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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コンクリート脱水促進方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240416BHJP
   E04G 21/06 20060101ALI20240416BHJP
   E01C 23/03 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/06
E01C23/03
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020145090
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039842
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599015250
【氏名又は名称】株式会社明光建商
(73)【特許権者】
【識別番号】596086457
【氏名又は名称】株式会社三田
(73)【特許権者】
【識別番号】594094043
【氏名又は名称】株式会社建和
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 武志
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】達川 結樹
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 義明
(72)【発明者】
【氏名】村松 功朗
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6004553(JP,B1)
【文献】特公昭52-038333(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/00-21/10
E01C23/03
E04F15/08、15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設し、この硬化前のコンクリートの表面に有孔のろ過マットを敷設して、この敷設されたろ過マットの上部から、当該ろ過マットの直下および外周縁形状よりも所定幅だけ外側の範囲のコンクリートの表面を押圧することによって、当該コンクリートの内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層を形成する一方、
このろ過マットの外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマットを、当該ろ過マットおよびノロ層の上に被覆した後、
真空ポンプによって前記オーバーマットの下面を減圧して、前記ろ過マットを介してコンクリートの表層を圧密して、ろ過マットの下面の凹凸に密着したノロ層に含有された水分を脱水することを特徴とするコンクリート脱水促進方法。
【請求項2】
コンクリートを打設し、この硬化前のコンクリートの表面に有孔のろ過マットを敷設して、かつ、このろ過マットの外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマットを、当該ろ過マットの上に被覆した後、この敷設されたろ過マットおよびオーバーマットを押圧することによって、当該コンクリートの内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層を形成する一方、
真空ポンプによって前記オーバーマットの下面を減圧して、前記ろ過マットを介してコンクリートの表層を圧密して、ろ過マットの下面に密着したノロ層に含有された水分を脱水することを特徴とするコンクリート脱水促進方法。
【請求項3】
振動装置を載置し、この振動装置の自重および振動によって、押圧することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート脱水促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表層の真空脱水処理技術の改良、更に詳しくは、コンクリート内部の水分を強制的に浮上させて形成したノロ層に、ろ過マットの大きな表面積の凹凸形状を巧みに組み合わせることによって、作業時間を短縮することができるコンクリート脱水促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを打設すると、表面に余剰なブリーディング水が浮いてくる。このブリーディング水は、コンクリート表層のワーカビリチーを大きくし、硬化後に水分が乾燥することにより、ブリーディング水があった場所が空隙となって表層強度が弱くなってしまうことから、真空ポンプを使用してコンクリートの表層を圧密し、ブリーディング水を脱水する工法(所謂「真空コンクリート工法」)が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
この真空コンクリート工法は、コンクリート打設後に、その表層部からコンクリート表面のブリーディング水と内部の余剰水および残留空気を吸引排除する工法であり、この工法によって、実質的に表層部の水/セメント比を低下させて、初期強度の発現を早め、コンクリートの表層強度を高くし、コンクリートの収縮を減少させて収縮割れ等の表面欠陥の防止を図り、密度向上、強度発現性、中性化抑制、仕上材との付着性、耐水性、耐摩耗性、初期凍害抑制性能を向上させることができるものである。
【0004】
具体的には、コンクリート打設後硬化前のコンクリートの表面に真空処理用マットをコンクリート表面に被せて、真空ポンプによりこの真空処理用マットの下面を減圧して真空脱水処理を行うものであり、この真空処理用マットは、上面に真空配管を接続した気密性のオーバーマットと、このオーバーマットの下面に配設したろ過マットとを積層して構成され、真空配管を真空ポンプと水分離器に接続して、マット下面側をコンクリート表面に被せて、マット下面とコンクリート表面との間隙を真空ポンプにより減圧して吸水を行う。
【0005】
この際、改質の対象となるのは、主として土木用コンクリートであり、コンクリートの表面に浮かび上がってくるだけの余剰水がほとんど無い上に、屋外の炎天下などで施工されることも多いため、直射日光や気温、風などの影響で表面が乾燥して固くなりやすいことから、本件出願人は、かつて、オーバーマットの周囲を密着させて、真空度を上げる技術を発明した(特許文献3参照)。但しこの技術が建築用コンクリートにも適用できることは言うまでもない。
【0006】
しかしながら、かかる発明では、マット内の真空度を高めたとしても、吸水されるのは自然に浮き上がってくるブリーディング水のみであるため、コンクリート内の水分を十分に脱水するためには時間がかかってしまうという問題があり、特に、屋外の施工箇所は高温になることがあるため、作業時間が長くなると、コンクリートの硬化が進み処理が間に合わなくなる場合や、作業員が熱中症にかかるなどのおそれがあり、また、乾燥時間が長くかかると不良コンクリートの原因にもなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-305509号公報
【文献】特開平11-117530号公報
【文献】特許第6004553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のコンクリート表層の真空脱水処理技術に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、コンクリート内部の水分を強制的に浮上させて形成したノロ層に、ろ過マットの大きな表面積の凹凸形状を巧みに組み合わせることによって、作業時間を短縮することができるコンクリート脱水促進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、コンクリート3を打設し、この硬化前のコンクリート3の表面に有孔のろ過マット2を敷設して、この敷設されたろ過マット2の上部から、当該ろ過マットの直下および外周縁形状よりも所定幅だけ外側の範囲のコンクリート3の表面を押圧することによって、当該コンクリート3の内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層31を形成する一方、
このろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマット1を、当該ろ過マット2およびノロ層31の上に被覆した後、
真空ポンプPによって前記オーバーマット1の下面を減圧して、前記ろ過マット2を介してコンクリート3の表層を圧密して、ろ過マット2の下面の凹凸に密着したノロ層31に含有された水分を脱水するという技術的手段を採用したことによって、コンクリート脱水促進方法を完成させた。
【0012】
更にまた、本発明は、コンクリート3を打設し、この硬化前のコンクリート3の表面に有孔のろ過マット2を敷設して、かつ、このろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマット1を、当該ろ過マット2の上に被覆した後、この敷設されたろ過マット2およびオーバーマット1を押圧することによって、当該コンクリート3の内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層31を形成する一方、
真空ポンプPによって前記オーバーマット1の下面を減圧して、前記ろ過マット2を介してコンクリート3の表層を圧密して、ろ過マット2の下面に密着したノロ層31に含有された水分を脱水するという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、振動装置を載置し、この振動装置の自重および振動によって、押圧するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンクリート脱水促進方法によれば、コンクリート表層部に余剰水を含んだノロが浮上しているので、ろ過マット2の下面の凹凸によって、ノロ層31が接触する表面積を大きくするとともに、密着性を大きくすることによって、高い真空度を実現できるとともに、吸水範囲が大きくなることによって、時間当たりの吸水量を大きくすることができる。
【0015】
そして、従来工法では5分程度の真空脱水時間を標準としていたが、2分程度で所望の改善効果が得られる。そのため、屋外環境においてはコンクリートの硬化速さに合わせて遅滞なく作業することが容易になる。また、施工面積が広範囲であると、作業の反復回数も多くなるため、1回の作業時間短縮による累積的な時間短縮の効果は絶大であることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態の脱水促進方法の工程を表わす説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図5に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはオーバーマットであり、符号2で指示するのはろ過マット、符号3で指示するものはコンクリートである。
【0018】
本発明のコンクリート脱水促進方法について以下に説明する。まず、コンクリート3を打設する。本実施形態では、単位水量(練り調合時の1m当たりの水量)が140~160kg/mで、かつ、水/セメント比が40~50%の範囲のコンクリート3を用いる。このコンクリート3の条件は、所謂「土木用」コンクリートであり、上記条件のほか、スランプ8~15cm、水/セメント比40~50%、強度27~40MPa程度であるという特徴を有している。
【0019】
コンクリートの打設方法は、常法に従い、バイブレータ等での締め固めや、木鏝などによる粗均しを行った後、コンクリート表面のブリーディングが安定状態になるまでそのまま静置する。このようなコンクリートを屋外で打設した時は気温、風、直射日光などの影響でコンクリート表面が乾き、こわばりを示し、オーバーマット密着による真空状態が得られにくくなる場合がある。
【0020】
そして、硬化前のコンクリート3において、有孔のろ過マット2の直下および当該ろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅(本実施形態では20~30cm)だけ外側の範囲のコンクリート3の表面を押圧する(図1参照)。
【0021】
本実施形態では、鏝を摺動してコンクリート3の表面を押圧することができるほか、振動装置を載置し、この振動装置の自重および振動によって、コンクリート3の表面を押圧することもできる。振動装置としては、例えば、バイブレータープレートや回転円盤を有する動力フロートなどを採用することができる。こうして機械化することにより、押圧時の作業負荷を軽減し、作業時間も短縮することができる。
【0022】
このように、コンクリート3の表面を押圧することによって、屋外で打設され、表面にこわばりが生じたコンクリートでも、未硬化コンクリートのチキソトロピー性および圧密作用を巧みに利用して、当該コンクリート3の内部に僅かに含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層31を形成する(図2参照)。
【0023】
なお、押圧の開始タイミングとしては、コンクリート3のブリーディングが70~90%で貫入値200~700N(より好ましくは200~400N)にすることが、短時間で効率よく脱水できるため好ましい。貫入値とは、50φ×12mmのプレートをコンクリートに沈める時の抵抗値を貫入計で測定したものである。
【0024】
次いで、このノロ層31の範囲内にろ過マット2を敷設する(図3参照)。このろ過マット2は、通水性および通気性を有する有孔のメッシュ素材(生地)あるいはポーラス体などであり、例えば、熱可塑性合成繊維で織成されたセメント粒子不透過性の高密度織物を採用するのが好ましく、特に、熱可塑性合成繊維で織成され、かつ、その少なくとも片面を熱圧着処理してなる高密度織物であるか、または、この高密度織物をフィルター層とし、その裏面に透水層として通水・通気容易に不織布を接着剤により貼り合わせてなる積層織物を採用することもできる。なお、高密度織物であれば表面熱処理は必須ではなく、一般的に使われているろ布が適用できる。表面熱処理は「透水型枠」の場合にコンクリートから離型しやすくするために行われる。本工法ではろ過マットはセメント効果前に水洗いすれば機能は回復する。また、耐アルカリ性素材が求められるため、ポリエステル系は耐アルカリ性で不可、天然繊維は吸水性が大きいので不可である。
【0025】
この積層織物としては、特に、透水層の不織布において、スパンボンド不織布ならびにニードルパンチ不織布、またはスパンボンド不織布を基布としてその片面に合成樹脂ウエブを積層した不織布、のうちの何れかを使用し、ホットメルトレジンからスパンボンド製法によって形成した接着シートを使用し、この接着シートを介して、熱圧着により前記織物と不織布とを接着した積層織物を採用することができる。
【0026】
また、高密度織物としては、例えば、ポリアミドやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性合成繊維の撚合糸や引揃糸で構成された高密度織物が好ましい。この際、織物表面の熱圧着処理は、熱可塑性合成樹脂の種類によって差があるが、ヒートカレンダーロールにより90~220℃の温度で行うことができる。
【0027】
更にまた、この複合織物において、フィルター層の裏面に貼り合わせた透水層は、天然繊維や合成繊維の織布、または不織布等の材料を選択することができ、本実施形態では不織布を採用し、スパンボンド不織布ならびにニードルパンチ不織布、またはスパンボンド不織布を基布としてその片面に合成樹脂ウエブを積層したものなどを採用することができる。
【0028】
そして、織物の裏面に透水層を貼り合わせてろ過マット2を構成する方法は、糸による縫合、接着剤による部分接着、接着面の繊維の融解によるホットメルト接着法などがある。特に、熱可塑性樹脂からスパンボンド法により製造した接着シートを使用して貼り合わせたろ過マット2は、熱可塑性樹脂の交絡した長繊維が、織物のフィルター層と透水層とを接着し、かつ、シート面域には、長繊維同士で形成した隙間があるため、織物と透水層との接着面には、透水可能な多数の間隙(通水路)を形成することができる。具体的には、ジオテキスタイルも透水層として使える「サランハニカム:旭化成アドバンス株式会社製品」などを使用することができる。
【0029】
このような高密度織物のろ過マット2は、緻密に織り込まれた撚合糸や引揃糸がセメント粒子の透過流出を阻止し、水のみをろ過をすることができる。また、片面を熱圧着処理(ヒートカレンダー処理など)で熱圧着した高密度織物のろ過マット2は、熱圧着により撚合糸や引揃糸束の表面に露出する隣接繊維同士が部分的に融着して形成した微細な網目によって、セメント粒子の透過流出を阻止することができる。更にまた、前記のように透水層を設けた積層織物のろ過マット2は、透水層による水の排出を容易にするため、水のろ過速度が大きく、単位時間当たりの排水量を多くすることができる。
【0030】
また、前記積層織物において、透水層のスパンボンド不織布またはニードルパンチ不織布は、前記織物と真空処理用マット(または適宜設けることができる適当な支持体)との間に、適度の厚みのある通水路を形成している。特に、透水層に合成繊維ウエブを積層した不織布を利用すれば、通水路を確保でき、ろ過マット2の通水抵抗を低下させるのに有効である。
【0031】
また、このろ過マット2をセメント粒子不透過性の高密度織物とすることにより、真空脱水処理中に、このろ過マット2によってセメント粒子が完全にコンクリート中に残されて余剰水と残留空気だけが排出され、コンクリート表層のセメント成分を全く失うことがないので、真空脱水処理をした後の表面強度を一層高めることができる。
【0032】
そして、このろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅(本実施形態では20~30cm)だけ大きく形成した気密性のオーバーマット1を、当該ろ過マット2およびろ過マット2の周囲のノロ層31の上に被覆する(図4参照)。この際、オーバーマット1の外周縁は、ろ過マット2の外周におけるノロ層31に密着させることができる。本実施形態におけるオーバーマット1およびろ過マット2の平面形状は何れも略矩形であり、このオーバーマット1の外周部はのりしろとして機能するものである。なお、本実施形態におけるオーバーマット1には、ナイロンメッシュ補強ゴム引シートを採用する。
【0033】
然る後、真空ポンプPによって前記オーバーマット1の下面を減圧して、前記ろ過マット2を介してコンクリート3の表層を圧密して、ろ過マット2の下面の凹凸に密着したノロ層31に含有された水分を脱水することができる。
【0034】
このように、ろ過マット2の下面の凹凸によって、ノロ層31が接触する表面積を大きくするとともに、密着性を大きくすることによって、高い真空度を実現できるとともに、吸水範囲が大きくなることによって、時間当たりの吸水量を大きくすることができる点に本発明の最大の技術的特徴がある。
【0035】
真空脱水処理を行った後の工程としては、オーバーマット1およびろ過マット2を除去して、必要に応じて、コンクリート3の表面に養生剤を表面均一に所定量だけ撒布し、速やかに、トロウェルや金鏝押さえにより表面仕上げを行い、そのまま養生硬化させることによって、コンクリートの表面の最終処理を行うことができる。したがって、屋外や夏季コンクリートの表面乾燥が速いときには有効であり、作業性の改善、初期の水分蒸発の抑制が期待できる。屋内や冬季などコンクリートの仕上げ作業に問題ないときは、仕上げ後の適切な湿潤養生を行うことを前提として、散布する必要はない。前記養生剤は合成樹脂エマルジョン系または水溶性高分子系が良く、パラフィン系が含まれていないものが良い。合成樹脂エマルジョンには、アクリル系、EVA系、天然ゴム、合成ゴム系などを用いることができる。水溶性高分子にはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど合成高分子系が用いられる。
【0036】
また、別の方法として、真空脱水処理後、オーバーマット1およびろ過マット2を除去して、速やかに、コンクリート3の表面に硬質骨材混合粉とセメント給水分の水とを表面均一に所定量だけ撒布し、直ちに、金鏝押さえにより表面仕上げを行い、同様に養生硬化させることによって、コンクリートの表面の最終処理を行うこともできる。
【0037】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態を図6および図7に基づいて説明する。本実施形態では、コンクリート3を打設し、この硬化前のコンクリート3の表面に有孔のろ過マット2を敷設した後に、この敷設されたろ過マット2の上部から、当該ろ過マットの直下および外周縁形状よりも所定幅だけ外側の範囲のコンクリート3の表面を押圧することによって、当該コンクリート3の内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層31を形成する。
【0038】
本実施形態のように、ろ過マット2の上から振動を伝えるためには、振動装置を使用して押圧することが好ましい。また、ろ過マット2の上に乗って作業することができるため、作業員が足跡を気にする必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0039】
また、敷設されたろ過マット2の直下および当該ろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅(本実施形態では20~30cm)だけ外側の範囲のコンクリート3の表面を押圧することによって、オーバーマット1ののりしろとなるノロ層31を同時に成形することができ、非常に効率的である。
【0040】
そして、ろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマット1を、当該ろ過マット2およびノロ層31の上に被覆した後、同様にして、真空ポンプPによって前記オーバーマット1の下面を減圧して、前記ろ過マット2を介してコンクリート3の表層を圧密して、ろ過マット2の下面の凹凸に密着したノロ層31に含有された水分を脱水することができる。
【0041】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態を図8および図9に基づいて説明する。本実施形態では、コンクリート3を打設し、この硬化前のコンクリート3の表面に有孔のろ過マット2を敷設して、かつ、このろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅だけ大きく形成した気密性のオーバーマット1を、当該ろ過マット2の上に被覆した後に、この敷設されたろ過マット2およびオーバーマット1を押圧することによって、当該コンクリート3の内部に含有した水分を表面に浮上せしめてノロ層31を形成する。
【0042】
本実施形態においても、オーバーマット1およびろ過マット2の上から振動を伝えるためには、振動装置を使用して押圧することが好ましい。
【0043】
そして、真空ポンプPによって前記オーバーマット1の下面を減圧して、前記ろ過マット2を介してコンクリート3の表層を圧密して、ろ過マット2の下面に密着したノロ層31に含有された水分を脱水する。
【0044】
なお、本実施形態では、オーバーマット1およびろ過マット2を敷設した後に、減圧を行って、その範囲を真空状態にしておいて、オーバーマット1の上から押圧することもでき、並行して作業を行うことによって全体の作業時間を短縮することができる。
【0045】
また、この場合、予め所定範囲のコンクリート3を押圧した後に、ろ過マット2、オーバーマット1を敷設し、真空を掛けながらオーバーマット1の上から押圧してもよく、更にまた、ろ過マット2を敷設した後、上部から所定の範囲を押圧した後に、オーバーマット1を敷設し、真空を掛けながらオーバーマット1の上から押圧してもよい。このように、ろ過マット2の直下および当該ろ過マット2の外周縁形状よりも所定幅だけ外側の範囲のコンクリート3の表面にノロ層31を形成するものであれば、マットの敷設と押圧の順序は限定されるものではない。
【0046】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、オーバーマット1およびろ過マット2の平面形状は略矩形に限らず、施工現場に応じて変形することができる。
【0047】
また、コンクリート3の表面を押圧してノロ層31を形成するための手段は、鏝で摺動するものや、振動装置を載置して、自重および振動によって押圧するものに限らず、他の手段を採用することができる。また、夏場のように乾燥が早い時期や、練り混ぜ水量が少ないために極端に含水量が少ない場合には、少量の水を散布してから押圧工程を行うことができる。
【0048】
更にまた、ろ過マット2の構造についても、通水性および通気性を有するものであれば、他の材料などを採用することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0049】
1 オーバーマット
2 ろ過マット
3 コンクリート
31 ノロ層
P 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9