(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】動線管理システム、動線管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240416BHJP
G05D 1/247 20240101ALI20240416BHJP
G05D 1/644 20240101ALI20240416BHJP
G05D 1/622 20240101ALI20240416BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/247
G05D1/644
G05D1/622
(21)【出願番号】P 2020136162
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】須田 渉
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0145900(US,A1)
【文献】特開2020-145639(JP,A)
【文献】特開2017-076842(JP,A)
【文献】特開2004-207335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
B65G 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、
複数の前記移動体が経由可能な動線上に配置された、マルチホップ機能を備える複数のLPWAモジュールと、
複数の前記移動体とLPWAネットワークを介して接続され、前記マルチホップ機能を用いて得られる複数の経路候補情報から、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を動線管理対象の移動体の移動経路として決定するサーバマシンと、
を備える、
動線管理システム。
【請求項2】
前記移動体は、前記マルチホップ機能を用いて得られる複数の経路候補情報を集約して、前記サーバマシンに送信する、
請求項1に記載の動線管理システム。
【請求項3】
複数の経路候補情報は、それぞれ経由するLPWAモジュールの情報を含む、
請求項1又は2に記載の動線管理システム。
【請求項4】
前記サーバマシンは、受信した複数の経路候補情報に基づいて、経由するLPWAモジュールの数が少ない経路を最短経路と判断する、
請求項3に記載の動線管理システム。
【請求項5】
前記サーバマシンは、複数の前記移動体それぞれの移動経路における、通過時間、通過座標を含む動線管理情報を保持し、前記動線管理情報を参照して前記移動体の競合を判断する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の動線管理システム。
【請求項6】
前記サーバマシンは、前記移動体の競合があると判断した場合、競合が発生する移動体の経路を変更して、複数の前記移動体を同時刻に移動開始させる、
請求項5に記載の動線管理システム。
【請求項7】
前記サーバマシンは、前記移動体の競合が回避不可能であると判断した場合、競合が発生する移動体の移動開始時刻を変更する、
請求項5に記載の動線管理システム。
【請求項8】
前記サーバマシンは、複数の前記移動体のうち、移動中の搬送ロボットではなく、かつ、目的地から最も近い搬送ロボットを動線管理対象の移動体として決定する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の動線管理システム。
【請求項9】
LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、サーバマシンとをLPWAネットワークを介して接続し、
移動体が経由可能な動線上に配置された複数のLPWAモジュールのマルチホップ機能を用いて複数の経路候補情報を前記サーバマシンに送信し、
受信した複数の経路候補情報に基づいて、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を移動体の移動経路として決定する、
動線管理方法。
【請求項10】
LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、サーバマシンとをLPWAネットワークを介して接続する処理と、
移動体が経由可能な動線上に配置された複数のLPWAモジュールのマルチホップ機能を用いて複数の経路候補情報を前記サーバマシンに送信する処理と、
受信した複数の経路候補情報に基づいて、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を移動体の移動経路として決定する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動線管理システム、動線管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの発達により電子商取引(electronic commerce:EC)が行われる頻度と回数が増加している。この結果、商品は実店舗よりも倉庫から消費者の元に配達されることが多くなっている。商品を倉庫から消費者の元へ届ける際、倉庫から必要な商品をピックアップすることが必要になるが、ピックアップの効率化と間違いを減らす目的で搬送ロボットを使用する企業が多くなってきている。
【0003】
しかしながら、搬送ロボットの制御システムに機械学習やディープラーニングを使用する場合、学習による最適化が行われるまでに試験運用を行うなど時間が掛かる。また、個々の搬送ロボットが商品のピッキングまでの経路判断、衝突回避などの役割を担うため、システム全体の動線管理が非常に複雑になる傾向があった。
【0004】
特許文献1には、ピッキング作業が行われる作業フロアを含む複数のフロア間で、物品を格納する容器を保持した搬送ロボットを搬送する搬送システムが開示されている。搬送ロボットは、ネットワークを介して搬送管理装置と通信可能に接続されている。搬送管理装置から送信される指示に基づき、搬送ロボットを作業フロアに搬送するための経路が決定される。搬送ロボットにはフロアの床に設けられたマーカを読み取るセンサが設けられており、搬送ロボット自身が現在位置情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マーカの読み取りにより搬送ロボットの現在位置を取得する場合、長期間の運用により、フロアに設けられた現在位置を示すマーカが経年劣化し、読み取りエラーが増加する恐れがある。このため、定期的に現在位置を示すマーカの取り替え作業が発生するという問題がある。
【0007】
なお、搬送ロボットにカメラや赤外線センサを搭載し、周囲の環境情報等に基づいて、搬送ロボットの経路判断や衝突回避を行うことも考えられる。しかし、この方法では、全ての搬送ロボットにカメラ等を搭載するためコストが高くなること、動線管理システムの更新時に全ての搬送ロボットに対してシステム更新を行う作業が発生することが考えられる。
【0008】
本開示の目的は、上述した問題を鑑み、所定の領域内を移動する移動体の動線管理の高効率化、低コスト化を可能とする動線管理システム、動線管理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る動線管理システムは、LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、移動体が経由可能な動線上に配置された、マルチホップ機能を備える複数のLPWAモジュールと、複数の移動体とLPWAネットワークを介して接続され、前記マルチホップ機能を用いて得られる複数の経路候補情報から、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を移動体の移動経路として決定するサーバマシンとを備えるものである。
【0010】
本開示の一態様に係る動線管理方法は、LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、サーバマシンとをLPWAネットワークを介して接続し、移動体が経由可能な動線上に配置された複数のLPWAモジュールのマルチホップ機能を用いて複数の経路候補情報を前記サーバマシンに送信し、受信した複数の経路候補情報に基づいて、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を移動体の移動経路として決定する。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、LPWA(Low Power Wide Area)アンテナを備え、領域内を所定の移動経路で移動する複数の移動体と、サーバマシンとをLPWAネットワークを介して接続する処理と、移動体が経由可能な動線上に配置された複数のLPWAモジュールのマルチホップ機能を用いて複数の経路候補情報を前記サーバマシンに送信する処理と、受信した複数の経路候補情報に基づいて、他の移動体との競合を回避可能な最短経路を移動体の移動経路として決定する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、所定の領域内を移動する移動体の動線管理の高効率化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る動線管理システムを説明する図である。
【
図2】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法を説明するフロー図である。
【
図3】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法を説明するシーケンス図である。
【
図4】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法において、ピッキング作業を行う搬送ロボットを決定する方法を説明する図である。
【
図5】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法において、経路に障害物がない場合の最短経路の決定方法を説明する図である。
【
図6】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法において、経路に障害物がない場合の最短経路の決定方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法において、経路に障害物がある場合の迂回経路の決定方法を説明する図である。
【
図8】実施の形態に係る搬送ロボットが動作できない場合の動線管理方法を説明するフロー図である。
【
図9】実施の形態に係る搬送ロボットの動作できない場合の動線管理方法を説明するシーケンス図である。
【
図10】マルチホップ機能による経路候補情報のデータフォーマットの一例を示す図である。
【
図11】実施例に係る動線管理方法を説明する図である。
【
図12】実施例に係る動線管理方法を説明する図である。
【
図13】実施例に係る動線管理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。なお、特許請求の範囲に係る発明が、以下の実施の形態に限定されるものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0015】
実施の形態.
実施の形態は、例えば、倉庫内で搬送ロボットが商品や部品等の物品をピックアップする際の、搬送ロボットの動線管理に関する。
図1は、実施の形態に係る動線管理システム10を説明する図である。動線管理システム10は、搬送ロボットT1、LPWA((Low Power Wide Area)モジュール1、サーバマシン2を含む。動線管理システム10は、LPWA通信により搬送ロボットT1の移動経路の管理を行う。
【0016】
図1には、倉庫11内のレイアウトが平面で示されている。倉庫11内には、12個の棚12が2行6列の配列で並べられている。それぞれの棚12には、各種の物品が格納されている。棚12間及び12個の棚12の周囲には通路が設けられており、搬送ロボットT1が通路を通って移動可能となっている。搬送ロボットT1は、棚12の所定の位置に格納された物品をピックアップして、物品を保持した状態で、所定の経路を経由して搬送することが可能である。
【0017】
図1に示す例では、上面視で長方形状の棚12の長手方向の両端(上端、下端)に、LPWAモジュール1がそれぞれ配置されている。ここでは、物品のピッキングを行う動線管理対象の搬送ロボットT1がピッキング地点Pに向かう移動経路を決定する例について説明する。ピッキング地点Pは、1行目の右から2列目の上端側のLPWAモジュール1の位置であるものとする。また、2列目と3列目の棚12の間の通路では、他の搬送ロボットT2が動作中であるものとする。
【0018】
また、搬送ロボットT1には、LPWAアンテナが取り付けられている。搬送ロボットT1に取り付けられているLPWAアンテナには、搬送ロボットT1の動作に使用するバッテリなどの動力源の故障時にサーバマシン2へ通知を行うことを可能にするため、搬送ロボットT1の動力源とは別の動力源が使用される。
【0019】
LPWAは、消費電力を抑えながら広域通信を確保する無線通信方式であり、Wi-SUN、LoRaWAN、Sigfox等がある。LPWAネットワークは、実施の形態における、搬送ロボットの移動経路の決定や故障時の搬送ロボットの現在位置問い合わせの用途に適する。
【0020】
LPWAモジュール1は、マルチホップ型の通信モジュールであり、LPWAモジュール1間で経路候補情報を送受信して、搬送ロボットT1に集約するマルチホップ無線ネットワークを形成している。経路候補情報は、LPWAモジュール1を介してバケツリレー方式で搬送ロボットT1に転送される。搬送ロボットT1は、ピッキング地点Pから自身に最も近いLPWAモジュール1までの複数の経路候補情報をLPWAモジュールのマルチホップ機能により取得して、集約された経路候補情報をサーバマシン2に送信する。
【0021】
図1の例の場合、ピッキング地点Pから、搬送ロボットT1までには複数の経路候補(例えば、経路候補A~C)がある。経路候補情報には、どのLPWAモジュール1を経由した経路であるかが保持される。例えば、経路候補情報は、LPWAモジュール1のアドレス等を含み得る。
【0022】
サーバマシン2は、搬送ロボットT1から送信された複数の経路候補情報から、最短経路を搬送ロボットT1の移動経路として決定する。例えば、サーバマシン2は、LPWAモジュール1のアドレス等をあらかじめ保持しており、受信した経路候補情報から、どのLPWAモジュール1を経由した経路であるかを判別し、最短経路を決定することができる。
【0023】
サーバマシン2としては、図示は省略するが、処理装置を中心に、記憶手段、通信制御手段、必要に応じてキーボード等の入力手段、ディスプレイ等を備える、汎用コンピュータ装置を用いることができる。処理装置は、CPU(Central Processing Unit)や、RAM、ROM等の記憶部を有する。後述する動線管理の処理手順を規定するプログラムをRAMに読み出し、CPUにより実行することで、実施の形態に係る搬送ロボットT1の動線管理が実現される。記憶手段は、コンピュータ装置内外のメモリやハードディスクなどからなり、実施の形態に係るプログラムを格納することができる。
【0024】
ここで、
図2~7を参照して、搬送ロボットの動線管理方法について説明する。
図2は実施の形態に係る搬送ロボットの動線管理方法を説明するフロー図であり、
図3はそのシーケンス図である。
図4~7は、実施の形態に係る動線管理方法を説明する図である。
図4~7において、左から1列目、2列目、…、6列目とし、上から1行目、2行目、…、4行目とする。各図のLPWAモジュール1をLxy(xは行、yは列を表す)と呼称する。
【0025】
図2に示すように、まず、サーバマシン2が、物品のピッキング作業要求が発生した時に、ピッキングを行う動線管理対象の搬送ロボットと、ピッキング地点Pとを決定する(ステップS21)。搬送ロボットとピッキング地点Pの経路は、LPWAモジュール1を介した経路となる。ピッキング地点Pはピッキング作業要求の発生時点で既に決定されている。
【0026】
動線管理対象の搬送ロボットは、下記の(1)、(2)の条件を満たすものに決定される。
(1)物品のピッキング作業を行っていない(移動中ではない)搬送ロボット
(2)ピッキング地点P(目的地)から最も近い場所に存在する搬送ロボット
【0027】
(1)では、サーバマシン2が、自身が保持している各搬送ロボットの管理情報を参照して、物品のピッキング作業を行っていない、すなわち、移動中ではない搬送ロボットを選択する。(2)では、サーバマシン2が、倉庫11内に配置されたLPWAモジュール1によるマルチホップ通信で、(1)において選択された搬送ロボットのうち、ピッキング地点Pに最も近い位置に存在する搬送ロボットを、動線管理対象の搬送ロボットとして決定する。
【0028】
図4は、ピッキング作業を行う搬送ロボットの決定方法を説明する図である。
図4に示す例では、物品の運搬を行っていない搬送ロボットとして、搬送ロボットT1と搬送ロボットT2が存在するものとする。搬送ロボットT1からピッキング地点Pとの間に存在するLPWAモジュール1は、L22→L23→L24→L25→L26→16である。一方、搬送ロボットT2からピッキング地点Pとの間に存在するLPWAモジュール1は、L43→L44→L45→L35→36→L26→16である。この場合、搬送ロボットT1が動線管理対象の搬送ロボットとして決定される。
【0029】
このようにして搬送送ロボットが決定されると、サーバマシン2は、ピッキング地点PとなるLPWAモジュール1に、動線管理対象の搬送ロボットからピッキング地点Pまでの最短経路を要求する(S31)。倉庫11内の棚12に配置された複数のLPWAモジュール1のマルチホップ機能により、搬送ロボットは、ピッキング地点Pまで移動する複数の経路候補を受信する(S32)。搬送ロボットは、受信したすべての経路候補をサーバマシン2に送信する(S33)。
【0030】
次に、サーバマシン2は、搬送ロボットから送信された複数の経路候補情報から最短経路を選択する(ステップS22(S34))。上述した通り、マルチホップ機能により得られた経路候補情報には、どのLPWAモジュール1を経由した経路であるかを示すデータが保持されている。
【0031】
図5、6は、経路に障害物がない場合の最短経路の決定方法を説明する図である。
図5、6では、動線管理対象の搬送ロボットは搬送ロボットT1であるものとし、他の搬送ロボットは倉庫11内に存在しないものとする。搬送ロボットT1がピッキング地点Pに到達する経路には、無数の組み合わせがある。
図5では、例として、2つの経路1、2が示されている。経路候補は、ピッキング地点Pから見て、搬送ロボットT1まで、各地点に設置されたLPWAモジュール1間の距離が最短になるように決定される。
【0032】
図5の経路1は、
図6の経路候補1を参照すると、ピッキング地点Pから見て、L16→L26→L25→L24→L23→L22の順番にLPWAモジュール1を経由する。一方、
図5の経路2は、
図6の経路候補2を参照すると、L34から搬送ロボットT1に向かう方向にある最短距離のLPWAモジュール1がL33であるため、L16→L26→L36→L46→L45→L44→L34→L33→L32の順番にLPWAモジュール1を経由する。この場合、経路候補1の方が、経由するLPWAモジュール1の数が少ないため、最短経路は経路1となる。
【0033】
図5、6に示す方法で最短経路を決定した場合、最短経路上に障害物が存在すると、動線管理対象の搬送ロボットT1の経路として経路候補1を採用することができない。この場合、サーバマシン2は、搬送ロボットT1が障害物を回避するための迂回経路の探索を行う。ステップS23(S35)に進み、サーバマシン2は、動線管理対象の搬送ロボットT1が経路を通過する時刻の同座標に他の搬送ロボットが存在するか否かを判定する。
【0034】
図7は、最短経路上に障害物がある場合の迂回経路の決定方法を説明する図である。
図7では、他の搬送ロボットT2がLPWAモジュール1のL35→L25→L15を経由する経路で進むものとする。サーバマシン2は、すべての搬送ロボットが、何時、何処の座標に存在するかという動線管理情報を保持している。サーバマシン2は、動線管理情報を参照することにより、ステップS23の判定を行う。
【0035】
最短経路上において同時刻の同座標に他の搬送ロボットが存在している場合(ステップS23YES)、サーバマシン2は、この経路候補1を除外して、次に距離が短い経路を選択する(ステップS24(S36))。
【0036】
その後、S23に戻り、同様の判定が、同時刻の同座標に他の搬送ロボットが存在しない経路が見つかるまで行われる。なお、ステップS23、24(S35、S36)のループを繰り返す間に、他の搬送ロボットT2は移動を続けており、搬送ロボットT1は移動を開始していないため同時刻の同座標に他の搬送ロボットが存在しない経路は必ず選択できる。この場合、経路候補1以外の複数の経路候補の内、搬送ロボットT1が搬送ロボットT2と接触しない最短の経路が迂回経路として決定される。
図7の例では、迂回経路は、LPWAモジュール1のL22→L23→L13→L14→L15→L16となる。
【0037】
選択された経路上において同時刻の同座標に他の搬送ロボットが存在しない場合(ステップS23NO)、サーバマシン2は、該経路を移動経路として決定し、搬送ロボットT1へ通知するとともに、該搬送ロボットの動線管理情報として登録する(ステップS25(S37、S39))。この動線管理情報は、搬送ロボットT1が移動経路を通過する時刻情報と座標情報を含む情報である。搬送ロボットT1は、通知された経路を移動経路として登録する(S38)。
【0038】
このように、サーバマシン2から搬送ロボットT1に対して移動開始の指示を出す時には、搬送ロボットT1の移動経路は決定している。搬送ロボットT1は、サーバマシン2からの移動開始の指示に応じて、登録された移動経路を経由して、ピッキング地点Pへと移動を開始する。
【0039】
搬送ロボットにカメラや赤外線センサを搭載して障害物回避を行う場合、搬送ロボットは動作の開始から終了まで経路の細かい変更を行いながら移動を行う必要がある。これに対し、実施の形態では、LPWAネットワークを利用し、搬送ロボットの動作開始から終了までの移動経路は、サーバマシン2により動作を開始する前に全て決定される。これにより、搬送ロボットが商品をピックアップする際に移動する動線の管理・制御の効率化を図ることが可能となる。また、安価なLPWAモジュールを用いるため、カメラの画像認識や赤外線センサによる衝突回避の方法と比較すると、運用にかかるコストを低くすることができる。
【0040】
また、実施の形態では、搬送ロボットの移動経路の決定、移動開始の指示は、サーバマシンが行う。故障などにより搬送ロボットが移動出来なくなった場合、サーバマシンが搬送ロボットの死活確認を行うことができ、他の搬送ロボットへの迂回経路指示を行うことができる。このように、各搬送ロボットの動線管理をサーバマシンが集中して行うことができるため、搬送ロボットに対する機械学習やディープラーニングが不要になり、システムの低コスト化を実現することが可能となる。
【0041】
次に、
図8、9を参照して、搬送ロボットT1がピッキング動作を開始した後に、故障等で動作出来なくなった場合について説明する。
図8は、実施の形態に係る搬送ロボットが動作できなくなった場合の動線管理のフロー図であり、
図9は、そのシーケンス図である。サーバマシン2は、動線管理情報中に、搬送ロボットT1がピッキング地点Pへ到着する時刻を保持している。搬送ロボットT1はピッキング地点Pへ到着した際に、サーバマシン2に対して到着通知を送信する。
【0042】
搬送ロボットT1がピッキング地点Pに到着する時刻になると(ステップS41)、サーバマシン2は、搬送ロボットT1からの到着通知があるか否かを判断する(ステップS42)。ピッキング地点Pへの到着時刻に到着通知がある場合(ステップS42YES(S51))、搬送ロボットT1はピッキング地点Pに到着しており、処理は終了する。搬送ロボットT1が故障等の理由によりピッキング地点Pへ到着出来ず、ピッキング地点Pへの到着時刻に到着通知がない場合(ステップS42NO)、サーバマシン2は搬送ロボットT1へ現在位置の問い合わせを行う(ステップS43(S52))。
【0043】
その後、現在位置の問合せに対する搬送ロボットT1からの応答があるか否かが判断される(ステップS44)。搬送ロボットT1のLPWAアンテナは独立した動力源を有しているため、現在位置の問い合わせに対して応答を行うことができる。搬送ロボットT1からの応答がある場合(ステップS44YES)、搬送ロボットT1の現在位置情報がサーバマシン2へ送信される(S53)。応答を受信したサーバマシン2は、どの搬送ロボットに異常が発生したのか、及び、その位置情報をオペレータMに通知する(ステップS45(S54))。
【0044】
搬送ロボットT1のLPWAアンテナも故障して、搬送ロボットT1からの応答がない場合(ステップS44NO)、サーバマシン2は、どの搬送ロボットに異常が発生したのか、及び、その搬送ロボットT1が使用した経路情報をオペレータMに通知する(ステップS46(S55))。サーバマシン2から搬送ロボットT1に対して現在位置の問い合わせが発生した時点で、サーバマシン2の動線管理情報と実際の動線情報に差異が発生しているため、サーバマシン2は、異常のある搬送ロボットT1の経路情報を削除して(ステップS47(S56))、動線管理情報の更新を行う。
【0045】
以下、具体的な実施例について
図10~13を参照して説明する。
図10は、マルチホップ機能による経路候補情報のデータフォーマットの一例を示す図である。
図9を参照して、
図2のステップS22における、LPWAモジュールのマルチホップ機能による複数の経路候補から最短経路を選択する方法について説明する。
図10に示す例では、6個の棚12が2行3列の配列で並べられている。各棚12にはそれぞれの端部に1つずつ、合計12個のLPWAモジュールが設けられている。搬送ロボットT1は、左側と中央の棚12の間で、下端側に位置している。
【0046】
図10において、左から1列目、2列目、3列目とし、上から1行目、2行目、3行目とする。各図のLPWAモジュール1をLxy(xは行、yは列を表す)と呼称する。LPWAモジュールL13の位置をピッキング地点P1とする。
【0047】
ピッキング地点P1となるLPWAモジュールL13から、マルチホップ機能を使用して搬送ロボットT1と通信を行う。ここでは、経路候補として、経路候補A1と経路候補B1とがあるものとする。この時、マルチホップで経由したLPWAモジュール1がデータフォーマット内に保持される。経路候補A1の場合はLPWAモジュールL13、L23、L33、L43、L42を経由し、経路候補B1の場合はLPWAモジュールL13、L23、L22、L21、L31、L41を経由する。
【0048】
図10に示すように、経路候補A1、B1のデータフォーマットには、これらの経由したLPWAモジュールの情報が含まれる。経路候補A1、B1を比較すると、経路候補B1の方が経由するLPWAモジュールの数が多いため、最短経路は経路候補A1となる。なお、最短経路の決定方法は、この例に限定されるものではない。例えば、サーバマシン2が、受信した複数の経路候補情報に基づいて、各経路候補の距離を算出することも可能である。
【0049】
次に、
図11、12を参照して、実施例に係る動線管理方法において、最短経路を決定した後に、搬送ロボットが実際に移動する移動経路を変更する方法について説明する。
図11に示す例では、3つの搬送ロボットT1~T3が同時刻に移動を開始する例が示されている。
図11において、上述したような最短経路を選択する方法により選択された、各搬送ロボットT1~T3の移動経路が破線矢印で示されている。
【0050】
図11に示すように、搬送ロボットT1はピッキング地点P1、搬送ロボットT2はピッキング地点P2、搬送ロボットT3はピッキング地点P3へ進むものとする。現在時刻はCT1とする。サーバマシン2は、動線管理情報として、各搬送ロボットの出発地点と到着地点、出発時刻と到着時刻を保持している。搬送ロボットT1、T2は同時刻(CT1)に移動を開始した場合でも、経路差Gが存在するため、お互いの経路に干渉することなくそれぞれのピッキング地点P1、P2へ到着することが出来る。
【0051】
しかしながら、搬送ロボットT3は搬送ロボットT1、T2と移動経路が重複しているため、同時刻(CT1)に移動を開始すると衝突する。このため、
図12に示すように、サーバマシン2が搬送ロボットT3の移動経路を衝突が発生しない移動経路Dへ変更することで、3つの搬送ロボットT1~T3を同時刻に移動を開始させたとしても衝突を回避することが可能となる。
【0052】
次に、
図13を参照して、複数の搬送ロボットT1~T3が倉庫内を移動する際に、
図12のように移動経路を変更する方法では衝突回避が出来ない場合の、移動経路の決定方法について説明する。サーバマシン2は時刻CT1に搬送ロボットT1、T2へ移動開始の指示を送信する。また、サーバマシン2は搬送ロボットT1、T2が搬送ロボットT3と衝突を起こさない程度移動した後の時刻CT4に搬送ロボットT3へ移動開始の指示を送信する。このように、同時に出発すると移動経路が重複して衝突が発生する搬送ロボットT3の移動開始時刻を遅らせることで、衝突を回避することが可能となる。
【0053】
以上説明したように、実施の形態によれば、免許不要で、低消費電力、広域通信が可能であるLPWAネットワークを利用して、倉庫内の搬送ロボットの動線管理システムを構築することが出来る。このため、個々の搬送ロボットがピッキング地点までの移動経路を管理することなく、サーバマシンに全ての搬送ロボットの動線管理を集約できる。これにより、ピッキング作業の全体的な効率化が実現出来る。
【0054】
動線管理情報はサーバマシンによって集中管理されるため、機械学習やディープラーニングを導入する必要が無く、導入コストと運用コストを下げることが出来る。また、カメラや赤外線センサなどの他のデバイスを使用せず、安価で低消費電力なLPWAチップを使用することにより導入コストと運用コストを低くすることが出来る。また、搬送ロボットの動線管理はサーバマシンが全て行うが、このサーバマシンも一般消費者向けの安価なコンピュータ装置を使用することが可能であり、システムの導入コストも低減することが出来る。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。実施の形態は、倉庫のような高低差の無い領域内で、かつ、動線管理されている低速な移動体のみが存在する場合の動線管理方法であるため、例えば、人感センサを搭載した移動体による夜間警備等に応用可能である。また、LPWAモジュールは双方向通信が可能であるため、動線管理以外に移動体の死活確認も行う事が出来る。
【0056】
なお、図面に記載された様々な処理を行う機能ブロックとされた各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回線で構成することができる。また、本発明は、上述した処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。従って、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0057】
また、上述した処理をコンピュータに実行させるプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-Transitory computer Readable Medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage Medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer Readable Medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0058】
1 LPWAモジュール
2 サーバマシン
10 動線管理システム
11 倉庫
12 棚
T1 搬送ロボット
T2 搬送ロボット
T3 搬送ロボット
P ピッキング地点
M オペレータ