可動範囲を大きく、自由度を高めようとすると、駆動部が更に大型化してしまうという課題がある。さらに、検査部の向きや傾きを自由に変えるための機構を設けると更に大型化してしまう。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、小型でありかつ、測定部の位置決め自由度を高めた眼科装置及び眼科システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る眼科装置は、被検眼の情報を光学的に取得するための眼科装置であって、前記被検眼で反射された光を受光可能な光学系を有するヘッド部と、前記ヘッド部を移動可能に保持する駆動機構と、前記被検眼と前記ヘッド部との相対位置を検出するためのアライメント検出部と、前記駆動機構を制御する制御部と、を備え、前記駆動機構は、回転可能に接続される少なくとも2つのアームと、前記ヘッド部を移動可能とするための第一軸を中心に回転可能な少なくとも2つの第一の回転支持機構と、第一軸の方向と異なる第二軸を中心に回転可能な少なくとも3つの第二の回転支持機構と、前記第一の回転支持機構及び前記第二の回転支持機構を駆動するための少なくとも5つの駆動部と、を備え、前記制御部は、前記アライメント検出部の検出結果を用いて、前記ヘッド部と前記被検眼の位置合わせするために前記駆動部を制御可能である。
【0009】
また、前記少なくとも2つのアームは、前記第一の回転支持機構を介して接続されており、前記少なくとも2つのアームと前記ヘッド部は、前記第一の回転支持機構及び前記第二の回転支持機構を介して接続されていてもよい。
【0010】
また、前記第一軸は鉛直方向を指向可能であり、前記第二軸は前記第一軸に直交する水平方向を指向可能であってもよい。
【0011】
また、前記第一軸は水平方向を指向可能であり、前記第二軸は前記第一軸に直交する鉛直方向に指向可能であってもよい。
【0012】
また、前記制御部は、前記光学系の光軸が前記被検眼の眼球回旋点又はその近傍である眼球略回旋点を通るように維持して前記ヘッド部を移動させるために前記駆動部を制御可能であってもよい。
【0013】
また、前記制御部は、前記ヘッド部の姿勢を維持して前記光学系の光軸を前記被検眼に向かう方向に合わせるために前記駆動部を制御可能であってもよい。
【0014】
また、前記ヘッド部と前記駆動機構は、少なくとも2組で構成され、2つの前記ヘッド部は、被検者の左右の被検眼で反射された光をそれぞれ受光可能であってもよい。
【0015】
また、前記ヘッド部は、2つのアライメント用カメラを備え、前記アライメント検出部は、前記2つのアライメント用カメラが撮像した画像情報により前記被検眼と前記ヘッド部の相対位置を検出してもよい。
【0016】
また、前記ヘッド部は、アライメント光源と、ラインセンサと、を備え、前記アライメント検出部は、前記アライメント光源が照射され前記被検眼で反射された光を前記ラインセンサで受光し、前記ラインセンサからの情報により前記被検眼と前記ヘッド部の相対位置を検出してもよい。
【0017】
また、前記光学系は、前記被検眼で反射された光により前記被検眼の眼底像を撮像可能な眼底カメラを備えてもよい。
【0018】
また、前記光学系は、前記被検眼で反射された光により前記被検眼の前眼部を撮像可能な前眼部カメラを備えてもよい。
【0019】
また、前記被検眼又は前記僚眼の視線位置を検出する視線位置検出部を更に備え、前記制御部は、前記視線位置検出部の前記視線位置の検出結果を用いて、前記ヘッド部と前記被検眼の位置合わせするために前記駆動部を制御可能であってもよい。
【0020】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る眼科システムは、被検眼の情報を光学的に取得するための眼科システムであって、前記被検眼で反射された光を受光可能な光学系を有するヘッド部と、前記ヘッド部を移動可能に保持する駆動機構と、前記被検眼と前記ヘッド部との相対位置を検出するためのアライメント検出部と、前記駆動機構を制御する制御部と、ネットワークを介して前記光学系が受光した光に関する情報を受信する端末装置と、を備え、前記駆動機構は、回転可能に接続される少なくとも2つのアームと、前記ヘッド部を移動可能とするための第一軸を中心に回転可能な少なくとも2つの第一の回転支持機構と、第一軸の方向と異なる第二軸を中心に回転可能な少なくとも3つの第二の回転支持機構と、前記第一の回転支持機構及び前記第二の回転支持機構を駆動するための少なくとも5つの駆動部と、を備え、前記制御部は、前記アライメント検出部の検出結果を用いて、前記ヘッド部と前記被検眼の位置合わせするために前記駆動部を制御可能である。
【発明の効果】
【0021】
上記手段を用いる本発明によれば、小型でありかつ、測定部の位置決め自由度を高めた眼科装置及び眼科システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る眼科装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る眼科装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る眼科装置を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る眼科装置の駆動機構の変形例を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る眼科装置の他の変形例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る眼科装置の一部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る眼科装置を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る眼科装置のヘッド部の動作を示す上面概略図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る眼科装置のヘッド部の動作を示す側面概略図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る眼科システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0024】
(第1実施形態)
まず本発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る眼科装置を表す側面図である。本実施形態に係る眼科装置10は、被検眼Eに光を照射し、被検眼Eで反射した光の検出結果に基づいて被検眼の特性に関する情報を取得する。すなわち、本実施形態に係る眼科装置10は、被検眼Eで反射された光に基づいて被検眼Eを検査する眼科装置である。眼科装置による検査には、一般に被検眼Eの特性を取得するための測定と、被検眼Eの画像を取得するための撮影と、が含まれる。
【0026】
眼科測定装置の例としては、被検眼の屈折特性を測定する眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)や、眼圧計や、角膜の特性(角膜厚、細胞分布等)を得るスペキュラーマイクロスコープや、ハルトマン-シャックセンサを用いて被検眼の収差情報を得るウェーブフロントアナライザや、眼軸長測定装置などが挙げられる。詳細には、レフラクトメータは、後眼部にリング像を照射して、カメラで撮像された後眼部からの反射像を解析することによって眼屈折を測定するものである。また、ケラトメータは、前眼部にリング像を照射し、前眼部カメラで撮像された反射像を解析することによって眼屈折を測定するものである。
【0027】
眼科撮影装置の例としては、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography、OCT)を用いて断面像を得る光干渉断層計や、眼底の眼底像を撮影する眼底カメラや、共焦点光学系を用いたレーザ走査により眼底の画像を得る走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope、SLO)や、スリット光を用いて角膜の光切片を切り取ることにより画像を得るスリットランプなどが挙げられる。
【0028】
図1は、第1実施形態に係る眼科装置10の概略図である。また、
図2は、第1実施形態に係る眼科装置10の駆動機構30部分の斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る眼科装置10の構成要素の接続状態を示すブロック図である。以下、第1実施形態に係る眼科装置10の構成について
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0029】
第1実施形態に係る眼科装置10は、ヘッド部20と、駆動機構30と、表示部74と、ベース部80と、顎受部81と、額当部82と、を備える。ヘッド部20は、駆動機構30を介してベース部80に設けられている。
【0030】
ヘッド部20は、眼圧測定部(不図示)および眼特性測定部(不図示)を備える。すなわち、本実施形態に係る眼科装置10は、眼圧測定部と、眼特性測定部と、を備える複合型の眼科装置である。眼圧測定部は、被検眼の眼圧を測定する。眼特性測定部は、被検眼のその他の光学特性(眼特性)を測定する。但し、ヘッド部20の内部に設けられる測定部および撮影部の少なくともいずれかは、眼圧測定部および眼特性測定部には限定されない。例えば、眼科装置10は、OCTを用いて断面像を得る光干渉断層計と、眼底を写真撮影する眼底カメラと、を備える複合型の眼科装置であってもよい。すなわち、本実施形態に係る眼科装置10は、例を挙げて前述した眼科撮影装置および眼科測定装置のいずれか単独の装置であってもよく、いずれか複数の組み合わされた装置であってもよい。このように、ヘッド部20は、内部に撮影機能を有する撮影部および測定機能を有する測定部の少なくともいずれかを含む検査部を備える。本実施形態では、ヘッド部20は、眼圧測定部および眼特性測定部を検査部として備える場合を例に説明する。
【0031】
ヘッド部20に設けられた眼圧測定部および眼特性測定部のそれぞれは、被検眼Eを光学的に検査する検査光学系を有する。例えば、眼圧測定部および眼特性測定部は、それぞれ被検眼Eの前眼部や眼底に照明光を照射する光源21を含む照明光学系や、被検眼Eの前眼部画像や眼底画像を取得するための撮像カメラ22(前眼部カメラ、眼底カメラ等)を含む撮影光学系等を検査光学系として備える。検査光学系の光源21から出力された光は、検査光学系の光軸O1に平行な光線として被検眼Eに照射される。また、ヘッド部20は、被検眼Eとヘッド部20が適正な距離となるようにアライメントを調整するためのステレオカメラ23を備える。ステレオカメラ23は、少なくとも2つのアライメント用カメラを備え、後述するアライメント検出部72は、2つのアライメント用カメラが撮像した画像情報により被検眼Eとヘッド部20の相対位置を検出することができる。
【0032】
表示部74は、液晶ディスプレイで形成されており、制御部71の制御により、被検眼Eの前眼部像等の画像や検査結果等を表示する。表示部74は、本実施形態では、操作部75としてタッチパネルの機能を搭載しており、眼圧測定部または眼特性測定部を用いて測定を行うための操作や、ヘッド部20を移動するための操作を行うことができる。表示部74は、ユーザがタッチパネルにより被検眼Eの画像を指示することにより、指示された場所を中心となるようにヘッド部20を移動させたり、自動でアライメント調整によりヘッド部20を移動させ、ピント等を合わせることができる。また、操作部75からの操作により手動でヘッド部20を移動させても構わない。なお、測定を行うための操作は、測定スイッチを設けて、測定スイッチの操作により行うものであってもよい。また、ヘッド部20を移動するための操作は、コントロールレバーや移動操作スイッチを設けて、コントロールレバーや移動操作スイッチの操作により行うものであってもよい。
【0033】
顎受部81および額当部82は、測定時にヘッド部20に対して被検者の顔を固定することにより、被検眼Eの位置を眼科装置10に対して固定するものである。顎受部81は、被検者が顎を載せる部分であり、額当部82は、被検者が額を当接させる部分である。ヘッド部20は、駆動機構30により、ベース部80に対して移動することができる。それにより、ヘッド部20は、顎受部81と額当部82とにより固定された被検者の顔、すなわち被検眼Eに対して移動可能に構成される。
【0034】
本願明細書において、重力方向を鉛直方向であるY方向と定義し、重力方向に垂直となる直行するX方向とZ方向と定義する。また、X方向とZ方向により定義される平面を指向する方向を水平方向と定義する。また、
図1の左右方向をZ方向(検査光学系の光軸O1の方向)とする。
【0035】
駆動機構30は、ヘッド部20をベース部80に対して、鉛直方向と、水平方向と、に移動させることができる。また、ヘッド部20を鉛直方向や水平方向に対して、任意の方向に傾けることができる。
【0036】
駆動機構30は、2本のアームであるアーム部31a、31bと、5つの回転支持機構である回転支持機構部32a、32b、32c、32d、32eと、各回転支持機構を駆動するための5つの駆動部33a、33b、33c、33d、33eと、支持部35a、35b、35c、35dを備える。回転支持機構部32a、32b、32c、32d、32eはアーム部や支持部に構成され、それぞれ軸34a、34b、34c、34d、34eを中心に、接続される他方のアーム部や支持部を回転可能とする機構である。具体的には、2つの部材(アーム部や支持部)を接続する軸体を回転可能に保持する機構である。駆動部33a、33b、33c、33d、33eは、回転支持機構部32a、32b、32c、32d、32eを回転させる駆動力を発生させる例えばモータである。具体的には、例えばDCモータとエンコーダを組み合わせて、所定の回転角度に制御可能な機構である。なお、それぞれの駆動部はステッピングモータをであっても構わない。また、モータは減速機を一体として構成していても構わない。本願明細書では、駆動部と回転支持機構は一体で構成されるものとして図示し、例えば回転支持機構部32aと当該回転支持機構部32aを駆動する駆動部33aを32a(33a)のように示している。なお、回転支持機構部と駆動部は別体で構成しても構わない。例えば、回転支持機構部は、ベアリング等により軸体を保持する機構であり、駆動部はベアリング等が保持するギヤ付きの軸体に減速ギヤ等を介して回転の駆動力を伝達するように構成しても構わない。
【0037】
以下、駆動機構30の構成をより詳細に説明する。アーム部31aは、支持部35bからベース部80に固定される支持部35aを介してベース部80は接続される。より詳しくは、支持部35bは、ベース部80に固定される支持部35aと支持部35aに備えられる回転支持機構部32a(第一の回転支持機構に相当)により軸34aを中心に回転可能に接続される。また、アーム部31aは、支持部35bと支持部35bに備えられる回転支持機構部32b(第二の回転支持機構に相当)により軸34bを中心に回転可能に接続される。次に、アーム部31bは、アーム部31aとアーム部31aに備えられる回転支持機構部32c(第二の回転支持機構に相当)により回転可能に接続される。アーム部31bとヘッド部20は、支持部35c、支持部35dを介して接続される。より詳しくは、支持部35cは、アーム部31bとアーム部31bに備えられる回転支持機構部32d(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34dを中心に回転可能に接続される。支持部35dは、支持部35cと支持部35cに備えられる回転支持機構部32e(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34eを中心に回転可能に接続される。なお、各回転支持機構部は、接続される部材側に備えられていても構わない。
【0038】
図1、
図2において、軸34a、軸34eはY方向、すなわち鉛直方向を指向し得る軸であり、2本の軸34a、軸34eは本発明の第一軸の一例に相当する。軸34b、軸34c、軸34dはX方向、すなわち水平方向を指向し得る軸であり、3本の軸34b、軸34c、軸34dは本発明の第二軸の一例に相当する。なお、各軸は、駆動機構30が動作する過程において、必ずしも上記の関係を示すものではない。
【0039】
図3は、第1実施形態に係る眼科装置10の電気的な接続状態を示すブロック図である。制御部71は、ベース部80に内蔵される制御装置である。制御部71は、光源21の制御を行い、光を被検眼Eに照射することができる。また制御部71は、撮像カメラ22からの情報を受信し、受信した撮像画像データの解析を行い、撮像画像データや解析結果を表示部74に表示することができる。アライメント検出部72は、ステレオカメラ23からの情報により、ヘッド部と被検眼との相対位置に関する情報を算出することができる。制御部71は、アライメント検出部72が算出した相対位置に関する情報に基づいて、駆動部33a、33b、33c、33d、33eのうち必要な駆動部を制御し、ヘッド部20と被検眼Eを適正に位置関係となるようにヘッド部20の位置を移動させることができる。
【0040】
視線位置検出部73は、撮像カメラ22から入力される撮像画像データを制御部71を介して受信し、被検眼Eの視線位置を検出し、検出した視線位置から視線方向を算出し、制御部71に送信する機能を有する。視線位置検出部73は、例えば、プルキンエ像を利用する視線方向検出方法(角膜検出方式)を用いて被検眼Eの視線位置を検出することができる。被検眼Eに対して光源21から近赤外を入射させる。被検眼Eの角膜Eaの表面上には、点光源の近赤外光の入射により、近赤外光の反射像であるプルキンエ像が生じる。このプルキンエ像の位置は、被検眼Eの視線方向の変化に応じて変化する。従って、視線位置検出部73は、撮像カメラ22から入力される被検眼Eの撮像画像データに基づき、被検眼Eにおけるプルキンエ像の位置座標C1を検出することができる。そして、視線位置検出部73は、位置座標C1が示すプルキンエ像の位置と瞳孔中心との相対位置(視線位置)に基づいて、被検眼Eの視線方向を検出することができる。なお、視線方向の検出の方法は他の方法を用いても構わない。
【0041】
視線位置検出部73は、撮像画像データに基づき、撮像カメラ22に対する被検眼Eの相対位置を検出する。なお、被検眼Eの相対位置の検出方法は特に限定はされない。この場合、視線位置検出部73は、ヘッド部20に対する被検眼Eの相対位置を検出する被検眼位置検出部として機能する。
【0042】
次に、眼科装置10、特に駆動機構30の動作について説明する。制御部71は、駆動部33a制御することにより、軸34aを中心として支持部35b、及びそれに接続されるアーム部31aを回転させ、ヘッド部20をXZ平面内で向き(傾き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33bを制御することにより、軸34bを中心としてアーム部31aを回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33cを制御することにより、軸34cを中心としてアーム部31bを回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33dを制御することにより、軸34dを中心として支持部35cを回転させ、ヘッド部20の傾き(向き)を変えることができる。さらに、制御部71は、駆動部33eを制御することにより、軸34eを中心として支持部35dを回転させ、ヘッド部20の向き(傾き)を変えることができる。
【0043】
このように、制御部71は、駆動部33a、33b、33c、33d、33eを制御することにより、ヘッド部20をXYZ空間内の任意の位置に移動させることができ、また任意の方向に傾け、又、向きを変えることができる。制御部71は、視線位置検出部73で検出した被検眼Eの視線位置(検出結果)に基づく視線方向に用いて、検査光学系の光軸O1と視線方向が略一致するようにヘッド部20の向けるために駆動部33a、33b、33c、33d、33eを制御することができる。また、検査光学系の光軸O1を、視線方向を基準として視線方向からずらすようにヘッド部20の向けるために駆動部33a、33b、33c、33d、33eを制御してもよい。例えば、白内障の被検者の被検眼Eの眼底像の撮影やOCTを用いて断面像を得る場合、検査光学系の光軸O1が被検眼Eの水晶体の白濁部位を避けるようにヘッド部20を向けることにより、白内障の被検者であっても検査を行うことができる。このように、被検眼Eに対してヘッド部20を任意の位置、又、任意の方向とすることができ、被検眼Eの任意な位置、任意の方向から検査等を行うことができる。
【0044】
また、各駆動部の制御を同期させることにより、ヘッド部20の傾き、向きを一定に保持し、ヘッド部20の位置を移動することができる。それにより、ヘッド部20の姿勢を維持して検査光学系の光軸O1を被検眼Eに向かう方向に合わせるように移動させることができる。
【0045】
また、各駆動部の制御を同期させることにより、検査光学系の光軸O1を被検眼Eの回旋の中心点である眼球回旋点、又はその近傍(眼球略回旋点)を通るように維持しながらヘッド部20の傾き、向きを変化させることができる。
【0046】
アライメント検出部72は、ステレオカメラ23からの情報により、ヘッド部20と被検眼Eとの相対位置に関する情報を算出することができる。制御部71は、例えば、ヘッド部20と被検眼Eの相対位置が適正の位置に対して遠いと判断した場合、すなわちX方向の距離が離れていると判断した場合、駆動部33d、33c、33bの制御を同期して駆動することにより、ヘッド部20の姿勢を維持し、Y方向の位置を保ち、ヘッド部20を
図1のZ方向である右方向に自動的に移動させる。制御部71は、アライメント検出部72からの距離情報に応じて駆動機構30を制御し、ヘッド部20を移動させてもよいし、アライメント検出部72から逐次出力される相対位置に関する情報を用いてフィードバック制御によりヘッド部20を移動させても構わない。
【0047】
また、制御部71は、操作部75からの操作に応じて各駆動部を制御して、ヘッド部20の移動等を行っても構わない。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る眼科装置10によれば、スライド機構を用いることなく小型でありかつ、ヘッド部20の位置決め自由度を高めた眼科装置10を提供することができる。また、ヘッド部20の位置決め自由度を高めつつ構造を簡単にすることができる。また、制御部71はアライメント検出部72からの情報に応じて駆動機構30を制御することにより、自動でヘッド部20と被検眼Eを適正に位置関係に位置合わせをすることができる。
【0049】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態に係る眼科装置10の変形例について説明する。第1実施形態と異なり、アーム部の1つが水平方向にのみ回転して移動可能な構成である。
図4は、第1実施形態に係る眼科装置の駆動機構の変形例を示す概略構成図であり、眼科装置10の駆動機構30’部分を拡大して示した図である。
【0050】
駆動機構30’は、2本のアームであるアーム部31a’、31b’と、5つの回転支持機構である回転支持機構部32a’、32b’、32c’、32d’、32e’と、各回転支持機構を駆動するための5つの駆動部33a’、33b’、33c’、33d’、33e’と、支持部35a’、35b’、35c’、35d’を備える。回転支持機構部32a’、32b’、32c’、32d’、32e’はアーム部や支持部に構成され、それぞれ軸34a’、34b’、34c’、34d’、34e’を中心に、接続される他方のアーム部や支持部を回転可能とする機構である。
【0051】
以下、駆動機構30’の構成をより詳細に説明する。アーム部31a’は、ベース部80と、ベース部80に固定される支持部35a’と支持部35a’に備えられる回転支持機構部32a’(第二の回転支持機構に相当)により軸34a’を中心に回転可能に接続される。これにより、アーム部31a’は水平方向に回転して移動可能となる。アーム部31b’は、アーム部31a’と支持部35b’を介して接続される。より詳しくは、支持部35b’は、アーム部31a’とアーム部31a’に備えられる回転支持機構部32b’(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34b’を中心に回転可能に接続される。アーム部31b’は、支持部35b’と支持部35b’に備えられる回転支持機構部32c’(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34c’を中心に回転可能に接続される。アーム部31b’とヘッド部20は、支持部35c’、支持部35d’を介して接続される。より詳しくは、支持部35c’は、アーム部31b’とアーム部31b’に備えられる回転支持機構部32d’(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34d’を中心に回転可能に接続される。支持部35d’は、支持部35c’と支持部35c’に備えられる回転支持機構部32e’(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34e’を中心に回転可能に接続される。なお、各回転支持機構部は、接続される部材側に備えられていても構わない。
【0052】
図4において、軸34c’、軸34d’はX方向、すなわち水平方向を指向し得る軸であり、2本の軸34c’、軸34d’は本発明の第一軸の一例に相当する。また、軸34a’、軸34b’、軸34e’はY方向、すなわち鉛直方向を指向すし得る軸であり、3本の軸34a’、軸34b’、軸34e’は本発明の第二軸の一例に相当する。なお、各軸は、駆動機構30’が動作する過程において、必ずしも上記の関係を示すものではない。
【0053】
次に、駆動機構30’の動作について説明する。制御部71は、駆動部33a’制御することにより、軸34a’を中心としてアーム部31a’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、向き(傾き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33b’を制御することにより、軸34b’を中心として支持部35b’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、向き(傾き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33c’を制御することにより、軸34c’を中心としてアーム部31b’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33d’を制御することにより、軸34d’を中心として支持部35c’を回転させ、ヘッド部20の傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33e’を制御することにより、軸34e’を中心として支持部35d’を回転させ、ヘッド部20の向き(傾き)を変えることができる。このように、制御部71は、駆動部33a’、33b’、33c’、33d’、33e’を制御することにより、ヘッド部20をXYZ空間内の任意の位置に移動させることができ、また任意の方向に傾け、又、向きを変えることができる。
【0054】
以上説明したように、アーム部の1つが水平方向にのみ回転して移動可能な構成であり、5つの軸が、水平方向を指向する軸が2つで鉛直方向を指向する軸が3つの構成である駆動機構を用いても、第1実施形態と同様に、ヘッド部20をXYZ空間内の任意の位置に移動させることができ、また任意の方向に傾け、又、向きを変えることができる。
【0055】
(第1実施形態の他の変形例)
第1実施形態に係る眼科装置10の他の変形例について説明する。第1実施形態と異なり、2つのアーム部の間に更に1つの回転支持機構部を備える構成である。
図5は、第1実施形態に係る眼科装置の駆動機構の他の変形例を示す概略斜視図である。
【0056】
駆動機構30’’は、2本のアームであるアーム部31a’、31b’と、6つの回転支持機構である回転支持機構部32a’’、32b’’、32c’’、32d’’、32e’’、32f’’と、各回転支持機構を駆動するための6つの駆動部33a’’、33b’’、33c’’、33d’’、33e’’、33f’’と、支持部35a’’、35b’’、35c’’、35d’’、35e’’を備える。回転支持機構部32a’’、32b’’、32c’’、32d’’、32e’’、32f’’はアーム部や支持部に構成され、それぞれ軸34a’’、34b’’、34c’’、34d’’、34e’’、34f’’を中心に、接続される他方のアーム部や支持部を回転可能とする機構である。
【0057】
以下、駆動機構30’’の構成をより詳細に説明する。アーム部31a’’は、支持部35b’’からベース部80に固定される支持部35a’’を介してベース部80は接続される。より詳しくは、支持部35b’’は、ベース部80に固定される支持部35a’’と支持部35a’’に備えられる回転支持機構部32a’’(第一の回転支持機構に相当)により軸34a’’を中心に回転可能に接続される。また、アーム部31a’’は、支持部35b’’と支持部35b’’に備えられる回転支持機構部32b’’(第二の回転支持機構に相当)により軸34b’’を中心に回転可能に接続される。次に、アーム部31b’’は、アーム部31a’’と支持部35c’’を介して接続される。より詳しくは、支持部35c’’は、アーム部31a’’とアーム部31a’’に備えられる回転支持機構部32c’’(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34c’’を中心に回転可能に接続される。アーム部31b’’は、支持部35c’’と支持部35c’’に備えられる回転支持機構部32d’’(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34d’’を中心に回転可能に接続される。アーム部31b’’とヘッド部20は、支持部35d’’、支持部35e’’を介して接続される。より詳しくは、支持部35d’’は、アーム部31b’’とアーム部31b’’に備えられる回転支持機構部32e’’(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34eを中心に回転可能に接続される。支持部35e’’は、支持部35d’’と支持部35d’’に備えられる回転支持機構部32f’’(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34f’’を中心に回転可能に接続される。なお、各回転支持機構部は、接続される部材側に備えられていても構わない。
【0058】
図5において、軸34a’’、軸34c’’、軸34e’’はY方向、すなわち鉛直方向を指向し得る軸であり、3本の軸34a’、軸34b’、軸34e’は本発明の第一軸の一例に相当する。また、軸34b’’、軸34d’’、軸34f’’はX方向、すなわち水平方向を指向し得る軸であり、3本の軸34b’’、軸34d’’、軸34f’’は本発明の第二軸の一例に相当する。なお、各軸は、駆動機構30’’が動作する過程において、必ずしも上記の関係を示すものではない。
【0059】
次に、駆動機構30’’の動作について説明する。制御部71は、駆動部33a’’を制御することにより、軸34a’’を中心として支持部35b’’、及びそれに接続されるアーム部31a’’を回転させ、ヘッド部20をXZ平面内で向き(傾き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33b’’を制御することにより、軸34b’’を中心としてアーム部31a’’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33c’’を制御することにより、軸34c’’を中心として支持部35c’’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33d’’を制御することにより、軸34d’’を中心としてアーム部31b’’を回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33e’’を制御することにより、軸34e’’を中心として支持部35d’’を回転させ、ヘッド部20の傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33f’’を制御することにより、軸34f’’を中心として支持部35e’’を回転させ、ヘッド部20の向き(傾き)を変えることができる。
【0060】
以上説明したように、水平方向を指向し得る軸が3つ、鉛直方向を指向する軸が3つの構成である駆動機構を用いて、制御部71は、駆動部33a’’、33b’’、33c’’、33d’’、33e’’、33f’’を制御することにより、ヘッド部20をXYZ空間内の任意の位置に移動させることができ、また任意の方向に傾け、又、向きを変えることができる。駆動機構30’’は、回転可能な軸が6つであることから、回転可能な軸が5つの場合に比較して、ヘッド部20の移動をより滑らかに行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態の駆動機構30において、アームの数は、2つに限定されるわけではなく3つ以上あってもよい。また、回転支持機構部の数は5つ以上あっても構わないし、駆動部の数も5つ以上あっても構わない。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る眼科装置10Aは、被検眼の情報を被検者の両眼同時に取得可能とする装置である被検者の両眼に対して同時に検査等を行うことができるよう、ヘッド部を両眼用それぞれに備える構成である。
【0063】
図6は、第2実施形態に係る眼科装置10Aのうち、ヘッド部及び駆動機構部分について表す斜視図である。
図6は、眼科装置10Aの、ヘッド部20L、20Rと、駆動機構30L、30Rと、フレーム部85を示しており、他の構成要素については図示を省略している。なお、第1実施形態で示した顎受部や額当部は図示しないが、被検者の顔を固定するために眼科装置10Aに設けることができる。
図7は、第2実施形態に係る眼科装置10Aの構成要素の接続状態を示すブロック図である。以下、第2実施形態に係る眼科装置10Aの構成について
図6及び
図7を用いて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、説明は省略する。また、左の被検眼を被検眼ELとし、符号EaLは被検眼ELの角膜の部位を示す。同様に、右の被検眼を被検眼ERとし、符号EaRは被検眼ERの角膜の部位を示す。
【0064】
図6は、眼科装置10Aのベース部に支持される支柱(不図示)に固定されるフレーム部85に左の駆動機構30L及び右の駆動機構30Rが接続され、左の駆動機構30Lには左のヘッド部20L、及び右の駆動機構30Rには右のヘッド部20Rがそれぞれ接続されている。すなわち、ヘッド部と駆動機構は、左右の2組で構成され、2つのヘッド部20L、20Rは、被検者の左右の被検眼EL,ERで反射された光をそれぞれ受光可能に構成されている。
【0065】
駆動機構30Lは、2本のアームであるアーム部31aL、31bLと、6つの回転支持機構である回転支持機構部32aL、32bL、32cL、32dL、32eL、32fLと、各回転支持機構を駆動するための6つの駆動部33aL、33bL、33cL、33dL、33eL、33fLと、支持部35aL、35bL、35cL、35dLを備える。回転支持機構部32aL、32bL、32cL、32dL、32eL、32fLはアーム部や支持部に構成され、それぞれ軸34aL、34bL、34cL、34dL、34eL、34fLを中心に、接続される他方のアーム部や支持部を回転可能とする機構である。
【0066】
以下、駆動機構30Lの構成をより詳細に説明する。アーム部31aLは、支持部35aLを介してフレーム部85は接続される。より詳しくは、支持部35aLは、支持部35aLに備えられる回転支持機構部32aL(第一の回転支持機構に相当)により軸34aLを中心に回転可能に接続される。また、アーム部31aLは、支持部35aLとアーム部31aLに備えられる回転支持機構部32bL(第二の回転支持機構に相当)により軸34bLを中心に回転可能に接続される。次に、アーム部31bLは、アーム部31aLと支持部35cLを介して接続される。より詳しくは、支持部35cLは、アーム部31aLと支持部35cLに備えられる回転支持機構部32cL(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34cLを中心に回転可能に接続される。アーム部31bLは、支持部35cLとアーム部31bLに備えられる回転支持機構部32dL(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34dLを中心に回転可能に接続される。アーム部31bLとヘッド部20Lは、支持部35cL、支持部35dLを介して接続される。より詳しくは、支持部35cLは、アーム部31bLと支持部31cLに備えられる回転支持機構部32eL(第二の回転支持機構に相当)を介して軸34eLを中心に回転可能に接続される。支持部35dLは、支持部35cLと支持部35dLに備えられる回転支持機構部32fL(第一の回転支持機構に相当)を介して軸34fLを中心に回転可能に接続される。ヘッド部20Lは、支持部35dLと接続される。なお、各回転支持機構部は、接続される部材側に備えられていても構わない。
【0067】
図6において、軸34aL、軸34dL、軸34fLはY方向、すなわち鉛直方向を指向し得る軸であり、3本の軸34aL、軸34dL、軸34fLは本発明の第一軸の一例に相当する。また、軸34bL、軸34cL、軸34eLはX方向、すなわち水平方向を指向し得る軸であり、3本の軸34bL、軸34cL、軸34eLは本発明の第二軸の一例に相当する。なお、各軸は、駆動機構30Lが動作する過程において、必ずしも上記の関係を示すものではない。
【0068】
駆動機構30Rは駆動機構30Lの対象の形状である。駆動機構30Rの各構成は、駆動機構30Lの説明に付された符号の「L」を「R」に付け替えたものとして同機能を有する。
【0069】
左のヘッド部20L、右のヘッド部20Rは、被検者の左右の被検眼に個別に対応すべく対を為して設けられ、左のヘッド部20Lは、被検者の左の被検眼ELの情報を取得し、右のヘッド部20Rは、被検者の右の被検眼ERの情報を取得する。
【0070】
左のヘッド部20Lには偏向部材であるミラー24Lが設けられ、ミラー24Lを通じて検査光学系により対応する被検眼ELの情報が取得される。左のヘッド部20Lには被検眼ELの眼情報を取得する検査光学系が設けられている。検査光学系は、被検眼ELの前眼部や眼底に照明光を照射する光源21Lを含む照明光学系や、被検眼ELの前眼部画像や眼底画像を取得するための撮像カメラ22Lを含む撮影光学系等を備える。また、ヘッド部20Lは、被検眼ELとヘッド部20Lが適正な距離となるようにアライメントを調整するためのステレオカメラ23Lを備える。
【0071】
なお、右のヘッド部20Rの各構成は、左のヘッド部20Lの説明に付された符号の「L」を「R」に付け替えたものとして同機能を有する。
【0072】
図7のブロック図は、第1実施形態における
図3で示すブロック図を、左右のヘッド部20L、20Rと左右の駆動機構30L、30Rに対応させたものである。
【0073】
次に、駆動機構30Lの動作について説明する。制御部71は、駆動部33aLを制御することにより、軸34aLを中心として支持部35aL、及びそれに接続されるアーム部31aLを回転させ、ヘッド部20LをXZ平面内で向き(傾き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33bLを制御することにより、軸34bLを中心としてアーム部31aLを回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33cLを制御することにより、軸34cLを中心として支持部35bLを回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33dLを制御することにより、軸34dLを中心としてアーム部31bLを回転させ、ヘッド部20をX、Y、Z方向の位置を変え、又、傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33eLを制御することにより、軸34eLを中心として支持部35cLを回転させ、ヘッド部20の傾き(向き)を変えることができる。制御部71は、駆動部33fLを制御することにより、軸34fLを中心として支持部35dLを回転させ、ヘッド部20の向き(傾き)を変えることができる。駆動機構30Rの動作についても、駆動機構30Lの動作の説明に付された符号の「L」を「R」に付け替えたものとして同様である。
【0074】
このように、制御部71は、駆動機構30L、30R、すなわち駆動部33aL、33bL、33cL、33dL、33eL,33fL、33aR、33bR、33cR、33dR、33eR,33fRを制御することにより、ヘッド部20L、20RをXYZ空間内の任意の位置に移動させることができ、また任意の方向に傾け、又、向きを変えることができる。そのため、被検眼EL、ERに対してヘッド部20L、20Rを任意の位置、又、任意の方向とすることができ、被検眼EL、ERの任意な位置、任意の方向から検査等を行うことができる。また、制御部71は、アライメント検出部72の検出結果を用いて、ヘッド部20L、20Rと被検眼EL、ERの位置合わせするために駆動機構30L、30Rをそれぞれ制御することができる。
【0075】
視線位置検出部73は、22L、22Rから入力される左右の被検眼EL、ERの撮像画像データを制御部71を介して受信し、被検眼EL、ERの視線位置を検出し、検出した視線位置から視線方向を算出し、制御部71に送信する機能を有する。
【0076】
次に
図8を用いて、被検眼EL、ERの各眼球の回旋中心点である眼球回旋点を中心にXZ平面方向にヘッド部20L、20Rを回転させる場合について説明する。
図8(a)、
図8(b)は、眼科装置10Aを上面から見た概略図である。
【0077】
図8(a)は被検眼EL、ERが正面(-Z方向)を向いている状態である。
図8(b)は、は被検眼EL、ERを近方視の方向とした状態である。被検眼EL、ERを近方視とするには、図示しない固視標により、被検眼EL,ERの視線を誘導することにより行うことができる。各被検眼は、眼球回旋点を中心に視線の方向が変わる。
【0078】
眼科装置10Aで、例えば近方視における斜視の定量的検査を行う場合、制御部71は、駆動機構30L、30Rを制御し、ヘッド部20L、20Rを被検眼EL及び被検眼ERの眼球回旋点又はその近傍である眼球略回旋点を中心として回転させ、被検眼Eから検査距離だけ前方にある固視点POに表示される固視標を固視するように指示する。これにより、被検眼EL及び被検眼ERを輻輳させて固視標を注視させることができる。ここで、被検眼EL、ERのうち、いずれか又は双方が斜位眼で固視できていない場合、制御部71は駆動機構30L、30Rをそれぞれ制御し、輻輳角θを各被検眼に合わせるようにヘッド部を回転させることができる。
【0079】
次に、
図9を用いて、被検眼ELの眼球回旋点を中心にYZ平面方向にヘッド部20Lを回転させる場合について説明する。以下の説明は、左のヘッド部20Lと被検眼ELについて行うが、右のヘッド部20Rと被検眼ERについても同様の関係である。
図9(a)、
図9(b)は、眼科装置10Aの左側の構造を示す側面概略図である。
図9(a)は被検眼ELが正面(-Z方向)を向いている状態である。
図9(b)は、被検眼ELを下方に向けた状態である。被検眼ELを下方に向けるには、図示しない固視標により、被検眼ELの視線を誘導することにより行うことができる。被検眼は、眼球回旋点を中心に視線の方向が変わる。
【0080】
眼科装置10Aで、例えば被検眼の視線の方向を上下に向ける場合、被検眼ELの下方に固視標を表示させ、視線を誘導する。制御部71は、駆動機構30Lを制御し、ヘッド部20Lを被検眼ELの眼球回旋点又はその近傍である眼球略回旋点を中心として回転させ、ヘッド部20Lを回転させることができる。
【0081】
左右のヘッド部20L、20Rは、独立した駆動機構30L、30Rに接続されているため、左右の被検眼EL、ERそれぞれ独立した方向で検査等を行うことができる。
【0082】
以上説明したように、左右のヘッド部20L、20RをXZ平面方向、YX平面方向に自由に旋回できるため、検査等を行う被検眼に対して、遠近、上下左右あらゆる視線方向に合わせることができる。また、左右の被検眼EL、ERに対して独立して検査光学系の光軸を設定することができる。そのため、例えば、被検者が斜位眼である場合に、片方の被検眼(例えば被検眼EL)が固視標に対して視線方向(視軸)を合わせても、他方の被検眼(例えば被検眼ER)の視線方向が固視標に対してずれる。その際に、制御部71は、他方の被検眼(例えば被検眼ER)の視線方向に基づいてヘッド部20(例えばヘッド部20R)の向きを制御することができる。また、視線方向の検出には、視線位置検出部73による被検眼EL、ERの視線位置の検出結果を用いることができる。このように、検査光学系の光軸と被検眼の視線方向(視軸)を合わせた状態や、視線方向(視軸)が合っていない状態で検査・撮影を行う(自覚検査では斜位検査、眼底撮影では周辺撮影)ものそれぞれに対応することができる。また、視線方向(視軸)が合っていない状態の使用例として、白内障の被検者の左右それぞれの被検眼Eの水晶体の白濁部位を避けることで目的の位置を狙い、検査等を行うことができる。
【0083】
以上の説明において、駆動機構30L、30Rの、アームの数を2つとしたが、2つに限定されるものではなく3つ以上あっても良い。また、回転支持機構部の数は、必ずしも6つ必要ではなく、5つ以上であれば構わないし、駆動部の数も5つ以上あれば構わない。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る眼科システム1は、第1実施形態及び第2実施形態に係る眼科装置10、10Aをネットワークに接続して、例えば遠隔地から眼科検査等を行うことができるシステムである。
【0085】
図10は、第3実施形態に係る眼科システム1を示すブロック図である。本実施形態に係る眼科システム1は、インターネット、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークNWを介して、ユーザ側が使用する端末装置90と、眼科装置10(10A)とが接続されて構成されている。端末装置90は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)や、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような携帯端末等を用いることができる。
【0086】
本実施形態に係る眼科システム1によれば、ネットワークNWを介して眼科装置10(10A)の検査情報等を端末装置90に送信することができる。また、端末装置90から、ネットワークNWを介して制御部71から駆動機構30等を制御することができる。その結果、例えば被検者と医師が物理的に離れた距離にいる場合(例えば遠隔地にいる場合)に、医師が被検眼の診断を行うことを支援することができる。また、遠隔地にいる医師が、端末装置90を操作することで駆動機構30等を制御して、被検眼とヘッド部の位置関係を調整することができる。
【0087】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0088】
なお、上記の実施形態において、アライメントはステレオカメラを用いて測定しているが、それに限られるものではない。例えば、ヘッド部に、アライメント光源と、ラインセンサを備え、アライメント光源が照射され被検眼で反射された光をラインセンサで受光し、ラインセンサからの情報により被検眼とヘッド部の相対位置を検出することによりアライメント調整を行う方式を用いても構わない。
【符号の説明】
【0089】
1:眼科システム
10、10A:眼科装置
20、20L、20R:ヘッド部
21:光源
22:撮像カメラ
23:ステレオカメラ
24L、24R:ミラー
30、30L、30R:駆動機構
31a、31b:アーム部
31a’、31b’:アーム部
31a’’、31b’’:アーム部
31aL、31bL、31aR、31bR:アーム部
32a、32b、32c、32d、32e:回転支持機構
32a’、32b’、32c’、32d’、32e’:回転支持機構
32a’’、32b’’、32c’’、32d’’、32e’’、32f’’:回転支持機構
32aL、32bL、32cL、32dL、32eL:回転支持機構
32aR、32bR、32cR、32dR、32eR:回転支持機構
33a、33b、33c、33d、33e:駆動部
33a’、33b’、33c’、33d’、33e’:駆動部
33a’’、33b’’、33c’’、33d’’、33e’’:駆動部
33aL、33bL、33cL、33dL、33eL、33fL:駆動部
33aR、33bR、33cR、33dR、33eR、33fR:駆動部
34a、34b、34c、34d、34e:軸
34a’、34b’、34c’、34d’、34e’:軸
34a’’、34b’’、34c’’、34d’’、34e’’:駆動部
34aL、34bL、34cL、34dL、34eL、34fL:駆動部
34aR、34bR、34cR、34dR、34eR、34fR:駆動部
35a、35b、35c、35d:支持部
35a’、35b’、35c’、35d’:支持部
35a’’、35b’’、35c’’、35d’’、35e’’:支持部
35aL、35bL、35cL、35dL:支持部
35aR、35bR、35cR、35dR:支持部
71:制御部
72:アライメント検出部
73:視線位置検出部
74:表示部
75:操作部
80:ベース部
81:顎受部
82:額当部
85:フレーム部
90:端末装置
O1:光軸