IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人神戸大学の特許一覧 ▶ 株式会社 Integral Geometry Scienceの特許一覧

特許7473114外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法
<>
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図1
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図2
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図3
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図4
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図5
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図6
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図7
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図8
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図9
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図10
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図11
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図12
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図13
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図14
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図15
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図16
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図17
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図18
  • 特許-外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】外場応答分布可視化装置及び外場応答分布可視化方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/10 20060101AFI20240416BHJP
   G01R 33/16 20060101ALI20240416BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01R33/10
G01R33/16
G01R33/09
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021561538
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044193
(87)【国際公開番号】W WO2021107085
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019215478
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「磁場の逆解析理論の開発とスーパーセキュリティゲートの実現」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513034154
【氏名又は名称】株式会社 Integral Geometry Science
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】木村 建次郎
(72)【発明者】
【氏名】美馬 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲明
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-523130(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002233(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086325(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0293193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218036(US,A1)
【文献】国際公開第2018/225028(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00
G01R 29/00
G01Q 90/00
G01Q 60/50
G01N 27/00
G01N 27/72
G01F 17/00
G01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化装置であって、
物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の場成分を誘起する誘起回路と、
前記第1の場成分によって前記物体から誘起される第2の場成分を含む場の強度を前記物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知することで、前記複数の誘起位置のそれぞれに対して前記複数の感知位置で前記場の強度を感知するセンサと、
前記場の強度の感知結果を取得し、前記感知結果に基づいて前記物体の内部を含む領域の前記外場応答分布を示す前記画像を生成する情報処理回路とを備え、
前記情報処理回路は、
前記感知結果を境界条件として用いて、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置が入力されて前記仮想的な感知位置における前記場の強度が出力される誘起位置依存場関数を算出し、
画像化対象位置が入力されて前記画像化対象位置の画像強度が出力される画像化関数であって、前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置として前記画像化対象位置を前記誘起位置依存場関数に入力することで前記誘起位置依存場関数から出力される強度に基づいて定められる画像化関数を算出し、
前記画像化関数に基づいて前記画像を生成する
外場応答分布可視化装置。
【請求項2】
前記情報処理回路は、前記感知結果を前記境界条件として用いて、前記誘起位置依存場関数が満たすラプラス方程式の解を前記誘起位置依存場関数として算出する
請求項1に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項3】
前記情報処理回路は、前記誘起位置依存場関数に入力される前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置を前記画像化対象位置に向かわせる極限演算を前記誘起位置依存場関数に対して行うことで、前記誘起位置依存場関数の極限値を前記画像化関数として算出する
請求項1又は2に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項4】
前記複数の誘起位置は、第1の平面上に定められ、
前記複数の感知位置は、前記第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に定められる
請求項1~3のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項5】
前記複数の感知位置は、前記物体に対して、前記複数の誘起位置とは反対側にある
請求項1~4のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項6】
前記複数の感知位置は、前記物体に対して、前記複数の誘起位置と同じ側にある
請求項1~4のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項7】
前記誘起回路は、前記複数の誘起位置のそれぞれに移動して、前記複数の誘起位置のそれぞれから、前記第1の場成分を誘起し、
前記センサは、前記複数の感知位置のそれぞれに移動して、前記複数の感知位置のそれぞれで前記場の強度を感知する
請求項1~6のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項8】
前記誘起回路は、前記複数の誘起位置に配置される複数の誘起回路で構成され、
前記センサは、前記複数の感知位置に配置される複数のセンサで構成される
請求項1~6のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項9】
前記複数の誘起回路は、第1の平面上に配置され、
前記複数のセンサは、前記第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に配置される
請求項8に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項10】
前記複数の誘起回路は、第1の直線上に配置され、
前記複数のセンサは、前記第1の直線と同じ又は異なる第2の直線上に配置される
請求項8に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項11】
前記物体は、移動し、
前記誘起回路は、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置から前記第1の場成分を誘起することにより、移動する前記物体に対して相対的に定められる前記複数の誘起位置のそれぞれから、前記第1の場成分を誘起し、
前記センサは、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置で前記場の強度を感知することにより、移動する前記物体に対して相対的に定められる前記複数の感知位置のそれぞれで前記場の強度を感知する
請求項1~6のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項12】
前記誘起回路は、第1の壁に含まれ、
前記センサは、前記第1の壁と同じ又は異なる第2の壁に含まれる
請求項1~11のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項13】
前記誘起回路及び前記センサは、床に含まれる
請求項1~11のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項14】
前記誘起回路は、第1のポールに含まれ、
前記センサは、前記第1のポールと同じ又は異なる第2のポールに含まれる
請求項1~11のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項15】
x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数1】
で定められ、
【数2】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数であり、
前記画像化関数は、
【数3】
で定められる
請求項5に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項16】
x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数4】
で定められ、
【数5】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数であり、
前記画像化関数は、
【数6】
で定められる
請求項6に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項17】
x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数7】
で定められ、
【数8】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、kx1、kx2及びkは、それぞれ、x、x及びyに関する波数であり、
前記画像化関数は、
【数9】
で定められる
請求項5に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項18】
x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数10】
で定められ、
【数11】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、kx1、kx2及びkは、それぞれ、x、x及びyに関する波数であり、
前記画像化関数は、
【数12】
で定められる
請求項6に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項19】
前記情報処理回路は、前記画像に基づいて、前記物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、前記物体に前記検知対象物が含まれると判定された場合、前記検知対象物又は前記物体の位置を示す情報を外部端末へ出力する
請求項1~18のいずれか1項に記載の外場応答分布可視化装置。
【請求項20】
外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化方法であって、
誘起回路を用いて、物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の場成分を誘起するステップと、
センサを用いて、前記第1の場成分によって前記物体から誘起される第2の場成分を含む場の強度を前記物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知することで、前記複数の誘起位置のそれぞれに対して前記複数の感知位置で前記場の強度を感知するステップと、
前記場の強度の感知結果を取得し、前記感知結果に基づいて前記物体の内部を含む領域の前記外場応答分布を示す前記画像を生成するステップとを含み、
前記画像を生成するステップでは、
前記感知結果を境界条件として用いて、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置が入力されて前記仮想的な感知位置における前記場の強度が出力される誘起位置依存場関数を算出し、
画像化対象位置が入力されて前記画像化対象位置の画像強度が出力される画像化関数であって、前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置として前記画像化対象位置を前記誘起位置依存場関数に入力することで前記誘起位置依存場関数から出力される強度に基づいて定められる画像化関数を算出し、
前記画像化関数に基づいて前記画像を生成する
外場応答分布可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定により場を取得する装置が記載されている。この装置は、試料の上方において、第1の測定面での磁気力の分布を磁気力画像として取得し、第1の測定面から微小距離dだけ離れた第2の測定面にて測定を行って補助磁気力画像を取得し、これらの差分を微小距離dで除算して磁気力勾配画像を取得する。そして、この装置は、磁気力画像及び磁気力勾配画像をフーリエ変換してラプラス方程式の一般解から導かれる3次元場取得式に代入し、磁気力を示す3次元場を取得する。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、3次元場を取得することにより、試料の表面における磁区の様子を高精度に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/123432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、試料の表面における磁区の様子を取得することができるに過ぎない。試料の表面よりも深い位置において磁区の様子を取得することは困難である。すなわち、試料の内部の磁化率分布(つまり、外場応答分布)を取得することは困難である。
【0006】
そこで、本開示は、物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる外場応答分布可視化装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る外場応答分布可視化装置は、外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化装置であって、物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の場成分を誘起する誘起回路と、前記第1の場成分によって前記物体から誘起される第2の場成分を含む場の強度を前記物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知することで、前記複数の誘起位置のそれぞれに対して前記複数の感知位置で前記場の強度を感知するセンサと、前記場の強度の感知結果を取得し、前記感知結果に基づいて前記物体の内部を含む領域の前記外場応答分布を示す前記画像を生成する情報処理回路とを備え、前記情報処理回路は、前記感知結果を境界条件として用いて、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置が入力されて前記仮想的な感知位置における前記場の強度が出力される誘起位置依存場関数を算出し、画像化対象位置が入力されて前記画像化対象位置の画像強度が出力される画像化関数であって、前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置として前記画像化対象位置を前記誘起位置依存場関数に入力することで前記誘起位置依存場関数から出力される強度に基づいて定められる画像化関数を算出し、前記画像化関数に基づいて前記画像を生成する。
【0008】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を高精度に生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態における磁化率分布可視化装置の第1の例を示す構成図である。
図2図2は、参考例における磁場の再構成を示す概念図である。
図3図3は、実施の形態における誘起位置及び感知位置を示す概念図である。
図4図4は、実施の形態における誘起位置及び感知位置の別の例を示す概念図である。
図5図5は、実施の形態における誘起位置及び感知位置のさらに別の例を示す概念図である。
図6図6は、実施の形態における磁化率分布可視化装置の第2の例を示す構成図である。
図7図7は、実施の形態におけるボディスキャナの第1の例を示す概念図である。
図8図8は、実施の形態における誘起回路を示す概念図である。
図9図9は、実施の形態における磁気センサを示す概念図である。
図10図10は、実施の形態における磁気センサの具体的な構造を示す概念図である。
図11図11は、実施の形態におけるボディスキャナの第2の例を示す概念図である。
図12図12は、実施の形態におけるボディスキャナの第3の例を示す概念図である。
図13図13は、実施の形態における磁気センサと誘起回路との組み合わせ回路を示す概念図である。
図14図14は、実施の形態におけるボディスキャナの第4の例を示す概念図である。
図15図15は、実施の形態におけるボディスキャナの第5の例を示す概念図である。
図16図16は、実施の形態におけるボディスキャナの第6の例を示す概念図である。
図17図17は、実施の形態における外部端末に表示される情報の例を示す概念図である。
図18図18は、実施の形態におけるセキュリティ検査システムの例を示す概念図である。
図19図19は、実施の形態における磁化率分布可視化装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば、本開示の一態様に係る外場応答分布可視化装置は、外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化装置であって、物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の場成分を誘起する誘起回路と、前記第1の場成分によって前記物体から誘起される第2の場成分を含む場の強度を前記物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知することで、前記複数の誘起位置のそれぞれに対して前記複数の感知位置で前記場の強度を感知するセンサと、前記場の強度の感知結果を取得し、前記感知結果に基づいて前記物体の内部を含む領域の前記外場応答分布を示す前記画像を生成する情報処理回路とを備え、前記情報処理回路は、前記感知結果を境界条件として用いて、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置が入力されて前記仮想的な感知位置における前記場の強度が出力される誘起位置依存場関数を算出し、画像化対象位置が入力されて前記画像化対象位置の画像強度が出力される画像化関数であって、前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置として前記画像化対象位置を前記誘起位置依存場関数に入力することで前記誘起位置依存場関数から出力される強度に基づいて定められる画像化関数を算出し、前記画像化関数に基づいて前記画像を生成する。
【0012】
これにより、外場応答分布可視化装置は、複数の誘起位置のそれぞれと、複数の感知位置のそれぞれとの多様な組み合わせに基づく場の強度の感知結果に基づいて、物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0013】
例えば、前記情報処理回路は、前記感知結果を前記境界条件として用いて、前記誘起位置依存場関数が満たすラプラス方程式の解を前記誘起位置依存場関数として算出する。
【0014】
これにより、外場応答分布可視化装置は、感知結果、及び、静的又は準静的な場における多重経路問題に関するラプラス方程式に基づいて、適切に誘起位置依存場関数を導出することができる。
【0015】
例えば、前記情報処理回路は、前記誘起位置依存場関数に入力される前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置を前記画像化対象位置に向かわせる極限演算を前記誘起位置依存場関数に対して行うことで、前記誘起位置依存場関数の極限値を前記画像化関数として算出する。
【0016】
これにより、外場応答分布可視化装置は、誘起位置依存場関数に基づいて、適切に画像化関数を導出することができる。
【0017】
また、例えば、前記複数の誘起位置は、第1の平面上に定められ、前記複数の感知位置は、前記第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に定められる。
【0018】
これにより、外場応答分布可視化装置は、誘起回路及びセンサの配置スペースの増大を抑制することができる。また、外場応答分布可視化装置は、演算処理の複雑化を抑制することができる。
【0019】
また、例えば、前記複数の感知位置は、前記物体に対して、前記複数の誘起位置とは反対側にある。
【0020】
これにより、外場応答分布可視化装置は、物体に対して、複数の誘起位置とは反対側の複数の感知位置のそれぞれで場の強度を感知することができる。したがって、外場応答分布可視化装置は、複数の感知位置のそれぞれで場の強度を感知する際、誘起回路が誘起する第1の場成分の影響を抑制することができる。
【0021】
また、例えば、前記複数の感知位置は、前記物体に対して、前記複数の誘起位置と同じ側にある。
【0022】
これにより、外場応答分布可視化装置は、物体に対して、複数の誘起位置と同じ側の複数の感知位置のそれぞれで場の強度を感知することができる。したがって、外場応答分布可視化装置は、誘起回路及びセンサの配置スペースの増大を抑制することができる。
【0023】
また、例えば、前記誘起回路は、前記複数の誘起位置のそれぞれに移動して、前記複数の誘起位置のそれぞれから、前記第1の場成分を誘起し、前記センサは、前記複数の感知位置のそれぞれに移動して、前記複数の感知位置のそれぞれで前記場の強度を感知する。
【0024】
これにより、外場応答分布可視化装置は、複数の誘起位置に対して、1つの誘起回路を適用することができ、複数の感知位置に対して、1つのセンサを適用することができる。したがって、外場応答分布可視化装置は、資源コストの増加を抑制することができる。
【0025】
また、例えば、前記誘起回路は、前記複数の誘起位置に配置される複数の誘起回路で構成され、前記センサは、前記複数の感知位置に配置される複数のセンサで構成される。
【0026】
これにより、外場応答分布可視化装置は、誘起回路及びセンサを移動せずに、複数の誘起位置にそれぞれから、場成分を誘起することができ、複数の感知位置のそれぞれで場の強度を感知することができる。したがって、外場応答分布可視化装置は、複数の誘起位置及び複数の感知位置に対応する感知結果を高速に取得することができる。
【0027】
また、例えば、前記複数の誘起回路は、第1の平面上に配置され、前記複数のセンサは、前記第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に配置される。
【0028】
これにより、外場応答分布可視化装置は、第1の平面上の複数の誘起位置及び第2の平面上の複数の感知位置に対応する感知結果を高速に取得することができる。
【0029】
また、例えば、前記複数の誘起回路は、第1の直線上に配置され、前記複数のセンサは、前記第1の直線とは異なる第2の直線上に配置される。
【0030】
これにより、外場応答分布可視化装置は、複数の誘起回路が配置されるスペース、及び、複数のセンサが配置されるスペースを削減することができる。
【0031】
また、例えば、前記物体は、移動し、前記誘起回路は、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置から前記第1の場成分を誘起することにより、移動する前記物体に対して相対的に定められる前記複数の誘起位置のそれぞれから、前記第1の場成分を誘起し、前記センサは、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置で前記場の強度を感知することにより、移動する前記物体に対して相対的に定められる前記複数の感知位置のそれぞれで前記場の強度を感知する。
【0032】
これにより、外場応答分布可視化装置は、多くの誘起回路及び多くのセンサを配置せず、かつ、誘起回路及びセンサを移動せずに、複数の誘起位置にそれぞれから、場成分を誘起することができ、複数の感知位置のそれぞれで場の強度を感知することができる。
【0033】
また、例えば、前記誘起回路は、第1の壁に含まれ、前記センサは、前記第1の壁と同じ又は異なる第2の壁に含まれる。
【0034】
これにより、外場応答分布可視化装置は、人に気付かれずに、外場応答分布を示す画像を生成することができる。
【0035】
また、例えば、前記誘起回路及び前記センサは、床に含まれる。
【0036】
これにより、外場応答分布可視化装置は、人に気付かれずに、外場応答分布を示す画像を生成することができる。
【0037】
また、例えば、前記誘起回路は、第1のポールに含まれ、前記センサは、前記第1のポールと同じ又は異なる第2のポールに含まれる。
【0038】
これにより、外場応答分布可視化装置は、人に気付かれずに、外場応答分布を示す画像を生成することができる。
【0039】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【0040】
【数1】
で定められ、
【数2】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数であり、前記画像化関数は、
【数3】
で定められる。
【0041】
これにより、外場応答分布可視化装置は、上記の式で表現される誘起位置依存場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0042】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数4】
で定められ、
【数5】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数であり、前記画像化関数は、
【数6】
で定められる。
【0043】
これにより、外場応答分布可視化装置は、上記の式で表現される誘起位置依存場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0044】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数7】
で定められ、
【数8】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、kx1、kx2及びkは、それぞれ、x、x及びyに関する波数であり、前記画像化関数は、
【数9】
で定められる。
【0045】
これにより、外場応答分布可視化装置は、上記の式で表現される誘起位置依存場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0046】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、前記仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現され、前記仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現され、前記誘起回路が存在する位置のz座標は、0と定められ、前記センサが存在する位置のz座標は、zと定められ、前記誘起位置依存場関数は、
【数10】
で定められ、
【数11】
は、前記感知結果のフーリエ変換像を示し、kx1、kx2及びkは、それぞれ、x、x及びyに関する波数であり、前記画像化関数は、
【数12】
で定められる。
【0047】
これにより、外場応答分布可視化装置は、上記の式で表現される誘起位置依存場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0048】
また、例えば、前記情報処理回路は、前記画像に基づいて、前記物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、前記物体に前記検知対象物が含まれると判定された場合、前記検知対象物又は前記物体の位置を示す情報を外部端末へ出力する。
【0049】
これにより、外場応答分布可視化装置は、特定の検知対象物の位置、又は、特定の検知対象物を含む物体の位置を通知することができる。
【0050】
また、例えば、本開示の一態様に係る外場応答分布可視化方法は、外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する外場応答分布可視化方法であって、誘起回路を用いて、物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の場成分を誘起するステップと、センサを用いて、前記第1の場成分によって前記物体から誘起される第2の場成分を含む場の強度を前記物体の外部において前記物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知することで、前記複数の誘起位置のそれぞれに対して前記複数の感知位置で前記場の強度を感知するステップと、前記場の強度の感知結果を取得し、前記感知結果に基づいて前記物体の内部を含む領域の前記外場応答分布を示す前記画像を生成するステップとを含み、前記画像を生成するステップでは、前記感知結果を境界条件として用いて、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置が入力されて前記仮想的な感知位置における前記場の強度が出力される誘起位置依存場関数を算出し、画像化対象位置が入力されて前記画像化対象位置の画像強度が出力される画像化関数であって、前記仮想的な誘起位置及び前記仮想的な感知位置として前記画像化対象位置を前記誘起位置依存場関数に入力することで前記誘起位置依存場関数から出力される強度に基づいて定められる画像化関数を算出し、前記画像化関数に基づいて前記画像を生成する。
【0051】
これにより、複数の誘起位置のそれぞれと、複数の感知位置のそれぞれとの多様な組み合わせに基づく場の強度の感知結果に基づいて、物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を高精度に生成することが可能である。
【0052】
以下、図面を用いて、実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0053】
また、ここでは、外場応答分布可視化装置の例として、磁場を用いる磁化率分布可視化装置を主に説明する。また、ここでの説明における磁場成分は、磁場を構成する成分である。磁場成分は、全体の磁場に重畳される複数の磁場のそれぞれであってもよい。
【0054】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における磁化率分布可視化装置の第1の例を示す構成図である。図1に示された磁化率分布可視化装置100は、誘起回路110、誘起回路アクチュエータ120、磁気センサ130、磁気センサアクチュエータ140、情報処理回路150、及び、ディスプレイ160、及び、試料台170を備える。そして、磁化率分布可視化装置100は、試料台170に載置された試料の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を生成する。この画像は、試料に含まれる磁性体、より具体的には強磁性体を示し得る。
【0055】
誘起回路110は、磁場成分を誘起する電気回路である。誘起回路110は、コイル又は導線等であってもよい。ここでは、誘起回路110が誘起する磁場成分を第1の磁場成分と呼ぶ。図1の例において、誘起回路110は、移動する。そして、誘起回路110は、複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起する。第1の磁場成分によって、試料から磁場成分が誘起される。ここでは、試料から誘起される磁場成分を第2の磁場成分と呼ぶ。
【0056】
誘起回路アクチュエータ120は、誘起回路110を移動させるアクチュエータである。誘起回路アクチュエータ120は、誘起回路110を複数の誘起位置のそれぞれに移動させる。これにより、誘起回路110は、複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起する。
【0057】
磁気センサ130は、磁気を感知するセンサである。磁気センサ130は、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子、GMR(Giant Magneto Resistive)素子、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)素子、又は、MI(Magneto-Impedance element)素子等であってもよい。
【0058】
図1の例において、磁気センサ130は、移動する。そして、磁気センサ130は、試料から誘起される第2の磁場成分を含む磁場における磁気を複数の感知位置のそれぞれで感知する。これにより、磁気センサ130は、複数の誘起位置のそれぞれに対して複数の感知位置で磁気を感知する。
【0059】
磁気センサアクチュエータ140は、磁気センサ130を移動させるアクチュエータである。磁気センサアクチュエータ140は、磁気センサ130を複数の感知位置のそれぞれに移動させる。これにより、磁気センサ130は、磁気を複数の感知位置のそれぞれで感知する。
【0060】
情報処理回路150は、情報処理を行う電気回路である。情報処理回路150は、コンピュータ、又は、コンピュータのプロセッサ等であってもよい。情報処理回路150は、磁気の感知結果を取得し、試料の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を感知結果に基づいて生成する。
【0061】
具体的には、情報処理回路150は、感知結果を境界条件として用いて、誘起位置依存磁場関数を算出する。誘起位置依存磁場関数は、第1の磁場成分の誘起位置及び磁気の感知位置が入力されて感知位置における磁気の強さが出力される関数である。
【0062】
そして、情報処理回路150は、画像化関数を算出する。画像化関数は、画像化対象位置が入力されて画像化対象位置の画像強度が出力される関数であって、誘起位置及び感知位置として画像化対象位置を誘起位置依存磁場関数に入力することで誘起位置依存磁場関数から出力される強さに基づいて定められる関数である。そして、情報処理回路150は、試料の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を画像化関数に基づいて生成する。
【0063】
また、情報処理回路150は、生成された画像をディスプレイ160等に出力してもよい。例えば、情報処理回路150は、画像をディスプレイ160に出力することにより、画像をディスプレイ160に表示してもよい。あるいは、情報処理回路150は、画像をプリンタ(図示せず)に出力することにより、プリンタを介して画像を印刷してもよい。あるいは、情報処理回路150は、有線又は無線の通信によって画像を電子データとして他の装置(図示せず)に送信してもよい。
【0064】
ディスプレイ160は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置である。なお、ディスプレイ160は、任意の構成要素であって、必須の構成要素ではない。また、ディスプレイ160は、磁化率分布可視化装置100を構成しない外部の装置であってもよい。
【0065】
試料台170は、試料を載置するための台である。なお、試料台170は、任意の構成要素であって、必須の構成要素ではない。磁化率分布可視化装置100は、試料台170等に載置されていない試料について画像を生成してもよい。また、試料台170は、磁化率分布可視化装置100を構成しない外部の構成要素であってもよい。試料は、電気回路であってもよいし、その他の物体であってもよい。
【0066】
磁化率分布可視化装置100は、試料と誘起位置と感知位置との相対的な位置関係を変えながら、試料から影響を受ける磁気を感知する。これにより、磁化率分布可視化装置100は、試料の内部を含む領域の磁化率分布に関する十分な情報を取得することができる。そして、磁化率分布可視化装置100は、取得された十分な情報に基づいて、誘起位置依存磁場関数を算出することができ、算出された誘起位置依存磁場関数に基づいて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0067】
例えば、磁化率分布可視化装置100は、複数の誘起位置と複数の感知位置との複数の組み合わせに対応する複数の計測値を合成することにより、高精度の画像を生成することができる。
【0068】
図2は、参考例における磁場の再構成を示す概念図である。磁気発生源が存在しない空間の静磁場は、マクスウェルの方程式より、以下の式(1-1)を満たす。
【0069】
【数13】
【0070】
上記の式(1-1)におけるHは、xyz直交座標系におけるz方向の磁場であり、磁場ベクトルのz成分に対応する。Δは、ラプラシアンであり、ラプラス作用素とも呼ばれる。また、上記の式(1-1)の一般解は、z方向に指数関数的に増大する項と、指数関数的に減衰する項との和として次の式(1-2)のように表される。
【0071】
【数14】
【0072】
上記の式(1-2)において、k及びkは、それぞれ、x方向の波数及びy方向の波数を表している。また、a(k,k)及びb(k,k)は、k及びkで表される関数である。例えば、測定によって、z=0の平面における磁場ベクトルのz成分H(x,y,0)、及び、磁場ベクトルのz成分のz方向の勾配∂/∂zH(x,y,z)|z=0が得られる。これらを用いて、式(1-2)のa(k,k)及びb(k,k)が、それぞれ、以下の式(1-3)及び式(1-4)のように求められる。
【0073】
【数15】
【0074】
【数16】
【0075】
上記の式(1-3)及び式(1-4)において、f(k,k)は、H(x,y,0)の2次元フーリエ変換像であり、g(k,k)は、∂/∂zH(x,y,z)|z=0の2次元フーリエ変換像である。式(1-2)に式(1-3)及び式(1-4)を代入することで、Hが、次の式(1-5)のように得られる。
【0076】
【数17】
【0077】
上記の方法によって、ディリクレ型境界条件であるH(x,y,0)、及び、ノイマン型境界条件である∂/∂zH(x,y,z)|z=0を用いて、磁気発生源が存在しない空間の任意のz座標におけるH(x,y,z)を取得することが可能である。つまり、z=0のxy平面である測定面における磁場から、試料の表面における磁場を再構成することが可能である。
【0078】
しかしながら、上記の方法において用いられる式は、磁気発生源が存在しない空間において成立する。したがって、上記の方法のみでは、試料の表面よりも深い位置の磁場を再構成することは困難である。つまり、上記の方法のみでは、磁気発生源が存在する試料の内部の磁化率分布を可視化することは困難である。
【0079】
これに対して、本実施の形態における磁化率分布可視化装置100は、試料と誘起位置と感知位置との相対的な位置関係を変えながら磁気を感知することで得られる感知結果に基づいて、誘起位置依存磁場関数を算出する。そして、磁化率分布可視化装置100は、誘起位置依存磁場関数に基づいて、磁化率分布を示す画像を生成する。すなわち、磁化率分布可視化装置100は、試料の表面よりも深い位置の磁場を再構成することができる。
【0080】
図3は、本実施の形態における誘起位置及び感知位置を示す概念図である。図3の例では、xyz直交座標系における誘起位置及び感知位置が表現されている。
【0081】
具体的には、誘起回路110は、x軸に平行に電流を流す導線である。したがって、誘起回路110の位置は、TLINE(y,z)と表現される。つまり、誘起位置は、TLINE(y,z)と表現される。また、磁気センサ130は、x座標、y座標及びz座標を有し得るため、磁気センサ130の位置は、RTMR(x,y,z)と表現される。つまり、感知位置は、RTMR(x,y,z)と表現される。
【0082】
また、図3の例において、試料の位置は、Pで表現されている。試料は、誘導磁気源とも表現され得る。そして、磁場成分は、TLINE(y,z)→P→RTMR(x,y,z)で伝達される。
【0083】
また、誘起位置TLINE(y,z)及び感知位置RTMR(x,y,z)に対して、感知位置RTMR(x,y,z)における磁気の強さは、Φ(x,y,y,z,z)と表現され得る。Φ(x,y,y,z,z)は、誘起位置TLINE(y,z)及び感知位置RTMR(x,y,z)が入力されて感知位置RTMR(x,y,z)における磁気の強さが出力される誘起位置依存磁場関数である。
【0084】
誘起位置TLINE(y,z)は、誘起回路110の仮想的な位置であってもよい。感知位置RTMR(x,y,z)は、磁気センサ130の仮想的な位置であってもよい。誘起位置TLINE(y,z)が誘起回路110の実際の位置に一致し、かつ、感知位置RTMR(x,y,z)が磁気センサ130の実際の位置に一致する場合において、Φ(x,y,y,z,z)は、実際の感知結果である測定値に一致する。
【0085】
また、図3の例において、誘起回路110は、z=0に位置し、y軸方向へスキャンする。また、磁気センサ130は、z=zに位置し、xy平面上においてx軸方向及びy軸方向へスキャンする。これにより、x、y及びyの組み合わせ毎に、Φ(x,y,y,z=0,z=z)が、測定値として得られる。この測定値が、誘起位置依存磁場関数であるΦ(x,y,y,z,z)の境界条件として用いられる。
【0086】
また、Φ(x,y,y,z,z)は、誘起位置TLINE(y,z)に対応するy及びzに関する調和関数であり、かつ、感知位置RTMR(x,y,z)に対応するx,y及びzに関する調和関数である。したがって、Φ(x,y,y,z,z)は、それぞれ、静的又は準静的な場における多重経路問題に関するラプラス方程式である以下の式(2-1)及び式(2-2)を基礎方程式として満たす。
【0087】
【数18】
【0088】
【数19】
【0089】
試料の位置Pのz座標が誘起回路110のz座標よりも大きく磁気センサ130のz座標よりも小さい場合、式(2-1)及び式(2-2)のそれぞれの一般解は、z方向に指数関数的に増大する項と、指数関数的に減衰する項とのうち、一方で表現される。具体的には、式(2-1)の一般解、及び、式(2-2)の一般解は、それぞれ、以下の式(2-3)、及び、式(2-4)のように表現される。
【0090】
【数20】
【0091】
【数21】
【0092】
式(2-3)及び式(2-4)の組み合わせは、以下の式(2-5)のように表現される。
【0093】
【数22】
【0094】
式(2-5)に対して、z=0及びz=zにおける測定値を境界条件として適用することで、以下の式(2-6)が得られる。
【0095】
【数23】
【0096】
式(2-6)の逆フーリエ変換によって、以下の式(2-7)が得られる。
【0097】
【数24】
【0098】
ここで、
【数25】
は、測定値のフーリエ変換像を示す。したがって、誘起位置依存磁場関数は、以下の式(2-8)で表現される。
【0099】
【数26】
【0100】
誘起位置依存磁場関数にx→x、y→y(=y)及びz→z(=z)を適用することにより、(x,y,z)で磁場成分の誘起後にそこで感知される磁気の強さが示されると想定される。そして、磁気が強いほど、磁化率が高いと想定され、この磁気の強さを示す画像は、試料の内部を含む領域の磁化率分布を示すと想定される。このような画像を生成するための画像化関数は、次の式(2-9)で表現される。
【0101】
【数27】
【0102】
式(2-9)で示された画像化関数は、画像化対象位置が入力されて画像化対象位置の画像強度が出力される関数である。画像強度は、画像化対象位置を誘起位置依存磁場関数に入力することで誘起位置依存磁場関数から磁気の強さとして出力される値に対応する。
【0103】
例えば、磁化率分布可視化装置100の情報処理回路150は、測定値である感知結果、及び、式(2-8)に基づいて、誘起位置依存磁場関数を算出する。そして、情報処理回路150は、誘起位置依存磁場関数、及び、式(2-9)に基づいて、画像化関数を算出する。そして、情報処理回路150は、画像化関数に基づいて、磁化率分布を示す画像を生成する。具体的には、情報処理回路150は、各画像化対象位置に対して画像化関数から出力される値で構成される画像を、磁化率分布を示す画像として生成する。
【0104】
これにより、磁化率分布可視化装置100は、上記の誘起位置依存磁場関数及び画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0105】
図3を用いて説明された上記の誘起位置依存磁場関数及び画像化関数等の式は例であって、誘起位置依存磁場関数及び画像化関数等の式は、上記の例に限られない。上記の方法と同種の方法によって、別の条件に基づく別の式が導出され得る。
【0106】
例えば、図3の例では、磁気センサ130が、試料に対して、誘起回路110とは反対側に位置している。磁気センサ130は、試料に対して、誘起回路110と同じ側に位置していてもよい。例えば、Pのz座標が、誘起回路110のz座標よりも小さく磁気センサ130のz座標よりも小さい場合、上記の式(2-3)は、以下の式(3-1)に置き換えられる。
【0107】
【数28】
【0108】
したがって、この場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式(3-2)で表現される。
【0109】
【数29】
【0110】
また、この場合、画像化関数は、次の式(3-3)で表現される。
【0111】
【数30】
【0112】
図4は、本実施の形態における誘起位置及び感知位置の別の例を示す概念図である。図3の例と同様に、図4の例では、xyz直交座標系における誘起位置及び感知位置が表現されている。図4の例において、誘起回路110は、コイルである。また、誘起回路110と磁気センサ130とは、同じy座標に位置し、誘起回路110のy座標と、磁気センサ130のy座標とは、一体として変化する。
【0113】
したがって、誘起回路110の位置は、TCOIL(x,y,z)と表現される。つまり、誘起位置は、TCOIL(x,y,z)と表現される。また、磁気センサ130の位置は、RTMR(x,y,z)と表現される。つまり、感知位置は、RTMR(x,y,z)と表現される。xとxとは、互いに独立しており、zとzとは、互いに独立している。
【0114】
また、図3の例と同様に、図4の例において、試料の位置は、Pで表現されている。そして、磁場成分は、TCOIL(x,y,z)→P→RTMR(x,y,z)で伝達される。
【0115】
また、誘起位置TCOIL(x,y,z)及び感知位置RTMR(x,y,z)に対して、感知位置RTMR(x,y,z)における磁気の強さは、Φ(x,x,y,z,z)と表現され得る。Φ(x,x,y,z,z)は、誘起位置TCOIL(x,y,z)及び感知位置RTMR(x,y,z)が入力されて感知位置RTMR(x,y,z)における磁気の強さが出力される誘起位置依存磁場関数である。
【0116】
誘起位置TCOIL(x,y,z)は、誘起回路110の仮想的な位置であってもよい。感知位置RTMR(x,y,z)は、磁気センサ130の仮想的な位置であってもよい。誘起位置TCOIL(x,y,z)が誘起回路110の実際の位置に一致し、かつ、感知位置RTMR(x,y,z)が磁気センサ130の実際の位置に一致する場合において、Φ(x,x,y,z,z)は、実際の感知結果である測定値に一致する。
【0117】
また、図4の例において、誘起回路110は、z=0に位置し、xy平面上においてx軸方向及びy軸方向へスキャンする。また、磁気センサ130は、z=zに位置し、xy平面上においてx軸方向及びy軸方向へスキャンする。これにより、x、x及びyの組み合わせ毎に、Φ(x,x,y,z=0,z=z)が、測定値として得られる。この測定値が、誘起位置依存磁場関数であるΦ(x,x,y,z,z)の境界条件として用いられる。
【0118】
また、Φ(x,x,y,z,z)は、誘起位置TCOIL(x,y,z)に対応するx、y及びzに関する調和関数であり、かつ、感知位置RTMR(x,y,z)に対応するx,y及びzに関する調和関数である。したがって、Φ(x,x,y,z,z)は、それぞれ、静的又は準静的な場における多重経路問題に関するラプラス方程式である以下の式(4-1)及び式(4-2)を基礎方程式として満たす。
【0119】
【数31】
【0120】
【数32】
【0121】
試料の位置Pのz座標が誘起回路110のz座標よりも大きく磁気センサ130のz座標よりも小さい場合、式(4-1)及び式(4-2)のそれぞれの一般解は、z方向に指数関数的に増大する項と、指数関数的に減衰する項とのうち、一方で表現される。具体的には、式(4-1)の一般解、及び、式(4-2)の一般解は、それぞれ、以下の式(4-3)、及び、式(4-4)のように表現される。
【0122】
【数33】
【0123】
【数34】
【0124】
式(4-3)及び式(4-4)の組み合わせは、以下の式(4-5)のように表現される。
【0125】
【数35】
【0126】
式(4-5)に対して、z=0及びz=zにおける測定値を境界条件として適用することで、以下の式(4-6)が得られる。
【0127】
【数36】
【0128】
式(4-6)の逆フーリエ変換によって、以下の式(4-7)が得られる。
【0129】
【数37】
【0130】
ここで、
【数38】
は、測定値のフーリエ変換像を示す。したがって、誘起位置依存磁場関数は、以下の式(4-8)で表現される。
【0131】
【数39】
【0132】
誘起位置依存磁場関数にx→x(=x)、y→y及びz→z(=z)を適用することにより、(x,y,z)で磁場成分の誘起後にそこで感知される磁気の強さが示されると想定される。そして、磁気が強いほど、磁化率が高いと想定され、この磁気の強さを示す画像は、試料の内部を含む領域の磁化率分布を示すと想定される。このような画像を生成するための画像化関数は、次の式(4-9)で表現される。
【0133】
【数40】
【0134】
式(4-9)で示された画像化関数は、画像化対象位置が入力されて画像化対象位置の画像強度が出力される関数である。画像強度は、画像化対象位置を誘起位置依存磁場関数に入力することで誘起位置依存磁場関数から磁気の強さとして出力される値に対応する。
【0135】
例えば、磁化率分布可視化装置100の情報処理回路150は、測定値である感知結果、及び、式(4-8)に基づいて、誘起位置依存磁場関数を算出する。そして、情報処理回路150は、誘起位置依存磁場関数、及び、式(4-9)に基づいて、画像化関数を算出する。そして、情報処理回路150は、画像化関数に基づいて、磁化率分布を示す画像を生成する。具体的には、情報処理回路150は、各画像化対象位置に対して画像化関数から出力される値で構成される画像を、磁化率分布を示す画像として生成する。
【0136】
これにより、磁化率分布可視化装置100は、上記の誘起位置依存磁場関数及び画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0137】
図5は、本実施の形態における誘起位置及び感知位置のさらに別の例を示す概念図である。上述した図4の例では、磁気センサ130が、試料に対して、誘起回路110とは反対側に位置している。これに対して、図5の例では、磁気センサ130は、試料に対して、誘起回路110と同じ側に位置している。図5の例における他の条件は、図5の4の例と同じである。
【0138】
図5の例のように、Pのz座標が、誘起回路110のz座標よりも小さく磁気センサ130のz座標よりも小さい場合、上記の式(4-3)は、以下の式(5-1)に置き換えられる。
【0139】
【数41】
【0140】
したがって、この場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式(5-2)で表現される。
【0141】
【数42】
【0142】
また、この場合、画像化関数は、次の式(5-3)で表現される。
【0143】
【数43】
【0144】
図6は、本実施の形態における磁化率分布可視化装置の第2の例を示す構成図である。図6に示された磁化率分布可視化装置200は、複数の誘起回路210、誘起回路支持構造物220、複数の磁気センサ230、磁気センサ支持構造物240、情報処理回路150、及び、ディスプレイ160、及び、試料台170を備える。磁化率分布可視化装置200は、試料台170に載置された試料の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を生成する。
【0145】
複数の誘起回路210は、図1に示された誘起回路110と同種の電気回路である。図6の例では、1つの誘起回路110に代えて、複数の誘起回路210が用いられる。複数の誘起回路210は、移動せず、順次、第1の磁場成分を誘起する。すなわち、複数の誘起回路210は、1つずつ、又は、所定単位毎に、第1の磁場成分を誘起する。これにより、複数の誘起回路210は、誘起回路110と同様に、複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起することができる。
【0146】
誘起回路支持構造物220は、複数の誘起回路210を固定的に支持する構造物である。図6の例では、複数の誘起回路210が移動しないため、図1に示された誘起回路アクチュエータ120は不要である。
【0147】
複数の磁気センサ230は、図1に示された磁気センサ130と同種のセンサである。図6の例では、1つの磁気センサ130に代えて、複数の磁気センサ230が用いられる。複数の磁気センサ230は、移動せず、複数の感知位置で磁気を感知することができる。つまり、複数の磁気センサ230は、磁気センサ130と同様に、複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知することができる。
【0148】
磁気センサ支持構造物240は、複数の磁気センサ230を固定的に支持する構造物である。図6の例では、複数の磁気センサ230が移動しないため、図1に示された磁気センサアクチュエータ140は不要である。
【0149】
図6に示された磁化率分布可視化装置200の複数の誘起回路210及び複数の磁気センサ230等は、図1に示された磁化率分布可視化装置100の誘起回路110及び磁気センサ130等と同じ役割を果たすことができる。したがって、磁化率分布可視化装置200は、磁化率分布可視化装置100と同様に、試料と誘起位置と感知位置との相対的な位置関係を変えながら、試料から影響を受ける磁気を感知することができる。
【0150】
これにより、磁化率分布可視化装置200は、試料の内部を含む領域の磁化率分布に関する十分な情報を取得することができる。そして、磁化率分布可視化装置200は、取得された十分な情報に基づいて、誘起位置依存磁場関数を算出することができ、算出された誘起位置依存磁場関数に基づいて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0151】
なお、図1の例と、図2の例とが組み合わされてもよい。例えば、移動する誘起回路110と、複数の磁気センサ230とが用いられてもよいし、複数の誘起回路210と、移動する磁気センサ130とが用いられてもよい。
【0152】
図7は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第1の例を示す概念図である。
【0153】
図7に示されたボディスキャナ300は、複数の誘起回路210及び複数の磁気センサ230を備える。また、例えば、ボディスキャナ300は、図6に示された情報処理回路150及びディスプレイ160を備える。つまり、ボディスキャナ300は、磁化率分布可視化装置200であってもよいし、磁化率分布可視化装置200を含んでいてもよい。そして、ボディスキャナ300は、磁化率分布を示す画像を生成する。
【0154】
刃物は鉄を成分として有しているため、刃物の磁化率は高い。一方で、アルミケースの磁化率は低い。したがって、磁化率分布を示す画像には、刃物が現れると想定される。すなわち、ボディスキャナ300は、磁化率分布を示す画像を生成することにより、人がアルミケースの中に有している刃物の画像を生成することができる。
【0155】
図7は、概念図であり、複数の誘起回路210の数及びサイズ、並びに、複数の磁気センサ230の数及びサイズは、図7の例とは異なっていてもよい。より小さい多数の誘起回路210がより高密に配置されていてもよいし、より小さい多数の磁気センサ230がより高密に配置されていてもよい。他の概念図も同様である。
【0156】
図7において、例えば、複数の誘起回路210が、鉛直方向又は水平方向に1列ずつ、第1の磁場成分を誘起する。第1の磁場成分によって刃物が第2の磁場成分を誘起する。そして、複数の磁気センサ230が、第2の磁場成分を含む磁場の磁気を感知する。これにより、複数の磁気センサ230は、複数の誘起位置のそれぞれに対して複数の感知位置で磁気を感知することができる。そして、ボディスキャナ300は、感知結果に基づいて、刃物の画像を高精度に生成することができる。
【0157】
具体的には、複数の誘起回路210のうち鉛直方向又は水平方向の一列は、図3に誘起回路110として示された導線と同じ役割を果たす。式(2-1)及び式(2-2)等に示された基礎方程式が成立すると想定される。したがって、図3を用いて説明された方法を用いて、式(2-8)及び式(2-9)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が導出され得る。
【0158】
よって、ボディスキャナ300は、式(2-8)及び式(2-9)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数に基づいて、刃物の画像を高精度に生成することができる。特に、アルミケースは、テラヘルツ波及びマイクロ波等を通さない。ボディスキャナ300は、このようなアルミケースの中の刃物の画像を高精度に生成することができる。
【0159】
なお、複数の誘起回路210は、鉛直方向又は水平方向に1列ずつではなく、1つずつ、又は、所定単位毎に、第1の磁場成分を誘起してもよい。この場合、式(2-8)及び式(2-9)とは異なる誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が、図3を用いて説明された方法と同種の方法を用いて導出され得る。ボディスキャナ300は、このような誘起位置依存磁場関数及び画像化関数に基づいて、刃物の画像を生成してもよい。
【0160】
図8は、誘起回路210を示す概念図である。図8に示された誘起回路210は、図7に示された複数の誘起回路210のそれぞれに対応する。具体的には、誘起回路210は、コイルである。これにより、第1の磁場成分が誘起される。なお、誘起回路210は、コイルに限られず、他の電気回路であってもよい。
【0161】
図9は、磁気センサ230を示す概念図である。図9に示された磁気センサ230は、図7に示された複数の磁気センサ230のそれぞれに対応する。具体的には、磁気センサ230は、TMR素子又はMI素子等で構成される。これにより、第2の磁場成分を含む磁場における磁気が感知される。
【0162】
図10は、図9に示された磁気センサ230の具体的な構造を示す概念図である。上記の通り、磁気センサ230は、例えばTMR素子で構成される。
【0163】
TMR素子では、10nmから100nm程度の厚さを有する磁性体膜で絶縁膜が挟まれている。より具体的には、TMR素子は、ソフト層231、トンネル層232、及び、PIN層(磁化固定層)233の複数の薄膜で構成される。ソフト層231は、外界の磁化の方向に応じて、磁化の方向が変動する磁性体膜である。PIN層233は、磁化の方向が変動しない磁性体膜である。そして、トンネル層232は、絶縁膜である。
【0164】
ソフト層231における磁化の方向、及び、PIN層233における磁化の方向が同じである場合と、それらの方向が異なっている場合とで電気抵抗が異なる。この電気抵抗の変化を利用して磁場成分が感知される。
【0165】
例えば、磁気センサ230は、上記のような特性を利用して、磁場成分を感知し測定する。なお、磁気センサ230は、TMR素子で構成される上記の例に限られず、GMR素子、SQUID素子又はMI素子等の他の素子で構成されていてもよい。
【0166】
図11は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第2の例を示す概念図である。図11に示されたボディスキャナ400は、図7に示されたボディスキャナ300と基本的に同じであるが、ボディスキャナ400の複数の誘起回路210及び複数の磁気センサ230が構造物に含まれている。具体的には、複数の誘起回路210及び複数の磁気センサ230が、2つの壁に含まれている。
【0167】
より具体的には、複数の誘起回路210が、2つの壁のうち一方の壁に含まれており、複数の磁気センサ230が、2つの壁のうち他方の壁に含まれている。人が2つの壁の間にいる期間に、複数の誘起回路210によって複数の誘起位置のそれぞれから第1の磁場成分が誘起され、複数の磁気センサ230によって複数の感知位置で磁気が感知される。これにより、ボディスキャナ400は、人に気付かれずに、人がアルミケースの中に有する刃物の画像を生成することができる。
【0168】
図12は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第3の例を示す概念図である。図12に示されたボディスキャナ500は、図11に示されたボディスキャナ400と基本的に同じであるが、ボディスキャナ500は、複数の誘起回路210及び複数の磁気センサ230が組み合わされた複数の組み合わせ回路310を備える。具体的には、1つの組み合わせ回路310は、1つの誘起回路210と1つの磁気センサ230とを含む。そして、複数の組み合わせ回路310が、1つの壁に含まれる。
【0169】
つまり、複数の磁気センサ230は、試料に対応する人に対して、複数の誘起回路210と同じ側にある。よって、例えば、式(3-2)及び式(3-3)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が適用され得る。そして、ボディスキャナ500は、刃物の画像を高精度に生成することができる。
【0170】
なお、複数の組み合わせ回路310のうち鉛直方向又は水平方向に1列が、第1の磁場成分を誘起する場合、その1列を除く他の複数の列が、磁気を感知してもよい。これにより、組み合わせ回路310において、自身が誘起する第1の磁場成分によって、強すぎる磁気を感知することが抑制される。
【0171】
図13は、組み合わせ回路310を示す概念図である。図13のように、組み合わせ回路310は、誘起回路210と磁気センサ230とを含む。具体的には、誘起回路210は、コイルである。磁気センサ230は、TMR素子で構成され、コイルの内部に含まれる。これにより、組み合わせ回路310は、第1の磁場成分を誘起することができ、また、第2の磁場成分を含む磁場における磁気を感知することができる。
【0172】
図14は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第4の例を示す概念図である。図14に示されたボディスキャナ600は、図12に示されたボディスキャナ500と基本的に同じであるが、ボディスキャナ600の複数の組み合わせ回路310は、床に含まれる。
【0173】
図12の例と同様に、複数の磁気センサ230は、試料に対応する人に対して、複数の誘起回路210と同じ側にある。よって、例えば、式(3-2)及び式(3-3)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が適用され得る。そして、ボディスキャナ600は、刃物の画像を高精度に生成することができる。
【0174】
図15は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第5の例を示す概念図である。図15に示されたボディスキャナ700は、図12に示されたボディスキャナ500と基本的に同じであるが、ボディスキャナ700の複数の組み合わせ回路310は、ポールに含まれる。このポールは、立ち入り禁止バー等であってもよい。
【0175】
図15において、例えば、人がポールの近くを通り過ぎる。その際、ポールに含まれる複数の組み合わせ回路310が1つずつ第1の磁場成分を誘起する。そして、複数の組み合わせ回路310が、磁気を感知する。その際、第1の磁場成分を誘起する組み合わせ回路310を除く複数の組み合わせ回路310が、磁気を感知してもよい。人がポールの近くを通っている間に、ボディスキャナ700は、これらの処理を繰り返す。
【0176】
具体的には、ポールに直交する方向に沿ってポールの付近を通り過ぎる人の1次元的な移動によって、ポールに含まれる組み合わせ回路310の磁気センサ230は、人に対して相対的に1次元の走査を行ったことになる。そして、ポールにおいて1次元に配列された複数の磁気センサ230で構成される磁気センサ列から得られるデータを組み合わせて、2次元の画像(2次元の感知結果)が得られる。
【0177】
例えば、人がポールの近くを通り過ぎるため、複数の組み合わせ回路310は、人に対して相対的に平面上をスキャンすることができる。すなわち、ボディスキャナ700は、平面上の複数の誘起位置のそれぞれから第1の磁場成分を誘起することができ、平面上の複数の感知位置のそれぞれで第2の磁場成分を含む磁場の磁気を感知することができる。そして、ボディスキャナ700は、感知結果に基づいて、人がアルミケースの中に有する刃物等の画像を生成することができる。
【0178】
例えば、図15の人の進行方向が、図4のy軸方向として用いられる場合、進行する人に対して相対的な誘起回路210のy座標と磁気センサ230のy座標とが一致する。また、磁気センサ230は、試料に対応する人に対して、誘起回路210と同じ側にある。よって、例えば、式(5-2)及び式(5-3)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が適用され得る。
【0179】
図16は、図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるボディスキャナの第6の例を示す概念図である。図16に示されたボディスキャナ800は、図15に示されたボディスキャナ700と基本的に同じであるが、ボディスキャナ800の複数の組み合わせ回路310は、複数のポールに含まれる。そして、複数のポールのうちの2つポールの間を人が通る際に、ボディスキャナ800は、第1の磁場成分を誘起し、第2の磁場成分を含む磁場の磁気を感知する。
【0180】
ボディスキャナ800は、2つのポールのうち、一方のポールから第1の磁場成分を誘起し、他方のポールで第2の磁場成分を含む磁場の磁気を感知してもよい。その際、一方のポールに含まれる複数の組み合わせ回路310が、1つずつ、第1の磁場成分を誘起してもよい。これにより、ボディスキャナ800は、ボディスキャナ300と同様に、平面上の複数の誘起位置のそれぞれから第1の磁場成分を誘起することができ、平面上の複数の感知位置のそれぞれで第2の磁場成分を含む磁場の磁気を感知することができる。
【0181】
そして、ボディスキャナ800は、感知結果に基づいて、人がアルミケースの中に有する刃物等の画像を生成することができる。
【0182】
図16の例では、各ポールに、複数の組み合わせ回路310が含まれている。しかし、1対のポールのうち、一方のポールに、複数の誘起回路210が含まれていてもよく、他方のポールに複数の磁気センサ230が含まれていてもよい。
【0183】
例えば、図16において、人は、2つのポールの間の中央線と平行な方向に沿って、2つのポールの間を進行する。この場合の人の進行方向が、図4のy軸方向として用いられる場合、進行する人に対して相対的な誘起回路210のy座標と磁気センサ230のy座標とが一致する。また、磁気センサ230は、試料に対応する人に対して、誘起回路210と反対側にある。よって、例えば、式(4-8)及び式(4-9)に示された誘起位置依存磁場関数及び画像化関数が適用され得る。
【0184】
また、ボディスキャナ800は、生成された画像に基づいて、刃物等を検出してもよい。そして、刃物等が検出された場合、刃物等が検出された位置、又は、刃物等を有する人の位置を示す情報を外部端末等へ通知してもよい。
【0185】
図17は、図16に示されたボディスキャナ800によって外部端末に表示される情報の例を示す概念図である。例えば、ボディスキャナ800は、複数のポールから得られる感知結果に基づいて、複数の画像を生成する。そして、ボディスキャナ800は、各画像に基づいて、刃物等を検出し、刃物等に対応する位置を検出する。そして、ボディスキャナ800は、刃物等に対応する位置を示す情報を外部端末1000に送信する。
【0186】
上記の動作は、磁化率分布可視化装置200の情報処理回路150等によって行われてもよい。例えば、情報処理回路150は、試料に対応する物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、物体に検知対象物が含まれると判定された場合、検知対象物又は物体の位置を示す情報を外部端末1000へ出力する。外部端末1000は、検知対象物である刃物等に対応する位置を示す情報を受信し、その情報を図17のように表示する。
【0187】
また、上記の動作は、ボディスキャナ800に限らず、ボディスキャナ300、400、500、600、700、又は、これらの任意の組み合わせ等によって行われてもよい。
【0188】
なお、上記のボディスキャナ300、400、500、600、700及び800は、磁化率分布可視化装置200に対応するが、磁化率分布可視化装置100に対応するように変更されてもよい。つまり、複数の誘起回路210の代わりに、移動する誘起回路110が用いられてもよいし、複数の磁気センサ230の代わりに、移動する磁気センサ130が用いられてもよい。
【0189】
図18は、図1に示された磁化率分布可視化装置100又は図6に示された磁化率分布可視化装置200を用いるセキュリティ検査システムの例を示す概念図である。
【0190】
例えば、図18に示されたセキュリティ検査システム900は、磁化率分布可視化装置100又は200を備える。より具体的には、セキュリティ検査システム900は、図11に示されたボディスキャナ400を備えていてもよい。そして、セキュリティ検査システム900は、準静的な磁場を計測し、逆問題を解析的に解き、磁場の画像を再構成する。これにより、セキュリティ検査システム900は、鞄、衣服、衣服と生体との間、又は、生体内等に隠された刃物又は銃器等の凶器を非侵襲的にリアルタイムに映像化する。
【0191】
さらに、セキュリティ検査システム900は、気相化学剤分析装置910及びパイプ920を備え、ガソリン又は毒ガス等をリアルタイムに分析する。例えば、壁面に微細な穴が1次元又は2次元状に形成され、周辺の空気を多チャンネルに吸引する。吸引された空気は、パイプ920を介して、気相化学剤分析装置910に送られる。
【0192】
例えば、気相化学剤分析装置910は、ガスクロマトグラフィ、質量分析装置、イオン移動度分析装置又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせで構成され、ガス分類検出器とも表現され得る。気相化学剤分析装置910は、気相化学剤分析装置910に送られた空気を同定(識別)し、リスクを分析する。
【0193】
気相化学剤分析装置910は、上記の刃物又は銃器等の凶器を所持する人と同様に、毒ガス等を所持する人の情報を通信ネットワークにおいて共有する。気相化学剤分析装置910は、このような危険人物の情報を警察等の危機管理対策者に通報してもよいし、周辺の市民に対する避難ルートの指示に、このような危険人物の情報を反映させてもよい。
【0194】
なお、図18は、概念図であり、気相化学剤分析装置910にパイプ920を介して繋がる穴の数及びサイズは、図18の例とは異なっていてもよい。より小さい多数の穴がより高密に形成されていてもよい。
【0195】
また、セキュリティ検査システム900は、セキュリティゲートであってもよい。また、上記のセキュリティ検査システム900は、ボディスキャナ400に対応するが、ボディスキャナ300、500、600、700又は800に対応するように変更されてもよい。例えば、気相化学剤分析装置910及びパイプ920は、片側の壁のみに含まれていてもよいし、床に含まれていてもよいし、ポールに含まれていてもよい。
【0196】
図19は、実施の形態における磁化率分布可視化装置(100、200)の動作を示すフローチャートである。
【0197】
例えば、誘起回路(110、210)は、物体の外部において物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起する(S101)。
【0198】
そして、磁気センサ(130、230)は、第1の磁場成分によって物体から誘起される第2の磁場成分を含む磁場における磁気を物体の外部において物体に対して相対的に複数の位置として定められる複数の感知位置のそれぞれで感知する(S102)。これにより、磁気センサ(130、230)は、複数の誘起位置のそれぞれに対して複数の感知位置で磁気を感知する。
【0199】
そして、情報処理回路(150)は、磁気の感知結果を取得し、感知結果に基づいて物体の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を生成する(S103)。そして、例えば、情報処理回路(150)は、ディスプレイ(160)に画像を表示する(S104)。あるいは、情報処理回路(150)は、画像を印刷してもよいし、他の装置へ画像を送信してもよい。
【0200】
情報処理回路(150)は、画像を生成する際、感知結果を境界条件として用いて、誘起位置依存磁場関数を算出する。誘起位置依存磁場関数は、第1の磁場成分の仮想的な誘起位置及び磁気の仮想的な感知位置が入力されて仮想的な感知位置における磁気の強さが出力される関数である。
【0201】
そして、情報処理回路(150)は、画像化関数を算出する。画像化関数は、画像化対象位置が入力されて画像化対象位置の画像強度が出力される関数であって、仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置として画像化対象位置を誘起位置依存磁場関数に入力することで誘起位置依存磁場関数から出力される強さに基づいて定められる関数である。そして、情報処理回路(150)は、画像化関数に基づいて画像を生成する。
【0202】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、複数の誘起位置のそれぞれと、複数の感知位置のそれぞれとの多様な組み合わせに基づく磁気の感知結果に基づいて、物体の内部を含む領域の磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0203】
例えば、情報処理回路(150)は、感知結果を境界条件として用いて、誘起位置依存磁場関数が満たすラプラス方程式の解を誘起位置依存磁場関数として算出してもよい。これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、感知結果、及び、静的又は準静的な場における多重経路問題に関するラプラス方程式に基づいて、適切に誘起位置依存磁場関数を導出することができる。
【0204】
また、例えば、情報処理回路(150)は、誘起位置依存磁場関数に入力される仮想的な誘起位置及び仮想的な感知位置を画像化対象位置に向かわせる極限演算を誘起位置依存磁場関数に対して行うことで、誘起位置依存磁場関数の極限値を画像化関数として算出してもよい。これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、誘起位置依存磁場関数に基づいて、適切に画像化関数を導出することができる。
【0205】
また、例えば、複数の誘起位置は、第1の平面上に定められてもよい。そして、複数の感知位置は、第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に定められてもよい。言い換えれば、複数の感知位置は、複数の誘起位置が定められる第1の平面上に、又は、その第1の平面とは異なる第2の平面上に定められてもよい。第2の平面は、第1の平面に対して平行な平面であってもよい。
【0206】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、誘起回路(110、210)及び磁気センサ(130、230)の配置スペースの増大を抑制することができる。また、磁化率分布可視化装置(100、200)は、演算処理の複雑化を抑制することができる。
【0207】
また、例えば、複数の感知位置は、物体に対して、複数の誘起位置とは反対側にあってもよい。これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、物体に対して、複数の誘起位置とは反対側の複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知することができる。したがって、磁化率分布可視化装置(100、200)は、複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知する際、誘起回路(110、210)が誘起する第1の磁場成分の影響を抑制することができる。
【0208】
また、例えば、複数の感知位置は、物体に対して、複数の誘起位置と同じ側にあってもよい。これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、物体に対して、複数の誘起位置と同じ側の複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知することができる。したがって、磁化率分布可視化装置(100、200)は、誘起回路(110、200)及び磁気センサ(130、230)の配置スペースの増大を抑制することができる。
【0209】
また、例えば、誘起回路(110、210)は、複数の誘起位置のそれぞれに移動して、複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起してもよい。また、磁気センサ(130、230)は、複数の感知位置のそれぞれに移動して、複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知してもよい。
【0210】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、複数の誘起位置に対して、1つの誘起回路(110、210)を適用することができ、複数の感知位置に対して、1つの磁気センサ(130、230)を適用することができる。したがって、磁化率分布可視化装置(100、200)は、資源コストの増加を抑制することができる。
【0211】
また、例えば、誘起回路(110、210)は、複数の誘起位置に配置される複数の誘起回路(110、210)で構成されていてもよい。また、磁気センサ(130、230)は、複数の感知位置に配置される複数の磁気センサ(130、230)で構成されていてもよい。
【0212】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、誘起回路(110、210)及び磁気センサ(130、230)を移動せずに、複数の誘起位置にそれぞれから、磁場成分を誘起することができ、複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知することができる。したがって、磁化率分布可視化装置(100、200)は、複数の誘起位置及び複数の感知位置に対応する感知結果を高速に取得することができる。
【0213】
なお、複数の誘起回路(110、210)が複数の誘起位置に1対1で対応することに限られず、複数の誘起回路(110、210)のうちの2つ以上が1つの誘起位置(領域)に対応していてもよい。また、複数の磁気センサ(130、230)が複数の感知位置に1対1で対応することに限られず、複数の磁気センサ(130、230)のうちの2つ以上が1つの感知位置(領域)に対応していてもよい。
【0214】
また、例えば、複数の誘起回路(110、210)は、第1の平面上に配置されてもよい。また、複数の磁気センサ(130、230)は、第1の平面と同じ又は異なる第2の平面上に配置されてもよい。言い換えれば、複数の磁気センサ(130、230)は、複数の誘起回路(110、210)が配置される第1の平面上に、又は、その第1の平面とは異なる第2の平面上に配置されていてもよい。第2の平面は、第1の平面に対して平行な平面であってもよい。
【0215】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、第1の平面上の複数の誘起位置及び第2の平面上の複数の感知位置に対応する感知結果を高速に取得することができる。
【0216】
また、例えば、複数の誘起回路(110、210)は、第1の直線上に配置されてもよい。また、複数の磁気センサ(130、230)は、第1の直線とは異なる第2の直線上に配置されてもよい。言い換えれば、複数の磁気センサ(130、230)は、複数の誘起回路(110、210)が配置される第1の直線上に、又は、その第1の直線とは異なる第2の直線上に配置されていてもよい。第2の直線は、第1の直線に対して平行な直線であってもよい。
【0217】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、複数の誘起回路(110、210)が配置されるスペース、及び、複数の磁気センサ(130、230)が配置されるスペースを削減することができる。
【0218】
また、例えば、物体は、移動してもよい。そして、誘起回路(110、210)は、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置から第1の磁場成分を誘起することにより、移動する物体に対して相対的に定められる複数の誘起位置のそれぞれから、第1の磁場成分を誘起してもよい。また、磁気センサ(130、230)は、互いに異なる複数の時間のそれぞれにおいて所定の位置で磁気を感知することにより、移動する物体に対して相対的に定められる複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知してもよい。
【0219】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、多くの誘起回路(110、210)及び多くの磁気センサ(130、230)を配置せず、かつ、誘起回路(110、210)及び磁気センサ(130、230)を移動せずに、複数の誘起位置にそれぞれから、磁場成分を誘起することができ、複数の感知位置のそれぞれで磁気を感知することができる。
【0220】
また、例えば、誘起回路(110、210)は、第1の壁に含まれていてもよい。また、磁気センサ(130、230)は、第1の壁と同じ又は異なる第2の壁に含まれていてもよい。言い換えれば、磁気センサ(130、230)は、誘起回路(110、210)が含まれる第1の壁に、又は、その第1の壁とは異なる第2の壁に含まれていてもよい。第2の壁は、第1の壁に対して対向する壁であってもよい。また、例えば、誘起回路(110、210)及び磁気センサ(130、230)は、床に含まれていてもよい。
【0221】
また、例えば、誘起回路(110、210)は、第1のポールに含まれていてもよい。また、磁気センサ(130、230)は、第1のポールと同じ又は異なる第2のポールに含まれていてもよい。言い換えれば、磁気センサ(130、230)は、誘起回路(110、210)が含まれる第1のポールに、又は、その第1のポールとは異なる第2のポールに含まれていてもよい。
【0222】
これらにより、誘起回路(110、210)及び磁気センサ(130、230)が風景に溶け込む。したがって、磁化率分布可視化装置(100、200)は、人に気付かれずに、磁化率分布を示す画像を生成することができる。
【0223】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現されてもよい。仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。誘起回路(110、210)が存在する位置のz座標は、0と定められてもよい。磁気センサ(130、230)が存在する位置のz座標は、zと定められてもよい。複数の感知位置が、物体に対して、複数の誘起位置とは反対側にある場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式で定められてもよい。
【0224】
【数44】
【0225】
ここで、
【数45】
は、感知結果のフーリエ変換像を示す。k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数である。また、画像化関数は、以下の式で定められてもよい。
【0226】
【数46】
【0227】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、上記の式で表現される誘起位置依存磁場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0228】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、仮想的な誘起位置は、(y、z)で表現されてもよい。仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。誘起回路(110、210)が存在する位置のz座標は、0と定められてもよい。磁気センサ(130、230)が存在する位置のz座標は、zと定められてもよい。複数の感知位置が、物体に対して、複数の誘起位置と同じ側にある場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式で定められてもよい。
【0229】
【数47】
【0230】
ここで、
【数48】
は、感知結果のフーリエ変換像を示す。k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数である。また、画像化関数は、以下の式で定められてもよい。
【0231】
【数49】
【0232】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、上記の式で表現される誘起位置依存磁場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0233】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。誘起回路(110、210)が存在する位置のz座標は、0と定められてもよい。磁気センサ(130、230)が存在する位置のz座標は、zと定められてもよい。複数の感知位置が、物体に対して、複数の誘起位置とは反対側にある場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式で定められてもよい。
【0234】
【数50】
【0235】
ここで、
【数51】
は、感知結果のフーリエ変換像を示す。k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数である。また、画像化関数は、以下の式で定められてもよい。
【0236】
【数52】
【0237】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、上記の式で表現される誘起位置依存磁場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0238】
また、例えば、x座標、y座標及びz座標で構成される3次元空間において、仮想的な誘起位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。仮想的な感知位置は、(x、y、z)で表現されてもよい。誘起回路(110、210)が存在する位置のz座標は、0と定められてもよい。磁気センサ(130、230)が存在する位置のz座標は、zと定められてもよい。複数の感知位置が、物体に対して、複数の誘起位置と同じ側にある場合、誘起位置依存磁場関数は、以下の式で定められてもよい。
【0239】
【数53】
【0240】
ここで、
【数54】
は、感知結果のフーリエ変換像を示す。k、ky1及びky2は、それぞれ、x、y及びyに関する波数である。また、画像化関数は、以下の式で定められてもよい。
【0241】
【数55】
【0242】
これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、上記の式で表現される誘起位置依存磁場関数、及び、上記の式で表現される画像化関数を用いて、磁化率分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【0243】
また、例えば、情報処理回路(150)は、画像に基づいて、物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、物体に検知対象物が含まれると判定された場合、検知対象物又は物体の位置を示す情報を外部端末(1000)へ出力してもよい。これにより、磁化率分布可視化装置(100、200)は、特定の検知対象物の位置、又は、特定の検知対象物を含む物体の位置を通知することができる。
【0244】
以上、磁化率分布可視化装置の態様を実施の形態に基づいて説明したが、磁化率分布可視化装置の態様は、実施の形態に限定されない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形が施されてもよいし、実施の形態における複数の構成要素が任意に組み合わされてもよい。例えば、実施の形態において特定の構成要素によって実行される処理を特定の構成要素の代わりに別の構成要素が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0245】
また、磁化率分布可視化装置の各構成要素が行うステップを含む磁化率分布可視化方法が任意の装置又はシステムによって実行されてもよい。例えば、磁化率分布可視化方法の一部又は全部が、プロセッサ、メモリ及び入出力回路等を備えるコンピュータによって実行されてもよい。その際、コンピュータに磁化率分布可視化方法を実行させるためのプログラムがコンピュータによって実行されることにより、磁化率分布可視化方法が実行されてもよい。
【0246】
また、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、上記のプログラムが記録されていてもよい。
【0247】
また、磁化率分布可視化装置の各構成要素は、専用のハードウェアで構成されてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアで構成されてもよいし、これらの組み合わせで構成されてもよい。また、汎用のハードウェアは、プログラムが記録されたメモリ、及び、メモリからプログラムを読み出して実行する汎用のプロセッサ等で構成されてもよい。ここで、メモリは、半導体メモリ又はハードディスク等でもよいし、汎用のプロセッサは、CPU等でもよい。
【0248】
また、専用のハードウェアが、メモリ及び専用のプロセッサ等で構成されてもよい。例えば、専用のプロセッサが、計測データを記録するためのメモリを参照して、上記の磁化率分布可視化方法を実行してもよい。
【0249】
また、磁化率分布可視化装置の各構成要素は、電気回路であってもよい。これらの電気回路は、全体として1つの電気回路を構成してもよいし、それぞれ別々の電気回路であってもよい。また、これらの電気回路は、専用のハードウェアに対応していてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアに対応していてもよい。
【0250】
また、磁化率分布可視化装置は、画像生成装置とも表現され得る。また、磁化率分布可視化装置は、ボディスキャナのようなセキュリティ検査装置であってもよいし、セキュリティ検査装置に含まれていてもよい。また、上記では、ボディスキャナの例が示されているが、適用例は上記の例に限られない。電気回路の検査に用いられてもよいし、鉄筋構造物の検査に用いられてもよい。また、磁性体を含有する造影剤を用いて人体を検査する医療診断に用いられてもよい。
【0251】
また、上記の説明において、磁場が用いられているが、本開示の概念は、静的又は準静的な場における多重経路問題に関するラプラス方程式を満たすあらゆる場に適用可能である。ここで、準静的な場は、実質的に静的な場であって、波動の性質を有さないとみなされ得る100kHz以下の電磁場等であってもよい。具体的には、磁場の代わりに、電場が用いられてもよいし、温度場が用いられてもよいし、圧力場が用いられてもよい。
【0252】
したがって、上記の磁化率分布可視化装置は、外場応答分布可視化装置と表現されてもよい。例えば、外場応答分布可視化装置は、外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する。また、上記の磁気センサは、場の強度を感知するセンサであってもよい。そして、磁気の強さの代わりに、場の強度が用いられ得る。また、誘起位置依存磁場関数は、誘起位置依存場関数と表現され得る。
【0253】
つまり、上記の説明における磁場を単に「場」と置き換えることが可能であり、磁化率分布を外場応答分布に置き換えることが可能である。例えば、誘起回路は、複数の誘起位置から第1の場成分を誘起する。これにより、物体から第2の場成分が誘起される。センサは、第2の場成分を含む場の強度を複数の感知位置のそれぞれで感知する。そして、情報処理回路は、強度の感知結果を取得し、感知結果に基づいて物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を生成する。
【0254】
その際、情報処理回路は、感知結果を境界条件として用いて、誘起位置依存場関数を算出し、誘起位置依存場関数に基づいて、画像化関数を算出する。そして、情報処理回路は、画像化関数に基づいて、画像を生成する。これにより、外場応答分布可視化装置は、物体の内部を含む領域の外場応答分布を示す画像を高精度に生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0255】
本開示の一態様は、磁化率分布を示す画像を生成する磁化率可視化装置に有用であり、磁場診断装置、電子部品の検査、鉄筋構造物の耐震検査、医療診断、及び、セキュリティ検査システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0256】
100、200 磁化率分布可視化装置(外場応答分布可視化装置)
110、210 誘起回路
120 誘起回路アクチュエータ
130、230 磁気センサ(センサ)
140 磁気センサアクチュエータ(センサアクチュエータ)
150 情報処理回路
160 ディスプレイ
170 試料台
220 誘起回路支持構造物
231 ソフト層
232 トンネル層
233 PIN層(磁化固定層)
240 磁気センサ支持構造物(センサ支持構造物)
300、400、500、600、700、800 ボディスキャナ
310 組み合わせ回路
900 セキュリティ検査システム
910 気相化学剤分析装置
920 パイプ
1000 外部端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19