(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】介護用浴槽および入浴装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240416BHJP
A44B 19/32 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61H33/00 310E
A44B19/32
(21)【出願番号】P 2018191191
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000134121
【氏名又は名称】株式会社デベロ
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】飯村 司
(72)【発明者】
【氏名】浅野 芳生
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】八木 誠
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116554(JP,A)
【文献】特開2005-312730(JP,A)
【文献】特開平10-155861(JP,A)
【文献】特開2016-171859(JP,A)
【文献】特開2014-122436(JP,A)
【文献】特開2015-151693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の略中央で第1半割槽と第2半割槽とに分割可能に構成された平面視略長方形状の介護用浴槽であって、
前記第1半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、前記底部および前記側壁部の分割面側に、前記第2半割槽との突合せ端部を備えた第1の槽部を有し、
前記第2半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、前記底部および前記側壁部の分割面側に、前記第1半割槽との突合せ端部を備えた第2の槽部を有し、
前記介護用浴槽は、前記第1半割槽および前記第2半割槽の各前記突合せ端部同士が離間した状態で、各前記突合せ端部同士を液密に結合可能な防水性スライドファスナーをさらに有し、
前記介護用浴槽は、前記第1半割槽と前記第2半割槽とが前記防水性スライドファスナーを介して結合した状態で、前記第1の槽部および前記第2の槽部の各前記側壁部の長手方向両側のそれぞれの上端部から前記介護用浴槽の外側に張り出したリム部をさらに有し、
前記リム部は、前記第1の槽部および前記第2の槽部の各前記側壁部の前記長手方向両側の前記上端部から前記介護用浴槽の外側に延出する第1の片部と、前記第1の片部の前記第1の槽部および前記第2の槽部の各前記側壁部と反対側の端部から下側に延出する第2の片部とで構成され、前記リム部の断面形状は、略L字状をなしている前記介護用浴槽と、
前記リム部を介して前記介護用浴槽を着脱自在に支持可能な一対の浴槽受け部を有するフレームを備えた浴槽支持体と、
前記介護用浴槽上に配置されるように前記フレームに支持され、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートと、を有する
入浴装置であって、
前記防水性スライドファスナーは、
前記第1の槽部および前記第2の槽部の各前記突合せ端部の槽部内側の表面に取り付けられた一対の防水テープと、
前記一対の防水テープの互いに対向する各縁部に、複数のファスナーエレメントが前記各縁部に沿って取り付けられることにより形成される一対のファスナーエレメント列と、
前記一対のファスナーエレメント列に沿って摺動可能に取り付けられ、各ファスナーエレメント列の前記複数のファスナーエレメント同士の噛合またはその解除を行って、前記第1半割槽と前記第2半割槽との結合または分離を行うスライダーと、を備えており、
前記一対の防水テープは、それぞれ、裏当て材により、各槽部の各前記突合せ端部の槽部内側の表面に押し当てられた状態で、前記各槽部、前記防水テープおよび前記裏当て材を貫通する留め具により、前記各槽部に固定されていることを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記留め具は、前記各槽部の槽部内側に設けられ、前記各槽部、前記防水テープおよび前記裏当て材を貫通するねじ部を備えたボルトと、前記各槽部の槽部外側に設けられ、前記ねじ部と締結されるナットとを有する請求項
1に記載の入浴装置。
【請求項3】
前記ボルトおよび前記ナットは、複数のボルトおよび複数のナットを有しており、
隣接する前記複数のボルトの間隔が、1~10cmである請求項
2に記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護が必要とされる人を入浴させるための介護用浴槽および入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
身障者や介護を必要とする老人等の要介護者を入浴させる介護サービスが広く行われている。在宅の要介護者に対しては、介護用浴槽を要介護者の住居に運搬して要介護者を入浴させる訪問入浴サービスが行われている。
【0003】
訪問入浴サービスでは、介護従事者が、介護用浴槽を自動車(入浴車)に積載して要介護者の住居に訪問し、入浴車から要介護者のいる住居内等に介護用浴槽を運搬する。そして、運搬した浴槽内に湯をはり、要介護者を乗せた状態の入浴用担架を浴槽上部に載置して、要介護者を入浴させる。このような介護用浴槽としては、小型の自動車でも運搬が可能であり、介護従事者が要介護者の住居内に運搬し易いという観点から、近年、分割型の介護用浴槽が用いられている。
【0004】
従来の分割型の介護用浴槽(分割型浴槽)は、第1半割槽および第2半割槽から構成され、各半割槽は、槽部と槽部の分割側の端面に沿って設けられたフランジ部とを有しているとともに、各半割槽の長手方向のほぼ中央部に分割浴槽を訪問先の床に対して支持するための脚部を有している(例えば、特許文献1参照)。そして、各半割槽のフランジ部同士を当接して、これらをクランプ機構等で結合して用いられる。
【0005】
しかしながら、従来の分割型浴槽では、各槽部はFRP材料で形成されたものであるが、フランジ部はアルミ等の金属板を用いたものであった。そのため、分割型浴槽全体としての軽量化に限界があった。さらに、各半割槽同士の結合に、クランプ機構が用いられていたが、より容易に介護用浴槽の組立・分解が可能な結合方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、組立・分解が容易であり、軽量化された分割型の介護用浴槽を提供すること、係る介護用浴槽を備えた入浴装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、以下の特徴(1)~(9)を有する本発明により達成される。
(1) 長手方向の略中央で第1半割槽と第2半割槽とに分割可能に構成された平面視略長方形状の介護用浴槽であって、
前記第1半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、前記底部および前記側壁部の分割面側に、前記第2半割槽との突合せ端部を備えた第1の槽部を有し、
前記第2半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、前記底部および前記側壁部の分割面側に、前記第1半割槽との突合せ端部を備えた第2の槽部を有し、
前記介護用浴槽は、前記第1半割槽および前記第2半割槽の各前記突合わせ端部同士を液密に結合可能な防水性スライドファスナーをさらに有していることを特徴とする介護用浴槽。
【0009】
(2) 前記防水性スライドファスナーは、
前記第1の槽部および前記第2の槽部の各前記突合せ端部の槽部内側の表面に取り付けられた一対の防水テープと、
前記一対の防水テープの互いに対向する各縁部に、複数のファスナーエレメントが前記各縁部に沿って取り付けられることにより形成される一対のファスナーエレメント列と、
前記一対のファスナーエレメント列に沿って摺動可能に取り付けられ、各ファスナーエレメント列の前記複数のファスナーエレメント同士の噛合またはその解除を行って、前記第1半割槽と前記第2半割槽との結合または分離を行うスライダーと、を備えている上記(1)に記載の介護用浴槽。
【0010】
(3) 前記一対の防水テープは、それぞれ、裏当て材により、各槽部の各前記突合わせ端部の槽部内側の表面に押し当てられた状態で、前記各槽部、前記防水テープおよび前記裏当て材を貫通する留め具により、前記各槽部に固定されている上記(2)に記載の介護用浴槽。
【0011】
(4) 前記留め具は、前記各槽部の槽部内側に設けられ、前記各槽部、前記防水テープおよび前記裏当て材を貫通するねじ部を備えたボルトと、前記各槽部の槽部外側に設けられ、前記ねじ部と締結されるナットとを有する上記(3)に記載の介護用浴槽。
【0012】
(5) 前記ボルトおよび前記ナットは、複数のボルトおよび複数のナットを有しており、
隣接する前記複数のボルトの間隔が、1~10cmである上記(4)に記載の介護用浴槽。
【0013】
(6) 前記第1半割槽は、フランジ状の前記突合せ端部を備えた前記第1の槽部と、前記突合せ端部の前記側壁部および前記底部に設けられた複数の爪部と、前記第1の槽部の前記底部に設けられた第1の脚部と、を有し、
前記第2半割槽は、フランジ状の前記突合わせ端部を備えた前記第2の槽部と、前記突合せ端部に、前記第1半割槽の前記複数の爪部と対応して設けられ、前記爪部と係止可能な複数の受け部と、前記第2の槽部の前記底部に設けられた第2の脚部と、を有し、
使用時に、前記第1半割槽の前記複数の爪部を前記第2半割槽の前記複数の受け部に挿入して係止させた状態で、前記第1半割槽と前記第2半割槽とが前記防水性スライドファスナーを介して結合され、
前記係止状態において、前記第1の脚部、前記第2の脚部、前記第1半割槽および前記第2半割槽の各前記底部に設けられた前記爪部および前記受け部が、前記介護用浴槽を支持する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の介護用浴槽。
【0014】
(7) 前記爪部は、前記第1半割槽の前記突合せ端部の端面に固定された本体部と、前記本体部から前記第1半割槽の外側に突出し、前記受け部に挿入される先端部を備えたスライダー部と、前記スライダー部の前記先端部の方向を微調整可能に構成された方向調整機構とを有する上記(6)に記載の介護用浴槽。
【0015】
(8) 前記介護用浴槽は、前記第1半割槽と前記第2半割槽とが前記防水性スライドファスナーを介して結合した状態で、前記各槽部の各前記側壁部の長手方向両側のそれぞれの上端部から前記介護用浴槽の外側に張り出したリム部をさらに有し、
前記リム部は、前記各槽部の各前記側壁部の前記長手方向両側の前記上端部から前記介護用浴槽の外側に延出する第1の片部と、前記第1の片部の前記各槽部の各前記側壁部と反対側の端部から下側に延出する第2の片部とで構成され、前記リム部の断面形状は、略L字状をなしている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の介護用浴槽。
【0016】
(9) 上記(8)に記載の介護用浴槽と、
前記リム部を介して前記介護用浴槽を着脱自在に支持可能な一対の浴槽受け部を有するフレームを備えた浴槽支持体と、
前記介護用浴槽上に配置されるように前記フレームに支持され、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートと、を有することを特徴とする入浴装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の介護用浴槽では、第1半割槽および第2半割槽の各突合せ端部同士が防水性スライドファスナーによって結合または分離するように構成されている。係る構成では、各半割槽の突合せ端面に沿って金属製のフランジ部を設ける必要がないため、介護用浴槽全体の軽量化を図ることができる。
【0018】
さらに、各半割槽の結合および分離は、防水性スライドファスナーの開閉によって行われるため、介護用浴槽の組立・分解が容易である。そのため、訪問入浴サービスにおける介護従事者の作業負担を軽減させることができる。
【0019】
また、本発明の介護用浴槽は、訪問入浴サービス以外に、養護老人ホーム等の介護施設の要介護者に対して行われる入浴サービスにも適用することができる。例えば、小規模の介護施設等では、十分なスペースの浴場を施設内に持つことができない場合がある。このような施設では、浴場の省スペース化を図りつつ、多くの要介護者を効率良く入浴させるために、移動式の入浴用ストレッチャーに介護用浴槽および入浴用担架を乗せた入浴装置が用いられる。本発明の介護用浴槽は、組立・分解が容易であり、軽量であるため、このような入浴装置に適用することにより、入浴サービスにおける介護従事者の作業負担を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の介護用浴槽の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す介護用浴槽の第1半割槽と第2半割槽とを分離した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す第1半割槽と第2半割槽とを重ねた状態を、各半割槽の突合せ端部側から見た正面図である。
【
図4】
図2に示す第1半割槽の側壁部に設けられた爪部付近の部分拡大図である。
【
図5】
図2に示す第2半割槽の側壁部に設けられた受け部付近の部分拡大図である。
【
図6】
図1に示す介護用浴槽に用いられる防水性スライドファスナーの部分拡大図である。
【
図7】
図1に示す介護用浴槽における、防水性スライドファスナーの各半割槽への取り付け状態を説明するための図(浴槽内側から見た図)である。
【
図8】
図1に示す介護用浴槽における、防水性スライドファスナーの各半割槽への取り付け状態を説明するための図(浴槽外側から見た図)である。
【
図9】
図2に示す第1半割槽に設けられた爪部の変形例を示す側面図である。
【
図10】
図2に示す第1半割槽に設けられた爪部の変形例の突合せ端部の裏面側(突合せ端面と反対側の面側)からの斜視図である。
【
図11】本発明の介護用浴槽の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示す介護用浴槽を適用した、本発明の入浴装置の好適な実施形態を示す斜視図である。
【
図13】
図12に示す入浴装置のストレッチャーの斜視図である。
【
図14】
図12に示す入浴装置の側面図(介護用浴槽を2点鎖線で示す)である。
【
図15】
図13に示すストレッチャーのフレームの後方側(入浴者の脚部側)を示す部分斜視図である。
【
図16】
図15に示すフレームの後方側の構成(取っ手およびロック解除レバーを除く)の分解斜視図である。
【
図17】
図15に示すフレームに組み込まれた巻上機構(ハンドルは図示せず)の平面視断面図である。
【
図18】
図14に示す入浴装置において、昇降手段によりフレームを上昇させた状態を示す図である。
【
図19】
図13に示すストレッチャーを折り畳んだ状態を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の介護用浴槽を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の介護用浴槽の第1実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態の介護用浴槽は、その上部に入浴者を乗せて入浴させるための入浴用担架が載置された状態で、入浴者を入浴させるために用いられるものである。このような介護用浴槽は、入浴車に積載されて運搬され、要介護者の住居に訪問した際に、介護従事者によって入浴車から要介護者の住居等まで搬出されて使用される訪問入浴サービス用に用いられる。
【0023】
図1は、本発明の介護用浴槽の第1実施形態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す介護用浴槽の第1半割槽と第2半割槽とを分離した状態を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す第1半割槽と第2半割槽とを重ねた状態を、各半割槽の突合せ端部側から見た正面図である。
図4は、
図2に示す第1半割槽の側壁部に設けられた爪部付近の部分拡大図である。
図5は、
図2に示す第2半割槽の側壁部に設けられた受け部付近の部分拡大図である。
図6は、
図1に示す介護用浴槽に用いられる防水性スライドファスナーの部分拡大図である。
図7は、
図1に示す介護用浴槽における、防水性スライドファスナーの各半割槽への取り付け状態を説明するための図(浴槽内側から見た図)である。
図8は、
図1に示す介護用浴槽における、防水性スライドファスナーの各半割槽への取り付け状態を説明するための図(浴槽外側から見た図)である。
【0024】
介護用浴槽1は、2分割可能な構成となっており、
図1および2中、右手前側に配置された入浴者の洗髪が行われる第1半割槽4と、左奥側に配置された入浴者の胴部と脚部とを入浴させる第2半割槽5とを有している。このような介護用浴槽1は、第1半割槽4と第2半割槽5とに分割した状態で入浴車に搬入または入浴車から搬出される。
【0025】
また、本実施形態の介護用浴槽1では、第1半割槽4の突合せ端部の左右両側の側壁部および底部に複数の爪部42が設けられ、第2半割槽5の突合せ端部に、第1半割槽4の複数の爪部42と対応して設けられた複数の受け部52が設けられている。介護用浴槽1は、使用時に、第1半割槽4の複数の爪部42を第2半割槽5の複数の受け部52に挿入して係止させた状態で、
図1に示すように、第1半割槽4および第2半割槽5の各突合せ端部同士が防水性スライドファスナー6によって液密に結合されて(組み立てられて)用いられる。
【0026】
組み立てられた状態の介護用浴槽1は、
図1に示すように、底部21と底部21から立設された側壁部22とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体2と、浴槽本体2の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出するリム部3とを有している。この介護用浴槽1は、入浴者を乗せて入浴させるための入浴用担架(図示せず)がリム部3上に載置された状態で用いられる。
【0027】
また、浴槽本体2は、底部21の入浴者の頭部側(第1の半割槽4)に設けられた第1の脚部23と、底部21の入浴者の脚部側(第2の半割槽5)に設けられた第2の脚部24とを有している。第1の脚部23および第2の脚部24は、それぞれ、第1の半割槽4および第2の半割槽5の各槽部と一体的に形成され、各槽部の幅方向に互いに離間して設けられた一対の取付部に、略コの字状のスタンド部材の両端が取り付けられた構成を有している。また、組立てられた状態の介護用浴槽1では、上記第1の脚部23および第2の脚部24に加え、第1半割槽4および第2半割槽5の各突合せ端部の底部に設けられ、互いに係止した状態の爪部42および受け部52が、第3の脚部として機能する。そのため、組み立てられた状態の介護用浴槽1は、第1の脚部23、第2の脚部24および第3の脚部によって訪問先の床に支持される。
【0028】
次に、介護用浴槽1を構成する各半割槽4、5の具体的な構成について説明する。
図2に示すように、第1半割槽4は、底部411と底部411から立設された側壁部412とから形成され、底部411および側壁部412の分割面側に、第2半割槽5との突合せ端部413を備えた第1の槽部41を有している。本実施形態では、突合せ端部413が、フランジ状に形成されている。係る第1の槽部41は、その全体が所定の形状を有するように硬質な材料で一体的に形成されている。第1の槽部41の構成材料は、特に限定されないが、例えば、強化プラスチック(FRP)材料が挙げられる。
また、第1の槽部41の底部411には、上述した第1の脚部23が設けられている。
【0029】
さらに、フランジ状の突合せ端部413の側壁部412および底部411には、4つの爪部42が設けられている。本実施形態では、
図3に示すように、爪部42が、左右両側の側壁部412の上端部側に、それぞれ1つずつ設けられ、また、底部411に、第1の槽部41の幅方向に互いに離間して2つ設けられている。
【0030】
また、第2半割槽5は、底部511と底部511から立設された側壁部512とから形成され、底部511および側壁部512の分割面側に、第1半割槽4との突合せ端部513を備えた第2の槽部51を有している。突合せ端部513も、第1半割槽4の突合せ端部413と同様にフランジ状に形成されており、突合せ端部413と略同形状を有する。係る第1の槽部51も、第1の槽部41と同様の材料で一体的に形成されている。
また、第2の槽部51の底部511には、上述した第2の脚部24が設けられている。
【0031】
さらに、フランジ状の突合せ端部513の側壁部512および底部511には、第1の槽部41の突合せ端部413に設けられた爪部42と対応して設けられた4つの受け部52が設けられている。係る受け部52は、それぞれ、対応する爪部42と係止可能に構成されており、
図3に示すように、左右両側の側壁部512の上端部側に、それぞれ1つずつ設けられ、また、底部511に、第2の槽部51の幅方向に互いに離間して2つ設けられている。
【0032】
本実施形態の介護用浴槽1では、使用時に、第1半割槽4の各爪部42を第2半割槽5の対応する各受け部52に挿入して係止させた状態とすることにより、第1半割槽4と第2半割槽5との位置ずれを防止することができる。また、介護用浴槽1の使用時には、第1半割槽4および第2半割槽5の各底部411、511に設けられた爪部42および受け部52が、各半割槽4、5の結合部分を支持する第3の脚部として機能する。介護用浴槽1では、第1の脚部23、第2の脚部24および第1の脚部23と第2の脚部24とのほぼ中央部に設けられた第3の脚部の3つの脚部で均等に床に対して支持されるため、浴槽本体2の底部21のどの部位に荷重がかかっても、荷重分散されるので耐久性に優れたものとなる。
【0033】
図4に示すように、各爪部42は、第1の半割槽4のフランジ状の突合せ端部413の端面に固定され、金属片で構成される平面視略正方形状の本体部421と、本体部421の略中央から第1半割槽4の外側に突出し、受け部52(後述する溝522)に挿入され、軸部分よりも拡径された先端部423を有するスライダー部422とを有している。なお、本体部421は、アルミ製であることが好ましく、スライダー部422(および先端部423)は、ステンレス製であることが好ましい。本実施形態では、本体部421は、突合せ端部413の裏面(突合せ端面と反対側の面)に、本体部よりも肉薄なステンレス製の裏当てプレート(図示せず)を当接した状態で、本体部421の4隅をボルトとナットで締結することにより、突合せ端部413に固定されている。また、スライダー部422の基端側には、本体部421、突合せ端部413および裏当てプレートを貫通するねじ部が設けられており、裏当てプレートを介して、突合わせ端部413にナットで締結されている。
【0034】
また、
図5に示すように、各受け部52は、第2の半割槽5のフランジ状の突合せ端部513の端面に固定され、金属片で構成される平面視略正方形状の本体部521と、本体部521の爪部42と対向する面側(紙面手前側)には、略中央から上端に向かって形成された溝522とを有している。なお、本体部521は、ステンレス製であることが好ましい。溝522の幅は、上記スライダー部422の先端部423を除く軸部分の径と略同じであり、本体部521の溝522の突合せ端部513側には、スライダー部422の先端部423を収容可能な空隙が設けられている。本実施形態では、本体部521は、突合せ端部513の裏面(突合せ端面と反対側の面)に、本体部よりも肉薄なステンレス製の裏当てプレート(図示せず)を当接した状態で、本体部521の4隅をボルトとナットで締結することにより、突合せ端部513に固定されている。
【0035】
次に、第1半割槽4および第2半割槽5の各突合せ端部同士を液密に結合可能な防水性スライドファスナー6について詳細に説明する。
【0036】
図1、
図2および
図6に示すように、本実施形態の介護用浴槽1に適用される防水性スライドファスナー6は、第1の槽部41および第2の槽部51の各突合せ端部413、513の槽部内側の表面に取り付けられた一対の防水テープ61、61と、一対の防水テープ61、61の互いに対向する各縁部に、複数のファスナーエレメント621が各縁部に沿って取り付けられることにより形成される一対のファスナーエレメント列62、62と、を有している。また、防水性スライドファスナー6は、一対のファスナーエレメント列62、62に沿って摺動可能に取り付けられ、各ファスナーエレメント列62、62のファスナーエレメント621同士の噛合またはその解除を行って、第1半割槽4と第2半割槽5との結合または分離を行うスライダー63と、を備えている。
【0037】
本実施形態の介護用浴槽1では、防水性スライドファスナー6のファスナーエレメント列62、62の端部に下止を設けることなく、一対の防水テープ61、61が完全に分離することができるように構成されている。すなわち、第1半割槽4と第2半割槽とを完全に分離することができるように構成されている。また、一対の防水テープ61、61の長手方向両端部には、防水性スライドファスナー6の両端部がビラビラして、入浴の邪魔にならないように、その両端部をリム部3の側面に固定するための留め具(ボタン)611が設けられている。
【0038】
本実施形態の介護用浴槽1では、一対の防水テープ61、61の各縁部に形成される一対のファスナーエレメント列62、62が、各突合せ端部413、513の端面と離間している。すなわち、介護用浴槽1では、各突合せ端部413、513同士が離間した状態で結合させることができる。そのため、半割槽を結合した状態における液密性を確保するため、各半割槽4、5の突合せ端部413、513の端面を厳密に平坦に加工する必要がない。また、介護用浴槽1では、各突合せ端部413、513の端面に沿って金属製のフランジ部を設ける必要がないため、介護用浴槽1全体の軽量化を図ることができる。
【0039】
さらに、各半割槽4、5の結合および分離は、防水性スライドファスナー6の開閉によって行われるため、介護用浴槽1の組立・分解が容易である。そのため、訪問入浴サービスにおける介護従事者の作業負担を軽減させることができる。
【0040】
一対の防水テープ61、61は、防水性のシート(テープ)材で構成されており、防水性を有していれば、特に、材質の種類は限定されない。
【0041】
また、防水テープ61、61の幅は、防水性スライドファスナー6を閉めた状態で十分な液密性を有していれば、特に限定されないが、例えば、2~10cm程度とすることができる。
【0042】
また、複数のファスナーエレメント621は、例えば、各種合成樹脂を用いて、一対の防水テープ61、61の互いに対向する各縁部に射出成形して形成することができる。
【0043】
次に、本実施形態における、防水性スライドファスナーの各半割槽への取り付け状態について説明する。
【0044】
図7および8に示すように、一対の防水テープ61、61は、それぞれ、裏当て材64により、各槽部41、51の各突合わせ端部413、513の槽部内側の表面に押し当てられた状態で、各槽部41、51、防水テープ61、61および裏当て材64を貫通する留め具65により、各槽部41、51に固定されている。なお、本実施形態では、浴槽内側の裏当て材64および留め具65が外部に露出しないように、これらを目隠しシート66で覆っている。
【0045】
このように、防水テープ61を、裏当て材64で各突合わせ端部413、513(各槽部41、51)に押し当てながら留め具65で固定することにより、防水テープ61と各槽部41、51とが強く密着した状態で、防水テープ61を各槽部41、51に取り付けることができる。そのため、介護用浴槽1の使用時に、防水テープ61、61と各槽部41、51との間から水が漏れるのをより確実に防止することができる。すなわち、介護用浴槽1の液密性をより高めることができる。
【0046】
なお、裏当て材64としては、各槽部41、51の各突合わせ端部413、513の槽部内側の略全面を覆う長さを有する、長尺状の金属製の薄板材であることが好ましい。このような板材としては、例えば、ステンレス製の薄板材を用いることができる。
【0047】
また、留め具65としては、特に限定されないが、ボルトおよびナットを用いることが好ましい。具体的には、
図7および8に示すように、各槽部41、51の槽部内側から、各槽部41、51、防水テープ61および裏当て材64を貫通するねじ部を備えた複数のボルト651を挿入し、各槽部41、51の槽部外側から、各ボルト651のねじ部とナット652とを締結することができる。
【0048】
また、留め具65として、複数のボルト651および複数のナット652を用いる場合には、隣接するボルト651の間隔が、1~10cm程度であることが好ましく、2~8cm程度であることがより好ましい。隣接するボルト651の間隔が上記範囲内であれば、防水テープ61と各槽部41、51とをより強く、かつ均一に密着した状態で、防水テープ61を各槽部41、51に取り付けることができる。これにより、介護用浴槽1の液密性をより高めることができる。
【0049】
以上、本実施形態の介護用浴槽1について説明したが、第1半割槽4の爪部42は、スライダー部422の先端部423の方向を微調整可能に構成された方向調整機構を有していてもよい。以下に、係る方向調整機構を備えた爪部について説明する。
【0050】
図9は、
図2に示す第1半割槽に設けられた爪部の変形例を示す側面図である。
図10は、
図2に示す第1半割槽に設けられた爪部の変形例の突合せ端部の裏面側(突合せ端面と反対側の面側)からの斜視図である。
【0051】
図9および10に示す爪部42’は、ステンレス製の裏当てプレート424を介して、スライダー部422のねじ部と締結されるナットの構成が異なる以外は、上述した爪部42と同じ構成を有している。
【0052】
爪部42’では、スライダー部422のねじ部と締結されるナット構造として、裏当てプレート424に当接するワッシャー425と、ねじ部の先端部分を止める第1のナット426と、ワッシャー425と第1のナット426との間に設けられた第2のナット427とを有するダブルナット構造を有する。爪部42’では、第1のナット426と第2のナット427との間に押し合う力が働くことにより、スライダー部422のねじ部を完全に締め付けることなく、遊びを持たせた状態で、スライダー部422を本体部421に取り付けることができる。そのため、爪部42’では、スライダー部422の先端部423の方向を微調整可能に構成されている。
【0053】
図9に示すように、突合せ端部413の端面が平坦でない場合、本体部421の4隅をボルトとナットで締結すると、スライダー部422の先端部423の方向が水平にならず、受け部52と係止しづらくなる。しかしながら、上述した爪部42’であれば、スライダー部422の先端部423の方向を微調整して、受け部52と係止させることができ、介護用浴槽1の組立を容易にすることができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の介護用浴槽の第2実施形態および本発明の入浴装置の好適な実施形態について説明する。
【0055】
図11は、本発明の介護用浴槽の第2実施形態を示す斜視図である。
図12は、
図11に示す介護用浴槽を適用した、本発明の入浴装置の好適な実施形態を示す斜視図である。
図13は、
図12に示す入浴装置のストレッチャーの斜視図である。
図14は、
図12に示す入浴装置の側面図(介護用浴槽を2点鎖線で示す)である。
【0056】
以下、第2実施形態の介護用浴槽および本実施形態の入浴装置について、前記第1実施形態の介護用浴槽との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態の介護用浴槽は、前述した訪問入浴サービスや、養護老人ホーム等の介護施設の要介護者に対して行われる入浴サービスに適用され、浴槽を支持する浴槽支持体に介護用浴槽および入浴用担架を乗せた入浴装置に適用される。このような入浴装置に用いられる浴槽支持体としては、非移動式の支持体と、脚部にキャスターを備えた移動式の支持体(入浴用ストレッチャー)とがあり、いずれのタイプの浴槽支持体も好適に用いることができる。本実施形態では、浴槽支持体として、移動式の支持体(入浴用ストレッチャー)を用いた入浴装置について、代表的に説明する。
【0058】
図12に示すように、本実施形態の入浴装置100は、介護用浴槽1と、介護用浴槽1を着脱自在に取り付けられるストレッチャー(浴槽支持体)7と、介護用浴槽1上に配置され、入浴者を入浴させるための担架シート120とを有している。担架シート120は、その長手方向両側縁のそれぞれの縁に筒状部(図示せず)が形成されている。この担架シート120の各筒状部にロープ121が挿通されており、このロープ121を介して、担架シート120がストレッチャー7に取り付けられる。
【0059】
本実施形態の介護用浴槽1は、各半割槽4、5の突合せ端部413、513側の形状およびリム部3の形状が異なり、床に対して介護用浴槽1を支持するための脚部が設けられていない点以外は、前述した第1実施形態の介護用浴槽1と同様である。
【0060】
すなわち、第1実施形態の介護用浴槽1では、各半割槽4、5の突合せ端部413、513がフランジ状をなしているのに対して、本実施形態の介護用浴槽1では、
図11に示すように、各半割槽4、5の突合せ端部413、513がフランジ状をなしていない。また、本実施形態の介護用浴槽1では、各半割槽4、5の突合せ端部413、513に爪部42および受け部52が設けられておらず、各半割槽4、5間には、防水性スライドファスナー6のみが設けられている。
【0061】
また、本実施形態の介護用浴槽1では、各半割槽4、5が防水性スライドファスナー6を介して結合した状態で、各槽部41、51の各側壁部412、512が結合してなる浴槽本体2の側壁部22の長手方向両側の上端部から介護用浴槽1の外側に張り出した一対の側方リム部31、31と、槽部41の側壁部412の閉塞側の上端部から介護用浴槽1の外側に張り出した前方リム部32と、槽部51の側壁部512の閉塞側の上端部から介護用浴槽1の外側に張り出した後方リム部33とを有している。
【0062】
このような側方リム部31、前方リム部32および後方リム部33は、いずれも、側壁部22(側壁部412、512)上端部から水平方向に延出する第1の片部34と、第1の片部34の側壁部22(側壁部412、512)とは反対側の端部から下方に延出する第2の片部35とを有している。そのため、側方リム部31、前方リム部32および後方リム部33は、いずれもその断面形状が、略L字状をなしている。
【0063】
また、各側方リム部31は、その前方側および後方側の一部に、第2の片部35が切り欠かれた切欠き部36を有している。
【0064】
このような介護用浴槽1は、入浴者を入浴させる際に、ストレッチャー7に取り付けられる。
【0065】
図13に示すように、ストレッチャー7は、介護用浴槽1を着脱自在に支持可能なフレーム70と、フレーム70を走行可能に支持する脚部76と、ストレッチャー7を折り畳み可能にする折り畳み機構8とを有している。
【0066】
フレーム70は、その全体形状が、略長方形状をなしている。このフレーム70は、その長手方向の略中央で、折り畳み機構8の作用により、前方側の第1の部分71と後方側の第2の部分72とに折り畳み可能に構成されている。
【0067】
このようなフレーム70は、長手方向両側の一対の浴槽受け部73、73と、一対の浴槽受け部73、73の前方側の端部同士を連結する前方連結部74と、一対の浴槽受け部73、73の後方側の端部同士を連結する後方連結部75とを有している。なお、一対の浴槽受け部73、73の前方側の部分および前方連結部74が第1の部分71を構成し、一対の浴槽受け部73、73の後方側の部分および後方連結部75が第2の部分72を構成する。
【0068】
入浴装置100では、フレーム70の一対の浴槽受け部73、73上に介護用浴槽1の一対の側方リム部31、31が載置されることにより、フレーム70に介護用浴槽1が支持される。より具体的には、介護用浴槽1の各側方リム部31には、前述したように切欠き部36が設けられており、この切欠き部36を介して、各側方リム部31の第2の片部35と側壁部22との間に対応する浴槽受け部73が位置するようにする。これにより、介護用浴槽1は、一対の側方リム部31、31を介して、フレーム70(一対の浴槽受け部73、73)に支持される。
【0069】
入浴装置100では、入浴者の入浴時に介護用浴槽1をフレーム70上に載置して使用し、入浴者の入浴後は、フレーム70から介護用浴槽1を取り外すことができる。したがって、例えば、介護施設等では、入浴者の入浴時を除いて、介護用浴槽1をストレッチャー7から取り外して、所定の場所に保管しておき、入浴者の入浴時に、介護用浴槽1をストレッチャー7に取り付けることができる。介護施設では、このような入浴装置100を導入することにより、浴場に介護用浴槽1を設置する必要がなくなる。また、入浴装置100では、介護用浴槽1がストレッチャー7に一体的に取り付けられた状態で入浴が行われるため、入浴者1人当たりの入浴スペースを抑えることができる。このため、浴場の省スペース化を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態の介護用浴槽1では、各半割槽4、5の各突合せ端部413、513同士を近づけて、防水性スライドファスナー6を閉めるだけで各半割槽5、6を結合させることができるため、介護用浴槽1の組立および分解がより容易である。また、軽量であるため、入浴サービスにおける介護従事者の作業負担を軽減させることができる。
【0071】
各浴槽受け部73は、棒状をなす部材で構成されている。各浴槽受け部73は、その前方側の端部に、上側に湾曲する湾曲部731が形成されている。また、各浴槽受け部73は、その後方側の端部に、後述する巻上機構9が組み込まれたケース91が固定される側面視略L字状のケース取付部732が形成されている。
【0072】
このような浴槽受け部73を構成する部材としては、特に限定されないが、例えば、アルミ製の棒材を用いることができる。
【0073】
また、各浴槽受け部73は、その横断面形状が円形をなしている。そのため、浴槽受け部73への側方リム部31の着脱を容易に行うことができる。
【0074】
前方連結部74は、棒状をなす部材で構成されており、その横断面形状が円形をなしている。この前方連結部74は、一対の浴槽受け部73、73の前方側の端部(湾曲部731)と、その両端部付近で溶接等により固定されている。このような前方連結部74は、
図14に示すように、一対の浴槽受け部73、73よりも高い位置に設けられている。このような前方連結部74を構成する部材としては、特に限定されないが、例えば、アルミ製の棒材を用いることができる。
【0075】
前方連結部74の両端部には、その後方側に、ロープ121の前方側の端部を、スナップ741を介して固定するための2つの連結リング742が設けられている。また、前方連結部74の両端部の下側には、後述する前方側の2つの脚部76のダンパー機構763を駆動させるための2つのロック解除レバー743、743が設けられている。
【0076】
後方連結部75は、ロープ121を巻き上げる巻上機構9が組み込まれたケース91を有している。このケース91は、フレーム70の一部(後方側の端部)を構成している。
【0077】
以下、フレーム70の後方側の構成を、
図15~
図17を参照しつつ、説明する。
図15は、
図13に示すストレッチャーのフレームの後方側(入浴者の脚部側)を示す部分斜視図である。
図16は、
図15に示すフレームの後方側の構成(取っ手およびロック解除レバーを除く)の分解斜視図である。
図17は、
図15に示すフレームに組み込まれた巻上機構(ハンドルは図示せず)の平面視断面図である。
【0078】
図15および
図16に示すように、後方連結部75は、巻上機構9が組み込まれた略直方体状のケース91を有している。ケース91には、図中紙面右手前側の端部に形成され、ハンドル取付部92を取り付けるための開口部911と、前方側の両端部に形成され、ワイヤ96が引き出される一対の開口部912、912が形成されている。このケース91は、その両端部が浴槽受け部73に形成されたケース取付部732に、ネジ止め等により固定されている。なお、ケース取付部732の上面は、浴槽受け部73よりも高い位置に設けられており、
図15に示すように、ケース91は、一対の浴槽受け部73、73よりも高い位置に設けられている。また、ケース取付部732の上面には、前方側の端部に、ボルト734とナット735とにより回転可能に取り付けられたローラー733が設けられている(
図16参照)。後述する巻上機構9のワイヤ96は、このローラー733上を滑るようにして、巻上機構9の作用により巻き取られる。
【0079】
また、後方連結部75は、ケース91の後ろ側に、ストレッチャー7を牽引するための一対の取っ手751、751を備えている。また、一対の取っ手751、751の下側には、後述する後方側の2つの脚部76のダンパー機構763を駆動させるための2つのロック解除レバー752が設けられている。
【0080】
巻上機構9は、ケース91の
図17中右側に突出したハンドル取付部92と、ハンドル取付部92に着脱可能に取り付けられるハンドル93と、ハンドル93の回転と連動して回転する回転シャフト94と、回転シャフト94に連結し、回転シャフト94の軸方向(
図17中左右方向)にスライドするスライドナット95とを有している。スライドナット95は、図示しないガイド機構により、回転シャフト94の回転運動を回転シャフト94の軸方向への直線運動に変換して、
図17中の左右方向にスライド可能に構成されている。
【0081】
また、スライドナット95の回転シャフト94と反対側(
図17中左側)の端部には、2本のワイヤ96、96が連結されている。スライドナット95に連結された一方のワイヤ96は、
図17に示すように、ケース91の
図17中左側の端部付近に設けられた第1の滑車97に巻き掛けられて、ケース91の
図17中左側の開口部912から引き出される。また、他方のワイヤ96は、第1の滑車97と、ケース91の
図17中右側の端部付近に設けられた第2の滑車98とに巻き掛けられて、ケース91の
図17中右側の開口部912から引き出される。左右のワイヤ96、96は、それぞれ、開口部912から引き出される長さが等しくなるように構成されている。
【0082】
これらのワイヤ96、96の先端には、それぞれ、担架シート120の筒状部に挿通されたロープ121の後方側の端部と固定するためのスナップ99が取り付けられる(
図13参照)。
【0083】
巻上機構9では、ハンドル93を回転させることにより、スライドナット95が
図17中左右方向にスライド(移動)する。このスライドナット95の移動により、開口部912から引き出された左右のワイヤ96、96の引き出し量が調整される。そのため、担架シート120の筒状部に挿通された各ロープ121の両端部を前方連結部74のスナップ741と後方連結部75のスナップ99とに固定した状態で、ハンドル93を回転させることにより、ロープ121、121を牽引または弛緩させることができる。これにより、担架シート120に入浴者を乗せた状態で、ハンドル93を回転させて、ロープ121、121を弛緩させることにより、担架シート120が介護用浴槽1内に下降して担架シート120に乗せた入浴者を入浴させることができる。
【0084】
このように、ストレッチャー7のフレーム70に担架シート120のロープ121の巻上機構9が一体的に設けられることにより、別途、担架シートを昇降させるための装置を設ける必要がない。そのため、入浴装置100は、利便性に優れている。
【0085】
また、前述したように、フレーム70は、前方連結部74および後方連結部75(ケース91)が、一対の浴槽受け部73、73よりも高い位置に設けられている(
図14参照)。入浴者を担架シート120に乗せると、ロープ121が前方連結部74および後方連結部75から吊り下がる。その際に、前方連結部74および後方連結部75の高さが、一対の浴槽受け部73、73よりも高い位置にあるため、入浴者の担架シート120への移乗の際に、側方リム部31を乗り越え易くすることができる。
【0086】
また、介護用浴槽1をフレーム70に載置した状態で、介護用浴槽1の前方リム部32が前方連結部74の下側に位置し、介護用浴槽1の後方リム部33が後方連結部75の下側に位置するように構成されているのが好ましい。かかる構成では、入浴者を介護用浴槽1に入浴させる際に、介護従事者から入浴者までの距離が短くなり、洗髪等の入浴サービスを行い易くなる。
【0087】
なお、フレーム70のサイズは、使用する介護用浴槽1のサイズに合わせて設計することができる。具体的には、フレーム70の長さ(各浴槽受け部73の長さ)を、介護用浴槽1の長さと略同じ長さとすることができる。また、フレーム70の幅(前方連結部74、後方連結部75(ケース91)の長さ)を、介護用浴槽1の幅と略同じ長さとすることができる。一例を挙げると、長さ:2000mm、幅:750mmの介護用浴槽1を、長さ:2000mm、幅:750mmのフレーム70を備えたストレッチャー7に支持することができる。このように、フレーム70のサイズを、介護用浴槽1のサイズに合わせて設計することができるため、入浴装置100全体としても、そのサイズを抑えることができる。
【0088】
このようなフレーム70は、
図13に示すように、一対の浴槽受け部73、73の前方側および後方側において、4つの脚部76に支持されている。なお、前方側の左右2つの脚部76は、第1の部分71を支持し、後方側の左右2つの脚部76は、第2の部分72を支持している。本実施形態の入浴装置100は、脚部76を昇降させる昇降手段を備えている。この昇降手段により、介護用浴槽1の高さを調整可能に構成されている。
【0089】
図18は、
図14に示す入浴装置において、昇降手段によりフレームを上昇させた状態を示す図である。
【0090】
各脚部76は、ピストンロッド761と、ピストンロッド761が挿入され、上端部において、浴槽受け部73を回動可能に支持するダンパーフレーム762と、ピストンロッド761を支持し、前後方向に長尺に形成されたベースフレーム764と、ベースフレーム764の前後に設けられた一対のキャスター765とを備えている。
【0091】
各脚部76は、ダンパーフレーム762とピストンロッド761とが、エアーダンパーやオイルダンパー等のダンパー機構763(昇降手段)を構成している。4つの脚部76のダンパー機構763は、それぞれ、前方連結部74および後方連結部75のロック解除レバー743、752と連動している。
図14に示す状態において、ロック解除レバー743、752を把持して各脚部76のダンパー機構763を解除することにより、ピストンロッド761に対して、ダンパーフレーム762が上昇し、
図18に示す状態となる。また、ロック解除レバー743、752を把持した状態でフレーム70を下側に押圧することにより、ピストンロッド761に対して、ダンパーフレーム762が下降し、
図14に示す状態に戻る。
【0092】
このようにして、ストレッチャー7は、介護用浴槽1の高さを調整可能に構成されている。入浴装置100では、介護用浴槽1の高さを介護従事者が作業し易い位置にすることができるため、介護従事者の腰や膝への負担を軽減することができる。
【0093】
また、入浴装置100では、脚部76の高さ(長さ)や、昇降時のストローク幅を、適宜設計することができる。ただし、一般的には、脚部76(ダンパーフレーム762)が縮んだ状態(
図14に示す状態)では、入浴装置100の各浴槽受け部73までの高さが、600~700mm程度に設定されている。また、脚部76(ダンパーフレーム762)が伸びた状態(
図18に示す状態)では、入浴装置100の各浴槽受け部73までの高さが、800~900mm程度に設定されている。したがって、脚部76の昇降ストロークは、200mm程度とされる。
【0094】
また、前方側の左右2つの脚部76のダンパーフレーム762は、各ダンパーフレーム762を平行に昇降させるためのスライドガイド766と固定されている。また、同様に、後方側の左右2つの脚部76のダンパーフレーム762も、スライドガイド766と固定されている。
【0095】
また、ストレッチャー7は、ストレッチャー7を折り畳み可能にする折り畳み機構8を備えている。
【0096】
図19は、
図13に示すストレッチャーを折り畳んだ状態を説明するための側面図である。
【0097】
図13および
図14に示すように、折り畳み機構8は、ストレッチャー7の左右両側のそれぞれの側に、第1の部分71の後方側の端部と第2の部分72の前方側の端部とを回動可能に連結する2つのセンタージョイント81、81を有している。また、各センタージョイント81には、その鉛直下方に延在するガイドバー82と、ガイドバー82をスライド可能に支持するスライドジョイント83と、ガイドバー82の下端部に設けられたエンドジョイント84とが取り付けられている。
【0098】
また、ストレッチャー7の左右両側のエンドジョイント84と、前方側のスライドガイド766の両端部とを、互いに回動可能に連結する前方台85が設けられている。同様に、ストレッチャー7の左右両側のエンドジョイント84と、後方側のスライドガイド766の両端部とを、互いに回動可能に連結する後方台86が設けられている。さらに、ストレッチャー7の左右両側のスライドジョイント83と、前方側のスライドガイド766の両端部とを、互いに回動可能に連結する前方フラットバー87が設けられている。同様に、ストレッチャー7の左右両側のスライドジョイント83と、後方側のスライドガイド766の両端部とを、互いに回動可能に連結する後方フラットバー88が設けられている。
【0099】
スライドジョイント83には、ガイドバー82がスライドジョイント83に対してスライドするのを禁止するスライドピン831が設けられている。
図14に示す状態の入浴装置100から、介護用浴槽1および担架シート120を取り外した状態において、スライドピン831を操作し、ガイドバー82のスライド禁止状態を解除すると、ガイドバー82が上方に向かってスライド可能となる。
【0100】
この状態で、ストレッチャー7の第1の部分71の前方連結部74と第2の部分72の後方連結部75とを下側に押圧すると、ガイドバー82がスライドジョイント83に対して上側にスライドして、フレーム70の第1の部分71の前方側の端部および第2の部分72の後方側の端部が、押圧方向(下側)に移動する。そして、押圧を続けることにより、
図19に示すように、第1の部分71と第2の部分72とが、前方連結部74と後方連結部75とが互いに近接するように折り畳まれる。
【0101】
このようにして折り畳まれたストレッチャー7は、折り畳まれる前の状態(
図13の状態)のストレッチャー7に比べて、極めてコンパクトになる。入浴装置100は、未使用状態においては、ストレッチャー7から、介護用浴槽1および担架シート120を取り外して、
図19に示すような折り畳み状態とすることにより、入浴装置100の設置スペースを圧迫することなく、省スペース化を図ることができる。
【0102】
このようなストレッチャー7(フレーム70)に介護用浴槽1を取り付けた状態で、担架シート120の筒状部に挿通された各ロープ121の両端部を前方連結部74のスナップ741と後方連結部75のスナップ99とに固定する。
【0103】
この状態で、ハンドル93を回転させることにより、ロープ121、121の牽引または弛緩させることができる。これにより、担架シート120に入浴者を乗せた状態で、ハンドル93を回転させて、ロープ121、121を弛緩させることにより、担架シート120が介護用浴槽1内に下降して担架シート120に乗せた入浴者を入浴させることができる。
【0104】
このような入浴装置100では、ストレッチャー7(フレーム70)への介護用浴槽1の着脱が容易である。また、ストレッチャー7の長さおよび幅を、介護用浴槽1のサイズに合わせることができ、十分にそのサイズを抑えることができる。したがって、このような入浴装置100は、従来の入浴装置に比べて、設置スペースを抑えて省スペース化を図ることができる。また、介護用浴槽1と入浴者を乗せて入浴させるための担架シート120とが、ストレッチャー7に一体的に取り付けられるため、利便性も向上させることができる。
【0105】
なお、このような入浴装置100は、介護用浴槽1を取り外した状態で、通常のストレッチャーとして使用することも可能である。
【0106】
以上、本発明の介護用浴槽および入浴装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0107】
例えば、上述した第1実施形態では、各半割槽4、5の突合せ端部に、それぞれ、4つの爪部および4つの受け部が設けられた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、各半割槽4、5の底部に、それぞれ、3つ以上の爪部および受け部を設けてもよい。
【0108】
また、上述した本実施形態の入浴装置100は、ストレッチャー7が折り畳み可能に構成されているが、折り畳まれる構成でなくてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…介護用浴槽 2…浴槽本体 21…底部 22…側壁部 23…第1の脚部 24…第2の脚部 3…リム部 31…側方リム部 32…前方リム部 33…後方リム部 34…第1の片部 35…第2の片部 36…切欠き部 4…第1半割槽 41…第1の槽部 411…底部 412…側壁部 413…突合せ端部 42、42’…爪部 421…本体部 422…スライダー部 423…先端部 424…裏当てプレート 425…ワッシャー 426…第1のナット 427…第2のナット 5…第2半割槽 51…第2の槽部 511…底部 512…側壁部 513…突合せ端部 52…受け部 521…本体部 522…溝 6…防水性スライドファスナー 61…防水テープ 611…留め具(ボタン) 62…ファスナーエレメント列 621…ファスナーエレメント 63…スライダー 64…裏当て材 65…留め具 651…ボルト 652…ナット 66…目隠しシート 7…ストレッチャー(浴槽支持体) 70…フレーム 71…第1の部分 72…第2の部分 73…浴槽受け部 731…湾曲部 732…ケース取付部 733…ローラー 734…ボルト 735…ナット 74…前方連結部 741…スナップ 742…連結リング 743…ロック解除レバー 75…後方連結部 751…取っ手 752…ロック解除レバー 76…脚部 761…ピストンロッド 762…ダンパーフレーム 763…ダンパー機構 764…ベースフレーム 765…キャスター 766…スライドガイド 8…折り畳み機構 81…センタージョイント 82…ガイドバー 83…スライドジョイント 831…スライドピン 84…エンドジョイント 85…前方台 86…後方台 87…前方フラットバー 88…後方フラットバー 9…巻上機構 91…ケース 911、912…開口部 92…ハンドル取付部 93…ハンドル 94…回転シャフト 95…スライドナット 96…ワイヤ 97…第1の滑車 98…第2の滑車 99…スナップ 100…入浴装置 120…担架シート 121…ロープ