(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/06 20060101AFI20240416BHJP
A61G 5/00 20060101ALI20240416BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20240416BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240416BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20240416BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61G5/06
A61G5/00 701
B62B5/02 Z
B62B3/00 A
B62B3/00 D
B62B3/02 B
B66F9/06 A
(21)【出願番号】P 2020092706
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 幸三
(72)【発明者】
【氏名】大塚 悠生
(72)【発明者】
【氏名】岡本 航介
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-150177(JP,A)
【文献】米国特許第05405236(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/00-5/14
B62B 3/00-5/08
B66F 7/00-9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し車を昇降させる昇降装置であって、
第1の支持部材、第2の支持部材、第3の支持部材、第4の支持部材および駆動部材を含む昇降機構と、
前記昇降機構の前記第2の支持部材を前記手押し車に取り付ける取付機構とを備え、
前記第1の支持部材は、前後方向に延びるように設けられ、
前記第2の支持部材は、前後方向に延び、前記第1の支持部材よりも上方に設けられ、
前記第3の支持部材は、前記第1の支持部材に対して第1の軸の周りで回転可能で、かつ前記第2の支持部材に対して前記第1の軸よりも上方の第2の軸の周りで回転可能に設けられ、
前記第4の支持部材は、前記第1の支持部材に対して前記第1の軸よりも後方の第3の軸の周りで回転可能で、かつ前記第2の支持部材に対して前記第2の軸よりも後方でかつ前記第3の軸よりも上方の第4の軸の周りで回転可能に設けられ、
前記駆動部材は、前記第1の支持部材に対する前記第4の支持部材の角度を変化させることにより前記第2の支持部材を前記第1の支持部材に対して平行な状態で昇降させるために操作可能に構成され、
前記昇降装置は、前記第3の支持部材に対してスライド可能に設けられたスライド部材をさらに含み、
前記第2の軸は前記スライド部材に設けられ、
前記第1の支持部材に対する前記第4の支持部材の角度が小さくなることにより前記第2の支持部材が前記第3の支持部材に近づいた場合に、前記スライド部材が前記第3の支持部材に対して前方にスライドすることにより前記第2の支持部材が前記第3の支持部材にさらに接近するように前記昇降機構が折り畳み可能である
、昇降装置。
【請求項2】
手押し車を昇降させる昇降装置であって、
第1の支持部材、第2の支持部材、第3の支持部材、第4の支持部材および駆動部材を含む昇降機構と、
前記昇降機構の前記第2の支持部材を前記手押し車に取り付ける取付機構とを備え、
前記第1の支持部材は、前後方向に延びるように設けられ、
前記第2の支持部材は、前後方向に延び、前記第1の支持部材よりも上方に設けられ、
前記第3の支持部材は、前記第1の支持部材に対して第1の軸の周りで回転可能で、かつ前記第2の支持部材に対して前記第1の軸よりも上方の第2の軸の周りで回転可能に設けられ、
前記第4の支持部材は、前記第1の支持部材に対して前記第1の軸よりも後方の第3の軸の周りで回転可能で、かつ前記第2の支持部材に対して前記第2の軸よりも後方でかつ前記第3の軸よりも上方の第4の軸の周りで回転可能に設けられ、
前記駆動部材は、前記第1の支持部材に対する前記第4の支持部材の角度を変化させることにより前記第2の支持部材を前記第1の支持部材に対して平行な状態で昇降させるために操作可能に構成され、
前記昇降機構は、前記駆動部材の後端部に第5の軸の周りで回転可能に設けられた操作レバーをさらに含み、
前記操作レバーは、前記第5の軸の後方に延びる状態で前記駆動部材に対する下方への回転角度が制限されるように設けられ、
前記操作レバーが前記第5の軸の後方に延びる状態で前記操作レバーに下方への荷重が加えられた場合に、梃子の原理で前記第1の支持部材に対する前記第4の支持部材の角度が大きくなることにより前記第2の支持部材が上昇し、
前記操作レバーが前記第5の軸の前方に折り畳まれた状態で前記昇降機構が前記手押し車に収納可能である
、昇降装置。
【請求項3】
前記駆動部材は、前記第4の支持部材から後方に延びるように前記第4の支持部材に連結され、
前記駆動部材の後端部に下方への荷重が加えられた場合に、梃子の原理で前記第1の支持部材に対する前記第4の支持部材の角度が大きくなることにより前記第2の支持部材が上昇する、請求項1
または2記載の昇降装置。
【請求項4】
前記取付機構は、前記昇降機構を前記手押し車に取り外し可能に取り付けるように構成される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し車を昇降させる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子が段差を乗り越える際に利用される種々の昇降装置が提案されている。特許文献1には、車椅子のフレームに着脱自在に取り付けられる車椅子用スライドリフターが記載されている。特許文献1の車椅子用スライドリフターは、一対のロッドからなるリンク機構を有する。一対のロッドは、X形状に互いに交差し、交差部が中間シャフトにより回動自在に支持されている。一対のロッドの下端にはベースフレームが取り付けられる。一対のロッドの上端には上部スライドフレームおよび下部スライドフレームが互いに摺動可能に取り付けられる。上部スライドフレームは、車椅子のフレームに着脱自在に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車椅子用スライドリフターにおいては、車椅子の上昇時に、一対のロッドの上端の前後方向の間隔および一対のロッドの下端の前後方向の間隔が短くなる。この場合、下部スライドフレームを支持する支持点の間隔およびベースフレームにより支持される支持点の間隔が短くなる。それにより、車椅子のフレームを支持する支持領域の長さが短くなる。その結果、車椅子の上昇時に車椅子の安定性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、手押し車を安定した状態で昇降させることが可能な昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る、昇降装置においては、手押し車を昇降させる昇降装置であって、第1の支持部材、第2の支持部材、第3の支持部材、第4の支持部材および駆動部材を含む昇降機構と、昇降機構の第2の支持部材を手押し車に取り付ける取付機構とを備え、第1の支持部材は、前後方向に延びるように設けられ、第2の支持部材は、前後方向に延び、第1の支持部材よりも上方に設けられ、第3の支持部材は、第1の支持部材に対して第1の軸の周りで回転可能で、かつ第2の支持部材に対して第1の軸よりも上方の第2の軸の周りで回転可能に設けられ、第4の支持部材は、第1の支持部材に対して第1の軸よりも後方の第3の軸の周りで回転可能で、かつ第2の支持部材に対して第2の軸よりも後方でかつ第3の軸よりも上方の第4の軸の周りで回転可能に設けられ、駆動部材は、第1の支持部材に対する第4の支持部材の角度を変化させることにより第2の支持部材を第1の支持部材に対して平行な状態で昇降させるために操作可能に構成される。
【0007】
その昇降装置においては、駆動部材が操作されると、第1の支持部材に対する第4の支持部材の角度が変化する。このとき、第1の支持部材に対する第3の支持部材の角度も変化する。それにより、第2の支持部材が第1の支持部材に対して平行な状態で昇降する。その結果、第2の支持部材に取り付けられた手押し車が昇降する。このような構成によれば、手押し車の昇降時に手押し車を支持する第2の支持部材による支持領域の長さが変化しない。したがって、手押し車を安定した状態で昇降させることが可能となる。
【0008】
(2)駆動部材は、第4の支持部材から後方に延びるように第4の支持部材に連結され、駆動部材の後端部に下方への荷重が加えられた場合に、梃子の原理で第1の支持部材に対する第4の支持部材の角度が大きくなることにより第2の支持部材が上昇してもよい。
【0009】
この場合、使用者は、梃子の原理により第4の支持部材の角度を変化させることができる。したがって、使用者は、小さな力で手押し車を上昇させることができる。
【0010】
(3)昇降機構は、第3の支持部材に対してスライド可能に設けられたスライド部材をさらに含み、第2の軸はスライド部材に設けられ、第1の支持部材に対する第4の支持部材の角度が小さくなることにより第2の支持部材が第3の支持部材に近づいた場合に、スライド部材が第3の支持部材に対して前方にスライドすることにより第2の支持部材が第3の支持部材にさらに接近するように昇降機構が折り畳み可能であってもよい。
【0011】
この場合、使用者が昇降機構を折り畳んだ場合に、第3の支持部材に設けられたスライド部材が前方にスライドすることにより、第1の軸と第2の軸との間の距離が延長する。それにより、第2の支持部材を第3の支持部材にさらに接近させ、昇降機構を上下方向にさらにコンパクトにすることができる。したがって、手押し車を大型化することなく、昇降装置を手押し車に取り付けることができる。
【0012】
(4)昇降機構は、駆動部材の後端部に第5の軸の周りで回転可能に設けられた操作レバーをさらに含み、操作レバーは、第5の軸の後方に延びる状態で駆動部材に対する下方への回転角度が制限されるように設けられ、操作レバーが第5の軸の後方に延びる状態で操作レバーに下方への荷重が加えられた場合に、梃子の原理で第1の支持部材に対する第4の支持部材の角度が大きくなることにより第2の支持部材が上昇し、操作レバーが第5の軸の前方に折り畳まれた状態で昇降機構が手押し車に収納可能であってもよい。
【0013】
この場合、使用者は、操作レバーを後方に倒した状態で下方への荷重を加えることにより小さな力で第2の支持部材を手押し車とともに上昇させることができる。また、操作レバーを前方に倒すことにより昇降機構をコンパクトにすることができる。それにより、手押し車を大型化することなく、昇降装置を手押し車に収納することができる。
【0014】
(5)取付機構は、昇降機構を手押し車に取り外し可能に取り付けるように構成されてもよい。
【0015】
上記の構成により、手押し車が折り畳み可能な構造を有する場合に、昇降装置を取り外すことにより、手押し車をコンパクトに折り畳むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手押し車を安定した状態で昇降させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態に係る昇降装置の模式的側面図である。
【
図3】車椅子および
図1の昇降装置の模式的側面図である。
【
図4】
図3の車椅子における取付機構の模式的平面図である。
【
図5】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図6】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図7】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図8】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図9】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図10】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図11】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図12】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【
図13】
図1の昇降装置の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る昇降装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(1)昇降装置の構成
図1は、一実施の形態に係る昇降装置の模式的側面図である。
図2は、
図1の昇降装置の模式的平面図である。以下、昇降装置が前進および後退する方向を前後方向と呼ぶ。
図1および
図2に示すように、昇降装置1は、昇降機構LFおよび取付機構ATを備える。昇降機構LFは、一対の第1の支持部材10、一対の第2の支持部材20、一対の第3の支持部材30、単一の第4の支持部材40および第1~第4の軸A1~A4を含む。本実施の形態では、各第1の支持部材10、各第2の支持部材20、各第3の支持部材30および第4の支持部材40は、棒状部材である。
【0020】
一対の第1の支持部材10は、互いに平行かつ前後方向に延びる。一対の第2の支持部材20は、互いに平行かつ前後方向に延びる。
図1に示すように、各第2の支持部材20は、各第1の支持部材10よりも上方に配置される。各第3の支持部材30の一端部(以下、上端部と呼ぶ。)近傍には、スライド部材31が設けられる。スライド部材31は、ガイド部材32により長手方向に沿ってスライド可能に第3の支持部材30に取り付けられる。
図2に示すように、各第3の支持部材30の他端部(以下、下端部と呼ぶ。)の両側面には、各一対の取付部材33,34が設けられる。各一対の取付部材33,34は、ボルトにより各第3の支持部材30に固定されている。
【0021】
図1に示すように、第2の軸A2は、第1の軸A1よりも上方に配置される。第3の軸A3は、前後方向において第1の軸A1よりも後方に配置される。第4の軸A4は、前後方向において第2の軸A2よりも後方に配置され、かつ第3の軸A3よりも上方に配置される。
図2に示すように、第1~第4の軸A1~A4は、前後方向に垂直な左右方向において互いに平行に延びる。
【0022】
図1に示すように、各第3の支持部材30の下端部は、各第1の支持部材10の前端部に対して第1の軸A1の周りで回転可能に設けられる。各スライド部材31の上端部は、各第2の支持部材20の前端部に対して第2の軸A2の周りで回転可能に設けられる。第4の支持部材40の一端部(以下、下端部と呼ぶ。)は、第1の支持部材10の後端部に対して第3の軸A3の周りで回転可能に設けられる。第4の支持部材40の他端部(以下、上端部と呼ぶ。)は、各第2の支持部材20の後端部に対して第4の軸A4の周りで回転可能に設けられる。
【0023】
それにより、
図1の側面視で、第1~第4の軸A1~A4が平行四辺形の頂点となるように第1~第4の支持部材10~40およびスライド部材31が構成される。この場合、一対の第1の支持部材10および一対の第2の支持部材20は水平状態を保つ。
【0024】
図2に示すように、一対の第2の支持部材20の間隔は、一対の第1の支持部材10の間隔および一対の第3の支持部材30の間隔よりも小さい。それにより、一対の第2の支持部材20は、平面視で、一対の第1の支持部材10の間および一対の第3の支持部材30の間に位置する。また、第4の支持部材40は、平面視で一対の第1の支持部材10の間に位置する。
【0025】
各第1の支持部材10の前端部は、第1の軸A1に対して回転可能に取り付けられる。各第3の支持部材30の下端部に固定された各一対の取付部材33,34は、第1の支持部材10の両側面を挟むように第1の軸A1に対して回転可能に取り付けられる。各第1の支持部材10の後端部は、第3の軸A3に対して回転可能に取り付けられる。第4の支持部材40の下端部は、第3の軸A3に対して回転可能に取り付けられる。
【0026】
各第2の支持部材20の前端部は、第2の軸A2に対して回転可能に取り付けられる。スライド部材31の上端部は、第2の軸A2に対して回転可能に取り付けられる。各第2の支持部材20の後端部は、第4の軸A4に対して回転可能に取り付けられる。第4の支持部材40の上端部は、第4の軸A4に対して回転可能に取り付けられる。また、第1の軸A1の両端には、それぞれ車輪W1が回転可能に設けられ、第3の軸A3の両端には、それぞれ車輪W2が回転可能に設けられる。
【0027】
このような構成により、
図1の側面視で、第3の軸A3の周りで第4の支持部材40の回転に連動して、第1~第4の軸A1~A4を頂点とする平行四辺形が変形する。それにより、一対の第1の支持部材10と一対の第2の支持部材20とが水平状態を保持しつつ一対の第2の支持部材20が一対の第1の支持部材10に対して上下動することができる。また、一対の車輪W1およびW2が接地することにより、昇降装置1を前進および後退させることが可能になる。
【0028】
昇降機構LFは、駆動部材50、補助支持部材60、操作レバー70、および第5~第7の軸A5~A7をさらに含む。駆動部材50、補助支持部材60および操作レバー70は、棒状部材である。
【0029】
図1に示すように、駆動部材50の一端部は、第4の支持部材40の下端部に固定される。補助支持部材60の一端部は、第4の支持部材40の上端部近傍に固定される。駆動部材50の他端部と補助支持部材60の他端部とは、互いに連結される。第4の支持部材40と駆動部材50とがなす角度は、鋭角である。それにより、第4の支持部材40、駆動部材50および補助支持部材60により三角形が形成される。第4の支持部材40に対する駆動部材50の角度が変化しないように、駆動部材50が第4の支持部材40に固定される。
【0030】
操作レバー70の一端部は、駆動部材50の他端部に第5の軸A5の周りで回転可能に取り付けられる。操作レバー70は、補助支持部材60に対して第5の軸A5を中心として前方および後方に一定の角度範囲Δθだけ回転可能である。後方への操作レバー70の回転角度は、操作レバー70の下面が駆動部材50の他端部のエッジに当接することにより制限される。前方への操作レバー70の回転角度は、操作レバー70が第4の支持部材40と略平行になる角度に制限される。本実施の形態では、駆動部材50および操作レバー70の後方または下方における操作レバー70から駆動部材50への角度は、180°よりも小さい鈍角θ1に制限される。
【0031】
第6の軸A6は、駆動部材50の他端部と補助支持部材60の他端部との連結部に取り付けられる。第6の軸A6の両端には、それぞれ車輪W3が回転可能に取り付けられる。第7の軸A7は、操作レバー70の他端部に取り付けられる。操作レバー70の両端には、それぞれ車輪W4が回転可能に取り付けられる。
【0032】
取付機構ATは、一対の取付部材80および複数の保持部材84,85を備える。各取付部材80は棒状部材である。一対の取付部材80は、一対の第2の支持部材20上に前後方向に延びるように配置される。各取付部材80は、接続部材81,82により各第2の支持部材20に固定される。保持部材84は、左右方向に突出するように一対の取付部材80の前端部に設けられる。保持部材85は、左右方向に突出するように一対の取付部材80の後端部に設けられる。
【0033】
使用者が昇降装置1の取付部材80を押し下げると、第1の支持部材10に対する第3の支持部材30および第4の支持部材40の角度が小さくなり、第2の支持部材20が下降する。一方、使用者が操作レバー70を後方に倒すと、第1の支持部材10に対する第3の支持部材30および第4の支持部材40の角度が大きくなり、第2の支持部材20が上昇する。この場合、第4の支持部材40と駆動部材50とがなす角度および駆動部材50と操作レバー70とがなす角度が固定されているので、各車輪W2の接地点が支点となり、第4の軸A4が作用点となり、操作レバー70が力点となる梃子の原理により第4の支持部材40の角度が変化する。
【0034】
(2)昇降装置1の使用方法および動作
以下、手押し車の一例として車椅子を説明する。
図3は、車椅子および
図1の昇降装置1の模式的側面図である。
図4は、
図3の車椅子における取付機構ATの模式的平面図である。
図5~
図12は、
図1の昇降装置1の使用方法および動作を示す模式的側面図である。
図3および
図5~
図12においては、昇降装置1が取り付けられる車椅子における保持機構を実線で示し、車椅子の他の部分を点線で示す。
【0035】
図3に示すように、車椅子100は、車体101、一対の前輪102、一対の後輪103、一対のハンドル部104および保持機構200を備える。車体101の前端に一対の前輪102が設けられ、車体101の後端に一対の後輪103が設けられる。車体101の後端上部に一対のハンドル部104が設けられる。
【0036】
図4に示すように、保持機構200は、一対のガイドレール105、一対の取付保持部106、一対の保持部材107および一対の保持部材108を含む。一対のガイドレール105は、車体101の下部に前後方向に延びるように設けられる。一対の取付保持部106は、一対のガイドレール105に対して前後方向にスライド可能に設けられる。一対の取付保持部106の互いに対向する側面には、一対の保持部材107および一対の保持部材108が取り付けられる。各保持部材107は、各取付保持部106の前端部に設けられ、各保持部材108は、各取付保持部106の後端部に設けられる。一対の保持部材107は、取付機構ATの左右方向に突出する保持部材84を保持可能に構成される。一対の保持部材108は、取付機構ATの左右方向に突出する保持部材85を保持可能に構成される。
【0037】
以下、車椅子100を押す人を介助者と呼ぶ。また、車椅子100に乗る人および介助者を使用者と総称する。
図1の状態から介助者が取付部材80を押し下げると、第3の支持部材30および第4の支持部材40が前方に倒れ、取付部材80および第2の支持部材20が下降する。それにより、昇降機構LFが折り畳まれる。この状態で、介助者は、車椅子100の後方から昇降装置1を前進させることにより、
図3に示すように、昇降装置1を車椅子100の下方に進入させる。
【0038】
次に、介助者が操作レバー70を後方に倒すと、取付部材80が上昇する。それにより、
図4に示すように、保持部材84の両端が一対の保持部材107により保持され、保持部材85の両端が一対の保持部材108により保持される。その結果、昇降装置1が車椅子100に取り付けられる。この状態で、
図5に示すように、介助者が操作レバー70を前方に倒すことにより操作レバー70をほぼ水平状態にする。それにより、スライド部材31が第3の支持部材30に対して前方にスライドし、第2の支持部材20が第3の支持部材30に対してさらに接近する。その結果、昇降機構LFが上下方向にさらにコンパクトに折り畳まれる。このとき、各車輪W1および各車輪W2は、床面から浮上している。
【0039】
介助者は、
図5の状態から昇降装置1を前方に押し込む。それにより、一対の取付保持部106が昇降装置1とともにガイドレール105に対して前方にスライドする。その結果、
図6に示すように、昇降装置1が車椅子100の車体101の下方に収納される。車椅子100の使用者は、昇降装置1が収納された状態で車椅子100を移動させることができる。
【0040】
図7に示すように、車椅子100の前方に段差Lがある場合、介助者は、車椅子100を段差Lの手前で停止させる。次いで、介助者は、車体101の下方から後方へ昇降装置1を引き出し、操作レバー70を引き上げる。この状態で、介助者は、
図8に示すように、昇降装置1を車体101の下方に押し込む。この場合、取付保持部106がガイドレール105の前端までスライドする。
【0041】
次に、
図9に示すように、介助者は、操作レバー70を後方へ倒す。それにより、第1の支持部材10に対する第4の支持部材40の角度および第2の支持部材20に対する第3の支持部材30の角度が大きくなり、各車輪W1および各車輪W2が床面に接地する。これにより、第1の支持部材10と床面とが平行になる。この状態で、介助者は、操作レバー70を例えば足でさらに押し下げる。それにより、第1の支持部材10に対する第4の支持部材40の角度および第2の支持部材20に対する第3の支持部材30の角度がさらに大きくなり、第2の支持部材20が水平状態を保ちつつ取付部材80とともに上昇する。その結果、車椅子100が上昇する。この場合、各車輪W2の接地点を支点とする梃子の原理により、第4の支持部材40の角度が大きくなる。したがって、介助者は小さい踏力で100を上昇させることができる。
【0042】
次に、
図10に示すように、介助者は、例えば足で操作レバー70をさらに押し下げるとともに各車輪W4を床面に接地させる。それにより、第1の支持部材10に対する第3の支持部材30および第4の支持部材40の角度は、略垂直になる。
【0043】
本実施の形態では、
図11に示すように、介助者は、操作レバー70の前端部近傍を例えば足でさらに押し下げることにより各車輪W3を床面に接地させる。このとき、第1の支持部材10に対して第3の支持部材30および第4の支持部材40は、僅かに後方に傾斜する。本実施の形態では、各車輪W1~W4が床面に接地することにより、安定した状態で車椅子100を前進させることができる。
【0044】
介助者は、
図12に示すように、各車輪W1が段差L1の近傍に位置するように昇降装置1および車椅子100を前進させた後、車椅子100の車体101を昇降装置1から前方に移動させる。この場合、取付保持部106がガイドレール105に沿ってスライドする。それにより、車椅子100が段差Lの上面の上方に移動する。
【0045】
次に、介助者は、
図6~
図12の動作と逆の動作で、取付機構ATを折り畳んだ後、
図13に示すように、昇降装置1を車椅子100の下方に収納する。車椅子100の使用者は、昇降装置1が収納された状態で段差Lの上面上で車椅子100を移動させることができる。
【0046】
(3)実施の形態の効果
本実施の形態に係る昇降装置1によれば、操作レバー70を用いて駆動部材50が操作されると、昇降機構LFの第1の支持部材10に対する第3の支持部材30および第4の支持部材40の角度が変化する。それにより、第2の支持部材20が第1の支持部材10に対して平行な状態で昇降する。この場合、車椅子100の昇降時に第2の支持部材20による車椅子100の支持領域の長さが変化しない。その結果、使用者は、車椅子100を安定した状態で昇降させることができる。
【0047】
また、駆動部材50の後端部に下方への荷重が加わることにより、第1の支持部材10に対する第4の支持部材40の角度が梃子の原理で変化する。それにより、使用者は、小さな力で車椅子100を上昇させることができる。本実施の形態では、使用者は、操作レバー70を第5の軸A5の後方に倒した状態で押し下げることにより、車椅子100をより小さい力で上昇させることができる。
【0048】
また、第2の支持部材20が第3の支持部材30に接近するように昇降機構LFが折り畳まれると、スライド部材31が第3の支持部材30に対して前方にスライドする。この場合、第1の軸A1と第2の軸A2との間の距離が延長する。それにより、昇降機構LFが上下方向にさらにコンパクトになる。
【0049】
さらに、操作レバー70が第5の軸A5の前方に折り畳まれることにより、昇降機構LFの全体をさらにコンパクトに折り畳むことができる。その結果、車椅子100を大型化することなく、昇降装置1を車椅子100に収納することができる。それにより、使用者は、昇降装置1が収納された状態で車椅子100を移動させることができる。
【0050】
また、取付機構ATにより昇降機構LFが前後方向にスライド可能に車椅子100に取り付けられるので、使用者は、昇降装置1を車椅子100に容易に取り付けおよび収納することができるとともに、車椅子100から昇降装置1を容易に取り外すことができる。それにより、車椅子100が折り畳み可能な構造を有する場合、使用者は、車椅子100をコンパクトに折り畳むことができる。
【0051】
(4)他の実施の形態
(a)上記実施の形態では、駆動部材50に操作レバー70が設けられるが、操作レバー70が設けられなくてもよい。この場合、使用者は、駆動部材50を操作することにより第4の支持部材40の角度を変化させることができる。
【0052】
(b)上記実施の形態では、第1の軸A1の両端にそれぞれ車輪W1が設けられ、第2の軸A2の両端にそれぞれ車輪W2が取付られているが、各車輪W1,W2が設けられなくてもよい。例えば、各車輪W1,W2の代わりに第1の支持部材10の下面に床面を滑動可能な突起が設けられてもよい。
【0053】
(c)上記実施の形態では、第6の軸A6の両端にそれぞれ車輪W3が設けられ、第7の軸A7の両端にそれぞれ車輪W4が取付られているが、各車輪W3,W4が設けられなくてもよい。例えば、各車輪W3,W4の代わりに第1の支持部材10の下面に床面を滑動可能な突起が設けられてもよい。
【0054】
(d)上記実施の形態では、一対の第1の支持部材10、一対の第2の支持部材20、一対の第3の支持部材30および単一の第4の支持部材40が設けられるが、本発明はこれに限定されない。例えば、単一の第1の支持部材10、単一の第2の支持部材20および単一の第3の支持部材30が用いられてもよい。また、一対の第4の支持部材40が用いられてもよい。さらに、第1の支持部材10、第2の支持部材20、第3の支持部材30および第4の支持部材40の形状は棒状部材に限定されない。例えば、第1の支持部材10、第2の支持部材20、第3の支持部材30および第4の支持部材40の形状が板状部材であってもよい。
【0055】
(e)上記実施の形態では、駆動部材50の一端部が第4の支持部材40の下端部に固定されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、駆動部材50の一端部が第4の支持部材40の中央部付近に固定されてもよい。
【0056】
(f)上記実施の形態では、第3の支持部材30にガイド部材32がスライド可能に設けられているが、本発明はこれに限定されない。第3の支持部材30にガイド部材32が設けられなくてもよい。この場合、第2の軸A2は、第3の支持部材30の上端部に設けられてもよい。
【0057】
(g)上記実施の形態では、補助支持部材60が第4の支持部材40に固定され、かつ駆動部材50に連結されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、第4の支持部材40と駆動部材50とが強固に固定されている場合、補助支持部材60が設けられなくてもよい。
【0058】
(h)上記実施の形態では、昇降機構LFにおける保持部材84が一対の取付部材80の前端部に設けられ、保持部材85が一対の取付部材80の後端部に設けられるが、本発明はこれに限定されない。昇降機構LFの保持部材84,85が第2の支持部材20に設けられてもよい。この場合、昇降装置1において、一対の取付部材80が不要になるため、昇降装置1の構成が単純になる。
【0059】
(i)上記実施の形態では、手押し車の一例として車椅子100に本発明に係る昇降装置を適用した例を示すが、本発明に係る昇降装置は、車椅子100に限らず、手押し車としてベビーカー、台車またはストレッチャー等にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…昇降装置,10…第1の支持部材,20…第2の支持部材,30…第3の支持部材,31…スライド部材,32…ガイド部材,33,34…取付部材,40…第4の支持部材,50…駆動部材,60…補助支持部材,70…操作レバー,80…取付部材,81,82…接続部材,84,85,107,108…保持部材,100…車椅子,101…車体,102…前輪,103…後輪,104…ハンドル部,105…ガイドレール,106…取付保持部,200…保持機構,A1…第1の軸,A2…第2の軸,A3…第3の軸,A4…第4の軸,A5…第5の軸,A6…第6の軸,A7…第7の軸,L…段差,LF…昇降機構,AT…取付機構