IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光明理化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス濃度測定装置 図1
  • 特許-ガス濃度測定装置 図2
  • 特許-ガス濃度測定装置 図3
  • 特許-ガス濃度測定装置 図4
  • 特許-ガス濃度測定装置 図5
  • 特許-ガス濃度測定装置 図6
  • 特許-ガス濃度測定装置 図7
  • 特許-ガス濃度測定装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ガス濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01N21/61
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020068520
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165658
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010364
【氏名又は名称】光明理化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】秋本 健二
(72)【発明者】
【氏名】瀧山 雅博
(72)【発明者】
【氏名】森光 伸吾
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-318922(JP,A)
【文献】特開2003-156306(JP,A)
【文献】特開平08-043303(JP,A)
【文献】特開平03-202755(JP,A)
【文献】特開昭50-115875(JP,A)
【文献】特開昭52-057874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動空間を形成する振動室と、
前記振動空間と測定対象化合物の気体を含有するサンプルガスの雰囲気であるサンプルガス雰囲気との間で前記サンプルガスが移動する経路である主流通路と、
前記振動空間の中のサンプルガスに所定の駆動周波数で圧力変動をさせる振動装置と、
前記圧力変動がされた前記サンプルガスに、測定光を照射して前記サンプルガスを透過させ、前記サンプルガスを透過した前記測定光の中の前記測定対象化合物に吸収される波長の光の光量を検出し、電気信号に変換する光量測定装置と、を有し、
前記光量測定装置が検出し、変換した前記電気信号に含まれる周波数成分のうち、前記駆動周波数と一致する周波数成分の大きさからガス濃度を求め
表面が前記振動空間に露出された振動板が設けられ、
前記振動装置は前記振動板を振動させる力を伝達する伝達装置を有し、
前記振動装置は前記振動板を前記駆動周波数で振動させて前記サンプルガスを圧力変動させるガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記圧力変動がされた前記サンプルガスの圧力を検出する圧力センサを有する請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記ガス濃度は、前記サンプルガス中に含有される前記測定対象化合物の気体の体積と前記サンプルガスの体積との間の比である請求項2記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記振動装置は、前記圧力センサが検出した前記圧力変動の振動振幅を一定に保つように制御される請求項2記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記電気信号に含まれる信号成分のうち、前記駆動周波数で変動する信号成分に対する他の周波数で変動する信号成分の比を小さくさせた前記電気信号を用いて前記ガス濃度を求める請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のガス濃度測定装置。
【請求項6】
先端が前記振動板に取り付けられたシャフトを有し、
前記振動装置は前記シャフトを往復移動させて前記振動板を振動させる請求項記載のガス濃度測定装置。
【請求項7】
前記振動板の裏面が露出された裏面側空間と、
前記裏面側空間と前記サンプルガス雰囲気との間で前記サンプルガスが移動する経路である裏面側流通路と、
N極とS極のうち、一方の磁極が前記振動空間に向けられ、他方の磁極が前記裏面側空間に向けられた受力磁石と、
前記振動空間を間にして前記受力磁石に対面する位置に第一の磁極を形成する電磁石である第一給力磁石と、
前記裏面側空間を間にして前記受力磁石に対面する位置に第二の磁極を形成する電磁石である第二給力磁石と、
を有し、
前記振動装置は、前記第一の磁極と前記第二の磁極とを同一極性にしながら極性を交互に反転させて前記振動板を振動させる請求項記載のガス濃度測定装置。
【請求項8】
前記振動空間と前記サンプルガス雰囲気との間を移動する前記サンプルガスは、前記主流通路の流動コンダクタンスよりも小さい流動コンダクタンスにされた通気抵抗体を通過するようにされた請求項1,2,3,5,6,7のいずれか1項記載のガス濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非分散赤外線吸収法(NDIR:non-dispersive infrared)に基づくガス濃度測定装置、特に、流体変調方式ガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NDIRガス濃度測定装置は、現在、多くの産業分野において様々な用途で普及している。初期の装置は、大型で複雑な構造であったため、用途も限定的であった。やがて、電子産業の発展と時を同じくし、旧型のガス封入式赤外線検出器から、固体受光器と干渉フィルターによる赤外線検出機構への置き換えが進み、構造の簡素化、小型化、長寿命化により、NDIRガス濃度測定装置の用途は飛躍的に拡大した。
【0003】
NDIRガス濃度測定装置では、測定対象ガスを含まない光路を通過した赤外線または測定対象ガスに吸収されない波長の赤外線を参照光として用い、測定光と参照光の差または比率からガス濃度を検出することで、光源の変化などを補償する手法が一般的である。
【0004】
しかしながら、測定光と参照光の差または比率は測定対象ガスの濃度以外の諸要因によっても変化し、ガス濃度測定装置のゼロドリフトとして現れる。ゼロドリフトは、NDIRに限らず、吸収測定法全般に共通する弱点であり、改善すべき重要課題であった。
ゼロドリフトを軽減するための従来技術の一例を、特許文献1及び特許文献2に示す。
【0005】
前者は、モーターで回転する光チョッパーを用いて信号変調を行う方式で、複数の測定セルと基準セルを、円周上に交互に配置し、測定光の総和と基準光の総和を比較してガス濃度を決定することにより、個別の測定光または基準光に生じる変化を平均化により緩和し、ゼロドリフトの軽減を狙う技術である。
【0006】
一方、後者は、モーターと光チョッパーを、シリコンマイクロマシーニングによる個別発光可能な複数の発光部(光源)に置き換えることにより、ゼロドリフト軽減に関して、前者と同等な効果を得ながら、装置の小型化と長寿命化を計る技術である。
【0007】
また、特許文献3には、ゼロドリフトの課題を、より根本的に解決する技術の例が記載されている。
ガス採取箇所におけるガス濃度の変化とは別に、測定セルに導入するガスの濃度を、一定周波数かつ一定割合で変化(変調)させる機構を設け、同変調周波数の受光信号だけを検出することによって、ガス濃度以外の要因を排除するもので、特に、ゼロドリフトに関しては、原理的に解消される利点があり、同文献では、流体変調方式と称している。
【0008】
特許文献3の図1は、ポンプと電磁弁を用いて、サンプルガスと基準ガス(ゼロガス)を、交互に一定周波数で測定セルに導入する流体変調方式の一例であり、特許文献3の図5(b)は、その受光信号の特徴を説明する図である。
【0009】
特許文献3の図5(b)において、サンプルガスに測定対象成分が含まれないときは、受光信号は無信号状態を保つので、ゼロドリフトは発生しない。
一方、サンプルガスに測定対象成分が含まれるときは、変調周波数において、ガス濃度に応じたレベルの受光信号が発生し、ガス濃度が測定される。
【0010】
より実用的な構成としては、特許文献3の図3に示すとおり、流体変調方式に適した校正ガスの供給手段を付加したものがあり、サンプルガスと基準ガス(ゼロガス)の切換を行うことから、一部で「ガス切換方式」などと呼ばれ、特に、自動車排気ガス測定器の分野で、長年にわたり実用化されている。
【0011】
流体変調方式のNDIRガス濃度測定装置の中には、別の方法で測定セル内のガス濃度(密度)を変調する事例がある。
参考として、特許文献3の図4を用いて説明すると、同図における基準ガスを使わず、3方電磁弁4の代わりに一定の変調周波数で開閉する2方電磁弁を用いる。測定セル内のガス圧力、即ち、ガス密度を常圧と一定負圧で切り換えることにより、ガス切換方式と同様の受光信号を得るもので、ゼロドリフトを発生させずに安定なガス測定が可能となる。
【0012】
この方式は、「圧力変調方式」と呼ばれ、清浄空気などの基準ガス(ゼロガス)を利用できない用途、例えば、ガス漏洩検知の分野で長年にわたり実用化されている。
【0013】
本明細書添付の図3は従来技術の光量変調による受光器の出力波形を示す図であり、図4は従来技術の流体変調による受光器出力波形を示す図である。NDIR機器では、S/N確保のため、測定光に変調処理を行っており、例えばモーターで回転する光チョッパーを使用した装置や、光源点滅により測定光を一定の周期で断続する光量変調方式の装置が一般的である。
【0014】
NDIR光学系の種類は多岐にわたり、シングルビーム/マルチビーム、シングル波長/マルチ波長、等々、様々なタイプが実用化されているが、対象ガス濃度と検出信号には、図3に示すような関係がある。
【0015】
図3図4の出力波形は、変調周波数の信号成分を選択増幅するフィルター処理により、正弦波に近似させた信号として示されている。
図3は、特許文献3の図5(a)に示された出力波形と同様に、光量変調により得られる波形を、より詳細に説明する図であり、変調周波数1Hzのときの出力波形を示している。光量変調による出力波形は、対象ガスが含まれないゼロガスにおいて最大振幅となり、ガス濃度の上昇に応じて振幅が小さくなる。
【0016】
図3の中の「FS ガス」の記載は最大濃度(フルスケール濃度)のガスを示し、「1/2FS ガス」の記載は最大濃度の1/2のガスを示す。
光量変調における信号振幅値は、ガス濃度以外の諸要因(関連する全ての部品・部材等の温度影響や経時変化)によっても変動し、ゼロドリフトとして現れ、機器性能の限界を決める主要因となる。
【0017】
NDIR機器のゼロドリフト問題を根本解決するために、光量変調に代えて、ガス濃度(またはガス密度)を一定周期で変調する方式が開発された。特許文献3に示す流体変調方式のNDIRがそれである。
【0018】
図4は特許文献3の図5(b)に示された出力波形と同様に、流体変調により得られる波形を、より詳細に説明する図であり、変調周波数1Hzで測定対象ガスの濃度または密度を変調したときの出力波形を示している。流体変調による出力波形は、対象ガスが含まれないゼロガスにおいては無信号であり、ガス濃度の上昇に応じて振幅が大きくなる。
【0019】
図4の中の「FS ガス」の記載は最大濃度(フルスケール濃度)のガスを示しており、「1/2FS ガス」の記載は最大濃度の1/2のガスを示している。流体変調方式のNDIRでは、光源の入射光量を一定に保ち、対象ガスによる赤外吸光が生じるときにだけ、その吸光度合が一定周期で変調され、出力波形(AC信号成分)を発生する。したがって、ゼロガスに対しては完全な無信号状態(AC信号成分=ゼロ)となり、ゼロドリフトが原理的に解消され、かつ、この状態は長期間にわたり確保される。
【0020】
ただし、従来技術による流体変調方式には、電磁弁とポンプが使用され、電磁弁の切換による測定光路(測定セル)内のガス濃度変化が、ほぼ一定になるまでの時間を確保するように、切換周波数を設定していたので、実用上の変調周波数は1~2Hz程度に限定されるため、ガス濃度測定装置としての応答性の実績は、信号の平均化処理時間を含めて、90%応答時間として5秒~10秒程度であった。これ以上の高速応答性を要する用途には、流体変調を適用できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特公平03-047700号公報
【文献】特許3347264号公報
【文献】特許2965507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
流体変調によるNDIRガス濃度測定装置は、ゼロドリフトを発生しない利点がある一方で、ガス濃度測定装置の構成が光学系だけで完結せず、専用の通気回路が必須となることで使用上の制約を受ける場合がある。ガス切換方式に関しては、基準ガス(ゼロガス)が利用可能である用途に限定されるため、それ以外の用途において流体変調を適用する場合は、圧力変調方式を選択するこになる。
【0023】
流体変調方式には、ポンプと電磁弁の使用に係わる共通の課題がある。従来の流体変調では、電磁弁を切り換える毎に、測定セル内のガス濃度またはガス圧力が、ほぼ一定値に至るまでの時間を確保することで、再現性のよい受光信号を得るように変調周波数が設定されている。このため、測定セルを含む通気ラインの容積を勘案して、変調周波数が1~2Hz程度に限定されるため、ガス濃度測定装置としての応答性の実績は、信号の平均化処理時間を含めて、90%応答時間として5秒~10秒程度であった。これ以上の高速応答性を要する用途には、流体変調を適用できていない。
【0024】
第2の課題は、測定対象ガスの採取点におけるガス圧力が、大気圧(常圧)と異なる用途、例えば、ガスを扱うプラント等の配管内ガス濃度をインライン測定する用途においては、流体変調を適用できていない。インライン測定などにおいて、ゼロドリフトフリーの流体変調を適用するためには、ガス採取点におけるガスの圧力影響を受けにくい構造とした上で、測定セル内のガス密度を、一定周波数かつ一定比率で変調する技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明は、振動空間を形成する振動室と、前記振動空間と測定対象化合物の気体を含有するサンプルガスの雰囲気であるサンプルガス雰囲気との間で前記サンプルガスが移動する経路である主流通路と、前記振動空間の中のサンプルガスに所定の駆動周波数で圧力変動をさせる振動装置と、前記圧力変動がされた前記サンプルガスに、測定光を照射して前記サンプルガスを透過させ、前記サンプルガスを透過した前記測定光の中の前記測定対象化合物に吸収される波長の光の光量を検出し、電気信号に変換する光量測定装置と、を有し、前記光量測定装置が検出し、変換した前記電気信号に含まれる周波数成分のうち、前記駆動周波数と一致する周波数成分の大きさからガス濃度を求めるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記圧力変動がされた前記サンプルガスの圧力を検出する圧力センサを有するガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記ガス濃度は、前記サンプルガス中に含有される前記測定対象化合物の気体の体積と前記サンプルガスの体積との間の比であるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記振動装置は、前記圧力センサが検出した前記圧力変動の振動振幅を一定に保つように制御されるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記電気信号に含まれる信号成分のうち、前記駆動周波数で変動する信号成分に対する他の周波数で変動する信号成分の比を小さくさせた前記電気信号を用いて前記ガス濃度を求めるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、表面が前記振動空間に露出された振動板が設けられ、前記振動装置は前記振動板を振動させる力を伝達する伝達装置を有し、前記振動装置は前記振動板を前記駆動周波数で振動させて前記サンプルガスを圧力変動させるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、先端が前記振動板に取り付けられたシャフトを有し、前記振動装置は前記シャフトを往復移動させて前記振動板を振動させるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記振動板の裏面が露出された裏面側空間と、前記裏面側空間と前記サンプルガス雰囲気との間で前記サンプルガスが移動する経路である裏面側流通路と、N極とS極のうち、一方の磁極が前記振動空間に向けられ、他方の磁極が前記裏面側空間に向けられた受力磁石と、前記振動空間を間にして前記受力磁石に対面する位置に第一の磁極を形成する電磁石である第一給力磁石と、前記裏面側空間を間にして前記受力磁石に対面する位置に第二の磁極を形成する電磁石である第二給力磁石と、を有し、前記振動装置は、前記第一の磁極と前記第二の磁極とを同一極性にしながら極性を交互に反転させて前記振動板を振動させるガス濃度測定装置である。
また、本発明は、前記振動空間と前記サンプルガス雰囲気との間を移動する前記サンプルガスは、前記主流通路の流動コンダクタンスよりも小さい流動コンダクタンスにされた通気抵抗体を通過するようにされたガス濃度測定装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の脈流式ガス濃度測定装置は、チャンバー内に発生させた特定周波数の圧力脈動を測定光路に伝達することにより発生するガス濃度の脈動に同期した赤外線吸収信号を利用できるので、流体変調方式の利点であるゼロドリフト・フリーの実現と同時に、90%応答時間として、5秒以内の高速応答が可能となる。また、ダイアフラムを磁気駆動する構造とすれば、チャンバーの気密性確保が容易となり、インライン・ガス濃度測定装置としての利用も可能となる。
さらに、従来の流体変調方式で必須とされた電磁弁とポンプを、小型の脈流発生部に置き換えることで、流体変調方式ガス濃度測定装置の小型化とコストダウンが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のガス濃度測定装置の一例
図2】本発明のガス濃度測定装置の他の例
図3】従来技術の光量変調方式のガス濃度測定装置の光量信号波形を示すグラフ
図4】従来技術の流体変調方式のガス濃度測定装置の光量信号波形を示すグラフ
図5】本発明のガス濃度測定装置の圧力信号の波形を示すグラフ
図6】本発明のガス濃度測定装置のガス濃度と出力信号波形の関係を示すグラフ
図7】本発明のガス濃度測定装置のガス濃度と出力信号の相対値との関係を示すグラフ
図8】本発明のガス濃度測定装置の使用方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図8(a)は、本発明の一例のガス濃度測定装置41aを説明するための図であり、図8(b)は、本発明の他の例のガス濃度測定装置41bを説明するための図である。
【0029】
図8(a)、(b)を参照し、符号40a、40bは、液化ガスタンク46a、46bを使用した車両の燃料供給システムを示している。
この燃料供給システム40a、40bでは、液化ガスタンク46a、46bに蓄液された液化ガスを気化器47a、47bによって気化させ、得られた燃料ガスを供給管20a、20bの内部を流してインジェクター48a、48bに導入し、インジェクター48a、48bからエンジン49a、49bに供給し、吸入された大気と共に燃焼させてエンジン49a、49bを動作させて車両を走行させる。
【0030】
液化ガスタンク46a、46bに蓄液された液化ガスは、エンジン49a、49bで消費されなくても自然蒸発して消耗する。
液化ガスに含有される化合物のうち、蒸気圧が大きい化合物が蒸発しやすいことから、自然蒸発によって発生した燃料ガスが安全のために放出弁から大気に放出されると、時間の経過に従って液化ガスの成分割合が変化してしまう。
【0031】
そのため、液化ガスタンク46a、46bから得られる燃料ガス中の測定対象ガスのガス濃度を定期的に測定し、蒸発による劣化の程度を把握する必要がある。
本発明の一例のガス濃度測定装置41aの内部は図1に示されており、他の例のガス濃度測定装置41bの内部は図2に示されている。
【0032】
図1図2とを参照し、ガス濃度測定装置41a、41bは、振動室44a、44bと、導入管7a、7bと、振動装置43a、43bと、光量測定装置17a、17bとをそれぞれ有している。
供給管20a、20bの内部には燃料ガスが流れており、従って、供給管20a、20bの内部には燃料ガス雰囲気21a、21bが形成されている。燃料ガスには、濃度測定を行うべき可燃性ガスが含有されており、この可燃性ガスがガス濃度測定装置41a、41bが濃度測定をする測定対象ガスである。
【0033】
供給管20a、20bには主バルブ13a、13bが設けられており、定期検査時には、主バルブ13a、13bに導入管7a、7bの一端が接続された後、主バルブ13a、13bが切り替えられ、供給管20a、20bの内部の燃料ガス雰囲気21a、21bから導入管7a、7bの内部に燃料ガスが導入される。
振動室44a、44bは導入管7a、7bの他端に接続されている。
【0034】
振動室44a、44bは、振動容器4a、4bと、振動板(ダイアフラムとも言う)3a、3bとを有しており、振動板3a、3bは、振動容器4a、4bの底面27a、27bと対面する姿勢で、底面27a、27bから離間して配置されている。そして振動板3a、3bはその周囲を振動容器4a、4bの側壁に密着して固定されている。
【0035】
振動板3a、3bは振動容器4a、4bの開口を閉塞させており、振動板3a、3bと振動容器4a、4bの底面27a、27bとの間には、閉塞した振動空間8a、8bが形成されている。
振動容器4a、4bの底面27a、27b又は壁面には貫通孔12a、12bが設けられており、燃料ガス雰囲気21a、21bから導入管7a、7bに導入された燃料ガスは、貫通孔12a、12bを通って振動空間8a、8bに導入される。
【0036】
このように、導入管7a、7bの内部によって、燃料ガス雰囲気21a、21bと振動空間8a、8bとの間で燃料ガスを移動させる主流通路9a、9bが形成されており、振動空間8a、8bが燃料ガスによって充満される。
振動装置43a、43bは、駆動装置1a、1bと、伝達装置2a、2bとを有している。
【0037】
駆動装置1a、1bは振動板3a、3bを振動させる動力源であり、伝達装置2a、2bは、駆動装置1a、1bが生成した力を振動板3a、3bに伝達する。
振動板3a、3bの表面は振動空間8a、8bに露出され、振動空間8a、8bに充満した燃料ガスと接触しており、後述するように、振動板3a、3bが駆動装置1a、1bで生成され、伝達装置2a、2bによって伝達された力で振動板3a、3bの表面とは垂直な方向に振動されると、振動空間8a、8b内に位置する燃料ガスの圧力が振動する。
【0038】
この振動について説明すると、図1のガス濃度測定装置41aでは、先ず、振動板3aの両面のうち、振動空間8aに露出する表面の反対側の面である裏面は大気に露出されている。
この例では、駆動装置1aはモータ34を有しており、伝達装置2aはシャフト(棒)25を有しており、モータ34とシャフト25は振動板3aの裏面側に配置されている。
【0039】
シャフト25の根本部分はモータ34に取り付けられ、モータ34の回転運動がシャフト25の往復運動に変換されており、その結果、モータ34の動作によって、シャフト25はシャフト25が伸びる方向と平行な方向に往復運動する。
シャフト25の先端部分は振動板3aに固定されている。ここでは振動板3aは円形形状であり、伝達装置2aの先端はその中心位置に取り付けられている。
【0040】
振動板3aのうち、伝達装置2aから力が伝達される箇所を受力箇所30aと呼ぶと、受力箇所30aは振動板3aのうちのシャフト25の先端が取り付けられた場所であり、駆動装置1aの動作開始によって、振動板3aの周囲は振動容器4a、4bの側壁に固定された状態で、受力箇所30aは交互に繰り返し押圧と牽引がされる。
【0041】
図1図2のガス濃度測定装置41a、41bでは、振動板3a、3bは屈伸可能な材料で構成されており、振動板3a、3bが平坦な状態を中央状態と呼ぶと、受力箇所30a、30bが交互に繰り返し押圧と牽引がされたときは、受力箇所30a、30bは、中央状態のときの受力箇所30a、30bの位置を中心にして、底面27a、27bに接近する方向と底面27a、27bから遠ざかる方向に交互に移動する(符号30b、27bについては後述する)。
【0042】
受力箇所30a、30bが底面27a、27bに接近する方向に移動した結果、振動板3a、3bは振動空間8a、8b側が凸に膨らみ、反対側が凹に窪んで振動空間8a、8bの容積が減少する。
それとは反対に、受力箇所30a、30bが底面27a、27bから遠ざかる方向に移動した結果、振動板3a、3bは振動空間8a、8b側が凹に窪み、反対側が凸に膨らんで振動空間8a、8bの容積が増大する。
【0043】
振動装置43a、43bは、受力箇所30a、30bと振動容器4a、4bの底面27a、27bとの間の距離が、中央状態のときの距離から等距離増減するように受力箇所30a、30bを往復移動させて振動板3a、3bを振動させており、その結果、振動空間8a、8bの容積は等量の増減を繰り返す。
【0044】
振動装置43a、43bは主制御装置18a、18bに接続されており、駆動装置1a、1bは、主制御装置18a、18bから入力される所定の駆動周波数で振動板3a、3bを振動させる。従って、振動空間8a、8bの容積は、駆動周波数で等量の増減を繰り返す。
【0045】
主流通路9a、9bの一部又は全部の流動コンダクタンスが小さい場合は、振動空間8a、8bの容積が変動しても、振動空間8a、8bに流出入できる燃料ガスの量が制限され、その結果、振動空間8a、8bに駆動周波数の圧力振動が発生する。
【0046】
図2のガス濃度測定装置41bでは、駆動装置1bは電源装置35を有しており、伝達装置2bは受力磁石26と、第一給力磁石22と、第二給力磁石24とを有している。
振動板3bの裏面側には裏面側容器5が配置されている。振動板3bは、裏面側容器5の開口を閉塞させるように、周囲を裏面側容器5の側壁に密着して固定されており、振動板3bと裏面側容器5の底面28との間には、閉塞した裏面側空間38が形成されている。
【0047】
供給管20bには、副バルブ33が設けられており、定期検査時には、副配管37の一端が副バルブ33に接続される。副配管37の他端は、裏面側容器5の底面又は側壁に設けられた副貫通孔32に接続され、副配管37に導入された燃料ガスは、副貫通孔32を通って裏面側空間38に供給され、裏面側空間38が燃料ガスによって充満される。
【0048】
第一給力磁石22は、振動空間8bの外部であって、振動容器4bの底板と対面する位置に配置されており、第二給力磁石24は、裏面側空間38の外部であって、裏面側容器5の底板と対面する位置に配置されている。
受力磁石26は、振動板3bの中央位置に設けられており、第一給力磁石22と第二給力磁石24との間に位置し、第一給力磁石22の中心と受力磁石26の中心と第二給力磁石24の中心とが一直線に並ぶように配置されている。
【0049】
ここでは受力磁石26は永久磁石であり、第一給力磁石22と第二給力磁石24とは電磁石である。第一給力磁石22と第二給力磁石24とは、電源装置35から電流が供給されると磁石となり、磁力を発生させる。
【0050】
第一給力磁石22は、磁力を発生させる際には、N極とS極のうち、一方の磁極が振動板3bに向く位置に形成され、他方の磁極が振動板3bとは反対側に向く位置に形成されるように配置されている。
また、第二給力磁石24は、第二給力磁石24が磁力を発生させる際には、N極とS極のうち、一方の磁極が振動板3bに向く位置に形成され、他方の磁極が振動板3bとは反対側に向く位置に形成されるように配置されている。
【0051】
電源装置35は、第一給力磁石22の振動板3bに向く位置に形成される磁極と、第二給力磁石24の振動板3bに向く位置に形成される磁極とは、同じ極性の磁極が発生する向きで、第一給力磁石22と第二給力磁石24とに電流を流している。
また、電源装置35は、振動板3bに向く位置に形成される磁極の極性が反転するように、第一給力磁石22に流れる電流の向きと第二給力磁石24に流れる電流の向きとを一緒に反転させている。
【0052】
受力磁石26は、N極とS極のうち、一方の磁極を振動空間8bに向け、他方の磁極を裏面側空間38に向けた状態で振動板3bに固定されており、受力磁石26が第一給力磁石22から吸引されるときは第二給力磁石24から反発され、第一給力磁石22から反発されるときは第二給力磁石24から吸引されるようになっている。
【0053】
振動板3bのうち、受力磁石26が設けられた箇所を受力箇所30bと呼ぶと、受力箇所30bは、第一給力磁石22と第二給力磁石24との吸引と反発によって受力箇所30bは、中央状態のときの受力箇所30bの位置を中心にして、振動容器4bの底面27bに接近する方向と底面27bから遠ざかる方向に交互に移動し、振動板3bは表面に垂直な方向に振動し、振動空間8bの容積が振動する。
【0054】
受力箇所30bと振動容器4bの底面27bとの間の距離は、振動板3bが中央状態のときの距離から等距離増減するように、伝達装置2bは振動装置43bによって往復移動されており、その結果、振動空間8bの容積は等量の増減を繰り返す。
【0055】
振動装置43bは主制御装置18bに接続されており、駆動装置1bは、主制御装置18bから入力される駆動周波数で振動板3bを振動させている。
燃料ガス雰囲気21bと振動空間8bとの間で燃料ガスを移動させる主流通路9bの一部又は全部の流動コンダクタンスが小さい場合は、振動空間8bの容積が変動しても、振動空間8bに流出入できる燃料ガスの量が制限され、その結果、振動空間8bに駆動周波数の圧力振動が発生する。
【0056】
具体的には、第一給力磁石22と第二給力磁石24とに40Hzの周波数の正弦波電圧を同極性で印加し、振動板3bを40Hzの周波数で振動させ、40Hzの周波数の圧力振動を発生させている。
【0057】
以上説明したように、ガス濃度測定装置41a、41bでは、振動空間8a、8bに駆動周波数で振動する圧力振動を発生させているが、図1のガス濃度測定装置41aでは、振動板3aの表面と裏面との間に圧力差が存在する場合があり、振動空間8aの圧力が大気圧と同じ大きさの場合は、振動板3aの振動中心は振動板3aが平坦な状態であるが、振動空間8aの圧力が大気圧よりも無視できないほど高い場合は、振動板3aが大気側(裏面側)に膨らんだ状態になる。
【0058】
図2のガス濃度測定装置41bでは、副配管37の内部によって、裏面側空間38と燃料ガス雰囲気21bとが接続される裏面側流通路29が形成されており、振動空間8bの平均圧力は、裏面側空間38の平均圧力と同じ大きさになる。従って、振動板3bは、中央状態を中心に振動する。
【0059】
次に、図1図2のガス濃度測定装置41a、41bの導入管7a、7bには通気抵抗体6a、6bが設けられており、燃料ガス雰囲気21a、21bと振動空間8a、8bとの間を移動する燃料ガスは、通気抵抗体6a、6bを通過するようにされている。
【0060】
通気抵抗体6a、6bは細孔31a、31bを有しており、主流通路9a、9bのうち、通気抵抗体6a、6bが設けられた部分では、主流通路9a、9bの他の部分よりも流動コンダクタンスが小さくされている。つまり、燃料ガスは、主流通路9a、9bのうち、通気抵抗体6a、6bが設けられた場所が流れにくくなっている。
【0061】
燃料ガス雰囲気21a、21bと振動空間8a、8bとは、主流通路9a、9bによって接続されているため、燃料ガス雰囲気21a、21bの圧力が一定値を維持している間は、振動空間8a、8bの平均圧力は燃料ガス雰囲気21a、21bの圧力と等しい値になるものの、燃料ガスが通気抵抗体6a、6bを通って振動空間8a、8bに流出入しにくいことから、振動空間8a、8bの容積の大きさが振動したときの振動空間8a、8bの圧力変動量が大きくなる。
【0062】
副配管37にも通気抵抗体を設け、裏面側空間38と燃料ガス雰囲気21bとの間の流動コンダクタンスの大きさを、振動空間8bと燃料ガス雰囲気21bとの間の流動コンダクタンスの大きさと等しくするようにしてもよい。
【0063】
主流通路9a、9bのうち、振動空間8a、8bと通気抵抗体6a、6bとの間の部分も振動空間8a、8bの圧力振動と一緒に振動しており、導入管7a、7bのうち、振動空間8a、8bと通気抵抗体6a、6bとの間の部分には、入口側窓36a、36bと出口側窓39a、39bとが設けられている。
光量測定装置17a、17bは、送光器11a、11bと、受光器15a、15bと、光学フィルター14a、14bとを有している。
【0064】
導入管7a、7bの外部の場所のうち、入口側窓36a、36bと対面する場所に送光器11a、11bが配置されており、出口側窓39a、39bと対面する場所に受光器15a、15bが配置されている。
【0065】
特定の化合物のガスが吸収する光の波長を吸収波長と呼ぶと、測定対象ガスの吸収波長は分かっており、送光器11a、11bは、吸収波長の光を含む測定光を入口側窓36a、36bに向けて射出する。ここでは、送光器11a、11bには白熱電球が使用されている。
入口側窓36a、36bと出口側窓39a、39bとは、互いに対面する位置に配置されており、入口側窓36a、36bと出口側窓39a、39bとの間には、導入管7a、7bの内部に充満する燃料ガスが位置している。
【0066】
光学フィルター14a、14bは、送光器11a、11bが射出して受光器15a、15bで受光される測定光が通過する位置に配置されており、測定光が光学フィルター14a、14bを通過する際に吸収波長以外の波長の光は減衰される。
ここでは、光学フィルター14a、14bには、透過中心波長3.4μm、透過波長幅0.2μmの赤外線バンドパスフィルターが使用されており、光学フィルター14a、14bは受光器15a、15bと出口側窓39a、39bとの間に配置されている。送光器11a、11bが射出した測定光は入口側窓36a、36bを通過して、導入管7a、7bの内部に入射し、入口側窓36a、36bと出口側窓39a、39bとの間に位置する燃料ガス中を通過した後、出口側窓39a、39bと光学フィルター14a、14bを通過し、受光器15a、15bで受光される。受光器15a、15bには、非冷却・量子型PbSe受光素子が使用されている。
【0067】
受光器15a、15bは、受光した光の光量を示す光量信号を生成して電気信号として主制御装置18a、18bに出力する。受光器15a、15bが出力する光量信号は、測定対象ガスの吸収波長の光の光量である。
【0068】
ここでは、受光器15a、15bから出力された光量信号は増幅器19a、19bを介して主制御装置18a、18bに入力されており、増幅器19a、19bは、光量信号に含まれる信号成分のうち、駆動周波数で振動する信号成分(AC信号成分)のみを検出して増幅し、主制御装置18a、18bに出力する。その結果、駆動周波数に同期した測定対象ガスの濃度に依存する信号だけが主制御装置18a、18bに出力され、ゼロドリフトフリーによる測定精度の向上が計られる。
【0069】
測定光が入射する燃料ガスの圧力が、駆動周波数で振動増減することにより、測定対象ガスの密度(密度=質量/体積)も同じ割合で振動増減し、吸収波長における受光信号に駆動周波数の振動増減(AC信号成分)を生じる。このAC信号成分の振幅は、燃料ガス雰囲気21a、21bに含まれる測定対象ガス濃度に依存して増減するので、このAC信号成分の振幅の値から測定対象ガス濃度を測定できる。AC信号成分の振幅は、直接検出して用いてもよいが、整流、平滑処理を付加して、DC信号に変換してから用いてもよい。さらに、駆動周波数付近の周波数成分を選択的に増幅するフィルター回路またはソフトウェアフィルターにより処理した後に、AC信号成分の振幅または、これと等価のDC信号を検出して用いることにより、測定精度が向上する。
【0070】
ガス濃度測定装置41a、41bを使用する前に、予め、既知濃度の測定対象ガス(標準ガス)を用いて検量線を作成する。この検量線は、測定対象ガス濃度に対する出力信号の関係を決定するもので、測定対象ガス濃度と出力信号の直線性と、測定対象ガス濃度に対する出力信号の大きさに関する情報を含む。具体的には、直線性を規定する近似関数とガス感度の指標となる感度係数であり、これらの情報は、パラメーター数値として増幅器19a、19bに記憶され、測定対象ガス濃度と出力信号の関係を相互に算出可能な状態を保つ。測定においては、得られた出力信号から主制御装置18a、18bが刻々の測定対象ガス濃度を算出し、表示装置23a、23bに表示する。また、ガス濃度測定装置41a、41bの再調整を行うときは、増幅器19a、19bに記憶されたパラメーター数値のうち、通常は、感度係数のみを再計算して更新記憶する。長期間の使用において、送光器11a、11bまたは受光器15a、15bの特性が変化した場合でも、再調整を行うことにより測定精度を確保できる。尚、測定対象ガスの濃度としては、体積比濃度のほか、質量濃度(ガス密度)も一般的に用いられる。
【0071】
尚、ガス濃度としては、燃料ガス中に含まれる全ガス成分の体積に対する測定対象ガスの体積の割合である体積分率(例:vol%または単に%)を用いる場合が多いが、ガス濃度測定装置の用途または測定目的に応じて、質量濃度(例:mg/m3)または物質量濃度(例:mol/m3)などを用いてもよい。
【0072】
なお、振動空間8a、8bに位置する燃料ガスと、主流通路9a、9bに位置する燃料ガスとは、振動板3a、3bの振動によって、燃料ガス雰囲気21a、21bに位置する燃料ガスと少量ずつ入れ替わるから、燃料ガス雰囲気21a、21bのガス濃度の変化は、測定結果に反映される。
【0073】
この例では、測定光は主流通路9a、9b中の燃料ガスを透過しているが、本発明は測定光は、透過距離が分かっていて、圧力が駆動周波数で振動している燃料ガスを透過して受光器15a、15bで受光されればよい。
また、圧力振動についても振動板3a、3bによる圧力変動に限定されるものではなく、例えばピストンを用いて測定ガスを圧力振動させてもよい。
【0074】
上記通気抵抗体6a、6bは導入管7a、7bに設けたが、本発明はそれに限定されるものでは無く、より細くして流動コンダクタンスが通気抵抗体6a、6bと同程度の値の導入管を用いても良い。
【0075】
また、図1図2のガス濃度測定装置41a、41bは、圧力センサ16a、16bを有しており、圧力センサ16a、16bが検出した圧力は主制御装置18a、18bに入力されており、主制御装置18a、18bは、測定光を透過させる燃料ガスの圧力振動の振幅の大きさを測定し、主制御装置18a、18bに記憶された目標振幅値と比較し、測定光を透過させる燃料ガスの圧力が目標振幅値で振動するように駆動装置1a、1bを制御する。
【0076】
なお、図1のガス濃度測定装置41aでは、振動板3aの表面側に燃料ガスが接触し、裏面側に大気が接触するから、燃料ガスが大気圧に近い圧力の場合の測定に適している。
具体的には、燃料ガスの圧力が大気圧±10%程度に収まっているときは、振動板3aの裏面が大気圧に暴露された状態でも、振動板3aを比較的容易に振動させることができるため、大気雰囲気中に設置した振動装置に直結したシャフト等で振動板3aを駆動すことができる。
【0077】
図2のガス濃度測定装置41bでは、振動板3bの表面側と裏面側との両方に燃料ガスが接触しており、従って、燃料ガスが大気圧よりも大きく異なる場合の測定に適している。具体的には、燃料ガスを扱うプラント等の配管内のガス濃度を測定し続けるガス濃度測定装置に適している。
【0078】
ガス濃度として、燃料ガス中に含まれる測定対象ガスの濃度を体積分率(例:vol%または単に%)で求める場合、体積分率に変化がなくても、測定光が照射される燃料ガスの全圧力が変化すると、測定対象ガスの質量濃度(例:mg/m3)が変化するため、受光器15a、15bから出力される電気信号の駆動周波数で振動する信号成分も変化し、ガス濃度の値が変化する。
【0079】
圧力センサ16a、16bから得られる圧力信号は、測定光を透過させる燃料ガスの駆動周波数における圧力振動制御のほか、燃料ガスの全圧力の値も与える。ただし、全圧力の値は、圧力振動を平滑して得られる平均圧力である。主制御装置18a、18bは、燃料ガスの全圧力の値を用いて、体積分率ガス濃度の変化を補償する。具体的には、測定対象ガスの成分を、既知の体積分率で含む標準ガスを用い、標準ガスの全圧力とガス濃度測定装置41a、41bが与えるガス濃度の値との関係を、予め求めて、パラメーター数値として主制御装置18a、18bに記憶する。ガス濃度測定においては、主制御装置18a、18bが、記憶されたパラメーター数値から、刻々の全圧力の値に対するガス濃度の補償量を計算し、体積分率ガス濃度として正しい値に補償する。
【0080】
上記例では通気抵抗体6a、6bは細孔31a、31bを有していたが、細孔31a、31bに替えて多孔質充填物を配置してもよい。
【0081】
<実験結果>
本発明のガス濃度測定装置41a、41bにおいて、測定光が測定ガス中を透過する距離(有効吸収長)が1mmになるように入口側窓36a、36bと出口側窓39a、39bとの間の距離を設定し、空気(ゼロガス:0vol%)及び空気とブタンガスの混合ガス4種(1vol%、2vol%、4vol%、5vol%)を用い、振動板3a、3bを40Hzで振動させて、圧力振動を発生させ、ガス濃度を検出した。
【0082】
図5は、駆動周波数40Hzで空気(ゼロガス)を測定したときの圧力信号の一例を示すグラフである。空気とブタンガスの混合ガスに関しても、濃度5vol%までは、空気と同様の圧力信号が得られる。ここでは、正圧用の圧力センサを使用したため、測定ガスの絶対圧を、およそ20kPaに保ち、正の圧力バイアスを加えた状態で測定した。図5の縦軸はゲージ圧を示し、正の圧力バイアスを加えた測定対象ガスの絶対圧(およそ20kPa)をゼロとして、±10kPaの範囲のゲージ圧で圧力振動が観測された。
図6は、0vol%、1vol%、2vol%、4vol%、5vol%のブタンガス(空気と混合)を測定したときに、受光器15a、15bから得られた駆動周波数のAC信号成分を、駆動周波数付近の周波数を選択的に増幅するフィルター回路で処理し、正弦波に近似した波形を得た後に、振動の位相を揃えて、各ガス濃度の振幅を比較したグラフである。縦軸は、出力信号を相対出力として示す。
図6の出力波形の振幅が、ブタンガスの濃度により変化し、ガス濃度が0(ゼロガス)に関しては無信号状態(AC信号成分=ゼロ)となることを示している。
図7は、図6に示す測定結果から、各ガス濃度に対する出力信号の振幅を、相対出力として示している。
【0083】
±10kPa、40Hzの圧力振動によれば、主流通路9a、9b内のガス置換は、ほぼ瞬時に完了するので、測定結果の安定化に必要な平均演算処理を行うことにしても、90%応答時間として1秒内の高速応答が可能となる。
なお、本発明によって求めるガス濃度は、燃料ガス中の測定対象化合物の気体に限定されるものではなく、一般的なサンプルガス中の測定対象化合物の気体について求めることができる。
【符号の説明】
【0084】
1a、1b……駆動装置
2a、2b……伝達装置
3a、3b……振動板(ダイアフラム)
4a、4b……振動容器
6a、6b……通気抵抗体
7a、7b……導入管
8a、8b……振動空間
9a、9b……主流通路
16a、16b……圧力センサ
17a、17b……光量測定装置
20a、20b……供給管
21a、21b……燃料ガス雰囲気
22……第一給力磁石
24……第二給力磁石
25……シャフト
26……受力磁石
29……裏面側流通路
38……裏面側空間
41a、41b……ガス濃度測定装置
43a、43b……振動装置
44a、44b……振動室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8