(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】加熱装置および加熱方法
(51)【国際特許分類】
F27D 5/00 20060101AFI20240416BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240416BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F27D5/00
F27B17/00 B
F27D11/02 A
(21)【出願番号】P 2019166788
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594067195
【氏名又は名称】株式会社九州日昌
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 和哉
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-352306(JP,A)
【文献】特開2000-012447(JP,A)
【文献】特開2005-055152(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085942(WO,A1)
【文献】特開2010-133591(JP,A)
【文献】特開2006-046894(JP,A)
【文献】特開平06-037084(JP,A)
【文献】特開2004-304104(JP,A)
【文献】特開2013-200077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に内蔵された複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置され
、かつ、両端部が前記加熱用壁体に直接設けられて、前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置であって、
前記複数の収容スペースの各々の下側の熱伝達部材の上面は、前記被加熱物を直接保持可能な保持面を画定している、加熱装置。
【請求項2】
前記複数の収容スペースの各々には、前記被加熱物の位置を決める位置決め機構が形成されており、
前記位置決め機構は、前記加熱用壁体に形成されている、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に内蔵された複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置され
、かつ、両端部が前記加熱用壁体に直接設けられて、前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置であって、
前記複数の収容スペースの各々の下側の熱伝達部材の上面は、当該上面に対して前記被加熱物の対向面が近接して配置されるように、当該対向面を支持する少なくとも3以上の支持突起を有する、加熱装置。
【請求項4】
前記複数の収容スペースの各々には、前記被加熱物の位置を決める位置決め機構が形成されており、
前記位置決め機構は、前記加熱用壁体に形成されている、請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記支持突起は、前記上面からの高さが、10μm~10mmの範囲にある、請求項3に記載の加熱装置。
【請求項6】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置され
、かつ、両端部が前記加熱用壁体に直接設けられて、前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置を用いた加熱方法であって、
前記収容スペースの下側の熱伝達部材の上面に前記被加熱物の対向面を全面的に保持させた状態で、当該被加熱物を加熱する、加熱方法。
【請求項7】
前記複数の収容スペースの各々に前記被加熱物を収容する際に、前記収容スペースの各々の
前記加熱用壁体に形成された位置決め機構によって前記被加熱物を位置決めする、請求項6に記載の加熱方法。
【請求項8】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置され
、かつ、両端部が前記加熱用壁体に直接設けられて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置を用いた加熱方法であって、
前記収容スペースの下側の熱伝達部材の上面に対して前記被加熱物の対向面を近接配置した状態で、当該被加熱物を加熱する、加熱方法。
【請求項9】
前記複数の収容スペースの各々に前記被加熱物を収容する際に、前記収容スペースの各々
の前記加熱用壁体に形成された位置決め機構によって前記被加熱物を位置決めする、請求項8に記載の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液晶表示パネルなどの構成部材であるガラス基板等の板状物を熱処理する加熱気体循環方式のクリーンオーブンが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このクリーンオーブンは、ガラス基板などの被熱処理物を恒温槽内に収容し、この恒温槽内においてファンによって循環する加熱気体を用いて被加熱物の熱処理を行うものである。
加熱気体循環方式のクリーンオーブンの場合、ガラス基板などの被加熱物を多段状に収容する構造を採用しやすいので、スペース効率に優れている反面、加熱温度分布を均一化することが困難であり、加熱気体の攪拌によりクリーン度が低下する可能性が高い。また、被加熱物が比較的軽量である場合、加熱気体の循環対流によって被加熱物が所定の位置から移動することがある。
【0003】
特許文献2は、内部に発熱体を有する放熱板の両面に遠赤外線放射セラミックスの薄層が被覆され、この放熱板の加熱によって両面から遠赤外線を放射する両面加熱式の遠赤外線パネルヒータからなる多数の棚状ヒータが、炉本体内に上下方向に一定間隔で多段配置され、これらの棚状ヒータの間に形成される各空間部分をそれぞれ乾燥室とした加熱炉を開示している。
特許文献2記載の加熱炉の場合、上下方向に配置された多数の棚状ヒータから発される熱は、加熱炉内を上昇して炉内の天壁寄りの領域に集まる傾向があるため、炉内上部領域の温度は、炉内下部領域の温度より高くなっており、このような炉内上部領域と炉内下部領域との間の温度差をなくすことは極めて困難である。
【0004】
特許文献3は、温度分布の均一性及びクリーン度を改善するための加熱装置を開示している。具体的には、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、これら複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置された金属製の複数の熱放射板と、を備え、複数の加熱用壁体と複数の熱放射板とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定している。特許文献3に開示された加熱装置では、各収容スペースを設定温度になるように温度を制御することにより、被加熱物を均一な温度に加熱できるとともに、収容スペース間の温度を均一にできる。また、特許文献3に開示された加熱装置では、加熱した気体を循環させないので、各収容スペース内のクリーン度を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-56141号公報
【文献】特開2001-317872号公報
【文献】特開2005-055152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に開示された加熱装置では、被加熱物の上下に熱放射板を配置し、この熱放射板からの輻射熱を利用して被加熱物を加熱するので、比較的容量の大きい被加熱物の場合、設定温度まで加熱するのに比較的長時間を要する。
【0007】
本発明の目的の一つは、温度分布の均一性及びクリーン度に優れ、かつ、加熱速度に優れた加熱装置および加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る加熱装置は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に内蔵された複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置であって、
前記複数の収容スペースの各々の下側の熱伝達部材の上面は、前記被加熱物を直接保持可能な保持面を画定している。
【0009】
本発明の第2の観点に係る加熱装置は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に内蔵された複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置であって、
前記複数の収容スペースの各々の下側の熱伝達部材の上面は、当該上面に対して前記被加熱物の対向面が近接して配置されるように、当該対向面を支持する少なくとも3以上の支持突起を有する。
【0010】
本発明の第3の観点に係る加熱方法は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置を用いた加熱方法であって、
前記収容スペースの下側の熱伝達部材の上面に前記被加熱物の対向面を全面的に保持させた状態で、当該被加熱物を加熱する。
【0011】
本発明の第4の観点に係る加熱方法は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱伝達部材と、を備え、前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝達部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱伝達部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有する加熱装置を用いた加熱方法であって、
前記収容スペースの下側の熱伝達部材の上面に対して前記被加熱物の対向面を近接配置した状態で、当該被加熱物を加熱する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温度分布の均一性及びクリーン度に優れると共に、加熱速度に優れる加熱装置および加熱方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱装置を示す正面図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る加熱装置の要部拡大図。
【
図7】本発明の加熱装置の被加熱物の搬入・搬出方法の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態である加熱装置1について説明する。
図1に示すように、加熱装置1は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体10(10A~10C)と、加熱用壁体10に設けられた発熱手段である複数のコイル状ヒータ11と、複数の加熱用壁体10の対向領域に上下方向A1,A2に距離を隔てて棚状に配置された複数の熱伝達部材12と、上下方向に隣り合う熱伝達部材12の間に設けられた被加熱物Wの収容スペース14と、両端部に配置された左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面を覆うように設けられた断熱材23と、を備えている。
【0015】
加熱用壁体10の上端側及び下端側はそれぞれ天板16及び底板17によって連結され、底板17の下面は、架台ユニット30によって支持されている。
【0016】
加熱用壁体10は、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属で形成され、箱型の本加熱装置1の両側面及び中央の仕切り壁をなす構造部材であるとともに、加熱装置の熱源となる部材である。本実施形態では、左側加熱用壁体10A、中央加熱用壁体10B、右側加熱用壁体10Cの3枚からなる。各加熱用壁体10には、正面側から背面側まで水平方向に複数の貫通孔24が開設され、これらの貫通孔24内にそれぞれコイル状ヒータ11が着脱可能に挿入されている。
【0017】
コイル状ヒータ11は、金属管(シース)の内部にコイル状に巻いた発熱線を収容した構造になっている。発熱線と金属管の間は、粉末状の酸化マグネシウムを固めた絶縁層で絶縁されている。
【0018】
各加熱用壁体10におけるコイル状ヒータ11の配置は、
図1に示すように、下部で間隔が狭く上部で間隔が広く配置された全ての貫通孔24にそれぞれ挿入されている。これにより、各加熱用壁体10の上下方向A1,A2については、コイル状ヒータ11の配置間隔の小さい下部で発熱量が大きくなるので、温度が低くなりがちな下部の温度を高めている。また、奥行方向B1,B2については、温度が低下しがちな奥行方向両端部の発熱量を大きくし、温度分布が均一になるようにしている。
【0019】
各加熱用壁体10には、また
図1に示すように、正面側から水平方向に別の複数の貫通孔25が開設され、温度センサー15が挿入されている。温度センサー15の検出温度が目標温度に追従するように、各加熱用壁体10にそれぞれ設けられた複数のコイル状ヒータ11の各々の発熱量が、温調手段(図示省略)により独立に制御されている。または、複数のコイル状ヒータ11が複数にグループ化され、グループ毎に発熱量が独立に制御される。
なお、上記したコイル状ヒータ11の構成や配置は、温調手段により発熱手段を制御した際に、加熱用壁体10の温度の均一化を実現するためのものである。言い換えると、外乱等が原因で温調手段のみでは加熱用壁体10の温度の均一化を実現するのは難しいので、コイル状ヒータ11の構成や配置を工夫することで加熱用壁体10の温度の均一化を実現する。
【0020】
熱伝達部材12は、加熱用壁体10の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体10からの熱を伝導させる部材である。本実施形態では、両側の加熱用壁体10に形成された溝に嵌め込まれて棚状に配置されている。各熱伝達部材12は、表面に黒色メッキを施したアルミニウム板で形成され、すぐれた熱放射機能および熱伝導機能が得られるようになっている。
【0021】
各収容スペース14は、
図3に示すように、両側の加熱用壁体10と、上下の熱伝達部材12とで画定されたスペースで、被加熱物Wを収容する。各収容スペース14の下側の熱伝達部材12の上面は、被加熱物Wを直接保持可能な平坦で平滑な保持面12fとなっている。
保持面12fに対向する被加熱物Wの対向面Wfは、保持面12fに密接するように、平面度が確保されており、保持面12fに均等に接触するようになっている。
【0022】
各収容スペース14に設けられた凹状の溝10tは、被加熱物Wの幅方向C1,C2の両端部を受け入れ、収容スペース14内での被加熱物Wの位置を決める位置決め機構の役割を果たしている。
【0023】
各収容スペース14の前面側には開口部14a(
図2参照)が形成されている。各収容スペース14の背面側の開口部14bは、背壁部材26により閉塞されている。すなわち、各収容スペース14は、前面側の開口部14aでのみ開口している。前面側に開口部14aを設けることで、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げられるようになっている。背面側の開口部14bが閉塞されているので、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げたとしても、外部から収容スペース14内に空気が流入しにくい構造となっている。
【0024】
架台ユニット30は、加熱装置1が設置される床面に配置され、底板17及びその上の加熱装置本体を搭載している。加熱装置1の熱が床面に伝達しないようにする断熱機能や、床面の振動が加熱装置本体に伝達しないようにする防振機能等を備えている。
断熱材23は、外気からの左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cへの熱的外乱を最小限に抑えるために設けられており、ガラス繊維等の熱絶縁性の材料で形成されている。
【0025】
加熱装置1を使用する場合、所定の搬送装置を用いて、
図4に示すように、各収容スペース14の前面側の開口部14aを通じて各被加熱物Wをそれぞれの収容スペース14に搬入する。搬入方法は、リフトアップリフトダウン方式で被加熱物Wの対向面Wfを保持面12fに直接置く。あるいは、被加熱物Wを下側の熱伝達部材12上をスライドさせて挿入する。
【0026】
コイル状ヒータ11に通電を開始すれば、所定のプログラムに従って加熱処理を実行できる。
図示しない温調手段により、各温度センサー15の検出温度が目標温度になるように、複数のコイル状ヒータ11の発熱量が個々にまたはグループ毎に独立に制御される。
【0027】
各収容スペース14は、各加熱用壁体10および上下の熱伝達部材12も加熱用壁体10と同じ温度に加熱され、被加熱物Wも均一に加熱される。このとき、被加熱物Wの対向面Wfを保持面12fに直接置くことで、下側の熱伝達部材12の熱伝導作用により、被加熱物Wの加熱速度が向上する。すなわち、上下の熱伝達部材12の両方からの熱放射により被加熱物Wを加熱するよりも、下側の熱伝達部材12の熱伝導作用を利用して加熱するほうが、被加熱物Wの加熱速度が大幅に向上する。
【0028】
なお、加熱装置1は本発明に係る加熱装置を例示するものであり、本発明は加熱装置1に限定されない。
発熱手段はコイル状ヒータに限られず、その他のヒータや、ヒートパイプでもよい。
また、加熱装置1の背面側は閉塞したが、背面側から被加熱物Wの取り出す場合は、背面側の開口部14bを開放状態としてもよい。
【0029】
第2実施形態
次に、
図5および
図6を参照して本発明の第2の実施形態に係る加熱装置について説明する。なお、
図5および6において、第1の実施形態と同様の構成部分については同じ符号を使用している。
上記実施形態では、被加熱物Wを下側の熱伝達部材12の上面12fに直接置くことで被加熱物Wの加熱速度を改善した。
しかしながら、被加熱物Wの対向面Wfの平面度が十分に確保できていない場合には、対向面Wfと上面12fとが点接触状態となり、被加熱物Wの加熱ムラが生じる可能性がある。
本実施形態では、被加熱物Wの対向面Wfや熱伝達部材12の上面12fの平面度が十分に確保できていない場合であっても、被加熱物Wの加熱ムラを抑制する構成について説明する。
【0030】
図6は、熱伝達部材12の上面12fの構成である。上面12fには、被加熱物Wの対向面を支持する3以上の支持突起12pが設けられている。
支持突起12pは、熱伝達部材12と同じ材料又は異なる材料で直径が例えば1~2mm程度に形成されている。支持突起12pは、ピン状の部材を熱伝達部材12に埋め込んでもよいし、上面12fを削って突起を形成してもよい。
支持突起12pの被加熱物Wの対向面Wfに当接する面は、点接触を維持するため、球面状の面又は突状に湾曲する面となっていることが好ましい。
支持突起12pの高さは、被加熱物Wの対向面Wfを熱伝達部材12の上面12fにできるだけ近接させる観点から、接触を防ぎつつできるだけ低い方が好ましい。支持突起12Pの高さは、例えば、10μm~1mmの範囲が好ましい。支持突起12pによって形成される、被加熱物Wの対向面Wfと熱伝達部材12の上面12fとの間隙Gは、被加熱物Wの対向面Wfや熱伝達部材12の上面12fの平面度に応じて、被加熱物Wと熱伝達部材12とが部分的に接触しない範囲で設定される。
【0031】
本実施形態によれば、支持突起12pを熱伝達部材12に設けることで、被加熱物Wの対向面Wfと熱伝達部材12の上面12fとの部分的接触を防ぎつつ可能な限り被加熱物Wの対向面Wfと熱伝達部材12の上面12fとを近接させることで、熱伝達部材12から被加熱物Wへ伝達される熱量を増加させて加熱速度を向上させるとともに、被加熱物Wの加熱ムラを抑制することができる。
【0032】
次に、
図7および
図8を参照して本発明の加熱装置における被加熱物の搬入および搬出方法の一例について説明する。なお、
図7および
図8において、第1および第2の実施形態と同様の構成部分には同一の符号を使用している。
【0033】
。
図7に示すように、各収容スペース14の両側の加熱用壁体10には案内溝18が加工されている。この案内溝18は、被加熱物Wの奥行き方向の移動をサポートするためのものであり、被加熱物Wの幅方向C1,C2の両端部が挿入される。なお、加熱用壁体10に案内溝18以外にガイド機構を設けることも可能であり、熱伝達部材12に被加熱物Wをガイドするガイド機構を設けることもできる。
【0034】
図8に示すように、被加熱物Wは前面側の開口部14aを通じて、収容スペース14内に順次搬入され、複数の被加熱物Wが収容スペース14内に同時に収容される。
前面側の開口部14aを通じて新たな被加熱物Wを背面側に向けて押し込むことにより、収容スペース14内に既に収容された複数の被加熱物Wを、熱伝達部材12上をスライドさせつつ、順次移動させることができる。
新たな被加熱物Wの押し込み量Lは、均一な加熱に影響を及ぼさない距離を確保する必要がある。
背面側の開口部14bは、開放しておき、開口部14bを通じて被加熱物Wが順次搬出される。開口部14bを開放しておく代わりに、被加熱物Wが通過可能な切り欠き穴を背面側に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る加熱装置は、各種板状部材や立体形状物を含むあらゆる被加熱物の熱処理を行う産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 :加熱装置
10 :加熱用壁体
10A :左側加熱用壁体
10B :中央加熱用壁体
10C :右側加熱用壁体
10t :溝
11 :コイル状ヒータ
12 :熱伝達部材
12f :上面(保持面)
12p :支持突起
14 :収容スペース
14a,14b :開口部
15 :温度センサー
16 :天板
17 :底板
18 :案内溝
23 :断熱材
24,25 :貫通孔
26 :背壁部材
30 :架台ユニット
A1,A2 :上下方向
B1,B2 :奥行方向
C1,C2 :幅方向
G :間隙
L :押し込み量
W :被加熱物
Wf :対向面