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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】男性用トップス
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/06 20060101AFI20240416BHJP
   A41B 9/08 20060101ALI20240416BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A41B9/06 D
A41B9/08
A41D27/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022079988
(22)【出願日】2022-05-16
(65)【公開番号】P2023168716
(43)【公開日】2023-11-29
【審査請求日】2022-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年4月1日にMakuakeのウェブサイト(https://www.makuake.com/project/putty/)に掲載 令和4年4月4日にPR TIMESのウェブサイト(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000079885.html)に掲載 令和3年5月27日にInstagram(https://www.instagram.com/p/CPXmwI8Ho_i/)に投稿 令和4年3月23日にInstagram(https://www.instagram.com/p/Cbb7c_Rruw_/)に投稿 令和4年4月5日にInstagram(https://www.instagram.com/p/Cb9TUaONoby/)に投稿
(73)【特許権者】
【識別番号】522192425
【氏名又は名称】株式会社HLM
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】村上 直也
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-098918(JP,A)
【文献】特開2015-218399(JP,A)
【文献】特開2000-199105(JP,A)
【文献】特開2000-336504(JP,A)
【文献】Makuake,[online],2021年09月10日,[2023月12月19日], インターネット,<URL: makuake.com/project/solve/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/06
A41B 9/08
A41D 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の裏面の内、少なくとも胸部と対応する位置に、裏布が設けられ
左右に離隔した箇所の前身頃と、その離隔寸法よりも短い寸法離隔した前記裏布の左右両端部とが縫合されて、前身頃に前記裏布が設けられている男性用トップスであって、
前身頃と後身頃とは、左右の側辺部において縫合されると共に、左右の肩部において縫合されており、
前記裏布は、前身頃よりも左右方向寸法が短く形成されており、
前記裏布は、前記左右の側辺部において前身頃や後身頃と一緒に縫合されると共に、前記左右の肩部において前身頃や後身頃と一緒に縫合されており、
前身頃と前記裏布とは、衿ぐりの部分では縫合されているが、アームホールの部分では縫合されていない
ことを特徴とする男性用トップス。
【請求項2】
アームホールの部分において、前記裏布の上下方向寸法は、前身頃の上下方向寸法よりも短く形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の男性用トップス。
【請求項3】
前記裏布は、胸部だけでなく腹部も覆うよう設けられ、
前記裏布の裾は、前身頃の裾よりも上方に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の男性用トップス。
【請求項4】
男性用トップスの洗濯方法、サイズ、素材、製造者、販売者、原産国等の内、いずれか一以上の表示が含まれるタグが設けられ、
このタグは、前身頃または前記裏布の裾部において、前身頃と前記裏布との間に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の男性用トップス。
【請求項5】
前記男性用トップスは、Tシャツ、カットソーまたはポロシャツである
ことを特徴する請求項1~4のいずれか1項に記載の男性用トップス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tシャツなどの男性用トップスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示される男性用衣類が提案されている。この男性用衣類は、Tシャツであり、乳首部分の衣類の浮き上がりを目立たなくするために、前身頃胸部の裏面に、男性の乳首が収容される凹部を設けたものである。前身頃胸部の布地を二重にして、裏側の布地の裏面に前記凹部を形成してもよいものである。
【0003】
しかしながら、従来技術は、トップス表面に乳首が浮き上がるのを目立たなくするためのものであり、胸の膨らみを目立たなくするものではない。たとえば、Tシャツ一枚だけを着た場合、男性でも乳房が大きいと、本人あるいは他人からみて、胸の膨らみが気になることがある。ところが、従来技術では、乳首のみを対象としており、乳房の膨らみを目立たなくするものではない。前身頃胸部の布地を二重にしても、単に二枚の布地を重ね合わせただけでは、いわば生地を分厚くしたに過ぎず、胸の膨らみを目立たなくするには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-90940号公報(要約、請求項1、請求項4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、胸の膨らみを気にせず着られる男性用トップスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、前身頃の裏面の内、少なくとも胸部と対応する位置に、裏布が設けられ左右に離隔した箇所の前身頃と、その離隔寸法よりも短い寸法離隔した前記裏布の左右両端部とが縫合されて、前身頃に前記裏布が設けられている男性用トップスであって、前身頃と後身頃とは、左右の側辺部において縫合されると共に、左右の肩部において縫合されており、前記裏布は、前身頃よりも左右方向寸法が短く形成されており、前記裏布は、前記左右の側辺部において前身頃や後身頃と一緒に縫合されると共に、前記左右の肩部において前身頃や後身頃と一緒に縫合されており、前身頃と前記裏布とは、衿ぐりの部分では縫合されているが、アームホールの部分では縫合されていないことを特徴とする男性用トップスである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前身頃の裏面には、少なくとも胸部と対応する位置に、裏布が設けられる。しかも、前身頃の内、左右に離隔した箇所に、その離隔寸法よりも短い寸法離隔した裏布の左右両端部が縫合されて設けられる。この場合、裏布の左右両端部間に、前身頃が多少余裕をもって配置されることになる。そのため、着用時、裏布が胸に密着しても、その表側の前身頃が胸に密着することはなく、胸の膨らみを目立たなくすることができる。また、前身頃に乳首が浮き出るおそれもない。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前身頃の左右両端部に裏布の左右両端部を縫合することで、縫合部が側端部となり、目立たずに裏布を設けることができる。また、少なくとも胸部と対応する位置において、左右方向全域に裏布が設けられるので、胸の膨らみを一層目立たなくすることができる。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、前身頃と後身頃とが側辺部や肩部で縫合されるが、その縫合部を利用して裏布を設けることができる。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、前身頃と裏布とを、衿ぐりの部分では一体化して見栄えを保つ一方、アームホールの部分は縫合しないことで、裏布が前身頃に完全に重なるのを防止して、胸の膨らみを目立たなくすることができる。また、アームホールの部分を縫合しないことで、袖の動きが規制されず、着用も容易となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、アームホールの部分において、前記裏布の上下方向寸法は、前身頃の上下方向寸法よりも短く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の男性用トップスである。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、アームホールの部分において、裏布を前身頃よりも小さく形成することで、裏布が前身頃に完全に重なるのを防止して、胸の膨らみを目立たなくすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記裏布は、胸部だけでなく腹部も覆うよう設けられ、前記裏布の裾は、前身頃の裾よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の男性用トップスである。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、胸部だけでなく腹部と対応する位置にも裏布を設けることで、お腹の膨らみも目立たなくすることができる。また、裏布の裾が前身頃の裾よりも上方に配置されるので、裏布が外部から見えず、見栄えを保つことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、男性用トップスの洗濯方法、サイズ、素材、製造者、販売者、原産国等の内、いずれか一以上の表示が含まれるタグが設けられ、このタグは、前身頃または前記裏布の裾部において、前身頃と前記裏布との間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の男性用トップスである。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、タグ(表示ラベル)は、前身頃と裏布との間に配置される。そのため、着用時にタグが肌に当たるのを防止して、着心地をよくすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記男性用トップスは、Tシャツ、カットソーまたはポロシャツであることを特徴する請求項1~4のいずれか1項に記載の男性用トップスである。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、Tシャツ、カットソー、ポロシャツとして構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、胸の膨らみを気にせず着られる男性用トップスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例のTシャツを示す概略図である。
図2図1のTシャツに用いられる前身頃を示す概略図である。
図3図1のTシャツに用いられる後身頃を示す概略図である。
図4図1のTシャツに用いられる裏布を示す概略図である。
図5図1のTシャツに用いられる袖布を示す概略図である。
図6図1のTシャツに用いられる衿布を示す概略図であり、(a)は衿布の展開図、(b)は使用時の折り曲げ状態の端部を示す斜視図である。
図7図1のTシャツの使用状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の男性用トップスを示す概略図である。この図に示すように、本実施例の男性用トップスは、Tシャツ1である。
【0027】
図2から図6は、図1のTシャツ1を構成するパーツを示す概略図であり、図2は前身頃2、図3は後身頃3、図4は裏布4、図5は袖布5、図6は衿布6を示している。なお、図6において、(a)は衿布6の展開図、(b)はその使用時の折り曲げ状態の端部を示す斜視図である。以下、図2における短手方向を左右方向、長手方向を上下方向、紙面と直交方向を前後方向として説明する。
【0028】
本実施例のTシャツ1は、前面(着用時に胸側となる面)に前身頃2、後面(着用時に背側となる面)に後身頃3が配置されて、所要部が縫合されて構成される。また、前身頃2や後身頃3には、両者の縫製後(または縫製前)、一対の袖布5より左右の袖が設けられる他、衿布6により衿が設けられる。さらに、詳細は後述するが、本実施例のTシャツ1は、前身頃2の裏面に裏布4が設けられる。
【0029】
図2から図6には、基本的には内外二重の枠線が示されるが、内側の太線IがTシャツ1の最終仕上がり形状を示し、その外側の線Oとの間が縫い代を示している。つまり、所定の縫い代で各パーツを縫合して、縫合部(縫い代)が内側にくるように裏返せば(つまり通常のTシャツ1の使用状態とすれば)、縫い代の見えない最終仕上がり形状のTシャツ1となる。
【0030】
図2に示すように、前身頃2は、略矩形状の布から構成され、左右両端辺部の上部が略半円弧状に切り欠かれて、前アームホール2aが形成される。また、上端辺部の左右方向中央部は、略半円弧状に切り欠かれて、前衿ぐり2bが形成される。さらに、図示例では、前身頃2は、下方へ行くに従って、左右方向寸法が僅かに短くなるように形成されている。
【0031】
以下、前身頃2について、左右両端辺部の内、前アームホール2aよりも下方を、側辺部2cという。また、上端辺部の内、前衿ぐり2bよりも左右方向外側を、肩部2dという。肩部2dは、図示例では、左右方向外側へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。なお、裾部(下端辺部)は、太線2eの箇所で折り返されて、それによる重ね合わせ部を破線2fの箇所でミシンにより縫合される。
【0032】
後身頃3は、基本的には前身頃2と対応して、同様に形成される。具体的には、図3に示すように、後身頃3は、略矩形状の布から構成され、左右両端辺部の上部が略半円弧状に切り欠かれて、後アームホール3aが形成される。但し、後アームホール3aは、前アームホール2aよりも、やや浅く形成されている。また、上端辺部の左右方向中央部は、略半円弧状に切り欠かれて、後衿ぐり3bが形成される。但し、後衿ぐり3bは、前衿ぐり2bよりも、かなり浅く形成されている。さらに、図示例では、後身頃3は、下方へ行くに従って、左右方向寸法が僅かに短くなるように形成されている。
【0033】
以下、後身頃3について、左右両端辺部の内、後アームホール3aよりも下方を、側辺部3cという。また、上端辺部の内、後衿ぐり3bよりも左右方向外側を、肩部3dという。肩部3dは、図示例では、左右方向外側へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。なお、裾部(下端辺部)は、太線3eの箇所で折り返されて、それによる重ね合わせ部を破線3fの箇所でミシンにより縫合される。
【0034】
前身頃2の裏面(着用時に肌側となる面)には、裏布4が設けられる。裏布4は、基本的には、前身頃2と対応して同様に形成されるが、前身頃2よりも小さく形成される。具体的には、図4に示すように、裏布4は、略矩形状の布から構成され、左右両端辺部の上部が略半円弧状に切り欠かれて、中アームホール4aが形成される。また、上端辺部の左右方向中央部は、略半円弧状に切り欠かれて、中衿ぐり4bが形成される。さらに、図示例では、裏布4は、下方へ行くに従って、左右方向寸法が僅かに短くなるように形成されている。
【0035】
以下、裏布4について、左右両端辺部の内、中アームホール4aよりも下方を、側辺部4cという。また、上端辺部の内、中衿ぐり4bよりも左右方向外側を、肩部4dという。肩部4dは、図示例では、左右方向外側へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。なお、裾部(下端辺部)は、太線4eの箇所で折り返されて、それによる重ね合わせ部を破線4fの箇所でミシンにより縫合される。
【0036】
典型的には、裏布4の中衿ぐり4bとその両側の肩部4dは、前身頃2の前衿ぐり2bとその両側の肩部2dと対応した形状に形成される。但し、詳細は後述するが、肩部4dの左右方向外端部を含めて、裏布4の左右方向の幅寸法は、前身頃2の左右方向の幅寸法よりもやや短く形成される。その場合、前身頃2と裏布4とは、各衿ぐり2b,4bおよび肩部2d,4dを対応させて重ね合わせることができ、その状態で、裏布4の中アームホール4aは前身頃2の前アームホール2aよりも左右方向内側に配置されることになる。
【0037】
前身頃2と後身頃3のアームホール2a,3aの部分には、左右それぞれに袖布5が設けられる。本実施例では、図5に示す袖布5が用いられる。袖布5は、上端辺部5aが上方へ山形に延出した略矩形状の布から形成される。この袖布5の左右両端辺部5bは、下方へ行くに従って左右方向内側へ傾斜するよう形成されている。前身頃2と後身頃3への袖布5の取付方法については、後述する。
【0038】
前身頃2と後身頃3の衿ぐり2b,3bの部分には、衿布6が設けられる。本実施例では、図6に示すように、帯状の衿布6が用いられる。衿布6は、幅方向中央部6aで二つ折りされ、前身頃2や後身頃3を挟むようにして縫合される。前身頃2や後身頃3への衿布6の取付方法については、後述する。なお、同図(b)に示すように、幅方向中央部で二つ折りされた衿布6の一片は、端辺部6bが内側に折り曲げられて用いられる。
【0039】
以上説明したように、本実施例のTシャツ1は、前身頃2、後身頃3、裏布4、袖布5、衿布6を主要部として備える。そして、Tシャツ1を構成するには、前身頃2の裏面に後身頃3を重ね合わせ、左右の側辺部2c,3cを互いに縫合する。この際、両者の間に裏布4を挟んで、一緒に縫合することができる。つまり、裏布4の側辺部4cは、前身頃2の側辺部2cと後身頃3の側辺部3cとに挟まれて、たとえばロックミシンにより縫合される。
【0040】
また、前身頃2と後身頃3とは、左右の肩部2d,3dについても、互いに縫合される。この際も、両者の間に裏布4を挟んで、一緒に縫合することができる。つまり、裏布4の肩部4dは、前身頃2の肩部2dと後身頃3の肩部3dとに挟まれて、たとえばロックミシンにより縫合される。このようにして、前身頃2の裏面に、裏布4が設けられる。
【0041】
また、前身頃2と後身頃3の左右のアームホール2a,3aの部分には、それぞれ袖布5が縫合されて、袖が設けられる。具体的には、図5において山形の上端辺部5aの内、一点鎖線を境に、右半分は前身頃2の前アームホール2aに沿って縫合され、左半分は後身頃3の後アームホール3aに沿って縫合される。この際、袖布5は、前記山形の頂部(左右方向中央部)が、前身頃2や後身頃3のアームホール2a,3aの上端部(肩部2d,3dの左右方向外端部)に配置され、前記山形の裾部(左右方向外端部)が、アームホール2a,3aの下端部(前身頃2や後身頃3の側辺部2c,3cの上端部)に配置される。裏布4については、アームホール4aの部分において、前身頃2や後身頃3とは縫合されず、肩部4dや側辺部4cなどにおいて前身頃2や後身頃3に保持されることになる。
【0042】
なお、袖布5は、図5において、下端辺部は、太線5cの箇所で折り返されて、それによる重ね合わせ部を破線5dの箇所でミシンにより縫合される。また、左右両端辺部5b同士が縫合されて、筒状に構成される。
【0043】
前身頃2と後身頃3の衿ぐり2b,3bの部分には、衿布6が縫合される。具体的には、図6に示す衿布6を幅方向中央部6aで二つ折りして、それによる二片間に、前身頃2や後身頃3の衿ぐり2b,3bを挟んで、縫合される。その際、前方部については、前身頃2と裏布4とを重ね合わせた状態としておき、それらを衿布6で挟んで、衿を設けることになる。図6において、一点鎖線の箇所を境に、右側部が前身頃2に取り付けられ、左側部が後身頃3に取り付けられることになる。
【0044】
ところで、裏布4は、前身頃2よりも小さく形成されている。具体的には、最終仕上がり状態において、裏布4の幅寸法は、前身頃2の幅寸法よりも小さく形成されている。たとえば、前身頃2と裏布4との対応する高さにおいて、前身頃2の左右の縫い代間の離隔距離を第一寸法X1とすると、裏布4の左右の縫い代間の離隔距離は、第一寸法X1よりも短い第二寸法X2とされる。上下方向位置に応じて第一寸法X1は変わり得るが、対応する高さ(Tシャツ完成時で対応する箇所)では、基本的に、裏布4の幅寸法(第二寸法X2)は前身頃2の幅寸法(第一寸法X1)よりも短く設定される。左右のアームホールの下端部間の寸法である身幅で比較した場合、裏布4の身幅は、前身頃2の身幅よりも小さいことになる。
【0045】
対応する高さ位置において、裏布4の幅寸法を前身頃2の幅寸法よりもどの程度短くするかは、後述する胸の膨らみを目立たなくする効果を考慮して設定される。この寸法が大きすぎると、前身頃2が大き過ぎてだぶついてしまうし、小さすぎると、胸の膨らみを目立たなくする効果が薄れることになる。そのため、たとえば、2~8cm小さく設定し、好ましくは3~6cm短く設定する。この際、Tシャツ1のサイズ(S,M,Lなどのサイズ)に合わせて、寸法を多少変更してもよいが、簡易には、Tシャツ1のサイズに関わらず、所定寸法短く設定すればよい。
【0046】
本実施例では、裏布4の肩部4dの左右方向外端部よりも下方領域について、裏布4の幅寸法を前身頃2の幅寸法よりも4cm(左右2cmずつ)程度、短く設定している。具体的には、前身頃2の左右両端部と裏布4の左右両端部とを縫合した状態では、裏布4の左右両端部間に前身頃2が4cm程度余ることになる。前身頃2のたるみを左右に等分して、裏布4に前身頃2を重ね合わせるように配置すれば、前身頃2の左右両端部が、裏布4の左右両端部よりも左右方向外側へ(片道)約1cm分だけ延出して折り返されることになる。
【0047】
このような寸法差が基本的には、肩部4dの左右方向外端部から裾部までの全域であることになるが、場合により、場所により寸法差を変えたり、一部は寸法差を無くしたりしてもよい。たとえば、裏布4の裾部から上方へ所定寸法分については、裏布4の幅寸法を前身頃2の幅寸法よりも短くせずに、同じ寸法としてもよい。その場合でも、胸部と対応した位置では寸法差を出して、胸の膨らみを目立たなくすることができる。
【0048】
また、本実施例では、アームホール4aの部分において、裏布4の上下方向寸法は、前身頃2の上下方向寸法よりも短く形成されている。すなわち、前身頃2について、肩部2dの外端部と側辺部2cの上端部との間の上下方向寸法を第三寸法X3とし、裏布4について、肩部4dの外端部と側辺部4cの上端部との間の上下方向寸法を第四寸法X4とすると、第四寸法X4は第三寸法X3よりも短く設定されるのがよい。どの程度短く設定するかは、幅寸法の場合と同様、胸の膨らみを目立たなくする効果や、Tシャツ1の着用等のし易さ、を考慮して設定される。たとえば、0.5~4cm小さく設定され、本実施例では、1.5cmとされている。
【0049】
さらに、本実施例の場合、裏布4は、上下方向寸法についても、前身頃2(および後身頃3)よりも短く設定されている(図1におけるX5)。裏布4の裾が前身頃2の裾よりも上方に配置されるので、裏布4が外部から見えず、見栄えを保つことができる。どの程度上方に配置するかは、腹部の膨らみを目立たなくするための効果を考慮して、腹部が隠れる分だけ裏布が必要であるが、それ以外は適宜に設定される。本実施例では、前身頃2の裾部よりも2cm程度上方に、裏布4の裾部を配置している。
【0050】
なお、衣服には、その洗濯方法、サイズ、素材、製造者、販売者、原産国等の内、いずれか一以上の表示が含まれるタグ(表示ラベル)が通常付される。タグ(図示省略)は、たとえば、略矩形状の布片から構成され、前身頃2または裏布4に端部を縫合されて設けられる。その際、タグは、前身頃2または裏布4の裾部において、前身頃2と裏布4との間に設けられる(典型的には前身頃2と裏布4との間にタグのすべてが収容される)のが好ましい。着用時にタグが肌に当たるのを防止して、チクチクしたりせず、着心地をよくすることができる。
【0051】
各パーツの素材は、適宜に設定されるが、たとえば、ポリエステルまたは綿である。特に、前身頃2や裏布4については、仮に伸縮率が大きく型崩れがしやすい素材では、胸の膨らみを継続的に抑えることが難しいので、ポリエステル、特に「トルードライ」と呼ばれるものが適する。この場合、乾きやすく、変色しにくく、型崩れしにくく、シワになりにくく、吸水性があり、コットンに近い肌触りで、毛玉になりにくく、UVカット機能も付与できるなどの利点がある。
【0052】
本実施例のTシャツ1によれば、前身頃2の裏面には、少なくとも胸部と対応する位置に、裏布4が設けられる。しかも、前身頃2の左右両端部に、前身頃2よりも左右方向寸法の短い裏布4の左右両端部が縫合されて設けられる。言い換えれば、左右に第一寸法X1離隔した箇所の前身頃2と、第一寸法X1よりも短い第二寸法X2離隔した裏布4の左右両端部とが縫合されて、前身頃2に裏布4が設けられる。この場合、裏布4の左右両端部間に、前身頃2が多少余裕をもって配置されることになる。そのため、着用時、裏布4が胸に密着しても、その表側の前身頃2が胸に密着することはなく、胸の膨らみを目立たなくすることができる。また、前身頃2に乳首が浮き出るおそれもない。
【0053】
このように、本実施例のTシャツ1の場合、肩線は外側のTシャツ本体(前身頃2や後身頃3)に合わせる一方、身幅などを前身頃2よりも少し小さくすることで、前身頃2に胸や腹の形状が露出するのを防止することができる。
【0054】
図7は、本実施例のTシャツ1の使用状態を示す写真であるが、前身頃2と裏布4との寸法差により、乳房や乳首を目立たなくすることができる。つまり、丸で囲った箇所に示すように、裏布4が短いために前身頃2にシワを発生させ、胸を目立たなくすることができる。それにより、誰でも、胸の膨らみを気にせず、Tシャツ1のみを着て、気軽に外出することも可能となる。
【0055】
また、本実施例のTシャツ1の場合、前身頃2と後身頃3とが側辺部2c,3cや肩部2d,3dで縫合されるが、その縫合部を利用して裏布4を設けることができる。そして、前身頃2と裏布4とを、衿ぐり2b,4bの部分では一体化して見栄えを保つ一方、アームホール4aの部分は縫合しないことで、裏布4が前身頃2に完全に重なるのを防止して、胸の膨らみを目立たなくすることができる。アームホール4aの部分を縫合しないことで、袖の動きが規制されず、着用なども容易となる。
【0056】
本発明の男性用トップス1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、前身頃2の裏面の内、少なくとも胸部と対応する位置に、裏布4が設けられた男性用トップスであって、左右に離隔した箇所の前身頃2と、その離隔寸法よりも短い寸法離隔した前記裏布4の左右両端部とが縫合されて、前身頃2に裏布4が設けられているのであれば、その他の構成は、適宜に変更可能である。
【0057】
たとえば、前記実施例では、裏布4は、着用者の胸部だけでなく腹部も覆う構成としたが、場合により、胸部のみを覆う構成としてもよい。つまり、裏布4の裾部を上方へ上げることで、胸部のみを覆う構成としてもよい。胸部を覆うことで、前身頃2に胸の膨らみが出るのを防止することができ、さらに所望により腹部も覆うことで、前身頃2に腹の膨らみが出るのを防止することもできることになる。
【0058】
また、前記実施例では、前身頃2の左右両端部間を架け渡すように裏布4を設けたが(言い換えれば前身頃2と後身頃3との縫合部を利用して裏布4を設けたが)、裏布4の左右両端部は、前身頃2の左右両端部よりも左右方向内側に配置されてもよい。その場合も、左右に第一寸法X1離隔した箇所の前身頃2と、第一寸法X1よりも短い第二寸法X2離隔した裏布4の左右両端部を縫合して、前身頃2に裏布4を設ければよい。そして、後述するワイシャツの場合のように、前身頃2の裏側左右に、個別に裏布4を設けてもよい。
【0059】
また、前記実施例では、裏布4は、裾部において、前身頃2と縫合されなかったが、場合により、縫合されてもよい。その場合、前身頃2と裏布4の上下方向寸法を合わせて、両者の裾部の高さを合わせてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、裏布4は、アームホール4aの部分において、前身頃2と縫合されなかったが、場合により、縫合されてもよい。その場合、アームホール4aよりも上方(側辺部4cの上端部よりも上方)については、前身頃2と裏布4との形状を合わせてもよい。
【0061】
また、前記実施例ではTシャツ1に適用した例を説明したが、本発明の男性用トップスは、Tシャツ1に限らず、その他のトップスにも同様に適用可能である。たとえば、カットソーやポロシャツなどとして構成することもできる。これらに適用する場合、それらの前身頃2の内側に、前記実施例と同様にして、裏布4を設ければよい。ポロシャツの場合、後述するワイシャツを同様に、裏布4を左右に分割して設けてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、左右の乳房部を一枚の裏布4で覆う構成としたが、ワイシャツなどの前開きのトップスの場合、裏布4を左右に分割してもよい。すなわち、裏布4は、左右の胸をそれぞれ個別に覆うように、左右に分割して設けてもよい。その場合、裏布4の左右両端部間の離隔距離は、それが縫合される前身頃2の対応箇所間の離隔距離よりも短く設定される。これにより、左右の各裏布4において、各乳房の膨らみを抑えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 Tシャツ(男性用トップス)
2 前身頃
2a 前アームホール
2b 前衿ぐり
2c 側辺部
2d 肩部
2e 太線
2f 破線
3 後身頃
3a 後アームホール
3b 後衿ぐり
3c 側辺部
3d 肩部
3e 太線
3f 破線
4 裏布
4a 中アームホール
4b 中衿ぐり
4c 側辺部
4d 肩部
4e 太線
4f 破線
5 袖布
5a 上端辺部
5b 左右両端辺部
5c 太線
5d 破線
6 衿布
6a 幅方向中央部
6b 端辺部
X1 第一寸法
X2 第二寸法
X3 第三寸法
X4 第四寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7