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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】海苔原藻の鮮度維持システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20240416BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022134915
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2024031392
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 駿
(72)【発明者】
【氏名】米田 朋生
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-029074(JP,A)
【文献】特開昭55-111812(JP,A)
【文献】特開2013-192494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムであって、
前記海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する攪拌タンクと、
海苔原藻前処理部で排出された排水に所定の圧力で酸素を溶解させて、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置と、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクに投入する海水投入手段と、
を備え
前記攪拌タンクの内部には、前記海水が行き来可能なように前記海苔原藻から分離される水槽が設けられていると共に、当該水槽内に溶存酸素計及び水位計が設置されており、
前記溶存酸素計で前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度を計測し、前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度によって前記気液混合装置の動作を制御して、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得、
前記水位計で前記水槽内の水位を検知し、前記水槽内の水位によって前記海水投入手段の動作を制御して、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンク内の前記水槽の外側の底部に投入するようにしたことを特徴とする海苔原藻の鮮度維持システム。
【請求項2】
前記気液混合装置は、前記海苔原藻前処理部で排出された前記排水を一時的に貯留しておくための一時貯留タンクと、高濃度酸素溶解装置と、を組み合わせて構成されている、請求項1に記載の海苔原藻の鮮度維持システム。
【請求項3】
前記海苔原藻前処理部で排出された前記排水を濾過する排水再生濾過装置をさらに備えた、請求項1又は2に記載の海苔原藻の鮮度維持システム。
【請求項4】
前記排水再生濾過装置は、
前記排水を濾過する網目回転円筒部と、前記網目回転円筒部で濾過された濾液としての前記排水を受ける濾液槽と、前記濾液槽に設けられた、濾過された前記濾液としての前記排水を回収する濾液回収部と、前記網目回転円筒部の下流側に設けられた、濾別された濾物を回収する濾物回収部と、を備え、
少なくとも前記網目回転円筒部が上流側から下流側に向けて下傾した状態で設置される、請求項3に記載の海苔原藻の鮮度維持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥海苔の製造は、次のような手順で行われる。まず、摘採した海苔原藻は、陸揚げされた後直ちに海水の入った攪拌タンクの中に移され、攪拌されながら貯蔵される。この海苔原藻は、洗浄されて細断された後、水と調合されて海苔原料となる。次いで、この海苔原料は、抄製→圧搾脱水→乾燥→剥離の各工程を経て、乾燥海苔となる。
【0003】
しかし、海苔原藻を長時間攪拌タンクの中で貯蔵すると、海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下してしまう。そのため、海苔原藻の鮮度が低下し、ひいては、乾燥海苔の品質が低下してしまうという課題があった。
【0004】
そこで、従来、特殊な吸着剤で空気中の窒素と水蒸気を取り除き、濃度約90%の酸素を発生させる高濃度酸素発生器を用いて、攪拌タンクの底から高濃度酸素をバブリングすることにより、海苔原藻の鮮度を維持するようにした技術が提案されている(例えば、非特許文献1等を参照)。
また、酸素ボンベを用いて、攪拌タンクの底から酸素をバブリングすることにより、海苔原藻の鮮度を維持するようにした技術も知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】江藤酸素株式会社「ぷくぷくファイン(登録商標)」,SUNCERA O2(登録商標),[online],[令和3年12月1日検索],インターネット〈URL;http://www.etosanso.co.jp/images/pdf/pukupuku.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1等で提案されている技術には、以下のような課題がある。
すなわち、ただ単に酸素(気体)をバブリングするだけでは、海水に溶解する効率(溶解効率)が悪い。このため、高濃度酸素発生器、酸素ボンベ等の使用本数が増加し、設備のコストアップを招いてしまうという課題がある。また、上記従来の技術では、十分に酸素を供給できていないため、時間と共に海苔の品質が低下し、乾燥海苔の商品価値の低下を招いてしまうという課題もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔原藻の鮮度維持システムの構成は、
(1)乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムであって、
前記海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する攪拌タンクと、
海苔原藻前処理部で排出された排水に所定の圧力で酸素を溶解させて、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置と、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクに投入する海水投入手段と、
を備え
前記攪拌タンクの内部には、前記海水が行き来可能なように前記海苔原藻から分離される水槽が設けられていると共に、当該水槽内に溶存酸素計及び水位計が設置されており、
前記溶存酸素計で前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度を計測し、前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度によって前記気液混合装置の動作を制御して、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得、
前記水位計で前記水槽内の水位を検知し、前記水槽内の水位によって前記海水投入手段の動作を制御して、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンク内の前記水槽の外側の底部に投入するようにしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、海苔原藻前処理部は、例えば、海苔原藻の異物を除去する場所であり、粗ゴミ取機、原藻異物除去洗浄機(異物除去機)、洗浄槽等を備えている。
【0010】
本発明の海苔原藻の鮮度維持システムの上記(1)の構成は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)に所定の圧力で酸素を溶解させて、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置を備え、当該気液混合装置で得られた、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を、攪拌タンクに投入するようにしているため、攪拌タンクに海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下することを防止することができる。
従って、上記(1)の構成によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
また、上記(1)の構成によれば、通常は廃棄される、海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)を用いるようにしているため、廃棄物の有効利用という産業上の効果も得られる。
【0011】
本発明の海苔原藻の鮮度維持システムの上記(1)の構成においては、以下の(2)乃至(4)のような構成にすることが好ましい。
【0012】
(2)上記(1)の構成において、前記気液混合装置は、前記海苔原藻前処理部で排出された前記排水を一時的に貯留しておくための一時貯留タンクと、高濃度酸素溶解装置と、を組み合わせて構成されている。
【0013】
上記(2)の好ましい構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、高濃度酸素溶解装置に所定の圧力で酸素を入れ込んだ後、当該高濃度酸素溶解装置に一時貯留タンク内の、海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)を送り込む。これにより、酸素の中に排水(海水)を通すことで、酸素が当該排水(海水)に高濃度で溶解し、高濃度の溶存酸素を含んだ海水が得られる。この高濃度の溶存酸素を含んだ海水は、攪拌タンクに投入する海水として利用される。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記海苔原藻前処理部で排出された前記排水を濾過する排水再生濾過装置をさらに備える。
【0015】
上記(3)の好ましい構成によれば、海苔原藻前処理部の粗ゴミ取機、原藻異物除去洗浄機(異物除去機)、洗浄槽等からの排水(海水)に含まれるゴミ等を除去して、気液混合装置、特に高濃度酸素溶解装置(例えば、酸素ファイター(登録商標))の故障を未然に防止することが可能となる。
【0016】
(4)上記(3)の構成において、前記排水再生濾過装置は、
前記排水を濾過する網目回転円筒部と、前記網目回転円筒部で濾過された濾液としての前記排水を受ける濾液槽と、前記濾液槽に設けられた、濾過された前記濾液としての前記排水を回収する濾液回収部と、前記網目回転円筒部の下流側に設けられた、濾別された濾物を回収する濾物回収部と、を備え、
少なくとも前記網目回転円筒部が上流側から下流側に向けて下傾した状態で設置される。
【0017】
上記(4)の好ましい構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、網目回転円筒部からなる濾過部が用いられているため、海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)の濾過中に、濾別されるゴミ等の濾物が網目回転円筒部(濾過部)の内周面から離れることが多く、従って、ゴミ等の濾物によって濾過部が目詰まりを起こすことはほとんどない。その結果、濾過作業を途中で中断せざるを得ない事態が生じることはほとんどなく、作業終了後における網目回転円筒部(濾過部)のメンテナンスに要する手間も大幅に軽減される。また、このようにゴミ等の濾物が目詰まりを起こすことなく、網目回転円筒部内を上流側から下流側に向かってスムーズに流れていくため、ゴミ等の濾物の回収率も高くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
また、本発明によれば、通常は廃棄される、海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)を用いるようにしているため、廃棄物の有効利用という産業上の効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンク周りの様子を示す写真斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である気液混合装置周りの様子を示す写真斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である排水再生濾過装置の外観構成を上流側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
(海苔原藻の鮮度維持システムの基本構成)
まず、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの基本構成について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図、図2は、当該海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンク周りの様子を示す写真斜視図、図3は、当該海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である気液混合装置周りの様子を示す写真斜視図である。
【0023】
図1乃至図3に示す本実施形態の海苔原藻の鮮度維持システム(以下、単に「鮮度維持システム」ともいう)1は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる。
図1乃至図3に示すように、鮮度維持システム1は、海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する略直方体形状の攪拌タンク2と、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27、あるいは、後述する濾過された濾液(排水)14に所定の圧力で酸素を溶解させて、高濃度の溶存酸素(Dissolved Oxygen(DO))を含んだ海水(以下単に「高DO濃度海水」ともいう)を得る気液混合装置4と、高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する海水投入手段5と、を備えている。
【0024】
ここで、海苔原藻前処理部3は、例えば、海苔原藻の異物を除去する場所であり、粗ゴミ取機、原藻異物除去洗浄機(異物除去機)、洗浄槽等を備えている。洗浄液としては、海水が使用される。
また、「所定の圧力」は、例えば、約0.2MPaである。
【0025】
本実施形態の鮮度維持システム1のかかる構成は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27、あるいは、後述する濾過された濾液(排水)14に所定の圧力で酸素を溶解させて、高DO濃度海水を得る気液混合装置4を備え、当該気液混合装置4で得られた高DO濃度海水を、攪拌タンク2に投入するようにしているため、攪拌タンク2に海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下することを防止することができる。
従って、かかる構成によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
また、かかる構成によれば、通常は廃棄される、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27を用いるようにしているため、廃棄物の有効利用という産業上の効果も得られる。
【0026】
以下、さらに詳細に説明する。
図1図2に示すように、攪拌タンク2は、海苔原藻を海水と共に攪拌する攪拌翼2aと、攪拌翼2aを回転させる回転軸2bと、回転軸2bを回転駆動するモータ(図示せず)と、を有している。攪拌翼2aは、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼等の適宜の形状とすることができる。攪拌タンク2には、その内部の四隅の一箇所に、海水が行き来可能なように海苔原藻から分離される水槽(三角コーナー)6が設けられている。水槽6内にはDO計7が設置されており、当該DO計7で攪拌タンク2内の溶存酸素濃度(DO濃度)を計測し、気液混合装置4と連動させるようにされている。そして、攪拌タンク2内のDO濃度によって気液混合装置4の動作を制御するようにされている。さらに、水槽6内には水位計8が設置されており、当該水位計8で水槽6内の水位を検知し、後述する水中ポンプ5a及びゲートバルブ(開閉弁)5eと連動させるようにされている。そして、水槽6内の水位によって水中ポンプ5a及びゲートバルブ(開閉弁)5eの動作を制御するようにされている。なお、水位計8としては、フロート式の水位計が用いられている。
【0027】
より具体的には、水槽6は、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状をなしており、攪拌タンク2の入隅の二面(内面)に当接する2つの側面がステンレス製の板材からなり、攪拌タンク2の内面に当接しない他の1つの側面が多孔質板状のステンレス製のパンチングメタル9からなっている。
水槽(三角コーナー)6は、攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられており、攪拌タンク2から取り外すことによって、パンチングメタル9に詰まった海苔原藻を容易に除去できるようにされている。
なお、パンチングメタル9の孔径は、海苔原藻が通過することを防止できるサイズであればよく、特定のサイズに限定されるものではない。現状の孔径は約1.0mmである。
【0028】
DO計7は、上記のように、水槽6内に設置されている。DO計7を水槽6内に設置することにより、海苔原藻に邪魔されずにDO濃度の計測を行うことができる。
【0029】
本実施形態の鮮度維持システム1は、攪拌タンク2内の海水とは別の、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27、あるいは、後述する濾過された濾液(排水)14を溜めておくための後述する排水(海水)タンク16dを備えており、排水(海水)タンク16d内に溜められた排水(海水)27、あるいは、後述する濾液(排水)14を用いて高DO濃度海水が得られる。
【0030】
図1図3に示すように、高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)を得るための気液混合装置4は、一時貯留タンクとしての高DO濃度海水製造タンク(バッファ水槽)4aと高濃度酸素溶解装置4bとを組み合わせて構成されている。ここでは、高濃度酸素溶解装置4bとして、株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)が用いられている。
高DO濃度海水製造タンク4aは、排水(海水)タンク16dから送水される排水(海水)27、あるいは、後述する濾液(排水)14を一時的に貯留しておくためのものである。
高DO濃度海水製造タンク4a内には水位計10が設置されており、当該水位計10で高DO濃度海水製造タンク4a内の水位を検知し、後述する水中ポンプ5a、ゲートバルブ5e及び気液混合装置4と連動させるようにされている。そして、高DO濃度海水製造タンク4a内の水位によって、水中ポンプ5a、ゲートバルブ5e及び気液混合装置4の動作を制御するようにされている。なお、水位計10としては、フロートレス電極棒方式の水位計が用いられている。
【0031】
高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)は、以下のようにして得られる。
すなわち、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素を入れ込んだ後、当該高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bに高DO濃度海水製造タンク4a内の、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27、あるいは、後述する濾過された濾液(排水)14を送り込む。これにより、酸素の中に排水(海水)27、あるいは、後述する濾液(排水)14を通すことで、酸素が当該排水(海水)27、あるいは、後述する濾液(排水)14に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再び高DO濃度海水製造タンク4aに送り込まれる(循環)。
【0032】
高DO濃度海水製造タンク4a内の高DO濃度海水は、上記のように、海水投入手段5によって攪拌タンク2に投入される。
海水投入手段5は、高DO濃度海水製造タンク4aの下部に設置された水中ポンプ5aと、一端が水中ポンプ5aに接続された海水投入ホース5bと、海水投入ホース5bの他端に接続された塩ビパイプ5cと、により構成されている。塩ビパイプ5cは、攪拌翼2aの邪魔にならないよう攪拌タンク2の内面に沿って設けられている。そして、塩ビパイプ5cの先端部は、攪拌タンク2の水槽6の外側の底部に配置されている。
海水投入ホース5bの途中には、逆止弁5d、三方弁11、ゲートバルブ(開閉弁)5e及び流量計5fが高DO濃度海水製造タンク4a側から攪拌タンク2側に向けてこの順番で設けられている。そして、ゲートバルブ5eが開かれることで攪拌タンク2への高DO濃度海水の投入が開始され、ゲートバルブ5eが閉じられることで攪拌タンク2への高DO濃度海水の投入が停止される。高DO濃度海水製造タンク4aから攪拌タンク2に投入される高DO濃度海水の流量は、流量計5fによって計測される。
【0033】
ここで、逆止弁5dは、海水投入ホース5bの他端の投入口から海水投入ホース5bの一端の導入口への高DO濃度海水の逆流を抑止するためのものである。また、三方弁11は、流入する高DO濃度海水を2本の海水投入ホース(1本の海水投入ホース5bの他端部は、攪拌タンク2内に配置され、他の1本の海水投入ホースの他端部は、他の攪拌タンク内に配置されている)のうち、いずれか一方の海水投入ホースに流出させ、又は両方の海水投入ホースに分流するためのものである。
【0034】
本実施形態においては、上記のように、高DO濃度海水を攪拌タンク2の水槽6の外側の底部に投入するようにされている。かかる構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、水槽6内に高DO濃度海水を投入すると、海苔原藻が障害となって、高DO濃度海水がパンチングメタル9を通って攪拌タンク2の水槽6以外の領域に流出しにくくなる虞がある。
これに対し、高DO濃度海水を攪拌タンク2内の水槽6の外側の底部に投入するようにすれば、高DO濃度海水が攪拌タンク2の全体に拡散しやすくなり、海苔原藻の鮮度を確実に維持することが可能となる。
【0035】
(排水再生濾過装置の構成)
次に、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの任意的な構成要素である排水再生濾過装置の構成について、図4をも参照しながら簡単に説明する。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である排水再生濾過装置の外観構成を上流側から見た斜視図である。
【0037】
図1図4に示すように、本実施形態の鮮度維持システム1は、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27を濾過する排水再生濾過装置12をさらに備えている。
かかる構成によれば、海苔原藻前処理部3の粗ゴミ取機、原藻異物除去洗浄機(異物除去機)、洗浄槽等からの排水27に含まれるゴミ等を除去して、気液混合装置4、特に高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bの故障を未然に防止することが可能となる。
【0038】
排水再生濾過装置12は、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27を濾過する網目回転円筒部(濾過部)13と、網目回転円筒部13で濾過された濾液(排水)14を受ける濾液槽15と、濾液槽15に設けられた、濾過された濾液(排水)14を回収する濾液回収部16と、網目回転円筒部13の下流側に設けられた、濾別されたゴミ等の濾物を回収する濾物回収部18と、を備えている。そして、少なくとも網目回転円筒部13は、上流側から下流側に向けて下傾した状態で設置される。
この場合、濾液回収部16には、網目回転円筒部13で濾過された濾液(排水)14を溜めておくための排水(海水)タンク16d(図1を参照)も含まれる。
図4中、参照符号24は、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27を汲み上げるための汲み上げ用ホースを示しており、汲み上げ用ホース24の基端には水中ポンプ25の吐出側が接続されている。また、参照符号30は、伸縮調整可能なターンバックル30aを有するロッドを示しており、この伸縮調整可能なターンバックル30aを有するロッド30が、網目回転円筒部13の傾斜角度を調整する傾斜角度調整部材として機能する。
【0039】
排水再生濾過装置12のかかる構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、網目回転円筒部13からなる濾過部が用いられているため、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27の濾過中に、濾別されるゴミ等の濾物が網目回転円筒部(濾過部)13の内周面から離れることが多く、従って、ゴミ等の濾物によって濾過部が目詰まりを起こすことはほとんどない。その結果、濾過作業を途中で中断せざるを得ない事態が生じることはほとんどなく、作業終了後における網目回転円筒部(濾過部)13のメンテナンスに要する手間も大幅に軽減される。また、このようにゴミ等の濾物が目詰まりを起こすことなく、網目回転円筒部13内を上流側から下流側に向かってスムーズに流れていくため、ゴミ等の濾物の回収率も高くなる。
【0040】
(海苔原藻の鮮度維持システムの動作)
次に、本実施形態における海苔原藻の鮮度維持システム1の動作について説明する。
【0041】
摘採した海苔原藻は、陸揚げされた後直ちに海水の入った攪拌タンク2の中に移され、攪拌されながら貯蔵される(このときの攪拌タンク2内のDO濃度は、約7.5mg/L(初期濃度)である)。
海苔原藻を長時間攪拌タンク2の中で貯蔵すると、海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下してしまう。そのため、海苔原藻の鮮度が低下する虞がある。
【0042】
本鮮度維持システム1においては、以下のようにして海苔原藻の鮮度が維持される。
まず、攪拌タンク2の水槽6内に設置されているDO計7が計測するDO濃度が7.5mg/Lよりも小さい所定の閾値以下になると、気液混合装置4の動作が開始される。すると、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素が入れ込まれ、その後、当該高濃度酸素溶解装置4bに高DO濃度海水製造タンク4a内の、海苔原藻前処理部3で排出された排水(海水)27、あるいは、濾過された濾液(排水)14(以下、単に「排水(海水)27等」という)が送り込まれる。そして、これにより、酸素の中に排水(海水)27等を通すことで、酸素が当該排水(海水)27等に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再び高DO濃度海水製造タンク4aに送り込まれる(循環)。高DO濃度海水製造タンク4a内に設置されている水位計10が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ5aの動作が停止する。なお、気液混合装置4の動作停止は、タイマー制御によって行われる。
【0043】
次いで、水中ポンプ5aの動作が開始され、かつ、ゲートバルブ5eが開かれる。すると、高DO濃度海水製造タンク4a内の高DO濃度海水が攪拌タンク2の水槽6の外側の底部に投入される。そして、高DO濃度海水製造タンク4a内に設置されている水位計10が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ5aの動作が停止し、かつ、ゲートバルブ5eが閉じられる。これにより、攪拌タンク2内のDO濃度が初期濃度の約7.5mg/Lで落ち着き、海苔原藻の鮮度が維持される。
【0044】
(検証実験)
次に、本実施形態の効果を検証するために行った検証実験について説明する。
本検証実験においては、攪拌タンクを2基用意し、一方の攪拌タンクには高DO濃度海水を得る気液混合装置4を付設し(攪拌タンクA)、もう一方の攪拌タンクには気液混合装置を付設しなかった(攪拌タンクB)。
攪拌タンクA,Bに高DO濃度海水をそれぞれ約6mずつ入れた。そして、海苔原藻を入れた後、運転を開始し、1時間ごとに攪拌タンクA,B内のDO濃度を計測した。
なお、海苔原藻を入れる前の攪拌タンクA,B内のDO濃度は、20mg/L以上であった。
【0045】
検証実験の結果、気液混合装置を付設していない攪拌タンクB内のDO濃度は、海苔原藻を入れてから約3時間後に2.0mg/L以下まで低下することが確認された。
これに対し、気液混合装置4を付設した攪拌タンクA内のDO濃度は、海苔原藻を入れてから約3時間経過しても約7.5mg/L(海水のDO濃度と同等)で推移することが確認された。
【0046】
また、気液混合装置を付設していない攪拌タンクBを用いた場合には、同時に摘採した海苔原藻であっても、攪拌タンクでの貯蔵時間が長くなるにつれて鮮度が低下し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)が低下してしまうことが確認された。
これに対し、気液混合装置4を付設した攪拌タンクAを用いた場合には、攪拌タンクでの貯蔵時間が長くなっても、海苔原藻の鮮度が維持され、海苔抄き始め・抄き終わりの品質のばらつきはなく、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上が図れることが確認された。
【0047】
なお、本実施形態においては、高DO濃度海水を得るための気液混合装置4が、一時貯留タンクとしての高DO濃度海水製造タンク4aと、高濃度酸素溶解装置4bとしての株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)と、を組み合わせて構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。高DO濃度海水を得ることができれば、高濃度酸素溶解装置として酸素ファイター(登録商標)以外の装置を用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、高DO濃度海水製造タンク(バッファ水槽)4a内の、排水(海水)27等を、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bとの間で循環させ、高DO濃度海水製造タンク(バッファ水槽)4a内の高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。高DO濃度海水製造タンク(バッファ水槽)4aに戻さずに、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)4bから直接攪拌タンク2に投入するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、水槽6が、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状をなしており(三角コーナー)、攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。水槽は、例えば、攪拌タンク2の内部の四隅の一箇所に多孔質板状のステンレス製のパンチングメタルを固着することによって形成するようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、鮮度維持システム1の動作が自動的に制御される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、DO計7を見て、作業者が制御するようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、網目回転円筒部13が濾液槽15ごと、上流側から下流側に向けて下傾した状態で設置される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。少なくとも網目回転円筒部が上流側から下流側に向けて下傾した状態で設置されればよく、濾液槽は水平状態で設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 海苔原藻の鮮度維持システム
2 攪拌タンク
3 海苔原藻前処理部
4 気液混合装置
4a 高DO濃度海水製造タンク(一時貯留タンク、バッファ水槽)
4b 高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)
5 海水投入手段
12 排水再生濾過装置
13 網目回転円筒部(濾過部)
14 濾過された濾液(排水)
15 濾液槽
16 濾液回収部
16d 排水(海水)タンク
18 濾物回収部
27 海苔原藻前処理部で排出された排水(海水)
図1
図2
図3
図4