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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A01B35/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022112925
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2019011597の分割
【原出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2022132434
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】西上 智大
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110599(JP,A)
【文献】特開平11-075406(JP,A)
【文献】特開平11-089308(JP,A)
【文献】特開2010-187587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦形成部及び当該畦形成部に土を供給する前処理部を備えた畦塗り機であって、
前記前処理部は、複数の作業爪を備えた作業ロータ及び当該作業ロータの一部を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材は、正面板、背面板、前記正面板と前記背面板とを連結する側板、及び前記側板の下方に配置され、前記側板から外側に向かって突出する側部プレートを有し、
前記側部プレートは、底面視において、前記正面板よりも側方に突出した部分を有する、畦塗り機
【請求項2】
畦形成部及び当該畦形成部に土を供給する前処理部を備えた畦塗り機であって、
前記前処理部は、複数の作業爪を備えた作業ロータ及び当該作業ロータの一部を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材は、正面板、背面板、前記正面板と前記背面板とを連結する側板、及び前記側板の下方に配置され、前記側板から外側に向かって突出する側部プレートを有し、
前記側部プレートは、前方から後方に向かって上方に傾斜するように配置される、畦塗り機。
【請求項3】
前記側部プレートの前方端部には、先端に向かうに従って幅が狭くなる傾斜部が設けられている、請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の畦を形成するための農作業機として、畦塗り機が知られている。畦塗り機は、トラクタ等の走行機体の後部に装着され、基本的な構成として、古い畦の一部を切り崩して土盛りを行う前処理部と、盛られた土を古い畦に塗り付けて畦を形成する畦形成部とを有する。前処理部は、畦を切り崩すための複数の作業爪を備えた作業ロータと、該作業ロータからの土の飛散を防止するカバー部材とを備える。
【0003】
ところで、圃場にはワラ等の散在物が存在している場合があり、これらの散在物が前処理部のカバー部材に引っ掛かって堆積すると、畦塗り機が浮き上がってしまい畦を固く締め付けることができなくなるおそれがあった。この対策として、特許文献1には、ワラ等の散在物を除去するための機構を、前処理部のカバー部材の前方に設けた畦塗り機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-268435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、前処理部の前方にて散在物(障害物、残渣物)を除去することが可能であり、畦塗り作業の効率化を向上させる上で有用であった。しかし、前処理部のカバー部材の前方に、別部材として散在物除去装置を設ける必要があるため、部品点数が増え、畦塗り機のコストアップを招く点で不利であった。また、特許文献1に記載された技術では、散在物除去装置で除去しきれなかった散在物に対する対策が講じられていなかった。このように、従来の畦塗り機には、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題の一つは、前処理部のカバー部材への散在物の引っ掛かりを抑制する機構を備えた畦塗り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、畦形成部及び当該畦形成部に土を供給する前処理部を備え、前記前処理部は、複数の作業爪を備えた作業ロータ及び当該作業ロータの一部を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、正面板、背面板、前記正面板と前記背面板とを連結する側板、及び前記正面板と前記背面板との間に架設された内部プレートを有し、前記内部プレートは、左右方向において、前記側板から離隔して配置される。
【0008】
前記内部プレートは、上下方向において、前記側板から離隔して配置されていてもよい。
【0009】
前記内部プレートの下端には、傾斜部が設けられ、背面側から前記カバー部材を見たとき、前記傾斜部は、前記背面板に対して露出していてもよい。前記傾斜部は、前記内部プレートの接地部と前記背面板の下端に沿って配置された底部プレートとを繋ぐように配置されていてもよい。
【0010】
前記内部プレートは、上下方向に対し、上端が下端よりも前記作業ロータ側に位置するように傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前処理部のカバー部材への散在物の引っ掛かりを抑制する機構を備えた畦塗り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る畦塗り機の全体構成(収納状態及び作業状態)を示す図である。
図2】第1実施形態に係る畦塗り機の全体構成を示す正面図及び側面図である。
図3】第1実施形態に係る畦塗り機の天場処理部が備えるカバー部材の構成を示す図である。
図4】第1実施形態に係る畦塗り機の前処理部が備えるカバー部材の構成を示す図である。
図5】第1実施形態に係る畦塗り機の前処理部が備えるカバー部材の構成を示す図である。
図6】第1実施形態に係る畦塗り機の前処理部が備えるカバー部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る畦塗り機について説明する。但し、本発明の一実施形態に係る畦塗り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、特段のことわりがない場合は、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」は作業機を基準として走行機体が位置する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは180°反対の方向を示す。
【0015】
[畦塗り機の構成]
本実施形態に係る畦塗り機10の概略の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2は、いずれも本発明の第1実施形態に係る畦塗り機10の全体構成を示す図である。ここで、図1(A)は、収納状態における畦塗り機10を前方右側上方から見た斜視図であり、図1(B)は、作業状態における畦塗り機10を前方右側上方から見た斜視図である。図2(A)は、作業状態における畦塗り機10を前方から見た正面図であり、図2(B)は、作業状態における畦塗り機10を左側方から見た側面図である。
【0016】
[収納状態の説明]
図1及び図2に示すように、本実施形態における畦塗り機10は、装着部100、オフセット機構部200、動力伝達部300、及び作業部400を備えている。畦塗り機10は装着部100によってトラクタ等の走行機体に連結される。装着部100及び作業部400は、オフセット機構部200及び動力伝達部300を介して連結される。この構成によって、走行機体の走行に伴って畦塗り機10が牽引され、作業部400による畦塗り作業が行われる。
【0017】
装着部100は、走行機体の2つの後方タイヤの間に設けられた三点リンク機構に対して連結される。走行機体の三点リンク機構は、トップリンク、リフトロッド及びロワーリンクで構成される。図1(A)及び図2(A)に示すように、畦塗り機10の装着部100は、トップマスト101及びロワーリンク連結部103を有する。トップマスト101は、オートヒッチアーム(図示せず)を介して三点リンク機構のトップリンクに接続される。ロワーリンク連結部103は、オートヒッチアーム(図示せず)を介して三点リンク機構のロワーリンクに接続される。なお、三点リンク機構は、公知の機構であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
装着部100は、走行機体の幅方向である左右方向に延びるヒッチフレーム110を備える。ヒッチフレーム110は、上記の三点リンク機構に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム110の中央下部にはギアボックス(図示せず)が設けられ、このギアボックス(図示せず)に走行機体から動力を受ける入力軸107が設けられている。入力軸107には、走行機体に設けられたPTO軸からユニバーサルジョイント等を介して動力が伝達される。
【0019】
オフセット機構部200は、作業部400のオフセット移動を行うための回動機構である。オフセット機構部200は、走行機体の進行方向(D1方向)に対して走行機体の側方にオフセットした位置に、作業部400を移動させることができる。本実施形態のオフセット機構部200は、オフセットフレーム210、リンクロッド220、支持フレーム230、及び動力部240を有する。オフセットフレーム210は、回動軸211において装着部100に回動可能に接続されており、回動軸211を中心に回動する。リンクロッド220は、回動軸211とは異なる位置に設けられた回動軸221において装着部100に回動可能に接続されており、回動軸221を中心に回動する。オフセットフレーム210及びリンクロッド220が、それぞれ回動軸211及び221を中心として回動することで、作業部400が走行機体の側方に移動する。なお、図1(A)では、オフセット機構部200は走行機体の前進方向に対して左側(時計回り)に回動した状態である。作業部400が走行機体の後方に位置した状態を「収納状態」という。
【0020】
オフセットフレーム210は、中空状部材で構成される長尺のフレームであり、動力伝達部300の下方に配置される(図1(A)参照)。上記のように、オフセットフレーム210の一端は、回動軸211において、ヒッチフレーム110に対して回動可能に接続されている。一方、オフセットフレーム210の他端は、回動軸213において、作業部400及び支持フレーム230に対して回動可能に接続されている。オフセットフレーム210は、回動軸211を中心としてヒッチフレーム110に対して水平に回動する。作業部400は、回動軸213を中心としてオフセットフレーム210に対して水平に回動する。つまり、作業部400は、装着部100に対して水平に回動する。オフセットフレーム210は、動力伝達部300に接続されており、動力伝達部300と共に移動する。
【0021】
リンクロッド220は、筒状部材で構成される長尺の部材であり、オフセットフレーム210と同程度の長さを有する。上記のように、リンクロッド220の一端は、回動軸221において、ヒッチフレーム110に対して回動可能に接続されている。一方、リンクロッド220の他端は、回動軸223において、支持フレーム230に対して回動可能に接続されている。
【0022】
支持フレーム230は、筒状部材で構成され、オフセットフレーム210及びリンクロッド220に比べて短尺の部材であり、オフセットフレーム210とリンクロッド220とを相互に連結する部材である。上記のように、支持フレーム230に対し、オフセットフレーム210及びリンクロッド220は、共に回動可能に連結される。支持フレーム230は、作業部400に接続されており、作業部400のオフセット動作の際に作業部400と一体に動く。換言すると、作業部400に対する支持フレーム230の角度は一定に保たれている。
【0023】
回動軸211、213、221、223の4点を結ぶ形状は略平行四辺形である。以上の構成により、ヒッチフレーム110、オフセットフレーム210、リンクロッド220、及び支持フレーム230は、それぞれの回動軸を頂点とする平行四辺形の回動機構(平行リンク機構)を構成する。この回動機構により、オフセット機構部200は、走行機体の進行方向に対する作業部400の角度を保持したまま、作業部400を側方にオフセット移動させることができる。
【0024】
図2(B)に示す動力部240は、オフセット機構部200の動力源(アクチュエータ)であり、例えば電動シリンダ、油圧シリンダ等で構成される伸縮部材である。動力部240の一端は、ヒッチフレーム110に連結され、他端は、オフセットフレーム210に連結される。動力部240の伸縮により、オフセット機構部200が駆動され、作業部400のオフセット量(オフセット方向への移動量)が制御される。換言すると、オフセット機構部200は、動力部240の伸縮によって、回動軸211を中心に作業部400を回動させる。作業部400のオフセット方向への移動量は、動力部240の伸縮量によって決まるため、無段階で調整可能である。
【0025】
動力伝達部300は、装着部100の入力軸107で受けた走行機体からの動力を、作業部400側に伝達するための機構である。動力伝達部300として、チェーン駆動機構が用いられている。具体的には、動力伝達部300は、少なくとも駆動スプロケット、従動スプロケット、及びローラーチェーンを備えている。ローラーチェーンが駆動スプロケット及び従動スプロケットに巻き掛けられ、駆動スプロケットの動力がローラーチェーンを介して従動スプロケットに伝達される。作業部400は、従動スプロケットから動力を受けて畦塗り作業を行う。
【0026】
[作業状態の説明]
上記のように、畦塗り機10の収納状態と作業状態との切り替えは、動力部240の伸縮によって行われる。具体的には、動力部240が伸長することで、図1(A)に示す収納状態から図1(B)に示す「作業状態」に切り換えられる。動力部240が伸長すると、作業部400は、オフセット機構部200の動作によって回動軸211を中心に回動し、走行機体の進行方向に対して側方に移動(オフセット移動)する。このとき、作業部400に対する支持フレーム230の角度が一定に保たれているため、オフセット移動の間、作業部400の畦に対する向きは変わらない。
【0027】
作業部400は、畦塗り作業を行う部位である。作業部400は、畦形成部500、天場処理部600、接地部700、リンク機構部800、及び前処理部900を有する。図1(A)に示す収納状態では、リンク機構部800が折り畳まれて接地部700は上方に格納されているが、図1(B)に示す作業状態では、リンク機構部800が展開されて接地部700は作業位置に配置されている。なお、図2(A)及び図2(B)では、作業部400がオフセット移動した状態を示しているが、説明の便宜上、接地部700を上方に格納した状態を示している。
【0028】
畦形成部500は、畦の上面を形成する上面形成部510及び畦の法面を形成する法面形成部520を備える。上面形成部510は、中心軸が作業機体の進行方向に対して略直交する方向に延びた円筒形状の部材である。畦形成部500は、この中心軸に対して回動可能に支持されている。畦形成部500は、動力伝達部300から動力を受けることで回動する。法面形成部520は、上記の中心軸に対して傾斜した傾斜面を有する略円錐形状の部材である。法面形成部520は、円周方向に複数の板状部材が部分的に重なるように配置された多面体ドラムである。各板状部材は、法面形成部520の回転に伴って畦の法面を叩き、畦の法面を強固に固めることができる。
【0029】
なお、上面形成部510及び法面形成部520の形状は、上記の構成に限定されない。例えば、上面形成部510は、法面形成部520と同様に、複数の板状部材が部分的に重なって構成されてもよい。また、法面形成部520は、複数の板状部材で構成された多面体ドラムではなく、一体形成された多面体ドラムであってもよい。
【0030】
前処理部900は、法面形成部520の前方に設けられている。前処理部900は、複数の作業爪を備えた作業ロータ910(図2(A)参照)、及び作業ロータ910の上方を覆うカバー部材920(図2(A)及び図2(B)参照)を有する。作業ロータ910は動力伝達部300から動力を受けて動作し、複数の作業爪を回転させる。作業状態において、作業ロータ910の回転軸は、進行方向に対して傾斜している。具体的には、作業状態における作業ロータ910の回転軸は、畦塗り機10の後方から前方に向かって畦塗り機10の外側に傾斜している。作業ロータ910に備えられた複数の作業爪のうち、ある作業爪は、作業爪の回転方向とは逆方向及び後方に向かって湾曲し、別の作業爪は、作業爪の回転方向とは逆方向及び前方に向かって湾曲している。
【0031】
天場処理部600は、上面形成部510の前方に設けられている。天場処理部600は、前処理部900と同様に複数の作業爪を備えた作業ロータ610及び作業ロータ610の上方、前方及び後方を覆うカバー部材620を有する(図1(B)参照)。作業ロータ610は、動力伝達部300から動力を受けて動作し、複数の作業爪を回転させることにより旧畦の天場を切り崩す。前処理部900の作業ロータ910と同様に、天場処理部600の作業ロータ610の回転軸は、進行方向に対して傾斜している。具体的には、作業ロータ610の回転軸は、畦塗り機10の後方から前方に向かって畦塗り機10の外側に傾斜している。
【0032】
なお、本実施形態では、作業ロータ610の回転軸は、作業ロータ910の回転軸と平行である。作業ロータ610に備えられた複数の作業爪は、作業爪の回転方向とは逆方向及び前方に向かって湾曲している。カバー部材620の前側と作業爪との間は、隙間が形成されている。そのため、隙間に土が堆積したまま後方に向かって湾曲している作業爪を回転させ続けると、堆積した土によって作業爪、特に作業爪の根本部分の摩耗が進んでしまう。しかしながら、前方に向かって湾曲している作業爪であれば、カバー部材620の前側と作業爪との間に土が堆積する前に前方に向かって湾曲した作業爪の爪先が土に作用することによって土が崩れ、その結果、作業爪が摩耗しにくくなる。
【0033】
また、本実施形態の天場処理部600のカバー部材620は、前処理部900の作業ロータ910の回転によって前方に飛散した土を遮蔽する遮蔽部620aと、天場処理部600の収納状態と作業状態とを切り替える際に作業者が掴む部分である把持部620bとを備えている。図3は、第1実施形態に係る畦塗り機10の天場処理部600が備えるカバー部材620の構成を示す図である。具体的には、図3(A)は、天場処理部600の全体構成を示す図である。図3(B)は、天場処理部600のカバー部材620を右側方から見た側面図である。図3(C)は、天場処理部600のカバー部材620を前方から見た正面図である。
【0034】
図3(A)~図3(C)に示されるように、天場処理部600のカバー部材620の上端には、前処理部900の作業ロータ910の回転によって前方に飛散した土を遮蔽する遮蔽部620aが設けられている。遮蔽部620aは、前方から見た場合に、天場処理部600のカバー部材620と前処理部900のカバー部材920とが重ならない位置をカバーするように配置される。つまり、カバー部材620とカバー部材920の隙間から前方に向かって飛散する土を、遮蔽部620aで止める構成となっている。
【0035】
図3(B)に示されるように、本実施形態の遮蔽部620aは、カバー部材620と一体形成された板状部分であり、後方(すなわち、前処理部900の位置する方向)に向かって傾斜して配置されている。これにより、遮蔽部620aに当たった土は、前処理部900の前方に落ちるため、新しい畦の形成に利用することができる。なお、ここではカバー部材620の一部を利用して遮蔽部620aを設けた例を示したが、これに限らず、カバー部材620に対して別部材として遮蔽部620aを設けることも可能である。
【0036】
また、本実施形態の畦塗り機10は、上述の遮蔽部620aに加えて、カバー部材620とカバー部材920の隙間から前方に向かって飛散する土を、前処理部900のカバー部材920の構成を用いて止める構成を有している。具体的には、後述するカバー部材920の正面板921の一部に、遮蔽部921aが設けられている(図4(A)~図4(D)参照)。カバー部材920の遮蔽部921aも、前述のカバー部材620の遮蔽部620aと同様に、正面板921と一体形成された板状部分であり、後方(すなわち、前処理部900の作業ロータ910の位置する方向)に向かって傾斜して配置されている。本実施形態の畦塗り機10は、天場処理部600のカバー部材620に設けられた遮蔽部620aと、前処理部900のカバー部材920(具体的には、正面板921)に設けられた遮蔽部921aとを用いて、カバー部材620とカバー部材920の隙間から前方に向かって飛散する土を防ぐ構成となっている。
【0037】
リンク機構部800は、フレーム410と天場処理部600とを連結する(図1(B)、図2(A)及び図3(A)参照)。また、リンク機構部800は、天場処理部600の上方に設けられている。リンク機構部800が展開されることで、天場処理部600が作業状態になり、リンク機構部800が折り畳まれることで、天場処理部600が収納状態になる。図1(A)に示す天場処理部600の状態は収納状態であり、図1(B)に示す天場処理部600の状態は作業状態である。
【0038】
リンク機構部800は、天場処理部600の上方に配置され、上面視において天場処理部600と重なっている。上述のように、図1(A)では、リンク機構部800が折り畳まれて接地部700が上方に収納されているが、図1(B)では、リンク機構部800が展開されて、作業位置において天場処理部600及び接地部700がそれぞれの自重によって畦方向に押しつけられる。したがって、天場処理部600は、リンク機構部800によって上下に揺動可能である。
【0039】
接地部700は、天場処理部600の前方に取り付けられている。つまり、接地部700も、リンク機構部800の動作により、天場処理部600と共に上下に揺動可能である。接地部700は、旧畦に接し、旧畦上をスライド移動する。接地部700が旧畦に接することで、天場処理部600の旧畦に対する高さが決定される。つまり、接地部700は、天場処理部600の耕深を一定に調整する機能を有する。
【0040】
以上説明した本実施形態の畦塗り機10では、圃場に散在するワラ等の散在物に対する対策を、前処理部900のカバー部材920の構成によって施している。この点について、以下に説明する。
【0041】
[カバー部材の構成]
前処理部900において、作業ロータ910を覆うカバー部材920の構成について、図4図6を用いて説明する。図4図6は、第1実施形態に係る畦塗り機10の前処理部900が備えるカバー部材920の構成を示す図である。
【0042】
まず、図4(A)は、カバー部材920を右側方から見た側面図である。図4(B)は、カバー部材920をやや前方寄りの右側方から見た側面図である。図4(C)は、カバー部材920をやや後方寄りの右側方から見た側面図である。図4(D)は、カバー部材920を下方から見た底面図である。
【0043】
図4(A)~図4(D)に示されるように、本実施形態のカバー部材920は、正面板921、背面板922、側板923、内部プレート924、側部プレート925及び底部プレート926を有する。図4(A)~図4(D)では、特に内部プレート924に着目して説明する。
【0044】
内部プレート924は、上下方向に所定の幅を有する板状部材であり、正面板921から背面板922に架け渡されて配置される。このとき、図4(A)に示されるように、内部プレート924の上方(内部プレート924の上端と側板923との間)には空間930が確保される。また、図4(D)に示されるように、内部プレート924と側板923との間には、空間931が確保される。
【0045】
前処理部900の作業中、作業ロータ910は、背面側から見て時計回りに回転する。そのため作業ロータ910の回転により跳ね上げられた土は、側板923に向かって飛散する。このとき、内部プレート924が配置されていない場合には、側板923に付着した土が堆積し、作業が進むにつれて作業爪によって押し固められ、側板923の下端部に土塊が形成されてしまう場合がある。この場合、側板923に付着した土塊にワラ等の散在物が引っ掛かり、作業の邪魔になってしまう虞がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、カバー部材920の内側に内部プレート924を配置することにより、内部プレート924と側板923との間に空間(間隙)を確保し、作業ロータ910から飛散した土が側板923に付着して固まることがない構成とした。つまり、本実施形態の構成によれば、内部プレート924を配置することにより作業ロータ910から飛散した土の側板923の下端部への到達量を抑え、側板923への土の付着量を低減することができる。その結果、側板923の下端部への土塊の形成が防止される。
【0047】
前述のとおり、内部プレート924は、正面板921から背面板922に架け渡されるように配置される。つまり、内部プレート924の一端は正面板921に固定され、他端は背面板922に固定される。このとき、図4(D)に示されるように、左右方向(側面から見た方向)において、内部プレート924は、側板923から離隔して(所定の間隙を空けて)配置される。これにより、内部プレート924と側板923との間に空間931が確保され、側板923の下端部に土塊が形成されることを防ぐことができる。
【0048】
また、内部プレート924は、側板923の下端部に配置されており、図4(A)に示されるように、内部プレート924の上端と側板923との間には空間930が確保されている。つまり、上下方向(上方又は下方から見た方向)において、内部プレート924は、側板923から離隔して(所定の間隙を空けて)配置される。前述のとおり、前処理部900の作業ロータ910は、背面側から見たとき、時計回りに回転する。そのため、作業ロータ910によって放擲された土は、内部プレート924の下方から側板923の方へと廻り込む場合がある。しかし、この場合であっても、内部プレート924の上方に空間930が設けられているため、側板923と内部プレート924との間に廻り込んだ土を、空間930を介して作業ロータ910側に戻すことができる。したがって、廻り込んだ土が側板923と内部プレート924との間に溜まることがない。
【0049】
なお、図4(D)では、内部プレート924が上下方向(例えば、鉛直方向)に対し、略平行に配置された例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、内部プレート924は、上下方向に対し、上端が下端よりも作業ロータ910側に位置するように傾斜していてもよい。このような構成とした場合、作業ロータ910から飛散した土が内部プレート924における作業ロータ910に対向する面に当たったとき、当該面が下方に向かって傾斜しているため、土が付着しにくいというメリットがある。
【0050】
さらに、図4(A)及び図4(B)に示されるように、内部プレート924の後方側の下端には、傾斜部924aが設けられている。内部プレート924の傾斜部924a及び接地部924bは、背面側からカバー部材920を見たとき、背面板922に対して露出しており、内部プレート924の接地部924bと後述する底部プレート926の接地面926aとの間には高さHの差分がある(図5(B)参照)。傾斜部924aは、前述の接地部924bと接地面926aとを繋ぐように配置される。このような構造とした理由については、図5を用いて後述する。
【0051】
図5(A)~図5(C)では、特に側部プレート925に着目して説明する。側部プレート925は、側板923の下方に配置された板状部材である。側部プレート925は、前処理部900の前方にあるワラ等の散在物を側方に逃がす役割を有する。つまり、カバー部材920の外側の端部に散在物が引っ掛かって大きな塊になることを防ぐために、散在物を外側に誘導するガイド部材として機能する。
【0052】
このように側部プレート925には、前処理部900の前方の散在物を外側に誘導する必要があることから、図5(A)に示されるように、側部プレート925の前方端部には、先端に向かうに従って徐々に幅が狭くなるように傾斜部925aが設けられている。具体的には、傾斜部925aは、側部プレート925の外側の辺に設けられている。この傾斜部925aに誘導されて、側部プレート925に接した散在物は外側に向かうため、カバー部材920の外側の端部に塊を作ることがない。
【0053】
また、図5(B)に示されるように、側部プレート925は、前方から後方に向かって徐々に上方に傾斜するように配置されている。実際には、側部プレート925は、圃場面に対する高さが前方から後方に向かって徐々に変化するように配置される。これは、散在物がカバー部材920の下方に潜り込んでしまわないようにするための構成である。つまり、側部プレート925が徐々に上方に向かうように傾斜しているため、側部プレート925は、散在物を上方に持ち上げつつ前方に移動する。
【0054】
以上のように、本実施形態では、カバー部材920の側板923に側部プレート925を設けることにより、ワラ等の散在物を後方に向かって上方外側に誘導し、散在物がカバー部材920に引っ掛かる量を低減している。
【0055】
次に、底部プレート926について図5及び図6を用いて説明する。図5(C)、図6(A)及び図6(B)に示されるように、底部プレート926は、背面板922の下端に沿って配置される。具体的には、底部プレート926は、板状部材であり、背面板922から後方に向かって突出するように配置される。つまり、底部プレート926は、下方(すなわち、圃場)に対向する面(以下、「接地面926a」という。)を有し、作業中においては、その接地面926aで圃場に接する。
【0056】
底部プレート926は、背面板922が圃場に対して線状に接することを防ぐ目的で設けられている。前処理部900がワラ等の散在物が散らばる圃場で作業を行った場合、カバー部材920と圃場との間に散在物が多く存在する場合がある。このとき、底部プレート926が無いと、背面板922の下端が散在物の上に載る。この場合、背面板922の下端が散在物を挟み込んで圃場に食い込んでしまうため、背面板922に散在物を引っ掛けて大きな塊を形成してしまう虞がある。
【0057】
本実施形態では、底部プレート926を配置することにより、背面板922の下端が底部プレート926の接地面926aと共に散在物に載る構成となっている。すなわち、カバー部材920の背面板922が、圃場の上にある散在物に対して接地面926aで接する。したがって、散在物を圃場に対して押し込む力が分散されるため、散在物を引っ掛けることなく後方に逃がすことができる。
【0058】
また、前述のように、内部プレート924の接地部924bと底部プレート926の接地面926aとの間には高さHの差分がある(図5(B)及び図6(A)参照)。すなわち、図5(B)及び図6(A)の拡大図に示されるように、内部プレート924の傾斜部924aは、内部プレート924の接地部924bと底部プレート926の接地面926aとを繋ぐように配置されている。これにより、カバー部材920は、下方の散在物を内部プレート924の接地部924bによって圃場に押し付けつつ前方に進むため、背面板922の内側に散在物が引っ掛かるような事がない。つまり、内部プレート924の接地部924bが底部プレート926の接地面926aよりも低い位置にあり、かつ、内部プレート924の接地部924bと底部プレート926の接地面926aとを内部プレート924の傾斜部924aで繋ぐことにより、カバー部材920が、底部プレート926の接地面926aで散在物に接するような構成としている。これにより、カバー部材920が、ワラ等の散在物の上を移動するため、散在物を引っ掛けてしまうことを防ぐことができる。
【0059】
以上のように、本実施形態の前処理部900におけるカバー部材920は、図4図6を用いて説明した構成により、圃場に散在するワラ等の散在物の引っ掛かりを抑制することができる。その結果、散在物のカバー部材920への引っ掛かりに起因して畦塗り機10が浮き上がることがなく、畦を固く締め付けることができる。また、カバー部材920に引っ掛かった散在物を手作業で除去する手間を省くことができる。さらに、特別な機構をカバー部材920に対して取り付ける必要もなく、畦塗り機10のコストアップも防ぐことができる。
【0060】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、上述した各実施形態は、特に技術的な矛盾を生じない限り、それぞれ組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…畦塗り機、100…装着部、101…トップマスト、103…ロワーリンク連結部、107…入力軸、110…ヒッチフレーム、200…オフセット機構部、210…オフセットフレーム、211、213…回動軸、220…リンクロッド、221、223…回動軸、230…支持フレーム、240…動力部、300…動力伝達部、400…作業部、410…フレーム、500…畦形成部、510…上面形成部、520…法面形成部、600…天場処理部、610…作業ロータ、620…カバー部材、620a…遮蔽部、620b…把持部、700…接地部、800…リンク機構部、900…前処理部、910…作業ロータ、920…カバー部材、921…正面板、921a…遮蔽部、922…背面板、923…側板、924…内部プレート、924a…傾斜部、924b…接地部、925…側部プレート、925a…傾斜部、926…底部プレート、926a…接地面、930、931…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6