(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】風力発電設備の保守支援システム及び保守支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240416BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
G06Q10/20
F03D80/50
(21)【出願番号】P 2023210047
(22)【出願日】2023-12-13
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】518156358
【氏名又は名称】株式会社センシンロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白濱 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】小村 昭義
(72)【発明者】
【氏名】宮部 昇三
(72)【発明者】
【氏名】篠原 一雄
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0149138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0300059(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0103260(US,A1)
【文献】特表2016-514782(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021729(WO,A1)
【文献】特開2016-142237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
F03D 80/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備の風車のタワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報に対応付けられた撮像画像情報を取得する処理部を備え、
前記処理部は、前記風車の号機番号を含む風車情報と、前記タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置を含むタワー情報と、前記タワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報と、が対応付けられた第1データベースに基づいて、前記撮像ポイント情報をキーとして、前記風車情報及び前記タワー情報に前記撮像画像情報が対応付けられた第2データベースを生成する、風力発電設備の保守支援システム。
【請求項2】
前記処理部は、入力装置の操作で指定される所定の抽出条件に基づいて、前記第2データベースから所定の前記撮像画像情報を抽出し、当該撮像画像情報を表示装置に表示させること
を特徴とする請求項1に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項3】
前記風車情報には、前記号機番号が含まれるとともに、前記風車の設置場所であるサイトの識別情報を示すサイト情報と、前記風車の型式を示す風車型式情報と、前記風車のタワー方位角を示す風車タワー方位角情報と、が含まれること
を特徴とする請求項1に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項4】
前記タワー情報には、前記タワーの肉厚の設計値を示す肉厚情報が含まれること
を特徴とする請求項1に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記撮像ポイント情報に含まれる前記撮像ポイントの緯度、経度、及び高度に基づいて、前記撮像ポイントの高さ位置が異なる複数の撮像画像が、表示装置の表示画面上で前記タワーの高さ方向に連続するように表示させること
を特徴とする請求項1に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項6】
前記処理部は、入力装置の操作に基づいて、前記撮像ポイントの高さ位置が異なる複数の撮像画像のうちの1つ又は複数が選択された場合、選択された撮像画像を前記表示装置に拡大表示させること
を特徴とする請求項5に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項7】
前記第2データベースには、前記タワーの撮像日時を示す撮像日時情報が含まれ、
前記処理部は、前記撮像ポイント情報、前記風車情報、前記タワー情報、前記撮像日時情報のうちの少なくとも一つが入力装置の操作で前記抽出条件として指定された場合、当該抽出条件に対応した撮像画像を前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項2に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項8】
前記第2データベースには、前記タワーの建設完了時又はメンテナンス時から所定期間内の撮像で得られた参照画像情報が含まれ、
前記処理部は、入力装置の操作に基づいて、所定の前記風車が指定されるとともに、当該風車の前記撮像ポイント及び撮像日時が指定された場合、当該風車の前記撮像画像情報と、当該風車の前記参照画像情報と、を前記表示装置の表示画面に並べて表示させること
を特徴とする請求項2に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項9】
前記処理部は、前記入力装置の操作で指定された前記撮像画像情報を前記表示装置に表示させる際、前記フランジ及び前記溶接線のうちの少なくとも一方を強調表示すること
を特徴とする請求項2に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記タワーにおいて劣化又は損傷の箇所であることが既知の撮像画像を教師データとして機械学習を行い、前記抽出条件に基づいて抽出した所定の前記撮像画像情報と、前記機械学習の学習結果と、に基づいて、前記タワーの劣化又は損傷の有無を診断すること
を特徴とする請求項2に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項11】
前記処理部は、前記タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、前記表示装置の表示画面上で当該箇所を強調表示すること
を特徴とする請求項10に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項12】
前記処理部は、前記タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、当該箇所における前記タワーの肉厚の設計値を示す肉厚情報を、当該箇所に対応付けて前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項10に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項13】
前記処理部は、前記タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、平面視での前記タワーの中心位置を基準とする当該箇所の方位角及び高度を当該箇所に対応付けて前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項10に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項14】
前記処理部は、前記タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、当該箇所の寸法及び面積のうちの少なくとも一方を当該箇所に対応付けて前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項10に記載の風力発電設備の保守支援システム。
【請求項15】
風力発電設備の風車のタワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報に対応付けられた撮像画像情報を処理部が取得する第1ステップと、
前記風車の号機番号を含む風車情報と、前記タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置を含むタワー情報と、前記タワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報と、が対応付けられた第1データベースに基づいて、前記撮像ポイント情報をキーとして、前記風車情報及び前記タワー情報に前記撮像画像情報が対応付けられた第2データベースを前記処理部が生成する第2ステップと、を含む、風力発電設備の保守支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電設備の保守支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備の保守点検に関する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「構造物を複数の撮影範囲で分割して撮影した分割画像を表示する構造物表示装置であって、それぞれの前記分割画像に識別情報を付与するとともに、前記識別情報に1つ以上の管理情報を対応付けて管理する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、構造物の分割画像を管理する際の手法が複雑であり、処理の簡素化を図る余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、撮像画像情報を管理する際の処理の簡素化を図った、風力発電設備の保守支援システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係る風力発電設備の保守支援システムは、風力発電設備の風車のタワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報に対応付けられた撮像画像情報を取得する処理部を備え、前記処理部は、前記風車の号機番号を含む風車情報と、前記タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置を含むタワー情報と、前記タワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報と、が対応付けられた第1データベースに基づいて、前記撮像ポイント情報をキーとして、前記風車情報及び前記タワー情報に前記撮像画像情報が対応付けられた第2データベースを生成することとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、撮像画像情報を管理する際の処理の簡素化を図った、風力発電設備の保守支援システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムが備える制御装置のハードウェア構成の一例を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの対象である風力発電設備の説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの対象である風力発電設備の風車のタワーの構成に関する説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの風車情報・タワー情報付与データベースの説明図である。
【
図6】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの撮像画像情報データベースの生成に関するフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの撮像画像情報データベースの説明図である。
【
図8】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムでの撮像ポイントにおける撮像方向を示す平面図である。
【
図9】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、無人飛行体の飛行ルートの例を示す説明図である。
【
図10】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、無人飛行体の飛行ルートの別の例を示す説明図である。
【
図11】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの撮像画像情報データベースからの撮像画像情報の抽出・表示に関するフローチャートである。
【
図12】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、所定の抽出条件に基づく第1の画面表示例である。
【
図13】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおいて、ユーザの入力操作で選択された画像を拡大表示した場合の表示例である。
【
図14】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、所定の抽出条件に基づく第2の画面表示例である。
【
図15】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、所定の抽出条件に基づく第3の画面表示例である。
【
図16】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、所定の抽出条件に基づく第4の画面表示例である。
【
図17】第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおいて、タワーのフランジが強調表示された場合の画面表示例である。
【
図18】第2実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムの構成図である。
【
図19】第2実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、タワーの損傷部に関する表示画面例である。
【
図20】第2実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、タワーの損傷部に関する別の表示画面例である。
【
図21】第2実施形態に係る風力発電設備の保守支援システムにおける、タワーの損傷部に関する別の表示画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<風力発電設備の保守支援システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る風力発電設備の保守支援システム10の構成図である。
図1に示す保守支援システム10は、風力発電設備W1(
図3参照)の撮像で得られる情報に基づいて、撮像画像情報データベース3を生成するシステムである。また、保守支援システム10は、ユーザによる入力装置4の操作で所定の抽出条件が指定された場合、この抽出条件に基づいて撮像画像情報データベース3から所定の撮像画像情報を抽出し、表示装置5に撮像画像情報を表示させる機能も有している。
【0010】
図1に示すように、保守支援システム10は、風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース)と、制御装置2(処理部)と、撮像画像情報データベース3(第2データベース)と、入力装置4と、表示装置5と、を備えている。風車情報・タワー情報付与データベース1には、撮像ポイント情報と、風車情報と、タワー情報と、が対応付けられた状態で格納されている。これらの各情報については後記する。
【0011】
制御装置2は、風力発電設備W1(
図3参照)の撮像画像情報に所定の風車情報やタワー情報を対応付けることで、撮像画像情報データベース3を生成する。また、制御装置2は、入力装置4の操作で指定された抽出条件に基づいて、撮像画像情報データベース3から所定の撮像画像情報を抽出し、この撮像画像情報を表示装置5に表示させる。
【0012】
図1に示すように、制御装置2は、撮像画像情報入力部2aと、撮像画像情報データベース生成部2bと、抽出条件指定部2cと、撮像画像情報抽出部2dと、表示制御部2eと、を備えている。撮像画像情報入力部2aは、風力発電設備W1(
図3参照)の撮像画像情報の入力を受け付けることで、撮像画像情報を取得する。例えば、所定のコンピュータ(図示せず)からネットワーク(図示せず)を介して、撮像画像情報が取得されるようにしてもよい。また、SDカード等の記録媒体(図示せず)から撮像画像情報が取得されるようにしてもよい。
【0013】
撮像画像情報は、風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)の撮像に伴って生成される画像情報である。
図1に示すように、撮像画像情報には、撮像ポイントを示す撮像ポイント情報と、撮像日時を示す撮像日時情報と、が対応付けられている。
【0014】
撮像画像情報データベース生成部2bは、撮像画像情報データベース3を生成する。すなわち、撮像画像情報データベース生成部2bは、撮像画像情報に対応付けられた撮像ポイント情報に基づいて、この撮像ポイント情報に対応する風車情報及びタワー情報を、風車情報・タワー情報付与データベース1から抽出する。そして、撮像画像情報データベース生成部2bは、撮像ポイント情報と、風車情報と、タワー情報と、撮像日時情報と、撮像画像情報と、が対応付けられた撮像画像情報データベース3を生成する。
【0015】
なお、撮像画像情報データベース3に新たなデータ(新たな撮像画像情報等)が追加されることで撮像画像情報データベース3が更新される場合も、撮像画像情報データベース3が「生成」されるという事項に含まれるものとする。
【0016】
抽出条件指定部2cは、入力装置4の操作で入力された所定の抽出条件を読み込む。そして、抽出条件指定部2cは、撮像画像情報抽出部2dに対して、所定の抽出条件を指定する。なお、入力装置4として、マウスやキーボードの他、タッチパネルやペンタブレット、タッチパッドといったものが用いられる。
撮像画像情報抽出部2dは、抽出条件指定部2cによって指定された抽出条件に基づいて、撮像画像情報データベース3から所定の撮像画像情報を抽出する。
【0017】
表示制御部2eは、撮像画像情報抽出部2dによって抽出された撮像画像情報を表示装置5に所定に表示させる。例えば、表示制御部2eは、入力装置4の操作で指定された風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)の全体的な撮像画像を表示させたり、タワー31の溶接線の部分を拡大表示させたり、撮像時期が異なる複数のタワー31の撮像画像を並べて表示させたりする。表示装置5は、例えば、コンピュータ(図示せず)のディスプレイであってもよく、また、スマートフォンやタブレットやスマートグラスといった携帯端末のディスプレイであってもよい。
【0018】
撮像画像情報データベース3は、前記したように、撮像ポイント情報と、風車情報と、タワー情報と、撮像日時情報と、撮像画像情報と、が対応付けられたデータベースである。なお、撮像画像情報データベース3の詳細については後記する。
【0019】
図2は、保守支援システムが備える制御装置2のハードウェア構成の一例を示す説明図である。
図2に示すように、制御装置2は、CPU21(Central Processing Unit)と、RAM22(Random Access Memory)と、ROM23(Read Only Memory)と、HDD24(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース25と、入出力インタフェース26と、メディアインタフェース27と、を備え、これらがバス28を介して接続されたコンピュータとして構成されている。
【0020】
そして、ROM23やHDD24に記憶されている所定のプログラムをCPU21が読み出してRAM22に展開することで、所定の処理を実行するようになっている。
図2に示す通信インタフェース25は、通信装置6に接続される。そして、通信装置6との間で通信インタフェース25を介した情報伝送が行われる。入出力インタフェース26は、入力装置4に接続されるとともに、表示装置5に接続される。メディアインタフェース27は、記録媒体7に適宜に接続される。そして、メディアインタフェース27を介して、記録媒体7から情報が読み出されたり、記録媒体7に情報が書き込まれたりするようになっている。
【0021】
なお、制御装置2は、一台のコンピュータで構成されてもよく、また、信号線やネットワークを介して複数台のコンピュータ(図示せず)が接続された構成であってもよい。例えば、クラウドサーバやエッジサーバといった複数台のコンピュータに制御装置2の機能が分散され、これらのコンピュータがネットワークを介して接続された構成であってもよい。
【0022】
<風力発電設備の構成>
図3は、保守支援システムの対象である風力発電設備W1の説明図である。
なお、
図3に示す「GL」(Ground Line)は、タワー31が設置されている地盤面を示している。また、
図3に示す(X0,Y0)は、風車30を平面視した場合のタワー31の中心位置のX座標・Y座標の値を示している。
図3に示す風力発電設備W1は、ブレード34a,34b,34cの回転に伴って発電を行う設備であり、風車30を含んで構成されている。
【0023】
風車30は、タワー31と、ナセル32と、ハブ33と、ブレード34a,34b,34cと、を備えている。タワー31は、地盤面から鉛直方向に延びている支柱である。ナセル32は、増速機(図示せず)や発電機(図示せず)や電力変換器(図示せず)を収容するものであり、タワー31の上側に設置されている。ハブ33は、ブレード34a,34b,34cの根元が設置される部分であり、ブレード34a,34b,34cと一体で回転する。ブレード34a,34b,34cは、風のエネルギを回転エネルギ(運動エネルギ)に変換する回転翼である。
【0024】
そして、ブレード34a,34b,34cの回転に伴って発電機(図示せず)で発電が行われ、さらに電力変換器(図示せず)で変換された発電電力が電力ケーブル(図示せず)を介して電力系統(図示せず)に送電されるようになっている。
【0025】
風車70のタワー31やブレード34a,34b,34cは、経年劣化が進むと、亀裂や発錆や塗装割れが生じることがある。したがって、風車70の保守点検が定期的に行われる。本実施形態では、主にタワー31の保守点検について説明するが、ブレード34a,34b,34cの保守点検も適宜に行われる。
【0026】
図4は、風車のタワー31の構成に関する説明図である。
タワー31は、上端・下端にフランジが設けられた分割構造体(符号は図示せず)が鉛直方向に積み上げられた構成になっている。なお、高さ位置が最も低い分割構造体の下端は、地盤に埋め込まれた状態の基礎31aに固定されている。それぞれの分割構造体には、他の分割構造体との連結箇所にフランジが設けられている。そして、分割構造体のフランジ同士が突き当てられた状態で複数のボルト(図示せず)で締結されるようになっている。
【0027】
図4に示す溶接線は、それぞれの分割構造体が形成される際に溶接された箇所である。具体的には、複数の円筒体(図示せず)が突き合わされた状態で溶接されることで、1つの分割構造体が形成される。したがって、それぞれの分割構造体には、周方向の溶接線が一つ又は複数存在している。また、
図4では図示していないが、それぞれの分割構造体には、前記した円筒体の形成時の溶接箇所(円筒形に曲げ加工された鋼板の溶接箇所)として、高さ方向の溶接線も存在している。
図4に示すように、タワー31の下部には、人が出入りするための開口部31bが設けられている。開口部31bには、開閉可能な扉(図示せず)が設置されている。
【0028】
前記したように、タワー31の経年劣化が進むと、亀裂や発錆や塗装割れが生じることがある。また、タワー31のフランジや溶接線では、亀裂等が特に生じやすい。そこで、本実施形態では、ドローン等の無人飛行体(図示せず)のカメラでタワー31を撮像することで、タワー31の撮像画像情報(高さ方向の複数の分割画像)を生成するようにしている。なお、タワー31を撮像する手段は無人飛行体に限定されず、他の手段が用いられてもよい。例えば、高所作業車(図示せず)から人がカメラを使ってタワー31を撮像するようにしてもよい。以下では、一例として、無人飛行体(図示せず)のカメラでタワー31が撮像される場合について説明する。
【0029】
図5は、風車情報・タワー情報付与データベース1の説明図である。
図5に示す風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース)は、前記したように、撮像ポイント情報と、風車情報と、タワー情報と、が対応付けられたデータベースである。このような風車情報・タワー情報付与データベース1は、ユーザの入力操作に基づいて事前に作成される。
【0030】
図5に示す撮像ポイント情報は、風力発電設備W1(
図3参照)の風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)の撮像ポイントを示す情報である。
図5の例では、X(緯度)・Y(経度)・Z(高度)で複数の撮像ポイントが特定されている。このような撮像ポイントに基づいて、無人飛行体(図示せず)の飛行ルートが設定される。
【0031】
無人飛行体(図示せず)は、所定の飛行ルートに沿って飛行し、複数の撮像ポイントで風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)を撮像する。無人飛行体のカメラの撮像結果である撮像画像情報は、撮像ポイント情報及び撮像日時情報に対応付けられた上で(
図1の紙面左側も参照)、コンピュータ(図示せず)や記録媒体(図示せず)に適宜に保存される。
【0032】
図5に示す風車情報は、風車30(
図3参照)に関する所定の情報である。
図5の例では、サイトと、号機と、型式と、タワー方位角と、タワーの全長と、が風車情報に含まれている。「サイト」の欄には、風車30の設置場所であるサイトの識別情報を示すサイト情報が入力される。「号機」の欄には、保守点検の対象となる風車30の号機番号が入力される。「型式」の欄には、風車30の型式を示す風車型式情報が入力される。「タワー方位角」の欄には、風車30のタワー方位角を示す風車タワー方位角情報が入力される。例えば、タワー31(
図4参照)の下部に設けられた開口部31b(
図4参照)の方位角が、「タワー方位角」として設定されてもよい。「タワー方位角」の基準(0°)は、真北であってもよく、他の方位であってもよい。「タワーの全長」の欄には、タワー31(
図4参照)の高さ方向の全長であるタワー高さ情報が入力される。
【0033】
図5に示すタワー情報は、タワー31(
図4参照)に存在する複数のフランジや溶接線に関する情報である。タワー情報には、タワー31のフランジ及び溶接線の高さ位置の他、タワー31の肉厚の設計値を示す肉厚情報が含まれている。なお、タワー31の肉厚の設計値は、溶接線における肉厚であってもよく、また、溶接線以外の箇所の肉厚であってもよい。
図5の例では、上から数えて1番目のフランジの高さ位置がH11[m]になっている。また、識別情報が「H1-1」である溶接線は、その肉厚がt1であり、高さ位置がH21[m]になっている。このように、タワー31に存在する複数のフランジや溶接線のそれぞれの高さ位置等がタワー情報に含まれている。
【0034】
図6は、撮像画像情報データベースの生成に関するフローチャートである(適宜、
図1も参照)。
なお、
図6の「START」時には、風車情報・タワー情報付与データベース1(
図5参照)が既に作成されているものとする。また、風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)が撮像されることで、所定の撮像画像情報が生成された状態であるものとする。この撮像画像情報には、撮像ポイント情報及び撮像日時情報が対応付けられている。
【0035】
ステップS101において制御装置2(処理部)は、撮像画像情報入力部2aによって、撮像ポイント情報及び撮像日時情報に対応付けられた撮像画像情報を取得する(第1ステップ)。
ステップS102において制御装置2は、撮像画像情報データベース生成部2bによって、風車情報及びタワー情報を撮像画像情報に付加する。前記したように、風車情報・タワー情報付与データベース1(
図5参照)には撮像ポイント情報が含まれ、この撮像ポイント情報で特定される複数の撮像ポイントにおいて、タワー31(
図3参照)が撮像される。撮像の結果である撮像画像情報には、撮像ポイント情報及び撮像日時情報が対応付けられる。ここで、撮像画像情報に対応付けられた撮像ポイント情報は、風車情報・タワー情報付与データベース1(
図5参照)の撮像ポイント情報に基づくものである。
【0036】
したがって、ステップS102において制御装置2は、風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース:
図5参照)を参照し、撮像画像情報に対応付けられた撮像ポイント情報と同一の撮像ポイント情報を有するものを特定する。そして、制御装置2は、この撮像ポイント情報に対応している風車情報及びタワー情報を風車情報・タワー情報付与データベース1から抽出し、これらの風車情報及びタワー情報を撮像画像情報に付加する。つまり、制御装置2は、撮像ポイント情報をキーとして、風車情報及びタワー情報を撮像画像情報に対応付ける。
【0037】
ステップS103において制御装置2(処理部)は、撮像画像情報データベース生成部2bによって、撮像画像情報データベース3を生成する。すなわち、制御装置2は、風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース:
図5参照)に基づいて、撮像ポイント情報をキーとして、風車情報及びタワー情報に撮像画像情報が対応付けられた撮像画像情報データベース3(第2データベース:
図7参照)を生成する(第2ステップ)。なお、「第2ステップ」は、
図6のステップS102,S103を含んで構成されている。
【0038】
このように撮像ポイント情報をキーとすることで、制御装置2が撮像画像情報データベース3を生成する際の処理の簡素化を図ることができる。ステップS103の処理を行った後、制御装置2は、撮像画像情報データベース3の生成に関する一連の処理を終了する(END)。
【0039】
図7は、撮像画像情報データベース3の説明図である。
図7に示す撮像画像情報データベース3(第2データベース)は、前記したように、撮像ポイント情報と、風車情報と、タワー情報と、撮像日時情報と、撮像画像情報と、が対応付けられたデータベースである。なお、
図7に示す「撮像ポイント情報」や「風車情報」や「タワー情報」については、風車情報・タワー情報付与データベース1(
図5参照)に含まれるデータと同様であるから、説明を省略する。また、
図7では、「タワー情報」に含まれる「高さ位置」の図示を省略しているが、実際にはタワー31(
図4参照)の各フランジや各溶接線の高さ位置を示す情報も撮像画像情報データベース3に含まれるものとする。
【0040】
図7に示す撮像日時情報は、風車30(
図3参照)のタワー31(
図3参照)が撮像されたときの日時を示す情報である。具体的には、風車30のタワー31が撮像されたときの日付(年・月・日)と、時刻(時・分・秒)と、が撮像日時情報に含まれている。撮像画像情報は、風車30のタワー31の撮像で得られた画像情報である。なお、撮像画像情報を表示装置5(
図1参照)に表示できればよいため、撮像画像情報のデータ形式は特に限定されるものではない。
【0041】
図8は、撮像ポイントにおける撮像方向を示す平面図である。
なお、
図8では、タワー31の円形領域をハッチングで示している。
図8の例では、タワー31の開口部31b(
図4参照)が設けられた正面側の方位を基準方位(0°)として、平面視で基準方位から角度α1をなす位置(X1,Y1)で無人飛行体(図示せず)が鉛直方向に移動しつつ、タワー31を撮像するようにしている。角度α1での撮像を行った後、無人飛行体は、破線で示す円軌道R1に沿って角度α2の位置(X2,Y2)に移動し、さらに、鉛直方向に移動しつつ所定の撮像ポイントでタワー31を撮像する。このようにして、角度α1,α2,α3,α4の順に撮像が行われる。前記したように、撮像ポイントを含む所定の飛行ルートは、予め設定されている。
【0042】
図9は、無人飛行体の飛行ルートの例を示す説明図である。
例えば、平面視で所定の基準方位を0°とした場合の角度α1(
図8も参照)でタワー31を撮像する際、
図9に「往路」として示すように、タワー31の下部から上部に向かって無人飛行体(図示せず)が上昇しつつ、高さZ1,・・・,Zkの位置でタワー31を順次に撮像する。
【0043】
次に無人飛行体(図示せず)は、タワー31の上部で周方向に移動し、角度α2(
図8も参照)においてタワー31を撮像する。具体的には、タワー31の上部から下部に向かって無人飛行体が下降しつつ、高さZk,・・・,Z1の位置でタワー31を順次に撮像する。同様にして、角度α3では「往路」に沿って無人飛行体が上昇し、また、角度α4では「復路」に沿って無人飛行体が下降し、所定の撮像ポイントでタワー31を撮像する。このように無人飛行体の飛行ルートを設定することで、タワー31の外周面を効率的に撮像できる。
【0044】
図10は、無人飛行体の飛行ルートの別の例を示す説明図である。
図10の例では、高さZ1において、所定の基準方位を0°とした場合の平面視の角度α1(
図8も参照)からタワー31を撮像した後、無人飛行体(図示せず)が「往路」の飛行ルートに沿ってタワー31の周りを周方向に移動しつつ、角度α2,α3,α4においてタワー31を順次に撮像する。そして、角度α4において無人飛行体が高さZ2の位置に上昇し、「復路」の飛行ルートに沿ってタワー31の周りを周方向に移動しつつ、角度α4,α3,α2においてタワー31を順次に撮像する。このような飛行ルートでも、タワー31の外周面を効率的に撮像できる。
【0045】
なお、
図9や
図10は一例であり、無人飛行体の飛行ルートは、これに限定されるものではない。例えば、タワー31の周囲を無人飛行体が螺旋状に上昇又は下降しながら撮像を行うようにしてもよい。また、無人飛行体の平面視での飛行ルートは、円軌道に限定されるものではなく、例えば、楕円軌道であってもよい。
【0046】
図11は、撮像画像情報データベースからの撮像画像情報の抽出・表示に関するフローチャートである(適宜、
図1も参照)。
なお、
図11の「START」時には、前記した
図6のフローチャートの処理に基づいて、撮像画像情報データベース3(
図7参照)が既に作成されているものとする。
ステップS201において制御装置2は、ユーザによる入力装置4の操作に基づき、抽出条件指定部2cによって、撮像画像情報の抽出条件を指定する。
ステップS202において制御装置2は、撮像画像情報抽出部2dによって、抽出条件に適合する撮像画像情報を抽出する。
【0047】
ステップS203において制御装置2は、撮像画像情報の表示形式を指定する。なお、撮像画像情報の表示形式は、ユーザによる入力装置4の操作に基づいて指定される。例えば、後記する第1~第4の画面表示例(
図12~
図16参照)のような所定の表示形式が指定される。
【0048】
ステップS204において制御装置2は、表示制御部2eによって、撮像画像情報を表示装置5に表示させる。すなわち、制御装置2は、ユーザが指定した所定の抽出条件に適合する撮像画像情報を、所定の表示形式で表示させる。
【0049】
このように、制御装置2(処理部)は、入力装置4の操作で指定される所定の抽出条件に基づいて、撮像画像情報データベース3(第2データベース)から所定の撮像画像情報を抽出し(S201、S202)、当該撮像画像情報を表示装置5に表示させる(S204)。ステップS204の処理を行った後、制御装置2は、撮像画像情報の抽出・表示に関する一連の処理を終了する(END)。
【0050】
<第1の画面表示例>
図12は、所定の抽出条件に基づく第1の画面表示例である。
なお、
図12に示す矩形状の画像P1のひとつひとつが撮像画像である。また、
図12に示す(X1,Y1)の位置は、前記した角度α1(
図9参照)に対応している。同様に、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)は、この順で、角度α2,α3,α4(
図9参照)に対応している。
図12に示すZ1,Z2,・・・,Zkは、撮像が行われる際の高さ位置を示している。例えば、Z1の高さ位置は、風車の付近の地盤面(又は無人飛行体の離陸箇所での地盤面)からの高さがH1[m]に設定されている。なお、Z2,Z3,・・・,Zkの高さ位置についても同様である。
【0051】
制御装置2(処理部)は、撮像ポイント情報に含まれる撮像ポイントの緯度(X)、経度(Y)、及び高度(Z)に基づいて、撮像ポイントの高さ位置が異なる複数の撮像画像が、表示装置5(
図1参照)の表示画面上でタワーの高さ方向に連続するように表示させる。これによって、ユーザがタワーの撮像画像を確認する際の視認性が高められる。また、撮像の順序とは特に関係なく、表示画面上でのタワーの高さ方向に沿って、複数の撮像画像を整列させた状態で表示できる。
【0052】
図12の例では、サイト名が「A」である1号機の風車を2023年7月10日に撮像することで得られた撮像画像情報が表示されている。このように、サイト名、風車の号機番号、撮像日時情報が抽出条件として与えられた場合、制御装置2(
図1参照)は、この抽出条件に適合する撮像画像情報を撮像画像情報データベース3(
図1参照)から抽出し、表示装置5(
図1参照)に撮像画像情報を表示させる。
図12の例では、周方向で異なる角度からタワーを撮像した場合の各撮像画像が高さ方向で連続するように表示されている。なお、高さ方向で隣り合っている撮像画像の撮像範囲が部分的に重なる(オーバーラップする)ようにするとよい。これによって、タワーに対して撮像範囲に抜けが生じることを防止できる。
【0053】
また、表示画面上でタワーの高さ方向に連続するように複数の撮像画像が表示される際の撮像画像の枚数は、予め設定されている。
図12の例では、表示画面上のタワーの高さ方向に沿って、計8枚の撮像画像が配列されるように設定されている。このように予め設定された枚数に対して、表示画面上でタワーの高さ方向に連続するように実際に配列された撮像画像の枚数に過不足がある場合、制御装置2(
図1参照)は、撮像画像の枚数に過不足がある旨のメッセージを表示装置5(
図1参照)に表示させる。これによって、撮像画像に抜けが生じているといったことをユーザが把握できる。
【0054】
また、
図12のマウスポインタM1で示すように、ユーザの入力操作で所定の画像が選択された場合、制御装置2は、次の
図13のように撮像画像を拡大表示させる。
【0055】
図13は、ユーザの入力操作で選択された画像を拡大表示した場合の表示例である。
例えば、平面視での撮像ポイントが(X1,Y1)であり、撮像ポイントの高さ位置がZ1であるような撮像画像がユーザの入力操作で選択された場合(
図12も参照)、制御装置2(
図1参照)は、
図13に示すような拡大画像を表示装置5(
図1参照)に表示させる。すなわち、入力装置4(
図1参照)の操作に基づいて、撮像ポイントの高さ位置が異なる複数の撮像画像のうちの1つ(又は複数)が選択された場合、制御装置2(処理部)は、選択された撮像画像を表示装置5に拡大表示させる。これによって、タワーのフランジや溶接線をユーザが視認しやすくなるため、タワーの損傷部をユーザが見つけやすくなる。
【0056】
<第2の画面表示例>
図14は、所定の抽出条件に基づく第2の画面表示例である。
図14の例では、サイト名が「A」である1号機の風車を平面視で(X1,Y1)の撮像ポイントから撮像して得られた撮像画像が横並びで4つ表示されている。具体的には、表示画面の左から順に、2020年7月10日の撮像画像と、2021年7月10日の撮像画像と、2022年7月10日の撮像画像と、2023年7月10日の撮像画像と、が1つの画面に並べて表示されている。
【0057】
このように、サイト名、風車の号機番号、及び撮像ポイント情報が抽出条件として与えられた場合、制御装置2(
図1参照)は、この抽出条件に適合する撮像画像情報を撮像画像情報データベース3(
図1参照)から抽出し、表示装置5(
図1参照)に撮像画像情報を表示させる。
図14の例では、撮像日時が異なる複数の撮像画像が1つの表示画面に並べて表示されている。これによって、タワーの経年劣化の推移をユーザが把握しやすくなる。
【0058】
<第3の画面表示例>
図15は、所定の抽出条件に基づく第3の画面表示例である。
図15の例では、サイト名が「A」である1,2,3,4号機の各風車を所定のタワー方位から撮像した場合の撮像画像が横並びで4つ表示されている。具体的には、表示画面の左から順に、1号機、2号機、3号機、及び4号機の撮像画像が1つの画面に並べて表示されている。なお、「タワー方位」とは、扉用の開口部31b(
図4参照)が設けられた正面側を基準方位(0°)とした場合の方位である。
【0059】
このように、サイト名、風車の複数の号機番号、及びタワー方位が抽出条件として与えられた場合、制御装置2(
図1参照)は、この抽出条件に適合する撮像画像情報を撮像画像情報データベース3(
図1参照)から抽出し、表示装置5(
図1参照)に撮像画像情報を表示させる。
図15の例では、号機番号が異なる複数の風車のタワー画像が1つの画面に並べて表示されている。これによって、号機番号が異なる複数の風車を所定のタワー方位から撮像した画像をユーザが目視で比較しやすくなる。
【0060】
その結果、例えば、「A」のサイトにおいてどの号機の風車でタワーの劣化が進みやすいかといったことをユーザが把握しやすくなる。また、損傷リスクの高い方位(例えば、強風が当たりやすい方位)から複数の風車のそれぞれの撮像画像を一括表示することで、タワーにおける損傷の有無をユーザが確認しやすくなる。
【0061】
<第4の画面表示例>
図16は、所定の抽出条件に基づく第4の画面表示例である。
なお、
図16の左側に表示されている撮像画像は、所定の参照画像である。ここで、参照画像とは、タワーの建設完了時又はメンテナンス時から所定期間内(タワーの損傷がほとんどないと想定される期間内)の撮像で得られた撮像画像である。例えば、タワーの建設完了時から1年以内に撮像された画像が参照画像として用いられてもよい。このような参照画像は、その後の撮像画像と比較する際の基準画像として用いられる。
【0062】
図16の例では、サイト名が「A」である1号機の風車を所定の撮像ポイントから2023年7月10日に撮像した場合の撮像画像(表示画面の右側)が、参照画像(表示画面の左側)と並べた状態で1つの画面に表示されている。このように、制御装置2(処理部)は、入力装置4(
図1参照)の操作に基づいて、所定の風車が指定されるとともに、当該風車の撮像ポイント及び撮像日時が指定された場合、当該風車の撮像画像情報と、当該風車の参照画像情報と、を表示装置5(
図1参照)の表示画面に並べて表示させる。これによって、損傷がほとんどない状態のタワーの参照画像と、その後の撮像で得られた撮像画像と、をユーザが目視で比較しやすくなる。その結果、撮像画像及び参照画像のそれぞれの撮像日時や、撮像画像におけるタワーの状態に基づいて、将来の補修時期をユーザが適切に設定できる。
【0063】
また、制御装置2(
図1参照)が、参照画像とともに、複数の撮像画像を時系列順に並べて表示させるようにしてもよい。これによって、それぞれの撮像画像を参照画像と比較しつつ、タワーの外周面の経時的な変化をユーザが把握しやすくなる。
【0064】
なお、前記した第1~第4の表示画面例(
図12~
図16参照)は一例であり、これに限定されるものではない。すなわち、制御装置2(処理部)は、撮像ポイント情報、風車情報、タワー情報、撮像日時情報のうちの少なくとも一つが入力装置4(
図1参照)の操作で抽出条件として指定された場合、当該抽出条件に対応した撮像画像を表示装置5(
図1参照)に表示させる。これによって、ユーザの抽出条件に適合する所定の画像が表示装置5に表示されるため、ユーザが表示装置5の画面を見ながら点検を行う際の負担が軽減される。
【0065】
<フランジ等の強調表示>
図17は、タワーのフランジが強調表示された場合の画面表示例である。
図17の例では、「フランジ強調表示」の文字が表示され、さらに、タワーの撮像画像に含まれる複数のフランジが四角枠Q1で囲まれることで強調表示されている。なお、強調表示が行われる際には、ユーザによる入力装置4(
図1参照)の操作で「フランジの強調表示」が選択されるものとする。また、表示画面上のフランジの位置は、撮像画像情報データベース3(
図7参照)におけるフランジの高さ位置の情報やテンプレートマッチングに基づいて特定される。
【0066】
なお、フランジの強調表示の仕方は、
図17の例に限定されるものではない。例えば、フランジの箇所を所定の色の横線で表示させるようにしてもよい。また、フランジの横側に「1番目のフランジ」や「FR-001」といったように、フランジを特定できるような文字を表示させるようにしてもよい。このような表示もフランジの「強調表示」に含まれる。また、入力装置4(
図1参照)の操作で所定のフランジが選択された場合、そのフランジを含む撮像画像が拡大表示されるようにしてもよい。これによって、フランジに損傷があるか否かをユーザが目視で確認しやすくなる。
【0067】
また、
図17の例では、フランジが強調表示される場合を示しているが、フランジに代えて(又はフランジとともに)、タワーの溶接線が強調表示されるようにしてもよい。フランジ及び溶接線の両方を強調表示する際には、フランジの強調表示の色と、溶接線の強調表示の色と、が異なるようにするとよい。これによって、ユーザがフランジと溶接線とを見分けやすくなる。
【0068】
このように、制御装置2(処理部)は、入力装置4(
図1参照)の操作で指定された撮像画像情報を表示装置5(
図1参照)に表示させる際、フランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方を強調表示する。これによって、損傷が生じやすいフランジや溶接線の箇所をユーザが目視で確認しやすくなる。また、ひとつひとつのフランジや溶接線をユーザが確認する際に見落としが生じることを抑制できる。
【0069】
<効果>
第1実施形態によれば、撮像ポイント情報をキーとして、制御装置2が撮像画像情報に風車情報やタワー情報を直接的に紐付けるようにしている。これによって、それぞれの撮像画像情報に識別情報を付与するといった処理が不要になるため、制御装置2(処理部)が撮像画像情報データベース3(第2データベース)を生成する際の処理の簡素化を図ることができる他、制御装置2の処理負荷を軽減できる。
【0070】
また、制御装置2が撮像画像情報データベース3を生成する際、撮像画像情報に撮像ポイント情報が対応付けられていればよいため、形式の異なるデータを統合しやすくなる。また、撮像ポイント情報、風車情報、タワー情報、撮像日時情報、及び撮像画像情報が対応付けられ、撮像画像情報データベース3として一元的に管理される。これによって、さまざまな抽出条件に基づく撮像画像情報を抽出して、表示装置5に表示させることができるため、ユーザにとっての利便性が高められる。
【0071】
また、ユーザが指定した抽出条件に基づいて、撮像画像情報データベース3から所定の撮像画像情報が抽出される。これによって、同時期の撮像された複数のタワーの撮像画像をユーザが見比べたり、異なる複数の時期に所定のタワーを撮像することで得られた撮像画像をユーザが見比べたりすることができる。また、撮像画像を参照画像と並べて表示することで、ユーザがタワーの損傷を見つけやすくなる。
【0072】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、制御装置2A(
図18参照)が劣化損傷診断部2f(
図18参照)を備える点が、第1実施形態とは異なっている。また、第2実施形態は、劣化損傷診断部2fの診断結果をタワーの撮像画像に重畳表示させる点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0073】
図18は、第2実施形態に係る風力発電設備の保守支援システム10Aの構成図である。
図18に示す保守支援システム10Aの制御装置2Aは、第1実施形態(
図1参照)で説明した構成に加えて、劣化損傷診断部2fを備えている。劣化損傷診断部2fは、所定の抽出条件に基づく撮像画像情報を用いて、タワーの劣化又は損傷の有無を診断する。なお、タワーの「劣化」の例として、タワーの発錆や塗装割れが挙げられる。また、タワーの「損傷」の例として、タワーの外表面の亀裂が挙げられる。
【0074】
制御装置2A(処理部)は、タワーにおいて劣化又は損傷の箇所であることが既知の撮像画像を教師データとして機械学習を行う。そして、制御装置2Aは、所定の抽出条件に基づいて抽出した所定の撮像画像情報と、機械学習の学習結果と、に基づいて、タワーの劣化又は損傷の有無を診断する。このような機械学習において、AI(Artificial Intelligence)が用いられてもよい。これによって、ユーザが見落とす可能性がある軽微な劣化や損傷を見つけ出すことが可能になる。また、ユーザが目視で劣化や損傷の有無を点検する際の負担を軽減できる。劣化損傷診断部2fの診断結果は、表示制御部2eによって表示装置5に所定に表示される。
【0075】
なお、制御装置2A(処理部)が、タワーのフランジ又は溶接線の撮像画像を教師データとして事前に機械学習を行い、その学習結果に基づいて、画像情報データベースから抽出された撮像画像に含まれるフランジ又は溶接線を強調表示するようにしてもよい。これによって、フランジ又は溶接線を制御装置2Aが強調表示する際の精度が高められる。
【0076】
図19は、タワーの損傷部D1に関する表示画面例である。
図19の例では、「損傷部の強調表示」の文字が表示され、さらに、タワーの撮像画像における損傷部D1の箇所が強調表示されている。このような強調表示として、
図19では損傷部D1を含む部分的な画像が拡大表示されている。なお、強調表示の仕方は、
図19の例に限定されるものではない。例えば、損傷部D1を所定の枠線や円形の線で囲むようにしてもよい。また、表示画面上の損傷部D1に対応付けて、「損傷部」等の文字を表示させてもよい。これらの処理も損傷部D1の「強調表示」に含まれる。
【0077】
このように、制御装置2A(処理部:
図18参照)は、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、表示装置5の表示画面上で当該箇所を強調表示する。これによって、タワーのどこに損傷があるのかをユーザが一目で把握できるため、表示画面上での確認作業の効率化を図ることができる。また、それぞれのユーザの熟練度の違いに伴う判断のばらつきを抑制できる。
【0078】
図19の例では、「損傷部の肉厚表示」の文字が表示され、さらに、損傷部の拡大表示の画像の中にタワーの肉厚(劣化又は損傷の箇所における肉厚の設計値)が表示されている。このようなタワーの肉厚として、例えば、撮像画像情報データベース3(
図18参照)に含まれる肉厚の設計値が用いられる。
【0079】
このように、制御装置2A(処理部:
図18参照)は、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、当該箇所におけるタワーの肉厚を示す肉厚情報を、当該箇所に対応付けて表示装置5に表示させる。これによって、その後の改修作業の優先度をユーザが把握できる他、非破壊検査等の詳細点検の要否をユーザが判断しやすくなる。なお、損傷部D1の肉厚が薄いほど、改修作業の優先度が高くなる傾向がある。また、損傷部D1の強調表示・肉厚表示の有無は、ユーザによる入力装置4(
図18参照)の操作に基づいて設定される。
【0080】
図20は、タワーの損傷部D1に関する別の表示画面例である。
図20の例では、損傷部D1が拡大表示されている部分に、損傷部の方位角及び高度が表示されている。また、サイト名や号機番号が表示されている箇所にも損傷部D1の方位角及び高度が表示されている。このように、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、制御装置2A(処理部:
図18参照)は、平面視でのタワーの中心位置を基準とする当該箇所の方位角及び高度を当該箇所に対応付けて表示装置5(
図18参照)に表示させる。
【0081】
これによって、損傷部D1の方位角や高度をユーザが把握できるため、その後にタワーの内側に作業員が入って損傷部D1を目視で点検したり、非破壊検査等の詳細検査を行ったりする場合に、損傷部D1の位置が特定しやすくなる。また、損傷部D1が見つかった風車と同一のサイトに存在する他の風車のタワーにも、同様の箇所に損傷部がないかことをユーザが推定する際の判断材料に用いることができる。
【0082】
図21は、タワーの損傷部D1に関する別の表示画面例である。
図21の例では、損傷部D1が拡大表示されている部分に、損傷部D1の寸法が表示されている。また、サイト名や号機番号が表示されている箇所にも損傷部D1の寸法が表示されている。このように、制御装置2A(処理部:
図18参照)は、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、当該箇所の寸法を当該箇所に対応付けて表示装置5(
図18参照)に表示させる。このように損傷部D1の寸法を表示することで、損傷部D1がどの程度の大きさであるのかをユーザが把握できる。
【0083】
なお、損傷部D1の寸法は、例えば、表示画面上で損傷部に相当する箇所のピクセル数に所定の倍率を乗算することで算出される。また、ユーザが入力装置4(
図18参照)の操作に基づいて損傷部D1の範囲を指定した場合、当該範囲のピクセル数に基づいて、損傷部D1の寸法が算出されるようにしてもよい。
【0084】
また、損傷部D1の寸法に代えて(又は損傷部D1の寸法とともに)、損傷部D1の面積を制御装置2A(18参照)が表示させるようにしてもよい。すなわち、制御装置2A(処理部:
図18参照)は、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、当該箇所の寸法及び面積のうちの少なくとも一方を当該箇所に対応付けて表示装置5(
図18参照)に表示させる。これによって、損傷部D1の寸法や面積をユーザが把握できる。
【0085】
なお、タワーの劣化又は損傷の箇所があると診断した場合、制御装置2A(
図18参照)が、当該箇所の拡大画像を時系列順に表示させるようにしてもよい。これによって、劣化又は損傷の箇所がどのように変化してきているのかをユーザが把握できる。
【0086】
また、タワーの損傷又は劣化の箇所があると制御装置2A(
図18参照)が診断した場合、当該箇所をマーキングして履歴を残すようにしてもよい。また、ユーザが撮像画像を目視で見て、タワーの損傷又は劣化に該当する可能性があると判断した箇所については、入力装置4(
図18参照)の操作で当該箇所にマーキングして履歴を残すようにしてもよい。例えば、表示画面においてユーザがマウスのドラッグで指定した部分が色付きの画像として残るようにしてもよい。これによって、軽微な劣化の見落しを抑制できる。
【0087】
<効果>
第2実施形態によれば、制御装置2Aの劣化損傷診断部2fによって、タワーの損傷部を見つけ出すことができる。また、制御装置2Aが損傷部を強調表示することで、ユーザにとっての視認性が高められる。また、損傷部の方位角や高度の他、寸法や面積を表示することで、タワーのどのあたりにどの程度の大きさの損傷があるのかをユーザが容易に把握できる。
【0088】
≪変形例≫
以上、本開示に係る風力発電設備の保守支援システムや保守支援方法について各実施形態で説明したが、本開示はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、フランジ及び溶接線のそれぞれの高さ位置を示す情報が風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース:
図5参照)に格納される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置を含むタワー情報が風車情報・タワー情報付与データベース1(第1データベース)に含まれるようにしてもよい。この場合において、撮像画像情報データベース3(第2データベース)のタワー情報にも、タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置が含まれるものとする。このような構成でも、各実施形態と同様の効果が奏される。
【0089】
また、各実施形態では、サイトと、号機と、型式と、タワー方位角と、タワーの全長と、が風車情報(
図5、
図7参照)に含まれる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、サイトと、号機と、型式と、タワー方位角と、タワーの全長と、のうちの少なくとも一つが風車情報に含まれるようにしてもよい。また、各実施形態では、タワーのフランジ及び溶接線の高さ位置の他、溶接線におけるタワーの肉厚の値がタワー情報に含まれる場合について説明したが(
図5、
図7参照)、これに限らない。例えば、溶接線におけるタワーの内径及び外径のうちの少なくとも一方がタワー情報に含まれるようにしてもよい。
また、実施形態では、風車が地面に設けられる場合について説明したが、これに限らない。例えば、洋上ウインドファーム等の風車のタワーを撮像する場合にも実施形態を適用できる。
【0090】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 風車情報・タワー情報付与データベース(第1データベース)
2,2A 制御装置(処理部)
2a 撮像画像情報入力部
2b 撮像画像情報データベース生成部
2c 抽出条件指定部
2d 撮像画像情報抽出部
2e 表示制御部
2f 劣化損傷診断部
3 撮像画像情報データベース(第2データベース)
4 入力装置
5 表示装置
10,10A 保守支援システム
30 風車
31 タワー
D1 損傷部
S101 ステップ(第1ステップ)
S102,S103 ステップ(第2ステップ)
W1 風力発電設備
【要約】
【課題】撮像画像情報を管理する際の処理の簡素化を図った、風力発電設備の保守支援システム等を提供する。
【解決手段】風力発電設備の保守支援システム10は、風力発電設備の風車のタワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報に対応付けられた撮像画像情報を取得する制御装置2を備え、制御装置2は、風車の号機番号を含む風車情報と、タワーのフランジ及び溶接線のうちの少なくとも一方の高さ位置を含むタワー情報と、タワーの撮像ポイントを示す撮像ポイント情報と、が対応付けられた風車情報・タワー情報付与データベース1に基づいて、撮像ポイント情報をキーとして、風車情報及びタワー情報に撮像画像情報が対応付けられた撮像画像情報データベース3を生成する。
【選択図】
図1