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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】版胴搬送用台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240416BHJP
   B41F 13/00 20060101ALI20240416BHJP
   B41F 13/24 20060101ALI20240416BHJP
   B62B 3/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B62B3/00 D
B41F13/00 514
B41F13/24 138
B62B3/00 A
B62B3/04 A
B62B3/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020148773
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043477
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】国竹 高明
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043202(JP,A)
【文献】特開平09-240478(JP,A)
【文献】実開平01-132471(JP,U)
【文献】実開平04-135870(JP,U)
【文献】実開昭51-077769(JP,U)
【文献】特開2014-065398(JP,A)
【文献】実開昭56-118168(JP,U)
【文献】実開昭50-114855(JP,U)
【文献】特開2004-238183(JP,A)
【文献】特開2006-126605(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203367(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B41F 13/00
B41F 13/24
B62B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴を積み下ろし作業可能な作業状態と前記版胴を搬送可能な搬送状態とに切り替え可能な版胴搬送用台車であって、
台車フレームと、
前記台車フレームの後部に設けられるハンドルと、
前記台車フレームの下部に設けられ、前記搬送状態において載置面に接地し、前記作業状態において前記載置面から離間する第一車輪と、
前記台車フレームの前部に設けられ、前記作業状態において前記載置面に接地し、前記搬送状態において前記載置面から離間する第二車輪と、
前記台車フレームの前部かつ上下方向に関して前記第一車輪と前記第二車輪との間に設けられ前記台車フレームに対して回転しない非回転部材であって前記搬送状態から前記作業状態または前記作業状態から前記搬送状態に切り替える場合に前記載置面に接地して前記台車フレームの回動支点として機能する非回転部材と、を備え、
前記搬送状態においてハンドルが押し上げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として前側に回動し、前記非回転部材と共に前記第二車輪が前記載置面に接地して前記作業状態となり、
前記作業状態においてハンドルが下げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として後側に回動し、前記非回転部材が前記載置面から離間し、前記第一車輪が前記載置面に接地して前記搬送状態となる、
ことを特徴とする版胴搬送用台車。
【請求項2】
前記台車フレームの下部かつ前後方向に関して前記第一車輪と前記非回転部材との間には支持棒が設けられ、
前記支持棒の下端は、前記第一車輪の下端よりも上側かつ前記非回転部材の下端よりも下側に位置し、
前記搬送状態においてハンドルが押し上げられると、前記支持棒の下端が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記支持棒の下端を回動支点として前側に回動した後、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として更に前側に回動し、最終的に前記非回転部材と共に前記第二車輪が前記載置面に接地して前記作業状態となり、
前記作業状態においてハンドルが下げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として後側に回動した後、前記支持棒の下端が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記支持棒の下端を回動支点として更に後側に回動し、最終的に前記第一車輪が前記載置面に接地して前記搬送状態となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の版胴搬送用台車。
【請求項3】
前記台車フレームには、前記ハンドルを押し上げる操作を助勢する反力発生装置が前記非回転部材の近傍に設けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の版胴搬送用台車。
【請求項4】
前記台車フレームの上部に設けられ、前記搬送状態において横置きされた前記版胴の版面を支持する版面支持部を備え、
前記版面支持部には、横置きされた前記版胴の長手方向の移動に追従して回転するローラが設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の版胴搬送用台車。
【請求項5】
前記台車フレームの前部に設けられ、前記作業状態において縦置きされた前記版胴の長手方向一端を支持する版胴端部支持部を備え、
前記版胴端部支持部は、前記版胴の長手方向一端を支持する支持面の高さを調整可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の版胴搬送用台車。
【請求項6】
前記台車フレームには、前記版胴を前記台車フレームに固定するための固定用ベルトが取り付け可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の版胴搬送用台車。
【請求項7】
前記非回転部材は、側面視円形状を有する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の版胴搬送用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴搬送用台車に関し、より詳細には、版胴を積み下ろし作業可能な作業状態と搬送可能な搬送状態とに切り替え可能な版胴搬送用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア印刷などに用いられる印刷機用の版胴を搬送するための技術が提案されている。例えば、特許文献1では、版胴を運搬する運搬用手押車が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の運搬用手押車は、フレーム(5)、車輪(8)、版胴支持部(9a,9b)、支持脚部(10)、車輪(11)、支持脚部(12)、フック状部(18)などを備えている(特許文献の図1)。
【0004】
版胴(1)を版胴支持部(9a,9b)に当接するとともにフック状部(18)で係止した後(特許文献1の図7)、フレーム(5)全体を後方に傾斜すると(特許文献1の図7)、版胴(1)はフック状部(18)による吊支状態で版胴支持部(9a,9b)により受支される。
【0005】
そして、フレーム(5)の傾斜により車輪(11)付きの支持脚部(10)が接地し、フレーム(5)が車輪(8)及び車輪(11)の四輪で支持される。特許文献1の図7の状態から更にフレーム(5)を傾斜させ、支持脚部(12)が接地すると、版胴(1)は水平状態で支持される(特許文献1の図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-240478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1では、フレーム(5)を図6の状態から図7の状態に傾斜(回動)させる場合、車輪(8)が回動支点になる。また、フレーム(5)が図7の状態から図8の実線で示す状態に傾斜(回動)させる場合、車輪(11)が回動支点になる。
【0008】
車輪(8)や車輪(11)を回動支点としてフレーム(5)を回動させると、フレーム(5)を傾斜(回動)させている最中に車輪(8)や車輪(11)の予期しない転がりに起因してフレーム(5)が操作者の意図に反して急に動くおそれがある。版胴(1)は比較的重量が大きいため、フレーム(5)が操作者の意図に反して急に動くと、大変危険である。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、台車フレームを回動させることによって版胴を積み下ろし作業可能な作業状態と版胴を搬送可能な搬送状態とに切り替え可能な版胴搬送用台車において台車フレームを安全に回動させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明に係る版胴搬送用台車は、
版胴を積み下ろし作業可能な作業状態と前記版胴を搬送可能な搬送状態とに切り替え可能な版胴搬送用台車であって、
台車フレームと、
前記台車フレームの後部に設けられるハンドルと、
前記台車フレームの下部に設けられ、前記搬送状態において載置面に接地し、前記作業状態において前記載置面から離間する第一車輪と、
前記台車フレームの前部に設けられ、前記作業状態において前記載置面に接地し、前記搬送状態において前記載置面から離間する第二車輪と、
前記台車フレームの前部かつ上下方向に関して前記第一車輪と前記第二車輪との間に設けられ前記台車フレームに対して回転しない非回転部材であって前記搬送状態から前記作業状態または前記作業状態から前記搬送状態に切り替える場合に前記載置面に接地して前記台車フレームの回動支点として機能する非回転部材と、を備え、
前記搬送状態においてハンドルが押し上げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として前側に回動し、前記非回転部材と共に前記第二車輪が前記載置面に接地して前記作業状態となり、
前記作業状態においてハンドルが下げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として後側に回動し、前記非回転部材が前記載置面から離間し、前記第一車輪が前記載置面に接地して前記搬送状態となる。
【0011】
また、前記台車フレームの下部かつ前後方向に関して前記第一車輪と前記非回転部材との間には支持棒が設けられ、
前記支持棒の下端は、前記第一車輪の下端よりも上側かつ前記非回転部材の下端よりも下側に位置し、
前記搬送状態においてハンドルが押し上げられると、前記支持棒の下端が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記支持棒の下端を回動支点として前側に回動した後、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として更に前側に回動し、最終的に前記非回転部材と共に前記第二車輪が前記載置面に接地して前記作業状態となり、
前記作業状態においてハンドルが下げられると、前記非回転部材が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記非回転部材を回動支点として後側に回動した後、前記支持棒の下端が前記載置面に接地して前記台車フレームが前記支持棒の下端を回動支点として更に後側に回動し、最終的に前記第一車輪が前記載置面に接地して前記搬送状態となる、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記台車フレームには、前記ハンドルを押し上げる操作を助勢する反力発生装置が前記非回転部材の近傍に設けられる、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記台車フレームの上部に設けられ、前記搬送状態において横置きされた前記版胴の版面を支持する版面支持部を備え、
前記版面支持部には、横置きされた前記版胴の長手方向の移動に追従して回転するローラが設けられている、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記台車フレームの前部に設けられ、前記作業状態において縦置きされた前記版胴の長手方向一端を支持する版胴端部支持部を備え、
前記版胴端部支持部は、前記版胴の長手方向一端を支持する支持面の高さを調整可能に設けられている、
こととしてもよい。
【0015】
また、前記台車フレームには、版胴を前記台車フレームに固定するための固定用ベルトが取り付け可能に構成されている、
こととしてもよい。
【0016】
また、前記非回転部材は、側面視円形状を有する、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送状態から作業状態または作業状態から搬送状態に移行する際に載置面に接地して台車フレームの回動支点となる非回転部材が台車フレームの前部かつ上下方向に関して第一車輪と第二車輪との間に設けられる。非回転部材は台車フレームに対して回転しないため、台車フレームを回動させている最中に台車フレームが操作者の意図に反して急に動くことがない。よって、台車フレームを安全に回動させ、搬送状態と作業状態とを切り替えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る版胴搬送用台車を右後方上部から見た斜視図である。
図2】実施の形態に係る版胴搬送用台車を右前方下部から見た斜視図である。
図3】載置面から離間した状態の反力発生装置を示す右側面図である。
図4】載置面に接地した状態の反力発生装置を示す右側面図である。
図5】前側の搬送キャスター近傍に設けられた支持棒を示す右側面図である。
図6】Vブロックを後方から見た背面図である。
図7】搬送状態にある版胴搬送用台車を示す右側面図である。
図8】台車フレームが前側に回動して支持棒が載置面に接地した状態を示す右側面図である。
図9】台車フレームが更に前側に回動して反力発生装置が載置面に接地した状態を示す右側面図である。
図10】台車フレームが更に前側に回動して非回転キャスターが載置面に接地した状態を示す右側面図である。
図11】作業状態にある版胴搬送用台車を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る版胴搬送用台車について図1から図11に基づき説明する。以下では、本発明に係る版胴搬送用台車の例として、図1及び図2に示す版胴搬送用台車1について説明する。
【0020】
版胴搬送用台車1は、操作者のハンドル操作に応じて、版胴を搬送可能な搬送状態ST1(図7)と、版胴を積み下ろし作業可能な作業状態ST2(図11)とを切り替え可能に構成されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、版胴搬送用台車1は、台車フレーム2、ハンドル3、前側の搬送用キャスター41L,41R、後側の搬送用キャスター42L,42R、作業用キャスター5L,5R、非回転キャスター6L,6Rなどを備えて構成される。
【0022】
台車フレーム2は、版胴搬送用台車1の骨格を形成するためのフレームである。具体的には、台車フレーム2は、下フレーム21L,21R、前側の縦フレーム221L,221R、後側の縦フレーム222L,222R、上フレーム23L,23R、L字フレーム24L,24Rなどが連結されて構成される。
【0023】
ハンドル3は、操作者によって把持されて操作される部分であり、台車フレーム2の後部に設けられる。ここでは、ハンドル3は、側面視L字状の部材として構成され、上フレーム23L,23Rの後端側に接続されている。
【0024】
前側の搬送用キャスター41L,41Rは、台車フレーム2の下部に設けられ、図7に示す搬送状態ST1において載置面に接地し、図11に示す作業状態ST2において載置面から離間する搬送用フロント車輪である。図1及び図2に示すように、前側の搬送用キャスター41L,41Rは、前側の縦フレーム221L,221Rの下端にそれぞれ設けられている。
【0025】
同様に、後側の搬送用キャスター42L,42Rは、台車フレーム2の下部に設けられ、図7に示す搬送状態ST1において載置面に接地し、図11に示す作業状態ST2において載置面から離間する搬送用リア車輪である。図1及び図2に示すように、後側の搬送用キャスター42L,42Rは、後側の縦フレーム222L,222Rの下端にそれぞれ設けられている。
【0026】
前側の搬送用キャスター41L,41R及び後側の搬送用キャスター42L,42Rは、本発明に係る第一車輪の一例である。
【0027】
作業用キャスター5L,5Rは、台車フレーム2の前部に設けられ、図7に示す搬送状態ST1において載置面から離間し、図11に示す作業状態ST2において載置面に接地する作業用の車輪である。図1及び図2に示すように、作業用キャスター5L,5Rは、L字フレーム24L,24Rの上端にそれぞれ設けられている。作業用キャスター5L,5Rは、本発明に係る第二車輪の一例である。
【0028】
非回転キャスター6L,6Rは、台車フレーム2に対して回転しない側面視円形のコロであり、L字フレーム24L,24Rの屈曲部にそれぞれ設けられている。より詳細には、非回転キャスター6L,6Rは、台車フレーム2の前部かつ上下方向及び前後方向に関して前側の搬送用キャスター41L,41Rと作業用キャスター5L,5Rとの間に設けられている。
【0029】
図11に示すように、非回転キャスター6L,6Rは、作業状態ST2において作業用キャスター5L,5Rと共に載置面に接地する。なお、非回転キャスター6L,6Rのうち載置面に設置する部分にはゴム素材が用いられている。
【0030】
非回転キャスター6L,6Rは、本発明に係る非回転部材の一例であり、搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1への切り替え操作において台車フレーム2の回動支点として機能する。
【0031】
また、図1及び図2に示すように、版胴搬送用台車1は、上述した構成要素に加え、反力発生装置7L,7R、支持棒8L,8R、支持プレート91、前後方向に離間して設けられる3つのVブロック92などを備えて構成される。
【0032】
反力発生装置7L,7Rは、版胴搬送用台車1を搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1に移行する際に台車フレーム2を回動させる反力を発生する装置である。反力発生装置7L,7Rは、非回転キャスター6L,6Rの近傍にそれぞれ設けられている。
【0033】
なお、反力発生装置7L,7Rは同様の構成を備えている。そこで、以下では、右側の反力発生装置7Rについて説明を行い、左側の反力発生装置7Lについては説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、反力発生装置7Rは、従動回転プレート71Rと、ガススプリング72Rとを備えて構成される。
【0035】
従動回転プレート71Rは、上端側がL字フレーム24Rの水平部分に回動可能に接続され、載置面に向かって延在するプレートである。従動回転プレート71Rの下端は、搬送状態ST1において載置面に近接し、搬送状態ST1から作業状態ST2に切り替わる最中に載置面に接触する位置にある。また、従動回転プレート71Rの下端側には、次に説明するガススプリング72Rの下端側が回動可能に接続されている。
【0036】
ガススプリング72Rは、搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1への切り替え操作において台車フレーム2の回転を助勢(アシスト)するための装置である。ガススプリング72Rのうち上端側はL字フレーム24Rの水平部分に回動可能に接続されている。また、ガススプリング72Rのうち下端側は従動回転プレート71Rの下端側に回動可能に接続されている。
【0037】
ガススプリング72Rは、シリンダ721Rとロッド722Rとからなる。シリンダ721Rにはピストン(図示せず)が摺動自由に嵌装されている。当該ピストンの一面に突設されたロッド722Rは、シリンダ721Rの一端から突出している。シリンダ721R内には窒素ガス等の圧縮ガスが封入され、ロッド722Rは、伸長する方向に付勢されている。
【0038】
台車フレーム2を回動させた際、従動回転プレート71Rの下端が載置面に接地すると、図4に示すように、ガススプリング72Rが収縮し、台車フレーム2を押し上げる方向(図4の矢印方向)に反力が発生する。当該反力は操作者によるハンドル操作をアシストする。
【0039】
図5に示すように、支持棒8Rは、下端にゴム部81Rを有する円柱状の部材であり、前側の搬送用キャスター41Rの近傍に設けられている。搬送状態ST1において、支持棒8L,8Rの下端に設けられたゴム部81Rは、載置面から僅かに浮いている。なお、図5では、右側の支持棒8Rが図示されているが、左側の支持棒8Lも同様の構成を備えている。
【0040】
支持棒8L,8Rの下端(ゴム部81L,81R)は、搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1への切り替え操作において台車フレーム2の回動支点になる。なお、搬送状態ST1において、支持棒8L,8Rの下端は、前側の搬送用キャスター41L,41Rの下端よりも上側かつ非回転キャスター6L,6Rの下端よりも下側に位置する。
【0041】
支持プレート91は、作業状態ST2において縦置きされた版胴10の長手方向一端(下端)を支持するためのプレートであり、本発明に係る版胴端部支持部の一例である。
【0042】
図1及び図2に示すように、支持プレート91の先端側には、二股の爪部911が設けられている。図11に示すように、作業状態ST2において爪部911がパレットPLの上面に載置され、支持プレート91がパレットPLの上面と略同じ高さに配置される。
【0043】
また、支持プレート91は、前後方向に延びる調整軸913に接続されている。調整軸913は、作業状態ST2における支持プレート91の支持面の高さを調整するための機構であり、軸方向に伸縮可能に構成されている。
【0044】
調整軸93が収縮すると、調整軸913に接続されている支持プレート91は後側に移動する。つまり、作業状態ST2における支持プレート91の支持面の高さが高くなる。一方、調整軸93が伸長すると、調整軸913に接続されている支持プレート91は前側に移動する。つまり、作業状態ST2における支持プレート91の支持面の高さが低くなる。
【0045】
Vブロック92は、搬送状態ST1において横置きされた版胴10の版面を支持するためのV字状の部材であり、本発明に係る版面支持部の一例である。
【0046】
図6に示すように、Vブロック92には、横置きされた版胴10の長手方向(版胴搬送用台車1の前後方向かつ図6の紙面奥行き方向)の移動に追従して回転するローラ921がV字内側の両サイド2箇所に設けられている。
【0047】
また、図示は省略するが、台車フレーム2には、版胴10を台車フレーム2に固定するための固定用ベルトが取り付け可能に構成されている。なお、固定用ベルトとしては、張力によって版胴10を台車フレーム2に固定する市販の荷締めベルトなどが用いられる。
【0048】
次に、図7から図11を参照しつつ、版胴搬送用台車1を搬送状態ST1(図7)から作業状態ST2(図11)に切り替える場合の動作(以下、単に切り替え動作SW1とも称する)について説明する。
【0049】
図7に示すように、搬送状態ST1においては、前側の搬送用キャスター41L,41R及び後側の搬送用キャスター42L,42Rのすべてが載置面に接地している。
【0050】
搬送状態ST1において操作者がハンドル3を押し上げる(持ち上げる)と、図8に示すように、後側の搬送用キャスター42L,42Rが載置面から離れて前側の搬送用キャスター41L,41Rの近傍に配置された支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rが直ぐに載置面に接地する。
【0051】
そして、台車フレーム2は、支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rを回動支点として前側に回動する。台車フレーム2がゴム部81L,81Rを回動支点として徐々に前側に回動すると、版胴搬送用台車1の重心が前方に移動する。なお、版胴搬送用台車1の重心がゴム部81L,81Rよりも前方に移動すると、台車フレーム2は自然と前側に回動する。
【0052】
台車フレーム2が前側に回動し、図9に示すように、反力発生装置7L,7Rの従動回転プレート71L,71Rの下端が載置面に接地すると、ガススプリング72L,72Rが収縮する。
【0053】
ガススプリング72L,72Rが収縮すると、ガススプリング72L,72Rには台車フレーム2を回動するための反力が発生する。ガススプリング72L,72Rの反力は、台車フレーム2を回動させる力となって操作者によるハンドル操作を助勢(アシスト)する。
【0054】
台車フレーム2が更に前側に回動すると、図10に示すように、支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rが載置面から離間すると共に非回転キャスター6L,6Rが載置面に接地し、台車フレーム2が非回転キャスター6L,6Rを回動支点として前側に回動する。
【0055】
なお、上述したガススプリング72L,72Rによるアシストは、ガススプリング72L,72Rのストロークが最大になるまで継続し、当該ストロークが最大となった時点(最伸状態になった時点)で終了する。
【0056】
台車フレーム2が非回転キャスター6L,6Rを回動支点として前側に更に回動すると、版胴搬送用台車1の重心も更に前方に移動する。なお、版胴搬送用台車1の重心が非回転キャスター6L,6Rよりも前方に移動すると、台車フレーム2は自然と前側に回動する。
【0057】
そして、最終的には、図11に示すように、作業用キャスター5L,5Rが載置面に接地し、台車フレーム2が完全に起き上がり、作業状態ST2となる。なお、台車フレーム2が完全に起き上がった作業状態ST2においても、非回転キャスター6L,6Rは接地した状態を維持する。つまり、作業状態ST2において、台車フレーム2は、幅方向に併設された2つの作業用キャスター5L,5Rと同じく幅方向に併設された2つの非回転キャスター6L,6Rとによって支持される。
【0058】
また、作業状態ST2において、支持プレート91の先端側に設けられた二股の爪部911がパレットPLの上面に引っかかる。これにより、支持プレート91の支持面がパレットPLの上面と略同じ高さに位置する。
【0059】
続いて、版胴搬送用台車1を作業状態ST2(図11)から搬送状態ST1(図7)に切り替える場合の動作(以下、単に切り替え動作SW2とも称する)について説明する。
【0060】
切り替え動作SW2は、基本的には上述した切り替え動作SW1と逆の動作が行われる。以下では、切り替え動作SW2について切り替え動作SW1との違いを中心に説明する。
【0061】
図11に示すように、作業状態ST2では、作業用キャスター5L,5R及び非回転キャスター6L,6Rが載置面に接地している。
【0062】
作業状態ST2において操作者がハンドル3を下げると(下ろすと)、図10に示すように、作業用キャスター5L,5Rが載置面から離間し、台車フレーム2が非回転キャスター6L,6Rを回動支点として後側に回動する。
【0063】
台車フレーム2が更に後側に回動すると、図9に示すように、非回転キャスター6L,6Rが載置面から離間し、反力発生装置7L,7Rの従動回転プレート71L,71Rの下端が載置面に接地する。従動回転プレート71L,71Rの下端が載置面に接地すると、ガススプリング72L,72Rが収縮して反力を発生する。ガススプリング72L,72Rによる反力は、台車フレーム2を後側に回動させる力となって操作者によるハンドル操作を助勢(アシスト)する。
【0064】
台車フレーム2が非回転キャスター6L,6Rを回動支点として更に後側に回動すると、支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rが載置面に接地する。そして、図8に示すように、台車フレーム2が支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rを回動支点として更に後側に回動する。
【0065】
台車フレーム2が更に後側に回動すると、前側の搬送用キャスター41L,41Rが載置面に接地し、支持棒8L,8Rのゴム部81L,81Rが載置面から離間する。
【0066】
そして、最終的には、後側の搬送用キャスター42L,42Rも載置面に接地し、図7に示す搬送状態ST1となる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態に係る版胴搬送用台車によれば、切り替え動作SW1,SW2において台車フレーム2の回動支点となる非回転キャスター6L,6Rが台車フレーム2の前部かつ上下方向に関して前側の搬送用キャスター41L,41Rと作業用キャスター5L,5Rとの間に設けられる。非回転キャスター6L,6Rは台車フレーム2に対して回転しないため、台車フレーム2を回動させている最中に台車フレーム2が操作者の意図に反して急に動くことがない。よって、版胴搬送用台車1において台車フレーム2を安全に回動させることが可能である。
【0068】
また、本実施の形態によれば、切り替え動作SW1では、まず、支持棒8L,8Rが台車フレーム2の回動支点として機能し、その後、非回転キャスター6L,6Rが回動支点として機能する。そのため、非回転キャスター6L,6Rのみが設けられる場合(支持棒8L,8Rが設けられない場合)に比べて、操作者の意図しない台車フレーム2の動きが更に低減され、台車フレーム2をより安全に回動させることが可能である。
【0069】
また、本実施の形態によれば、版胴搬送用台車1を搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1に移行する際に台車フレーム2を回動させる反力を発生する反力発生装置7L,7Rが非回転キャスター6L,6Rの近傍に設けられている。そのため、切り替え動作SW1,SW2における操作者のハンドル操作を助勢することでき、操作者はより少ない力でハンドル操作を行える。
【0070】
また、本実施の形態によれば、Vブロック92には、横置きされた版胴10の長手方向の移動に追従して回転するローラ921がV字内側の両サイド2箇所に設けられている。そのため、Vブロック92に横置きされた版胴10を図示しないユニット版胴自動交換装置にスライド移動させる場合にローラ921が回転することで版胴10を容易にスライドさせることが可能である。
【0071】
また、本実施の形態によれば、支持プレート91が調整軸913に接続されているため、版胴10を載置するパレットPL(図11)の高さに応じて支持プレート91の支持面の高さを調整することが可能である。
【0072】
また、本実施の形態によれば、台車フレーム2には、版胴10を台車フレーム2に固定するための固定用ベルトが取り付け可能に構成されている。そのため、切り替え動作SW1,SW2における台車フレーム2の回動時に版胴10が脱落するおそれがない。
【0073】
また、本実施の形態によれば、非回転キャスター6L,6Rが側面視円形状を有するため、回動支点として転がり易く、搬送状態ST1から作業状態ST2または作業状態ST2から搬送状態ST1への切り替えをスムーズに行うことが可能である。
【0074】
また、作業用キャスター5L,5Rと非回転キャスター6L,6Rとの双方が接地する作業状態ST2においてパレットPLに対する前後方向の位置調整を比較的スムーズに行うことが可能である。
【0075】
本発明に係る版胴搬送用台車は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0076】
例えば、上述した実施の形態では、支持棒8L,8Rと非回転キャスター6L,6Rとの双方が設けられる場合を例示したが、これに限定されず、非回転キャスター6L,6Rのみが設けられるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態では、反力発生装置7L,7Rがガススプリング72L,72Rの収縮によって反力を発生する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、コイルばねの弾力でロッドを伸長付勢するようにした他の形式の伸縮ステイを用いて反力を発生するようにしてもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態では、非回転部材の一例として側面視円形を有する非回転キャスター6L,6Rを例示したが、これに限定されず、側面視多角形を有する部材を非回転部材として用いるようにしてもよい。
【0079】
また、上述した実施の形態では、版面支持部の一例としてVブロック92を例示したが、これに限定されず、版面の形状に沿った円弧形状を有するUブロックを版面支持部として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 版胴搬送用台車、2 台車フレーム、3 ハンドル、5L,5R 作業用キャスター、6L,6R 非回転キャスター、7L,7R 反力発生装置、8L,8R 支持棒、10 版胴、21L,21R 下フレーム、23L,23R 上フレーム、24L,24R L字フレーム、41L,41R 前側の搬送用キャスター、42L,42R 後側の搬送用キャスター、71L,71R 従動回転プレート、72L,72R ガススプリング、81L,81R ゴム部、91 支持プレート、92 ブロック、93 調整軸、221L,221R 前側の縦フレーム、222L,222R 後側の縦フレーム、721R シリンダ、722R ロッド、911 爪部、913 調整軸、921 ローラ、PL パレット、ST1 搬送状態、ST2 作業状態
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