(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】臍帯血用バッグセット、および、臍帯血用遠心機
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20240416BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20240416BHJP
B04B 9/14 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61M1/02 180
B04B5/02 D
B04B5/02 Z
B04B9/14
A61M1/02 121
(21)【出願番号】P 2020098250
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019107651
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314009630
【氏名又は名称】株式会社セルピック
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 久生
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 仁子
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-520256(JP,A)
【文献】特表平10-508314(JP,A)
【文献】特表2018-507743(JP,A)
【文献】特開平10-033661(JP,A)
【文献】特表2008-518747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
B04B 5/02
B04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用バッグセットであって、
汚染防止用フィルムが設けられた臍帯血用バッグセットにおいて、
前記臍帯血用バッグセットは、
前記臍帯血を収容するための臍帯血バッグと、
赤血球を収容するための赤血球バッグと、
前記臍帯血幹細胞を収容するための幹細胞バッグと、
流路切換部と、
前記臍帯血バッグと前記流路切換部とに接続された第1移送チューブと、
前記赤血球バッグと前記流路切換部とに接続された第2移送チューブと、
前記幹細胞バッグと前記流路切換部とに接続された第3移送チューブと、を備え、
前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させ前記第3移送チューブと連通させない第1開状態と、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させず前記第3移送チューブと連通させる第2開状態と、に切換可能に構成され
、
前記臍帯血バッグは、
前記臍帯血を当該臍帯血バッグ内に導入するための導入口を備え、
前記臍帯血バッグの前記導入口を除く部分、前記赤血球バッグ、前記幹細胞バッグ、前記流路切換部、前記第1移送チューブ、前記第2移送チューブ、および、前記第3移送チューブは、前記汚染防止用フィルムによって密封されており、前記導入口は、前記汚染防止用フィルムの外に露出し、
前記汚染防止用フィルムは、前記バッグセットから取り外すことができる、
臍帯血用バッグセット。
【請求項2】
前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブおよび前記第3移送チューブの双方と連通させない閉状態に、さらに切換可能に構成されている、
請求項1に記載の臍帯血用バッグセット。
【請求項3】
前記流路切換部は、流路切換コックである、
請求項1または請求項2に記載の臍帯血用バッグセット。
【請求項4】
臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用遠心機であって、
ローターと、
前記ローターを回転軸の周りに回転させる回転機構と、
前記ローターに支持される遠心バケットと、を備え、
前記遠心バケットは
、臍帯血用バッグセットを収容可能に構成されており、
前記臍帯血用バッグセットは、
前記臍帯血を収容するための臍帯血バッグと、赤血球を収容するための赤血球バッグと、前記臍帯血幹細胞を収容するための幹細胞バッグと、流路切換部と、前記臍帯血バッグと前記流路切換部とに接続された第1移送チューブと、前記赤血球バッグと前記流路切換部とに接続された第2移送チューブと、前記幹細胞バッグと前記流路切換部とに接続された第3移送チューブと、を備え、前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させ前記第3移送チューブと連通させない第1開状態と、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させず前記第3移送チューブと連通させる第2開状態と、に切換可能に構成されたものであり、
前記遠心バケットは、展開可能に構成されており、
前記遠心バケットが前記臍帯血用バッグセットを収容しかつ前記ローターに支持されているときに展開すると、前記赤血球バッグおよび前記幹細胞バッグが前記臍帯血バッグよりも低く位置する、
臍帯血用遠心機。
【請求項5】
前記遠心バケットは、
前記臍帯血バッグを収容するための第1収容部と、
前記第1収容部に対して回動可能に設けられた、前記赤血球バッグおよび前記幹細胞バッグを収容するための第2収容部と、を備え、
前記遠心バケットは、前記第2収容部が前記第1収容部に対して回動することで展開する、
請求項4に記載の臍帯血用遠心機。
【請求項6】
前記遠心バケットを展開および展開しないようにロックするための展開機構を備えている、
請求項4または請求項5に記載の臍帯血用遠心機。
【請求項7】
臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用遠心機であって、
ローターと、
前記ローターを回転軸の周りに回転させる回転機構と、
前記ローターに支持される遠心バケットと、を備え、
前記遠心バケットは、臍帯血用バッグセットを収容可能に構成されており、
前記臍帯血用バッグセットは、
前記臍帯血を収容するための臍帯血バッグと、赤血球を収容するための赤血球バッグと、前記臍帯血幹細胞を収容するための幹細胞バッグと、流路切換部と、前記臍帯血バッグと前記流路切換部とに接続された第1移送チューブと、前記赤血球バッグと前記流路切換部とに接続された第2移送チューブと、前記幹細胞バッグと前記流路切換部とに接続された第3移送チューブと、を備え、前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させ前記第3移送チューブと連通させない第1開状態と、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させず前記第3移送チューブと連通させる第2開状態と、に切換可能に構成されたものであり、
前記臍帯血用遠心機は、さらに、
前記遠心バケット内に設けられたプッシャーと、
前記遠心機バケットに設けられた押出機構と、を備え、
前記押出機構は、
前記遠心バケット内に設けられた押出用モータを備え、
前記押出用モータを駆動することにより前記プッシャーを前記遠心バケットに収容された前記臍帯血バッグに押し付けて、前記臍帯血の成分を前記臍帯血バッグから前記第1移送チューブへ押し出す、
臍帯血用遠心機。
【請求項8】
臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用遠心機であって、
ローターと、
前記ローターを回転軸の周りに回転させる回転機構と、
前記ローターに支持される遠心バケットと、を備え、
前記遠心バケットは、臍帯血用バッグセットを収容可能に構成されており、
前記臍帯血用バッグセットは、
前記臍帯血を収容するための臍帯血バッグと、赤血球を収容するための赤血球バッグと、前記臍帯血幹細胞を収容するための幹細胞バッグと、流路切換部と、前記臍帯血バッグと前記流路切換部とに接続された第1移送チューブと、前記赤血球バッグと前記流路切換部とに接続された第2移送チューブと、前記幹細胞バッグと前記流路切換部とに接続された第3移送チューブと、を備え、前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させ前記第3移送チューブと連通させない第1開状態と、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させず前記第3移送チューブと連通させる第2開状態と、に切換可能に構成されたものであり、
前記臍帯血用遠心機は、さらに、
前記遠心バケットとは前記回転軸に対して反対側に位置するバランサーと、
前記バランサーを前記回転軸に近づきかつ前記回転軸から遠ざかる方向に前記ローターに対して移動させる、前記ローターに設けられた調整機構と、
前記臍帯血バッグ内の液位を検出するために、前記遠心バケット内に設けられた液位センサと、を備え、
前記液位センサは、
前記遠心バケット内に収容された前記臍帯血バッグに向けて光を投射する光源と、
前記臍帯血バッグを透過したまたは反射した前記光を検出する検出器と、を備え、
前記バランサーは、前記液位センサの検出結果に基づいて前記調整機構によって移動される、
臍帯血用遠心機。
【請求項9】
前記流路切換部の状態を切り換える、前記遠心バケットに設けられた切換モータを備える、
請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の臍帯血用遠心機。
【請求項10】
前記第1移送チューブ内を移送されている前記臍帯血の成分の光学的特性を検出する、前記遠心バケットに設けられた少なくとも1つの光学センサを備え、
前記流路切換部が、前記光学センサの検出結果に基づいて前記切換モータによって前記第1開状態または前記第2開状態に切り換えられる、
請求項9に記載の臍帯血用遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するのに用いられるバッグセットおよび遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
現行、臍帯血幹細胞は、以下の手順で採取される。まず、臍帯血が採取される。臍帯血の採取には、2つの手法がある。一方の手法は、胎盤が子宮内にあるときの娩出前の採取であり、他方の手法は、胎盤が取り出された後の娩出後の採取である。いずれの手法でも、胎児は出産と同時に臍帯から切り離され、臍帯はクランプされて止血される。採血バッグの採血チューブの先端の針を、臍帯静脈に、クランプされた位置よりやや胎盤側で穿刺する。なお、穿刺に先立ち穿刺部周辺は、滅菌ガーゼと消毒綿球で拭われ、充分に消毒される。
【0003】
次いで、臍帯血を、臍帯から採血チューブを通じて採血バッグに移送する。この際、採血バッグは臍帯より低く保持され、臍帯血は重力で採血バッグに導入される。なお、採血バッグには、予め抗凝固剤が入れられている。
【0004】
血流が止まった後、採血チューブを鉗子で止める。そして、採血チューブの先端の針を臍帯静脈から抜き、プロテクターを装着する。採血チューブ内に残留する血液を、ローラーペンチで扱いて、採血バッグ内に入れる。その後、採血チューブを、採血バッグの近傍の位置でヒートシールして、切り離す。
【0005】
赤血球沈降剤の添加量を以下のようにして決定する。採血バッグの全重量を測定し、既知の採血バッグの風袋および抗凝固剤の重量を全重量から差し引くことで採血量を求め、その採血量に応じて赤血球沈降剤の添加量を決定する。そして、決定された添加量の赤血球沈降剤を採血バッグに注入して、攪拌混合する。
【0006】
採血バッグを遠心機の遠心バケットに入れる。採血バッグを保護するために、スペーサーを用いて厚みを均一に調整する。バケットを遠心機の所定の位置に装着する。そして、遠心機を作動させて、採血バッグ内の臍帯血を、例えば約50Gの低い遠心力(遠心加速度)で所定の時間、遠心して、層状に分離する。採血バッグ内では、赤血球が沈殿して、赤血球の沈殿層が形成される。
【0007】
採血バッグ中の赤血球の沈殿層を乱さないように、クリーンベンチへ移動して、分離スタンドにセットする。分離バッグを採血バッグとは別に用意しておき、分離バッグの移送チューブの先端の針を採血バッグに刺して、両バッグを、移送チューブを介して接続する。
【0008】
分離スタンドを手技で操作して、赤血球の沈殿層の上方にある白血球および血漿を、採血バッグから押し出して移送チューブを通じて分離バッグに移送する。この際、採血バッグの赤血球の沈殿層の上層部分に臍帯血幹細胞が含まれているので、その数mlも分離バッグに移送する。移送量は、取扱条件によって異なり、各施設で決定されている。分離バッグへの移送後、移送チューブのクランプを閉じて、移送チューブを分離バッグ側でヒートシールし、採血バッグを切り離す。
【0009】
分離バッグの重量を測定し、除去血漿量を決定する。
【0010】
分離バッグをバケットに入れる。分離バッグを保護するために、スペーサーを用いて厚みを均一に調整する。バケットを遠心機の所定の位置に装着する。そして、遠心機を作動させて、分離バッグ内の臍帯血の成分を例えば約400Gの高い遠心力で所定の時間、遠心して、分離バッグ内の成分を白血球層(下層)と血漿層(上層)とに分離する。臍帯血幹細胞は、白血球層に含まれる。
【0011】
その後、分離バッグを、再び分離スタンドにセットする。分離バッグには、別の移送チューブを介して血漿バッグが接続される。分離スタンドを手技で操作して、決定された除去血漿量の血漿層を重量測定しながら分離バッグから押し出し、移送し、分離バッグ内に適量の血漿を残す。移送の完了後、移送チューブのクランプを閉じて、移送チューブを分離バッグ側でヒートシールし、血漿バッグを切り離す。したがって、分離バッグ内に、臍帯血幹細胞を含む白血球層が確保されている。
【0012】
冷凍保存する場合、分離バッグの重量を再び測定し、適量の凍害保護剤を分離バッグに注入により添加し、混和する。凍結バッグをさらに別の移送チューブを介して分離バッグに接続し、分離バッグ内の内容物を重力で凍結バッグに移送するか、または、シリンジを分離バッグに接続して内容物をシリンジによって吸引し、凍結バッグに注入し、それによって凍結保存の準備を完了する。
【0013】
以上の通り、臍帯血幹細胞を採取する処理のほとんどの工程が手技で実施されている。処理の総時間は6時間を越える程になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Pablo Rubinstein et al.: Processing and cryopreservation of placental /umbilical cord blood for unrelated bone marrow reconstitution. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. (1995) Oct.24: Vol.92(22) : 10119-10122.
【文献】臍帯血プロセッシングと移植の適応に関する自主ガイドライン:平成8年厚生省骨髄移植調査研究事業B版
【文献】臍帯血バンクにおける臍帯血処理方法の検討:高橋恒夫 他Japanese Journal of Transfusion Medicine,44(1):12-19,1998
【文献】凍結臍帯血幹細胞の洗浄による細胞回収の検討:佐藤典宏 他 Japanese Journal of Transfusion Medicine, 44(6): 687-692,1998
【文献】自動凍結保存装置BioArchiveを用いた臍帯血凍結保存:笹山典久 他 Japanese Journal of Transfusion Medicine 47(1): 15-21,2001
【文献】小型立体式凍結バッグによる臍帯血幹細胞の凍結保存:村橋秀明 他 医器学、71(2): 57-62,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取する処理の負担を軽減する臍帯血用バッグセットおよび臍帯血用遠心機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用バッグセットが提供され、
前記臍帯血用バッグセットは、
前記臍帯血を収容するための臍帯血バッグと、
赤血球を収容するための赤血球バッグと、
前記臍帯血幹細胞を収容するための幹細胞バッグと、
流路切換部と、
前記臍帯血バッグと前記流路切換部とに接続された第1移送チューブと、
前記赤血球バッグと前記流路切換部とに接続された第2移送チューブと、
前記幹細胞バッグと前記流路切換部とに接続された第3移送チューブと、を備え、
前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させ前記第3移送チューブと連通させない第1開状態と、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブと連通させず前記第3移送チューブと連通させる第2開状態と、に切換可能に構成されている。
【0018】
前記流路切換部は、前記第1移送チューブを前記第2移送チューブおよび前記第3移送チューブの双方と連通させない閉状態に、さらに切換可能に構成されてよい。
【0019】
前記流路切換部は、流路切換コックでよい。
【0020】
前記臍帯血バッグは、前記臍帯血を当該臍帯血バッグ内に導入するための導入口を備え、
前記臍帯血バッグの前記導入口を除く部分、前記赤血球バッグ、前記幹細胞バッグ、前記流路切換部、前記第1移送チューブ、前記第2移送チューブ、および、前記第3移送チューブは、汚染防止用フィルムによって密封されており、前記導入口は、前記汚染防止用フィルムの外に露出している。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取するために用いられる臍帯血用遠心機が提供され、
前記臍帯血用遠心機は、
ローターと、
前記ローターを回転軸の周りに回転させる回転機構と、
前記ローターに支持される遠心バケットと、を備え、
前記遠心バケットは、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバッグセットを収容可能に構成されている。
【0022】
前記遠心バケットは、展開可能に構成されており、
前記遠心バケットが前記臍帯血用バッグセットを収容しかつ前記ローターに支持されているときに展開すると、前記赤血球バッグおよび前記幹細胞バッグが前記臍帯血バッグよりも低く位置してもよい。
【0023】
前記遠心バケットは、
前記臍帯血バッグを収容するための第1収容部と、
前記第1収容部に対して回動可能に設けられた、前記赤血球バッグおよび前記幹細胞バッグを収容するための第2収容部と、を備え、
前記遠心バケットは、前記第2収容部が前記第1収容部に対して回動することで展開する。
【0024】
前記臍帯血用遠心機は、前記遠心バケットを展開および展開しないようにロックするための展開機構を備えてよい。
【0025】
前記臍帯血用遠心機は、前記流路切換部の状態を切り換える、前記遠心バケットに設けられた切換モータを備えてよい。
【0026】
前記臍帯血用遠心機は、
前記第1移送チューブ内を移送されている前記臍帯血の成分の光学的特性を検出する、前記遠心バケットに設けられた少なくとも1つの光学センサを備え、
前記流路切換部が、前記光学センサの検出結果に基づいて前記切換モータによって前記第1開状態または前記第2開状態に切り換えられてよい。
【0027】
前記臍帯血用遠心機は、
プッシャーと、
前記プッシャーを前記遠心バケットに収容された前記臍帯血バッグに押し付けて、前記臍帯血の成分を前記臍帯血バッグから前記第1移送チューブへ押し出す、前記遠心バケットに設けられた押出機構と、を備えてよい。
【0028】
前記臍帯血用遠心機は、
前記回転機構で前記ローターおよび当該ローターに支持された前記遠心バケットを回転させて、前記臍帯血を、前記遠心バケットに収容された前記臍帯血バッグ内で遠心分離し、
前記回転機構で前記ローターおよび当該ローターに支持された前記遠心バケットをさらに回転させて、遠心分離された前記臍帯血の成分を遠心力によって前記臍帯血バッグから前記第1移送チューブを通じて移送してよい。
【0029】
前記臍帯血用遠心機は、
前記遠心バケットとは前記回転軸に対して反対側に位置するバランサーと、
前記バランサーを前記回転軸に近づきかつ前記回転軸から遠ざかる方向に前記ローターに対して移動させる、前記ローターに設けられた調整機構と、
前記臍帯血バッグ内の液位を検出する、前記遠心バケットに設けられた液位センサと、を備え、
前記バランサーは、前記液位センサの検出結果に基づいて前記調整機構によって移動されてよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取する処理の負担を軽減する臍帯血用バッグセットおよび臍帯血用遠心機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一実施形態に係る臍帯血用バッグセットを示す正面図である。
【
図2】
図2A-Cは、流路切換部の動作を説明する図である。
【
図3】第1実施形態に係る遠心機を示す概略縦断面図である。
【
図7】
図7Aは、遠心バケットの側面図であり、
図7Bは、バッグセットを収容した遠心バケットの側断面図である。
【
図8】バッグセットを収容した遠心バケットの展開された状態の正面図である。
【
図9】バッグセットを収容した遠心バケットの展開された状態の側断面図である。
【
図10】
図10Aは、展開機構の側断面図、
図10Bは、展開機構の平面図であり、図、10Cは、偏芯カムを示す側面図である。
【
図12】バッグセットを収容した
図11の遠心バケットのバケット本体部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、実施形態に係る臍帯血用バッグセット(以下、単にバッグセットと称する)、および、実施形態に係る臍帯血用遠心機(以下、単に遠心機と称する)が説明される。
【0033】
[第1実施形態]
[バッグセット]
図1の通り、バッグセット1は、臍帯血バッグ2、赤血球バッグ3、および、幹細胞バッグ4を備える。バッグセット1は、流路切換部5をさらに備える。バッグセット1は、第1移送チューブ6、第2移送チューブ7、および、第3移送チューブ8をさらに備える。
【0034】
臍帯血バッグ2は、臍帯から採取される臍帯血を収容するためのものである。臍帯血バッグ2は、臍帯血をその内部に導入するための導入口9を備える。導入口9は、臍帯血バッグ2の上側に設けられる。採血チューブ11が、その一端において導入口9に一体的に接続されている。後述するように、臍帯血が採血チューブ11を介して臍帯血バッグ2に移送され収容される。採血チューブ11は、その他端において採血針12を有する。図示されていないが、採血針12は、使用前において汚染防止や事故防止のためにキャップされている。
【0035】
臍帯血バッグ2は、その上側にサンプル採取口13を備える。サンプル採取口13は、通常は弾性体によって密閉され、キャップ14によって汚染防止されている。針を弾性体に穿刺して、サンプル採取口13を通じて、臍帯血バッグ2内に収容された臍帯血の一部をサンプルとして採取することができる。
【0036】
赤血球バッグ3は、赤血球を収容するためのものである。臍帯血が、後述の通り遠心機30(
図3)によって臍帯血バッグ2内で遠心分離されると、赤血球の層が形成される。この赤血球は、後述するように、臍帯血バッグ2から第1移送チューブ6および第2移送チューブ7を通じて赤血球バッグ3に移送されて収容される。
【0037】
幹細胞バッグ4は、臍帯血幹細胞を収容するためのものである。臍帯血が、遠心機30によって臍帯血バッグ2内において遠心分離されると、赤血球の層とは別に、臍帯血幹細胞を含む白血球の層が形成される。この臍帯血幹細胞を含む白血球が、臍帯血バッグ2から第1移送チューブ6および第3移送チューブ8を通じて幹細胞バッグ4に移送されて収容される。
【0038】
幹細胞バッグ4は、その上側にサンプル採取口15を備える。サンプル採取口15は、通常は弾性体によって密閉され、キャップ16等によって汚染防止されている。針を弾性体に穿刺して、サンプル採取口15を通じて、幹細胞バッグ4内に収容された幹細胞の一部をサンプルとして採取することができる。
【0039】
第1移送チューブ6は、臍帯血バッグ2と流路切換部5とに接続されている。具体的には、第1移送チューブ6は、臍帯血バッグ2の下側と流路切換部5の上面とに接続されている。
【0040】
第2移送チューブ7は、赤血球バッグ3と流路切換部5とに接続されている。具体的には、第2移送チューブ7は、赤血球バッグ3の上側と流路切換部5の下面とに接続されている。
【0041】
第3移送チューブ8は、幹細胞バッグ4と流路切換部5とに接続されている。具体的には、第3移送チューブ8は、幹細胞バッグ4の上側と流路切換部5の下面とに接続されている。
【0042】
流路切換部5は、臍帯血バッグ2、赤血球バッグ3、および、幹細胞バッグ4間の流路を切り換えるためのものである。流路切換部5は、具体的には、第1移送チューブ6を第2移送チューブ7および第3移送チューブ8の双方と連通させない閉状態と、第1移送チューブ6を第2移送チューブ7と連通させ第3移送チューブ8と連通させない第1開状態と、第1移送チューブ6を第2移送チューブ7と連通させず第3移送チューブ8と連通させる第2開状態と、に切換可能に構成されている。流路切換部5は、第2移送チューブ7と第2移送チューブ8とを互いに連通させていない。
【0043】
流路切換部5は、
図2に示される通り流路切換コックである。流路切換部5は、ケース20を備える。ケース20は、1つの入口ポート21と、2つの出口ポート22,23とを有する。臍帯血バッグ2の第1移送チューブ6は、入口ポート21に接続される。赤血球バッグ3の第2移送チューブ7は、一方の出口ポート22に接続され、幹細胞バッグ4の第3移送チューブ8は、他方の出口ポート23に接続される。
【0044】
流路切換部5は、ケース20に収容された弁体24を備える。弁体24は、2つの通路25,26を有する。これら2つの通路25,26は、弁体24を貫通するように形成されている。
【0045】
流路切換部5は、弁体24に取り付けられてケース20を貫通する弁軸27を有する。弁軸27は、後述の通り遠心機30の切換モータ70(
図7B)に連結される。したがって、切換モータ70が駆動すると、弁体24および弁軸27が回転する。
【0046】
図2Aの通り、弁体24が全てのポート21,22,23を閉じる位置にあると、第1移送チューブ6は、第2移送チューブ7および第3移送チューブ8の双方と非連通となる。したがって、このとき、流路切換部5は閉状態である。
【0047】
図2Bの通り、弁体24がその一方の通路25を通じて入口ポート21を一方の出口ポート22と連通させ、かつ、他方の出口ポート23を閉じる位置にあると、第1移送チューブ6は、第2移送チューブ7と連通し、第3移送チューブ8と非連通である。したがって、このとき、流路切換部5は、第1開状態である。
【0048】
図2Cの通り、弁体24がその他方の通路26を通じて入口ポート21を他方の出口ポート23と連通させ、かつ、一方の出口ポート22を閉じる位置にあると、第1移送チューブ6は、第3移送チューブ8と連通し、第2移送チューブ7と非連通である。したがって、このとき、流路切換部5は、第2開状態である。
【0049】
すなわち、弁体24が切換モータ70によって回転されてその位置が制御されることで、流路切換部5は、閉状態(
図2A)、第1開状態(
図2B)および第2開状態(
図2C)に切り換る。
【0050】
図1の通り、臍帯血バッグ2の導入口9を除く部分、赤血球バッグ3、幹細胞バッグ4、流路切換部5、各移送チューブ6,7,8が汚染防止用フィルム10に密封されている。導入口9および採血チューブ11は、汚染防止用フィルム10の外に露出している。
【0051】
図示されていないが、臍帯血バッグ2、赤血球バッグ3、および幹細胞バッグ4は、それぞれ、通気口と、通気口に設けられた通気フィルタとを備えてよい。通気フィルタは、滅菌エア・ベントフィルタである。
【0052】
バッグセット1の各構成2‐8は、密閉状態で繋がっており、臍帯血バッグ2から赤血球バッグ3までおよび幹細胞バッグ4までは、密閉構造となっている。
【0053】
臍帯血バッグ2は、例えば、容量220mlで、サイズ100mm×140mm×20mmであり、赤血球バッグ3は、例えば、容量120mlで、サイズ80mm×130mm×12mmであり、幹細胞バッグ4は、例えば、容量30mlで、サイズ70mm×80mm×6mmである。
【0054】
各バッグ2,3,4、各チューブ6,7,8、汚染防止用フィルム10など各構成要素の材料は、PVC(ポリ塩化ビニル)或は、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)で構成されている。4℃以上の温度で取り扱いが出来て、可塑剤等の溶出がない材料であればどのような材料で構成されてもよい。各バッグ2,3,4、流路切換部5,各チューブ6,7,8が
図1の通り接続され密閉された後に、EOG滅菌、炭酸ガスによる滅菌、放射線殺菌、紫外線殺菌、等が行われている。
【0055】
[遠心機]
図3および
図4は、遠心機30を概略的に示す。遠心機30は、強化された外壁31と、外壁31の上に設けられ筐体32とを備える。臍帯血の遠心分離は、後述の通り外壁31内で行なわれる。
図3の通り、排出口33が外壁31の下面に接続されており、ストップコック34が排出口33を開閉するために排出口33に設けられている。排出口33は、液体などが漏れたときに、これを外部へ排出し、その後内部を洗浄するが、その洗浄液の排出をするためのものである。
【0056】
遠心機30は、遠心機30の各動作を制御する制御部35(制御盤)と、オペレータが遠心機30を操作するために用いる操作部36(操作盤)とをさらに備える。制御部35は筐体32内に設けられ、操作部36は筐体32の外面に設けられている。操作部36は、オペレータによって入力された情報を受けてこれを制御部35に送り、制御部35を入力された情報に従い遠心機30の各動作を制御する。
【0057】
遠心機30は、ローター37と、ローター37をその中央の回転軸38の周りに回転させる回転機構39とを備える。ローター37は、回転機構39によって外壁31内で水平に支持されている。ローター37の回転軸38は、鉛直方向(上下方向)にのびている。
【0058】
回転機構39は、ベアリングユニット40および遠心モータ41を備える。ベアリングユニット40は、孔42を通じて外壁31内と筐体32内との間を鉛直方向にのびている。回転軸38は、回転可能にベアリングユニット40に受容されており、遠心モータ41に連結されている。したがって、遠心モータ41が駆動すると、ローター37が回転軸38の周りに回転する。その他、回転機構39は、ダンパー43およびシーリング44を備える。
【0059】
遠心機30は、ローター37に着脱可能にかつ回転可能に支持される遠心バケット60をさらに備える。遠心バケット60は、ローター37に支持されているとき、ローター37と共に回転機構39によって回転軸38の周りに回転する。遠心バケット60は、上記のバッグセット1を収容可能に構成されている。したがって、バッグセット1が収容された遠心バケット60が、回転機構39によって回転することで、バッグセット1の臍帯血バッグ2内の臍帯血を遠心分離することができる。遠心バケット60の構造は後述される。
【0060】
図3、
図4の通り、バケット通過口45が外壁31の上側の天井部分に形成されている。蓋46(
図3)が、当該天井部分に回動可能に設けられて、バケット通過口45を開閉する。オペレータは、蓋46を開けて、遠心バケット60を、バケット通過口45を通じて、ローター37に取り付けることができ、かつ、ローター37から取り外すことができる。
【0061】
図3、
図5の通り、遠心機30は、バランサー50と、バランサー50を動かすためにローター37に設けられた調整機構51とをさらに備える。バランサー50は、ローター37に支持された遠心バケット60とは回転軸38に対して反対側に位置している。バランサー50は、回転軸38に近づきかつ回転軸38から離れる方向にスライド移動可能にローター37に設けられている。
【0062】
調整機構51は、遠心分離の際のバランスを図る。調整機構51は、ローター37に取り付けられたバランシングモータ52と、バランシングモータ52に連結されたボールねじ53(
図5)とを備える。バランサー50は、ボールねじ53とねじ係合している。したがって、バランシングモータ52が駆動してボールねじ53が回転すると、バランサー50がボールねじ53に沿って移動する。すなわち、バランサー50は、回転軸38に近づきかつ回転軸38から遠ざかる方向にローター37に対して移動する。
【0063】
図6、
図7の通り、遠心バケット60は、臍帯血バッグ2を収容し保持するための第1収容部61と、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4を収容し保持するための第2収容部62とを備える。
【0064】
第1収容部61は、バケット本体63を備える。臍帯血バッグ2がバケット本体63内に収容される。バケット本体63は、臍帯血バッグ2の外形と対応する形状を有しており、臍帯血バッグ2はバケット本体63に受容され、保持される。
図7Bの通り、第1移送チューブ6は、臍帯血バッグ2より下方においてバケット本体63に収容される。切換モータ70がバケット本体63に設けられており、流路切換部5の弁軸27を切換モータ70と連結することができる。
【0065】
図7の通り、第1収容部61は、ピン65によってバケット本体63に回動可能に設けられた、バケット本体63を上方から覆うための上面カバー66と、臍帯血バッグ2を保護するための保護板67とをさらに備える。バケット本体63に受容された臍帯血バッグ2は、保護板67で覆われて保護される。
【0066】
図6の通り、第1収容部61は、バケット本体63の左右の外側面から水平に突出するスイングアーム64をさらに備える。スイングアーム64は、バケット本体63の上部に位置する。
図5の通り、ローター37は、スイングアーム64を着脱可能に受容するように構成されている。ローター37は、スイングアーム64を受容することで遠心バケット60をスイングアーム64の周りにスイング可能に支持する。したがって、遠心バケット60は、回転機構39によって回転しているとき、遠心力を受けてスイングアーム64の周りにローター37に対してスイングする。
【0067】
第2収容部62は、バッグカバー68からなる。赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4は、バッグカバー68に収容される。第2移送チューブ7および第3移送チューブ8は、その大部分がバッグカバー68に収容される。バッグカバー68は、バケット本体63に当該バケット本体63の下端においてピン69によって回動可能に取り付けられている。
【0068】
遠心バケット60は、
図8,
図9の通り、第2収容部62が第1収容部61に対して回動されることにより展開可能である。
図6-
図9の通り、保護板67およびバケット本体63を部分的に覆っているバッグカバー68が、ピン69の周りに下方に回動することによって遠心バケット60が展開する。
【0069】
未展開の遠心バケット60がバッグセット1を収容しかつローター37に支持されているとき、臍帯血バッグ2、赤血球バッグ3、および、幹細胞バッグ4は、同じ高さに位置する(
図7B参照)。遠心バケット60がこの状態から展開すると、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4が臍帯血バッグ2よりも低く位置する(
図8、
図9参照)。さらに、このとき、第2移送チューブ7および第3移送チューブ8は、バケット本体63に支持された流路切換部5から下がっている。したがって、臍帯血の後述する分離された成分を、重力により、臍帯血バッグ2から、赤血球バッグ3へまたは幹細胞バッグ4へ移送することが可能である。
【0070】
遠心機30は、遠心バケット60を展開およびロックするための展開機構90をさらに備える(
図10にのみ示され、
図6-
図9では省略されている)。
図10Aは、
図7Bの領域Tを展開機構90と共に拡大して示し、
図10Bは、展開機構90の平面図である。
図10Bの通り、展開機構90は、ストッパー91、展開用モータ92、および、偏芯カム93を第1収容部61に備える。ストッパー91は、ピン94の周りに回転可能に設けられている。
図10Cの通り、偏芯カム93は偏芯突起95を備え、偏芯突起95は、ストッパー91の孔96(
図10A)に挿通されている。偏芯カム93は展開用モータ92に連結されており、展開用モータ92が駆動すると、軸線AX(
図10C)の周りに回転する。したがって、展開用モータ92が駆動すると、偏芯突起95が軸線AXの周りに回転し、それによってストッパー91をピン94の周りに上下動させる。
図10Aの通り、ストッパー91が下がっており、バッグカバー68の先端のフック97に当接しているとき、バッグカバー68がストッパー91によって係止されて回転しない。したがって、このとき、
図7の通り、遠心バケット60は展開しないようにロックされている。一方、
図10Aの状態から、ストッパー91が展開用モータ92によってピン94の周りに上がると、ストッパー91がフック97から離れ、バッグカバー68の係止は解除され、その結果、バッグカバー68が下方へ回動する。したがって、遠心バケット60が展開される。
【0071】
遠心機30は、遠心バケット60に設けられた液位センサを備える。液位センサは、臍帯血バッグ2内の液位を検出する。
【0072】
図7Bの通り、液位センサは、第1収容部61の適切な位置に設けられ、バケット本体63に収容された臍帯血バッグ2に向けて光を投射する光源(図示略,例えばLEDである)と、バケット本体63の内側面に上下方向に設けられ、光源から投射されて臍帯血バッグ2(またはその内部の液体)を透過したまたは反射した光を検出する検出器としてのダイオードアレイ71とからなる。ダイオードアレイ71は、バケット本体63ではなく、保護板67に設けられてもよい。当然ながら、臍帯血バッグ2は、光源の光に対して透過性を有する材料からなる。
【0073】
制御部35は、ダイオードアレイ71の検出信号に基づいて検出された液位を、臍帯血バッグ2内に採取された臍帯血の量に換算する。制御部35は、バランシングモータ52を駆動し、バランサー50を採取量に応じて決定される位置に移動させる。これによって、臍帯血バッグ2内の臍帯血の採取量に応じて、遠心分離の際のバランスを調整することができる。
【0074】
図8の通り、遠心機30は、遠心バケット60のバケット本体63内に設けられた2つの光学センサ80を備える。光学センサ80は、第1移送チューブ6内を移動する臍帯血(その遠心分離された成分)の光学特性を検出する。一方の光学センサ80が上流側で、他方の光学センサ80が下流側で、光学特性を検出する。
【0075】
光学センサ80は、臍帯血の成分の反射率または透過率のどちらを検出してもよい。例えば、光学センサ80は、第1移送チューブ6に向けて光を投射する光源と、第1移送チューブ6内の臍帯血の成分によって反射またはこれを透過した光を検出するように設けられた検出器とからなる。当然ながら、第1移送チューブ6は光源の光に対して透過性を有する材料からなる。
【0076】
臍帯血は後述の通り遠心分離により3つの層に層状に分離され、その分離された層の成分が順次第1移送チューブ6を流れる。これら3つの層の光学特性は異なるので、制御部35は、光学センサ80の検出器からの信号によって、どの分離された層の成分が第1移送チューブ6内を移送されているのかを判別することができる。制御部35は、2つの光学センサ80の検出の時間差により、臍帯血の成分の流速を算出することができる。制御部35は、2つの光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、切換モータ70を駆動して、流路切換部5を第1開状態、第2開状態または開状態に切り換える。すなわち、制御部35は、臍帯血の成分の流速に合ったタイミングで流路切換部5を切り換えることができる。
【0077】
図5の通り、電源電池54および通信機55がローター37に設けられている。電源電池54は、バランシングモータ52および通信機55に電気的に接続されており、これらに電力を供給する。遠心バケット60がローター37に支持されたときに、コネクタ等の周知の手段によって、遠心バケット60とローター37との間の電気的な接続が実現されるように構成されている。それによって、電源電池54は、遠心バケット60内の切換モータ70、展開用モータ92、液位センサおよび光学センサ80に電力を供給する。なお、遠心モータ41は、電源電池54ではなく、別の電源から電力供給される。
【0078】
通信機55は、制御部35と無線で通信する機能を有する。液位センサおよび光学センサ80のシグナルは、通信機55、および、上述した遠心バケット60とローター37との間の電気的な接続を介して制御部35に送信される。制御部35は、通信機55を介してバランシングモータ52を駆動制御し、通信機55および上述した遠心バケット60とローター37との間の電気的な接続を介して、切換モータ70、展開用モータ92を駆動制御する。こうして、制御部35が、ローター37および遠心バケット60に設けられた各モータ52,70,92を制御することができる。なお、制御部35の一部分が、ローター37に設けられて、遠心機30の動作の一部を、通信機55を用いずに制御してもよい。
【0079】
上記バッグセット1および遠心機30によって、臍帯血幹細胞を採取するシステムが構成される。
【0080】
[臍帯血幹細胞の採取方法]
以下、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取する方法が説明される。
【0081】
臍帯血の採取が行われる。
図1に示されるバッグセット1が準備される。オペレータは、採血チューブ11の採血針12を臍帯静脈に穿刺する。臍帯は臍帯血バッグ2より高く保持されて、臍帯血は、重力により、臍帯から採血チューブ11を通じて臍帯血バッグ2に移送され、収容される。ここで、流路切換部5は閉状態(
図2A)であり、臍帯血バッグ2内の臍帯血が、第2移送チューブ7および第3移送チューブ8へ流れることはない。なお、バッグセット1の使用時には予め抗凝固剤が臍帯血バッグ2に添加されている。
【0082】
次いで、臍帯血の遠心分離が行われる。オペレータは、採血後に採血チューブ11を、臍帯血バッグ2の近傍の位置でヒートシールして、切り離す。また、オペレータは、汚染防止用フィルム10を取り外す。オペレータは、別の場所に移動し、バッグセット1を
図7Bの通りに遠心バケット60に収容し、遠心バケット60を展開機構90でロックする。具体的には、展開された遠心バケット60において、臍帯血バッグ2をバケット本体63に収容し、これを上面カバー66および保護板67で覆い、流路切換部5を切換モータ70に連結し、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4をバッグカバー68に収容し、バッグカバー68を回動してバケット本体63に向けて押し付けて、ストッパー91で係止する。その後に、遠心バケット60をローター37に支持させる。
【0083】
オペレータは、遠心機30の操作部36を操作して、遠心機30に、採取された臍帯血を遠心分離させる。まず、遠心機30は、液位センサによって臍帯血バッグ2内の臍帯血の液位を検出し、その検出結果に基づいて、バランサー50を調整機構51によって適切な位置に移動させる。そして、遠心機30は、回転機構39によって回転軸38の周りにローター37およびこれに支持された遠心バケット60を回転させる。それによって、臍帯血が、臍帯血バッグ2内で遠心分離される。なお、遠心力によってバッグカバー68が回動しないように、遠心機30が遠心分離の際に展開用モータ92を駆動して、ストッパー91を下方に付勢してもよい。
【0084】
遠心分離の結果、臍帯血は、臍帯血バッグ2内で層状に、具体的には大別して3層に分離される。最下層は、比重の大きい赤血球の層となる。中間層は、臍帯血幹細胞を含んだ白血球の層となる。最上層は、血漿の層となる。
【0085】
実施形態では赤血球沈降剤が使用されない。赤血球沈降剤の不使用分離の条件は、ストークスの法則による沈降速度の一般式(以下の数1参照)で示される血液細胞が効率よく分離できる遠心領域で実行する。
【0086】
[数1]
(ストークス法則の沈降速度の一般式)
Vp=d2(P1-P2)/18μ×G
Vp:沈降速度
d :粒子の径
P1:粒子の密度(濃度)
P2:液体の濃度(密度)
μ:液体の粘度
G:重力加速度
【0087】
その為に、現行で実施されている遠心力の2.5~6倍の大きさが必要である。且つ、比重が大きく移動速度の大きい細胞による巻き込みの影響を出来るだけ少なくする為に、遠心力の上昇速度は精密に制御する必要がある。遠心機30の回転速度の制御プログラムは、高い制御精度に設計されている。例えば、遠心機30は、約1800Gの遠心力(遠心加速度)で、約15分間、遠心分離を行う。
【0088】
遠心機30は、遠心による各細胞の分離階層化が完了すると、ローター37の回転を分離層の乱れが生じない速度で減速し、回転停止の少し前に遠心バケット60のロックを展開機構90により解除する。すると、遠心バケット60は遠心力によって外周に向かって展開するが下方に下がる時には遠心力がブレーキとなり、ローター37の停止と共に静かに、
図8、
図9のように展開して、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4を臍帯血バッグ2よりも低い位置に垂れ下げる。
【0089】
遠心機30は、切換モータ70を駆動して流路切換部5を開状態から第1開状態にする。したがって、第1移送チューブ6と第2移送チューブ7とが互いに連通する。これによって、臍帯血バッグ2内の最下層の赤血球が、重力により、第1移送チューブ6および第2移送チューブ7を通って赤血球バッグ3に移送され、収容されていく。
【0090】
赤血球に続いて、中間層の臍帯血幹細胞を含む白血球が第1移送チューブ6内を移送される。これは、光学センサ80によって検出される。遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第1開状態から第2開状態に切り換えて、第1移送チューブ6を今度は第3移送チューブ8と連通させる。これにより、臍帯血幹細胞を含む白血球が第3移送チューブ8を通って幹細胞バッグ4に移送され、収容されていく。
【0091】
臍帯血幹細胞を含む白血球の移送が完了すると、遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第2開状態から閉状態に切り換える。これにより、血漿は、臍帯血バッグ2および第1移送チューブ6内に溜められる。
【0092】
したがって、臍帯血が分離されて、血漿は臍帯血バッグ2に留まり、赤血球は赤血球バッグ3に収容され、臍帯血幹細胞を含む白血球は幹細胞バッグ4に収容される。こうして、臍帯血幹細胞の採取が完了する。遠心機30は、遠心分離およびこれに続く臍帯血幹細胞の幹細胞バッグ4への収容を完了すると、その旨を、音声またはディスプレイによりオペレータに対して周知する。
【0093】
以上の実施形態の幹細胞の採取方法によれば以下のような利点がある。
【0094】
従来の採取方法は6時間を越える程で完了するのに対して、本願の実施形態の採取方法は約60分で完了し、時間的な負担を大幅に軽減する。従来の採取処理は、ほとんどの作業が手技で行われており、オペレータは長時間にわたる緊張する作業を余儀なくされていた。これに対して、本願の実施形態の採取処理は、ほとんどの作業がバッグセット1および遠心機30によって自動的に行なわれるので、オペレータの労働的な負担も大幅に軽減する。
【0095】
本願の実施形態の採取方法は、以下の従来の採取方法の作業を減縮する。
・赤血球沈降用の薬剤添加および混合作業(本願では全く不要)
・低遠心力/高遠心力に切り換えて行われる2度の遠心分離(本願では1度の遠心分離)
・採血バッグから赤血球以外の上層を分離バッグへ移し換える作業
・分離バッグから臍帯血幹細胞以外の上層を血漿バッグへ移し換える作業
・分離バッグから臍帯血幹細胞を幹細胞バッグへ移送或いは移注する作業
・処理作業中に繰り返される重量測定操作
【0096】
バッグセット1の各構成要素は密閉状態で接続されており、臍帯血が外部環境に触れず、汚染の可能性が最大限に抑えられている。汚染防止用フィルム10によって、採血時のバッグセット1の汚染が防止されている。
【0097】
臍帯血の採取量は、個体による差異がある。この差異は、遠心分離の際のバランスを損なわせ、破損の危険性をもたらす。しかしながら、バランサー50、調整機構51および液位センサによって、採取量に応じて適切なバランスが図られ、安定した遠心分離が保障される。
【0098】
高い遠心力で臍帯血の分離が行われる。遠心バケット60の第1収容部61は、臍帯血バッグ2の外形に合った形状を成して、臍帯血バッグ2を受容しているので、臍帯血バッグ2の変形による破損が防止されている。
【0099】
臍帯血バッグ2、赤血球バッグ3、および幹細胞バッグ4のそれぞれに設けられた滅菌エア・ベントフィルタは、臍帯血の成分の移送時に生じる抵抗力を減少させ、各バッグの内圧変化をなくし、移送を確実にしている。この滅菌エア・ベントフィルタがないバッグセットでも内圧を下げるか、セットした時に内容量が少なくなっていれば実用になる。例えば、真空採血管のように3つのバッグ2,3,4内をそれぞれ適当に減圧して、臍帯血を取り込み、遠心分離後は流路切換部5を使って赤血球層と幹細胞を含む白血球層とを、層の乱れなく移送させてもよい。
【0100】
2つの光学センサ80の検出時間差を流速に変換して赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4への移送開始と終了のタイミング精度を確保している。すなわち、処理時の血液の温度、濃度等による粘度の差を補正して精度を上げている。結果、臍帯血幹細胞を精度良く効率的に採取できる。
【0101】
図1のバッグセット1では、採血チューブ11が、臍帯血バッグ2と一体的に結合している。これに代えて、採血チューブ11は使用前において臍帯血バッグ2と分離して設けられてよい。
例えば、臍帯血バッグ2が、導入口9と、導入口9に着脱可能に取り付けられて導入口9を密閉する汚染防止用キャップ(不図示)とを有し、採血チューブ11が一端において採血針12を有し、他端において導入口9に接続される形状を有してもよい。臍帯血の採取の際、汚染防止用キャップを取り外し、採血チューブ11を導入口9に接続し、採血針12を臍帯に穿刺する。採血後、採血チューブ11を導入口9から取り外し、汚染防止用キャップを導入口9に装着する。なお、この場合も、採血チューブ11の両端は、使用前にキャップされている。
【0102】
以下、別の実施形態が説明される。第1実施形態と同一または類似の構成については同一の符号が付され、その説明は省略される。また、第1実施形態と同一または類似の方法のステップも、その説明が可能な限り省略される。
【0103】
[第2実施形態]
図11,
図12は、第2実施形態に係る遠心バケット60を示す。バッグセット1は、バケット本体63に収容される。すなわち、臍帯血バッグ2を収容するための第1収容部61、および、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4を収容するための第2収容部62は共に、バケット本体63によって形成されている。第2収容部62は、第1収容部61およびスイングアーム64より下方に設けられる。臍帯血バッグ2は縦向きに収容され、赤血球バッグ3および幹細胞バッグ4は横向きに収容される。バッグカバー68でバケット本体63を覆い、それから上面カバー66でバケット本体63を覆うことで、遠心バケット60が閉じられる。
【0104】
遠心機30は、さらに、プッシャー100と、プッシャー100を遠心バケット60に収容された臍帯血バッグ2に押し付ける、遠心バケット60に設けられた押出機構102とを備える。
【0105】
プッシャー100は、プレート形状を有する。プッシャー100は、その下端において、ピン101によって回動可能にバッグカバー68に取り付けられている。
図11Bの通り、バッグカバー68が、バッグセット1が収容されたバケット本体63を覆っているとき、プッシャー100は臍帯血バッグ2と対面する。したがって、臍帯血バッグ2はプッシャー100と遠心バケット60(バケット本体63)の内壁とによって挟まれた状態になる。
【0106】
図11Bの通り、押出機構102は、押出用モータ103を備える。押出用モータ103は、バケット本体63内の上部に、そのシャフト104が水平になるように取り付けられている。押出用モータ103は、電源電池54(
図5)によって電力供給を受けるように、かつ、制御部35(
図3)によって制御されるように構成されている。
【0107】
シャフト104には、外周面がねじ切りされた取付体105が嵌められている。プッシャー100の上端部に孔が形成されている。
図11Bの通り、バッグカバー68がバケット本体63を覆っているとき、プッシャー100をその孔の位置において取付体104のネジ切りに掛けて取付体104に装着できる。この状態で、押出機構102が、モータ103を駆動してそのシャフト104を回転させれば、プッシャー100をピン101の周りに所定の範囲で動かすことができる。したがって、押出機構102は、プッシャー100を臍帯血バッグ2に押し付けることができる。
【0108】
押出機構102は、プッシャー100を臍帯血バッグ2に押し付けることで、臍帯血バッグ2をプッシャー100と遠心バケット60の内壁とによって挟むことができ、それにより、臍帯血バッグ2の容積を連続的かつ強制的に減少させることができる。すなわち、押出機構102は、プッシャー100によって、臍帯血の成分を臍帯血バッグ2から第1移送チューブ6へ押し出して移送することができる。
【0109】
なお、押出機構102は、上記の構成に限定されるものではなく、プッシャー100を動かして、臍帯血の成分をプッシャー100によって臍帯血バッグ2から押し出すことができる構成であれば任意の構成が採用されてよい。例えば、プッシャー100がバッグカバー68とは反対側に配置されて、押出機構102が、プッシャー100を臍帯血バッグ2に押し付け、臍帯血バッグ2がプッシャー100とバッグカバー68の内壁とによって挟まれるようにして、臍帯血の成分を臍帯血バッグ2から押し出してもよい。
【0110】
以下、第2実施形態において、臍帯血から臍帯血幹細胞を採取する方法が説明される。この実施形態では、バッグセット1をバケット本体63に収容し、バッグカバー68でバケット本体63を覆うときに、上述の通り、プッシャー100を取付体104に掛けて装着しておく。そして、第1実施形態と同様に、遠心機30は、臍帯血を臍帯血バッグ2内で遠心分離して3層に分ける。
【0111】
次いで、遠心機30は、切換モータ70を駆動して流路切換部5を開状態から第1開状態して、第1移送チューブ6を第2移送チューブ7と連通させる。そして、遠心機30は、押出用モータ103を駆動してプッシャー100を臍帯血バッグ2に押し付け、臍帯血バッグ2の容積を減少させていく。これにより、最下層の赤血球が、臍帯血バッグ2から押し出され、第1移送チューブ6および第2移送チューブ7を通って赤血球バッグ3に移送され、収容されていく。
【0112】
次いで、遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第1開状態から第2開状態に切り換えて、第1移送チューブ6を今度は第3移送チューブ8と連通させる。遠心機30は、プッシャー100を臍帯血バッグ2に押し付け、臍帯血バッグ2の容積を減少させ続けている。したがって、臍帯血幹細胞を含む白血球が、臍帯血バッグ2から押し出され、第1移送チューブ6および第3移送チューブ8を通って幹細胞バッグ4に移送され、収容されていく。
【0113】
次いで、遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第2開状態から閉状態に切り換える。これにより、血漿は、臍帯血バッグ2および第1移送チューブ6内に溜められる。遠心機30は、プッシャー100の臍帯血バッグ2への押し付けを止める。
【0114】
こうして、先の実施形態と同様に、臍帯血幹細胞の採取が完了する。
【0115】
第2実施形態では、プッシャー100の押出速度の調整により、臍帯血成分の移送速度を調整することができる。すなわち、臍帯血の成分を、自由落下以下の緩やかな速度からその数倍の速度までの任意の速度で移送することができる。第2実施形態の遠心機30では、最適な移送速度を選択することで、より効率的な臍帯血からの幹細胞採取を実現することができる。
【0116】
また、展開機構90が不要であり、第1実施形態よりも遠心バケット60の構造が簡略化することは第2実施形態の利点である。
【0117】
[第3実施形態]
第3実施形態では、臍帯血成分の移送が、遠心力を利用して行われる。この実施形態では、例えば、
図11のような遠心バケット60であって、プッシャー100および押出機構102が設けられていない遠心バケット60が用いられる。以下、第3実施形態における臍帯血から臍帯血幹細胞を採取する方法が説明される。
【0118】
先の実施形態と同様に、遠心機30は、回転機構39によって回転軸38の周りにローター37およびこれに支持された遠心バケット60を回転させて、臍帯血を、臍帯血バッグ2内で遠心分離する。
【0119】
次いで、遠心機30は、切換モータ70によって流路切換部5を開状態から第1開状態にするとともに、回転機構39によって回転軸38の周りにローター37およびこれに支持された遠心バケット60を回転させ、遠心分離された臍帯血にさらに遠心力を加える。これにより、最下層の赤血球が、遠心力によって、臍帯血バッグ2から、第1移送チューブ6および第2移送チューブ7を通って赤血球バッグ3に移送され、収容されていく。
【0120】
次いで、遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第1開状態から第2開状態に切り換える。ローター37およびこれに支持された遠心バケット60は回転し続けている。したがって、臍帯血幹細胞を含む白血球が、遠心力によって、臍帯血バッグ2から、第1移送チューブ6および第3移送チューブ8を通って幹細胞バッグ4に移送され、収容されていく。
【0121】
次いで、遠心機30は、光学センサ80の検出結果に基づいて決定されるタイミングで、流路切換部5を切換モータ70によって第2開状態から閉状態に切り換え、さらに、ローター37の回転を止める。これにより、血漿は、臍帯血バッグ2および第1移送チューブ6内に溜められる。こうして、臍帯血幹細胞の採取が完了する。
【0122】
第3実施形態では、遠心力を加えるという遠心機30の本来の機能を利用して、臍帯血の成分の移送を行う。したがって、前述のような展開機構90、プッシャー100、押出機構102は不要である。これにより、遠心バケット60、ひいては遠心機30のよりいっそうの構造的な合理化を実現することができる。
【0123】
遠心力を利用して移送が行われるので、遠心力を、したがってローター37の回転数を正確に制御することによって、所望の移送速度で臍帯血の成分を移送できることも第3実施形態の利点である。
【符号の説明】
【0124】
1 臍帯血用バッグセット
2 臍帯血バッグ
3 赤血球バッグ
4 幹細胞バッグ
5 流路切換部(流路切換コック)
6 第1移送チューブ
7 第2移送チューブ
8 第3移送チューブ
9 導入口
10 汚染防止用フィルム
30 遠心機
37 ローター
38 回転軸
39 回転機構
50 バランサー
51 調整機構
60 遠心バケット
61 第1収容部
62 第2収容部
70 切換モータ
71 ダイオードアレイ
80 光学センサ
90 展開機構
100 プッシャー
102 押出機構