(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】眼乾燥症候群および他の外傷を受けた非角化上皮表面を処置する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/16 20150101AFI20240416BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K35/16
A61K9/19
A61K47/36
A61P27/02
A61P27/04
A61P1/02
A61P15/02
A61P17/02
(21)【出願番号】P 2022145970
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2019518175の分割
【原出願日】2017-06-16
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518444901
【氏名又は名称】アイ・ケア・インターナショナル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング,マシュー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】レイザー,スティーブン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンティル,ヘルガ・エム
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/030609(WO,A1)
【文献】Am. J. Ophthalmol., (2007), 144, [1], p.86-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/16
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清と、100から1200kDAの分子量を有する多糖
とを水性担体中に含む医薬組成物であって、該組成物が50~90重量パーセント(wt%)の血清および0.025%から2.0%の多糖を含み、多糖が疎水性修飾キトサンである、前記医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該組成物のpHが3.5から8.0である、前記医薬組成物。
【請求項3】
血清が、哺乳動物の血液から単離されたものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
哺乳動物が、ヒト、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、胎児、またはウシである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
血清が、ヒト血清である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
血清が、溶媒、洗浄剤、ソラレン、紫外線、およびガンマ線照射のうちの1以上に、組成物中へのその組込みに先立って曝露される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物が、溶液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、または軟膏剤として製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
添加剤が、キトサン、アルギネート、ゼラチン、ヒアルロン酸、ゲランガム、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グルコース、グルコサミン、塩化ナトリウム、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、グリセリン、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒマシ油、亜麻仁油、および鉱物油からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
添加剤が、グリシン、アスコルビン酸、アルギネート、ゼラチン、グリコールキトサン、乳酸、酢酸、次亜塩素酸、クエン酸、ホウ酸、グルタミン酸、およびグリコール酸のうちの1以上から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
眼科用組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
それを必要とする対象において眼乾燥症候群を処置するための方法における使用のための医薬組成物であって、該方法が、
請求項1に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含み、
血清が、対象の眼において眼乾燥症候群を処置するのに有効な量で組成物中に存在する、前記医薬組成物。
【請求項13】
そのような処置を必要とする対象の上皮表面を処置するための方法における使用のための医薬組成物であって、該方法が、
上皮表面に、請求項1に記載の医薬組成物を適用するステップを含み、
血清が、対象の上皮表面を処置するのに有効な量で組成物中に存在する、前記医薬組成物。
【請求項14】
上皮表面が、眼球表面、口腔表面、膣表面、皮膚創傷、および創傷の表面から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
血清が、血漿由来の血清である、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2016年6月16日出願の米国仮出願第62/350,772号の優先権の利益を主張する国際特許出願である。
【背景技術】
【0002】
[0002]非角化上皮表面は、四肢を除き、身体の多くの部分の全体において見られ、眼球を例外として、大半は見えない所にある。薄い水状の水溶液から粘液と呼ばれる濃い粘性流体まで様々であり得る潤滑物質(lubrication)が、非角化上皮表面を絶えず濡らしている。潤滑物質は、外分泌腺によって分泌され、これもまた、その分泌物を膜結合小胞として発芽させる離出分泌方法により分泌する杯細胞として知られる単細胞腺から、分泌物を管から排出する複合多細胞腺まで様々である。非角化上皮の潤滑物質は、糖タンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、および上皮細胞の健康を促進し、かつ保護する酵素を含有する。潤滑物質は、非角化上皮を摩擦性外傷による機械的刺激から保護するだけでなく、抗微生物特性も付与して、これらの露出領域にとって常に脅威である感染性生物による侵入を防止する。非角化上皮表面は、角膜、結膜、口、咽頭、食道、声帯、膣、および子宮頸部の被覆を形成し、消化管、気道、および尿生殖路において極めて重要な役割を果たす。
【0003】
[0003]これらの組織はすべて、身体とその環境との間で物および情報を通過させる連絡部位である。感覚活動(眼、鼻、口、および咽喉)、ガス交換(肺)、食物吸収(腸)、ならびに生殖(子宮、膣、および乳房)というその生理的機能に起因して、非角化上皮表面は、必然的に、身体の内部に対する動的な薄い透過性障壁である。これらの特性により、これらの組織は、病原体による蝕みおよび侵害に対して特に弱くなる。この脆弱性は、非角化上皮表面の極めて重要な機能と相まって、その防御のための特殊な機構の進化を促している。
【0004】
[0004]眼乾燥症候群は、大きな増えつつある問題であり、非常に一般的で、一般の眼科または検眼診療所における患者のうち推定25%が眼乾燥症候群の症状を報告している。これは、不安定な涙液層および急速な涙液層破壊時間を生じさせる複数の原因を有する。眼乾燥症候群は、涙液および眼球表面の多因子疾患であり、霧視ならびに異物感、刺激、灼熱感、および光線過敏を含む不快感の症状を生じさせる。眼乾燥および涙液層不安定性は、眼球表面に損傷を与え得る。これは、涙液層の浸透圧の増加および眼球表面の炎症を伴う。
【0005】
[0005]現在、眼乾燥症候群に対する治療法は存在せず、一般的な処置は、症状を管理することのみを標的とする。従来の療法の中心は、眼球表面の水分を増加させ、追加の潤滑を実現する人工涙液の適用である。多様な人工涙液製剤は、その電解質組成、浸透圧、粘度、保存剤の有無、および適合溶質が互いに異なる。しかしながら、汚染を防止するための保存剤を含有する人工涙液の頻繁な適用は、特に過敏な眼を有する患者において、毒性およびアレルギー反応の両方を含むことが見出されている。
【0006】
[0006]眼乾燥症候群の処置のための眼科用組成物が現在必要とされている。眼乾燥療法の開発における多くの難題の中に、眼表面に長期間保持される組成物を送達することができないことがある。ほとんどが点眼剤の形態での局所投与が、通常、眼前部疾患を処置す
るために用いられる。局所的に適用される薬物のほとんどについては、作用部位は、通常、角膜、結膜、強膜の異なる層、ならびに前部の他の組織、例えば虹彩および毛様体(前部ブドウ膜)である。投与時に、角膜前の因子および解剖学的障壁は、局所製剤のバイオアベイラビリティに負の影響を及ぼす。角膜前の因子は、溶液剤の流出、瞬目、涙液層、涙液のターンオーバー、および流涙の誘発を含む。涙液層は、2~3分という急速な回復時間を示し、局所的に投与された溶液剤のほとんどは、注入後わずか15~30秒以内に洗い流される。すべての角膜前の因子を考慮して、吸収膜との接触時間がより少なく、これは、適用された用量の5%未満が眼内組織に到達する主要な理由であると考えられる。しかしながら、角膜前の因子は、眼乾燥症候群の処置における大きな妨害でない。
【0007】
[0007]角膜、結膜、および強膜の様々な層もまた、薬物透過において重要な役割を果たす。眼の最前部の層である角膜は、眼への外因性物質の進入を限定し、眼部組織を保護する機械的障壁である。これは、主に、上皮、実質、および内皮に分割され得る。各層は、異なる極性および薬物透過の潜在的な律速構造を与える。角膜上皮は、類脂質性の性質であり、角膜中の全細胞の90%を含有し、局所的に投与された親水性薬物の透過に対する重大な抵抗性をもたらす。さらに、表層角膜上皮細胞は、デスモソームによって互いに接合され、リボン様の密着結合複合体(閉鎖帯)によって取り囲まれている。これらの密着結合複合体の存在は、涙液層から上皮の細胞間隙および角膜の内層への傍細胞薬物透過を遅延させる。
【0008】
[0008]角膜の厚さの90%を占める実質は、細胞外マトリックスで構成され、コラーゲン原線維の層状配列からなる。実質の非常に高密度の構造は、親油性薬物分子の透過に対する重大な障壁をもたらす。内皮は、六角形の細胞の最も内側の単層である。内皮は、実質と房水との間の分離障壁であるが、その選択的な担体媒介性輸送および分泌機能に起因して、角膜の透明性を維持するのを助ける。さらに、角膜内皮結合は、漏出しやすく、房水と実質との間の高分子の通過を容易にする。したがって、角膜層、特に上皮および実質は、眼部薬物送達に対する大きな障壁と考えられる。透過物は、これらの層を透過するために、両親媒性の性質を有するべきである。
【0009】
[0009]角膜と比較して、結膜の薬物吸収は、結膜毛細血管およびリンパ管が存在し、それらが体循環への重大な薬物喪失を引き起こし、それにより、眼部バイオアベイラビリティを低下させ得ることに起因して、非生産的であると考えられる。結膜上皮の密着結合は、親水性分子の受動運動をさらに遅延させ得る。角膜と連続している強膜は、角膜縁を起点とし、眼球の残りの全体の後部に広がる。強膜は、主に、細胞外マトリックスに包埋されたコラーゲン線維およびプロテオグリカンからなる。強膜の透過性は、角膜実質のものと同等であると考えられる。強膜を介した薬物分子の透過性は、分子半径に反比例する。直鎖状構造を有するデキストランは、球状タンパク質と比較して透過性が低かった。さらに、薬物分子の電荷もまた、強膜を介したその透過性に影響を及ぼす。正電荷を有する分子は、おそらく負電荷を有するプロテオグリカンマトリックスへのその結合に起因して、不十分な透過性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[00010]眼乾燥症候群を処置するために、吸収膜との接触時間が最大であり、かつ角膜
、結膜、および強膜の様々な層を介した透過性が低減された組成物が必要とされる。眼乾燥症候群の有効な処置およびその症状の改善のための組成物が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本開示は、とりわけ、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む凍結乾燥組成物;眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法であって、再構成された凍結乾燥
組成物を適用するステップを含む方法;および2つのチャンバーを含み、第1のチャンバー(101)が、非自己血漿または血清を含む凍結乾燥眼科用組成物の貯蔵用に構成され、第2のチャンバー(102)が、再構成流体を含む、眼科用治療剤送達デバイス(100)を提供する。一態様では、本開示は、対象の身体内または身体上の非角化上皮表面を保湿および/または修復するための組成物を提供する。例は、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷の処置を含む。複数の実施形態では、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化上皮表面を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物が開示される。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物の非自己血漿または血清は、臍帯血漿または血清由来であり得る。
【0012】
[0012]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、バイオポリマー、好ましくは100から1200kDa、好ましくは100から400kDaの分子量を有する多糖、または100、250、もしくは400kDaの分子量を有する多糖であるポリマーとを含む凍結乾燥組成物であって、多糖が、キトサン、または疎水性修飾キトサンである、凍結乾燥組成物を提供する。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、以下に記載された量の血清または血漿を含む。複数の実施形態では、組成物は、生分解性および生体適合性である。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、凝集性固体状材料、例えばディスク、ウエハー、レンズ、ペッサリー、創傷ドレッシング、または義歯の形態である。複数の実施形態では、固体材料の形態の凍結乾燥組成物は、十分量の水性液体(例えば、再構成流体)とさらに組み合わされる。複数の実施形態では、液体血清または血漿は、単独で、または適当な水性担体、例えば、水もしくは食塩水で希釈されて、再構成流体として使用され得る。複数の実施形態では、水性液体は、本明細書に記載された任意の溶媒である。例示的な実施形態では、水または食塩水溶液が使用されてもよく、任意の添加剤が含まれてもよい(例えば、グリシンまたはアスコルビン酸)。複数の実施形態では、本開示は、凝集性固体状材料の形態の凍結乾燥組成物を、凝集性固体状材料と混合されたときに凝集性スポンジ様材料を形成する再構成流体とともに提供する。別の実施形態では、凍結乾燥組成物は、非角化上皮表面、例えば眼、口、もしくは膣の表面、または外部創傷の表面への局所適用のための好適な剤形に製剤化され得る乾燥粉末の形態である。そのような粉末組成物は、例えば、液剤、ゲル剤、または軟膏剤として製剤化され得る。好ましくは、組成物は、滅菌されている。
【0013】
[0013]本明細書に記載された凍結乾燥血漿または血清および多糖をベースとする組成物は、多数の有利な特性を有する。例えば、組成物は、生分解性であり、動物組織と、特に非角化上皮表面、例えば眼、口、もしくは膣の表面、または外部創傷の表面と生体適合性である。複数の実施形態では、組成物は、生物学的に活性な血漿または血清に由来するタンパク質を含有し、その適用部位からの溶出は、組成物のマトリックス様構造によって減速される。よって、本開示は、外部創傷の表面を含む損傷を受けたまたは外傷を受けた非角化上皮表面の治癒を促進する方法であって、表面に、ある量の本明細書に記載された組成物を適用することによる方法を提供する。
【0014】
[0014]複数の実施形態では、組成物は、眼乾燥症候群を含むがこれに限定されない眼部疾患および障害の処置のための非角化上皮表面、例えば眼への適用の後に血漿または血清中に存在する生物学的に活性な構成成分の徐放を可能にするマトリックス様構造を形成する。他の態様では、本明細書に記載された凍結乾燥組成物はまた、例えば、眼乾燥患者における角膜上皮の損傷の検出のための標準的なアッセイによるローズベンガル色素の取り込みなどによって証明される、下にある角膜上皮の健康を促進する。複数の実施形態では、本明細書に記載された組成物はまた、標準的なアッセイによって測定される、涙液破壊時間を改良する。
【0015】
[0015]複数の実施形態では、凍結乾燥組成物のポリマーは、直鎖状バイオポリマーであり得る。一部の態様では、ポリマーは、水溶液に溶解性となるように修飾されていてもよい。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物のポリマーは、7.0超のpHを有する塩基性バイオポリマーであり得る。一部の実施形態では、ポリマーは、カチオン性、アニオン性または双性イオン性であり得、キトサン、アルギネート、ゼラチン、およびそれらの組合せから選択され得る。複数の実施形態では、キトサンは、疎水性修飾キトサン、カルボキシメチルキトサン、スクシニルキトサン、グリコールキトサン、チオール化キトサンおよびそれらの組合せから選択され得る。
【0016】
[0016]複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、添加剤をさらに含み得る。複数の実施形態では、添加剤は、キトサン、アルギネート、ゼラチン、ヒアルロン酸、ゲランガム、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グルコース、グルコサミン、塩化ナトリウム、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸およびグリセロールから選択され得る。
【0017】
[0017]複数の実施形態では、凍結乾燥眼科用組成物中の非自己血漿または血清は、組成物の約0.005から100重量/体積(w/v)%の濃度であり得る。
[0018]複数の実施形態では、組成物は、再構成流体により再構成される。複数の実施形態では、再構成流体は、添加剤をさらに含み、添加剤は、アスコルビン酸、グリシン、およびそれらの組合せから選択され得る。再構成された組成物は、約7.4の最終pHを有し得る。
【0018】
[0019]複数の実施形態では、組成物は、非自己血清と、100から1200kDaの分子量を有するポリマーとを含む。あるいは、組成物は、血漿または血清と、100から400kDaの分子量を有する多糖とを含む凍結乾燥組成物である。複数の実施形態では、多糖は、キトサン、セルロース、デキストリン、ペクチン、アルギン酸、寒天、アガロース、カラギーナン(carragena)、およびその誘導体からなる群から選択される。他の実施形態では、多糖は、キトサン、または疎水性修飾キトサンである。
【0019】
[0020]複数の実施形態では、本明細書に記載された凍結乾燥組成物は、明確な形状を有する凝集性固体状材料の形態である。複数の実施形態では、固体状材料は、十分に凝集性であるため、低いまたは中程度の圧力下でひび割れない。複数の実施形態では、明確な形状を有する凝集性固体状材料の形態の凍結乾燥組成物は、血清または血漿と、キトサン、好ましくは以下に記載された疎水性修飾キトサンとを含む。複数の実施形態では、キトサンは、以下に記載されたようにパルミチン酸無水物により疎水性修飾されている。複数の実施形態では、凝集性固体状材料は、ディスク、ウエハー、レンズ、ペッサリー、創傷ドレッシング、または義歯の形態である。より凝集性の材料が所望される実施形態では、凍結乾燥組成物は、血清と、キトサン、または以下に記載された疎水性修飾キトサンとを含む。
【0020】
[0021]複数の実施形態では、本明細書に記載された凍結乾燥組成物は、乾燥粉末の形態である。複数の実施形態では、乾燥粉末の形態の凍結乾燥組成物は、血清または血漿と、キトサン、好ましくは以下に記載された疎水性修飾キトサンとを含む。複数の実施形態では、キトサンは、以下に記載されたようにパルミチン酸無水物により疎水性修飾されている。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、血清と、キトサン、または以下に記載された疎水性修飾キトサンとを含む。
【0021】
[0022]本明細書に記載された凍結乾燥組成物の固体状態の実施形態のいずれかによれば、乾燥組成物中の血清または血漿構成成分の量は、組成物の総乾燥重量を基準にして約50~90重量パーセント(wt%)であり、多糖の量は、約10~40wt%である。複
数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、約60~80wt%の血清もしくは血漿構成成分および約20~40wt%の多糖、または約70~80wt%の血清もしくは血漿構成成分および約20~30wt%の多糖を含有する。
【0022】
[0023]複数の実施形態では、本開示は、血漿または血清と、キトサン、疎水性修飾キトサン、スクロース、またはトレハロースから選択される多糖とを含む凍結乾燥組成物であって、約60~90wt%の血漿または血清構成成分と、約10~40wt%の多糖とを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0023】
[0024]上に記載された凍結乾燥組成物の固体状態の実施形態のいずれかによれば、組成物は、製剤に含まれる担体および1種または複数の任意選択の賦形剤に応じて、液剤、懸濁剤、軟膏剤、またはゲル剤の形態をとり得る医薬組成物として製剤化され得る。よって、本開示は、担体と、1種または複数の任意選択の賦形剤とをさらに含む、本明細書に記載された凍結乾燥組成物を含む医薬組成物を提供する。複数の実施形態では、担体は、水溶液、例えば、水または緩衝食塩水である。複数の実施形態では、1種または複数の任意選択の賦形剤は、例えば、エタノール、ポリオール、界面活性剤、または炭水化物を含み得る。複数の実施形態では、1種または複数の任意選択の賦形剤は、スクロースおよびトレハロースから選択され得る。複数の実施形態では、医薬組成物は、滅菌されている。
【0024】
[0025]それを必要とする対象において眼乾燥症候群を処置するための方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法であって、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を投与するステップを含む方法が本明細書で提供され、非自己血漿または血清は、それぞれ対象の眼において眼乾燥症候群を処置するのにまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するのに有効な量で組成物中に存在する。複数の実施形態では、非自己血漿または血清は、冷凍乾燥および再構成されている。
【0025】
[0026]そのような処置を必要とする対象の非角化上皮表面を処置するための方法であって、表面に、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を適用するステップを含み、非自己血漿または血清が、対象の非角化上皮表面を処置するのに有効な量で組成物中に存在する、方法もまた本明細書で提供される。複数の実施形態では、非角化上皮表面は、眼球表面、口腔表面、膣表面、および外部創傷の表面から選択される。
【0026】
[0027]複数の実施形態では、血漿または血清は、臍帯血漿または血清由来である。複数の実施形態では、ポリマーは、直鎖状バイオポリマーである。複数の実施形態では、ポリマーは、水溶液に溶解性となるように修飾されている。複数の実施形態では、ポリマーは、7.0超のpHを有する塩基性バイオポリマーである。複数の実施形態では、ポリマーは、ポリカチオン性またはポリアニオン性である。
【0027】
[0028]複数の実施形態では、ポリマーは、キトサン、アルギネート、ゼラチン、またはそれらの任意の組合せである。複数の実施形態では、ポリマーは、キトサンである。複数の実施形態では、キトサンは、カルボキシメチルキトサン、スクシニルキトサン、グリコールキトサン、チオール化キトサンおよびそれらの組合せから選択される。複数の実施形態では、キトサンは、疎水性修飾キトサンである。複数の実施形態では、疎水性修飾キトサンは、キトサンラクテート、キトサンサリチレート、キトサンピロリドンカルボキシレート、キトサンイタコネート、キトサンナイアシネート、キトサンホルメート、キトサンアセテート、キトサンガレート、キトサングルタメート、キトサンマレエート、キトサン
アスパルテート、およびキトサングリコレートから選択される。複数の実施形態では、疎水性修飾キトサンの疎水性置換基は、パルミチン酸無水物によって提供される。これらの実施形態によれば、凍結乾燥組成物中のポリマーの量は、組成物の総乾燥重量を基準にして約10~50wt%、または約20~40wt%、または約20~30wt%である。これらの実施形態によれば、血清または血漿構成成分は、乾燥重量の残りの大半、または残りの全体を構成する。複数の実施形態では、組成物中の血清または血漿構成成分の量は、約50~90wt%、または約60~80wt%、または約70~80wt%である。
【0028】
[0029]複数の実施形態では、再構成された組成物は、溶液剤、懸濁剤、半液剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、軟膏剤、またはクリーム剤として製剤化される。複数の実施形態では、再構成された組成物は、局所的に投与される。他の実施形態では、再構成された組成物は、点眼剤の形態で投与される。他の実施形態では、再構成された組成物は、口内乾燥症候群に対して経口的に投与され得る。複数の実施形態では、口内乾燥症候群に対する経口投与は、洗口剤、マウスリンス、オーラルリンス、マウスバスなどによるものであり得る。複数の実施形態では、子宮頸部および/または膣の粘膜への投与は、溶液剤、ゲル剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ペッサリー、または錠剤によるものであり得る。
【0029】
[0030]他の実施形態では、再構成された組成物は、対象の子宮頸部および/または膣の粘膜に投与され得る。複数の実施形態では、子宮頸部および/または膣の粘膜への投与は、溶液剤、ゲル剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ペッサリー、または錠剤によるものであり得る。あるいは、再構成された組成物は、膣リングなどからの連続放出によって投与され得る。
【0030】
[0031]複数の実施形態では、再構成された組成物は、対象の糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷に投与され得る。複数の実施形態では、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷への投与は、局所的にまたは経口的に投与され得る。複数の実施形態では、局所投与は、溶液剤、懸濁剤、半液剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、軟膏剤、またはクリーム剤を含み得る。複数の実施形態では、経口投与は、錠剤を含み得る。
【0031】
[0032]複数の実施形態では、組成物中の非自己血漿または血清は、組成物の約0.005から100%(w/v)の濃度である。複数の実施形態では、組成物中の非自己血漿または血清は、約75%(w/v)から90%(w/v)および10~30%の濃度である。複数の実施形態では、組成物中の非自己血漿または血清は、組成物の約40%から60%(w/v)の濃度である。
【0032】
[0033]複数の実施形態では、本開示は、そのような処置を必要とする対象の外部創傷を含む非角化上皮表面を処置するための方法における使用のための、血漿または血清と、多糖、好ましくはキトサンまたは疎水性修飾キトサンとを含む凍結乾燥組成物を提供する。複数の実施形態では、多糖は、100から400kDaの分子量を有するキトサンである。複数の実施形態では、多糖は、疎水性修飾キトサンであり、その疎水性置換基は、パルミチン酸無水物によって提供される。
【0033】
[0034]複数の実施形態では、組成物は、そのような処置を必要とする対象における使用のための、記載された組成物のいずれかを含む。複数の実施形態では、本開示は、そのような処置を必要とする対象において眼乾燥症候群を処置するための方法における使用のための、血漿または血清と、多糖、好ましくはキトサンまたは疎水性修飾キトサンとを含む凍結乾燥組成物を提供する。複数の実施形態では、多糖は、100から400kDaの分子量を有するキトサンである。複数の実施形態では、多糖は、疎水性修飾キトサンであり、その疎水性置換基は、パルミチン酸無水物によって提供される。
【0034】
[0035]2つのチャンバー(101、102)を含み、第1のチャンバー(101)が、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む凍結乾燥組成物の貯蔵用に構成され、第2のチャンバー(102)が、再構成流体の貯蔵用に構成される、治療剤送達デバイス(100)もまた本明細書で提供される。
【0035】
[0036]複数の実施形態では、非自己血漿または血清は、臍帯血漿または血清由来である。複数の実施形態では、ポリマーは、直鎖状バイオポリマーである。複数の実施形態では、ポリマーは、水溶液に溶解性となるように修飾されている。複数の実施形態では、ポリマーは、7.0超のpHを有する塩基性バイオポリマーである。複数の実施形態では、ポリマーは、ポリカチオン性である。複数の実施形態では、ポリマーは、キトサン、アルギネート、ゼラチン、およびそれらの組合せから選択される。複数の実施形態では、直鎖状バイオポリマーは、キトサンである。複数の実施形態では、キトサンは、カルボキシメチルキトサン、スクシニルキトサン、グリコールキトサン、チオール化キトサンおよびそれらの組合せから選択される。複数の実施形態では、凍結乾燥眼科用組成物は、再構成流体により、最終pHが約7.4となるように再構成される。
【0036】
[0037]複数の実施形態では、治療剤送達デバイス(100)の2つのチャンバー(101、102)は、電気機械的にまたは機械的に破砕され、それにより、凍結乾燥組成物および再構成流体の混合を可能にし、それにより、再構成された血清または血漿製剤を生成する。
【0037】
[0038]複数の実施形態では、本開示の治療剤送達デバイス(100)は、第1のチャンバー(101)内の凍結乾燥組成物と、第2のチャンバー(102)内の再構成流体とを含み、再構成時に、再構成された組成物が、対象に送達される。
【0038】
[0039]複数の実施形態では、本開示の治療剤送達デバイス(100)は、眼乾燥症候群の処置、または非角化表面の保湿および/もしくは修復用である再構成された組成物を含む。
【0039】
[0040]本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白となる。
[0041]反対の記載がない限り、本明細書で参照されたすべての刊行物、参考文献、特許および/または特許出願は、その全体がすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】[0042]
図1は、治療剤送達デバイス(100)の略図である。
【
図2A】[0043]
図2Aは、血清試料を含む5%スクロース製剤の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【
図2B】[0044]
図2Bは、血漿試料を含む5%スクロース製剤の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[0045]とりわけ、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む凍結乾燥眼科用組成物;それを必要とする対象の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法であって、再構成された凍結乾燥眼科用組成物(例えば、非自己血漿または血清およびポリマー)を適用するステップを含む方法;ならびに凍結乾燥眼科用組成物と、再構成流体とを含む送達デバイス(100)が本明細書で提供される。
【0042】
定義
[0046]以下の定義は、本発明の主題を理解する目的で、添付の特許請求の範囲を構築するために含まれる。本明細書で使用される略語は、化学および生物学の技術分野におけるその従来の意味を有する。
【0043】
[0047]別途定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本開示において使用される用語の多くの一般的定義を当業者に提供する:The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別途規定がない限り、下記でそれらに割り当てられた意味を有する。
【0044】
[0048]具体的な記述がない限り、または文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的であると理解される。具体的な記述がない限り、または文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0045】
[0049]具体的な記述がない限り、または文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における一般公差の範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。約は、記述された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解され得る。別途文脈から明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修飾されている。本開示の組成物の濃度範囲に関する約はまた、有効な量または範囲となる記述された量または範囲の任意の変動を指す。
【0046】
[0050]本明細書で使用される場合、「添加剤」は、本明細書に記載された組成物に添加され得る任意の追加の構成成分を含み得る。添加剤は、凍結乾燥の前または再構成の前に添加され得る。1種または複数の添加剤が、組成物に添加され得る。添加剤は、FDAによって分類されている構成成分を含んでもよく、複数の実施形態では、市販のヒト使用のための眼科用製剤品[第21編、第5巻]として分類され得る。例示的な添加剤は、収斂剤、緩衝剤、粘滑剤、皮膚軟化剤、洗眼剤、アイローション、灌流溶液、高張剤、等張剤および血管収縮剤を含み得る。本開示における添加剤は、任意の好適な量で使用され得る。
【0047】
[0051]本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、対象への経口投与、坐剤としての投与、局所接触(例えば、点眼剤もしくはスプレー剤)、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、病巣内、髄腔内、鼻腔内もしくは皮下投与、または徐放性デバイス、例えば、ミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬側、舌下、口蓋、歯肉、鼻腔、膣、子宮頸部、直腸、または経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、および脳室内を含む。
【0048】
[0052]投与は、経口投与(例えば、口内乾燥症候群の処置のための)によるものをさらに含み得る。一部の例では、経口投与は、洗口剤、マウスリンス、オーラルリンス、マウスバスなどを含み得る。子宮頸部および/または膣の粘膜への投与は、溶液剤、ゲル剤、
懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ペッサリー、または錠剤によるものであり得る。一態様では、再構成された組成物は、対象の子宮頸部および/または膣の粘膜に投与され得る。子宮頸部および/または膣の粘膜への投与は、溶液剤、ゲル剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ペッサリー、または錠剤によるものであり得る。あるいは、再構成された組成物は、膣リングなどからの連続放出によって投与され得る。投与は、対象の糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷への投与を含み得る。糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷への投与は、局所的にまたは経口的に投与され得る。局所投与は、溶液剤、懸濁剤、半液剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、軟膏剤、またはクリーム剤を含み得る。経口投与は、錠剤を含み得る。
【0049】
[0053]本明細書で使用される場合、「自己」という用語は、自分自身の試料由来の組織または細胞(すなわち、患者自身の血液または血液構成成分)を示すこと、それに関係すること、またはそれを伴うことを指す。自己血漿または血清は、通常、レシピエントによって事前に貯血されていない限り、血液バンクまたは中央保管機関から容易に入手可能でない。
【0050】
[0054]本明細書で使用される「バイオポリマー」は、生物によって産生されるポリマーを指し得、これらは、「ポリマー生体分子」である。バイオポリマーは、ポリマーであることから、共有結合されてより大きな構造体(すなわち、直鎖状バイオポリマー)を形成する繰り返しモノマー単位を含有する。例示的なバイオポリマーは、セルロース、デンプン、リグニン、キチン、および様々な多糖を含み得る。これらの材料およびその誘導体は、広範な特性および用途を与える。天然ポリマーは、分解速度は一般に化学修飾の程度に反比例するが、容易に生分解可能である傾向がある。
【0051】
[0055]本明細書で使用される「キトサン」は、キチンの主要な誘導体を指し、キチンからアルカリの存在下での脱アセチル化によって形成される。N-アセチルグルコサミンのポリマーであるキチンは、甲殻類(例えば、エビ、カニ、ロブスター)の主な構成成分であり、真菌、昆虫および酵母の外骨格および細胞壁中にも存在するセルロース様バイオポリマーである。キトサンは、(1→4)-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルカン(N-アセチルD-グルコサミン)および(1→4)-2-アミノ-2-デオキシb-D-グルカン(D-グルコサミン)単位から構成される直鎖状多糖である。キトサンは、抗微生物活性、止血活性、および創傷治癒の加速、組織工学の足場、薬物送達、ならびに抗腫瘍活性を含む多数の生物学的特性を有する。キトサンの固有の抗微生物特性は、感染および/または汚染の危険性を減少させる上で決定的な長所であり得る。加えて、キトサンは、生物学的負荷が除去されると、生分解性であり、低い毒性で哺乳動物細胞と生体適合性である。
【0052】
[0056]キトサンは、それを負電荷を有する医薬品(例えば、血液細胞)と静電的に相互作用させるその骨格に沿った正電荷を有することにより、キトサンと潜在的な眼部創傷との間に接着性界面を生じて、止血を実現する。カルボキシメチルキトサン、スクシニルキトサン、グリコールキトサン、チオール化キトサンは、酸可溶化の必要性を低減するために使用され得る。キトサンは、グルコサミン単位の直鎖状ポリマーである。構造的に、これは、第一級アミン基の存在によってセルロースと区別される。キトサンは、様々なグレードおよび平均分子量で市販されている(例えば、Sigma Aldrich(登録商標))。
【0053】
[0057]キトサンは、アミノ基およびまたはヒドロキシル基の反応性を利用することによって誘導体化され得る。いくつかの例示的なキトサン誘導体は、キトサンのN-フタロイル化(pathaloylation)、デンドロン化キトサン-シアル酸ハイブリッド、メチルチオカルバモイルおよびフェニルチオカルバモイルキトサン、乳酸/グリコール
酸キトサンヒドロゲル、または天然多糖キトサン由来のナノコンポジットを含み得る。一部の態様では、キトサンは、疎水性修飾されていてもよい。キトサンは、当技術分野における標準的な技法を使用して疎水性修飾され得る。ある特定の態様では、キトサンは、キトサン骨格に沿った第一級アミン基とアルキル(またはアリール)アルデヒドとの反応(すなわち、50/50(v/v)%の酢酸水溶液およびエタノール中での)によって疎水性修飾され得る。反応の後に、得られたシッフ塩基またはイミン基は、還元剤を滴下添加することによって、安定な第二級アミンに還元され得る。他の態様では、キトサンは、パルミチン酸無水物をキトサンに添加することにより疎水性修飾され得る。
【0054】
[0058]「共投与する」とは、本明細書に記載された組成物が、追加療法の投与と同時に、その直前に、またはその直後に投与されることを意味する。本開示の組成物は、単独で投与されてもよく、または第2の組成物/治療剤とともに対象に共投与されてもよい。共投与とは、組成物の個別のまたは第2の組成物/治療剤と組み合わせた同時または逐次投与を含むことを意味する。
【0055】
[0059]本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する」および「有する」などは、米国特許法においてそれらに割り当てられた意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味し得る。「から本質的になる」または「本質的になる」などは、米国特許法において割り当てられた意味を有し、この用語は、非制限的であり、列挙されたものの基本的なまたは新規な特徴が、列挙されたものを超えるものの存在によって変化させられない限り、列挙されたものを超えるものの存在を認めるが、先行技術の実施形態を除外する。
【0056】
[0060]本明細書で使用される場合、「並行投与」は、少なくとも部分的な持続期間の重複を含む。例えば、2種の薬剤(例えば、本明細書に記載された組成物のいずれか)が並行して投与される場合、その投与は、ある特定の所望の期間内に行われる。それらの組成物の投与は、同日に開始および終了し得る。両方の組成物が少なくとも1回同日に摂取される限り、ある組成物の投与は、第2の組成物の投与に1日(数日)先行することもできる。同様に、両方の組成物が少なくとも1回同日に摂取される限り、ある組成物の投与は、第2の組成物の投与を過ぎても続けることができる。組成物は、並行投与を含むために各日同時に摂取される必要はない。
【0057】
[0061]本明細書で使用される場合、「クリーム剤」という用語は、疾患、症候群、または状態(すなわち、眼乾燥症候群)の治療的処置に使用され得る濃い(高粘度)液体または半液体を指し得る。好適なクリーム剤の例は、油中水型および水中油型乳剤を含むがこれらに限定されない。油中水型クリーム剤は、脂肪アルコール、例えばセチルアルコールまたはセトステアリルアルコールおよび乳化ワックスの特性と類似しているがこれらに限定されない特性を有する好適な乳化剤を使用することによって製剤化され得る。水中油型クリーム剤は、セトマクロゴール乳化ワックスなどの乳化剤を使用して製剤化され得る。好適な特性は、乳剤の粘度を改変する能力ならびに広範なpHにわたる物理的および化学的両方の安定性を含む。水溶性または水混和性クリーム基剤は、保存剤系を含有してもよく、また、許容される生理的pHを維持するように緩衝化され得る。
【0058】
[0062]本明細書で使用される場合、「デジタル機構」は、非透過性膜が使用者によって要求に応じて破壊され得る手段であって、使用者が送達デバイス(100)のボタンを押し、それにより、送達デバイス(100)内のチャンバーA(101)およびチャンバーB(102)の混合を可能にし得る手段を指し得る。
【0059】
[0063]「眼乾燥」または「眼乾燥症候群」という用語は、眼科症候群または眼球表面状
態を指し得る。眼乾燥または眼乾燥症候群は、乾性角結膜炎(KCS)、涙液機能不全症候群、涙液性角結膜炎(lacrimal keratoconjunctivitis)、蒸発亢進型涙液欠乏症(evaporative tear deficiency)、水性涙液欠乏症(aqueous tear deficiency)、およびLASIK誘発性神経栄養性上皮症(LASIK-induced neurotrophic epitheliopathy)(LNE)を含む。眼乾燥および涙液層不安定性は、眼球表面に損傷を与え得る。これは、涙液層の浸透圧の増加および眼球表面の炎症を伴う。涙液浸透圧の増加は、眼球表面炎症を引き起こし、眼乾燥の中心的な発病機構であると思われる。
【0060】
[0064]眼乾燥症候群は、大きな増えつつある問題であり、非常に一般的で、一般の眼科または検眼診療所における患者のうち推定25%が眼乾燥の症状を報告している。これは、不安定な涙液層および急速な涙液層破壊時間を生じさせる複数の原因を有する。眼乾燥症候群の発生率は、年齢とともに増加し、男性に対して女性の有病率が高いことが公知である。現在、眼乾燥症候群に対する治療法は存在しない。一般的な処置は、症状を管理することを標的とする。従来の療法の中心は、眼球表面の水分を増加させ、追加の潤滑を実現する人工涙液の適用である。多様な人工涙液製剤は、その電解質組成、浸透圧、粘度、保存剤の有無、および適合溶質が互いに異なる。しかしながら、汚染を防止するための保存剤を含有する人工涙液の頻繁な適用は、特に過敏な眼を有する患者において、毒性およびアレルギー反応の両方を含むことが見出されている。眼乾燥症候群に対する追加療法もまた不十分である。これらの療法は、免疫モジュレーター(例えば、Restasis(登録商標)、Xiidra(登録商標))およびコルチコステロイドを含む。これらは、疾患の原因よりも、症状に対処するのみである傾向があり、特にコルチコステロイドは、白内障および緑内障を引き起こすリスクを有する。
【0061】
[0065]本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療上有効な量」は、所望の生物学的効果、例えば臨床結果を含む有益な結果に影響を及ぼすのに十分な量である。したがって、「有効量」は、それが適用される文脈に左右される。有効量は、当技術分野で公知の因子、例えば処置される個体の疾患状態、年齢、性別、および体重に応じて変動し得る。数回の分割用量が毎日投与されてもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように用量が比例的に低減されてもよい。加えて、本開示の組成物/製剤は、治療量を達成するのに必要な頻度で投与され得る。
【0062】
[0066]本明細書で使用される場合、「電気化学的機構」は、非透過性膜が使用者によって要求に応じて破壊され得る手段であって、使用者が送達デバイス(100)に電気機械的信号(すなわち、電圧または電流信号)を導入し、それにより、送達デバイス(100)内のチャンバーA(101)およびチャンバーB(102)の混合を可能にする手段を指し得る。
【0063】
[0067]本明細書で使用される「エマルション」は、ある液体の微小液滴の、それが溶解性または混和性でない別の液体中の微細分散体を含み得る。あるいは、「エマルション」は、普通は非混和性である(混合できないまたはブレンドできない(unbendable))2種以上の液体の混合物を指し得る。エマルションは、コロイドと呼ばれる物質の二相系のより一般的なクラスの一部である。
【0064】
[0068]「凍結乾燥された」または「冷凍乾燥された」という用語は、腐敗しやすい材料を保存するためまたは材料を輸送により好都合とするために典型的に使用される脱水プロセスを指す。凍結乾燥は、材料を凍結させ、次いで周囲圧力を低減して、材料中の凍結水を固相から気相に直接昇華させることによって作用する。凍結乾燥物質が水分の再吸収を防止するために密封された場合、物質は、冷蔵することなく室温で貯蔵され、腐敗に対し
て長年にわたり保護され得る。大幅に低減された含水量は、普通は物質を腐敗させるまたは分解する微生物および酵素の作用を阻害することから、保存が可能である。凍結乾燥はまた、より高い温度を使用する他の脱水方法よりも物質に与える損傷が少ない。凍結乾燥は、通常、乾燥される材料の収縮または硬質化を引き起こさない。凍結乾燥生成物は、プロセスが微視的細孔を残すことから、はるかに速くかつ簡単に再水和(再構成)され得る。細孔は、昇華してその場所に隙間または細孔を残す氷晶によって生じる。これは、薬学的使用に関して特に重要である。材料から水を除去し、材料をバイアルに密封することによって、材料は、簡単に貯蔵され、出荷され、後に注射のためにその元の形態に再構成され得る。凍結乾燥はまた、一部の医薬品の有効期間を長年にわたり増加させるために使用され得る。
【0065】
[0069]本明細書で使用される場合、「ガンマ線照射」は、病原体低減の手段を指す。ガンマ線は、X線よりも高いエネルギーを有する電磁放射線の一形態である。ガンマ線の主要な産業的供給源は、放射性壊変中にガンマ線を放射するコバルト60などの放射性核種元素である。ガンマ線は、プラスチックを容易に通過し、細菌DNAの共有結合を破壊することによって細菌を殺滅する。これらは、キログレイ(kGy)と呼ばれる単位で測定される。例えば、10から50kGyの間のガンマ線照射が、血清または血漿に対して、4℃で、凍結乾燥される前および/または後に実施され得る。これは、事前に根絶されていない可能性があるウイルスを含む潜在的病原体を不活化する。ガンマ線照射に対する血漿タンパク質の保護剤としておよびpHバランスのために、添加剤(すなわち、アスコルビン酸またはグリシン)が添加され得る。一部の例では、ガンマ線照射は、血清または血漿に対して、凍結乾燥される前に実施され得る。ガンマ線照射された液体血清または血漿は、後の病原体低減および/または凍結乾燥のためにマイナス70℃で貯蔵および凍結され得る。他の例では、ガンマ線照射は、血清または血漿に対して、凍結乾燥された後に実施され得る。ガンマ線照射された凍結乾燥血清または血漿は、後の病原体低減のためにマイナス70℃で貯蔵および凍結され得る。
【0066】
[0070]本明細書で使用される「ゲル剤」という用語は、容易に流動可能な液体でなく、かつ固体でない、すなわち、半固体の材料を指し得る。ゲル剤は、天然に存在するまたは合成の材料から形成され得る。ゲル剤は、無秩序からわずかに秩序化されており、いくらかの複屈折、液晶性を示し得る。ゲル剤は、ゼラチン、トラガカント、またはセルロース誘導体を含むがこれらに限定されない好適なゲル化剤を使用して製造されることが可能であり、保水剤、皮膚軟化剤、および保存剤としてのグリセロールを含み得る。ゲル剤は、局所的にまたは、例えば、振盪した後に、ヒドロゲルの形態で点眼剤として投与される。
【0067】
[0071]本明細書で使用される場合、「間欠投与」は、ある期間の組成物の投与(これは、「第1の投与期間」と考えられ得る)、続いて組成物が摂取されないまたはより低い維持用量で摂取される期間(これは、「休止期間」と考えられ得る)、続いて組成物が再度投与される期間(これは、「第2の投与期間」と考えられ得る)を含む。一般に、第2の投与段階中に、組成物の投薬量レベルは、第1の投与期間中に投与されたものと一致するが、医学上必要な場合は増加または減少され得る。
【0068】
[0072]本開示による「ゼリー剤」は、液体が浸透した小型の無機粒子または大型の有機分子のいずれかで構成される懸濁液からなる半固体系であるゲル剤の一クラスであり、その構造的凝集マトリックスは、高割合の液体、通常は水を含有する。
【0069】
[0073]本明細書で使用される「液剤」は、その液体状態の組成物からなる剤形である。液剤は、注ぐことが可能であり、室温で流動し、その容器の形に従う。液剤は、ニュートンまたは擬塑性流動挙動を示す。複数の実施形態では、本明細書で使用される「半液剤」は、液剤および別の製剤(すなわち、懸濁剤、乳剤、溶液剤、クリーム剤、ゲル剤、ゼリ
ー剤など)の両方の特性を有し得る。
【0070】
[0074]本明細書で使用される「直鎖状バイオポリマー」という用語は、繰り返しモノマーサブユニットの直鎖状につながれた生物によって産生されるポリマー(例えば、バイオポリマー)を指し得る。
【0071】
[0075]本明細書で使用される「潤滑」または「滑沢剤」は、2つの表面(すなわち、非角化表面)間の摩擦を低減することを指し得る。滑沢剤は、成分が互いに接着するのを防止する。一般的な鉱物、例えばタルクまたはシリカ、および脂肪、例えば、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸は、錠剤または硬ゼラチンカプセル剤において最も頻繁に使用される滑沢剤である。滑沢剤は、ある特定の処理の特徴を改良するために錠剤およびカプセル製剤に少分量で添加される薬剤である。滑沢剤の他の役割は、付着防止剤の役割および流動化剤の役割(すなわち、製品の流動を増大させる)を含む。滑沢剤は、親水性および疎水性の両方であり得る。一般に、最も広く使用される滑沢剤は、疎水性である。疎水性滑沢剤は、一般に良好な滑沢剤であり、通常、比較的低い濃度で有効である。多くのものはまた、付着防止剤および流動化剤の両方の特性を有する。これらの理由から、疎水性滑沢剤は、親水性化合物よりもはるかに頻繁に使用される。例は、ステアリン酸マグネシウムを含む。
【0072】
[0076]本明細書で使用される「保湿」という用語は、表面の水結合能が増加するように、非角化表面の水和を改良することを指す。「保湿する」という用語またはその派生語は、対象の非角化表面の含水量の変更または増大に関する。「保水剤」という用語は、その通常の意義において本明細書で使用され、吸湿性であり、水蒸気を自発的に吸収することが可能な水溶性の生理学的に許容される物質を指す。「吸蔵」は、不透水性脂肪物質の層による非角化表面への水の捕捉を示すために本明細書で使用される用語である。例示的な膣保湿薬は、Replens(登録商標)、K-Y Liquibeads(登録商標)、Lubrin(登録商標)、Astroglide Silken Secret(登録商標)およびビタミンEゲルを含むがこれらに限定されない。口腔保湿薬(moisturizes)(すなわち、口内乾燥用)の例は、人工唾液製品、唾液刺激剤、Salese Soothing(登録商標)、Orajel(登録商標)、およびEucerin(登録商標)クリームを含み得るがこれらに限定されない。糖尿病性潰瘍および/または慢性創傷用の例示的な保湿薬は、湿潤環境を提供する任意の食塩水もしくは類似のドレッシング、TriDerma(登録商標)MD Ulcer Healing Cream、またはNeoteric Diabetic Healing Cream(登録商標)を含み得る。
【0073】
[0077]本明細書で使用される「非自己」という用語は、レシピエント(すなわち、組織または細胞による処置を必要とする対象)を起源としない組織または細胞(血漿または血清を含む)を示すこと、それに関係すること、またはそれを伴うことを指し得る。それに対し、本明細書で使用される「自己」は、その普通の意味において、同じ個体から得られた細胞、組織(血漿または血清を含む)、すなわち、レシピエント自身の血漿または血清であり、別の個体を起源とする血漿または血清を含まない(すなわち、臍帯血漿または血清は、非自己として含まれ得る)。自己血漿または血清は、通常、レシピエントによって事前に貯血されていない限り、血液バンクまたは中央保管機関から容易に入手可能でない。「同種異系」または「同種」という用語は、その普通の意味、すなわち、同じ種の個体由来であるが、遺伝的に類似しておらず、したがって、免疫学的に不適合である組織または細胞(血漿または血清を含む)を示すこと、それに関係すること、またはそれを伴うことによって本明細書で使用される。したがって、同種異系血漿または血清は、「非自己」血漿または血清という用語に包含される。一部の例では、非自己血漿または血清は、血液バンクから購入され得る。
【0074】
[0078]本明細書で使用される場合、「眼球表面障害」「眼科疾患」、「眼科障害」などは、眼乾燥、上皮欠損、上輪部角結膜炎、乾性角結膜炎、神経栄養性角膜症、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼部瘢痕性類天疱瘡、薬剤性、移植片対宿主病、ならびに角膜の潰瘍形成およびびらんを含むがこれらに限定されない。
【0075】
[0079]「非透過性膜」という用語は、2つの環境(すなわち、それぞれ凍結乾燥された非自己血漿または血清および再構成流体を含む眼科用治療剤送達デバイス(100)のチャンバーA(101)およびチャンバーB(102))を分離する障壁を表し、それにより、いかなるものも2つの環境の間を通過しない。本明細書に記載された非透過性膜は、使用者によって、例えば、デジタル機構、電気機械的機構、またはかき混ぜるかもしくはねじることによって破壊され得る。
【0076】
[0080]本明細書で使用される「眼球表面」は、角膜および結膜を含む。眼球表面は、薄い流体の層または涙液層によって覆われている。涙液層は、眼の屈折力の大部分(おおよそ3分の2)および明瞭な視覚に関与するだけでなく、眼の表面の細胞への栄養供給および感染の防止にも関与する。これは、外来病原体に対する防御の最前線であり、治癒を補助する。眼の表面上皮は、身体の他の外表面と類似しており、その上皮細胞を脱落させることによって定期的に新しくなることから、涙液は、このプロセスの健康において極めて重要な役割を果たす。眼の表面は、多くの種類の疾患に罹患し得る。眼の表面の最も一般的な疾患の1つは、眼乾燥症候群である。
【0077】
[0081]本明細書で使用される「眼球表面状態」は、眼の表面(例えば、結膜および角膜)の任意の状態を含み得る。状態は、眼乾燥、上皮欠損、上輪部角結膜炎、乾性角結膜炎、神経栄養性角膜症、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼部瘢痕性類天疱瘡、薬剤性および移植片対宿主病を含み得るがこれらに限定されない。
【0078】
[0082]「眼球表面手術」は、全層角膜移植および屈折矯正手術であるレーザー支援角膜内切削形成術(LASIK)、レーザー角膜上皮曲率形成術(laser epithelial keratomileusis)(LASEK)、またはレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)を含み得る。
【0079】
[0083]本明細書で使用される場合、「眼科用組成物」という用語は、眼またはその関連もしくは周囲組織、例えば、眼瞼または角膜などへの適用が意図された組成物を指す。この用語はまた、眼自体または眼の周囲組織の状態を治療的に処置することが意図された組成物を含む。眼科用組成物は、局所的にまたは当業者に公知の他の技法、例えば眼への注射によって適用され得る。眼への好適な局所投与の例は、点眼剤およびスプレー製剤による投与を含む。さらなる好適な局所投与経路は、結膜下注射によるものである。組成物はまた、眼周囲または後眼窩に、眼へと提供され得る。
【0080】
[0084]本明細書で使用される場合、「眼科用治療剤送達デバイス」は、本明細書に記載された組成物の要素(例えば、凍結乾燥された非自己血漿または血清ポリマーと、再構成流体と)を組み込み得る。
【0081】
[0085]本明細書で使用される場合、「軟膏剤」という用語は、疾患、症候群、または状態(すなわち、眼乾燥症候群)の治療的処置に使用され得る高粘性の液体または半液体製剤を指し得る。
【0082】
[0086]「患者」、「対象」、「それを必要とする患者」、および「それを必要とする対象」は、本明細書で互換的に使用され、本明細書で提供される方法および組成物を使用す
る投与によって処置され得る疾患または状態に罹患しているかまたはかかりやすい生物を指す。非限定的な例は、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、雌ウシ、シカ、および他の非哺乳動物を含む。一部の実施形態では、患者は、ヒトである。
【0083】
[0087]本明細書で使用される「ペッサリー(Pessaries)」または「ペッサリー(pessary)」は、膣への挿入に好適な形状の固体単位用量形態を指し得、体温で溶融する基剤または粘液分泌物と接触したときに溶解する基剤のいずれかから構成され得る。好適な基剤の例は、カカオ油、合成脂肪基剤(例えば、Witepsol(登録商標))、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、およびグリセロール坐剤ベースを含むがこれらに限定されない。
【0084】
[0088]本明細書で使用される「血漿」は、普通は全血中の血液細胞を浮遊状態で保有する血液の淡いわら色の液体構成成分である血液中の流体物質を指し得、これにより、血漿は、血液細胞の細胞外マトリックスとなる。これは、ほとんどが水からなり(95体積%まで)、溶解されたタンパク質(例えば、血清アルブミン、グロブリン、およびフィブリノゲンを含む)、グルコース、凝固因子、電解質(例えば、Na+、Ca2
+、Mg2
+、HCO3
-、Cl-)、ホルモン、ならびに二酸化炭素を含有する(血漿は、排泄物輸送のための主な媒体である)。血漿はまた、人体のタンパク質貯留物として機能する。これは、電解質をバランスの取れた形態に保持する血管内浸透圧効果において極めて重要な役割を果たし、身体を感染および他の血液障害から保護する。一実施形態では、「血漿」は、天然ヒト血漿の構成成分を含む操作された組成物である。
【0085】
[0089]本明細書で言及される「ポリマー」という用語は、モノマーと呼ばれる多くの繰り返しサブユニットから構成される高分子との意味である。ポリマーという単語は、不特定の数のモノマー単位を表す。モノマーの数が非常に大きい場合、化合物は、ハイポリマーと呼ばれることがある。ポリマーは、同じ化学組成または分子量および構造を有するモノマーに制限されない。一部の天然ポリマーは、1種類のモノマーから構成される。しかしながら、ほとんどの天然および合成ポリマーは、2つ以上の異なるタイプのモノマーで構成される。そのようなポリマーは、コポリマーとして知られる。ポリマーは、直鎖状または分枝状であり得る。例えば、骨格鎖に沿ったエステル基の繰り返しを特徴とする直鎖状ポリマーは、ポリエステルと呼ばれる。
【0086】
[0090]例示的な天然ポリマー材料は、セラック、コハク、ウール、シルク、ゴム、およびセルロースを含む。非天然(例えば、合成)ポリマーは、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ネオプレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシリコーンを含む。
【0087】
[0091]使用され得る追加の合成ポリマーは、生分解性ポリマー、例えばポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリカルボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレートおよび分解性ポリウレタン、ならびに非浸食性ポリマー、例えばポリアクリレート、エチレン-酢酸ビニルポリマーおよび他のアシル置換セルロースアセテートおよびその誘導体、非浸食性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(polyolifins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、teflon(登録商標)、およびナイロンを含む。非吸収性ポリビニルアルコールスポンジは、Unipoint Industriesから、Ivalon(商標)として市販されている。
【0088】
[0092]「ポリカチオン」または「カチオン性」という用語は、プロトン化され、それにより、全体としての正電荷を有し得る本明細書に記載された化合物または分子(例えば、キトサンおよびキトサン誘導体などのポリマー)を指す。プロトン化は、例えば、化合物または分子(例えば、キトサンおよびキトサン誘導体などのポリマー)のアミノ基におけるものであってもよく、次いでその後、例えば、脂質、タンパク質、DNAおよび他の負電荷を有する合成ポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸))を含む、多種多様な天然または合成アニオン種とイオン性錯体を形成し得る。例えば、キトサンは、正電荷のみを有する天然に存在する多糖である。
【0089】
[0093]多糖は、グリコシド結合により互いに接合された繰り返し単位から形成されるポリマー炭水化物構造体である。その構造は、多くの場合直鎖状であるが、様々な程度の分枝を含有し得る。自然界において、多糖は、藻類起源、植物起源、微生物起源および動物起源の様々な供給源を有する。多糖は、Cx(H2O)yの一般式を有し、式中、xは、通常、200から2500の間の大きな数である。ポリマー骨格中の繰り返し単位が、多くの場合6炭素の単糖であることを考慮して、一般式はまた、(C6H10O5)nと表され、式中、40≦n≦3000であり得る。
【0090】
[0094]単糖の例は、グルコース、フルクトース、およびグリセルアルデヒドである。天然に存在する多糖の例は、セルロース、デキストリン、ペクチン、アルギン酸、寒天、アガロース、およびカラギーナンである。天然に存在する多糖は、通常、酸性の性質である。
【0091】
[0095]複数の実施形態では、多糖は、10個超の単糖単位を含有し得る。多糖は、生物学的ポリマーの重要なクラスである。生物におけるその機能は、通常、構造または貯蔵のいずれかに関係する。セルロースおよびキチンは、構造多糖の例である。セルロースは、植物および他の生物の細胞壁において使用され、地球上で最も豊富な有機分子であると言われる。キチンは、セルロースと類似の構造を有するが、その強度を増加させる窒素含有側枝を有する。これは、節足動物の外骨格および一部の真菌の細胞壁に見られる。これはまた、手術用糸を含む複数の使用を有する。多糖はまた、カロースまたはラミナリン、クリソラミナリン、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダンおよびガラクトマンナンを含む。
【0092】
[0096]「防止する(prevent)」、「防止する(preventing)」、または「防止」、「予防的処置」などという用語は、障害または状態を有さないが、発症するリスクがあるかまたは発症しやすい対象において、障害または状態を発症する確率を低減することを指す。防止は、処置なしで起こる可能性があるよりも少ない症状が観察されるように、完全(すなわち、検出可能な症状がない)または部分的であり得る。これらの用語は、予防的利益をさらに含む。疾患または状態を防止するためには、組成物は、特定の疾患を発症するリスクがある患者に、または疾患の生理的症状の1つもしくは複数を報告する患者に、この疾患の診断がなされていない可能性があっても、投与され得る。
【0093】
[0097]「ソラレン」または「ソラーレン」は、フロクマリンとして知られる天然産物のファミリーにおける親化合物である。これは、縮合フラン環の付加によってクマリンに構造的に関係し、ウンベリフェロンの誘導体と考えられ得る。これは、乾癬、湿疹、白斑、および皮膚T細胞リンパ腫に対するPUVA(ソラレン+UVA)処置において広く使用される。ソラレンは、多くの場合、血液製品における病原体の不活化に使用される。合成アミノ-ソラレンであるアモトサレンHClは、患者の輸血補助用に調製された血小板および血漿血液構成成分中の感染性病原体(細菌、ウイルス、原虫)の不活化のために開発された。光活性溶媒または洗浄剤を血清または血漿に混合し、紫外線に曝露する。例えば、アモトサレンHClを用いる場合、混合物を3J/cm2のUVA処理により照らした
ときに光活性化が起こる。これは、理論上存在し得るウイルス、細菌、および寄生虫の輸血に関連する伝播のリスクを低減する。
【0094】
[0098]範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書で表示され得る。そのような範囲が表示される場合、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行語の使用によって値が近似値として表示されている場合、特定の値は別の態様を形成することが理解される。範囲の各々の端点は、他方の端点に関係して、および他方の端点から独立しての両方で有意であることがさらに理解される。本明細書に開示されたいくつかの値が存在し、各値はまた、その値自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されていることも理解される。本出願の全体において、データはいくつかの異なる形式で提供され、このデータは、端点および始点ならびにデータ点の任意の組合せについての範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されている場合、10および15を超える、それ以上、それ未満、それ以下、およびそれに等しいならびに10から15の間が開示されていると考えられることが理解される。2つの特定の単位間の各単位もまた開示されていることも理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示されている。
【0095】
[0099]本明細書で提供される範囲は、範囲内の値のすべての省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ならびに上述の整数の間のすべての介在する小数値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9などからなる群からの任意の数、数の組合せ、または部分範囲を含むと理解される。部分範囲に関して、範囲のいずれかの端点から広がる「入れ子状部分範囲」が具体的に企図される。例えば、1から50の例示的範囲の入れ子状部分範囲は、一方向では1から10、1から20、1から30、および1から40、または他方向では50から40、50から30、50から20、および50から10を含み得る。
【0096】
[00100]本明細書で言及される「再構成」は、その普通の意義において、脱水または濃
縮された組成物を液体の添加によって液体状態に戻すことを意味する。
[00101]本明細書で使用される場合、「再構成流体」は、本開示の凍結乾燥組成物を再
構成するために使用される本明細書に記載された任意の溶媒を指し得る。例示的な実施形態では、水または食塩水溶液(例えば、注射用0.9w/v%塩化ナトリウム)が使用されてもよく、任意の添加剤が再構成流体に含まれてもよく(すなわち、グリシンもしくはアスコルビン酸、またはキトサン、アルギネート、およびゼラチン)、血清もまた、再構成流体として使用され得る。複数の実施形態では、再構成流体に使用される溶媒は、滅菌されていてもよい。
【0097】
[00102]再構成された凍結乾燥組成物は、溶液剤、懸濁剤、半液剤、乳剤、軟膏剤、ク
リーム剤、または半固体ゲル剤として再構成され得る。
[00103]本明細書で使用される場合、「塩」または「塩形態」または「薬学的に許容さ
れる塩」は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノ-エタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来する塩基付加塩(遊離カルボキシルまたは他のアニオン性基により形成される)を含み得る。そのような塩は、任意の遊離カチオン性基による酸付加塩として形成され、一般に、例えば、塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンス
ルホン酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸により形成される。本開示の塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などによるアミノ基のプロトン化によって形成されるアミン塩を含み得る。本開示の塩はまた、好適な有機酸、例えばp-トルエンスルホン酸、酢酸などによるアミノ基のプロトン化によって形成されるアミン塩を含む。本開示の実施における使用が企図される追加の賦形剤は、当業者が利用可能なもの、例えば、米国薬局方第XXII版および国民医薬品集第XVII版、U.S.Pharmacopoeia Convention,Inc.、Rockville、Md.(1989)に見られるものであり、その関連する内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
[00104]本開示による「半固体ゲル剤」は、半固体である。半固体製剤の見かけ粘度は
、濃度とともに増加し得る。
[00105]本明細書で使用される場合、「逐次投与」は、2種の薬剤(例えば、本明細書
に記載された組成物)の投与が、同日に別個に行われるかまたは同日に行われない(例えば、連続した日に行われる)ことを含む。
【0099】
[00106]本明細書で使用される「血清」という用語は、血液細胞でなく(血清は、白血
球または赤血球を含有しない)、凝固因子でもない構成成分である。血清は、血液が凝結したときに分離するタンパク質に富む液体であり、すなわち、血清は、血液血漿からフィブリノゲン、凝固因子等が除去された構成成分を指す。血清は、血液凝固において使用されないすべてのタンパク質およびすべての電解質、抗体、抗原、ホルモン、ならびに任意の外因性物質(例えば、薬物および微生物)を含む。血液は、細胞構成成分を除去するために遠心分離される。抗凝結血液は、フィブリノゲンおよび凝固因子を含有する血漿を生じさせる。凝結血液は、一部の凝固因子が残存するが、フィブリノゲンを含まない血清を生じさせる。複数の実施形態では、「血清」は、天然ヒト血清の構成成分を含む操作された組成物である。
【0100】
[00107]本開示による「溶液剤」は、溶媒または相互に混和性の溶媒の混合物に溶解さ
れた1種または複数の化学物質を含有する澄明で均質な液体剤形である。溶液剤は、好適な溶媒または相互に混和性の溶媒の混合物中に1種または複数の溶解された化学物質を含有する液体調製物である。溶液剤中の原薬の分子は均一に分散されていることから、剤形としての溶液剤の使用は、一般に、投与時の均一な投薬量および溶液剤が希釈されるかまたは他の形で混合されるときの良好な正確性を保証する。
【0101】
[00108]本明細書で使用される「溶媒」という用語は、水性または非水性のいずれかの
液体溶媒を指す。溶媒の選択は、とりわけ、前記溶媒に対する組成物の溶解性および投与方式に左右される。水性溶媒は、水のみからなることができ、または水に加えて1種または複数の混和性溶媒からなることができ、溶解された溶質、例えば糖、バッファー、塩または他の賦形剤を含有し得る。より一般的に使用される非水性溶媒は、短鎖有機アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、短鎖ケトン、例えばアセトン、およびポリアルコール、例えばグリセロールである。本明細書で使用される場合、血清は、本明細書に記載された凍結乾燥組成物の再構成用溶媒として使用され得る。
【0102】
[00109]本明細書で使用される「懸濁剤」は、液体ビヒクル中に分散された固体粒子を
含有する液体剤形である。
[00110]本明細書で使用される場合、「症候群」という用語は、一貫して一緒に起こる
一群の症状または一連の関連症状を特徴とする状態を指し得る。症候群(例えば、眼乾燥症候群)は、互いに相関し、多くの場合、具体的な疾患と相関する一連の医学的徴候および症状であり得る。他方で、疾患は、その背景に明らかに定義された理由を有する健康状態であり得る。しかしながら、症候群(「一緒に走る」を意味するギリシャ語の単語に由
来する)は、特定可能な原因のないいくつかの症状を生じ得る。これらは、基礎疾患の可能性またはさらに疾患を発症する危険性を示唆し得る。
【0103】
[00111]本明細書で使用される「涙液破壊時間」もしくは「TBUT」または「涙液層
破壊時間」もしくは「TFBUT」は、個体の最後の完全瞬目から涙液層の破壊までの間隔を測定する臨床試験を指し得る。この試験は、眼乾燥症候群について評価するために使用され得る。TBUTを測定するためには、フルオレセインが患者の涙液層に注入され、患者は、幅広いビームのコバルトブルー照明下で涙液層が観察される間、瞬目をしないように求められる。TBUTは、最後の瞬目から涙液層における最初のドライスポットの出現までの間に経過する秒数として記録される。
【0104】
[00112]本明細書で使用される「処置する(treat)」、「処置する(treat
ing)」または「処置」という用語、および他の文法的等価物は、疾患、状態もしくは症状を軽減、減退、改善、もしくは防止すること、追加の症状を防止すること、症状の基礎となる代謝的原因を改善もしくは防止すること、疾患もしくは状態を阻害すること、例えば、疾患もしくは状態の発症を阻止すること、疾患もしくは状態を緩和すること、疾患もしくは状態の退行を引き起こすこと、疾患もしくは状態によって引き起こされる状態を緩和すること、または疾患もしくは状態の症状を停止させることを含み、予防を含むことが意図される。これらの用語は、治療的利益および/または予防的利益を達成することをさらに含む。治療的利益とは、処置される基礎障害の根絶または改善を意味する。また、治療的利益は、患者が依然として基礎障害を患っている可能性があるにもかかわらず、患者において改良が観察されるような、基礎障害に関連する生理的症状の1つまたは複数の根絶または改善により達成される。
【0105】
[00113]本明細書で使用される「臍帯血(umbilical cord blood
)」または「臍帯血(cord blood)」という用語は、一般に、出産の後に胎盤および臍帯から得られた血液を指す。この血液は、新産児を起源とし、新生児によってもはや必要とされず、一般的に廃棄されるものであり、例えば、臍帯血は、新生児の臍帯または胎盤から得られる血液を指し得る。臍帯血または胎盤血の使用は、比較的簡単かつドナーの外傷を伴わずに得られ得る。臍帯血は、好ましくは、廃棄される胎盤の臍静脈からの直接流出によって得られる。例えば、臍帯血は、経膣または帝王切開による分娩により母体から得られ得る。
【0106】
[00114]「臍帯血血清」または「臍帯血清」という用語は、一般に、細胞が除去されて
いる臍帯血を指し、その結果、臍帯血清は、全細胞を実質的に含まない。臍帯血血清は、高濃度の涙液構成成分、成長因子、神経栄養因子、ビタミンA、フィブロネクチン、プレアルブミン、および油を含有する。臍帯血清は、上皮再生のための基本的栄養素を提供することができ、眼球表面上皮の増殖、遊走、および分化を容易にし得る。
【0107】
[00115]本明細書で使用される「膣リング」という用語は、膣に挿入される薄いおよび
/または可撓性のリングを指し得る。一部の例では、活性薬剤(例えば、本明細書に記載された再構成された凍結乾燥組成物)は、制御放出性/持続放出性であり得る。
【0108】
[0109]本明細書で使用される「バイアル」または「容器」という用語は、冷凍乾燥形態の血漿または血清組成物を保持するのに好適なリザーバーを広範に指す。同様に、これは、再構成用溶媒を保持する。本開示において使用され得るバイアルの例は、シリンジ、アンプル、カートリッジ、または患者に血漿もしくは血清組成物を送達するのに好適な他のリザーバーを含む。あるいは、血漿または血清組成物を保持するバイアル、再構成用溶媒を保持するバイアルは、デュアルチャンバー系の2つの区画(例えば、シリンジまたはカートリッジ)として提供され得る。眼科投与用の製品の包装に好適なバイアルは、当技術
分野で周知であり、認識されている。
【0109】
[0110]本明細書で使用される場合、「粘度」は、流体の流動抵抗性を指す。
[0111]「重量パーセント」または「%(w/w)」という用語は、構成成分および溶媒について重量を基準にして計算される溶液中の構成成分の百分率を指す。例えば、ある構成成分の1%(w/w)溶液は、溶媒100gに溶解された構成成分1gを有する。「体積パーセント」または「%(v/v)」という用語は、構成成分および溶媒について体積を基準にして計算される溶液中の構成成分の百分率を指す。例えば、ある構成成分の1%(v/v)溶液は、溶媒100mlに溶解された構成成分1mlを有する。「重量/体積パーセント」または「%(w/v)」という用語は、構成成分については重量を基準にし、溶媒については体積を基準にして計算される溶液中の構成成分の百分率を指す。例えば、ある構成成分の1.0%(w/v)溶液は、溶媒100mlに溶解された構成成分1gを有する。
【0110】
組成物
[0112]一態様では、本開示は、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む凍結乾燥組成物を含む。複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。
【0111】
[0113]複数の実施形態では、本開示は、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための、非自己血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む凍結乾燥組成物を含む。
【0112】
[0114]複数の実施形態では、血清または血漿は、ポリマーとともに凍結乾燥されて、凍結乾燥組成物を形成する。代替的な実施形態では、血清または血漿は、ポリマーと別個に凍結乾燥されてもよく、ポリマーもまた、凍結乾燥されてもされなくてもよい。
【0113】
[0115]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDa、好ましくは100から400kDaの分子量を有する多糖、または100、250、もしくは400kDaの分子量を有する多糖とを含む凍結乾燥組成物であって、多糖が、キトサン、または疎水性修飾キトサンである、凍結乾燥組成物を提供する。複数の実施形態では、組成物は、好ましくは、非自己血清を含む。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、生分解性および生体適合性である。複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、凝集性固体材料、例えばウエハーまたはシートの形態である。複数の実施形態では、凝集性固体材料の形態の凍結乾燥組成物は、十分量の水性液体(例えば、再構成流体)とさらに組み合わされる。複数の実施形態では、再構成流体は、本明細書に記載された任意の溶媒である。例示的な実施形態では、水または食塩水溶液が再構成流体として使用されてもよく、任意の添加剤が含まれてもよく(例えば、グリシンまたはアスコルビン酸)、追加の実施形態では、液体血清もまた、凝集性スポンジ様固体材料を形成するための再構成流体として使用され得る。液体血清または血漿が使用される実施形態では、血清または血漿は、許容される担体、例えば水または水性バッファー、例えば、食塩水で任意選択で希釈され得る。別の実施形態では、凍結乾燥組成物は、非角化上皮表面、例えば眼、口、もしくは膣の表面、または外部創傷の表面への適用のための好適な剤形に製剤化され得る粉末の形態である。そのような粉末組成物は、例えば、液剤、ゲル剤、または軟膏剤として製剤化され得る。
【0114】
[0116]一態様では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの
分子量および式1:[[R1]m-L-[R2]n]pを含む式を有するポリマー、またはその誘導体(式中、R1およびR2は、ポリマー単位であり、mは、1~10,000の整数であり、nは、1~10,000の整数であり、pは、10~10,000の整数であり、Lは、結合である)とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。一部の実施形態では、式Iの「m」および「n」は、1である。
【0115】
[0117]複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、臍帯血漿または血清を含む。複数の実施形態では、組成物中のポリマーは、角膜、結膜、および強膜の1つまたは複数の層へのポリマーの不透過性に起因して、組成物が眼への投与時に眼球表面に保持されるように、高分子量(例えば、100から1200kDA)ポリマーである。複数の実施形態では、組成物に含まれるポリマーは、キトサンである。ポリマーは、眼乾燥症候群を有する対象の眼への投与時に、組成物が眼球表面に約4時間から約24時間保持されるように、組成物の眼球表面保持性を増加させる。
【0116】
[0118]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、キトサンまたはその誘導体とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。複数の実施形態では、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)臍帯血漿と、キトサンまたはその誘導体とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。複数の実施形態では、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)臍帯血清と、キトサンまたはその誘導体とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。一部の実施形態では、非自己血漿または血清は、それぞれ同種異系または同種の血漿または血清を含む。
【0117】
[0119]本開示の組成物において使用される血液血漿または血清は、ヒト、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、イヌおよび畜牛、霊長類、ならびに齧歯類を含むすべての種の哺乳動物の血液から単離された血漿または血清を含み得る。本開示の一実施形態では、組成物において使用される血液血漿または血清は、血液バンクから購入され得る。一部の実施形態では、本開示の非自己血漿または血清は、臍帯血漿または血清に由来し得る。
【0118】
[0120]複数の実施形態では、組成物は、組成物の約0.001重量パーセントから約90重量パーセント、組成物の約0.001重量パーセントから約1重量パーセント、約0.001重量パーセントから約10重量パーセント、約0.001重量パーセントから約20重量パーセント、約0.001重量パーセントから約30重量パーセント、約0.001重量パーセントから約40重量パーセント、約0.001重量パーセントから約50重量パーセント、約0.001重量パーセントから約60重量パーセント、約0.001重量パーセントから約70重量パーセント、約0.001重量パーセントから約80重量パーセント、約0.01重量パーセントから約90重量パーセント、約0.01重量パーセントから約1重量パーセント、約0.01重量パーセントから約10重量パーセント、約0.01重量パーセントから約20重量パーセント、約0.01重量パーセントから約30重量パーセント、約0.01重量パーセントから約40重量パーセント、約0.01重量パーセントから約50重量パーセント、約0.01重量パーセントから約60重量パーセント、約0.01重量パーセントから約70重量パーセント、約0.01重量パーセントから約80重量パーセント、約0.1重量パーセントから約90重量パーセント、約0.1重量パーセントから約1重量パーセント、約0.1重量パーセントから約10重量
パーセント、約0.1重量パーセントから約20重量パーセント、約0.1重量パーセントから約30重量パーセント、約0.1重量パーセントから約40重量パーセント、約0.1重量パーセントから約50重量パーセント、約0.1重量パーセントから約60重量パーセント、約0.1重量パーセントから約70重量パーセント、約0.1重量パーセントから約80重量パーセント、および間にある任意の範囲の血漿または血清(例えば、ヒト臍帯血漿または血清)を含む。
【0119】
[0121]複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、約10~90wt%の血漿もしくは血清(例えば、ヒト臍帯血漿もしくは血清)構成成分、または10~90wt%、20~90wt%、30~90wt%、40~90wt%、50~90wt%、60~90wt%の血漿もしくは血清構成成分を含有する。複数の実施形態では、組成物は、約40wt%、約50wt%、約60wt%、約70wt%、または約80wt%の血漿または血清構成成分を含有する。一実施形態では、凍結乾燥組成物は、約75wt%の血漿または血清構成成分を含有する。これらの実施形態に関連して、好ましくは、組成物の重量百分率の残りは、多糖、好ましくはキトサンまたは疎水性修飾キトサンで構成される。ある特定の実施形態では、組成物は、少量の追加の添加剤または賦形剤を、組成物の総乾燥重量を基準にして典型的には合計10wt%未満、好ましくは5wt%未満または2wt%未満の範囲でさらに含有し得る。
【0120】
[0122]複数の実施形態では、本開示の組成物は、1種または複数のポリマーを含む。例えば、組成物に含まれるポリマーは、低分子量ポリマー、中分子量ポリマー、または高分子量ポリマーを含む。低分子量ポリマーは、例えば、おおよそ100kDa以下(例えば、おおよそ10kDaからおおよそ100kDa)のポリマーを含み得る。中分子量(medium weight)ポリマーは、例えば、おおよそ250kDaまたは100から350kDaの間のポリマーを含み得るのに対し、高分子量ポリマーは、約400kDaまたは約400から1200kDaのポリマーを含み得る。複数の実施形態では、本開示の組成物は、超高分子量(ultra-high weight)ポリマーを含み、1000kDaを超えるポリマーを含み得る。複数の実施形態では、ポリマーの分子量は、約100kDaから約1200kDa、約100kDaから約200kDa、約100kDaから約300kDa、約100kDaから約400kDa、約100kDaから約500kDa、約100kDaから約600kDa、約100kDaから約700kDa、約100kDaから約800kDa、約100kDaから約900kDa、約100kDaから約1000kDa、約100kDaから約1100kDa、約100kDaから約1200kDaの範囲内、およびそれらの間の任意の分子量である。
【0121】
[0123]複数の実施形態では、ポリマーは、キトサンであり、100から400kDaの分子量、または100、250、もしくは400kDaの分子量を有する。
[0124]複数の実施形態では、ポリマーは、バイオポリマー、例えば、セルロース、デンプン、リグニン、キチン、および様々な多糖である。複数の実施形態では、ポリマーは、例えば、キトサンおよびその誘導体の骨格に沿ったいくつかの部位において正電荷を有するポリカチオン性ポリマーである。複数の実施形態では、ポリマーは、キトサン、アルギネート、ゼラチン、またはそれらの任意の組合せである。複数の実施形態では、ポリマーは、例えば、1種または複数の疎水性修飾多糖である。
【0122】
[0125]複数の実施形態では、ポリマー(例えば、キトサン、アルギネート、またはゼラチン)は、任意の好適な量で組成物に添加される。例えば、一部の実施形態では、ポリマーは、組成物の約0.025重量%から約2.0重量%の濃度である。ポリマーは、組成物の約0.025、約0.05、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約1.0、および約2.0重量パーセントまたはこれらの量の間にある任意の量で存在し得る。一実施形態では、ポリマーは、組成物の約0.05%(w/v)から約1.0%(
w/v)の濃度で添加される。複数の実施形態では、組成物中の非自己血漿または血清対ポリマーの比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1:3:1、1:4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2.0:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、もしくは間にある任意の比の整数、および/またはその逆である。
【0123】
[0126]複数の実施形態では、本発明の組成物のポリマーは、キトサンまたはその誘導体を含み得る。例えば、組成物は、キトサンの塩または誘導体を含む。キトサンの塩は、有機および無機酸塩、例えば、グルタミン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、プロピオン酸塩、ギ酸塩、炭酸塩および酢酸塩を含む。キトサンの誘導体は、疎水性修飾キトサン、スクシニルキトサン、カルボキシメチルキトサン、グリコールキトサン、スルホン化キトサン、チオール化キトサンまたは第四級アンモニウム基により修飾されたキトサンを含む。
【0124】
[0127]複数の実施形態では、ポリマーは、キトサンであり、ある特定の実施形態では、キトサンは、疎水性修飾(hm)キトサンである。キトサンは、当技術分野における標準的な技法を使用して疎水性修飾され得る。ある特定の態様では、キトサンは、キトサン骨格に沿った第一級アミン基とアルキル(またはアリール)アルデヒドとの反応(すなわち、50/50(v/v)%の酢酸水溶液およびエタノール中での)によって疎水性修飾され得る。反応の後に、得られたシッフ塩基、またはイミン基は、還元剤を滴下添加することによって、安定な第二級アミンに還元され得る。他の態様では、キトサンは、パルミチン酸無水物(すなわち、エタノール20mLに溶解された0.1gを使用する)をキトサンに添加することにより疎水性修飾され得る(すなわち、キトサンは、酢酸の50/50(v/v)混合物に溶解される)。
【0125】
[0128]複数の実施形態では、疎水性修飾キトサンの疎水性置換基は、パルミチン酸無水物によって提供される。複数の実施形態では、本開示は、血漿または血清と、キトサン、疎水性修飾キトサン、スクロース、またはトレハロースから選択される多糖とを含む凍結乾燥組成物であって、約60~90wt%の血漿または血清構成成分と、約10~40wt%の多糖とを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0126】
[0129]キトサンが疎水性修飾キトサンである本明細書に記載された凍結乾燥組成物の実施形態では、キトサンは、US20160206777に記載されたように、50/50(v/v)%の0.2M酢酸水溶液およびエタノール中でのキトサン骨格に沿った第一級アミン基とアルキル(またはアリール)アルデヒドとの反応によって疎水性修飾され得る。US20160206777に記載されたように、反応の後に、得られたシッフ塩基、またはイミン基は、還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウムを滴下添加することによって、安定な第二級アミンに還元される。疎水性修飾キトサン、およびそれらを作製するための方法はまた、米国特許第9,616,088号および第8,932,560号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
[0130]キトサンが疎水性修飾キトサンである本明細書に記載された凍結乾燥組成物の実施形態では、キトサン骨格の利用可能なアミンの10%までが、疎水性置換基で置換されている。複数の実施形態では、利用可能なアミンの1.5%から4.5%の間が置換されている。
【0128】
[0131]複数の実施形態では、本明細書に記載された組成物の疎水性修飾キトサンは、キトサンラクテート、キトサンサリチレート、キトサンピロリドンカルボキシレート、キトサンイタコネート、キトサンナイアシネート、キトサンホルメート、キトサンアセテート
、キトサンガレート、キトサングルタメート、キトサンマレエート、キトサンアスパルテート、およびキトサングリコレートからなる群から選択される。
【0129】
[0132]複数の実施形態では、本発明の組成物のポリマーは、キトサン、セルロース、デキストリン、ペクチン、アルギン酸、寒天、アガロース、およびカラギーナン、ならびにその誘導体からなる群から選択される多糖である。複数の実施形態では、多糖は、キトサン、またはその誘導体、好ましくは疎水性修飾キトサンである。キトサンは、いくつかの酵素によってin vivoで酵素分解され、主な酵素は、すべての哺乳動物組織中に存在する非特異的プロテアーゼであるリゾチームである。ヒトリゾチームは、一部の細菌に対する人体の防御の一部である。キトサンは、リゾチームによって、排泄されるかまたはグリコサミノグリカン(glycosoaminoglycans)および糖タンパク質に組み込まれ得る非毒性オリゴ糖へと酵素分解される。リゾチームは、血液血清、臍帯血血清、羊水、唾液、胃液、涙液および粘膜を含むほぼすべての体液および母体液中に存在する。活性は、普通は血清中では7から13mg/Lであり、涙液中では120倍高い。胃液では、正常血清中よりも約8倍多い。キトサンは、生分解性および生体適合性の両方である。キトサンはまた、化学的に汎用性があり、様々なグリコサミノグリカンで構成される組織の細胞外マトリックスを模倣する。これにより、キトサンおよびその誘導体は、分子足場として働くその能力に起因して、組織工学および薬物送達に特に有利となる。キトサンマトリックス内の薬物は、キトサンが内因性リゾチームおよび他の酵素によって生分解されるにつれて、疾患標的に徐々に放出され得る。
【0130】
[0133]キトサンおよびその誘導体の例示的な有益な特性は、抗微生物特性、生分解性、生体適合性、および非毒性特性を含む。さらに、キトサンまたはその誘導体の粘膜付着特性および粘度は、例えば、本明細書に記載された低、中、または高分子量キトサンの選択によって、容易に改変され得る。一般に、実施例に記載されたように、本開示のポリマー含有組成物の粘膜付着性および粘度はいずれも、キトサンポリマーの分子量の増加とともに増加する。キトサンの分子量は、10~100,000kDaの間で変動し得る。好ましくは、本明細書に記載された組成物は、100から400kDaの範囲、または100、250、もしくは400kDaの分子量のキトサン、または疎水性修飾キトサンを含有する。キトサンおよびその誘導体の抗微生物特性は、細菌、酵母、真菌、およびウイルスに対するものであり得る。抗微生物効果は、微生物壁を破壊し、それにより、それを漏出させ、最終的に微生物を殺滅するキトサンの能力であると考えられる。
【0131】
[0134]上に記載されたように、キトサンの粘膜付着特性および粘度は、容易に改変され得る。キトサンは、連結されたグルコサミン単位から構成される直鎖状多糖である。キトサンの分子構造を種々の程度変化させる能力は、その特性を改変することを可能にする。キトサンの一特性は、新規な特性、機能および用途を生じさせる化学的および機械的修飾の多大な構造的可能性である。分子量は、キトサンの特性に対して著しい効果を与えるが、脱アセチル化、または異なる官能基の付加もまた、その特性を変化させることができ、例えば、解重合されたキトサンは、より水溶性である。
【0132】
[0135]キトサンは、以下の骨格化学構造を有し、式中、nは、任意の整数を表し、キトサン鎖中のモノマー単位の数(すなわち、重合度)を表す。
【0133】
【0134】
[0136]複数の実施形態では、本開示の組成物は、キトサン誘導体を含み、例えば、エステル、エーテルまたはアシルおよび/もしくはアルキル基をヒドロキシル基と結合させることによって形成された他の誘導体であるがこれらに限定されない。キトサン誘導体の追加の例は、キトサンのO-アルキルエーテルおよびキトサンのO-アシルエステルを含む。複数の実施形態では、本開示の組成物は、修飾キトサンを含み、例えばポリエチレングリコールとコンジュゲートされたものが、本開示において使用され得る。キトサンとポリエチレングリコールとのコンジュゲートは、WO99/01498に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。複数の実施形態では、本開示の組成物は、キトサン誘導体、例えば、キトサンのN-フタロイル化、デンドロン化キトサン-シアル酸ハイブリッド、メチルチオカルバモイルおよびフェニルチオカルバモイルキトサン、乳酸/グリコール酸キトサンヒドロゲル、または天然多糖キトサン由来のナノコンポジットを含む。
【0135】
[0137]本開示の組成物中のキトサン、キトサン誘導体、または塩は、少数のグルコサミン単位から200,000Da超の範囲内の分子量を有し得る。複数の実施形態では、分子量は、10,000から1,000,000Daの範囲、15,000から750,000Daの範囲内、または20,000から500,000Daの範囲内であり得る。複数の実施形態では、キトサンは、分子量が300から1000kDaの範囲であり得る。複数の実施形態では、キトサンは、分子量が約300から400kDa、または約300から500kDa、または約300から400kDa、または約300から500kDa、または約300から600kDa、または約300から700kDa、または約300から800kDa、または約300から900kDa、または約300から1000kDaの範囲であり得る。
【0136】
[0138]複数の実施形態では、キトサンは、様々な基、例えば5β-コラン酸、リノール酸、モノメトキシポリ(エチレングリコール)により修飾されている多糖の1種である。修飾プロセスの後に、修飾キトサンは、本開示の組成物の調製に使用される。修飾キトサンおよびそのような修飾キトサンを調製する方法の非限定的な例を表1に列記する。
【0137】
[0139]
【0138】
【0139】
[0140]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、1種または複数の添加剤とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。添加剤は、FDAによって、市販のヒト使用のための眼科用製剤品[第21編、第5巻]として分類されている構成成分を含み得る。複数の実施形態では、これらの添加剤は、(a)収斂剤(b)緩衝剤(c)粘滑剤(d)皮膚軟化剤(e)洗眼剤、アイローション、灌流溶液(f)高張剤(g)等張剤、および/または(h)血管収縮剤であり得る。複数の実施形態では、これらの添加剤は、硫酸亜鉛、0.25パーセント;セルロース誘導体:カルボキシメチルセルロースナトリウム、0.2から2.5パーセント、ヒドロキシエチルセルロース、0.2から2.5パーセント、ヒプロメロース、0.2から2.5パーセント、メチルセルロース、0.2から2.5パーセント、デキストラン70
、0.1パーセント、ゼラチン、0.01パーセント;液体ポリオール:グリセリン、0.2から1パーセント、ポリエチレングリコール300、0.2から1パーセント、ポリエチレングリコール400、0.2から1パーセント、ポリソルベート80、0.2から1パーセント、プロピレングリコール、0.2から1パーセント、ポリビニルアルコール、0.1から4パーセント、ポビドン、0.1から2パーセント;ラノリン調製物:無水ラノリン、1から10パーセント ラノリン、1から10パーセント;油性成分:軽鉱物油、鉱物油、パラフィン、ワセリン、白色軟膏、白色ワセリン、白色ワックス、黄色ワックス;および/または眼科用血管収縮剤:エフェドリン塩酸塩、0.123パーセント、ナファゾリン塩酸塩、0.01から0.03パーセント、フェニレフリン塩酸塩、0.08から0.2パーセント、テトラヒドロゾリン塩酸塩、0.01から0.05パーセントを含み得る。
【0140】
[0141]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、トレハロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キトサン塩および/もしくは誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、N,N-ジメチルアセトアミド、ポリ(ビニルピロリドン)、ピロリドン、ジメチルスルホキシド、エタノール、N-(-ベータ-ヒドロキシエチル)-ラクトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、トリグリセリド、モノチオグリセロール、ソルビトール、レシチン、メチルパラベン、プロピルパラベン、またはそれらの組合せとを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。
【0141】
[0142]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、共溶媒とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。本発明の組成物の構成成分の溶解性は、組成物中の界面活性剤または他の適当な共溶媒によって増大させることができる。そのような共溶媒は、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、Pluronic F-68、Pluronic F-84、Pluronic P-103、シクロデキストリン、および他の任意の好適な薬剤、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。共溶媒は、任意の好適な量で使用され得る。複数の実施形態では、そのような共溶媒は、組成物の約5%から約50%(w/v)の濃度で使用される。複数の実施形態では、本開示の組成物において使用される溶媒は、グリセロールである。
【0142】
[0143]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、保存剤とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。保存剤の例は、抗微生物保存剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Onamer M Polyquat、臭化セチル、塩化セチルピリジニウム、臭化ベンジル、EDTA、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メルチオレート、アセテートおよびホウ酸フェニル水銀、硫酸ポリミキシンB、メチルおよびプロピルパラベン、塩化第四級アンモニウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム(sodium proprionate)、ならびに過ホウ酸ナトリウム、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0143】
[0144]複数の実施形態では、保存剤は、任意の好適な量で使用され得る。例えば、抗微生物剤および保存剤は、組成物の総重量を基準にして約0.001重量%~1.0重量%の量で使用され得る。
【0144】
[0145]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、粘性剤とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。粘度を増加させ得る任意の好適な薬剤が使用され得る。単純な水溶液の粘度を超える粘度の増加は、活性化合物の眼内吸収を増加させるため、製剤の分注における変動性を減少させるため、製剤の懸濁液もしくはエマルションの構成成分の物理的分離を減少させるためおよび/または他の形で眼科用製剤を改良するために望ましい場合がある。そのような粘性剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、当業者に公知の他の薬剤、またはそれらの組合せを含む。そのような薬剤は、任意の好適な量で使用され得る。
【0145】
[0146]粘性剤は、任意の好適な量で使用され得る。一態様では、粘性剤は、約0.01重量%から約3.0重量%の濃度レベルで用いられ得る。
[0147]複数の実施形態では、本開示は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体と、1種または複数のpH調整剤とを含む、眼乾燥症候群を処置するためまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復するための凍結乾燥組成物を含む。pH調整剤は、例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、リン酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸ナトリウム、酢酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0146】
[0148]pH調節剤として有用な化合物は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(一、二および三塩基性リン酸塩、例えば一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物およびそれらの混合物を含む)を含むがこれらに限定されない。他の任意の適切なバッファーが、眼科用液体薬用に承認された生理的pHを付与することによって眼科用液体薬のpHレベルを安定化するために使用され得る。前記バッファーは単なる例であり、これらのバッファーは眼科学分野で周知であることから、当業者は、本開示の組成物に使用され得る適切なバッファーを選択することができる。
【0147】
[0149]複数の実施形態では、本開示の組成物は、溶液剤、懸濁剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、半液剤、軟膏剤、クリーム剤、フォームゲル剤、または制御放出性/持続放出性ビヒクルとして製剤化される。例えば、組成物は、コンタクトレンズ溶液、洗眼剤、点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤などの形態であり得る。
【0148】
[0150]複数の実施形態では、凍結乾燥組成物は、再構成流体により再構成される。再構成流体は、本明細書に記載された任意の溶媒を指し得る。複数の実施形態では、水または食塩水溶液が使用されてもよく、任意の添加剤が再構成流体に含まれてもよく、人工または非自己血漿または血清もまた、再構成流体として使用され得る。複数の実施形態では、再構成流体に使用される溶媒は、滅菌されている。
【0149】
[0151]複数の実施形態では、再構成流体は、添加剤(例えば、アスコルビン酸、グリシン、またはそれらの組合せ)を含む。複数の実施形態では、再構成流体に含まれる添加剤は、FDAによって、市販のヒト使用のための眼科用製剤品[第21編、第5巻]として分類されている。複数の実施形態では、これらの添加剤は、(a)収斂剤(b)緩衝剤(c)粘滑剤(d)皮膚軟化剤(e)洗眼剤、アイローション、灌流溶液(f)高張剤(g)等張剤、および/または(h)血管収縮剤であり得る。複数の実施形態では、これらの添加剤は、硫酸亜鉛、0.25パーセント;セルロース誘導体:カルボキシメチルセルロースナトリウム、0.2から2.5パーセント、ヒドロキシエチルセルロース、0.2から2.5パーセント、ヒプロメロース、0.2から2.5パーセント、メチルセルロース、0.2から2.5パーセント、デキストラン70、0.1パーセント、ゼラチン、0.01パーセント;液体ポリオール:グリセリン、0.2から1パーセント、ポリエチレングリコール300、0.2から1パーセント、ポリエチレングリコール400、0.2から1パーセント、ポリソルベート80、0.2から1パーセント、プロピレングリコール、0.2から1パーセント、ポリビニルアルコール、0.1から4パーセント、ポビドン、0.1から2パーセント;ラノリン調製物:無水ラノリン、1から10パーセント、ラノリン、1から10パーセント;油性成分:軽鉱物油、鉱物油、パラフィン、ワセリン、白色軟膏、白色ワセリン、白色ワックス、黄色ワックス;および/または眼科用血管収縮剤:エフェドリン塩酸塩、0.123パーセント、ナファゾリン塩酸塩、0.01から0.03パーセント、フェニレフリン塩酸塩、0.08から0.2パーセント、テトラヒドロゾリン塩酸塩、0.01から0.05パーセントを含み得る。
【0150】
[0152]本開示の凍結乾燥組成物は、例えば、滅菌条件下で、溶媒、例えば水または食塩水溶液(例えば、注射用0.9w/v%塩化ナトリウム)により使用の前に再構成され、それにより、再構成された液体または半液体組成物を生成し得る。複数の実施形態では、凍結乾燥血清および血漿は、滅菌水または他の同等の溶媒ならびにpH、浸透圧、表面張力、および粘度を調節する能力を与える承認された添加剤中で再構成される。CO2が凍結乾燥プロセス中に除去され、アルカリ性pH(8.2)を生じさせることから、滅菌水は、おおよそ7.4の最終pHを得るために、グリシン(pH2.4)およびアスコルビン酸を含む添加剤を含有する。一部の実施形態では、血漿または血清は、眼乾燥症候群、または他の眼科疾患の処置のための再構成流体として使用され、その理由は、血清は、血漿と同様に、成長因子、ビタミン、ミネラルおよび天然滑沢剤、例えば脂質を含む多くの主構成成分を含有するからである。複数の実施形態では、再構成された組成物は、動物モデルにおいて試験される。例えば、本明細書に記載された非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む組成物は、前記組成物による処置の有効性、毒性、または副作用を決定するために、動物モデルにおいて使用され得る。
【0151】
医薬組成物および製剤
[0153]本開示はまた、非自己血清と、ポリマーとを含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、非自己血清と、ポリマーと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む。好ましくは、量は、治療上有効な量である。
【0152】
[0154]複数の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。担体のタイプは、意図された投与経路に基づいて選択され得る。薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液(例えば、滅菌水)または分散体および滅菌局所溶液または分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が組成物(例えば、凍結乾燥血漿または血清)と不適合である場合を除き、本開示のための凍結乾燥組成物におけるその使用が企図される。
【0153】
[0155]「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒
性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比で釣り合いの取れた化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0154】
[0156]複数の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含んでもよく、これは、一般に安全であり、非毒性であり、生物学的にも他の形でも望ましくないものでない医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を指し得、獣医学的使用およびヒトの薬学的使用のために許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤の例は、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油、洗浄剤、懸濁化剤、炭水化物(例えば、グルコース、ラクトース、スクロースもしくはデキストラン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、またはそれらの好適な混合物を含むがこれらに限定されない。複数の実施形態では、賦形剤は、スクロースおよびトレハロースから選択され得る。
【0155】
[0157]複数の実施形態では、医薬組成物は、滴剤としての、特に眼科用滴剤としての局所投与に好適な液体または溶液製剤の形態である。複数の実施形態では、医薬組成物は、固体組成物、例えば液体形態への再構成に好適な粉末の形態である。複数の実施形態では、医薬組成物は、固体または半固体組成物、例えば軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、またはゲル剤の形態である。複数の実施形態では、医薬組成物は、明確な形状の凝集性固体材料、例えばウエハーまたはディスク(あるいは、レンズ、ペッサリー、または義歯)の形態であり、ドレッシング、例えば、創傷ドレッシングとして、またはそれと組み合わせて使用され得る。複数の実施形態では、医薬組成物は、非角化表面、例えば眼部、口腔、膣、頬側、舌下、または直腸表面への適用による局所投与のために製剤化される。例えば、本発明の医薬組成物は、点眼剤の形態の水溶液、またはディスク、ウエハー、もしくはレンズ、例えば、コンタクトレンズ、ペッサリー、創傷ドレッシング、もしくは義歯の形態の固体の形態であり得る。複数の実施形態では、医薬組成物は、滅菌されている。
【0156】
処置または使用の方法
[0158]一態様では、本開示は、それを必要とする対象において前部の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法であって、対象の眼に、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む再構成された凍結乾燥組成物を、対象において眼乾燥症候群を処置するための量で投与するステップを含む方法を提供する。複数の実施形態では、ポリマーまたはその誘導体は、100から1200kDAの分子量を有する。
【0157】
[0159]一態様では、本開示は、対象の身体内または身体上の非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法を提供する。非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、例えば、それを必要とする対象の非角化表面に、本開示の組成物を、本開示の治療剤送達デバイス(100)により送達するステップを含む。
【0158】
[0160]複数の実施形態では、非角化表面の保湿および/または修復は、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍、および/または慢性創傷の処置を含む。
[0161]一態様では、本開示は、それを必要とする対象において前部の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法であって、対象の眼に、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量および式1:[[R1]m-L-[R2]n]pを含む式を有するポリマー、またはその誘導体(式中、R1およびR2は、ポリマー単位であり、mは、1~10,000の整数であり、nは、1~10,000の整数であり、pは、1
0~10,000の整数であり、Lは、結合である)とを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、式Iの「m」および「n」は、1である。
【0159】
[0162]一態様では、本開示は、眼科用組成物の眼球表面保持性を増加させる方法であって、対象の眼に、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量および/もしくは式1:[[R1]m-L-[R2]n]pを含む式を有するポリマー、またはその誘導体(式中、R1およびR2は、ポリマー単位であり、mは、1~10,000の整数であり、nは、1~10,000の整数であり、pは、10~10,000の整数であり、Lは、結合である)とを含む組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、式Iの「m」および「n」は、1である。
【0160】
[0163]一態様では、本開示は、それを必要とする対象において非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法であって、非角化表面に、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量および/もしくは式1:[[R1]m-L-[R2]n]pを含む式を有するポリマー、またはその誘導体(式中、R1およびR2は、ポリマー単位であり、mは、1~10,000の整数であり、nは、1~10,000の整数であり、pは、10~10,000の整数であり、Lは、結合である)とを含む再構成された凍結乾燥組成物を含む組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、式Iの「m」および「n」は、1である。
【0161】
[0164]本開示の凍結乾燥組成物は、再構成流体により再構成される。再構成流体は、任意の水性溶媒であり得る。例えば、蒸留もしくは滅菌水または食塩水溶液(例えば、注射用0.9w/v%塩化ナトリウム)である。複数の実施形態では、再構成流体は、添加剤(すなわち、グリシンもしくはアスコルビン酸、またはキトサン、アルギネート、およびゼラチン)を含む。一部の実施形態では、再構成流体は、血漿もしくは血清、またはその構成成分を含む。複数の実施形態では、再構成流体に使用される溶媒は、滅菌されていてもよい。
【0162】
[0165]複数の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において眼乾燥症候群を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法であって、それぞれ対象の眼または非角化表面に、非自己血漿または血清と、キトサンまたはその誘導体とを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む方法を含む。複数の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において眼乾燥症候群を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法であって、それぞれ対象の眼または非角化表面に、哺乳動物(例えば、ヒト)臍帯血漿と、キトサンまたはその誘導体とを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む方法を含む。複数の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において眼乾燥症候群を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法であって、それぞれ対象の眼または非角化表面に、哺乳動物(例えば、ヒト)臍帯血清と、キトサンまたはその誘導体とを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む方法を含む。
【0163】
複数の型の眼乾燥症候群の処置
[0166]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、本開示の組成物により、涙腺が健康な眼表面を維持するのに十分な涙液の水状構成成分を産生しない障害である水性涙液欠乏性眼乾燥を処置するステップを含む。複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処
置する方法は、本開示の組成物により、同じく眼瞼にあるマイボーム腺(これらの腺は、蒸発を減速し、涙液を安定に保持する涙液の脂質または油状部分を作る)の炎症により生じ得る蒸発亢進型眼乾燥を処置するステップを含む。
【0164】
[0167]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、眼の表面、涙腺、もしくは結膜の炎症の処置に関連するもしくはそれにより生じる眼乾燥;涙液の構成成分を変容させる任意の疾患プロセスに関連する眼乾燥;甲状腺疾患において眼が前方に突出したときのような眼の表面の増加に関連する眼乾燥;ならびに/または例えば、手術中に眼瞼が広く切開されすぎた場合に美容整形手術に関連する眼乾燥を処置するステップを含む。
【0165】
[0168]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、眼の刺痛感もしくは灼熱感;眼に何かが入った場合のような砂っぽいもしくは砂が入った感じ;重度の眼乾燥期間に続く涙液過剰の発現;眼からの糸状排出物;眼の疼痛および発赤;霧視の発現;眼瞼の重み;感情的にストレスを受けたときに泣くことができないこと;コンタクトレンズの不快感;読書、コンピュータ作業、もしくは持続的な視覚的注意を必要とする任意の活動に対する耐性の減少;ならびに/または眼精疲労を含む眼乾燥症候群の症状を改善するステップを含む。
【0166】
[0169]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、以下のような一過性または慢性眼乾燥のリスク因子に曝された対象において眼乾燥症候群の関連症状を処置または改善するステップを含む:抗ヒスタミン剤、鼻充血除去剤、精神安定剤、ある特定の血圧薬、パーキンソン病薬物療法、経口避妊薬および抗うつ剤を含む一部の薬物療法の副作用;眼瞼またはその周りの皮膚疾患は、眼乾燥を生じさせ得る;眼瞼の腺の疾患、例えばマイボーム腺機能不全;妊娠;女性におけるホルモン補充療法(エストロゲンのみを摂取している女性は、眼乾燥を経験する可能性が70パーセント高いのに対し、エストロゲンおよびプロゲステロンを摂取している女性は、眼乾燥を発症するリスクが30パーセント増加する);LASIKとして知られる屈折矯正手術;眼瞼を被覆し、眼を覆う膜に傷痕を残す化学熱傷および熱傷;アレルギー;コンピュータまたはビデオ画面の凝視に関連する瞬目回数減少;眼乾燥の一因となり得るビタミンの投薬量の過剰および不足の両方;眼乾燥状態に対して悪影響を与え得るホメオパシー治療薬;長期のコンタクトレンズ装着による角膜の感覚喪失は、眼乾燥につながり得る;眼乾燥は、免疫系障害、例えばシェーグレン症候群、ループス、および関節リウマチに関連し得る(シェーグレン症候群は、口、眼、および他の粘膜の炎症および乾燥につながる。これはまた、腎臓、肺および血管を含む他の器官に影響を及ぼし得る);眼乾燥は、結膜、眼瞼を被覆し、前眼部を覆う膜または涙腺の慢性炎症の症状であり得る(慢性結膜炎は、ある特定の眼疾患、感染、刺激物、例えば化学煙霧および煙草の煙、または空調もしくは暖房からの風への曝露によって引き起こされ得る);甲状腺疾患において眼が前方に突出したときのように眼の表面積が増加した場合、または眼瞼が広く切開されすぎた場合に美容整形手術の後に、眼乾燥が生じ得る;眼乾燥は、眼瞼が睡眠中に完全に閉鎖しない露出性角膜炎により起こり得る。
【0167】
[0170]複数の実施形態では、本開示は、そのような処置を必要とする対象において眼乾燥症候群を処置する方法であって、対象の眼における涙液層破壊時間を増加させることによる方法を提供する。涙液層の破壊は、角膜上皮の表面が不規則であり、上皮細胞が損傷を受けているかまたはその濡れ性を喪失している点で開始される。本明細書に記載された凍結乾燥血漿または血清組成物中の活性構成成分は、特に表面グリコカリックスを産生する角膜上皮細胞の重層化および分化の改良により、角膜上皮の健康を促進する。複数の実施形態では、本開示はまた、例えば、ローズベンガル色素の取り込みによって示される、角膜上皮の損傷を低減、改善、または防止する方法を提供する。
【0168】
共投与-他の薬物/処置方法と共に
[0171]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、進行中の状態として管理され得る。複数の実施形態では、眼乾燥の基礎原因である疾患(例えばシェーグレン症候群または涙腺およびマイボーム腺機能不全)が存在するか否かが決定される。複数の実施形態では、基礎疾患が存在する場合、その疾患は、並行して処置される。
【0169】
[0172]複数の実施形態では、方法は、シクロスポリンと組み合わせた本開示の組成物により、眼乾燥を処置するステップを含む(シクロスポリンは、眼乾燥の処置に利用可能な抗炎症薬物療法である)。複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を、シクロスポリンと組み合わせて投与するステップを含む。複数の実施形態では、方法は、本開示の組成物を、シクロスポリンと並行して、逐次的に、同時に投与するステップを含む。複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を、炎症を減少させるためのコルチコステロイド点眼剤と組み合わせて投与するステップを含む。複数の実施形態では、方法は、本開示の組成物を、コルチコステロイドと並行して、逐次的に、同時に投与するステップを含む。複数の実施形態では、方法は、本開示の組成物を、シクロスポリンおよびコルチコステロイドと並行して、逐次的に、同時に投与するステップを含む。
【0170】
[0173]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、コンタクトレンズを装着している対象に、本開示の組成物を投与するステップを含む。
[0174]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法は、眼乾燥を処置する別の方法が実施された対象に、本開示の組成物を投与するステップを含む。例えば、そのような一方法では、本開示の組成物を投与する前に、医師が、涙液が眼から鼻に流出する眼瞼の内側の角にある小さな円形の開口である流出孔または涙点にプラグを入れている。複数の実施形態では、涙点プラグとも呼ばれる涙管プラグが、アイケア専門家によって挿入されている(涙点プラグは、シリコーンまたはコラーゲン製であり、可逆的であり、一時的対策である)。重症例では、本開示の組成物を投与する前に、永久プラグが挿入されている。
【0171】
[0175]追加の実施形態では、本開示の組成物を投与する前に、流出孔を永久に閉鎖する涙点焼灼と呼ばれる単純な手術が実施されている。この手技は、限られた体積の涙液を眼により長い期間保持するのを助ける。
【0172】
[0176]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法は、眼乾燥または非角化表面を有する対象に、本開示の組成物を投与するステップを含み、対象は、眼乾燥または非角化表面の乾燥に関連する刺激の症状を減少させるためのオメガ-3脂肪酸(特にDHAおよびEPA)のサプリメントまたは食事源(例えばサケ)を摂取している。
【0173】
[0177]複数の実施形態では、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、進行中の状態として管理され得る。複数の実施形態では、基礎原因である疾患が決定される。複数の実施形態では、基礎疾患が存在する場合、その疾患は、並行して処置される。
【0174】
[0178]複数の実施形態では、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を、任意の好適な潤滑および/または保湿剤と組み合わせて投与するステップを含む
。例示的な膣保湿薬は、Replens(登録商標)、K-Y Liquibeads(登録商標)、Lubrin(登録商標)、Astroglide Silken Secret(登録商標)およびビタミンEゲルを含むがこれらに限定されない。口腔保湿薬(すなわち、口内乾燥用)の例は、人工唾液製品、唾液刺激剤、Salese Soothing(登録商標)、Orajel(登録商標)、およびEucerin(登録商標)クリームを含み得るがこれらに限定されない。糖尿病性潰瘍および/または慢性創傷用の例示的な保湿薬は、湿潤環境を提供する任意の食塩水もしくは類似のドレッシング、TriDerma(登録商標)MD Ulcer Healing Cream、またはNeoteric Diabetic Healing Cream(登録商標)を含み得る。
【0175】
[0179]複数の実施形態では、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、非自己血漿または血清と、100から1200kDAの分子量を有するポリマー、またはその誘導体とを含む組成物を、任意の好適な潤滑および/または保湿剤と組み合わせて投与するステップを含む。複数の実施形態では、方法は、本開示の組成物を、任意の好適な潤滑および/または保湿剤と並行して、逐次的に、および同時に投与するステップを含む。複数の実施形態では、方法は、本開示の組成物を、シクロスポリンならびに任意の好適な潤滑および/または保湿剤と並行して、逐次的に、および同時に投与するステップを含む。
【0176】
[0180]複数の実施形態では、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する別の方法が実施された対象に、本開示の組成物を投与するステップを含む。
【0177】
[0181]複数の実施形態では、非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/または修復する方法は、眼乾燥または非角化表面を有する対象に、本開示の組成物を投与するステップを含み、対象は、非角化表面の乾燥に関連する刺激の症状を減少させるためのオメガ-3脂肪酸(特にDHAおよびEPA)のサプリメントまたは食事源(例えばサケ)を摂取している。
【0178】
投薬レジメン
[0182]複数の実施形態では、眼乾燥症候群を処置するまたは非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法は、対象に、非自己血漿または血清の組成物を、任意の好適なまたは治療上有効な量、例えば、組成物の約0.001重量パーセントから約90重量パーセント、組成物の約0.001重量パーセントから約1重量パーセント、約0.001重量パーセントから約10重量パーセント、約0.001重量パーセントから約20重量パーセント、約0.001重量パーセントから約30重量パーセント、約0.001重量パーセントから約40重量パーセント、約0.001重量パーセントから約50重量パーセント、約0.001重量パーセントから約60重量パーセント、約0.001重量パーセントから約70重量パーセント、約0.001重量パーセントから約80重量パーセント、約0.01重量パーセントから約90重量パーセント、約0.01重量パーセントから約1重量パーセント、約0.01重量パーセントから約10重量パーセント、約0.01重量パーセントから約20重量パーセント、約0.01重量パーセントから約30重量パーセント、約0.01重量パーセントから約40重量パーセント、約0.01重量パーセントから約50重量パーセント、約0.01重量パーセントから約60重量パーセント、約0.01重量パーセントから約70重量パーセント、約0.01重量パーセントから約80重量パーセント、約0.1重量パーセントから約90重量パーセント、約0.1重量パーセントから約1重量パーセント、約0.1重量パーセントから約10重量パーセント、約0.1重量パーセントから約20重量パーセント、約0.1重量パーセントから約30重量パーセント
、約0.1重量パーセントから約40重量パーセント、約0.1重量パーセントから約50重量パーセント、約0.1重量パーセントから約60重量パーセント、約0.1重量パーセントから約70重量パーセント、約0.1重量パーセントから約80重量パーセント、または間にある任意の範囲で投与するステップを含む。
【0179】
[0183]複数の実施形態では、それを必要とする対象において前部の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法は、それぞれ対象の眼または非角化表面に、非自己血漿または血清と、ポリマー(例えば、キトサン、アルギネート、またはゼラチン)とを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む。複数の実施形態では、組成物中のポリマーの量は、組成物の約0.025重量%から約2.0重量%の濃度である。ポリマーは、組成物の約0.025、約0.05、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約1.0、および約2.0重量パーセントまたはこれらの量の間にある任意の量で存在し得る。一実施形態では、ポリマーは、組成物の約0.05%(w/v)から約1.0%(w/v)の濃度であり得る。
【0180】
[0184]複数の実施形態では、それを必要とする対象において前部の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法は、それぞれ対象の眼または非角化表面に、溶液剤、懸濁剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、半液剤、軟膏剤、クリーム剤、フォームゲル剤、または制御放出性/持続放出性ビヒクルの形態で製剤化された、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む再構成された凍結乾燥組成物を投与するステップを含む。例えば、組成物は、コンタクトレンズ溶液、洗眼剤、点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤などの形態であり得る。
【0181】
[0185]複数の実施形態では、それを必要とする対象において前部の眼科疾患(例えば、眼乾燥症候群)を処置する方法または非角化表面(例えば、口内乾燥症候群、膣乾燥、糖尿病性潰瘍および他の慢性創傷)を保湿および/もしくは修復する方法は、それぞれ対象の眼または非角化表面に、非自己血漿または血清と、ポリマーとを含む再構成された凍結乾燥組成物を局所的に投与するステップを含む。複数の実施形態では、再構成された組成物(例えば、眼科用組成物)は、点眼剤の形態で投与される。複数の実施形態では、再構成された組成物(例えば、眼科用組成物)は、溶液剤、懸濁剤、半液剤、半固体ゲル剤、ゲル剤、乳剤、軟膏剤、またはクリーム剤として製剤化され得る。
【0182】
[0186]複数の実施形態では、再構成された組成物(例えば、眼科用組成物)は、眼または非角化表面に、それぞれ1眼または所望の非角化表面面積当たり約0.001mgから約100mgの用量範囲で、局所的に投与され得る。一部の実施形態では、1眼または所望の非角化表面面積に対する投薬量は、約50μLから約150μLの再構成された組成物に相当し得る約1滴の再構成された組成物であり得る。
【0183】
[0187]複数の実施形態では、再構成された組成物は、眼または非角化表面に、それぞれ各眼または所望の非角化表面面積に1から2滴またはそれよりも多く落とすことによって、毎日1から24回局所的に投与され得る。例えば、組成物は、1日に1、2、3、4、8、12、18もしくは24回、またはそれよりも多く適用され得る。一実施形態では、組成物は、それぞれ各眼または所望の非角化表面面積に1または2滴落とすことによって、毎日1回または2回適用され得る。
【0184】
[0188]複数の実施形態では、粘膜表面の保湿は、表面の水分含量を(生理的に正常な非角化表面と比較して)約5%から約100%増加させる。複数の実施形態では、粘膜表面の修復は、表面の水分含量を(生理的に正常な非角化表面と比較して)約5%から約10
0%増加させ、創傷(例えば、擦過傷、切創、潰瘍、組織損傷)を治癒させる。
【0185】
送達デバイス
[0189]一態様では、本開示は、1つまたは複数の区画/チャンバー(101および/または102)に上記の組成物の要素(例えば、凍結乾燥された非自己血漿または血清およびポリマーと、再構成流体と)を組み込んだ治療剤送達デバイス(100)を提供する。送達デバイス(100)は、2つのチャンバー(チャンバーA(101)およびB(102))を含む。チャンバーA(101)は、凍結乾燥された滅菌凍結乾燥血漿または血清を含有するように構成される。チャンバーB(102)は、pH調整要素(例えば、アスコルビン酸)および/または保護剤としての他の添加剤(例えば、キトサン、アルギネート、ゼラチン)を含む水性再構成流体を含有するように構成される。チャンバーA(101)とチャンバーB(102)との間の非透過性膜(103)は、チャンバーA(101)およびチャンバーB(102)を分離するように構成される。
【0186】
[0190]非透過性膜(103)は、冷凍乾燥(または凍結乾燥)血漿または血清および再構成流体を混合するために、送達デバイス(100)の使用者によって要求に応じて破壊され得る。膜破砕の機構は、いくつかの手段によって起こり得る:一例は、使用者が送達デバイス(100)のボタンを押し、電気機械的信号が膜を透過性にさせるデジタル機構を含み、別の例では、送達デバイス(100)は、膜を破砕し、チャンバーA(101)およびチャンバーB(102)内の構成成分の混合を可能にするために、使用者によってかき混ぜられるかまたはねじられてもよい。
【0187】
[0191]送達デバイス(100)の遠位端に、ドロッパー(106)があり、これは、チャンバーA(101)およびチャンバーB(102)の混合時に、得られた流体を分注するように構成され、液滴の滴下は、使用者が送達デバイス(100)の本体を強く押すことによって起こり得る。この送達デバイス(100)は、凍結乾燥血清または血漿が、湿った状態で分解する速さで分解しないことから、室温で貯蔵され得る。
【0188】
[0192]治療剤送達デバイス(100)は、チャンバーケーシング(104)によって覆われているかまたは取り囲まれている。眼科用治療剤送達デバイス(100)は、ドロッパーケーシング(105)を含む。
【0189】
[0193]治療剤送達デバイス(100)は、デバイスの縦方向の寸法が、約5cm~10cmである。デバイスの水平方向の寸法が、約1cm~4cmである、請求項31に記載の眼科用治療剤送達デバイス(100)。
【0190】
[0194]複数の実施形態では、本開示の治療剤送達デバイス(100)は、組成物の送達に使用される。例えば、治療剤送達デバイス(100)は、チャンバーA(101)内の凍結乾燥組成物を含み、チャンバーB(102)内の流体による再構成時に、眼乾燥症候群を処置するために、ドロッパー(106)を通して対象の眼に送達される。
【0191】
[0195]複数の実施形態では、本開示の治療剤送達デバイス(100)は、第1のチャンバー(101)内の凍結乾燥組成物と、第2のチャンバー(102)内の再構成流体とを含み、再構成時に、再構成された組成物が、対象に送達される。
【0192】
[0196]複数の実施形態では、本開示の治療剤送達デバイス(100)は、眼乾燥症候群の処置、または非角化表面の保湿および/もしくは修復用である再構成された組成物を含む。
【実施例】
【0193】
実施例1:血清および血漿の採取
[0197]有志の家系の明らかな(pedigree)ドナーを、プリオンリスクを含む潜在的な感染性因子に対する予防措置として、単一ドナーロットにまたはABO型特異的ミニプール(11名未満のドナー)ロットとして保持する。血清および血漿はいずれも、全血採取物由来である。ヒト臍帯血清および血漿は、経膣または帝王切開による分娩中に有志の家系の明らかな母体から得られる。
【0194】
[0198]血液は、FDAに認可された米国の採取センターで採取され、総合品質保証システムおよび適正製造基準(GMP)設備が使用される。安全性を確保するために、製品は、FDAに認可された血漿に固有の安全対策を組み込んだ2つの必須段階を経る。
【0195】
実施例2:血清および血漿の病原体低減
段階1 病原体低減:家系の明らかなドナーおよび隔離
[0199]有志の家系の明らかなドナーは、FDAガイドラインに従って、感染の存在を検出するために、身体検査およびスクリーニングを受ける。試験される例示的な感染は、例えば、クルーズトリパノソーマ、B型およびC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1およびHIV-2)、梅毒トレポネーマ(TPHA)、トキソプラズマ症(TOXO)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV-I/II)ならびにウエストナイルウイルス(WNV)を含む。例えば、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびC型肝炎ウイルス-核酸試験(HCV-NAT)についての、マルチプレックス核酸試験を実施する。ヘモビジランスプログラムを利用する。ドナー血清および血漿は、反復ドナー検査まで、処理を経る前に凍結されて隔離され、4カ月時点での再試験により感染が検出されないことを確保する。
段階2 病原体低減
[0200]血清および血漿は、段階1の完了後に、インターセプト・ブラッド・システムを使用して、病原体低減を経る。このシステムは、合成ソラレンであるアモトサレンHCl、または他の類似の方法を使用する。典型的には、光活性溶媒/洗浄剤を血清または血漿に混合し、紫外線に曝露する。アモトサレンHClを用いる場合、混合物を3J/cm2のUVA処理により照らしたときに光活性化が起こる。処理されたら、血清および血漿は、後の凍結乾燥のためにマイナス70℃で貯蔵および凍結される。
段階3:病原体低減(任意選択)
[0201]10から50kGyの間のガンマ線照射を、凍結乾燥血清および血漿に対して、4℃で実施する。ガンマ線照射に対する血漿タンパク質の保護剤としておよびpHバランスのために、アスコルベートを添加する。
【0196】
実施例3:血清および血漿の凍結乾燥
[0202]試料を解凍し、23℃で1時間インキュベートし、3,000gで10分間遠心分離し、得られた上清を保持する。冷凍乾燥用の血清/血漿上清の300mLのアリコートを滅菌1L円筒形Pyrex(直径10cm、高さ25cm)ベッセルに入れ、イソプロパノールドライアイススラリー中で低速で回転させることによって容器の底面および側面に均等な層として凍結させる。
【0197】
[0203]次いで、得られた凍結血清/血漿を、Virus Unitop 600 SL冷凍乾燥器または他の同等のユニットにおいて、8℃で48時間凍結乾燥する。
[0204]pHバランスのためにおよびガンマ線照射に対する血清/血漿タンパク質の保護剤として、測定された量の添加剤を使用する。凍結乾燥血清/血漿は、室温(25℃)以下で貯蔵され得る。貯蔵のための50℃以上の温度は、血漿/血清タンパク質の分解のリスクに起因して。
【0198】
実施例4:凍結乾燥血漿/血清の再構成
[0205]凍結乾燥血清および血漿を、滅菌水中で(すなわち、300mLのアリコートで)、任意選択で他の同等の溶媒ならびにpH、浸透圧、表面張力、および粘度を調節する能力を与える承認された添加剤とともに再構成する。滅菌水は、最終pH7.4および使用前の迅速な再構成(再構成流体中で約5分)を得るために、グリシン(pH2.4)およびアスコルビン酸を含む添加剤を含有する。
【0199】
実施例5:ヒト血漿または血清と混合されたバイオポリマーの凍結乾燥試料。
[0206]キトサンまたは疎水性修飾(hm)キトサン(各々0.2M AcOH中の2wt%溶液)をヒト血漿またはヒト血清と混合することにより、液体混合物を得た。溶液を秤量ボートに注ぎ入れ、凍結乾燥して、水を除去した。得られた構造体は、50mm×50mm×4mmの寸法を有するウエハーであり、血漿または血清の色が大半を占めるベージュ色から帯黄色であった。キトサンの量は、組成物の最終乾燥重量を基準にして約25wt%であり、血漿または血清構成成分の量は、約75wt%であった。
【0200】
[0207]混合物は、50/50w/w比のバイオポリマー(例えば、キトサンまたはhm-キトサン)対血液構成成分(血漿または血清)、すなわち、バイオポリマー9.7g対血液構成成分9.7gで作製し、したがって、凍結乾燥の前の溶液混合物中のキトサンの最終重量パーセントは、約1%であった。対照試料中には、血清または血漿のみが存在し、キトサンはこれらの試料中に存在しなかった。試料を-20℃で36時間、次いで+10℃で12時間、100μbarの平均真空度で凍結乾燥した。例示的な結果を下記の表2に示す。
【0201】
【0202】
[0208]結果は、血清を固体ドレッシングとして適用するために、キトサンまたはhm-キトサンを血清と予め混合することができ、それにより、凝集性スポンジ様固体を生じたことを示した。バイオポリマーを含まない場合、血清それ自体は、解剖学的表面に適用するのに過度に破砕性であった。
【0203】
[0209]加えて、キトサンおよびhm-キトサンは、血清とよりも血漿との方が凝集性の低いドレッシングを形成した。これは、キトサンと、血漿中に存在するが血清中に存在しない凝固タンパク質との間の相互作用に関係し得る。
【0204】
実施例6:疎水性修飾キトサンの合成。
[0210]70℃のEtOH20mLに溶解されたパルミチン酸無水物(0.1g;TCI
America)を、70℃の水中0.2M AcOHおよびEtOHの50/50v/v混合物200mLに溶解されたキトサン(2.0g;Chitoclear hqg
400、Primex(アイスランド))に添加することによって、疎水性修飾(hm)キトサンを合成した。反応は、連続撹拌下で1時間実施した。1.0M NaOHの滴下添加によって生成物を沈殿させた。最後に、得られた沈殿物をEtOH100mLで洗浄し、真空下で終夜乾燥した。乾燥したパルプ状物を粉砕して粉末とし、これを次いで、本セクションにおいて先に記載されたように水中0.2M AcOHに再溶解して、血液構成成分と混合した。
【0205】
実施例7:血清と種々の分子量のキトサンとの混合。
[0211]キトサン(各々0.2M AcOH中の2wt%溶液)をヒト血清と混合することにより、種々の粘度および粘膜付着強度の液体混合物を得た。キトサン(低分子量(約100kDa)、中分子量(約250kDa)および高分子量(約400kDa))は、Sigmaから入手した。ゼロせん断粘度は、AR2000応力制御レオメーターにより定常流動下で測定した(n=3)。粘膜付着測定は、1kgのロードセルを装備したTA-XTテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems)を使用して実施した(n=3)。生物学的支持体を固定することができるリングと、1cmの直径を有する円筒プローブとからなるA/MUC測定システム(粘膜付着試験リング)を使用した。この研究では、ムチン分散体(ブタ胃由来のムチン、II型、Sigma-Aldrich、ドイツ)を生物学的支持体の代わりに使用した。濾紙ディスクを、リン酸バッファー(8%、m/m、pH6.4)中のムチン分散体10mLで湿らせた。各試料20mgを円筒プローブに付けた。試料および生物学的基材を、6000mNのプレロードで3分間接触させた。円筒プローブを2.5mm分-1の所定の速さで上方に移動させて、粘膜付着界面(ムチン-試料)を分離した。例示的な結果を下記の表3に示す。
【0206】
【0207】
[0212]データは、キトサンの分子量が増加するにつれて、粘度および粘膜付着性が明らかに増加することを示した。これらの変数は、血清のバイオアベイラビリティによる最適化された治療効果のための眼への製剤の適用に重要である。
【0208】
[0213]上に詳細に記載されたように、キトサンの分子構造は、その特性を改変すること
を可能にする。凍結乾燥血漿または血清組成物に添加されるキトサンの量もまた調整され得る。凍結乾燥血漿または血清組成物の粘度および粘膜付着性質は、調整され、すなわち、液体形態(すなわち、滴剤として瓶に入れることができる)から、任意の形状に成形され、パッチおよび場合によりさらにコンタクトレンズとして使用され得るフィルムまで様々となり得る。液体形態とフィルム形態との間で、ゲル剤および軟膏剤の両方に似た形態が作製され得る。
【0209】
[0214]処置される外傷を受けた非角化上皮表面に応じて、ある形態が他の形態よりも好適であり得る。例えば、眼乾燥には、滴剤が最も一般的に使用されるまたは好ましい形態であり得る。非常に重度の眼乾燥の症例には、ゲル剤および軟膏剤の形態がより好適であり得る。加えて、徐々に生分解し、血清/血漿の生物活性タンパク質を経時的に放出するフィルムから作製されたコンタクトレンズは、最も重度の外傷を受けた角膜上皮の症例により適し得る。
【0210】
実施例8:プールされたヒト血清およびヒト血漿を含有するスクロース製剤のガラス転移温度(Tg’)および崩壊温度の決定
供給材料および調製
[0215]4%(w/v)クエン酸ナトリウムを含むプールされたヒト血清およびプールされたヒト血漿を使用した。血清または血漿試料40μL(240mg)を15%(w/v)スクロース20μLと混合(0.22μm濾過)して、製剤60μLを得た(すなわち、5%(w/v)スクロース中40mg/mLの総タンパク質)。
方法
[0216]示差走査熱量測定(DSC):RCS(冷蔵冷却システム)を装備したTA Q1000変調DSC(TA Instruments、New Castle、DE)を使用して、血清および血漿試料を含有するスクロース製剤のガラス転移温度を決定した。試料10μlをアルミニウムパンに入れ、気密に密封した。試料、パン、および参照パンの質量を使用して、試料と参照物質(空のパン)との間の熱流の差を決定した。窒素(NT3500)をパージガスとして50mL/分の流速で使用した。試料を、20℃から-60℃まで-10℃/分の冷却速度、-60℃で30分間の等温および-70℃から+20℃までの昇温中に2℃/分の走査速度で、従来のDSCモードにかけた。
【0211】
[0217]凍結乾燥顕微鏡観察(FDM):温度および圧力制御FDCS196ステージ(Linkam、Tadworth、Surrey、英国)ならびにカラービデオカメラ(QImaging、Surrey、BC、カナダ)を装備した光学顕微鏡(Olympus BH-2、東京、日本)を使用して、伝統的な低温凍結乾燥顕微鏡観察(FDM)を実施した。15mmの丸型ガラスカバースライドを、凍結ステージのブロックに、接触およびブロックからガラスへの伝熱を改良する1滴のシリコン浸漬油の上から載せた。次いで、試料4.5uLを、1滴として15mmのガラスカバースライド上にピペットで移した。その後、試料を9mmのガラスカバースライドで覆って、試料体積を2枚のガラスカバースライド間で均等に広げた。試料を10℃/分で-50℃に冷却し、200mTorrの真空度で30分間平衡化した。次いで、試料ブロックを1.0℃/分の速度で-5℃に慎重に加熱した。1℃の温度上昇後ごとに、デジタルカメラシステムを使用して画像を撮影し、定性的に分析して、試料の構造変化を決定した。構造変化の発生は、崩壊を示す。
結果
[0218]血清を含有する製剤をピペットで15秒間十分に混合した後に、10μLをAlパンに慎重に添加した。約-35℃の温度で、ガラス転移に特徴的な熱流のベースラインシフトが観察され、-33.5℃の平均ガラス転移温度が昇温中に得られた(
図2A)。血漿を含有する製剤をピペットで15秒間十分に混合した後に、10μLをAlパンに慎重に添加した。約-35℃の温度で、ガラス転移に特徴的な熱流のベースラインシフトが
観察され、-33.5℃の平均ガラス転移温度が昇温中に得られた(
図2B)。
【0212】
[0219]血清を含む5%スクロースの製剤は、-25℃で、構造的完全性の喪失を示す崩壊面が出現し始め、昇華面は、最終的に-23℃で崩壊した。血漿を含む5%スクロースの製剤は、-23℃で、構造的完全性の喪失を示す崩壊面が出現し始め、昇華面は、最終的に-21℃で崩壊した。
【0213】
[0220]血清および血漿を含有するスクロース製剤のガラス転移温度(Tg’)は、標準的なDSCを使用して測定され、-35℃から-32℃の間の範囲内であると観察された。FDMにおける構造変化は、血清を含有する製剤については-24℃で、血漿を含有する製剤については-22℃で起こった目に見える昇華および古典的な崩壊により顕著であった。
【0214】
[0221]本開示は、ある特定の実施形態を参照して本明細書に記載されている。しかしながら、他の変形形態が当業者に明白となることから、本開示は、それらに限定されると考えられるべきではない。本明細書で提供される任意の組成物または方法は、本明細書で提供される他の組成物および方法のいずれかの1つまたは複数と組み合わされ得る。本明細書に記載された組成物および方法の他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から当業者に明白となる。あらゆる箇所で引用されたすべての特許、特許出願、および参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
[0222]当業者は、単なる常套的な実験を使用して、本明細書に記載された具体的な実施形態の多くの等価物を認識し、または確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
他の実施形態
[0223]本開示は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、本開示の範囲を例示するものであり、限定するものではないことが意図され、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。